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はじめに

はじめに

 この短編小説集は、私が大学生の頃に書いたものです。内容は、むちゃくちゃで残酷だったり、わけがわからなかったり、どうしたもんかと頭を抱えるような、そんなのばっかりです。大学を卒業するときに、ある程度まとめて本にしたのですが、今回せっかく電子書籍を作れるようになったので、もう一度そこそこ今でも楽しめそうなものを選りすぐって本にしてしまおうと考えたのです。

 約15年前に書いた文章を何を今更とも思うのですが、とりあえず暇つぶしとして、楽しんで頂ければ何よりです。

 

もけもけ



るんるんちょよちゃん

るんるんちょよちゃん

 がっこうがおわったので、ちょよちゃんはともだちのろろちゃんといっしょにかえることにしまちあ。まだ2じすぎなのでいっぱいあそべます。ろろちゃんとふたり、きょうはなにをしてあそぼうかのそうだんです。でも、なにをしてあそぼうか、なかなかきまりません。おままごとも、おにごっこも、みいんなあきてきちゃったのです。

「とにかくうちにおいでよ。おかあさん、きょうはようじでいないの。」

 ちょよちゃんはろろちゃんをおうちによぶことにしたのです。

「じゃあ、ランドセルおいたら、『どうたぬき』もって、すぐにいくね。」

 そういって、ろろちゃんはるんるんとスキップしていったんじぶんのおうちにかえりました。ちょよちゃんもいえにかえって、ろろちゃんをまちかまえます。

「きょうはちのあめがふるのぅ。」

 ぴんぽんとチャイムがなったので、ちょよちゃんは『むらさめ』をかたてにもって、ろろちゃんをでむかえました。がらがらと、とびらをあけてあげました。

「一刀両断じゃあ!」

 ちょよちゃんの目の前を白い閃光が走る。鼻先数ミリで刃先は逸れたが、ろろちゃんは瞬時に手首を返し、今度は体を斬りにかからんとする。これには村雨を縦にして対抗、胴田貫とぶつかりあい、まるで寺の鐘のような音がする。

「ぬう、流石は妖刀村雨。この胴田貫と渡り合うとはの。」

 力勝負が続く。少しでも気を抜けば斬られるのは必至である。膠着状態が延々と続くかに見えたその瞬間、ろろちゃんが胴田貫をほんの少し、後ろに引いたのである。そして、その引いた刀を満月の如く回し、逆方向からちょよちゃんの左腕を切り裂いた。触れぬ物さえ切って捨てる胴田貫である。傷が浅かろう筈もなく、深紅の血がどくどくと流れ出した。ちょよちゃんの顔が苦痛に歪む。

「次はその程度ではすまぬぞ。」

 ろろちゃんの容赦なき突きがちょよちゃんを襲う。後ろに下がりながら突きを避け、攻撃の機会を探るが、それも見当たらぬままに背が壁についてしまった。それとばかりに、ろろちゃんは必殺の突きを見舞ったのである。

「ま、まさか……」

 本当に一瞬であった。最後の突きを避けられないと悟ったちょよちゃんは、自ら飛び込み、突きを体で受け、同時にろろちゃんの右肩から左足までを一直線に切り裂いたのである。2つに分かれたろろちゃんがずしんと崩れ落ちた。妖刀は血に満足したのか、さも満足げに輝いていた。


