閉じる


 

 

 

 

バトルボーラーはるか

 

第二集

氷の美少女

 

第3章

失踪

 

作・Ψ(Eternity Flame)


 夜空より秀樹へと差し込む光。どうやらその光の先に敵がいるようであった。水ホタルと通信をし終えた秀樹が正友を呼んだ。

「俺とお前で行くぞ!」

 昨日の男達が仲間を引き連れて来たようで水ホタルから無数の反応があったが、詩音の事が気になるので、ガードに充分な人員を割(さ)く必要を感じ、用心深(ようじんぶか)い秀樹は少し抵抗(ていこう)があったが、正友との少数精鋭(せいえい)で空にたむろする男達の元へ行く決心をしていた。

「へへへ…楽しみだなぁ。」

「おい、正友。遊びに行くんじゃないんだぞ!」

「分かってるよ。“話し合い”に行くんだろ?は・な・死合(しあい)にな。」

「なんかお前のその言い方にはトゲがあるな。いいか!絶対に軽率(けいそつ)な行動は慎(つつし)むんだぞ!」

 正友の口調(くちょう)は、明らかに拳(こぶし)と拳(こぶし)での“語り合い”という含(ふく)みが込められており、秀樹は心配であったが、相手に話しが通じないのも薄々(うすうす)は分かっているようで、相手側に囲まれた時に、自分の背中を預けられるのも彼しかいないのも事実であった。

「お兄ちゃん、二人で大丈夫なの?」

 正友の頼(たよ)りなくチャラチャラした一面が目立つばかりに、真面目(まじめ)なはるかは秀樹を案(あん)じている。

「オレと秀さんが組んだらフリーザだって倒せるぜ!心配すんな。」

 

「フリーザ?何よソレ?こんな時までワケの分かんないコト言わないでよ!」

 根拠(こんきょ)のない自信を見せる正友。しかし、いざという時には素早く反応し、対応する実戦向きの正友の能力は秀樹にはない物であり。油断(ゆだん)ならないワナがあるかも知れない未知の領域(りょういき)に踏み込むには、彼の力に頼る所が大きいと秀樹は思っていた。

「とにかく俺達の心配はいいから、お前は功一や広介達と詩音ちゃんを守れ。いいな!」

「うん、分かったわ。気を付けてね、お兄ちゃん!」


「正友も頑張って!」

「“も”は何だよ!なんか扱いが低いぞ!」

 二人がまた口論(こうろん)になる前に、秀樹は先手を打ってケルビムを召換(しょうかん)し、さっさと空へと飛び発った。

「あっ!?てくれよ、秀さん。」

 正友も慌(あわ)てて銀竜に乗り、秀樹の後を追った。厚い雲(くも)の壁を突き抜けると、月明かりが眩(まぶ)しいくらいに照らす上空に、大きな島のような物が浮かんでいて、月明かりに島影が宝石のように乱(らん)反射(はんしゃ)している。

「水晶(すいしょう)ででもできてるのか?」

「秀さん、ありゃー氷じゃね?」

 数百メートルにまで近付いて見ると、正友の指摘(してき)通りであった。

「な!オレの言った通りだろ?」

「あぁ。しかし…デカイな。」

「ラピュタは本当にあったんだね!」

「バカッ…んな時までフザけるな!」

「へへへ…冗談(じょうだん)だよ。さ、さっそく“はな死(話し)合い”行こうぜ!」

「あぁ…。」

 巨大な島にどれだけの猛者達(もさたち)がいるのか。秀樹は水ホタルの反応を探っているのに気を取られ、思わず正友の言葉に相槌(あいづち)を打つと、正友はそれが合図だと思い込み、銀竜を飛ばして島へ接近して行った。

