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八徳路のDVDショップ

 アジアには、各国にアキバと称される電脳地帯が存在する。
 電脳といっても、伯爵は本当の電子機器を求めたりはしない。
 自身のオタク的欲求を満たすものが見つけられれば、それでよい。
 どちらかといえば、DVDソフトやゲーム、CDやコミックがその対象となる。
 

 台北のアキバといえば、『光華商場』。
 昔から存在しているが、数年前に移転した。
 移転によって、大規模なビルの中に、小さな店が幾つも入っているという形態に変化。
 その雰囲気は、日本のアキバにも同様にみることができる。

 ビルになったことにより、以前と比較して整然となった。

 しかも、きれいになっている。
 以前の雑然としたイメージは、見事に払拭されたといってよいだろう。

 

 『光華商場』は、MRT忠孝新生駅から徒歩数分のところに位置する。
 孔子廟を後にした伯爵の姿も、ここにあった。
 MRTの出口はいくつかあり、馴れないうちは気をつけた方がよい。
 移転後初の訪問では、伯爵は辿りつくことができなかった。
 その理由とは、

 ・駅の出口から目視できない位置にある。

 ・過去訪問した6月は、すでに気温が高く、探すのに相当の体力が必要だった。
 ・当時は自由になる時間が少なかった。

 などが挙げられる。

 知ってしまえば、なんだということになるが、町中には光華商場を示す看板など存在しない。
 ガイドブックでしっかり地図を確認するか、事前にインターネット等で行き方を確認した方がよい。

 もしくは、タクシーで行ってしまえば、煩わしい問題は起こらない。

 

 さて、伯爵。

 迷った挙句、先に手前の八徳路周辺を散策。
 ここらにもDVDショップがあり、そのうちの一軒は必ず立ち寄る店だった。

 ここは、記念すべきレア・ホラー発掘の第一現場でもある。
 まるで愛想のない親父を横目に入店すると、まずは一通り店内を物色。
 ハリウッド映画・日本映画・韓国ドラマ・中国ドラマといった分類で、昨年来たときとレイアウトは変わっていない。
 前回の発掘現場を見ると、新たなソフトはあるものの、ジャケ写がどうにも魅力薄。
 今後の豊作を信じて、スルー。
 ちなみに、この店の特徴を挙げてみよう。
 ソフトの価格は、光華商場と同等程度。

 発売から少し時間が経ったソフトは、大体270元(約800円)程度。
 光華商場より、ホラー発掘率は高いが、後述する台北駅周辺のショップに比べれば低い。
 他店と違うのは、アメリカ系ホラー(特にB・C級系)が分類されたコーナーがあり、一本あたり99元(約300円)の特価となっていることもある。

 店主の愛想がまるでなく、購入時は多少の緊張を強いられる。
 しかし、何か問題があったことはない。

 

 他に、このショップ以外に怪しい系DVDショップも近隣に存在する。
 いわゆるAVを扱っている店で、商品のほとんどは日本のものらしい。
 張り紙に『熟女コーナー⇒』なる案内があり、気になって移動してみると、レジの真正面に出てしまった。
 そこに座っていた店のおばちゃんが熟女だったのは、シャレのつもりであろうか?
 気まずさに耐えきれず、伯爵は逃げるように退散。

 

八徳路風景


光華商場

 さて、いよいよ光華商場にやってきた伯爵。

 ビルの1階は、飲食店などがあり、逆にショップとして見るところはない。
 すぐさまエスカレーターで2階へ移動。
 ここから、ローラー作戦を開始する。
 小さな店が多いためか、フロア案内図など存在しない。

 何がどこにあるのか。

 どんな店があるのか。

 ショップの配置に、規則性や法則性は存在しない。

 そのため、隅から隅まで確認する必要があるのだ。

 

 とりあえず、DVDを売っている店を把握。
 調査対象は、主に2階から4階くらいまで。
 その上階も存在するが、伯爵の参考になるような店ではない。
 気になるDVDショップは4軒程度。
 中には、かなりの陳列数を誇る店もある。
 それらを、一軒一軒丁寧に再調査していく。
 しかし、なかなかホラーは見つからない。

