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はじめに

 英語が話せればいいな、英語がわかればこの映画がもっと楽しくなるだろうなとか思うことはないですか?実はわたしも昔はそう思っていたのです。だから挑戦してみる気になったのでした。

 インターネット時代、ソーシャルネットワークで友人の輪は世界に広がるばかりです。そのパスポートはなんといっても英語です。わたしはシドニーに長らく住んでいて、今頃は日本では英語教育も小学校ぐらいから始まっているようだし、教材はたくさんあるし、みんなさん、さぞ英語がうまくなっていることだろうと思っていました。でも日本から語学留学にいらした方たちと話していると、わたしの頃と比べて学生さんたちの英語力はそれほど変わっていない・・・ような気がします。

 ある日本の学生の方が英語を耳で聞き取れるようになるまで4年かかり、それからしゃべれるようになるまでさらに2年かかるといっておられました。シドニーは生活費も高いのに、英語を学ぶためにそんなにお金がかかるものなの?と驚いてしまいました。もし英語が聞き取れるようになりたいのだったら、日本にいたってインターネットを使って英語のシャワーを毎日浴びることも可能なので、そんなわざわざ外国に英語を勉強しにこなくっても・・・とついつい思ってしまうのです。

 英語の先生だって、英語を苦労せずに覚えてきたネイティブよりも、日本人の先生方の方が、日本人が英語を学ぶ大変さを痛感しておられ、優れている点もたくさんあるように思うのです。海外は英語を話せるようになって行った方が、友達も増えて、もっともっと楽しめるのにもったいないと思います。わたしは日本で働きながら英語を勉強したので、きっとこころある方たちの力になれるような気がいたします。

 このエッセイ集は、同じくパブーから出版されている「対訳 宮沢賢治  注文の多い料理店」という本のバックグラウンドをなすものです。シドニーで暮らす上でのカルチャーショックや英語の語感などをつづり、「対訳 注文の多い料理店」がどんな背景ででき、どのような思いがたくされているのかを書いてみました。「対訳 注文の多い料理店」は心を込めて書きましたので、試し読みでも結構ですから、ご覧いただければ光栄です。みなさまの英語学習にきっとお役に立つと思います。

 

筆者略歴 いけだすみえ

シドニーに移住し、2000年、シドニー工科大学ビジネスコース修士課程を修了する。その後、数々の国際企業に勤務するかたわら、日本の文化を海外へ紹介する大切さを痛感し、翻訳活動を始める。著書に「対訳 宮沢賢治 注文の多い料理店」

この本はブログから生まれた本です。よろしかったらブログにもお越しください。

http://soraike123.hatenablog.com/

 


「対訳 宮沢賢治 注文の多い料理店 」ができるまで

 宮沢賢治はSFもない時代から汽車にのって宇宙へ旅立つという物語を書いた先駆的な人です。非常にビジュアルであり、彼の作品では自然の色・情景がこまかく描写されており、メッセージ性もすばらしく日本の国が世界に誇れる作家だと思うのです。海外には宮沢ファンもおられますが、まだまだ少ない。やっぱり英語の壁は大きいのです。ちなみにシドニーにいて宮沢賢治の英語の本を見たことはありません。それならば、自分でつくろう!と思ったのは、若気のいたりか、まあとにかくやろうと思ったのでした。

 スタジオ・ジブリの宮崎監督の映画は「千と千尋の神隠し」以来、オーストラリアにも知られるようになりました。宮崎監督の映画は宮沢賢治作品に影響を受けていると思うのはわたしだけでしょうか?たとえば、賢治は「自然の精霊」に重きをおいているのです。「注文の多い料理店」は料理店と思って入った先が実は自分を料理して食べてしまうところだったというこわい話ですが、その魔法の料理店は、自分の楽しみのために動物の命を奪うわがままな人間をこらしめるために作られた「自然の精霊」のしわざだと思うのです。だから「青い目」をもっていて明らかに日本人とは違う風貌の手下たちも言葉を話すことが出来ます。

「千と千尋の神隠し」をオーストラリア人と見ていて、「あちらの世界の人たちは人間ではないの?だったらなんなの?」と聞かれました。「まあフェアリーみたいなもの」といっておきましたが、宮崎監督が描いたトンネルの向こう側の世界は、賢治の「注文の多い料理店」でさまよいこんだ世界に似ています。この世にありながら、人間の世ではないのです。そしてみんな意思を通じ合うことができます。

 千尋は不思議な世界に迷い込んだ後、お父さんお母さんを救い出すという使命をおびて、懸命に働き、その熱意が周りを動かしていきます。「注文の多い料理店」でも、主人公の紳士たちは山から帰る際「10円だけ山鳥を買って帰りました」というところに、みやげを最小限にとどめた謙虚さが見え、お金があるんだからに自分の思い通りにしようという傲慢さがうすれていることがうかがえます。