「オラーッ、讃岐(さぬき)の山ピーこと正友様が話し合いに来てやったぞ!」

 派手(はで)な名乗りをあげ、正友が氷の島に降り立った。

「バカッ。忍(しの)び込むって言っただろ!!」

 後から追って来た秀樹がそう言って正友を叱(しか)った。

「あぁ、ゴメンゴメン。」


「お前、そんな軽いノリで…一体、何考えてんだよ!!」 

「大丈夫だって。オレは目が良いからさ。奴(やっこ)さん達数えたんだけど、せいぜい十数匹ぐらいだったぜ!オレ達なら全然問題ない数だろ?」

「うーん…だが、相手の実力が分からないじゃないか?」

「んなのオレ達に比べりゃ大した事ないって、いざという時には強力な助っ人を準備してるからさ。」

「助っ人?」

「おぅ。はるか達の事もソイツらに見張ってもらってるし、まぁ遊撃隊(ゆうげきたい)みたいなモンだな。」

「…そうなのか。」

「そうそう。いつまでもココにいるより、さっさと片付けないと、はるか達が心配だろ?」

「…まぁ、そりゃ心配だが…。」

「だろ!まぁオレに任せてみなさいって。」

「…そうか。」

 いつもと立場が逆転しているのに秀樹は戸惑(とまど)ったが、正友の言う事も一理(いちり)あったし、彼も成長しているのだと思い、同意すると―

「オラオラッ出て来い!!話し合いに来てやったって言ってんだろが。」

 と、いきなり交戦的な大声で叫び出した。言葉尻では秀樹の指示通りだが、態度は全くの逆で戦う気満々であり、秀樹は頭を抱えたくなってしまったが、言葉をフィードバックもできないので、相手の出方を伺(うかが)っていた。

 正友が遠い前方に人影を発見し、ケルビムを呼び戻すと一気にそこへ向かった。

秀樹もその後を追うと、氷山(ひょうざん)が幾(いく)つも連なる島の中央部にまで入り込んでいた。

「これは…!?」

 氷山(ひょうざん)にはナウマン象や様々な氷河(ひょうが)時代(じだい)の巨大な動物達が、化石のように氷漬けにされていて、秀樹を驚(おどろ)かせていた。


「ようこそ、我らが氷の城へ!」

「誰だ貴様!?」

 正友の呼びかけに姿を現した声の主。何の動物かは分からないが毛皮を着込み、ビッグフッドにも劣(おと)らぬがっしりとした体格の男であった。

「私は松志田。氷の四天王の一人に数えられる者です。」

「そうか、アンタが偉(えら)いさんか。なら話は早ぇ。おい、詩音ちゃんから手を引け!」

 正友の命令口調(めいれいくちょう)にも、松志田と名乗る男は全く動じず―

「それは出来ませんな。」 とだけ答えた。

「何だと~!?」

「おやおや~どうやら自分達の立場が分かっていないようですな~。」

 松志田の含みのある言動はハッタリなのか。それとも自分の力によほどの自信があるのか、その真意がはっきりしない内に動くのは早計(そうけい)なので、今にも飛び掛りそうな正友を秀樹が抑え、話し合いのテーブルになんとか松志田をつかせようとしたのだが…

「!?」 

 秀樹は背中に寒気を感じた。慌(あわ)てて後ろを振り向くと、顔の近くまで斧(おの)が襲(おそ)ってきていた。

 秀樹の異変に正友も気付き。正友は振り向く事はせず、とっさの判断で横に逃れたが、秀樹は頬(ほほ)にカスリ傷を負っていた。二人を襲った何者かは、秀樹と正友を仕留め損なったが深負いはせず、後方に引き退っていた。

「フフフ。よく躱(かわ)したな。」

「貴様…これが答えか?」

 かなり怒っている様子の秀樹。嫌な笑みを浮かべる松志田を睨(にら)みつけた。松志田は余裕(よゆう)で、その視線を高い所から見下ろしている。

「秀さん、オレ達を襲った昨日のヤツらだ。」

「あぁ。俺も一瞬だが、真正面から襲ってきた奴の顔を見たから分かってる…どうやら話し合う余地(よち)はないみたいだな。」

 互いに背中を預けあって話し合う二人。



読者登録

Ψさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について