ルギは、二本の剣を構えてダッシュした。
蜘蛛はそれに気づき、長い足をワサワサと動かしながら、真正面から来たルギに突進して行く。
(ひぃぃ~)
ラシェルは、その動きの気味の悪さに心の中で悲鳴を上げながら、蜘蛛の背後に、そおっと周りこんだ。
ルギは、蜘蛛の釜のような前足の攻撃を避けながら、少しづつ打撃を与えて行く。
その度に、蜘蛛の足や身体から、どす黒い血が飛び散った。
ブラッドスパイダーの、前足の2本が、鎖鎌のように鋭く湾曲していた。
ルギに向かって、両方の鎌を振り下ろした瞬間。
ガキィィィィィィン!
と、鋭い金属がぶつかる音が響き渡る。
ルギが頭上で交差した双剣で鎌を受け止め、気合を込めて、その鎌を打ち払う。
「ハッ!!」
気合で押し返したルギは、よろける蜘蛛の頭上に高く飛び上がり、背中めがけて双剣の猛打を浴びせた。
しかし、蜘蛛も長い脚を器用に動かし、すばやく追撃を避ける。
(…す…すごい)
見ていたラシェルは、思わず感嘆の息を飲んだ。
二本の剣を持って、素早い動きで蜘蛛をかわしながら、まるで舞う様に攻撃を入れる。
非常時だというのに、ルギの戦術は、見ていてとても綺麗だった。
ルギが頭上で二本の剣を交差させて、気合いを込める。
「ハアッッ!!!」
すぐさま、双剣の乱舞が始まった。
まるで舞踏のように、ルギの双剣の軌跡が弧を描きながら、宙に紋様を描く。
ガンガン、ガンガンと、蜘蛛の脚や胴を剣が打ち抜き、赤黒い血飛沫を上げながら、蜘蛛がどんどん後ずさる。
―――しかし、そこには。
後ろに回り込んでいた、ラシェルがいた。
蜘蛛はそれに気づき、長い足をワサワサと動かしながら、真正面から来たルギに突進して行く。
(ひぃぃ~)
ラシェルは、その動きの気味の悪さに心の中で悲鳴を上げながら、蜘蛛の背後に、そおっと周りこんだ。
ルギは、蜘蛛の釜のような前足の攻撃を避けながら、少しづつ打撃を与えて行く。
その度に、蜘蛛の足や身体から、どす黒い血が飛び散った。
ブラッドスパイダーの、前足の2本が、鎖鎌のように鋭く湾曲していた。
ルギに向かって、両方の鎌を振り下ろした瞬間。
ガキィィィィィィン!
と、鋭い金属がぶつかる音が響き渡る。
ルギが頭上で交差した双剣で鎌を受け止め、気合を込めて、その鎌を打ち払う。
「ハッ!!」
気合で押し返したルギは、よろける蜘蛛の頭上に高く飛び上がり、背中めがけて双剣の猛打を浴びせた。
しかし、蜘蛛も長い脚を器用に動かし、すばやく追撃を避ける。
(…す…すごい)
見ていたラシェルは、思わず感嘆の息を飲んだ。
二本の剣を持って、素早い動きで蜘蛛をかわしながら、まるで舞う様に攻撃を入れる。
非常時だというのに、ルギの戦術は、見ていてとても綺麗だった。
ルギが頭上で二本の剣を交差させて、気合いを込める。
「ハアッッ!!!」
すぐさま、双剣の乱舞が始まった。
まるで舞踏のように、ルギの双剣の軌跡が弧を描きながら、宙に紋様を描く。
ガンガン、ガンガンと、蜘蛛の脚や胴を剣が打ち抜き、赤黒い血飛沫を上げながら、蜘蛛がどんどん後ずさる。
―――しかし、そこには。
後ろに回り込んでいた、ラシェルがいた。
ルギの猛攻を受け、すごいスピードで下がってくる蜘蛛を避けきれず、ラシェルは声を上げた。
「きゃっ!」
「ラシェル!」
悲鳴に気づき、ルギが打撃を止める。
その瞬間、蜘蛛が再びルギに向かって突進し、長い二本の鎌状の前脚で、ルギを締め上げた。
「しまった…!」
蜘蛛の鎌はそのままルギを締め付け、頭上へ掲げた。
日本の脚は、革鎧の上から、ギリギリとルギの肺を圧迫した。
「うっ…」
苦しみながらも、まだ手にある剣で、蜘蛛の頭部を狙う。
左腕を振り上げた瞬間――
その左腕に、蜘蛛が鋭い牙を突き立てた!