一枚の葉

一枚の葉

「あの木の葉がすべて散ってしまうとき、あたしも死ぬのね……」

「そうや。」

「……マジ?」

「こんなんでウソ言うてどないすんのん!あんた、母親が言うてることが信用できへんなんて思てるんとちゃうやろね!ああ、情けないわぁ……」

「でも、あたしの命とあの木の葉に因果関係なんてないじゃない!」

「あんたが言ったんやないの!葉っぱがなくなったら死ぬって。ウソ言う子はお母ちゃん嫌いやで!ちゃんと自分で責任とりや!」

「そうじゃなくて、あれはあたしがロマンチックな雰囲気になりたいから……」

「ロマンだかマロンだか知らへんけどね、とにかくあんたは死ぬんやからね、わかった?……ちょっと、何泣いてんのん?泣き虫もお母ちゃん嫌いやで!」

「だって……死ぬって……あ、先生!」

「どうしたのかね?かわいい顔が台無しだぞ。」

「だって……お母さんが……あたしのこと……死ぬって……」

「そうだよ。」

「え?」

「っていうかぁ、死ね!」

「えらいっ!先生、よう言うてくれはった!さすがに一流の大学出てはる!」

「死ね!死ね!死ね!」

「そんなに何回も言わなくても……」

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」

「ひどいっ!ひどいわ!こんなのって……そうよ、そうよね、あの木の葉が全て散ってしまうとき、あたしは死ぬんですものね……」

「葉っぱなんて関係ない。とにかく死ね!」

「そうや、お母ちゃんもそう思うで!早く死んだほうがええって!」

「……わかったわ、私、本当はお母さんの子どもじゃないのね。だから!」

「何言うてんの、この子は……あんたはお母ちゃんがお腹痛めて産んだ子どもや。」

「じゃあ……どうして?」

「そんなん知らん!ごちゃごちゃ言わんとさっさと死んだらええねや!」

「死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!死ね!」

「だあああああ!わかったわい!ここで腹かっさばいて朽ち果ててやるわい!」

「あら、本当に切腹してしまいよった。オチもつけんと……」


アンパン人間

アンパン人間

 子どもが道の真ん中で「おなかがすいたよー」と泣きじゃくっていた。今時こんな理由で泣くガキが存在するのか、いささか不可解だが、事実は事実である。不憫に思った私は子どもの前に立ち、いつもの台詞を口にした。

「おなかがへってるならボクの頭をお食べよ!」

 子どもとは現金なもので、すぐに泣きやんで嬉しそうな顔をした。そして、私の頭にかぶりついてきた。子どもは思いっきり歯を立てた。歯は頭蓋骨まで到達し、血が止めどもなく流れ出した。ゴリッという音とともに、私の頭皮と肉が頭蓋骨から引きちぎられた。子どもは満面の笑みを浮かべながら、口を血まみれにして私の頭皮にこびりついた肉を食べたが、まだ食べ足りないのであろう。

「おにいちゃん、目玉も食べていい?」

 私は子どもの見方である。いやだと言えるはずもない。ああいいよと答えると、とびきりの笑顔を見せた。子どもの笑顔とはないものにも代えがたいものである。このためなら、目玉のひとつやふたつ、惜しくないとさえ思ってしまう。さて、子どもは私の目の中に指を入れてきた。人差し指と中指をまぶたの下に、親指を目玉の下に差し込み、指の先を少し曲げて、三本の指で目玉をとらえた。次に、引き出すように腕を動かすと、意外と簡単に目玉は取れてしまった。子どもはそれをポイと口の中に放り込んだ。目玉をかむと、中からドロリとした液体が出るらしい。それがよほど美味しかったのだろう、子どもはもう一つの目玉も引きずり出して食べてしまった。

「ああ、美味しかった。おにいちゃん、ありがとう!」

 そう言い残して、子どもは去って行った。私はといえば、頭からの出血は依然著しく、また、目玉を2つとも食べられてしまったため、何も見えなくなってしまった状態である。困ったことに、私は頭を食べられると力が出ないのである。

「はーひふーへほー!」

 そ、その声はバイキン人間の声ではないか。一応説明しておくと、バイキン人間は私の敵である。いつも子どもたちに悪いことをするので、私がこの前半殺しにして、耳に熱くてドロドロに溶けた銀を流し込んでやったばかりである。

「アンパン人間、このチャンスを待っていたのだよ、はーひふーへほー!」

「や、やめろぉ!」

 バイキン人間はドリルを取り出し、私の頭蓋骨に穴を開けだした。半径1センチぐらいの穴からは私の脳みそが見え隠れしている。バイキン人間はおもむろにストローで脳みそをちゅうちゅうと吸い出した。アンパン人間、大ピーンチ!



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