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ようこそレッドカーペットへ

「ようこそレッドカーペットへ」〜ご挨拶に代えて〜

僕は映画になんぞ全く関心がなかった。
映画の魅力を伝えてみたい。そう思うようになったのは、ふとしたきっかけからだった。
2004年のある日、ネットで偶然、映画の予告編を見た。
トランペットをくるくる回す女子高生達。
女子高生とジャズ?!
思わず惹き込まれた。
「スウィングガールズ」という邦画である。監督は矢口史靖という人だった。
何回も予告編を見た。
 ここまで虜になってはしょうがない。
僕は何十年か振りに重い腰を上げた。
映画館という場所へ行く事にした。
行ったのはシネコンという巨大な映画集合施設。
ポップコーンの臭い。人の行列。チケット売り場はどこだ?
まるで初めて飛行場に行ったように右往左往する。
チケットを買い求め、劇場の椅子に座る。
ふかふかだ。座り心地がいい。悪くないな、と思っていたら予告編が始まった。

大きなスクリーン。巨大な画像と臨場感溢れる大音響に圧倒される。
「おお、これが最新の映画館なのか」とそれだけで感動した。
やがて本編が始まる。スクリーンで何十年か振りに見る映画。
僕は夢中になった。
そのあと、ぼくは「スウィングガールズ」を劇場で14回観るハメに陥る。
14回目を観た時には、既に僕は「映画」そのもののファンになっていた。
そして映画を劇場で鑑賞する事は「映画と観客の一期一会」である事を知った。
僕は「スウィングガールズ」という映画を14回観た。
結果、14回共に全く違った観客の反応があったのである。
劇場の雰囲気、まさに「空気感」は、同じ映画を観ているはずなのに毎回違う。
それを自分の眼とカラダで正に体感したのである。
だから映画はぜひ劇場で観るべきだと僕は思う。
それ以降「いい」と思った作品は、複数回、劇場で観る事にしている。
やがて僕は、観た映画の感動を、せっかくなので何か記録にとどめたいと思うようになった。そこで始めたのが、ネットでの映画レビュー投稿である。
2004年から始まり、現在に至るまで約380本程度の映画レビューを書いた。
それら過去の映画レビューも順次この「パブー」で公開してゆこうと思っている。
まずはもっとも、ホットな今年2013年、
僕が「ついさっき観て来たばかり」の映画レビューを順次連載してゆこうと思う。

これは僕にとって正に「映画に宛てたラブレター」であり、拙い文章を読んで下さる読者の皆様への「レッドカーペット」への「ご招待状」でもある。
では、映画の世界をごゆっくりお楽しみ下さい。

ご案内役 天見谷行人

「シェフ! 」〜三ツ星レストランの舞台裏へようこそ〜

2013年1月3日鑑賞


***シェフ、最高の一皿でした!!
***





美味しかったねぇ、この映画は。いい映画は、劇場を出るときのお客さんの顔で分っちゃう。レストランも映画も一緒。満足したお客には笑顔があるのです。
天才的な味覚と嗅覚を持った主人公、ジャッキー。彼はもちろん料理の腕も抜群。だけどこういう人に限って、なぜだか世渡りが下手なんですね。
だから、どのレストランで働いても、もめ事を起こしてクビになってしまう。ジャッキーには妊娠している恋人がいます。まだ籍は入れてない。「結婚しよう」 とプロポーズはしたいんだけど、なにせ生活が不安定。何とか恋人と安定した生活を送りたい彼は、やむなくペンキ塗りの仕事をしています。
そんなジャッキーにチャンスがやってきます。
料理番組まで持っている有名三ツ星シェフ、アレクサンドル(ジャン・レノ)が、助手を捜していたのです。やがて二人はタッグを組んで、レストランの三ツ星を守るため奮闘するというストーリー。