「ぐあっ!」
皮鎧の上からザックリと深く刺さった蜘蛛の牙は、腕の奥深くまで到達し、ジュウジュウと嫌な音をたてて吸血を始める。
ガッチリと喰わえられた顎に、ルギの腕の骨が、ミシミシと悲鳴を上げるのが聞こえた。
「……………っっ!」
苦痛に思わず目をつぶり、左腕の剣が、ガシャンと地面へ落下した。
「ルギ!」
大変だと思い、ラシェルは、吸血に夢中で動きが止まっている蜘蛛の後ろ脚に、小剣を刺した。
「えい、えい!」
殆どが固い甲羅で弾き返されるが、運よく、関節部分に深く刺さり、蜘蛛がバランスを崩す。
ルギは、そのチャンスを見逃さなかった。
一瞬牙が緩んだ瞬間、無理矢理に蜘蛛の顎から腕を引き抜き、残った右腕の剣に力を込める。
「ヤァーーッッッ!!!!」
と、気合いとともに、頭部の接続部分に剣を突き入れ、剣を捩りこんで、頭部を切り裂いた。
部屋の中を、赤黒の鮮血を迸らせながら、蜘蛛の頭が宙に飛んだ。
―途端、蜘蛛が、八本の肢をばたつかせながら暴れ始める。
胴を締め付けていた鎌が緩んだルギは、急いで落ちていた剣を拾うと、ラシェルを右腕で抱き抱え、通路へ走った。
「きゃっ!」
「ラシェル!」
悲鳴に気づき、ルギが打撃を止める。
その瞬間、蜘蛛が再びルギに向かって突進し、長い二本の鎌状の前脚で、ルギを締め上げた。
「しまった…!」
蜘蛛の鎌はそのままルギを締め付け、頭上へ掲げた。
日本の脚は、革鎧の上から、ギリギリとルギの肺を圧迫した。
「うっ…」
苦しみながらも、まだ手にある剣で、蜘蛛の頭部を狙う。
左腕を振り上げた瞬間――
その左腕に、蜘蛛が鋭い牙を突き立てた!
「ぐあっ!」
皮鎧の上からザックリと深く刺さった蜘蛛の牙は、腕の奥深くまで到達し、ジュウジュウと嫌な音をたてて吸血を始める。
ガッチリと喰わえられた顎に、ルギの腕の骨が、ミシミシと悲鳴を上げるのが聞こえた。
「……………っっ!」
苦痛に思わず目をつぶり、左腕の剣が、ガシャンと地面へ落下した。
「ルギ!」
大変だと思い、ラシェルは、吸血に夢中で動きが止まっている蜘蛛の後ろ脚に、小剣を刺した。
「えい、えい!」
殆どが固い甲羅で弾き返されるが、運よく、関節部分に深く刺さり、蜘蛛がバランスを崩す。
ルギは、そのチャンスを見逃さなかった。
一瞬牙が緩んだ瞬間、無理矢理に蜘蛛の顎から腕を引き抜き、残った右腕の剣に力を込める。
「ヤァーーッッッ!!!!」
と、気合いとともに、頭部の接続部分に剣を突き入れ、剣を捩りこんで、頭部を切り裂いた。
部屋の中を、赤黒の鮮血を迸らせながら、蜘蛛の頭が宙に飛んだ。
―途端、蜘蛛が、八本の肢をばたつかせながら暴れ始める。
胴を締め付けていた鎌が緩んだルギは、急いで落ちていた剣を拾うと、ラシェルを右腕で抱き抱え、通路へ走った。
息を切らせながら通路に座り込み、ハアハアと呼吸を整えながら、広間を振り返る。
頭部を失った蜘蛛は、縦横無尽に暴れまくっていた。
柱や壁、財宝にぶつかる度に、轟音と埃と苔が舞い上がり、砕けた宝石が、キラキラと飛び散った。
「…どうなったの?」
ラシェルが、青い顔でルギに聞く。
ルギは、肩で荒い息をしながら答えた。
「…頭部を切断したから、じきに死ぬだろう。…しかし、虫の生命力は凄いな…」
そう言ったルギの顔が、苦痛に歪んだ。
ラシェルが視線を落とすと、左腕上腕部がいびつにへこみ、肩から下が血まみれだった。
「た、大変!」
慌てて自分の救急道具を取り出し、腕の血を拭く。
しかし、出血がなかなかおさまらずに焦ってしまう。
その様子を見たルギは、ラシェルに静かに言った。
