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MUGA 第6号
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例外者たちの詩     那智タケシ
季節の詩     rita
「人間には、自分で自分を治す力がある」 菊地久幸×那智タケシ
世界中の人に自慢したいよ~忌野清志郎のうた
《無我的観照》第2回 『白痴』(ドストエフスキー著)から読み解く現代のキリスト像
アラスカ便り―北の果てに暮らす日々―
★編集後記
MUGA 第7号
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『例外者たちの詩』  那智タケシ
『季節の詩』  rita
歌うも舞うも法の声~「AKB48」に寄せて
《無我的観照第3回》 霊的女優・イレーヌ・ジャコブ論
アラスカ便り―北の果てに暮らす日々―
★編集後記
MUGA 第8号
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『例外者たちの詩』  那智タケシ
『季節の詩』    rita
編集会議 「AKBは無我的か否か」
川の流れのように~秋元康にみる「無我的表現」
アラスカ便り―北の果てに暮らす日々― 
★編集後記
MUGA 第9号
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例外者たちの詩     那智タケシ
『季節の詩』    rita
「何もしない時間の大切さ」 菊地クミユキ
無我表現としてのAKB前田敦子
無我的観照第4回 『マイネームイズハーン』に見る愚直な愛の表現
アラスカ便り―北の果てに暮らす日々― 
★編集後記
MUGA 第10号
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『例外者たちの詩』  那智タケシ
『季節の詩』     rita
「土も人間も健康にする内城菌の力」 瀧 芳人(ヤマイチシステムプロデュース代表)
AKB48仲谷明香『非選抜アイドル』にみる無我表現
アラスカ便り―北の果てに暮らす日々―
★編集後記
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アラスカ便り―北の果てに暮らす日々― 

アラスカ便り―北の果てに暮らす日々―

「春の空の下」

 長岡マチカ(文化人類学を学び、現在、アラスカ在住)

 

 あと三インチ(約八センチ)で記録史上最大の積雪と言われる今冬。三月も終わりに近づき日中零度を超える日も出てくる。日は一日一日と長くなり、夕飯を食べ終わる頃になってもまだ明るい。もうそこまで来ている春を前に時折ちらつく雪。冬の最中には「また雪か」と溜息をついていた街の人々も、空を仰ぎ「記録達成するかもね」と軽い口調で言い合っている。十三年近くアラスカに暮らし、今まで見たこともないほど高く積まれた道端の雪も少しずつ解け、道路にいくつもの水溜りができている。軒下のつららも透明さを増し日に日に短く、ところどころ顔を出した地肌もその面積を広げていく。雪解け水を照らす日差し、街は春に向け目を覚ましつつある。

 

 冬帽子も手袋も少し薄手のものに変え、眩しい空の下そりに出かけた。ところどころ積まれた雪のジャンプ台、真っ青な空に子供たちの身体が跳ねる。もうすぐ中学生になる男の子を連れたネイティブ・アラスカンの友人が、隣で目を細め見守っている。

「ママもいっしょにいこ」

 四歳の娘に手を引かれてそりに乗り込む。風を切る。解けかけた雪の表面がシャリシャリと音を立てる。白い隆起にぶつかる度浮き上がる身体。はるか遠くには海、浮き氷が輝いている。

 斜面の下で止まり、寝転んでみる。

「チキュウってまるいんだねえええ」

 くっついて空を見上げる娘のはしゃいだ声。

 上半身を起こすと坂の上で友人が手を振っている。大きく手を振り返し、坂を上る。雪に足を取られ汗がにじみ出る。普段慣れない動作に身体の眠っていた部分が動き始める。手の先からつま先まで熱を感じている。

 坂の上から子供たちの笑い声。友人の息子君が空っぽのそりの紐を耳にかけ引っ張っている。他の子たちも真似をする。今度は歯でひっぱり始める。可笑しそうに真似をする周りの子。しばらくすると、耳に紐をかけたまま、歯で紐を銜えたまま、どれだけ速く遠くまで進めるかの競争になる。引っ張られる空っぽのそりが雪の上を勢いよく跳ね宙を舞う。笑いながら歓声を上げる子供たち。

