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「店をひらく」と「店をあける」の違いは?

 息子が東京で居酒屋をひらいたのでちょっと宣伝も兼ねて、今も東京でサラリーマンをしている昔の生徒にメールを入れた。すると早速うれしい返信メールが届いた。

「必ず息子さんのお店に行きます」である。でも最後に「先生の昔の授業を思い出しましたよ」と付け加えてあった。「うそー」、それは新米教師時代の思い出したくない授業であった。

中級レベルになると「火が消える」と「火を消す」の違いが分からなければならない。日本語教育では「自動詞」と「他動詞」として教えている。前にも述べたが、マッチを用意し火をつけて灰皿に入れる。自然に消えるのを待って「火が消える」と言わせる。そして次に火のついたマッチを手にずっと持って、「熱い」といって息で火を消し、何か目的がある場合に「火を消す」と教えるのである。

さて、その昔の授業とは・・・。マッチで教えた後、いくつか例文を示そうとして「ドアがあく」と「ドアをあける」を教えようとした。自分では「あく」と「あける」のつもりだったのだが、なぜか間違って似ている「ひらく」という動詞を使ってしまった。

ここで大変なことが・・・、こんな感じである。はい皆さん、「ドアがひらく」、これは自然な感じの自動詞ですよ、そして次は「ドアをひらく」・・・あれ?、「ひらく」の形が変わらない・・・。新米教師としては「ドアがあく」と「ドアをあける」を教えているつもりになっているので、変わるのが当然である。

でも「ドアがひらく」と「ドアをひらく」、これどうして変わらないのか・・・。焦ってしまった。声もだんだん小さくなって・・・。生徒からは「先生どうししたの?」の声も聞こえてきて、しどろもどろになってしまった。

この「ひらく」は特殊な動詞で自動詞と他動詞が同じ形なのである。こんなこと意識している日本人はいないであろうが、しかし日本語教師としては当然知らなければいけないことなのだが、教師として本当に情けない授業であった。「息子が店をひらいた」のメールから、彼はそんな昔の授業を思い出したのである。

そして表題の「店をひらく」と「店をあける」であるが、何となく違いは感じる。「店をひらく」は新しく店を作った感じで、「店をあける」は開店時間に店をあける感じがする。しかし「今朝はいつもより早く店をひらいた」といっても別に問題なさそうである。この違いは個人差や方言などとも関係しており、あまり細かいことにとらわれず、もっとおおらかに「心をあけて」ではなくて「心をひらいて」日本語を教えたいものである。先生の息子さんが「ひらいた」居酒屋に必ず行きますよ。

うれしいそしてちょこっと恥ずかしい彼からの返信メールであった。


居酒屋 型無(かたなし)
現在は、川崎の「型無夢荘」が本店


(2008年スタッフと撮影。中央が息子)


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最終更新日 : 2013-06-25 09:16:17

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