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冥い夜

 

黄色の闇が来る。

 

渦を巻く黒い雲を従えて、

宙(そら)が黄色に汚染されていく。

 

 

 

白い闇が来る。

 

黒い雲が敷き詰められていく天(そら)に、

白が滲み出てくる。

 

 

 

遠くに見える気圧の塊に、

冥(くら)い夜が浸食されていく。

 


いろはにほへと

 

畳の小径の脇の線路に

面電車が通り過ぎる

の欠片を敷き詰めたような

先の露台(テラス)は

んのりと

リドットに染まってみえた

 

は経ち

さかったその背に届かなかった

檎をもぐのは容易く

るまった

ビィ色の艶やかな表皮

き出でる泉で冷やす

顔が

だとても切なくて

情がこみ上げる

 

の容良い唇が

いだ言葉のひとつひとつを

りに堕ちても

くしたりしたくない

 

園へ

かう君は

かないで

くはずだから

される僕はせめて

荷にならないように

の両端を上げて

らかく微笑もう

だけを見る君には

して伝わらないだろうけど

 

切を こ越えて

に立つ君の

には冷えた林檎

の天(そら)は白く輝き

え冴えとした空気に

々が映える

く手を見つめる彼の視線の強さに

暈がした

 

ら し思惟し

んだ ひ『光』

め続ける君の

中をそっと見上げる

ノウドロップの僕

 

 


しゃぼんだま

 

「しゃぼんだまが綺麗なのは、きっとすぐに壊れてしまうからだね。」

 

そう云った君の微笑みが、僕の穢れた躯(からだ)を浄化してゆく。

 

しゃぼんだま、ひとつ。

ぷつと弾けて、名残の欠片さえ遺さず失せる。

僕の視界が遮断され、光の欠片さえ遺さず失せた。

 

しゃぼんだま、ひとつ。

飛び立つ事も無く、未練の片鱗も見せず消える。

僕の手足が寸断され、希望の片翼も見せずに消えた。

 

しゃぼんだま、ひとつ。

上空を目指して、たったひとつで散って無くなる。

僕の心は凍結し、たったひとりで散って無くなった。

 

しゃぼんだま、ひとつ。

しゃぼ、ん、だま、ひと、つ。

しゃ……、だま、……と、つ。

し……、……ま、……。

……ま、……。

……。

 

僕は、ゆっくりと、確実に、着実に、明らかに、毀れゆく。

 

 

 

それでも君が僕の事を綺麗だと云ってくれるなら、

それでも僕は良いと思える。

 

 


果て

 

「其の果ての向こうには、何が在るの、」

「果ての向こうには何も無い。だから、『果て』なのさ。」

「果ての向こうには何も無い世界が有る、って事、」

「『何も無い世界』なんてものが存在するなら、其処は『果て』じゃあない。

 『果ての向こう』などという概念が誤りなんだ。

 『果て』より先は『時間』も『空間』も『想い』も何もかもから隔絶された究極の『無』でなけれがならない。

 そして其の『無』すらも在ってはならない筈。」

「それじゃあ、」

「僕等の『脳』に『心』に『果ての向こう』という『言葉』がある限り、僕等は『果て』へ到達する事は無い。」

「僕等は進んで往けるんだね、一緒に。」

「ああ、永遠(ずっと)。」

 

 

 

そう云って踏み出した、僕等の足の下の、自由。

 

 


花火

 

短い夜

一瞬の花火

君と僕

 

 

 

光の後を追う音は

目に見える刻(とき)

 

二人の間の群青と

宵宮の堤燈の対照

 

合わす視線に絡まる感情が

はらはらと闇に融ける

 

 

 

刹那の夢

彩る天(そら)

右手と左手

 


この本の内容は以上です。


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