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その29

プリンアラモード / / 幸福

デザートのプリンアラモードに目を見張ったポンパーは、さらにてっぺんのチェリーに気づいて大声をあげた。「もしや、これは幻の桜の実ではありませぬか?」「そうじゃ、驚いたであろう」皇帝が幸福そうにプリンを口に入れる。ああ、だからいつも種をポケットにしまい込んでたのか。

角砂糖 / 幻獣 / びびる

食事を終えて車に向かう。角砂糖をもごもご食べながら歩いていたポンパーが突然に飛びずさった。「あ、あれは猫ではございませぬか?」「なんと、幻獣『猫』をこの目で見ることができるとは。吉兆じゃ」そう言った皇帝は猫が寄ってくると慌てて逃げ出した。びびってる、びびってる。

ワイン / ナイフ / 安心

「陛下、お守りいたしますぞ」ナイフを抜こうとするポンパーを私は慌てて止めた。猫は危険ではないのだと教えると二人とも安心したようだ。「我が帝国に来てくれぬかのう」神妙に猫に触れる皇帝がおかしくて私は笑い出した。ああ、おかしい。さっき飲んだハウスワインのせいかな?

抱きしめる / 髪飾り / 恋人たち(ラヴァーズ)

海岸通りを行きかう恋人たちを見ては、皇帝はちらちらと私に目を向ける。そうか、まだ春哉に遠慮してるのか。気の毒になった私は彼を抱きしめてやった。彼の耳が立ち上がり、帽子が地面に落ちる。「耳が見えるのじゃ」「おかしな髪飾りってことにしときなさいよ」私は彼にキスをした。

貝殻 / ブーツ / 放心

浜辺で少し休憩。フーカーは嬉しそうに貝殻を拾っている。お土産かな? その後アウトドアの店で装備を一通り揃えた。ポンパーは買ったばかりのトレッキングブーツを放心したように見つめている。「このような品をいただいてもよろしいのでしょうか?」 いたく気に入ったらしい。

眠る / / 世界(ワールド)

うちに着いたらポンパーは車の窓に顔を押し付けてすうすう眠っていた。見知らぬ世界での疲れが溜まっていたのだろう。「彼は俺のところに泊めるよ。もっと詳しく彼の話を聞きたいからね」春哉がすました顔で言う。邪魔者は消えるってことね。元カレに気を使われるのも妙な感じだ。


その30

吸う / / 拒絶(シェリダー)

春哉の車を見送って部屋に入ったとたん、皇帝が抱きついてきた。反射的に避けたらほっぺたをチューと吸われる。「うぬぬ、外したか」これじゃ妖怪だ。「夕飯、食べてからね」拒絶されて彼の耳がぺたりと倒れた。「ショウコには余の気持ちなど分からぬのじゃ」あれ、すねちゃった?

恋う / お菓子 / 色欲(ツァーカブ)

「こんなに恋うておるのに、そちには分からぬのかのう?」皇帝の傷ついた瞳にどきりとする。「色欲に駆られておるのではないぞ。そちは余の周りにいた甘いお菓子のような女達とは違うのじゃ。例えれば昨日の朝飯のイカの塩辛のような感じかのう」そんな例え、ちっとも嬉しくないし。

偲ぶ / ピン / 世界(ワールド)

「何もかもうまく行けば明後日の今頃はあなたの世界にいるんだね」「ここでの暮らし、実に楽しかったのじゃ。ショウコには礼を言わねばのう」昔を偲ぶような言い方に突然寂しさと不安がこみ上げてきた。彼を失ってしまいそうな気がしてぎゅっと抱きしめる。皇帝の耳がピンと立った。

雪柳 / 秘密 / 耳飾り

私は彼の耳飾りに気付いた。「『皇帝の証』は私にくれたんでしょ?」「皇帝は続ける事にした。代わりにこれをやろう」彼は『対の石』の指輪を私の指にはめた。「皇帝を辞めかけたのは民には秘密じゃぞ」口付ければ互いの石が光を放つ。彼の腰に腕を回すと雪柳のような尻尾が触れた。

