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第二章

しばらくして、先ほどルギの部屋にいた、千草色の髪の少女―ラシェル―が部屋をノックした。

「失礼します」

返事が無いので、仕方なくそのままドアを開けると、ルギが下着姿のまま、床にうつ伏せに倒れていた。

「きゃぁ!!」

慌てて、ラシェルは後ろを向いた。
そのとき、シーマが部屋に入ってきた。

「ラシェ、どうした?」
「あ、シーマさん。あの人…」

ラシェルは、床に転がったままのルギを指差す。
シーマは、困った顔で、ルギの身体を起こし、ベッドに持ち上げた。

「よいしょっと…」

そぉっと、ベッドにルギを寝かし、毛布をかけた。
ルギの身体は冷え切っていて、包帯にはところどころ、血がにじんでいた。

「ラシェ、頭領にこの人の治療頼まれたんだろ? 俺、変えの包帯持ってくるから、その間に治療しといて」
「はい、了解です」

そういって、シーマは部屋を出た。
早速ラシェは、信仰神に祈り、傷の治療-『ヒーリング』を始めた。


ラシェルが、大体の傷の治療を終えた頃、シーマが戻ってきた。
折れた足も、なんとか無事に治ったはず…。
精神的に疲労し、ふぅ、とラシェルはおでこの汗をぬぐう。

治療が終わったとはいえ、ルギの表情は苦しそうだった。
傷の痛みや、疲労がすべて癒えたわけではなかった。
まだ身体は火照り、額には大量の汗がにじんでいた。

シーマは、タオルを絞って顔や身体を拭き、汚れた包帯を取り替えた。
ラシェルは、じっとそれを見ていた。
そのとき、シーマがボソッとつぶやいた。

「頭領も、自分を倒しにきた奴を、助けることなんかないのにな…」
「えっ?」

一瞬、ラシェルは意味が理解できなかった。
そこで、シーマが一息ついて、ラシェルに向き直った。

「この男―ルギっていうらしいんだけど。頭領に恨みがあって、わざわざ、隣国のクランクレアから、山を越えて、頭領を倒しに来たんだってさ。だったら山の中に捨てておけばいいのに、頭領もなんの酔狂だか、拾って帰ってきちゃったんだ…。」

シーマは、首を横に振る。

「その上、傷を治せ、手当てしろだなんて、意味がわからないよね。まぁ、頭領なりに考えがあるんだろうけど」

そういって、再びため息をついた。


「まぁ、装備も何もかも取り上げてるし、今夜は体力が戻るまで大人しいと思うよ。ラシェも、治療お疲れ。部屋に戻って休んでいいよ」
「あ、うん、ありがとう」

そういって、シーマは部屋を出た。
ラシェルも、後に続こうとしたが、苦しんでいるルギを一度だけ振り返って見つめた。

(頭領を…倒しに来たの? ……何故?)

自分達のリーダーという、大事な頭領を狙う、敵の治療をしなきゃいけないなんて。
胸の奥で葛藤しながら、ラシェルは部屋を後にした。


最終更新日 : 2013-03-24 02:13:09