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第一章

アジトに戻ったルギは、その後、模擬戦に参加した。
1対1の対決の相手は、シーマだった。

双剣のルギに対し、長剣一本のシーマ。
一礼し、すぐさま戦闘が開始される。

双剣で、あらゆる角度から斬撃を浴びせるルギの攻撃を、シーマは悉くかわしていく。
黒烏団の団員は、盗賊だけあって、皆回避の動きが俊敏であった。
少し重量のあるルギの双剣は、威力がある分、隙も多少ある。
すばやい敵を捕らえるのが、苦手だった。
しかし、今は―

手加減せずに、容赦なく撃ち込んでくるシーマの鋭い剣先を、ルギは一瞬の隙をつき、左の剣で受け止める。
そのまま、腕を回転させ、左右の剣でシーマの腕ごとねじり、シーマの剣を弾き飛ばした。

キィィンと、甲高い音が鳴り響き、シーマの剣はクルクル回転しながら、後ろの地面に突き刺さる。
シーマは、後ろにバック転をし距離をとり、剣を取ろうとした。
しかし、間合いを詰めたルギが、シーマの喉に鋭い刃を突きつける。

「そこまで!」

ダインの大声が響く。
シーマは冷や汗をかいていた。

「…うわぁ、負けちゃったな…」

困った顔で、笑顔を作る。

「おめでとう。君の勝ちだ」
「……ああ」

シーマに言われ、ルギは剣をひいた。
少しずつではあるが、ここに来た時より確実に、実力は向上している。
もっと、もっと力をつけねば…!
ルギは、シーマに勝利した余韻に浸る暇もなく、足早に中庭を後にした。

ルギの姿が見えなくなった後、汗を拭きながら、シーマはダインの傍に腰をかけた。
水を差しだしながら、ダインはシーマに言った。

「おう。お疲れ。奴とやって、どうだった?」

シーマは、肩を落として、フゥとため息をつきながら言った。

「見ての通りですよ。成長が著しいですね。元々、二刀流というのは強みですが、ますます強くなってる。文句なしですね。ただ…」

少し表情を曇らせるシーマに、ダインは首を傾げる。

「ただ、なんだ?」
「あ、いえ…。最近のルギの様子が、おかしいんです。元々、無口で団員ともほとんど話はしてなかったんですが、最近さらに、自分から人を避けてるというか…」
「そうかぁ?」

ダインは気づいていない。

「はい。それに、彼…最近、何かの訓練とか、用事がない限り、夜アジトにいないんですよ…」
「下山して、麓の街の女の居る店で、飲み明かしてるんじゃねえのかぁ?」
「ダインさんじゃないんですから…」

ガハハ、と笑うダインに、シーマは苦笑した。


「もともと、お酒飲まないですよね。ルギって、食事も本当に少量ですし、間食もしてないし。彼が酒臭いことなんか見たことありません。それに、最近あんまり、寝てないようなんです。なにか思い詰めている感じで…」
「ふーむ」

ダインは、無精髭を指でなぞる。

「まぁ、俺としては、腕がたてば大歓迎なんだけどなぁ。情緒不安定とあっては、少々困るな」
「そうですね、仕事中に影響があるかもしれませんし」
「一応、頭領に報告しておくかぁ。なんか変わったことがあれば、教えてくれや」
「はい」

そういって、ダインは巨大な大剣を片手で軽々と担ぎ、アジトに戻っていった。
シーマは、フゥとため息をついた。

「…これ以上放っておくと、手遅れになりそうな気もするけど。ルギ、大丈夫なのかな…」

シーマは、ヨイショと武器を装着し、アジトへ入った。


最終更新日 : 2013-04-21 03:24:32