「…大丈夫だ、自分でやる…」
そういうと、ルギは腰から幅のある長い布を取り出し、左腕肩付近に巻き付けると、右腕と口を使って布を縛り上げた。
「…止血すれば、そのうち血は…止まるはずだ…。…くっ…」
そう言っても、痛みに顔を顰める。
ラシェルはそのままにしておけず、汚れた腕を拭いて、傷口を手当してくれた。
「…あんたに手当して貰うのは、二度目だな…」
「私…、治癒術がまだあまり上手くできないのだけれど…。しないよりマシだと思う」
そういって、ラシェルはルギの腕に手をかざし、呪文を唱え始めた。
多分ヒビが入ったであろう左腕に、添え木を当てて、丁寧に包帯を巻く。
ギュッと包帯を縛ったときに、ルギが顔をしかめる。
ラシェルは、顔を上げた。
「大丈夫?」
「…ああ…」
そう言った後、小さくルギが呟く。
「…ありがとう」
「パートナーだから、当然だよ」
「いや…手当のことじゃない」
ルギは目をふせた。
頭部を失った蜘蛛は、縦横無尽に暴れまくっていた。
柱や壁、財宝にぶつかる度に、轟音と埃と苔が舞い上がり、砕けた宝石が、キラキラと飛び散った。
「…どうなったの?」
ラシェルが、青い顔でルギに聞く。
ルギは、肩で荒い息をしながら答えた。
「…頭部を切断したから、じきに死ぬだろう。…しかし、虫の生命力は凄いな…」
そう言ったルギの顔が、苦痛に歪んだ。
ラシェルが視線を落とすと、左腕上腕部がいびつにへこみ、肩から下が血まみれだった。
「た、大変!」
慌てて自分の救急道具を取り出し、腕の血を拭く。
しかし、出血がなかなかおさまらずに焦ってしまう。
その様子を見たルギは、ラシェルに静かに言った。
「…大丈夫だ、自分でやる…」
そういうと、ルギは腰から幅のある長い布を取り出し、左腕肩付近に巻き付けると、右腕と口を使って布を縛り上げた。
「…止血すれば、そのうち血は…止まるはずだ…。…くっ…」
そう言っても、痛みに顔を顰める。
ラシェルはそのままにしておけず、汚れた腕を拭いて、傷口を手当してくれた。
「…あんたに手当して貰うのは、二度目だな…」
「私…、治癒術がまだあまり上手くできないのだけれど…。しないよりマシだと思う」
そういって、ラシェルはルギの腕に手をかざし、呪文を唱え始めた。
多分ヒビが入ったであろう左腕に、添え木を当てて、丁寧に包帯を巻く。
ギュッと包帯を縛ったときに、ルギが顔をしかめる。
ラシェルは、顔を上げた。
「大丈夫?」
「…ああ…」
そう言った後、小さくルギが呟く。
「…ありがとう」
「パートナーだから、当然だよ」
「いや…手当のことじゃない」
ルギは目をふせた。
「あんた、蜘蛛が怖そうだったのに、俺のこと助けてくれたろ? …感謝してる」
「だって、あれは…」
ラシェルは、無我夢中で、怖さなんか忘れていた。
とにかく、なんとかしなきゃ、と言う思いでいっぱいだった。
「…それに、俺があんたを守らなきゃいけなかったのに、蜘蛛の動きを読めずに危険にさらしてしまって…すまない」
「そんなの関係ないよ! だって私も、蜘蛛のこと避けきれなかったのが悪いんだし…」
ラシェルは、最初にルギの言うことをきいて一人で逃げていれば、もしかしたらルギが怪我をしなくて済んだかもしれない、と思うと、チクリと胸が痛かった。
「…まあ、お互い、なんとか無事に調査がすんでよかったな。…ほら、出口も出来たようだ」
ルギが指さした方向を見ると、蜘蛛の、最後の命の灯火が消える頃だった。
壁や柱に、縦横無尽に体当たりを続けていたが、最後にぶつかった柱が倒れ、通路奥の土砂と共に、蜘蛛は柱の下に崩れ落ちた。
