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数分後―
二人は、さらに遺跡の奥へと向かっていた。
地下にある遺跡は石壁でしっかり出来ていて、何処かに空気穴もあるのか、息苦しさはなかった。

通路や小部屋が多かったが、遺跡内でこれといった発見はなかった。

「古代人の作った遺跡は、直線的な建築様式が多いから、地図製作は楽だな」

ルギがボソッと言う。

「どういうこと?」

思わず、ラシェルが問いかけた。

「間取りが規則的だから、地図が書きやすいだろう? これが、自然の洞窟を利用している遺跡だと、訳がわからなくなる」
「なるほどねー」
「しかし…罠ばかりだな。宝もないのに」

後ほど、盗賊団が訓練にくるとしても、ほぼ全ての罠をルギが解除しているので、再び誰かが入ってきても、作動しない罠が多い。
ルークは、ここを訓練場に使用するといっていたが、果たして罠解除の訓練に使えるのか疑問だった。
まぁ、罠のある場所すべてに目印を付けたので、あとで当事者が、嫌らしい罠を再度設置するんだろうが…

遺跡に入ってから数時間程経過した頃。
ラシェルの書いた地図を見ていたルギが、だいたいの位置を把握した。

そしてルギはずんずんと進み―しばらく長い通路を進んだあと、急に天井が高くなり、かなり広い空間へ出た。

「わぁ…」

と、思わずラシェルが声を上げそうになり、慌ててルギが大きな手で口を塞いだ。
ラシェルが声を上げた理由、それは―

土砂崩れの地盤変動のせいで、高い広間の天井が崩れ、地下だというのに、地上からの光が斜めに部屋を照らしていた。
その部屋は、崩れかけた石壁と柱が、数メートルも天に向かってそびえ立ち、それぞれに、緑豊かな蔦が幾層にも重なって緑が生い茂っていた。
地面にも、苔と共に、湿地に生息する植物や胞子が生え、さながら地底の森の中のようだった。

天井を支える頑丈な巨大な柱には、規則正しく宝石が埋め込まれ、太陽の光を反射して、数多の星のように瞬いている。
そして、その広間の隅に、まばゆく輝く山のような財宝があり、柱の瞬きと、宝物で反射する光で、部屋の中が虹色のプリズムで満たされていた。

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最終更新日 : 2013-04-03 00:48:03

ルギは、ラシェルの口を塞いだまま、通路までズリズリと引きずると、ゆっくり座らせ、耳元で囁いた。

「……やばい敵がいる。手を離すから、静かに聞いてくれ」

ラシェルは黙って、ルギを見上げながら頷く。
ルギは、一つ深呼吸してから言った。

「…広間の奥に、ブラッドスパイダーという、巨大な蜘蛛がいる。あれは、古代人が人工的に作り出した、合成怪物だ…。かなり強いと…思う。で…」

ルギは、広間の奥を見ながら言った。

「遺跡の作り的に、真っ正面に、外に出れそうな通路が続いてると思ったんだが…、見た目には、土砂で埋まってるみたいだ。そこで…」

今度は、広間の右にある、巨大な倒れかけの柱を指さした。

「俺が、敵を引き付けてる間に、あんたはあの柱を登って、天井の隙間から脱出してくれ」

ラシェルは、一瞬キョトンとなった。

「…一緒に出ればいいんじゃない?」
「…俺には、あの隙間は無理だな…」

確かに天井には、細かい隙間が無数に開いていたが、どれもこれも幅が小さいため、ルギが通るのは無理そうだった。

「あんたは、壁登りは得意だろ? 蜘蛛は石壁や柱は上れないから、先にでて、ルークに作成した地図を渡して、報告して欲しい。」
「ルギは?」
「…俺は、あいつを倒しておくから…」


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最終更新日 : 2013-04-03 00:02:39


そうルギに言われ、ラシェルは悟った。
ルギが囮になる間に、逃げろと言われているのだと。

ラシェルは、顔を青くして言った。

「…じゃあさ、どちらかが囮になってる間に、もう一人が攻撃したら…?」

しかし、ルギは首を横に振る。

「…正直言うけど、あんたじゃ、囮も攻撃も無理だ。…見たところ、戦闘経験だって殆どないんだろう? 死にたくないなら、あんたは怪物には手を出さない方がいい」
「でっ… でもっ…!」

