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第三章

翌日の夜―。

いつもどおり仕事をこなしてはいるが、食欲もなく、人を避けるルギを、シーマは心配していた。
夕食を終え、フラフラと部屋に入るルギを後ろから見送り、シーマはその夜、頭領の部屋を訪れた。

ノックをすると、ネオスが入り口を開けた。

「なんだ?」
「…頭領、最近のルギは、精神的な疲れが見え始めています。このままでは、立ち直るどころか、身体もボロボロになってしまいます…」
「…そうだな」

ネオスも同意する。

「頭領は、最初ルギが来たときに言いましたよね? 「性根を叩きなおすいい機会だ」って。でも、ちっとも彼は立ち直っていません。我々は、技術的なことではサポートできますが、心のケアをしてあげることができなかったんです…。」

シーマが力なく項垂れた。
ネオスが、そんなシーマの肩をポン、ポンと叩く。

「……お前たちには感謝している。俺の一存で決めたことに、従ってくれているのだから。良くやってくれている」

そして、ネオスもため息をつき、目を伏せて言った。

「…あいつが立ち直るには、あいつが自分で答えを見つけるしかない。真実は、あいつの中にある。導き出すことが出来るのは…本人だけなんだ」
「真実…?」

シーマが呟く。
ネオスは、頷いた。


(………真実ってなんだ………)


今夜も眠れそうにないからと、外に行こうとしていたルギは、通路でネオスとシーマの会話が聞こえてしまい、立ち止まっていた。
その後も二人は話していたが、その後は今後の訓練の方向性などの話になり、そのまま部屋の中に入っていった。

(……そういえば、ネオスは何か…隠してるな…)

前から、少しづつ思っていた。
以前、ネオスが家に現れたときに、すぐに『妹の病に、盗品の薬を使うな』と言った。
―なぜ、初対面で会った妹の病気を、すぐに断定できた?
妹に病名を聞いたとしても、なぜ盗品が、ギルドに入るとわかっていた?
どうして、自分が、ルドベキアの盗品の薬を手に入れようとしているとわかった?
誰にも言っていないのに。

ネオスはいつも、自分からは何も言わない。
皆を信じて、任せて、自分では結論をださない。
そんなことが多かった。

(……確かめなければいけないのか? 俺は…)

そのまま部屋に戻り、ベットの上にゴロンと寝転がる。
そして目を閉じる。

……真実。

妹が死んでから、何も考えたくなかった。
真実なんか、何もない。妹がいなくなった、ということだけ。
例え何か知っても、現実は変わらない。
『死』は、なかったことにはならないから。

……だけど、それが逃げだというのなら、知ってやる。
俺の『真実』を………!


最終更新日 : 2013-04-21 03:25:10