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スマイル

44. スマイル


 祝日明け、十一月最後の土曜日は朝からバタバタしていたが、十六時を回り、新たな理事候補と運営委員候補が退場したところで、ようやくいつものスローな雰囲気が戻って来た。会議スペースに残っているのは、文花、清、八広、そしてプロジェクタ等を片付け中の千歳の四人である。

 「チーフ、いや事実上、事務局長、ですね。今日はおつかれ様でした」

 「ハハ、どもども。顔ぶれが揃ったところで、あとは役の振り方。そういう意味じゃ、早めに事務局長を仰せつかった方が話は進めやすいですもんね。何かまだしっくり来ないけど」

 「それにしても、今日の六人はどなたもいいプレゼンだったスね。ハコモノ一つの解釈でも六者六様。強いて言えば、地域のあらゆる資源を連動させてハコにしてしまおうってのと、今ここにあるハコ、つまりセンターを拠点に展開して面にしようってのと、大まかに二つの方向性に分けられる、ってとこスかねぇ」

 「いい読みねぇ。それって、森から木、木から森、の話に通じそう」

 「ま、女性一、男性二が新理事、同じ割合で運営委員が三人。六人全員、何らかの形で関わってくれることになった訳だから、その森と木のバランスもとれるってもんだ。なかなかの人選だったぁな」

 代表候補の清先生は、言葉にはしなかったものの、顔は「ヨシヨシ」とでも言いたげな表情になっている。三十代から五十代まで、流域在住、年数の長短は問わないが何らかのNGO/NPO経験を有する、そんな限られた条件ながら、文花のマメな連絡網(正(まさ)しくネットワーク?)が機能したらしく、公募には十二名が応じた。書類選考でさらに絞り込んだ六名は、女性二人に男性四人。本日十三時半から行われた法人役員候補の二次選考会は、その方々が主役となった。一人十五分の持ち時間で、課題論文テーマ「地域を元気にするハコモノ」についてプレゼンしてもらう。五人はプレゼン用のソフトを使い、PC+プロジェクタで。一人は大判カラーコピーをフリップ形式にして臨んだ。八広の言うように、甲乙付け難いところだったが、このプレゼンタイム、センター主催の講座扱いになっていて、聴講者、これ即ち、投票者が同席していた。聴衆の皆さんには、より秀逸なプレゼンの一位・二位に票を投じてもらったところで、講座は終了。その後、十五時過ぎからは六人の間で相互評価を兼ねた協議が行われ、途中から先行候補四人のうち、清、文花、千歳の三人(一人は欠席、代わりに八広が傍聴)を交え、さらに先の票数を加味した選考を経る。かくして、お互い納得の上で理事候補が選出された、という次第である。ただ、文花としては、六人が決まった段階で、この際全員関わってもらおう、という腹積もりがあったので、今日の二次選考は実質的には役員か委員かの割り振りがメイン。副次的だが、センター行事としてハコモノ論の討究ができる、ということも大きかった。

 内にも外にも意義のある行事をさりげなく設定してしまう、文花の手腕あっての今回の会であった。

 「取り急ぎ、理事就任にあたって必要と思われる書類も渡したし、理事会の日程調整も済んだし、あとは定款考えながら組織体制? 事業計画?」

 「会員制度もですね」

 「あぁ、ファンクラブの話、か」

 「ファン倶楽部だぁ?」

 とまぁ、和やかにやっている。ファンクラブ云々のジョークを発した当人、さくらコースの櫻は、午後は専らカウンター係。今は聞き耳を立てながら、クスクスやっている。会議スペースの様子はカウンターからも見える。なので、プレゼンもひととおりは拝聴済み。カウンター係は、配付資料に書き込みしながら唸っていた。途中、辰巳がやって来たり、舞恵から電話があったりしたが、聴講者以外の来館者は少なく、程よい位置で程よい時間を過ごす。だが、講座終了後は協議に加わるでもないので少々退屈気味。KanNa上の当館イベント情報を書き換えたりしていたが、正直持て余していた。舞恵が予定通り十五時に来てくれれば、カウンセリングでもしながら凌げたのだが、遅くなるってことじゃ仕方ない。間が持ったのは、帰った筈の辰巳が戻って来てくれたおかげである。

