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【本編】介護とは……人は一人では生活していけないことを教えてくれるもの。

  年が明けてからだった。要介護1のお客様の一人が自宅での生活から施設での生活になることが決まったのです。僕は事前にケアマネジャーに一部始終を聴くことになりました。そして、そのお客様の利用日です。お客様は僕のところに来て話し始めるのです。
「あなたともお別れになるのよ」
  お客様の表情は曇っています。恋愛感情はもちろんありませんが、今まで当たり前に決まった曜日になったら利用していたお客様です。デイサービスでの利用状況を見ていても、耳が聴こえなくて、声掛けしたことと全然違うことをすることはあっても、職員の目から見て在宅生活ができないほどではないと思っていました。思い込んでいました。
  違ったのです。僕たちがデイサービスでの7時間10分を見て勝手に判断していただけだったのです。
  お客様は自分でできる部分はもちろんありますが、うっかり鍋を焦がしたり、転んでしまったり、薬を飲み忘れたり、などできないことが多かったのです。できないと生活上困ることが多かったのです。
  そんなとき、家族の援助があれば……そう思った時、そのお客様の家族は仕事で忙しくて、お客様の援助をするのが難しかったのです。
  以前から申し込んでいた 空きができ、お客様は涙ながらもデイサービスの利用を終了しました。
「今までお世話になりました」
  その言葉と共に住み慣れた自宅ともお別れしたのです。

【考察】介護とは……人は一人では生活していけないことを教えてくれるもの。

  高齢になると心身の機能が低下してきます。これは自然の摂理なのだと感じます。時に物忘れ、時に足腰の弱さ。老いは何かしら低下していく自分を受け入れる時期なのだと僕たち介護者に教えてくれるのです。人生を通して教えてくれるのです。
  高齢だから一人暮らしは難しい?  そうなのか?  本当は、僕たちは一人で生きてきたつもりになっていただけかもしれない。そもそも一人だけで生きていける人なんていないのだろう。若くても忘れ物の一つや二つは当たり前にある。先日僕はお弁当を持って行こうと家族に宣言しながらも忘れてしまった。そんなものです。家族や周りの人と支え合いながら生きていくのです。

この本の内容は以上です。


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