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【本編】介護とは……また会える喜びを知るもの

  僕が担当しているG子さん。担当して2年が経ちます。毎年3月頃から調子を崩してしまい、入院しています。
  年齢を重ね90歳になるG子さん。家事は娘さんに任せていても歩いたり、立ち上がったり、など何かに掴まれば自分でできます。90歳といっても食事や排泄は自分でできます。僕は月一回のモニタリングのための自宅訪問のために日程調整で電話をします。着信音がなる、娘さんが受話器を取る。
「あかりケアプランサービスの岡本です。今月もまた訪問させていただきたいのですが……」
「岡本さん、ごめんなさい。お母さん、一週間前から調子が悪くて手足が思うように動かないの。明日病院に行くから、また帰ってきてからでいいですか?」
「わかりました」
  僕の心は穏やかではありません。90歳になるGさん、日本の平均寿命はすでに超えている。不安が僕の頭をよぎる。一週間、2週間、退院の予定を過ぎても連絡が来ない。どうしたのだろう……。鳴らない電話を見る。何も聞こえて来ない。1週間経つ、連絡は来ない。
  もう2度と会えないのだろうか。最悪の状況が脳裏に浮かぶ。そのとき、電話が鳴る。ナンバーディスプレイに映るのは、G子さんの電話番号。僕は急いで受話器をあげる。
「お電話ありがとうございます。あかりの岡本です」
  受話器の向こうにいる娘さんにとびっきりの笑顔を見せる。
「岡本さん?  いつもお世話になっています」
  僕は祈っていた。無事に退院していることを祈っていた。
「昨日、母が退院しました」
  僕は手帳を広げ、訪問する日に印をつける。
  G子さん、今日会いにいきます!

【考察】介護とは……また会える喜びを知るもの

  70歳、80歳、90歳……年齢を重ねていくと、どうしても若いときに比べ病気になりやすく、怪我もしやすくなります。昨日まで元気だった人がある日突然倒れてしまい、帰らぬ人となることはけっして珍しいことではありません。
  「一期一会」……若い僕たちには実感するのが難しいかもしれません。あの日出会って、それが最期だった、ということがあります。とても悲しいことです。最期のお別れも言えずにサヨナラをすることもあります。
  その一方で、もうダメかもしれない、そう思いながらも、また出会えることがあります。別ればかりではありません。介護には再会もあるんです。永遠の別れ、悲しみがあるからこそ、再会できる喜びはこの上なく愛しいものです。

この本の内容は以上です。


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