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Ⅲ-光が変化し、爽やかな風が抜ける「家」を創る

§「伸びやかな空間」の広がり


 
 我々は、住宅を立体的な空間として、如何に伸びやかに使うかを考えています。 屋外と屋内は繋がりを持たなくてはいけません。自然の恵みを受け取る空間の仕掛けが必要です。縦の高さ方向にも広がりが必要です。視覚的な見えの変化も重要です。そうした演出によって、広々とした豊かな空間を生みだしています。 我々は出来るだけ「引き戸(スライディングドア)」を用います。これは、引き戸が広がりをコントロールする仕切り機能を持っているからです。

  

§「光」と「影」の空間装置

 

 光は、夏と冬では全く異なる影響を住宅に与えます。朝と夕方でも異なる環境を創り出します。昼と夜も又異なる雰囲気を醸し出します。この時間的な変化を縦横に楽しむ空間創りを考えています。家に過ごす全ての時間を生き生きと過ごすことが出来るよう配慮しています。

 

§生活と「景」の一体化

 

  

 家の内からの「景」は、住む楽しみにとって大きな役割を持っています。日本の伝統的な空間方式である「生け取り」、「借景」、「地窓」、「坪庭」などは良く使われる手法です。狭い敷地を有効に活用したり、密度の高い設計を行うことによってこうした楽しみを得る手法を数多く経験しています。「四季を楽しむ」ことは、日本文化に脈々と継がれた手法です。この文化を現代生活様式に合わせて生き生きとした「景」づくりを行います。造園家と連携し、新しい「庭」づくりも行っています。

 §自然の「風」

 

 

 緑豊かな「庭」を通った「風」は葉ついた水分の気化熱によって温度が下がっています。この庭からの「風」は、心地よい居住環境を作り出します。暑い時の「風」は、心地良い生活環境を作り出します。出来るだけ自然の変化を利用した居住環境を作り出すことを大切に考えています。

 

 §豊かな「吹抜け」空間 

  

 「吹抜け」を設けると施工費は上がりますが、住宅の豊かさは向上します。予算と快適さの狭間で、いつもギリギリの設計を行っています。玄関と階段室を一体化して縦動線を吹き抜けとして、且つ玄関の豊かさを確保します。京町家の「ハシリニワ」からこの手法を生み出しまた。「準棟纂冪(じゅんとう」さんぺき)」と呼ぶこの吹き抜けは、本来台所の煙抜きと明かりとりの機能を持っていました。この空間は、大工さんの腕を見せる場でもあったのですが、今日この空間が町家の豊かさを表現するシンボリックな空間として捉えられています。我々は、今日の敷地条件の厳しい住宅においてホッとする空間として位置づけ、大切にしています。


Ⅳ-バランス良く耐力壁を配置します

§伝統構法か在来構法か?

 町家・民家は伝統構法で建てられています。伝統構法は、現段階では建築基準法に適合しません。クカニアの家は、建築基準法に適合できる在来構法に基づいて、構造を考えます。現段階においては法的な根拠に基づきますが、長年受け継がれ日本の木造文化を支えてきた伝統構法が、建築基準法に適合する構法として認められることを期待しています。

 

§バランスが重要な木造住宅

木造2階建ての場合、確認申請上は耐力壁がXY方向に適切に配置してあり、定めた仕様の耐力壁が基準値以上あることが求められています。この簡便計算法で多くの場合は、慣習的に安全なことが確認されます。 耐震上に有効な耐力壁はその配置によって、数値的に満足されていても、バランスが悪ければ、有効に働きません。木造の耐力壁の配置の、悪い例はの耐力壁が少ない部分と多い部分との間で、地震時に建物にねじれが生じてしまいます。 こうした、バランスの悪い建物の場合は、厳密な計算によって安全性を確かめる必要があります。(※木造3階建ては構造計算が必須です。)詳細な構造計算を行い安全性の確認を行う計算方法には、現在2通りの計算方法があります。それが「許容応力度計算」と「限界耐力計算」です。

§許容応力度計算

弾性学という、素材をゴムのように延び縮みする範囲内で計算する方式です。許容応力度とは、この伸び縮みする範囲でも素材の復元安全性の範囲で考えます。木材の繊維方向の許容応力度は、決められた数値によらなければなりません。なお、圧縮、引張り、曲げ、せん断の各基準強度は、樹種及び品質に応じて告示に定められています。(平成12建告1452)木を鉄やコンクリートに類似させて解析を行う方式で、現段階では木造住宅の構造計算は、この方式が一般的に取り扱われています。 限界耐力計算

限界耐力計算とは、許容応力度計算に対して詳細な計算を行い、変形量を直接求める方法で、耐久性等既定以外の仕様規定を満たす必要がありません。この計算方法は、木造住宅レベルでは、高度になりすぎて、よほど複雑な構造の場合以外は、使いません。ただ、軸組木造建築の耐力評価については、木造構造学では研究対象としてかなりのレベルまで進化しています。このお陰で、伝統構法に木造耐力があることが、次第に解明されつつあります。

