(1)動画と音声が加わるだけで大きなメリットが
もし,デジタル教科書が実現する場合,4ページで示した5段階のレベルでいうと,最低限のレベルは「レベル2」になるだろう。
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レベル2 ネットにはつながない。それぞれが,スタンドアローンである。
コンテンツは,リッチコンテンツが入る。つまり,音声と動画が加わる。
それによって,教科書の中の情報量は格段に増える。
また,簡単な書き込みができる。
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つまり,コンテンツが,「文字」「写真」「音声」「動画」となるということだ。
動画は,「ビデオクリップ」と「フラッシュコンテンツ」のようなものになるだろう。
このときの紙に比べてのメリットは,以下の通りである。
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1 教科書が,一冊で済む。
2 音声,動画が学習効果を高める。
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2について,少し詳しく触れよう。
例えば,英語では,繰り返しネイティブの音声に触れながら,また,背景となる知識を得ながら,自分のペースで学習をすることができる。一文で書いたが,この中には,4つのよさが含まれている。
1つは,ネイティブの音声。
2つは,繰り返し聞ける。
3つは,背景となる知識を得られる。
4つは,自分のペースで学習ができる。
このどれもが,今の「英語活動」の授業では,なかなか実現できていないことである。音声や動画は,その気になれば,テレビやCDで流すことができる。しかし,それは教師の計画によって流されるときしか聞くこと,見ることができない。
手元にあるデジタル教科書ならば,見たいとき,聞きたいときに,何度でも見られるし聞ける。これは,決定的に大きな違いである。
つまり,一番の違いは,「動画や音声を繰り返し視聴して自分のペースで学習を進められるようになる。」ことである。このメリットは,とても大きいということは,お分かりいただけることと思う。
(2)LANでつながるとどんなメリットがあるのか
では,レベル3のように,無線LANで教室のデバイスをつなげることができれば,どのようなメリットがあるのか。
メリットは2つである。
1つ目は,教師の提示したいものを手元に提示したり,子どもの書きこんだものを電子黒板に投影したり,その場で,アンケートをとったりと,授業でのかかわりを増やせるという点。
2つ目は,子どもたちの評価テストや,学びの成果物などをサーバーで管理できる点。
これらができると,子どもたちの学びを把握しやすくなり,その結果を受けて授業改善にフィードバックしやすい。
教師にとって,子どもたちの学びを具体的に把握することはなにより重要である。個々の課題を明確に把握することで,手立てを打てる。
確かな個の見取りなしに,個々への適切な支援は難しい。その点で,LALでデバイスがつながり,子どもの学びの履歴がデジタル化されるということはかなりメリットの大きなことである。
ただ,この仕組みを実現するには,相当なコストがかかる点を指摘しておきたい。
(3)インターネットにつながるとどんなメリットがあるか
「インターネットに接続できるといろいろなことが分かって便利だな。」ということは,なんとなく分かるだろう。
いちいち用意されたコンテンツではなく,一般に公開されているホームページの情報が学習に生きるということは,社会科の授業や総合的な学習の授業などで実感している教師も多いだろう。
インターネットのよさは,いくつもあるが代表的な良さをあげると,2つの良さがある。
一つは,知りたいテーマに応じた生の情報が手に入るということ。
もう一つは,子どもに問題解決力が身に付くということだ。
ただ,インターネットにつなぐことは,多くの教師が不安に感じるだろう。
毎時間,いつでも自由にアクセスできたら,様々な問題が起こるのではないかという不安である。
それへの対応は当然必要である。
第1に,怪しいホームページはつながらないようにするというフィルタリングである。
第2に,教師の管理下のみでのアクセスにするというアクセス制限が簡単にできるしくみである。