 どの店も、八徳路にあるDVDショップと似たような商品構成である。
 日本のアニメや特撮モノも存在し、昭和の仮面ライダーBOXが伯爵の興味を惹いた。
 ちなみに、価格は1,000元(約3,000円程度)。
 仮面ライダーBLACKがセールとなっており、400元(約1200円)程度で売られていた。
 思わず購入に踏み切ろうとした伯爵だが、スーツケースに占める容積は多くなる。
 後ろ髪を引かれながらも、断念するのだった。

 他にも特撮モノは、取り扱われている。
 ウルトラマンや宇宙刑事シリーズ、ジャスティライザーやセイザーXなど。

 しかし、肝心のアジアン・ホラー(日本を除く)には、出会えない。

 

 伯爵は、PCゲームを売る店へと移動。
 WindowsXP時代のゲームが、多く扱われていることを知る。
 価格は、安くなっているもので200元(約600円)程度。
 中文という表記があるので、中国語仕様になっていると思われる。
 あまりの安さに、海賊版かと疑うものの、どうも正規品らしい。
 実際に購入したわけではなく、その真偽は不明のままだ。

 

 

 

 ここで伯爵。

 なぜか冒険心が宿った。

 かねてから、台湾オリジナルのゲームを見たいと思っていたのだ。

 人の良さそうな、いかにも台湾のオタク然とした店員に質問を投げかかる。

 『ドゥーユーハヴ、タイワンズ オリジナルゲーム?フォーウインドウズセブン』

 この文章が正しいのか、正しくないのか。

 疑問を気合いで押し返し、伯爵は返答を待った。
 『ウィンドウズセブン?ノー』
 はにかみながらも返答する店員。

 どうやら意味は通じたようだ。

 本来ならば、XPでもよいから台湾オリジナルはないかと問うべきところである。
 しかし、台湾人に質問したという事実だけで伯爵は満足。

 『オーケー、サンキュー』

 と言い放ち、その店を後にした。
 これが伯爵のヘタレたる所以である。

 

 滞在時間、約2時間。

 既に時刻は16:00になろうかとしていた。

 収穫は、未だ無し。

 いよいよ、最後の望みをかける時がきた。

 あの店がある。
 確信があった。

 あの店は、きっと待っていてくれる。

 前回も、この危機を救ってくれたあの店だ。

 あの店なら間違いない。

 

 期待と不安に包まれながら、伯爵は光華商場を後にした。

 

MRT忠孝新生駅の出口から見た景色
光華商場の姿を目視できない

 

 

 

 

 

右手に科学技術大学を見ながら進む

 

 

少し進むと、前方に高架が出現

高架の左下あたりが光華商場だ

 

 

外見は、えらく地味……


台北駅周辺のDVDショップ

 MRTで台北駅まで戻った伯爵。

 もう後がない。

 逸る気持ちを抑えきれず、足は自然と小走りになっていた。

 

 人混みの激しい細い通路を通ると、おもむろにショップが姿を現す。
 店内は、台湾ティーンズに溢れ、主に日本や韓国のアイドルCDなどを物色している。
 あくまで感覚的だが、台湾アイドルそのものの人気より、外国勢の方が優勢の店内レイアウトなのだ。
 ティーンズの合間を縫って、DVD棚を発見。
 多くの商品からホラーを探し出すコツは、黒い背表紙のパッケージを探すことだ。
 黒いから、他商品よりはよっぽど目立つ。

 おっと、ホラー発見。

 ジャケ写を表裏まんべんなく確認し、見たことのないものであることを確認する。
 注意しなければならないのは、タイトルやジャケ写が台湾仕様になっているからだ。

 そのため、ジャケ裏のわずかな画面写真から、自らの記憶と照合する作業が必要なのだ。

 ここで、幾つかの未鑑賞ホラーを発見した。

 ただし、焦ってはいけない。
 実は隣にも別のDVDショップがあり、価格設定も違うのだ。

 作品名と価格を記憶し、隣と比較することも重要である。

 

 しかし、これで心に余裕ができた。

 全くの収穫なしではない。

 前回の訪台から僅か一年。

 その間に、どれだけホラーがリリースされるか心配していたが、きっちり結果は残していたようだ。

 もう何の心配もいらない。

 後は、オタク的欲求をどれだけ満たすかである。

 そのひとつが、『那些年、我們一起追的女孩』である。

 

 この作品は、まず映画の主題歌をYouTubeで知った。
 鼓夏という歌手が唄っており、作曲は日本人である。

 それを聞いて納得したが、昔のフォークソングを思わせ、メロディが覚えやすい。

 加えて鼓夏のクリアな歌声がばっちりハマっている。
 YouTubeの画像は、映画のシーンを使用したPVとなっており、非常に気になる作品だった。

 日本でも、何かの映画祭で上映されたらしく、一部のホームページでは『那些年 あの頃、君を追いかけた』という題名で紹介されている。

 まるで、ストーカーのようなイメージの邦題だが、実際は素晴らしい青春映画である可能性が高い。

 日本版が出てくれればよいが、出ない可能性もある。

 それならば、いっそ台湾で購入すべきか?