 賢治の作品には話をする動物などもたくさんでてきます。人間になりたい魚の子が主人公の「ポニョ」など宮崎監督作品も賢治の作品、そして日本の豊かな民話にその題材を得ていることはうなずけることなのです。

「対訳 宮沢賢治 注文の多い料理店」は賢治の日本語のすばらしさも残すため対訳として日・英両方の文章をのせ、英語学習者のことも考えて忠実な訳としました。短い文章ですが、本書で使った英単語や英熟語は覚えた方がいいと思うものを厳選しても300にのぼりました。これだけの英語が自由に使えるようになれば、英会話だってずいぶんスムーズにいくことうけあいです!

 わたしが学生のころフラッシュカード(暗記カード)をよく使いましたので、巻末には単語・熟語帳もそえました。それから日本の方々が気づきにくい英語の表現や発音のこと、実用的な英文法のコメントをそえました。英文法は学生時代は無味乾燥でおもしろくなかったのですが、こみいった英語を書いたり話したりする上では欠かせないものです。また英文法はその人の英語力の骨組みをなすものなので、文法がしっかりわかっていない人はいくら勉強してものびないのです。本を読んでも単語の意味から「こういう意味だろう」と推量してしまい、それがまったく違う場合もあるのです。

たとえば、この文章です。I stopped smoking.  I stopped to smoke.

よく似ていますが、前者は喫煙をやめたのであり、後者は喫煙するために立ち止まったのです。文法がわからなければ、まったく違う風に理解してしまうこともありえるのです。

「対訳 注文の多い料理店」は誤字・脱字になやまされました。これほど誤字が多いとは!みてもみてもとまりません!いまはほとんどないと思いますが、もしありましたら、まことに申し訳ありませんがご指摘ください。すぐに直します。

 ためし読みとして提供していますが、賢治の童話「注文の多い料理店」の序章とその英語訳もそえました。ここは対訳をやめて、英語自体の美しさがひきだせるように自然な英語としました。

「対訳 注文の多い料理店」は小さな本ですが、作者の宮沢賢治に対する最大限の敬意と英語を「いまおもしろい」と思っている遊びごころがあふれた本ですので、きっと楽しんでいただけると思います。

 


Boys will be boys やっぱり男は変わらない

友達から楽しいメールをもらいました。アラスカかどこか?のとにかくとても寒そうなところで、男たちが何十人も集まって氷上魚釣りをやっている写真です。写真は何枚か連なってストーリーをなしていました。氷に大きな穴を開け、ロープをたらし、男たちが全力でひっぱる。すると氷の下の湖から釣り上げたものは・・・なんとヤマハの水上バイク。ハハハ、おもわず出た言葉がBoys will be boys…

 写真に写っている顔はみんな楽しそうでした。

 以前、わたしが日本の会社に勤めていたころ、棚卸の作業のために倉庫に行ったことがありました。たくさんあるダンボールの中、ひたすら商品を調べたり、値札をつけたりと単調な作業が続いていました。その中に香港からの研修生も来ていました。彼女は英語も日本語も堪能で、非常にスマートな人だったのです。

 それで、彼女と話をしていたとき、急にわたしの後ろを指差していったのでした。

「あそこに男の子たちがいます・・・」

「うん?」

 この会社に「男の子」はいないはず・・・でも、いたらいいなと振り返ってギョギョギョ。40年前であれば「男の子」と呼ばれていたであろうシニアのおじさまたちが立っていたのでした。日本語の「男の子」っていうのは何歳ぐらいまでのイメージ?せいぜい20代前半?独身?とにかく一生「男の子」ではありえませんよね。Anyway, they were taken ages ago. (いずれにしても、その方たちはとっくの昔に結婚されてます)

 セサミストリートで、両親と息子、娘一人ずつで四人家族をなすマペットたちが、お父さんと息子、そしてお母さんと娘の二チームにわかれて、Boys! Girls!と歌っていました。そう、こういう場合はお父さんはboysチームに属し、お母さんはgirlsチームに属するのですね。日本語の「男の子たち」は英語の「boys」とはニュアンスが違うのです。Boysというとただのboyとは違って、年齢に関係なくgirlsと反対の意味の男性のグループを指すのです。香港からいらっしゃった研修生の方は英語の感覚で話していたのでした。

 ちなみに、日本語の「少女」の雰囲気を英語でいうのなら、little girlとかyoung girlで若いお嬢さんという感じなら、young ladyと表現します。わたしもyoung lady とよく呼ばれていましたし、sweetie と呼んでくれる店のおばちゃんもいましたね。でも一番うれしかったのは、中国の人たちが経営している魚屋に入ったときシャオチエと呼ばれたことかな。

 



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