/ / 麦藁帽子

緑の石を通して彼の気持ちが伝わってくる。私の心も彼に届いているのかな。彼の唇が首筋に触れる。「調子に乗り過ぎ。鋏で尻尾をちょん切るよ」「切れるものなら切ってみよ」耳に麦藁帽子の跡をつけた皇帝は、にやりと笑って私をベッドの上に放り投げた。そろそろ観念してやるかな。

優越感 / リボン / 恋人たち(ラヴァーズ)

隣でまどろむ彼の耳にリボンを結ぶ。「何じゃ?」「かわいいでしょ?」「余をかわいいなどと言う不届き者はそちだけじゃ」そうだ、彼は皇帝なのだ。どれほどの女性と枕を交わしてきたのだろう。私は今までの恋人たちとは違うの? 優越感持ってもいいんだよね? でも聞けなかった。


その31

/ / おとぎ話

こんなおとぎ話みたいな恋が成就するとは思えない。月の光のように儚くて、最後には泡みたいに消えてしまうのかも。私にはウサギの耳はないんだから。それでも彼を故郷へ帰してあげたかった。たとえこの先、悲しい別れが待っていたとしても。「乳枕してくれんかのう?」黙って寝ろ。

偲ぶ / ティーカップ / 戦車(チャリオット)

翌日、昼過ぎに春哉達がやって来た。「最強の戦車を借りてきたよ」外を覗いてティーカップを取り落としそうになる。選挙カーがとまっていたのだ。「どこで借りたの?」と聞いても笑うだけ。やっぱり彼は頼りになる。いつだって準備周到だったなあ、とちょっぴり昔を偲んでしまった。

/ 機械 / リボン

車の中には様々な物が積まれていた。アンプにスピーカー、発電機やバッテリー、ガソリンらしき液体のポリタンクも並んでいる。皇帝は車の床に膝をついて不思議な機械に夢中の様子。急いで出てきたので片耳には昨夜のリボンがついたままだ。気づいた春哉が笑ったので私は赤くなった。

/ 磁石 / 惑星

方位磁石の隣に奇妙な道具がある。「それは六分儀。GPSは使えないからね。どこかの森の中に出ちゃってもこれで位置が分かる」春哉が説明する。皇帝は太陽系の惑星の写真集を手に取った。「これはすごい書物じゃ」「その本はフーカーにプレゼントだよ」彼の耳がぴょこんと跳ねた。

嫌がる / マント / 知識(ダアト)

洗濯したマントと服を手渡すとポンパーは丁重に礼を言った。「昨夜はよく眠れた?」「ええ。ハルヤ殿は並はずれた知識の持ち主でございますね。色々と教えて頂きました」すっかり彼を手懐けたようだ。誰でも嫌がらずに面倒を見るので、春哉は会社の後輩達の間でも人気者だったのだ。

舐める / / 技(アーツ)

「昨日の帰りに『門』の開く場所を下見してきたよ。今日は計画を見直そう。大切な事が抜けてるかもしれない」さすが春哉は仕事が速い。部屋に戻ると早速皇帝はアイスキャンディを舐め始めた。「大切な事と言えば、氷菓子を作る技を教えてはくれぬかのう?」大切の意味が違うようだ。


その32

/ 麦藁帽子 / カモミール

ポンパーはカモミールティーをすすりながら白い耳をぱたぱたさせている。麦藁帽子を脱いですっきりしたみたい。皇帝は二本目のアイスに取りかかった。地図とノートをテーブルの上に広げると、春哉が言った。「招子に確認しておきたいことがあるんだ」いつになく真面目な表情だ。

好奇心 / 怪物 / 残酷(アクゼリュス)

「教皇は残酷な男だ。捕まればどんな目に遭わされるか分からない。向こうには怪物だっている。この世界に戻るには術師が必要だ。フーカーが皇帝の座を取り戻すまでは帰れないってことだよ。本当に分かってるね?」私は笑った。「好奇心で首を突っ込んでるあなたに言われたくないな」

退屈 / 幻獣 / 無感動(アディシェス)