 「いやはや、千住さん、最初わからなくってさ。下で頭冷やして、確かめに来たよ」

 地域振興部署時代、櫻と言えば眼鏡、が定着していたので、来た時も出た時も認識できなかった、ということらしい。

 「そっか、課長にも見せてなかったんですね」

 「でも、どうしてまた?」

 「実は彼氏、あ、いや、ある方からコンタクトレンズのアドバイスをいただいて、それで」

 「彼? あぁ、成る程」

 higata@では公認かも知れないが、元上司、現事業委託主、そんな立場の辰巳には易々と彼氏がどうこうてな話は憚られる。だが、櫻のそんな心配りがかえって辰巳にはやるせない。

 「お見通し、でしたか?」

 「先月のクリーンアップで二人の息ピッタリだったから。ちょっとショックではあったけど、ハハ」

 「須崎課長...」

 間を持たせるどころではない。深く重い間が生じることになる。何も言えなくて幾年月(いくとしつき)。ずっと独り身でいたのは、意中の女性がいたから、ということだったのか。

 六人が帰る何分か前、辰巳は一人、センターを後にした。寂しげな高い背中を見送っていたら、ちょっぴりキュンとなってしまった櫻である。四人の談笑が聞こえ、我に返った、そんな感じ。


 会議スペースの片付けが済み、その四人一行はカウンターへ。

 「櫻さん、お待たせ。カウンター番、交代するわよ」

 「あ、はい。って、今日は奥宮さんとはいいんですか?」

 「そう言えば...」

 「あーぁ、ルフロン、可哀想。でもまだ来てなかったんスね」

 「誰だい、そのフロンさんて?」

 「センセ、それじゃオゾン層壊しちゃう」


 階下から、リズミカルな足音が近づいてきた。

 「ヤッホー! 皆さーん」

 今日は雨も風も連れて来なかったが、風雨に遭ったようなクルクル髪で、ル・フロンさんが現われた。かつてのツンデレラが嘘のように晴れやかな参上ぶり。

 「先生、彼女がルフロン、ス」

 「八クン、この方、だぁーれ? 先生って?」

 「掃部清澄先生。お名前はメーリングリスト上なんかでご存じでしょ?」

 higata@のメンバー十人中、清と面識がなかった最後の一人がここで漸く対面を果たす。

 「あぁ、舞恵は行けなかったけど、十月の回の集合写真でお顔は。蟹股だったんで、よく覚えてますワ」

 「マエさんてか、そんじゃ、丁寧に呼ぶとお前さん、だな、ハハ」

 「何か、おじさん、イイ感じ。ヨロシクです」

 名だたる先生をおじさん呼ばわりとはいい度胸である。だが、清としてはそんなくだけた接し方がむしろお好み。ルフロンの登場で、先生、いや、おじさんとの距離感がまたぐっと縮まったのは確か。ネイルアート(ご職柄、週末限定)が気になるが、握手を求める舞恵に清は気安く応じる。イイ感じな二人である。


 ルフロンは、やはりフロントにいると落ち着くようで、カウンターで文花と打合せに入る。が、それも束の間、櫻の席に移動すると、今度は会計ソフトを動かしながら、仕訳の極意を伝授し始めた。

 「やっぱ、最初にきちっと事業に見合った費目を立てるに限りますわね」

 「法人化するとなると、監査もちゃんとやらないといけないしね」

 「NPO法人の会計ってのは多少緩やかなんでしょうけど、逆を言えば、これがきちっとできることがその団体の信用につながるんだって、八クンも言っとりました。ま、とにかく次年度からスね」