そして,第3に情報モラルの指導である。
例えば,誰かを誹謗・中傷するような書き込みをした場合,それは,特別な方法でたどることで,どのパソコンからいつに書きこんだものか証拠が残ることになっているということは,特にしっかりと伝える。もし,児童用のデジタル教科書が,ネットに接続されることになった場合,このような情報モラル指導を確実に指導するようなカリキュラムが必要である。
こういった点への対応をしっかりとした上であれば,インターネットへの接続は,有効であると思うがいかがだろうか。
無論,そうなると,コストの問題や,技術の問題がでてくるのは当然であるが。
デメリットも当然考えないといけない
デジタル化のメリットは目指すレベルで変わるが,考えられるデメリットは共通である。
教科書がデジタル化することで,よく言われるデメリットは,7つある。
およそ次のようなものである。
1 目が疲れる。視力が低下する。
2 書く学習が身に付かない。
3 書き込みができない。パラパラ漫画がかけない。
4 本に比べて温かみがない。
5 値段が高い。
6 壊れる心配がある。
7 充電はどこでするのか。
「なるほど,うーん。」と心配になる。
しかし,これらの「デメリット」と言われるものは,果たして本当だろうか。1つずつ検証する必要がある。
7つのデメリットを検証する
では,1つ1つ,検証してみよう。
1 目が疲れる。視力が低下する。→一日6時間(45分×6時間)の授業を,この教科書を使って学習することになる。
ただ,自分のこれまでの経験を振り返ってみて欲しい。四六時中,教科書を見ているわけではない。国語の音読や,理科でのビデオクリップの視聴などでは,10分以上教科書を見続けることもあるかも知れないが,それほど長時間になるとは考えられない。恐らく,一日平均1時間以内だろう。
ただ,このことについては,充分検証する必要はある。
2 書く学習が身に付かない。→デバイスがあっても,ノートに書く作業は必要である。デジタル教科書は教科書であってノートではない。もちろん,書き込み機能で書きこんで保存することもあろうが,筆箱やノートが完全にいらなくなるとは私は考えていない。(ノートも完全デジタルにしてしまおうという主張の人もいる。)例えば,筆算などは無くならないだろう。紙とデジタルのベストミックスを探ると考えるとよい。つまり,書く学習が身に付かないということはない。
3 書き込みができない。パラパラ漫画がかけない。→書き込みは,できる。これまで書いたとおりである。いたずら書きも十分にできる。パラパラ漫画もやろうと思えば可能である。ただ,パラパラ漫画を引き合いに出す方が結構いるのだが,それほどの問題だろうか?
4 本に比べて温かみがない。→そうかも知れない。紙の温かみは大切だ。しかし,教科書が紙である必要はあるだろうか。他にも,紙でできた本に子どもたちは囲まれている。図書館の本がすべてデジタル化する時代は,まだまだ来ないと思う。温かみは,絵本などで感じればよい。教科書に求められることは,「温かみ」より,「分かりやすさ」だ。
5 値段が高い。→孫さんの試算では,全児童配布ならスケールメリットもあり,2万円でできるという。初期投資さえしてしまえば,年間の運用には,これまでの紙の教科書とそう変わらない額でできるという。その初期投資も,280円の6年リースで,子ども手当から支出すればよいと孫氏はいう。ネット接続は,ソフトバンクなどが無料でさせてくれると言う。本当かは分からないが。いずれにせよ,メリットが大きければ踏み出せない額ではなく運用できそうだという試算が出されている。
6 壊れる心配がある。→壊れにくくすればよい。技術的には充分可能である。それでも,壊れたり紛失したりの問題はある。それへの対応はもちろん必要だが,対応できない問題ではない。子どもたちにも大切に使用するように指導を徹底すれば,それほど心配することでもない。子どもは,意外と心得ている。
7 充電はどこでするのか。→IPadの電池の持ちはすばらしい。学校での1日分の使用にある程度耐えるだろう。IPadがデジタル教科書というわけではないが,このレベルを目指せば,電源の問題もそれほどの問題ではない。
このように,どの「デメリット」も,対処できない問題ではない。いや,意外と何とかなる問題の方が多いと思っていただけたのではないだろうか。

みんなのデジタル教科書教育研究会片山敏郎