ひどく焦りながら、他にいい方法がないか一生懸命考えるラシェルを見て、ルギはつい、口元をほころばせた。

(あ…)

ラシェルは、ルギの笑顔を久しぶりに見た。
ルギ自身が、妹の死以降、笑ったのは2回目―ラシェルの前でだけだった。
そうは言われても―、ラシェルは、不安げに、おろおろとルギの顔を見上げる。

一つ息を吐いたあと、ルギは、ラシェルを真っ直ぐ見て言った。

「じゃあ… 俺が戦ってる間、あんたは蜘蛛の背後から攻撃してくれ。 俺が、危なくなった時… その時は、助けを呼びに行ってくれるか?」
「う、うん!」

ラシェルは、何もしないで、一人で逃げるよりはいいと思った。
その嬉しそうな笑顔に、ルギはドキッとした。

久しぶりに、彼女の笑顔を間近で見れたことが、嬉しかった。

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最終更新日 : 2013-04-03 00:02:58

思わず、ラシェルに手を伸ばしたくなる衝動にかられて、ルギはグッと、自分の手を抑える。

「どうしたの?」
「いや…なんでもない」

ラシェルに言われ、慌てて目を逸らしながら、ルギは立ち上がる。
その視線の先に…

先程は、土砂のようにしか見えなかった大きな固まりが、垂直に立ち上がるのが見えた。

「~~~~~~っっっっっ!!!!」

ラシェルは叫びそうになり、慌てて自分の口を抑えながら後ずさる。

巨大な…赤紫の蜘蛛。
足がそれぞれ2m近くあり、毛がビッシリ生えた、固そうな甲羅で覆われていた。
身体はどす黒い赤で、1.5mほどはあるだろうか。
その先端に、遠慮がちについた頭部には、複数の緑色の目があり、口には巨大な牙が覗いていた。

「…大丈夫なの…?」
「多分、な……」

(…それに、アレを倒せないようでは、ネオスに勝てない…)

背中から、双剣を抜きながら、心の中で呟いた。
蜘蛛は、ゆっくりと脚を動かし、財宝の山のほうに向かう。
こちらに、調度背を向けた。

チラッとラシェルに視線を移し、ルギは言った。

「…準備はいいか?」
「うんっ」
「…いくぞ!」

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最終更新日 : 2013-04-03 00:06:39

ルギは、二本の剣を構えてダッシュした。
蜘蛛はそれに気づき、長い足をワサワサと動かしながら、真正面から来たルギに突進して行く。

(ひぃぃ~)

ラシェルは、その動きの気味の悪さに心の中で悲鳴を上げながら、蜘蛛の背後に、そおっと周りこんだ。

ルギは、蜘蛛の釜のような前足の攻撃を避けながら、少しづつ打撃を与えて行く。
その度に、蜘蛛の足や身体から、どす黒い血が飛び散った。

ブラッドスパイダーの、前足の2本が、鎖鎌のように鋭く湾曲していた。
ルギに向かって、両方の鎌を振り下ろした瞬間。

ガキィィィィィィン!

と、鋭い金属がぶつかる音が響き渡る。
ルギが頭上で交差した双剣で鎌を受け止め、気合を込めて、その鎌を打ち払う。

「ハッ!!」

気合で押し返したルギは、よろける蜘蛛の頭上に高く飛び上がり、背中めがけて双剣の猛打を浴びせた。
しかし、蜘蛛も長い脚を器用に動かし、すばやく追撃を避ける。

(…す…すごい)

見ていたラシェルは、思わず感嘆の息を飲んだ。
二本の剣を持って、素早い動きで蜘蛛をかわしながら、まるで舞う様に攻撃を入れる。
非常時だというのに、ルギの戦術は、見ていてとても綺麗だった。

ルギが頭上で二本の剣を交差させて、気合いを込める。

「ハアッッ!!!」

すぐさま、双剣の乱舞が始まった。
まるで舞踏のように、ルギの双剣の軌跡が弧を描きながら、宙に紋様を描く。
ガンガン、ガンガンと、蜘蛛の脚や胴を剣が打ち抜き、赤黒い血飛沫を上げながら、蜘蛛がどんどん後ずさる。

―――しかし、そこには。

後ろに回り込んでいた、ラシェルがいた。

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最終更新日 : 2013-04-03 00:16:04


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