その向こうには、光のさす出口が見えていた―――
「だって、あれは…」
ラシェルは、無我夢中で、怖さなんか忘れていた。
とにかく、なんとかしなきゃ、と言う思いでいっぱいだった。
「…それに、俺があんたを守らなきゃいけなかったのに、蜘蛛の動きを読めずに危険にさらしてしまって…すまない」
「そんなの関係ないよ! だって私も、蜘蛛のこと避けきれなかったのが悪いんだし…」
ラシェルは、最初にルギの言うことをきいて一人で逃げていれば、もしかしたらルギが怪我をしなくて済んだかもしれない、と思うと、チクリと胸が痛かった。
「…まあ、お互い、なんとか無事に調査がすんでよかったな。…ほら、出口も出来たようだ」
ルギが指さした方向を見ると、蜘蛛の、最後の命の灯火が消える頃だった。
壁や柱に、縦横無尽に体当たりを続けていたが、最後にぶつかった柱が倒れ、通路奥の土砂と共に、蜘蛛は柱の下に崩れ落ちた。
その向こうには、光のさす出口が見えていた―――
―――その日の夜は、大宴会だった。
ルギとラシェルが見つけた財宝で、しばらくは、黒烏団の財源が潤うということで、アジト中が活気づいた。
いつもなら、節約節約と煩いルークだったが、今日だけは、どんな贅沢も許可してくれた。
それに便乗し、ダインやシーマは、浴びるように酒を飲んでいた。
ルギは、アジトに帰ってから、もう一度左腕をラシェルに治してもらい、細かい傷やふさがらなかった部分は、包帯を巻いておいた。
宴会の最中、疲れたから、と先にルギは退席した。
宴会が終わり、ルークに褒められたので、ラシェルが良い気分で部屋にもどって、しばらくしたころ。
コン、コンと扉を叩く音がした。
「はーい」
楽しい時間の余韻に浸り、ベッドに突っ伏してゴロゴロしてたラシェルは、少しだけドアを開けた。
「あ…」
そこにいたのは、先に寝たはずのルギだった。
「…今日はお疲れ」
ルギがいう。
「…お疲れ様」
ほろ酔いのラシェルは、少し上目遣いでルギを見た。
先に休む、といっていて、今頃部屋を訪れて来られて、せっかくの余韻が少し冷めてしまった。
「どうしたの?」
ルギは、唐突にポケットに手を入れ、小さな箱をラシェルに差し出した。
無地の包装紙で包まれただけの、手の平にちょこんと乗る四角い箱。
ルギとラシェルが見つけた財宝で、しばらくは、黒烏団の財源が潤うということで、アジト中が活気づいた。
いつもなら、節約節約と煩いルークだったが、今日だけは、どんな贅沢も許可してくれた。
それに便乗し、ダインやシーマは、浴びるように酒を飲んでいた。
ルギは、アジトに帰ってから、もう一度左腕をラシェルに治してもらい、細かい傷やふさがらなかった部分は、包帯を巻いておいた。
宴会の最中、疲れたから、と先にルギは退席した。
宴会が終わり、ルークに褒められたので、ラシェルが良い気分で部屋にもどって、しばらくしたころ。
コン、コンと扉を叩く音がした。
「はーい」
楽しい時間の余韻に浸り、ベッドに突っ伏してゴロゴロしてたラシェルは、少しだけドアを開けた。
「あ…」
そこにいたのは、先に寝たはずのルギだった。
「…今日はお疲れ」
ルギがいう。
「…お疲れ様」
ほろ酔いのラシェルは、少し上目遣いでルギを見た。
先に休む、といっていて、今頃部屋を訪れて来られて、せっかくの余韻が少し冷めてしまった。
「どうしたの?」
ルギは、唐突にポケットに手を入れ、小さな箱をラシェルに差し出した。
無地の包装紙で包まれただけの、手の平にちょこんと乗る四角い箱。