 

§伝統構法と在来構法の違い

 『伝統構法』 は壁量に頼らず、構造架構そのもの、すなわち 『木組み』そのもので家の構造を持たせ、壁に耐力を求めていません。壁はパーテーションであり、木を力強くバランスを考えて組み合わすことによって、耐力を生み出すことが 『伝統構法』 の考え方です。 『伝統構法』 は木組の架構そのものであり、長年にわたり受け継がれて来た型があります。京都の町家は、間口方向は梁を用い奥行方向は半間ピッチの柱で構成させる独特のスタイルを持っています。基礎は「一つ石」という石に直接柱を建てる方式です。 これに対して『在来構法』は、近代力学に根拠を持ち、筋交、それに伴う金物及び構造用合板に類するもので、耐震上有効な壁量を確保して家を建てる構法です。継ぎ手・仕口部分は金物で補強し「剛」に柱・梁を構成します。基礎に緊結された土台の上に柱を建てる方式です。木のねばりや継ぎ手の変形対応力を評価しないこの構法が現在の建築基準法が認める木造の構造になっています。 現在、我が国で建築されている木造軸組み構法住宅の99%は在来構法であり、伝統構法は1%程度です。


Ⅴ-快適な家づくりの不可欠な断熱を重視する

§夏の涼しさの確保

 ■屋根の断熱性能を上げる

 

 次世代省エネ基準が重要視され始めました。とりわけ屋根の断熱性能を要求しています。それは、夏の太陽からの輻射による受熱が家を熱くする要因だからです。 夏のお寺の本堂が涼しいと感じるのは、屋根からの輻射熱が遮断され、室内の温度上昇が極端に抑えられているからです。屋根の断熱性能を重視した断熱を行います。

 ■湿度を下げる

 快適な涼しさを確保する手段として注目されているのが、湿度調節です。除湿機能が付いている空調機も増えています。冷房よりランニングコストはかかりますが、寒すぎない快適な涼しさは、湿度調節によって実現できます。これは湿度が低いと身体の蒸発潜熱(気化熱)により、体から熱が放熱し、涼しく感じられるためです。 室内湿度の調節には、無垢材や珪藻土と言った調湿機能を持つ素材を用いることも重要です。ただ、通風などで空気の出入りが多いと、その効果は大変小さくなります。無垢素材の調湿力を活かした家づくりを行います。    風を起こす

扇風機を使用する家庭が随分少なくなりました。「扇風機の風は、体に悪い。」という神話があるようです。風によって、身体の放熱及び発汗が促進されます。暑いときは、発汗に伴う蒸発冷却作用が有効に利用されます。最近のゆらぎ機能を持った扇風機でも自然の風が持つ変化を実現するのは困難ですが、扇風機は見直すべき夏の電気製品と考えられます。風の通りを意識した環境計画を行い、低エネルギーで心地よい住環境の創造しています。

 ■冷輻射を活用する

 氷のオブジェの近くに行くと涼しいのは、氷からの冷輻射により身体が冷やされるからです。身体より冷たい物による冷房効果は冷輻射パネルの開発に繋がっています。柔らかな涼しさを確保する装置として、今後取り入れていきます。

§冬の温かさの確保

 ■断熱性と気密性を先ず重視

暖房は、まず家の断熱性能の向上を図ることが第一課題です。どんな良い暖房器具を用いても、床・壁・天井からの熱損失が大きければ、暖房エネルギーのロスに繋がり、快適性を損ないます。断熱の中でも、外部建具とそのガラスからの熱損失は大きなウエイトを占めます。二重・三重サッシュによる開口部からの熱損失に気を配ります。 次に重要なことは、家の気密性です。どんな暖房器具を用いても、隙間から熱が逃げてしまっては、暖房のエネルギー損失が生まれてしまいます。この時に無視してはならないことが、換気です。密閉された空間は暖房効率は向上しますが、居住者の健康に取って好ましくない事態を産む場合があります。一時間に室内の空気の半分が、新鮮な空気に入れ替わるだけの換気を確保するようになってきています。また、内部の温めた熱を外に逃がさない熱交換器が付いた換気扇が多くなってきており、これらを適切に用いて、換気による熱損失を少なくすることを心がけています。

 ■温輻射による暖房

 

 

 輻射熱暖房電気器具や輻射パネルヒーターなどは、体を直接温め心地よさを与えてくれます。多くの住宅では、輻射の面積を確保することが難しいことや、輻射熱を重視しないこともあり、日本ではあまり普及していないのが現状です。これからは、この輻射熱を重視した暖房を推奨しています。

 ■上下温度差をなくす床暖房

 

 床暖房は、頭寒足熱を実現する理想的な方法です。床から熱伝導により直接足を温め、室内の温度分布を均一にします。 活用の留意点は、熱効率の面からは断熱性能の低い家で使うとやはり熱損失が大きくなり、不経済になる可能性があると言う点です。特に、配管や床の断熱には注意を図り、効率良く利用できる環境を整えた上で導入しています。



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