「心配しないで。覚悟はできてるから」好きな人を故郷に返すと私は決めた。結末がどうなろうと始めたことをやり遂げるだけだ。それに梅干を仙果だと喜び、猫を見て幻獣だとさわぐ皇帝達を見ていると、どれだけ自分が無感動だったのか実感させられる。もう退屈な毎日には戻れないよ。

和む / 横顔 / 悪魔(デビル)

「それならいいんだ。でも俺だって好奇心だけじゃないんだよ」小悪魔っぽい笑みを浮かべて意味深な事を言うと春哉は本題に入った。部屋の中はいつもの和んだ雰囲気に戻る。一体何を企んでるんだろう? 彼の横顔からは何も読み取れない。気にはなったが今は彼を信じるしかなかった。

悼む / お菓子 / 太陽(サン)

翌朝は太陽が昇るとすぐに家を出た。車の中では皇帝が何かを悼むかのような厳粛な表情でお菓子の詰まった袋を抱えている。やはり作戦がうまく行くか不安で堪らないのだろう。「これを食べたらなくなってしまうのじゃ。もっとたくさん買っておくべきだったのじゃ」心配して損をした。

エメラルド / 呪文 / リボン

雑木林の奥の指定された場所に春哉はエメラルド色の石を置いた。何も起こらない。「あちら側で術師が呪文を唱えなくては『門』は開かぬ。のんびり待つのじゃな」 皇帝は座席にもたれ大きな飴玉を口に入れた。耳にはまだリボンがついたまま。気に入ったと言ってとろうとしないのだ。


その33

ドア / トランプ / ブラックホール

「見て!」私の声にトランプで遊んでいた皇帝達が顔を上げる。『門』と聞いて漠然とドアのような物を想像していたが、私達の目の前に現れたのは空間に穿たれた底なしの黒い穴。これじゃブラックホールだよ。本能的な恐怖に体がすくむ。だが春哉はためらわずにアクセルを踏み込んだ。

引く / 蝋燭 / 教皇(ハイエロファント

車が飛び込んだのは蝋燭に照らされた煌びやかな広間の中だった。正面には皇帝と瓜二つの男が立っている。「ここは宮殿じゃ。教皇自らが余の死を待ち受けておったとはのう」皇帝が悲しげにつぶやいた。思わぬ光景に驚いたのだろう。教皇ホッピイの顔から見る見る血の気がひいた。

悪態をつく / / 戦車(チャリオット)

車の中に皇帝の姿を認めたのかホッピイが大声で悪態をついた。護衛の者たちが弓に矢を番える。あの矢が雨のように降り注げばこんな『戦車』では防ぎきれない。フーカーはおもむろにウサギ耳に耳栓を押し込み大きな枕で押さえつけて言った。「ハルヤ、やるのじゃ。慈悲の心は捨てよ」

悲しむ / / 王冠(ケテル)

最大出力で鳴り響く車外スピーカーの轟音に広間にいた者は一人残らず気を失った。車から降りた皇帝は石の床に倒れたホッピイの前に立ち、彼の頭から転がり落ちた王冠を拾い上げた。「余に牙をむいた憎き男じゃ。こやつを倒せばさぞ胸が晴れるかと思うたが、悲しみの方が大きいのう」

這う / / 節制(テンパランス)

目を覚ましたホッピイが這って逃げようとしたので私は大きな裁ち鋏を持って立ちふさがった。「観念しなさい。動けばその耳、切り落とすわよ」フーカーが彼に告げる。「ホッピイよ。そちには蟄居を申し付ける。以後、節制を守った生活をするがよい」だがその時ポンパーが飛び出した。

悔やむ / 瑪瑙 / 貪欲(ケムダー)

ポンパーの剣が教皇の瑪瑙の首飾りに突きつけられた。「貪欲なるホッピイよ。よくも私を騙してくれたな」「貴様、余を裏切るとは何様のつもりだ」教皇が唸る。「我はポムポム国王家の血筋の者。己の罪を地獄で悔やむがよい。我が民の苦しみを償うのだ」それじゃ、ポンパーは王子様?



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