 「今日ので理事は固まってきたけど、監事よねぇ。その辺の事情がわかる人だとベターなんだろうけど」

 「今日は決まらなかったんで?」

 「一気に選考しようとも思ってたけど、監事はやっぱ別格かなぁってことになって」

 「そう、だったら...」

 じらすように言葉をためる舞恵。文花はハラハラドキドキ。

 「実は当行にそういうサポートできる人材バンクがござんして」

 「はぁ、さすがはバンクね」

 「でも、今年は退職者が多くて。そのバンク、パンクしやしないかって、人材の皆さんは気が気じゃないみたいで。ホホ」

 そういうことならぜひご協力いただきたいものである。交通費程度の謝金で都度請け負ってもらえるらしい。銀行にもCSRが波及していることを示す話である。


 いつもの円卓では、PCに向かうおじさんと、それを囲むジュニア世代三人。Comeonブログの定期更新日ではないのだが、千歳、櫻、八広が揃い踏みしている以上、今この機会を逃す手はない。あいにく画像はないのだが、伝えたいことは山とある。文章でいかに画(え)を描いて、臨場感を持たせるか、これが掃部流の奥義。三人にとっては、視覚的・立体的な詞世界のあり方を探る上で大いに参考になる。おじさんブロガーの方は、打ち込んでいる記事に対して、その場ですぐに若手の反応が得られるというのが頗る励みになっている。ブログの特性の一つに双方向性がある。が、それはネット上に限らない。同じ場所に居ながらも双方向。距離は近い程いい。


 ルフロンはカウンターを離れ、八クンを呼びに来る。

 「そろそろ行くかい?」

 「いつの間にか外、暗くなっちゃったねぇ」

 「あ、お二人さん、初姉のとこ?」

 櫻はクリアファイルに入れたカラーコピーを持って来て、舞恵に手渡す。

 「あーら、可愛い地図ネ」

 「石島&千住の四姉妹で探訪調査した成果なんだ。シンプル系でも良かったんだけどね、白地図そのままじゃ無粋だから、できるだけデコ入れて、シール貼って、小梅嬢に描き足してもらったの」

 「達者なイラストねぇ。スマイルマークもステキ」

 クルクル髪をいじりながら、そのスマイルを真似てみる舞恵。千歳と八広は、離れたところから、笑い顔の女性二人を見入っている。当然のことながら、男二人もスマイル中。以心伝心ならぬ、以笑伝笑の図である。

 「今日は特にお話お聞きしなかったけど、その笑顔なら大丈夫そうね。お仕事、慣れましたか?」

 「舞恵は前に居て何ぼ、だからなぁ。対面業務じゃないと面白くないかも。でもね、融資の企画業務に回ったからには、それを活かさない手はないって思うようになったさ。そんでもって彼とか文花さんと話してるうちに、これだーって、ネ。いいこと思いついたとこ」

 八広と舞恵は、土曜日のお約束、アフターデザートタイムに合わせて、カフェめし店に向かう。そろそろ十七時である。

 「んじゃ、また。カモンのおじさんも元気でネ」

 「あいよ、フロン嬢もな」

 「だからセンセ、ルを付けないと...」

 この際、定冠詞が付こうが付くまいが関係ない。オゾン層を破壊されちゃマズイが、突破力があることには違いない。そんなフロンさんに手を振るカモンおじさん。新たなコンビ誕生の予感?


 昨日午後のお絵描き探索はいい気分転換になったようで、今日一日ご機嫌だった初音嬢。お約束の客が多少遅れて来ても悠揚としている。

 「あ、いらっしゃいませ」

 すでに私服に着替えてあって、今は一般客と同じなのだが、しっかり接客。奥の予約席から声をかける。テーブル上には店に似つかわしくない容器がデンと置かれ、プレートや食器がそれを囲む。

