閉じる


<<最初から読む

30 / 50ページ

11月4日

 今までは、俺にとっちゃどーでもいい日だった。だいたい誕生日なんてのは、この世に生を受けたその一日だけに意味があるんじゃないか?歳が幾つかなんて、関係ない。

ガキでもしっかりしたヤツはいるし、歳食ってるだけのバカもいるじゃん。

・・・ま、こんなフザけた事言ってるヤツばっかだったらケーキ屋が儲からねえか。

 でも、とりあえず今年は俺も貢献してやった。だって、彼女と一緒に食べたかったしケーキ。自分の誕生日にかこつけて?

「あ、お前・・・誕生日いつだっけ」

おぼえてない

 ──── そっか。じゃ、この際だからもう一緒にお祝いしちゃおう。

11月13日

 しっかし、鳴瀬の人気はスゲーな・・・。本人がいねえのに、ストラップとか写真集がバカ売れなんだって。しかもさらにレアなのが・・・

コールド・トイズ社製の、超リアルな6分の1フィギュア

ますます鳴瀬が哀れだった。ただでさえ“事務所の金儲けの道具”・・・商品と同じ扱いを受けながら、本当に『商品化』されちまったんだから。

 ──── ああ、“いない”から“売れる”んだ。逆に。

11月26日

 今日バイトから帰ったら、彼女がこんな事言ってた。

わたしはだれ

って。名前も・・・やっぱり自分の歳も分からないんだと。

「だから、俺が助けてあげたんじゃないか」

何も心配するな。今が楽しかったら、それでいいんじゃないの。俺は一生お前を守っていくよ。

「・・・大丈夫、信じててくれよ」

頭を撫でたら泣き出した。

 ──── コレって、嬉し涙・・・だよな?

12月3日

 あの日から、ずっと彼女がどことなく暗い感じがする。いつも同じ無表情なのに元気がないように見えてしまう。何ていうか・・・明らかに今までとは様子が違うんだよ!俺だって、モヤモヤした気持ちが取れなくて、理由もなく焦ってる。

余計な事、考えんなよ!名前くらい忘れたってどうって事ないだろ!?・・・そんなの、お前が決めたわけじゃないんだし。

 ──── お前のアイデンティティーは、お前自身なんだから。

12月4日

 俺が焦ってたって仕方ないんだ。だから、昨日ここに書いた言葉を彼女に伝えてみた。でも、画面には何も映らない。何も打とうとはしなかった。

俺には一言もないんだと!

「なんで黙ってるんだよ・・・何とか言えよ」

俺には責める気なんてなかった。・・・ひょっとして、彼女は怯えてるのか?

「頼むよ・・・俺だって必死なんだよ!!」

口の利けないお前のココロを知るのに。お前の本当の幸せを見つけるのに。

 ──── お前を、取り戻したいから。


読者登録

紫峯蓮舞さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について