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Ⅰ-山の木を使って、健康で温もりのある「家」を創る

§住環境が健康に与える影響

 

 「食」が健康に与える影響は多くの人の認知するところですが、「住」が健康に与える影響はまだ認識できていません。全ての人間環境の内で〈住居〉が70%の影響があると言われています。今、無垢材「木」の効果・効用が次第に明らかになってきました。「ストレス緩和作用」、「抵抗力増強作用」、「断熱作用」、「調湿作用」、「音まろやか作用」、「光の緩衝作用」、「快適安手触り作用」、「火災被害最少作用」、「衝撃l吸収作用」、「空気浄化作用」などがあります。これら無垢材=〈建築素材〉効果効用に加え、空間の持つ心理学的効果を活かして、オリジナルな住空間の提供を行います。

 

§木のストレス緩和力の研究

 

 京都大学医学部教授の齋藤ゆみ氏は、「木質空間およびビニール空間における疲労・ストレスの緩和効果」の研究を行いました。(木材学会誌第五五巻第二号掲載) 木の空間が果たして我々の身体に物性的に何かの作用を働かせ、心身に変化をもたらすかどうかの実験でした。この実験で、生科学的・心理学的指標からの比較による考察を行なったのです。この実験結果では、 【木質空間の方が、ビニール空間より活気を除く、不安、抑鬱、落ち込み、 怒り・敵意、疲労、混乱などのストレス状態を示す因子の値が有意に低下している】ということが、実証されました。 木のどの要素がどの様に作用したかという因果関係は不明ですが、木の居室の方が、ビニール空間よりも少なくともストレスを早く緩和させる効果があると判断される結果でした。

 

  又、斎藤先生自らが、木のマンションリノベーションを行いました。壁は漆喰壁と桐の板を貼り、床はナラ無垢材のフローリングで、外部サッシュには内障子で2重建具にしました。そうしたら、驚くほど居心地の良いマンションになりました。

§生産地=「山」と消費地=「都市」を結ぶ

  

 今まで、無垢材を住宅で使うことは難しいとされていました。我々は、コスト面、技術面、供給面のすべてに渡ってこの問題をクリアしました。山との連携で流通コストを押さえ、職人の参加を得て味のある仕上げを生み出し、プレ加工を導入して無駄な人件費をおさえました。これによって今まで不可能とされた質の高い、個性豊かな「木」の住宅を実現します。

 

§地球環境への貢献

 

 国土の70%を占める日本の森林資源は、人工林が年間3%の勢いで成長しています。この内日本人が消費しているのは僅か1%しかありません。 即ち、有用な森林資源は、今使われないまま生産され放置されているのです。 都市に人口が集中する現代日本の土地利用構造から都市部の居住者が森林資源の活用を図ることは、日本の都市と森林の連関を再構築することです。 ①1軒の家を建てると山の木材を20㎥程度消費します。 ②この森林資源の活用によって、山の木が再生産されます。 ③木材を伐採して使用することで、新しい木が育ち活発な炭酸同化作用を促します。 ④この炭酸同化作用で、空気中のCo2が固定化されるのです。 これらの一連のサイクルが、地球環境に好循環に働きます。山の木を使うことは地球温暖化を防止することなのです。

 


Ⅱ-自然材・無垢材で長持ちする家を創る

§「自然石」や「古石」

 

 無垢の石は長く使えます。自然の石は使うほどに味が生まれます。自然の石は様々な加工が可能です。町家再生では、この石の再生利用が、その家に伝わる歴史を最もよく継承してくれます。日本の石の使い方は、ヨーロッパに比べると活用度は低いですが、独自の風合いを生み出す手法を持っています。石の味を建物づくりに生かしています。

 

§ロートアイアインの質感

 

 鉄はもともと硬くて冷たい無機質な雰囲気を持っています。しかし手作りによるロートアイアンはハンマーで叩いたり型で曲げたりすることで、暖かみのある鉄へ表現することが可能です。今までは無垢材である木材の質感に対して、無垢の鉄を調和や対比をして使っています。

 

§ガラス・土・紙の調和

 

 アルミは、加工が簡単で、気軽に使える材です。アルミとガラスと木の取り合わせは、新感覚の素材の取り合わせです。 「土壁」と「障子」は伝統的な和風のコンビネーションですが、現代的に自由に光を演出する装置として活用します。 光の透過する量が生活の時間帯の変化と共に変化する様は美しいシルエットと生んでいます。

 


Ⅲ-光が変化し、爽やかな風が抜ける「家」を創る

§「伸びやかな空間」の広がり


 
 我々は、住宅を立体的な空間として、如何に伸びやかに使うかを考えています。 屋外と屋内は繋がりを持たなくてはいけません。自然の恵みを受け取る空間の仕掛けが必要です。縦の高さ方向にも広がりが必要です。視覚的な見えの変化も重要です。そうした演出によって、広々とした豊かな空間を生みだしています。 我々は出来るだけ「引き戸(スライディングドア)」を用います。これは、引き戸が広がりをコントロールする仕切り機能を持っているからです。

  

§「光」と「影」の空間装置

 

 光は、夏と冬では全く異なる影響を住宅に与えます。朝と夕方でも異なる環境を創り出します。昼と夜も又異なる雰囲気を醸し出します。この時間的な変化を縦横に楽しむ空間創りを考えています。家に過ごす全ての時間を生き生きと過ごすことが出来るよう配慮しています。

 

§生活と「景」の一体化

 

  

 家の内からの「景」は、住む楽しみにとって大きな役割を持っています。日本の伝統的な空間方式である「生け取り」、「借景」、「地窓」、「坪庭」などは良く使われる手法です。狭い敷地を有効に活用したり、密度の高い設計を行うことによってこうした楽しみを得る手法を数多く経験しています。「四季を楽しむ」ことは、日本文化に脈々と継がれた手法です。この文化を現代生活様式に合わせて生き生きとした「景」づくりを行います。造園家と連携し、新しい「庭」づくりも行っています。

 §自然の「風」

 

 

 緑豊かな「庭」を通った「風」は葉ついた水分の気化熱によって温度が下がっています。この庭からの「風」は、心地よい居住環境を作り出します。暑い時の「風」は、心地良い生活環境を作り出します。出来るだけ自然の変化を利用した居住環境を作り出すことを大切に考えています。

 

 §豊かな「吹抜け」空間 

  

 「吹抜け」を設けると施工費は上がりますが、住宅の豊かさは向上します。予算と快適さの狭間で、いつもギリギリの設計を行っています。玄関と階段室を一体化して縦動線を吹き抜けとして、且つ玄関の豊かさを確保します。京町家の「ハシリニワ」からこの手法を生み出しまた。「準棟纂冪(じゅんとう」さんぺき)」と呼ぶこの吹き抜けは、本来台所の煙抜きと明かりとりの機能を持っていました。この空間は、大工さんの腕を見せる場でもあったのですが、今日この空間が町家の豊かさを表現するシンボリックな空間として捉えられています。我々は、今日の敷地条件の厳しい住宅においてホッとする空間として位置づけ、大切にしています。



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