 「あん? 今日は釜飯かいな? 初姉の気まぐれシリーズてか」

 「当店はカフェめしはお出ししますが、あいにく釜飯はございませんで」

 「だってこれ、あの峠の...」

 八広も不思議がっている。そう、この容器、峠の某である。六月から小梅、小梅から初音と渡ってきて、満を持してこの日、リユースデビューとなった。

 「パンケーキ容れるのに丁度よかったんスよ」

 フタをとると、ほんのりと湯気が上がる。さすが保温性はバッチリ。使える釜である。

 「これって、お客様に?」

 「まさか、お二人専用ですよ」

 「でも、これで出したら結構ウケるんじゃん?」

 「開けてビックリ、パン!ケーキ、とか」

 舞恵が八広を小突いてる隙に、初音は三人分のサービスドリンクを取りに行く。ドリンクが並んだらそれからは、体当たり英会話教室の始まり始まり。

 「あ、その前に。櫻姉からこれ預かってたんだ。Please, make them sure.」

 「How wonderful! ちゃんと二枚ある」

 「じゃ、初姉、その地図の趣旨と、おすすめスポットなんかを英語でどうぞ」

 「ひょえー、いきなりスか?」

 「コレ、ハチ! 何、他人事みたいに笑ってんの。アンタも生徒でしょ」

 「対不起(Dui bu qi)、じゃねぇや、Excuse me.」

 「たく。あ、そっか、せっかくだから生徒さんどうし、Q&A式でやってみっか」

 舞恵は、それなりにお嬢さん育ち。ただ、ダンスミュージック好きが高じて、米国のノリのイイ街ににショートステイしてた時期があったため、些かブロークンになってしまった。英会話をマスターしたのは良かったが、訛り英語のおまけ付き。それでも、基本はしっかり弁えている。

 「要はさ、相手と話がしたい、あれを聞きたい、これを伝えたい、ってのがあればいいんよ。passionありき、てことかな。話す意欲がなきゃ、どんな言語も話せませんワ」

 初音は昨日のことを思い出しながら、ぎこちない英語で話し始める。八広は時々ヘンテコなフレーズで相槌を入れながらquestionを担当。そんなんでも、やりとりしてれば変わるもの。徐々にペースが上がってきた。

 「ま、そもそもそのグリーンマップとやらは、米国発祥な訳だから、オリジナルの資料見りゃ、いろいろ書いてあんだろうけどさ。自分で実際にやってみてどうだった、てのは自分の言葉じゃないと語れないっしょ? そこでこう、情熱っていうかさ、話したい!って気になりゃしめたもんヨ」

 「蒼葉さんにも、即席デッサン教わったんスよ。それがまた良くって。小梅のイラストもそのせいか、大人っぽくなった感じ」

 「へぇ、そうなんだぁ。その気持ち、訳せる?」

 「Sister Aoba taught us how to draw still-objects instantly, I was very moved, and…」

 「hum...あとは、表情よね。顔の筋肉使って多少大げさにやると、言葉が勝手に付いてくる、かな?」

 「ルフロンさん、前は愛想良くなかったじゃないスか。そう言われても説得力が...」

 「顔の筋肉使い過ぎて疲労気味だったから、あんまり表情作らないようにしてただけ」

 「You’re so kidding.」

 「Ha ha, now you know!」

 八広は何のこっちゃ、という顔をしているが、彼氏も本当のところはよくわからない。地がそうなんだ、という程度である。ま、ここは無愛想だった理由を探るよりも、愛想が良くなった理由を考えた方が早そうだ。一つ確実に言えるのは、干潟つながりで知り合った皆のおかげ、ということ。そんな舞恵が愛想良くquestionする。

 「Why did you mark smile one on this area?」

 「あぁ、それは... It’s hard to explain for me. ヘヘ」

 それは千住姉妹宅付近である。櫻がニコニコしながら貼ったのだが、単に自宅だからという訳ではなく、誰彼さんといいことがあった何日か後だった、というのがスマイルの理由なもんだから、どうしようもない。十代の初音に説明を求めるにはムリがある。まして、英語でなんて。

 他にも、鎮守の森、とある民家の砂利道、ゴミ一つない路地裏、子どもが遊べる空き地、夕日がよく見える歩道橋、といった辺にアイコンシールともどもスマイルは付されてあった。