やはり、ミシュランの三ツ星の権威というのは大変なもので、もし、万が一☆がひとつ減った!なんて事になったら、もう大変。
ジャン・レノ扮する三ツ星シェフ、アレクサンドルは雇われの身です。レストランオーナーからは
「ひとつでも星を落としたら即刻クビだ」とプレッシャーをかけられているのです。このオーナーが、二代目社長でありまして、青年実業家なんですね。現場の 事なんて何にも分ってないんです。だから、シェフに無断でキッチンの改装工事をしよう、客席の数を増やそう、なんて計画中です。そんな無理難題ばかり言っ てくるオーナーにいい加減嫌気がさしていたアレクサンドル。
だけどそうも言っていられない。近日中にミシュランの調査員がやってくると言う情報が入ります。

「どうしよう、新しい創作料理を大至急作らないと☆が減ってしまう」
そこで三ツ星シェフ、アレクサンドルと助手ジャッキーは、最先端のフランス料理を食べさせると評判の、ライバル店へ偵察に行こうとします。
だけど料理番組まで持っているシェフは当然、「メンが割れてる」訳ですね。そこで二人はとんでもない方法を思いつくのですが……。

まあ、それは劇場でお楽しみ下さいませ。


何しろこの偵察シーン、僕が鑑賞していた劇場では全員大爆笑!!
まじで?  ジャン・レノって、ドラえもん以外にこんな事もやるの? って感じです。もう、とにかく観て笑って頂くしかないですね。
そして、何より、スクリーンでとっておきのおいしそうな料理をたっぷりと御堪能下さい。
お正月の初笑いにはピッタリですよ。僕は初詣のついでにもう一回観に行ってきました。
う〜ん、満足、満腹の一皿という作品でした。
**********************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ
監督   ダニエル・コーエン
主演   ジャン・レノ、ミカエル・ユーン
製作   2012年 
上映時間 84分

予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=_9HS3XWGRZg&feature=share

レ•ミゼラブル

2013年1月23日鑑賞

***大作を作ってみた感はあるけれど***

前半のアン•ハサウェイの部分と、後半、学生、市民たちの武装蜂起の部分、これは見応えがありました。というか、途中は寝ちゃったのでよく分かんないのですが……。
アン•ハサウェイは、よく演じていたと思いますよ。
以前の彼女の作品では、可愛いだけの女の子としての役柄が多かったようにおもいます。
今回は縫製工場に勤めるシングルマザーです。
貧しさのため子供を預けています。お針子の仕事も、夜の体を売る仕事がバレてクビになってしまいます。遂には貧しさから自分の髪の毛まで売ってしまう。そういう悲惨な境遇の女性をどう演じたら良いのか?
アン•ハサウェイの眼がすごかったんです。
「自分にはこんな役、演じられない! もう、どうしていいか分らない!」という悲痛な表情。
僕はこれ、監督が狙って撮った表情だと思います。
そう言う精神状態になるまで,役者を追いつめるんです。
キツイことですけど、いい作品をつくろうという覚悟のある監督ならそれをやる。
邦画では李相日監督が「悪人」のとき、妻夫木君と、深津絵里さんにそういう追いつめ方をやりました。
後半の武装蜂起の部分、群衆劇としての見せ場ですね。僕は舞台版「レ•ミゼラブル」は観ていないのですが、おそらく映画作品にするより、舞台での群衆劇の方がいいんじゃないかとおもいました。
立ち上がる学生たちのうた声、たなびく三色旗。旗を振るたびにバサッバサッという音さえ聞こえる。それは映画では再現されていません。もったいないことです。とても効果的なのに。なんで入れなかったんだろう? 旗の音を。
また、上映が始まってまず驚いたのは、スクリーンのサイズなんです。
これ、なんと、標準サイズなんですよ。ビスタサイズではないんです。監督のこだわりなんでしょうか? 僕はまるで一昔前のテレビを見ている様でした。 いまいち狙いがよく分からなかったですね。
僕がカントクなら、これだけの大作なんだし、思い切って3Dミュージカルにしてみたいですね。
舞台で大ヒットしている作品の映画化なのですから、映画にしか出来ないことをやるべきでしょう。
キャメラアングルの移動、大規模なロケーション。そして編集。これらは舞台では絶対に出来ないことです。これだけいい題材なんだから、もったいないなぁと思った作品でした。

********************
ちなみに、フランス国歌「ラ•マルセイエーズ」の歌詞がとてつもなく過激な歌詞であることは、ご承知の方も多いと思います。7番まで歌詞はあるそうですが、一番とリフレインの歌詞はこちら

進め 祖国の子らよ
栄光の日は来た!
我らに向かって 暴君の
血塗られた旗が 掲げられた
血塗られた旗が 掲げられた
聞こえるか? 戦場の
獰猛な敵兵の咆哮が
奴らは君らの元に来る
君らの子と妻の 喉を掻ききるために!

