閉じる


チューリップになったマドンナ

 


「チューリップになったマドンナ」

 

 中学生時代の夢を見た。

卒業近い日、女性の担任教師がクラス男子生徒全員の心が張り裂ける言葉を、

淡々と言った時の事を。

 

「岡田さんが東京へ引っ越しされます」

岡田さんはクラスのマドンナだ。

その御方が東京へ引越すとの事だ。

生徒全員は驚き隣同士で確認し合った。

それが事実と分かるとパニックの波が来た。

呆然としたり涙ぐむ奴もいたが、マドンナの表情には将来の夢への清々しさがあった。

 

その悲しい情報は生徒達の間を駆け巡り、

休憩時間には他クラスの男子生徒も窓越しから覗き見する奴もでた。

私を含む男子生徒のほとんどは今後の高校受験にやる気を無くした。

 

男子生徒は心に深い傷を抱き最終日マドンナを送り出した。

マドンナは笑顔で去って行った。

その後ろ姿が校庭に咲くピンクのチューリップと重なった。

 


黄色いチューリップの怒り

 


「黄色いチューリップの怒り」

 

すごい眠気に襲われたので脇道に入り眠った。

20分ばかし眠ったようだ。

運転席で背伸びをして、身体の強張りをほぐした。

窓を開けると寒いが心地よい風が入り、頭がすっきりしてくる。

助手席に黄色いチューリップが無造作に2本置かれているのに気が付いた。

今まで気が付かなかったが嫌な予感がする。

先程まで好きな女性2人と別れ話で揉めていた。

どちらを選ぶか選択を求められたがどちらも同じぐらい好きだった。

私にはその場で選択することはできなかった。

 

黄色いバラの花言葉は「愛情の薄らぎ」や

「嫉妬」を表すらしいと以前聞いたことを思い出した。

しかし置かれていたのはバラでは無くチューリップだったので少し安堵する。

どちらの女の仕業か考えたが分からない。

とりあえず車を走らせ帰る事にした。

 

坂道に差し掛かるとフロントガラスに黄色いチューリップが大きく写り迫ってくる。

炎のように揺らめきながら、私も一緒に黄色く染まっていく。

意識もその中に吸い込まれる。

大きな衝撃を意識の奥で感じた。

 

数時間後、病院のベットの上で気が付いた。

頭部を少し打撲した程度ですんで良かったと医者に言われた。

心細くなり2人の彼女に電話したが電話回線は遮断されていて連絡は取れなかった。

曖昧な私は大切な女性ふたりを失ったようだ。


なんで私はこんなに美しいの

 



読者登録

みのすけさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について