 「フーン、面白いわね」

 「ウチはこのエリアからは外れてるんですけど、今回のとこ遠くないから時々また様子見ようって、思いました」

 「自分ちの近所も、でしょ」

 「小梅は早速ウロウロし出したみたい。でも、だんだん寒くなってきたから、今月までスかね」

 三人は引き続き、アイコンの絵を見ながらそれを英語に置き換えたりしていたが、

 「この涙目は何? Joy or sorrow?」

 「もともとは[悲しい場所]ってことらしいんスけど。あ、ここ風が吹き抜けるんですよ。で、櫻さんたら『目にゴミが入っちゃった、うぅ』とか言いながら、それで」

 「いかにも櫻姉らしい発想ね。本人的にはそりゃsorrowだわ」

 「あんまり貼りたくないって、貼るならうれし涙の方がいいって、そんなことも言ってたような」

 「ま、要するに、いろいろな感情表現ができるマップでもある訳だ」

 「あら、八クン、黙って聞いてたと思ったら、いいこと言うじゃん。レッスン的には、そう、アイコン見ながらそれに合わせた表情作って声に出す、てのも良さそうネ」

 「I agree, teacher.」

 「そういう時はね、I’ll drink to that.て言い方も有効よ」

 「はぁ、ドリンク?」 八広はグラスに目を向ける。

 「あ、いけね、お代わりお持ちしますね」 初音はそのグラスを手に立ち上がる。

 時刻は十八時。センターの長い一日も終わろうとしていた。来週の土曜日は、もっと長い一日が待っている。

 

【参考情報】 「地域を元気にするハコモノ」


[漂着モノログ  第三章  秋] 終わり → [漂着モノログ  第四章  冬] に続く


あらすじ

 河原の桜を見に行った千歳は、いつしか川辺にたどり着く。水際には干潟、そして多量のゴミ... その場で捨てられたものとは思えない。そう、それらは漂流・漂着ゴミだった。そこで偶然拾った一枚のキャッシュカードから、物語は動き始める。

 四月一日、キャッシュカードの主、櫻が登場。千歳と櫻の二人は初対面ながら意気投合し、クリーンアップを開始。千歳はその時の記録をブログを新設して掲載する。その名は「漂着モノログ」。

 五月六日、クリーンアップは二人から四人に。櫻はお約束の「いいもの」を持ってやって来る。調べ上げられたゴミの数々... それらは静かに、そして雄弁に何かを語りかけてくる。

 六月三日、2回目の調査型クリーンアップ。五月の回の三人のもとに、女性研究員が現われ、より充実した実地見聞が展開される。六月は環境月間。折々のイベントは出会いの場となっていく。

 七月一日、クリーンアップ参加者の年令層は広がり、干潟は「場」としての力を増していく。集う人々が互いに触発されていく流れは、夏休みの自由研究へとつながり、そこからまた新たな出会いやドラマが生まれていく。千歳と櫻の想いが形になっていくのもこの月から。

 八月五日、リーダー不在ながら、新メンバーの加勢もあり、何とかクリーンアップは終了。だが、櫻の不参加は波紋を呼び、それぞれの想いが動き出すことになる。川、干潟、ゴミへの想い、そして互いを想う気持ち。夏は長く、暑い...

 九月二日、干潟に集う人はさらに増え、経験知も増していく。巡視船ツアーや下見をはじめ、メーリングリストでの議論も活発になり、来る一般参加型クリーンアップに向け、準備は進む。さまざまなプロセス(過程、作用)が動き出す、そんな秋の始まり。

 十月七日、待望の一般参加型クリーンアップイベントが開催される。現場力が試されながらも、無事終了し、メンバーの結束は強まっていく。千歳と櫻の二人も新展開へ。確かなプロセスを経て、深まるは充実の秋、恋愛の秋...

