閉じる


試し読みできます

やまもといちろう 野球観戦日記 開幕版

まえがき



今日は、東日本大震災の事故後2年の記念日、昨日は、ワールドベースボールクラシックでオランダをコールドゲームで撃破した日だ。



いま私の脳内で震災か野球かを結びつける作業が進んでいる。いっそのこと、福島第一原発を地鎮祭ボールパークにできないだろうか。そう、祭事としての野球と震災と信仰の一体化である。三神合体だ。別に福島で人が死んだわけではない。地震と津波で死んだのである。しかし、福島の原発事故は、人々の安寧の暮らしと共に、その繁栄を奪い去ってしまった。安全神話なんてちゃちなものではない、日本人が日本社会を信じる根拠の一部がすっぽりと抜け落ちてしまったのだ。



であるならば、私たち野球ファンはこのあたりの耐性をもっとも持つ種族である。守護神が劇場を開催して胃が痛くなり、逆転されては神話は崩壊する。人に依拠した神話など単なる思考停止に過ぎない。そのことを一番良く知っているのは野球ファンなのではないか。



原子力発電所の爆発と救援投手の炎上を同一視するなという人もあるかもしれない。だが、私は敢えて言う、人が人を信じるということは、相応のリスクを預けていることも同様だということを。東京電力に電気のことを任せておけば安心とし、結果として原発の安全神話が生まれ、これに頼り切って悲惨な事故を招いた。ヤクルト古田政権は、遠藤政隆とか花田真人とか萩原淳とかシコースキーとか木田優夫とか田中充とか松井光介とか高津臣吾とか鎌田祐哉とか吉川昌宏とか酷い中継ぎ陣を擁して2007年には最下位に転落した。おい古田、お前ID野球の申し子とかじゃなかったのか。なんだその微妙な投手起用は。情実采配は。なぜ意味もなく真中が代打安打記録とか作ってるんだ。



おまけに正捕手は福川である。



このように、古田なら何とかしてくれるのではないかという強い期待が裏切られ、あのベイスの下に我らスワローズが居るという事態に直面しても、眉ひとつ動かさず神宮内野スタンドから大声で野次を飛ばす姿勢が求められているのだ。



すなわち、激動する社会、崩壊する価値観という局面の中で、もっともこれに耐えうる精神を心に宿している人々こそ野球ファンに他ならない。人生にとって、プロ野球は然程の生産性を持たない。しかし、持たないからこそ贔屓チームの挙動を客観的に観察し、分析し、予想を立て、裏切られては悲嘆に暮れて罵声を飛ばすのである。



私たちは忘れてはならない。毎日変わらず活動を続け、生産し、消費し、社会に対して貢献してこそ、福島は生き返るのだと。慈悲でもなく、哀れみでもない、日々の私たちの暮らしを真正面から生き、満喫することこそ、この試練の日本社会を乗り越える秘訣なのだ。



2013年3月11日 やまもといちろう


2
最終更新日 : 2013-03-27 22:58:15

試し読みできます

やまもといちろう 野球観戦日記 開幕版

本書は『やまもといちろうBLOG』(http://kirik.tea-nifty.com/)内に掲載された2011年11月~2012年までのプロ野球・MLB関連記事を元に加筆・再構成して電子書籍化しております。



ブログ内でニュース記事などを引用している場合は、『』で記事タイトル、その下に記事URLを記載しております。なお初版出版時(2013年3月時点)にリンク先の記事の存在が確認できなかったものはURLのみ記載しております。


3
最終更新日 : 2013-03-27 22:58:15

試し読みはここまでです。続きは購入後にお読みいただけます。

この本は有料です。閲覧するには購入する必要があります。
購入するにはしてください。
有料本の購入に関しては、こちらのマニュアルをご確認ください。
販売価格150円(税込)

読者登録

やまもと いちろうさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について