閉じる


試し読みできます

はじめに

 

【はじめに】

この『通院は楽しい』という短編集は2編の話が入っている。

前章の話は、実話に基づいているため複雑な気がする。

何気なく集まっている場所、映画館や駅、店など

そこに居る人が、どんな事情を持って、どんな状態で居るか

なんて私達は知らないのではないだろうか。

 

現実は小説より奇なり・・なのだ。

私自身、家の中に居て大変な目に遭った事が何度もある。

トイレに入ったまま5時間も出れなくなってしまった人もいる。

歩いていただけで、とんでもない事件に巻き込まれて、

その後、人生が変わった人もいる。

 

日常とか平凡が、どれだけ貴重で逆に珍しいことかを

書いてみたかった。

 

二章目は短編ながら、前章と逆さまの世界を描いてみた。

人間は、我こそ自分は不幸だと心に秘めながら、

他人の前で幸せそうに振る舞う癖がある。

そもそも自分を正当化することに必死な生き物なのだ。

TV・雑誌でも人の不幸は蜜の味として受け入れられる。

 

私達は、そんな嫌な部分を持ちながら狭い肉眼で見える世界を

汗かきながら生きている。時に滑稽なくらいに。

でも、どこか愛すべき存在でもあるのだ。

この正反対の主人公を通して何かを感じてもらえたら、

筆者は書いて良かったと思える。


試し読みできます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[ハエ取り棒は美貌の敵]


試し読みできます

 ここは都心の一等地。

おしゃれな邸宅の奥から忙しなく響くスリッパの音が聞こえていた。

 

“ああ、寝坊しちゃったわ。明日からお友達とヨーロッパに

 買い物旅行に出かけるっていうのに。”

 

髪からカーラをはずし慣れた手つきで長い髪のカールとウェーブを

整えながら、仕上げのスプレーをかけては小走りに、

クローゼットのある自分の部屋に行った。

 

クローゼットにはギッシリと好みのクロエのワンピースが

掛かっていた。園子は、とても四十代に見えないくらい肌もツルツルで

手入れの行き届いたロングヘアーは丁度よくパーマがかかっており

美しい部類に入る中年女性だった。

ワンピースを着ると全身を鏡に映し、満足した。

 

どれだけ美容にお金をつぎ込んでいるのもわかるが特に、

そのよく手入れをされたロングヘアーは自慢だった。

 

二十歳を過ぎた娘がいるように見えない若々しさだ。

 

 そんな園子は喘息持ちで

酷い発作を起こしてからというもの予防も兼ねて

毎月呼吸器外来に通院していた。

 

しかし今日は、ここ数日の喘息発作で旅行行くにも不安があった。

丁度 運良く旅行日の前日が診察の予約日だったのは、

日頃の行いが良いせだからだろうと思って早寝したはずなのに。

 

それが明け方の咳で、ろくに眠れず寝坊になるなんて・・

とは思ったものの、そこは根っからの明るい性格で都合よく解釈した。


試し読みできます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は幸せ。ウフフ」


試し読みできます

 梅子は、ここ数年腰痛で悩んでいる。

痛みを紛らわすには子育ての終わった同級生仲間と

電話で話すのが一番いい。

金持ち学校と陰口を叩かれていながらも、

母校の女子校に対する愛校精神は高い。プライドがある。

 

そのせいか梅子は、家の格式にこだわっているうちに婚期を逃がし、

そのうち結婚そのものに興味がなくなってしまった。

むしろ子育てで疎遠になっていく親友達に腹さえ立った。

 

 その間、梅子は実業家の父親からマンションを一棟もらい

家賃収入で悠々自適に海外旅行や趣味に没頭して

楽しく過ごしていた。

 

それが四十も半ば過ぎてくると親友達も子育てが終わり、

やたら付き合いが良くなってきたので、こうして度々電話で

話す機会が増えた。

 

でも何だか話題にズレがあるのは感じていた。

彼女達の話題には梅子に居ない旦那とか子供とかの話が、

よく出てきたからだ。

 

 基本的に一人プラス飼い犬という梅子にとって、

誰かが家の中でフォローしてくれるなど考えも及ばない事だった。

梅子は、一番仲良しの理絵と会話することが多かった。

理絵には自慢の息子がいて、ころんで怪我した時など

抱き抱えて病院に車で連れて行ってくれたそうだ。

 

 

 

 


試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

この本は有料です。閲覧するには購入する必要があります。
購入するにはしてください。
有料本の購入に関しては、こちらのマニュアルをご確認ください。
販売価格600円(税込)

読者登録

Nachikoさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について