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どちらのための?

次の日、私はとし君の事を考えながらご飯を作っていた。 スーパーに買い物へ行き、即座に思い浮かんだメニューはとし君の大好物の豚バラブロックのゴロゴロ入ったカレーだった。 玉ねぎを飴色に炒め、ベーコン、しめじを炒める。カレー粉を振りいれ小麦粉を振りいれ炒める。そこへ、トマト缶水をひたひたに加え、 コンソメを入れ、大きく切った豚腹ブロック、じゃがいも、人参を入れ、豚バラの脂が溶けだしとろみが付くまで煮込む。 グツグツグツ。 コンコン。 玄関の扉を叩く音がした。 覗き穴から外を見るとゾンビが寒そうにしながら立っていた。 玄関を開けるのがおっくうだった。 ゾンビに会うのが面倒だ。 多分換気扇から出る匂いが家の外を漂っている事だろう。 どうしようか迷った挙句、追い返す方法を考えるのも面倒になって、ドアを開けた。 そこにはゾンビが立っていた。手には可愛いピンク色のコスモスの花が握られていた。 凄い笑顔でゾンビはそれを私に差し出した。 私は何だか気持ちが悪くなった。 追い返すのも怖くなり、ほうっておく訳にもいかず、家に入れ、カレーを食べさせた。 とし君の分が無くならないか心配になった。 が、今日はゾンビは、お代わりをしなかった。 寒い所に居たゾンビまだ寒そうだったが、今日はとにかく早く帰って欲しかった。 とし君は、昨日、今日は出来るだけ早く帰ると言っていた。 「お風呂入る?今日はやめとく?」と私は冷たくゾンビに言った。 ゾンビは何かを悟ったらしく、何だか寂しげな顔をした。 私の唇に自分の唇をそっと重ねると、私の頭を撫で、玄関へ向かい、そのまま帰った。 キスをされてしまった事が、なんだか悔しかったが、私はゾンビが帰ってホッとした。 ようやく落ち着いて、とし君の帰りを待っていたが、とし君は帰って来ない。 ようやく帰って来たのは十二時過ぎだった。 「花ちゃん、本当にごめんよ。待っていてくれて有難う。」と本当に申し訳なさそうに謝った。 とし君は、急な接待が入り、抜けられなかったそうだ。 理由なんてどうでもいいから早く帰って来いよ。 次の日、私はムシャクシャしていた。 今日はご飯何か作るか!とイライラしていた。 とし君の事ばかり考えていたら、イライラがピークに達して、頭がおかしくなりそうだったので、ゾンビの事を考えた。 そうしていると、気持ちが落ち着いてきた。 そうして、今日はゾンビに美味しい物を作ってあげて喜ばせようと思い、献立を考えた。 寒い所から来るゾンビに温まる物を作ってあげよう。 今日はロールキャベツに、ドライカレーにしよう。 キャベツを外側からはがし、綺麗に洗う。それをラップし、レンジにかける。合挽ミンチに、黒コショウ、ナツメグ、 塩コショウ、溶き卵、パン粉、みじん切りの玉ねぎをいれ、粘り気が出るまでよく捏ねる。俵型にした種をキャベツで巻き 、鍋に入れ、水をひたひたに入れる。コンソメを入れベーコンを巻いてく。キャベツがトロトロになるまで煮込む。 ドライカレーは玉ねぎのみじん切りを良く炒め、角切りの茄子、みじん切りのピーマン、ロールキャベツに使った残りのミンチを入れ、 更に炒め、火が通ってきたら、カレー粉、ケチャップ、ウスターソース、コンソメ、塩を一つまみ入れ、炒め、ミスを少しだけ加えて煮る。 ドライカレーの辛みを抑える為にドライカレーには目玉焼きをのせた。 今日はゾンビは来てくれるだろうか? 外は寒い風が吹いている。 が、ゾンビはなかなか来ない。昨日冷たくしたからもう来てくれないのだろうか? 私を一人にしないで。ゾンビの温かい 腕の中を思い出すと、切なくて、寂しくて、苦しくて痛かった。 昨日ゾンビにした事を後悔し、涙が止まらなかった。 ごめんね。本当にごめんね。お願いだから会いに来てよ~。 喉を詰まらせながら、一人で泣いた。


