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11月13日

 しっかし、鳴瀬の人気はスゲーな・・・。本人がいねえのに、ストラップとか写真集がバカ売れなんだって。しかもさらにレアなのが・・・

コールド・トイズ社製の、超リアルな6分の1フィギュア

ますます鳴瀬が哀れだった。ただでさえ“事務所の金儲けの道具”・・・商品と同じ扱いを受けながら、本当に『商品化』されちまったんだから。

 ──── ああ、“いない”から“売れる”んだ。逆に。

11月26日

 今日バイトから帰ったら、彼女がこんな事言ってた。

わたしはだれ

って。名前も・・・やっぱり自分の歳も分からないんだと。

「だから、俺が助けてあげたんじゃないか」

何も心配するな。今が楽しかったら、それでいいんじゃないの。俺は一生お前を守っていくよ。

「・・・大丈夫、信じててくれよ」

頭を撫でたら泣き出した。

 ──── コレって、嬉し涙・・・だよな?

12月3日

 あの日から、ずっと彼女がどことなく暗い感じがする。いつも同じ無表情なのに元気がないように見えてしまう。何ていうか・・・明らかに今までとは様子が違うんだよ!俺だって、モヤモヤした気持ちが取れなくて、理由もなく焦ってる。

余計な事、考えんなよ!名前くらい忘れたってどうって事ないだろ!?・・・そんなの、お前が決めたわけじゃないんだし。

 ──── お前のアイデンティティーは、お前自身なんだから。

12月4日

 俺が焦ってたって仕方ないんだ。だから、昨日ここに書いた言葉を彼女に伝えてみた。でも、画面には何も映らない。何も打とうとはしなかった。

俺には一言もないんだと!

「なんで黙ってるんだよ・・・何とか言えよ」

俺には責める気なんてなかった。・・・ひょっとして、彼女は怯えてるのか?

「頼むよ・・・俺だって必死なんだよ!!」

口の利けないお前のココロを知るのに。お前の本当の幸せを見つけるのに。

 ──── お前を、取り戻したいから。

12月7日

 今度は、俺のほうがおかしくなっちまいそうだ。毎日毎日、まるで人形(フィギュア)に向かって話してるみたいな気分だ。せっかくパソコンで会話できるようになったって

“声”

が聞こえなきゃ同じだろ?ますます彼女の目からは生気が感じられなくなっていた。こんなんじゃ・・・どうすりゃいい?コイツにとって、このまま生きていくとしたら

何が希望なんだ。

俺の自業自得だって事は分かってる。分かってるけど

 ──── やっぱり俺のやった事は、間違いだったのか?


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