閉じる


<<最初から読む

40 / 50ページ

12月26日

 何か、アイツ・・・変な事言いだしやがったんだ。何?
 
あんたのことしってる
 
だの
 
ぜんぶおもいだした
 
だの。極めつけは、『おねがいころさないで』・・・バカヤローが。今までの、な?こんな事俺だって言いたかねーけどよ。今まで俺がさんざん面倒見てやった、その“恩”を忘れてよくそんな事が言えるよな!
 
 ──── お前・・・あのままだったら、おっ死んじまってたんだぜ?

12月27日

 「一緒に暮らすって言ったよな」

いやだ

「ドライブ、行ったじゃん」

しらないわからない

・・・この女(アマ)、昔のキラキラした目をしてなかったんだ。今となっちゃ、身も心もアイツに支配されちまったみてえだ。腐りきった、カネと欲にまみれた薄汚い世界にどっぷり浸かっちまったアイツ

 ──── 鳴瀬めぐみ、にな。

12月28日

 めぐみを連れてくるのは、さすがに骨が折れたよ。何たって超売れっ子のアイドルだからね。でも、『関係者』になっちまえば簡単だった。ホントに偶然、俺の前のバイト先の本屋で『握手&サイン会』をやるって話が。この時ばかりは、神様も俺が正しいって。味方してくれたんだ!・・・ホント、そう思ったよ。
 
 裏に車を停めて、『失礼しまーす』楽屋として使ってた事務所に潜入成功。人ひとりスッポリ収まるくらいデッカイ木箱を台車に載せて。
 
「・・・どうも」

「・・・えっ、俺の事覚えてない?」
 
その時にひと言、俺の名前を言ってくれりゃあ・・・こんな事思いとどまったかもしれないな。首、傾げやがるから・・・注射して、木箱に放り込んで(笑)。マネージャーがトイレに行ってくれてて助かったよ。
 
「アレッ、めぐみ・・・どっか行ってるんですか」

「さあ・・・僕が来た時にはいらっしゃいませんでしたけど」
 
 ──── フザけんな、アイツを呼び捨てにしていいのは俺だけだ。

12月29日

 だから、今までの“さわやかな馴れ初め”なんてのはぜーんぶウソ!めぐみをこんな体にしたのも、何もかんも俺!

言ったろ?・・・自分が蒔いた種だって。

それでも、この楽しかった時間もそろそろ終わりが近づいてきたみたい。『クスリ』が切れてきちまったらしくて、俺がバイトから帰って来た時さ?

何かうめき声みたいの出しながら、這いずり回って・・・

「まだ戻りたいの?」

ココから逃げようとしてたんだ。近づく俺に痩せ細った腕で、そこらの物を投げつけてくる。肩に手をかけて無理やり抱きついてやったら(笑)、必死になってもがいてた。今の俺を見ても、まだ怖いのか?まだ、信じてくれないのか?

 ──── お前が、俺の知ってる鳴瀬めぐみなら・・・絶対に殺さないのに。

12月30日

 今朝は包丁の冷たさで目が覚めた。何重にも丁寧にくくってある足で台所に行って、何重にも丁寧にくくってある両手で器用に包丁を持って・・・

俺を刺そうとしたんだな。

ま、メシも食おうとしない今のコイツの体力じゃ・・・蟻だって殺せないだろうけど、さすがに血は出てたよ。

「痛いよ・・・俺が悪かったよめぐみ・・・でも、こうするしかなかったんだ」

あのまま、あんな場所にいたら・・・絶対お前は過密スケジュールで“合法的に”殺される。俺はお前がテレビで見せた陰鬱な顔を知ってるんだよ。それがお前の本心だって分かってるから

「“鳥かご”を開けてやっただけじゃないか」

体を起こした俺の中に、めぐみは震えながら顔をうずめるようにもたれてきた。誘ったのは俺だけど、もう抵抗はしなかったんだ。中からじゃ、窓もドアも開かないこの部屋・・・観念したのかな。

 ──── いずれにせよ“泣き落とし”は上手くいったな。


読者登録

紫峯蓮舞さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について