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疲弊の選択

 

「 男だったら指の一本でも詰めろや~」

「・・・」

( 指を詰める?)

握り締めたコブシを太ももに押し当ててうつむく"小鳥"に、

「 おい!」

と"イタチ"が据わった目を鋭く向ける。

「 おまんがひとりで詰めれんじゃぁ、若い衆を呼んで手伝わせてやるわ~」

「 "イタチ"さん、勘弁してください 」

「 ふざけるじゃねえ!日本刀で叩ッ切るぞぉ!」

"イタチ"が吠える。

( 何?日本刀まであんの?)

と驚く"小鳥"。

「 "赤鬼(社長)"や"大蛇(専務)"が昔どれ程だったか知らねえけどなぁ、俺は兄弟の中じゃぁ一番荒っぽいだぁ・・ アイツらより甘かぁねえぞぉ!」

「 はい・・」

最早手の打ちようが無い。
 
全身の力は奪われ、蛇に睨まれた蛙よりも絶望してうつむいてしまう。

( 小指の一本くらい良いかぁ・・ 殺される訳じゃないしな・・)

疲弊した心理の選択とは不思議なもので、普段とは価値観を別にするものである。

「 わかりました・・ 指詰めます 」

"小鳥"がとにかく欲していたのはこの状況からの解放だった。

「・・・」

しばらくの沈黙が流れる。
 
そして、

「 わかったわ、寝ろ 」

「 は?はい 」

"イタチ"が事の終わりを告げる様に部屋の灯りを消す。

しびれた足を引きずりながら静かにベッドへと戻るも、目をつむったら殺されかねないという恐怖心から小刻みに震える"小鳥"の体。決して睡眠など出来る状態では無い。
 
しかし、張り詰めた極度の緊張からの開放は気絶にも似た形で"小鳥"をすぐに睡眠へと引き込んでいた。

翌朝。
 
目を覚まして真っ先に確認したのは自分の両指。
 
「 ある・・」
 
そして、すでに出かけた後の"イタチ"のベッドに近付き、

( 無い・・)

枕の辺りを念入りに確認する。

夕べの出来事を誰にも告げずに作業場で一日を過ごしても、

( これじゃこの先、指が何本あっても足りねえだろうなぁ・・)

胸の内に抱える大きな不安。
 
"小鳥"は、就寝前のベッドで考えた。
 
( もしも再びあんな事になったら・・)
 
しかし、豹変した"イタチ"から逃れる術は、これと言って浮かばない。
 
「 もしもし、俺だけど・・」
 
思わず掛けていた母親への電話。
 

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  著者 : k.kaminari
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