 そして、十一月、十二月... ゴミが流れれば、時も流れる。


登場人物

*登場順
*「十一月の巻」以降の下記18名の動きや素性等については、小説本文にてお楽しみください。

 

隅田 千歳 (すみだ・ちとせ)

電機メーカーに勤めていたが、理由あって離職。webデザインの仕事を軸に独立。専ら市民系ニュース会社からの業務を請け負う。インタビュー記事など連載ネタも抱えるも、その内容はあくまで実直。ジャーナリスト志向はあるが、冒険はしない。(最近は足で稼ぐ部分はアシスタント任せ) 自分でドメインを持ち、メールの設定なども手馴れてはいるが、自作のwebサイトは仕事の記録程度。ブロガーデビューは「漂着モノログ」が最初。スローライフが信条なだけに鈍いところもあるが、PCに向かうとスピーディーになる。プロセス主義者(段取り屋)でもある。

 

ワンポイント:女性経験はなくはないようだが、交際は苦手。櫻との接し方も手探り状態。だが、少しずつ確実に変化が...

 

千住 櫻 (せんじゅ・さくら)

公務員だが、公設の環境情報センターに出向中。地域ネタが得意分野。直情型で一途なのがとりえだが、三十前後にして慎重に(?)。機転が利くのも長所だが、日常会話でもそれが頻発するため、相手は時についていけなくなることも。場を盛り立てるのが上手。理由あって、眼鏡を着用。

 

ワンポイント:浮き沈みはあるが、基本的にはお茶目。千歳に対しても、徐々に茶目っ気モードに。そして...

 

矢ノ倉 文花 (やのくら・ふみか)

研究機関の主任研究員だったが、思うところあって転職を決意。公募で環境情報センターに。センター運営団体のNPO法人化に向け、チーフとして切り盛りする。理系だが、事務・実務には強い。トークは不得手だったが、櫻と会話しているうちに上達していく。頼りになる情報源人物。地場野菜を育てるのが趣味。虫は平気だが、魚はダメ。

 

ワンポイント:さりげなくお節介、という評も。

 

千住 蒼葉 (せんじゅ・あおば)

櫻の妹。姉の浮き沈みなどに翻弄されるも、常に姉想い。フランス留学後、社会科学系の大学に。通販カタログのモデルの他、画業も。才色兼備。姉妹二人暮らし。

 

ワンポイント:基本的にはクールだが、時に日本人離れした大胆な行動に出ることも。

 

本多 業平 (ほんだ・ごうへい)

千歳とは同期入社の間柄。独立時期も同じ。会社を離れてからは音信不通だったが、「漂着モノログ」がきっかけで千歳との再会を果たす。お調子者だが、憎めない人物。ベンチャーの共同代表を務める。IT系よりも実機が専門分野。

 

ワンポイント:好奇心旺盛ゆえ、女性にも目がない?

 

桑川 弥生 (くわかわ・やよい)

専門学校でプログラミングを習得後、大学に中途編入。社会的にプログラミングを実践できる場を探しつつ、学業に励む。蒼葉より年下だが、大学では同学年。才気煥発なのはいいが、勢い余って毒舌になるのがチャームポイント(?)。どこへ行ってもツッコミ担当。

 

ワンポイント:姓・名をそのままイニシャルにすると、K.Y.になる。アンテナは高いが、空気の読みは...?

 

掃部 清澄 (かもん・きよすみ)

本名は、掃部 清。清澄はペンネーム。荒川下流をフィールドとする市民学者。著述家でもある。河川行政の監視役を買って出て、日々巡回する。五つの「カン」と在来の自然再生がテーマ。トーク(掃部節)には定評がある。

 

ワンポイント:「ひ」がうまく発音できないことから、周囲を惑わすも、お構いなし。

 

小松 南実 (こまつ・みなみ)

研究機関勤務。文花の後輩。専門は海洋環境関係。微細ゴミの発生源を探るべく、干潟に現われる。現場第一主義につき、駆け回るのに電動アシスト自転車が欠かせない。アスリートタイプ。強肩の持ち主。花言葉は「燃える想い」。

 

ワンポイント:一見淑やかだが、激情的な面も。孤高、かつ、どことなく翳があるのも魅力のうち?

 

須崎 辰巳 (すざき・たつみ)

地域振興関係部署の課長。櫻の元上司に当たる。櫻を気遣い、センターへの出向を勧めたのもこの人。清澄を師と仰ぐ。

 

ワンポイント:長身で紳士然としているが未婚。縁談もなくはなかったようだが...

