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当日

もう半年も前から気にし続けた今日の天気予報は雨のち晴。

明け方まで降り続いていたものの初夏に入ろうかという頃だからか、1~2時間の太陽で
地面はだいぶ乾いてきている。

この一週間、この日を泣き腫らした目で迎えるのではないかとずっとハラハラしていた。
明け方まで雨が残ったのは、きっと私の代わりに泣きはらしてくれたんじゃないだろうか。

唯一の式に参加する肉親として、家族からの手紙になんと書いたものか悩んでいたのもあるし、
当日のことを考えて泣き出しそうになっていたのも半分あった。

「一体、お嫁さんにはどうやってプロポーズしたの?」

一連の報告が終わって、お互いの気まずさも少し解消した頃にそう聞いたことがある。

「・・・笑わないで欲しいんだけどさ。逆プロポーズなんだ。」
割とリーダーシップをとったりする方の兄にしては珍しい気がしたのが顔に出たのかもしれない。
兄は苦笑して続けた。

「『みさきちゃんのことが好きなのはわかってるし、そのことで悩んでるのもわかってる。
調子がいいこと言ってるように思うだろうけど、私はそこも含めて悠だと思ってる。
だからみさきちゃん以外にそういう悠を受け止めてあげられる人は必要なんじゃない?』ってさ。」

このプロポーズを聞いて、なんで兄が私に気持ちを打ち上げてくれたのかがわかった気がしたし、
正直この人には適わないと一言で理解した。
だからこそ、そこまで感じたからこそ、家族からのスピーチを引き受ける覚悟が出来たのかもしれない。


「では、ご家族を代表して新郎妹さまよりお手紙をいただいております。」
「本日はお忙しい中・・・・・・」

直前まで緊張してご飯の味もわからないくらいだったが、手紙を読み始めると昔の気持ちが次々と思い出されて
なんだかアルバムをめくっているような気分だった。

親の再婚のための食事会ではじめて悠を見た日、引っ越してきて一緒に暮らすようになってからの悠、
たまに遊びにくる友人達と過ごす悠。

「兄と出会ってからこれまでを過ごしてきて、わかったことがあります。
家族になるってこういう出来事の積み重ねなのだということです。
今日から兄はまた新しく家族になることを始めていきます。
でも、心配はしていません。
言わずもがな、新婦のお人柄を信頼しているのがもちろおん第一ですが、
兄と家族になってきた妹がいうのだから間違いありません。
どうぞ素敵な家族になっていってください。」

多分今日は悠のことを好きだって思っても許される最後の日だと思う。

だから心の中で妹としてのスピーチでは言えなかった本当の最後の締めの言葉をそっと呟く。

大好きな悠へ みさきより

奥付



明日には間に合わない 3


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著者 : 大河内 葵
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