「エスキモー・オリンピック」友人が隣でクスクスと可笑しそうに言う。十年ほど前に一度だけ「ワールド・エスキモー・インディアン・オリンピック」を観たことがある。アラスカとは思えないほど暑い内陸部でのことだった。競技種目には「耳で綱引き」「歯で錘運び」などがあり、アラスカ中から集まったネイティブの「アスリート」達が耳を真っ赤にして綱を引き合い、かなりの重さのある鉄製の錘を銜え歩く。競技の間には各村ごとのダンスの見世物もあり、民芸品やスナックを売る店が並ぶ。春の日差しの中で、あのステディアムの熱気を思い出す。

「一昔前はね、こうやって競いながら身体の様々な部分を鍛えたのよ」

 ネイティブの文化歴史にも詳しい友人が教えてくれる。狩に頼らずともスーパーで購入できる食料、暖房のきいた家屋での生活。かつては厳しい自然環境を生き抜く身体を鍛えるためという目的を持っていた競技の数々も、今はスポーツという娯楽として、そしてネイティブとしての誇り結束を高めるためのものとなっている。ベンチに腰かけ子供たちの笑い声を聞きながら、友人とそんな話になる。

「確かに生活環境も一つ一つの行為の意味だってすっかり変わってしまったけれど」

 友人はそう言うと、「見て見て」と今度は紐を耳にかけそりに乗せた小さな子供を引っ張ろうとする息子君を指し示しながら腹を抱えて笑い始める。友人の突き抜けた明るさが春の陽気に溶け込む。友人はしばらく笑い続けると下を向いて大きく息を吐き、穏やかな表情で顔を上げ私の目を見つめてこう言った。

「でもね、身体に刻まれてるのよ。はるか遠く昔に生きた祖先と同じ身体の動きをしてみるといいわ。私達が誰なのか見えてくるから」

 友人は立ち上がると踊り始める。村に長い間受け継がれているという踊り。もう少しで母親の背丈を追い越すだろう友人の息子君が、そりを放り投げ駆け寄って母の隣でリズムを取り始める。友人の身体が春の空に揺れている。小刻みな動きに一回り大きく見える手が真っ青な空にいくつもの輪郭を描く。春の空の下で、変わり続けるものと変わらずあり続けるものを想った。


★編集後記

 最近、自宅にこもって一人で仕事をしているせいか、逆に人との「縁」を強く感じます。不思議とつながる人とそうでない人がいる。人間関係というのは、つながるかつながらないか、感じるか感じないか。生きていると様々な困難、トラブルもあるとありますが、結局のところ、自我を超えた共感の領域がある相手ならだいたい何とかなるのではないでしょうか。

 MUGAも来月で10号。基盤は作ってきたつもりなので、そろそろ新たな展開を試みたいと思っています。読者の皆様と交流できる場があると面白いかもしれませんね。(那智)


目次

MUGA 第10

「私」ではなく「世界=無我」からの表現を発信する

 

無我表現研究会発行 月刊メルマガ

 

◆目次

 

◇アート

 

・詩

『例外者たちの詩』  那智タケシ

 

『季節の詩』     rita

 

◇インタビュー

 

「土も人間も健康にする内城菌の力」 

瀧 芳人(ヤマイチシステムプロデュース代表)

 

◇評論

 

・評論

AKB48仲谷明香『非選抜アイドル』にみる無我表現

       高橋ヒロヤス

 

◇エッセイ

 

アラスカ便り―北の果てに暮らす日々― 

「『父』との思い出」  長岡マチカ


『例外者たちの詩』  那智タケシ

★詩

 

例外者たちの詩     那智タケシ

 

 

緑の翼

 

 

五月の昼下がり

 

民家の側を歩いていると

 

緑の葉が落ちてきた

 

今、目の前で

 

若々しく、粘っこい

 

厚みのある大きな葉が

 

自然の摂理に逆らうようにポトリと落ちてきた

 

それは手に触れえぬものからの合図

 