 

宝木 八広 (たからぎ・やつひろ)

市民系ニュース会社で千歳と知り合う。アシスタント的に動いているが、実はちょっとした文筆家。フットワークの良さが持ち味。環境情報センターにも出没する。職業を聞かれれば、あえてフリーターと答える。しかして、その理由とは? 舞恵とは恋仲だが、小突かれること多し。

 

ワンポイント:あわてんぼうな一面も。風貌は中国人風だとか。

 

石島 小梅 (いしじま・こうめ)

自宅は環境情報センター側、週末に通う塾は橋を渡った先。塾の行き帰り、干潟に集う人々を橋から見かけたのがクリーンアップ参加のきっかけとなる。小学校高学年の頃から学校嫌いになり、中学に入ってからは姉の顔色をうかがう日々。だが、勇気を出して干潟に足を運んだことが転機となり、本来の快活さを取り戻していく。生き物への慈しみは強く、それらを観察し、イラスト化するのが得意。達筆でもある。ようやく背が伸び始めた中学二年生。

 

ワンポイント:お姉さんお兄さん達からは期待のニューフェースとして厚遇を受ける。

 

石島 初音 (いしじま・はつね)

小梅の実姉。高校三年生、つまり受験生。主に週末にプチ商店街のカフェめし店でバイト勤務。自覚はないもののお天気屋。そのせいか、天候の読みはピカ一。雨天時は機嫌が悪く、店の客にも時にとばっちりが行く。

 

ワンポイント:本当は妹思いなのだが、感情表現がうまく行かず、伝わらない。だが、年上の女性達と交流する中で、術を得ていく。

 

桑川 六月 (くわかわ・むつき)

小学六年生。弥生は年の離れた姉。実姉はさておき、大人の女性への憧憬は尽きず、蒼葉お姉さんが大のお気に入り。記憶力が良く、特に駅・路線関係は強い。種別があるものを調べるのがお得意。

 

ワンポイント:物怖じしない物言いは、姉譲り。大人がハッとするようなことを軽々と言ってのけるのも変わり者ゆえか?

 

石島 湊 (いしじま・みなと)

平日は河川事務所で課長職。週末は少年野球チームを率いる監督さん。野球第一、家族は二の次。試合のある日は、干潟近傍のグランドに現われるが、干潟には関心があるようなないような...

 

ワンポイント:掃部先生には頭が上がらない。長女にも手を焼いている。

 

奥宮 舞恵 (おくみや・まえ)

某銀行行員。八広の一応彼女。彼氏といる時はデレデレ、普段は無愛想でツンツン。週末はチャラチャラと装飾するのがお好き。叩いて音を出す系アーティストでもある。自称雨女。愛称はルフロン。

 

ワンポイント:とらえどころがないのが特徴。

 

石島 京 (いしじま・みやこ)

湊の妻。初音、小梅の母。一見セレブチックだが、アスリートっぽい一面も。かつては複合商業施設の衣料品部門で働いていた。

 

ワンポイント:夫への心配りもさることながら、何よりも心配なのは娘たち。

 

榎戸 冬木 (えど・ふゆき)

中堅広告代理店勤務。他社のCSRをサポートする部署から、社会的起業に携わる部署へ異動。現場を知る必要上、干潟に顔を出すようになったが、それはアフィリエイト関係で業平と接点ができたことがきっかけ。主な仕事は流域におけるソーシャルビジネスモデルの模索と情報誌の発行。仕事柄か、Edyと自称するため、気障に見受けられることも。

 

ワンポイント:業界人らしく、プロモーションは得意。だが、時に曲者と見られてしまう。これも業界人の為せる業?

 

堀之内 永代 (ほりのうち・ひさよ)

六月の現担任。小梅の元担任。文花の学友でもある。辰巳とも旧知のようだが、その間柄は謎。送迎バスに乗って、商業施設でお買い物、が趣味。装い同様、性格もサッパリしているが、喜怒哀楽は激しい。

 

ワンポイント:魚は平気だが、爬虫類がダメ。


仮想干潟案内図



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