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8月26日

 毎日毎日、バイトから帰っては画面を覗くのが習慣みたいになっていた。もうすぐ二週間になるけど、まだ何の成果もない。たまに何かあるとすれば

ののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののののの

・・・こんな風に、同じ一文字で埋め尽くされていたりとか。案の定ずっと『の』を押さえ込んでて。

8月31日

 ついに、この日が。画面に『言葉』が表示されていたんだ。
 
す ち た せ さ は ん い
 
明らかに少ない文字。床に投げ出された腕を見ると、前みたいに滑ったまま押さえ続けてたんじゃないらしい。初めての『意思表示』、
 
「何て書いたの」
 
って聞いても、“いつもみたく”知らんぷり。
 
 ──── ・・・お前らしいな。

9月13日

 今日は、いつもよりタバコが美味かった。何でかって・・・
 
アイツが『おかえり』って
 
『打ったんだろ!』『何か言えよ!』肩つかんでブンブン揺らして。俺・・・酔ってたんだ。でも、いつだって俺の、どんな気持ちも静寂に変えちまうコイツ見てると
 
涙が止まんなかった。俺の目の前には、その、腹立つくらい“すました顔”があった。だから・・・
 
なんで黙ってたんだよ?俺は、思い出させたくて・・・思い出したくて
 
 ──── 思いっきり、チューしてやった。

9月14日

 いやー、怖いね酒って。俺、何やってんだろ。昨日の日記見てビックリだよ。まあ、喜びのあまり、勢いに任せて・・・っていうか、流れでやっちまったって事で許してもらえるとありがたいんだけど。今は、画面の何げない言葉が全部怒ってるような気がして落ち着かなかった。かと言って、『昨日の事、怒ってる?』って聞く勇気もなし。

9月21日

 ちょっとした事でも、彼女との会話が成立するには1分かそこら掛かってしまう。でも、それが余計にいじらしく、愛おしく感じたり。ゆっくり、ゆっくり・・・一文字ずつ心の中身が言葉になって浮かび上がってくるのは、ただ音として消えていくより印象深い気がするんだよな。たとえそれが
 
きようはあめ
 
窓を流れる滴をぼんやり眺めながら感じた、他愛もない事だったとしても。


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