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その38

踊る / 真珠 / 技(アーツ)

皇帝は輿の上に立ち上がると真珠に縁取られたローブを翻し両腕を高く上げた。固唾を呑んで見守っていた沿道の人々が彼の無事を知って踊り出す。後から聞いた話では私の奇跡の技が彼の命を救ったのだと噂になっているそうだ。梅干を食べさせたのは私だし、まんざら嘘でもないよね?

切ない / / 永劫(イオン)

翌日夕食の席で皇帝が言った。「術師の見立てでは永劫に生き続ける事はないそうじゃ。そちと死に別れるのは切ないからのう。スーパーの梅干で幸いじゃった」「永遠の命より招子がいいんだね」笑う春哉に彼が答える。「当然であろう。ハルヤこそそろそろ伴侶を迎えてはどうなのじゃ」

羽根 / 勲章 /

「ピッパがそちに夢中のようじゃ。あの娘なら身分に不足はないと思うが」「王女様か。勲章を貰うよりも嬉しいな。でも大事な妹を貰っちゃってもいいの?」春哉がポンパーを振り返る。「ハルヤ殿が望むのであれば喜んで」羽根のように耳を震わせる彼に春哉が言った。「嘘つき」

/ 言葉 / 宝石

責めるような春哉の言葉にポンパーはうつむいた。やっぱり最愛の妹を失いたくないんだ。「では陛下。ポムポム国の王女を私にいただけますか?」そう言うと春哉はポンパーの腕を取った。「私が欲しいのはこちらの第一王女ですが」驚いたポンパーの耳が跳ね上がり青い宝石が揺れた。

驚く / / 王国(マルクト)

驚いたなんてもんじゃない。王女だって? ポンパーが? 「思えばポムポム王国の世継ぎは女子であったの。多忙のあまり忘れておったわ」指についたクリームをなめなめ皇帝が笑う。おい。「女の子だって気付いてたの?」「うん。身体検査した時にね」春哉がいつもの笑顔で答えた。

/ トルコ石 /

「いけませぬ。耳に傷のある女など、ハルヤ殿にはふさわしくはありませぬ」ポンパーの喉の奥から絞りだされたか細い声は初めて女らしく聞こえた。「誰が俺にふさわしくないのかは俺が決めるよ」春哉は手をのばすと彼女の耳にはめられた小さなトルコ石に触れた。「それとも……」


その39

/ / 祝福

「……ポンパーは俺が嫌い?」春哉はずるいなあ。嫌いだなんて言えるはずないじゃない。彼女がいつもあなたを見てた理由がやっと分かったよ。「ハルヤの言葉に嘘はないようじゃ。余はそなた達を祝福しようぞ」春哉は皇帝に頭を下げると真っ赤になったポンパーの唇にそっと口付けた。

困惑 / / 理解(ビナー)

「俺だって好奇心だけじゃないんだよ」彼の意味深な言葉に困惑したのを思い出す。雲が晴れたようにはっきりと私はその意味を理解した。春哉の狙いはポンパーだったんだ。ひたむきなハスキーボイスのお姫様にいつしか彼も惹かれてたんだね。それにしても、貧乳にもほどがあるでしょ?

懐かしむ / / 星(スター)

元の世界を懐かしむ間もなく数ヶ月が過ぎた。雲のない夜には皇帝と春哉は星を見に出かける。これじゃ春哉と付き合ってた頃と変わらないよ。ポンパーは本人の希望で私達の警護を続けている。お姫様は性に合わないらしい。フーカーが春哉を側近に任命したので結局四人はいつも一緒だ。

/ / ブーツ

冬も終わりに近いある日、窓から外を眺めていた皇帝が私を呼んだ。見ればまだ雪の残る庭を春哉とポンパーが歩いている。春になれば彼らは式を挙げる事になっていた。「余も散歩するのじゃ」「二人きりにしてあげればいいのに」寒さの苦手な私は渋々厚手のブーツを履いて表に出た。

/ 箱庭 / まつげ

朝の日差しは思ったよりも暖かかった。広い庭の一角には小さな山や池がしつらえられ、さながら帝国を縮めて箱庭に納めたようだ。先頭を行く皇帝が声を上げた。「ショウコよ。こちらに来るのじゃ」興奮した様子でまつげをぱちぱちさせている。彼の足元を見て私も思わず声をあげた。

/ ゼリー /

そこにはなんと梅干の種が芽を吹いていたのだ。「これは縁起が良いのじゃ」興奮した皇帝は耳をぱたぱた、三月ウサギのように辺りをぴょこぴょこ跳ね回る。「陛下、桜の実からも芽が!」ポンパーが赤いゼリーみたいな小さな芽を指さした。「もうすぐ春だね」春哉がのんびりと言った。


その40

悲しむ / じょうろ / 愚鈍(エーイーリー)

梅干の種を埋め毎日じょうろで水をやる皇帝を見て、芽が出ないと知れば悲しむだろうと案じていたけど、愚鈍なのはいつまでも向こうの世界の常識に囚われている私の方だったね。「民のためにも大きく育ちスーパーの梅干をたくさん実らせるのじゃぞ」彼は優しく梅干の芽に語りかけた。

見る / ダイヤモンド / 皇帝(エンペラー)

「世継ぎのできる予兆かもしれぬのう」皇帝が嬉しそうに私の肩を抱く。世継ぎってあなたと私の? 私にはウサ耳はないんだけど……。私はもう一度梅干の芽を見た。紫の双葉には朝露がダイヤモンドのように輝いている。そうだね。この世界でなら何が起きたって不思議じゃないかもね。

 

 

おわり






 お題は「診断メーカー」様よりお借りしました。

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『三題ランダムキーワード2』 http://shindanmaker.com/68407


奥付



皇帝フーカー八世の冒険


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著者 : モギイ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/fluffymoggie/profile


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