偶然に見せかけた必然の着地点

 

世界は、意味に満ち満ちていて

 

目に見えぬものたちは微笑みかけ

 

ささやきかけ

 

悪戯に精を出していた

 

音楽は鳴り響き

 

風の精たちは

 

もぞもぞと堪え切れぬようにダンスを舞い

 

空気とぶつかり合い

 

恥ずかしそうに

 

押し合いへし合い

 

笑いながら前に進んできて

 

上っ滑りなくらいに調子に乗って

 

何かの拍子で

 

ぽとりと葉を落としたのだ

 

緑色の葉

 

緑色の翼

 

ぼくらはここにいるよ、という過剰な徴(しるし)


『季節の詩』     rita

季節の詩     rita 

 

【・菫・】

 

菫よ

わたしたち人間と

太陽のもとに呼吸をしている 同胞よ

 

山に憩い 野に遊び

身近な日常にも姿を見せる 青い妖精よ

 

広がる景色はコミュ二ティのように生き生きとし

消えゆく姿は文明の凋落に似て

 

やりきれぬ思いを抱かせる 小さき人よ

 

 

【・木蓮・】

 

季節はぼくの街にも廻ってきて

紫の扉をノックするよ

 

あくびをして

背伸びをして

目を覚ます木蓮は

 

ティーカップの巨大な容貌

 

絶え間ない往来のさざめきが渦をまく

目の回りそうな21世紀に

 

街かどでお茶をすすめるよ

 

木蓮が生まれた頃の

太古の昔では

恐竜たちのたくさん集まる

カッフェになっていたのかな

 

太陽の日差しをいっぱい注いで

一服ふるまっていたんだよ

 

アスファルトに眺める

僕の血の中を

疾走していく太い尻尾や

足跡や振動が

1億年を引き寄せる

 

脈絡が今を躍動

生命が過去と共鳴

 

せっかちな現代を

いらいらしてる僕を

紫のプリミティヴな花は呼び止める

 

現在も過去も

太陽の速度は変わらないみたい

繁栄も絶滅も

地球の公転には影響しないみたい

 

ゆるりとしてね

 

 

【・桜・】

 

満開の桜

弾力のある肉厚な房に

花びら一枚一枚の

なんと頼もしく

生きることの使命感に溢れているかな

 

桜の心が腕を広げ

人々を抱擁する

 

躰を捻く苦悩の果てに

今年も咲かせる

あらゆるものへの愛情を

太陽の旋律の上に謳歌して

 

ぼくは永遠の

防弾チョッキを身に付けたみたい

 

どんな強い言葉にも

どんな早い時代にも

撃たれることがあろうとも

倒れることはないと思うよ

確かな自分になれたよう

 

これからずっと

今日の満開の桜が

ぼくの胸を体を

守ってくれることを信じているの

 

 

【・蜂と桜・】

 

蜂がぶんぶん集まって

大変繁盛しているあの店は何ですか

 

最近、開いた桜の木です

 

蜂にとっては 営みの全てがここに揃う

命が弾む デパートでも申しましょうか

花の散るまで徹夜をしても

遊びきれぬ リゾートとも申しましょうか

 

さあ我の帰りを待ちわびている家族のところへ

甘い密に未来を届けよう

どんどん大きくなっていく子どもたちへ

 

甘い密に夢は膨らもう

 

さて、ここのお代はいかがしましょうか

 

すでに相殺なさってますよ

こちらにお越し下さるだけで

弊社との取引はおおかた成立です

 

あなたがちょいと隣の店に立ち寄れば

流通のお仕事しています

 

 

【・タンポポ・】

 

夜明け前の暗い空のような土の上に

春の認証のスタンプが押された

タンポポの黄色のなんとうれしいこと

 

今は青々とした草を海原のように

いく艘もの舟の大小浮かんでいる

タンポポが高く低く楽しく遊んでいること

 

風に撫でられ気持ちよく

伸びる伸びる首すじの

そのてっぺんに身ごもりて

風来坊のそやつに託してしまった

生まれたての子のなんと軽きこと

 



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