市民らよ 武器を取れ
隊列を組め
進め! 進め!
敵の汚れた血で
我らの畑の畝を満たすまで!

******
とまあ、こんな感じです。やはり、革命のお国柄なんですね。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   トム•フーパー
主演   ヒュー•ジャックマン、ラッセル•クロウ、アン•ハサウェイ
製作   2012年 
上映時間 158分 

 
予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=cl9gni_N_hk




ファースト•ポジション 夢に向かって踊れ!

2013年1月29日鑑賞

***それでも君は踊り続けるのか***

以前バレエの先生と話をする機会があった。
「先生、バレリーナって結婚を機会に引退って考えるものですか?」
一瞬、間があった。
こいつ、何をアホなことを訊いておるのだ、という感じで
「何言ってんの!! たかが結婚でバレエ辞めるもんですか!!」
今度はこちらが「エッ?!」と絶句した。
バレエのセカイ等、何も知らない私には思いもつかない言葉だったのだ。バレリーナにとっては、人生の一大イベントである結婚も、「たかが」結婚なのである。彼女たちにとってバレエとは、人生そのものなのだ、と了承した。
食べるのもバレエのため。肉体トレーニングもバレエのため。普段の何気ない生活もバレエを中心に廻っている。

この作品は、バレエダンサーを目指す若者たちの、コンテストの模様と、そこに出場するまでを取材したドキュメンタリーである。
全世界レベルで行われる決勝の舞台、誰もが憧れるファイナリストになるためには、まずは各国で行われる予選を勝ち抜かなければならない。その予選ですら、凄まじくレベルが高いのである。
「もう、この子は天才」
「彼女は踊るために生まれて来たんだ」
なんて言うティーンエイジャー達が、それこそ掃いて捨てるぐらい集まってくる。

そんなコンクールに出場する本人は、もちろん緊張はしている。しかし、それ以上に、家族や専属のコーチの緊張がハンパでは ないのだ。自分たちが手塩にかけて磨き上げ、育てた才能。それが世間に認められるのか? それとも今までやって来たことは全て無駄だと全否定されるのか?  
実はこのコンクールは本人だけでなく、親と、指導者が、バレエにどれだけ真摯に取り組んだのかが判定される、評価される場でもあるのだ。それはまるで最後の審判さながらだ。
親が我が子のバレエに賭ける金の使い方も尋常ではない。
自分の子供をバレエダンサーにしようと決意した親にとって、「お金」は、もはや、タダの紙くずである。それこそ湯水のようにジャブジャブお金を使う。
子供のために専属の振り付けの先生を雇う。レッスンも広い専用ダンススタジオを丸ごと借りる。一足80ドルするトウシューズは一日で履き潰す高価な消耗品だ。
娘がコンクールを目指している会社社長は、娘の練習環境を整えるために自分の会社さえ移転させてしまう。
全ては愛する娘や息子のバレエのため。成功の切符を手に入れるため。
バレエに限らず、芸事を仕事にする、それで「飯を食っていく」ということはとても困難な道のりだ。実力はもちろん「運」も大切な要素だろう。
コンクールの映像は、観客として観ているこちらの胸まで苦しくなる。
とても残酷なのだが、ここで勝者と敗者がはっきり分かれる。
幸いにも選ばれた若者達にとっては、正に夢の切符を手にしたようなものだ。
「あなたは夢を追い続けなさい」と大人達から許された特権階級の仲間入りなのである。
彼らのある者は、バレエ団からオファーがあり、ある者には名門バレエ学校の入学許可、スカラシップが与えられる。
スポットライトを浴びることを許されるのは、ほんの一握りの若者達だけ。
彼らは夢の階段をひとつ上った。
しかし、まだ次の階段が待っている。
いま、舞台袖から、スポットライトのその先へ、まさに踊り出そうとする若いダンサー達。思わず声をかけたくなる。
「君の歩いて来た道は間違ってない。自分を信じなさい。このチャンスを楽しみなさい」
若いダンサーは夢への一歩を今踏み出すのだ。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   ベス•カーグマン
主演   アラン•ベル、ジュールズ•ジャーヴィス•フォーガティ、
     ミケーラ•デ•プリンス
製作   2011年 アメリカ合衆国
上映時間 94分 