私達の出会い。

コンコン。 扉を叩く音がする! 急いで玄関のドアを開ける。そこには腕の中いっぱいにピンク色のコスモスを抱えたゾンビが立っていた。 私は嬉しくてゾンビに抱きついた。 「ごめんね。ごめんね。ごめんね。」 泣きじゃくりながら何度も謝った。 そうして、長い。長い。長い。キスをした。ゾンビの唇が溶けて無くなりそうな位熱い。熱いキスをした。 ゾンビは何があったのか分からない様子で目を丸くしていたが、やがてとても優しい顔をして私の頭を撫でた。そうして安心して私はゾンビに抱えられたまま眠っていた。 「花ちゃん、こんなところで寝ていたら風邪ひくよっ。」 「あっ、とし君」 気が付いたら、ゾンビはそこにはおらず、台所には、ロールキャベツとドライカレーの盛ってあった皿が綺麗に洗ってあった。 「今日も御馳走作ってくれてたんだね。俺 めちゃくちゃ腹減った~。ロールキャベツ食べたいな。」 「あっ!うん。すぐ温めるね!」 「いいよっ。俺自分で温めるから、花ちゃんはちゃんとベッドで寝ててね。」 と言うとロールキャベツを皿に盛り、レンジにかけた。 「ドライカレーも有る!やったー!」 と言うとドライカレーも温めた。 私はベッドには行かず、とし君が食べている姿をじっと眺めていた。 「花ちゃん、体冷えて無い?一緒にお風呂入ろうか?」 あまりにも久しぶりに聞く言葉だったので、少し驚いた。 「うん。」 久々に一緒にお風呂に入るのは何だか照れ臭い。 「花ちゃん、いつも一人にしてごねん。子供がいたら、一人にさせる事無かったのにな。」 「とし君いつも一生懸命働いてきてくれるのに、何も文句何てないよ。有難うとし君。」 とし君は私をぎゅっと抱きしめた。 とし君は、若いゾンビのようにその場の勢いで私を求めてくる事も無く、お風呂を上がって、ベッドの上で私達は愛し合った。 次の日、私はゾンビを探しに町に出た。 いつもどこにいて、何をしているのだろう? ゾンビなのだから、昼間はうろうろしてる訳無いか。とか思いつつ、コスモスの花の沢山咲いている河川敷を歩いた。 秋風が心地よく、私の肌を撫でる。 昨日のゾンビの手の平を思い出す。 とし君がゾンビみたいに、寂しい時にいてくれたらいいのに。 さて、今日は何を作ろうか?秋の空のイワシ雲を眺めていたら、イワシフライが食べたくなった。 今晩は、イワシフライだ!とし君はイワシのフライが大好きだ。ゾンビは魚は好きだろうか? スーパーで三人分のイワシを買う。 私の作るイワシフライは油で揚げない。衣に卵も使わない。どうやって作るかと言うと、小麦粉を水で溶いてドロっとさせた液体の中にイワシを潜らせて、パン粉を纏わせる。 アルミホイルに油を敷き、衣を付けたイワシをのせ、油を振りかけ魚焼きグリルで焼く。 こうすると、油で揚げたようになる。 しかも、油で揚げるよりも身がジューシーに仕上がるのだ。 このフライに、ゆで卵をおろし金で卸したもの中に塩もみした玉ねぎのみじん切りを加え、 マヨネーズ、塩コショウ、黒コショウ、隠し味にケチャップを入れ、生クリームでクリーミーなソースに仕上げる。私特製のタルタルソースの完成だ。 これに、キャベツの千切りを添え、副菜は焼茄子。南瓜のスープを作った。 お腹が減って来た。 自信の有る美味しい物を作ると愛しい人が帰ってくるのが待ち遠しくなる。 私は以前小さなカウンター式の定食屋で働いていた。そこの客として、とし君と出会った。 初めてきた時は上司に連れて来られていたようで、その後、何回か後輩を連れて来ていた。 少し、話をするようになりいつの間にかデートをしていた。 もう五年前の話だ。