 などど、伯爵は考えていた。

 そして、ようやくその作品を発見することになったのだ。

 

 台湾の映画なのに、こんなに見つからないとは……。

 確かに、その店でも棚のはるか上段に位置し、探すのは困難な状況にあった。

 それを探しあてたのは、伯爵のマニア的勘以外の、何ものでもなかった。

 やがて、その店での物色は終了。

 比較のために、隣の店へと移る伯爵。

 そこには、不思議な体験が待っていた。

 

 

 店舗は、似たような作りである。

 入口から奥までをCDの陳列棚が並ぶ。 

 異なるのは、DVD売り場が2階になっていることだ。

 DVDは、ティーンズには人気がないらしい。

 CD売り場と比較して、ずいぶんと閑散としている。

 幸い、この方がゆっくりと商品を探すことができる。

 さらに、こちらの店は明確な国別分類がされていた。

 つまり、和製ホラーなら、日本コーナーだけを探せばよいことになっている。

 

 ここで、台湾で売られているホラー映画の種類を説明しよう。

 まずは、アメリカ系のメジャー作品。

 そして、物量的にはタイや韓国。

 和製もソコソコの検討ぶりであるが、みひろ主演作とか『競泳水着なんとか』のようにエロっぽい作品が目立つ。

 他には、インドネシアなども稀に発見することができる。

 商品によるが、字幕には英語と中文(中国語)が入っているものと、中文だけのものもある。

 当然のことながら、日本語字幕は入っていないのが前提だ。

 

 さて、伯爵の興味は主にタイと韓国にある。

 この二つのコーナーを慎重に調査し、気になるタイトルをピックアップ。 

 最新作というよりは、特価扱いの作品が充実しており、タイミング的に恵まれていたらしい。

 どのような作品と出逢えたかは次ページにて紹介するが、実は異色な体験があった。

 

 

 

 あらかた物色を終えた伯爵。
 何故か、フロアの最奥部が気になった。

 伯爵の膝あたりの低い陳列棚が、まるで祠のようになっている。

 

 そこに並べられたタイトルを見て、伯爵は愕然とした。

 主にタイ・ホラーが揃っている。
 国別のコーナーではランダムに配置されていたが、ここでは整然と並んでいる。

 しかも、国別コーナーにはなかった最新作まで!

 さらに、格闘映画のタイトルまで揃っているではないか!

 

 ゴォゴゴゴゴゴゴ……。

 周囲の空気が迫ってくるようだった。

 まさか……。

 まさか、同じタイプのスタンド!?

 誰かが自分を観察しているのではないか?

 この祠をみて、反応する人間をチェックしているのではないか?

 そんな思いが脳裏をよぎる。

 

 いるのか?

 台湾にも同じタイプのマニアがッ!?

 周囲を見渡したが、伯爵に目を向けている者はいない。

 それでも、きっといるに違いない。

 そいつは、日本のアキバに来て、ホラー映画を物色しているかもしれない。

 世間には、隠れたマニアがまだまだ存在している。

 祠は、そのことを伯爵に物語っていた。

 

 気がつけば、時刻は夕方6時を過ぎていた。

 そろそろ、ツレの様子が気になる。

 台北駅の寿司屋で助六風の寿司を買い、ホテルへと戻る伯爵であった。


発見したホラー映画たち

 発見したホラー映画を紹介しよう。

 他にも気になった作品はあるが、限りがあるので厳選した。

 

 ■韓国

 ・『陰聲』

 ジャケ写……血の涙を流す女。女学生と、彼女に触れようとする幽霊

 実は韓国ホラーの有名シリーズ・女校怪談の一つ。残念ながら邦題『ボイス』で日本リリース済

 