予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。
http://www.youtube.com/watch?v=c4BYOCglirQ&feature=share

木洩れ日の家で

2013年2月4日鑑賞


***モノクロームが映し出す「人間の枯れ方」***


モノクロームの画面から、様々な色彩が鮮やかに立ち上がってくる。監督の絵心に思わず魅せられてしまう。
予告編を見て「これはどうしてもスクリーンで観てみたい」と思っていたが、ようやく劇場で観ることが出来た。



森 の中の古びた二階建ての家。俗な世間から隔絶された様な佇まいをみせる家。主人公のおばあちゃんは、愛犬フィラと二人でここに住んでいる。一人息子は別に 家を持っていて、忘れた頃に訪ねてくるだけ。だから愛犬フィラは、おばあちゃんにとって、ただ一人の家族であり、子供であり、話し相手であり、頼りになる 相棒でもある。
この犬の名演技には本当に感心させられる。喜び、怒り、悲しみ、好奇心、従順。ありとあらゆる表情を見せて、観客を楽しませてくれる。この何とも愛らしい犬、フィラの表情だけでも充分一本の映画が撮れる程だと、僕は本当にそう思う。
もちろんこの映画の魅力はそれだけではない。
主人公のおばあちゃんを演じるポーランドの女優ダヌタ•シャフラルスカの表情に注目したい。
時折クローズアッップで彼女の顔が映し出される。

彫刻を思わせる様な首筋の深いシワ。年齢を重ねた目元、口元の小じわ。そのシワが決して醜くは映っていないのだ。むしろ、シワの一本一本が無言の演技をしているかのようだ。
ひとりの女優、ダヌタ•シャフラルスカとして、演技とどう取り組んで来たのか? また、一人の女性としてどう「老いて来たか?」その「枯れ方」が美しく「枯れている」のである。
顔はその人の心の履歴書でもある。自分の人生とどのように真摯に向きあって来たか?
残酷だが、それが顔に出るのである。
この女優さんには、老いてなお人を魅了する豊かな表情がある。
美しい歳の取り方とは、こういう人のことを言うのだと思う。
きっとこの人はのびのびとした少女時代を送ったに違いない。
心にたっぷりと滋養を受け取りながら育って来た人であろう。
この作品は、極論してしまえばストーリーらしきものは、あってない様な物である。
おばあちゃんと愛犬フィラとの日常会話で、ほぼ作品が成り立っている。それでもこの作品は観る人を惹き付けて止まない。
キャメラは、おばあちゃんの一軒家を取り囲む森の木々、その緑の木の葉を映してゆく。
光が木の葉にあたる。
木の葉たちの光の反射は、まるで光そのものが饒舌なおしゃべりをしているかのようだ。
刺す様なキラッとする光、周りを明るくする光、少し陰った光。ひっそりと控えめな光。木々の光の強弱をキャメラに捉えるだけで、これだけ豊かな表現をなし得た、ドロタ•ケンジェジャフスカ監督の映像感覚は本当に素晴らしいと思う。
色あせて一見モノクロの様に見える人生になっても、光り輝く、色彩豊かな心を映しとってみせた監督の手腕。人が歳を重ねることの美しさ。女優ダヌタ•シャフラルスカの魅力をじっくりと堪能したい、逸品であるといえる。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ


監督   ドロタ•ケンジェジャフスカ
主演   ダヌタ•シャフラルスカ、クシシュトフ•グロビシュ
製作   2007年 ポーランド
上映時間 104分


予告編映像はこちらのアドレスをコピーしてお使い下さい。

http://www.youtube.com/watch?v=mS8Q388syZs&feature=share




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