 ・『結伴自殺』

 ジャケ写……学校の屋上から、今にも飛び降りようとする4人の女学生

 こちらも女校怪談シリーズ第5弾。こちらは、現在のところ日本未リリース。

 

 

 

 

 ■タイ

 ・『鬼機No.8』

 ジャケ写……旅客機内部。CAと懐中電灯を照らす整備員。その周囲に多数の霊

 こちらは、日本でリリース予定

 

 ・『詭門開 Who R U』
 ジャケ写……開きかけたドアの前に座る林家パー子風女学生と母。共に顔色悪し

 ジャケ裏見ても、内容がさっぱり想像できず

 

 ・『鬼詛咒 Six』
 ジャケ写……右上部に恐怖顔の女。中央にマジナイのマーク。

 こちらもジャケ裏から内容は想像できず

 

 ・『鬼4忌 STILL』
 ジャケ写……中央に女の霊らしき姿。左右に不審顔の男女。下部に布に包まれた死体。

 4篇からなるホラー・オムニバス。ちょっと気色悪そう

 

 ・『609猛鬼終結者』
 ジャケ写……首を切られて横たわる男。その奥にメスを持つ口裂少女と母親

 画は迫力あるが、どうやらホラーコメディらしい

 

 

 

 

 ■香港 

 ・『童眼 THE CHILD’S EYE』

 ジャケ写……巨大な瞳。手前に美少女

 ヒロインは、台湾のアイドル、レイニー・ヤン。監督は、あのパン・ブラザーズ

 

 台湾の新作DVDは、定価が400~500元(約1200円~1500円)程度。

 韓国ホラーなどは、廉価盤として100元(約300円)がメーカー価格として設定されるものもある。

 さらに、店舗によってはセールとして39元(約120円)まで下がるものもあった。

 

 注意してほしいのは、これらのソフトをそのまま日本に持ち込んでも、家庭用DVDで全てが視聴できるわけではないということ。

 台湾の映像記録方式はNTSCであるが、リージョンは日本と違う3であることが多い。

 中には、リージョン・フリーも存在するが……。

 

 

 

 

 

 


パレ・デ・シンの朝食

 伯爵らは、4日目の朝を迎えた。

 心配していたツレの状態も回復。

 朝食も食べることができそうだったので、朝食レストランへと向かう。

 

 あくまで個人的感想であるが、パレ・デ・シンの朝食は良い意味で台湾っぽさを残していると思う。

 サラダの野菜や果物。

 中華系メニュー。

 内容的には同じ台北のシャーウッド・ホテルと似たような感じだが、たとえばヨーグルトのクオリティなどはパレ・デ・シンに軍配があがる。

 もちろん、完璧ではない。

 人の好みによって、たとえば中華系メニューの品数がもっと多い方がよいと考える人もいるかもしれない。

 ただ、伯爵らにとっては、バランスが非常によく、味にも大変満足している。

 この朝食ビュッフェを食べなければ、台湾に来た気がしないのだ。

 

 前回と比べて、気になった点をあげると、日本食メニューが減ったような気がする。

 その理由は予測がつく。

 それは、蕎麦やうどんの麺類に起因する。

 日本人にとって、麺類はうれしい。

 最初は、伯爵も喜んで食したのだが、ツユが間の抜けた味になっている。

 出汁を取っていないのではないか?

 そんな疑惑が、持ち上がる。

 そのため、一回食べれば、もう良いという気になってしまった。

 当時は、蕎麦・うどんコーナーが大量に売れ残り状態となっているように思えた。

 

 パレ・デ・シンともあろうものが、出汁を取らないツユを提供するだろうか?

 どうにも納得がいかず、もう一度トライしたことがある。

 その時、新たな発見があった。

 出汁の部分が、鍋の底で沈殿しているのでは?

 このアイデアは、当たりであった。

 お玉で底からかき混ぜると、ツユは正式な味へとチェンジ。

 しかし、これはあまりに勿体ない話だ。

 その発見も既に遅く、今回は麺類が大幅削除。

 そうめんをアレンジしたヘルシー・サラダ風に姿を変えていた。

 

 

 

 このように、メニューは見直しがされているようで、次回の楽しみにも繋がる。

 反対に、これまで気に入っていたものが、無くなっている可能性もある。

 少なからず特徴的なビュッフェなので、宿泊者は一度は体験してみるべきであろう。

 

 

 

 

 

 

 



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