誰かの温もり。

コンコン。 ゾンビだ! ゾンビは相変わらず遠慮がちにノックする。 決してチャイムは鳴らさない。 急いで駆けていき、ドアを開ける。 今日も手には一杯のピンク色のコスモスの花が握られていた。 それを優しい笑顔で差し出す。 「有難う!」 私は嬉しくって、ゾンビに抱きつきキスをした。ゾンビは恥ずかしそうに俯いた。 早速イワシのフライをグリルに入れて焼いた。 温かい南京のスープを先に出し、温まって貰う。 ゾンビはハフハフしながら、そのスープを一口一口味わうように、ゆっくりとても美味しそうに飲んだ。 そうして焼きあがったイワシフライにたっぷりタルタルソースをかけて出してあげると、ゾンビは余程美味しかったのか、パクパクとあっという間に平らげてしまった。 ゾンビは皿を名残惜しそうに見つめていたが、やがて席を立ち私の手を取り、引き寄せ私に深いキスをした。 私は頭がクラクラした。 ゾンビの体はすっかり熱くなっていた。 キスは次第に激しくなり私の胸を弄りはじめる。 私は思わず吐息が漏れる。 「お風呂は?」とゾンビに聞くがゾンビは辞めない。激しくキスをした後、ブラウスのボタンを一つずつ外し、私の胸に顔を埋める。 ブラのホックを外し、乳首を吸う。 そうして私を後ろへ倒し、私の湿り気を確かめるようになぞり、下着を脱がす。 私も堪らなくなっていて、ゾンビの膝に私の気持いい部分を押しつける。 ゾンビの指が私の中に入って来て私の頭の中はかき回される。 そのままイってしまいそうだったが、ここでイクのは勿体ないのでグッと我慢。 ようやくゾンビが私の中に入って来る。 「ああっっっ。」 私は大きな声を出していた。 それを聞いてゾンビは興奮したらしく、動きを一瞬止める。 私はもう一突きされただけでイってしまった。 ゾンビも追いかけるようにしてイッタ。 私達はリビングでしばらく抱き合った。 そのまま寝てしまいそうだったが、ゾンビに起こされお風呂に入った。 ゾンビの膝の上に座って抱えられながら湯船に浸かるのは気持ち良く、心地よい。 この時間が永遠ならば良いのに。 シンデレラの魔法は毎日決まった時間に解けけてしまう。 今日も私は、一人残される。 初めのうちは帰すのは私のほうだったのに、この頃は、帰りたそうなゾンビを繋ぎとめたい私。 寂しい。寂しいよう。心の声はそう叫ぶ。 ゾンビにはきっとその声は届いている。 こんな夜、一人だったら、私は毎晩泣きながら眠っただろう。 私には、毎晩一緒に寝る旦那が居る。 とし君が帰って来た。 「おおっっ!今日はイワシフライ!美味しそう!!有難う、花ちゃん!」 ここ最近どんなに遅くなってもとし君はご飯を食べてくれる。 そうして、ここ最近私にいっぱい甘えてくる。 とても嬉しい。 それでも私の心の空洞は埋まらない。


5年目の二人

毎日ゾンビはコスモスを持ってきたが、その数は毎日少しずつ減っていく。 コスモスの色もだんだんと褪せていく。 花瓶に生けたコスモスは茶色くなり始めていた。 でゾンビと出会って一月になる。記念に明日は御馳走する。とゾンビと約束した。 そうして、何を作ろうかと考えていたら、突然形態が鳴った。 「花ちゃん、突然ごめんね、今日出てこられる?突然言って驚かせたかったんだ。今日、結婚記念日だろ?花ちゃんにプロポーズした、レストラン予約しておいたんだ。」 「えっ!!」 私はすっかり忘れていた。私達の記念日の事を。そして、とし君がちゃんと覚えていてくれた事が嬉しかった。 お祝い何て期待するだけ疲れると思っていた私はここ数年は、そんな事を頭に置かないようにしていた。 私はとし君に可愛いって、言って貰えそうな服を選んで、予約してくれているレストランへ向かう。 少し薄着だったので、秋風が肌に当たって冷たい。 待ち合わせのレストランの前で、とし君は、待っていた。 「お待たせ。」 「俺も今来たところ。」と笑顔を返す。 「結婚五年目おめでとう!」 と言って、手の後に隠してあった、バラの花束を差し出した。 鮮やかな、真っ黄色のバラだ。 「黄色のバラ、可愛いね。」 「うん。花ちゃんは、黄色好きだろ?」 とし君に私が黄色を好きだという事を言っただろうか? 「中でワインでも飲みながら、美味しいブイヤベースでもたのもう!」 としくんに、手を引かれ中に入る。 五年前と全く変わっていないレストランの内装に心が弾む。 「何か、外で二人でご飯食べるのって、久しぶりだね。」 「そうだろー。俺、実は、一か月前から楽しみにしてたんだからっ。」 「ホントっ!?」 「ここ何年か、色々あったから。何か俺達すれ違ってたじゃん。俺、花ちゃんの事、本当に愛してるんだ。だから、こう一度、初め見たくやり直したいなって、ずっと思ってた。」 「俺、花ちゃんを本当には幸せには出来ないって。ずっと仕事に逃げてたから。」 「私こそ、どこかでとし君の事傷つけてた。 本当は、もうずっとだめかもって、思ってた。」 「だから、ここ最近、とし君が急に優しくなって、何だか混乱してた。」 「今日から、また俺達初め見たいにやり直そう。な、花。」 「うん。」 とし君が、私との事をこんなに悩んでいてくれているとは思っていなかった。 私はこの先、どうするか、どうしたいか何て何も考えて居なかった。 ただ、どうなるか。という不安ばかり考えていた。 そのうちとし君が私に見切りをつけてくれるだろう。 そんな事ばかり、考えてここ何年も生きてきた。 でもとし君は違ったのだ。 私達は、また一からスタートする事が出来る。 そうして、私達は、前菜に生ハムとメロン、生ハムは、パロマ産、メロンは北海道のマスクメロン。お酒はシャンパーニュのシャンパン 、明石で取れた真鯛のカルパッチョを頼み、パスタは、カニみそのたっぷり入ったクリームの渡り蟹のパスタ、ここからお酒を白のグラスのシャブリに変えた。 次にマルゲリータピザを頼み、グラスのボルドーの赤ワインを飲みながら、心の底から笑いあった。メインのブイヤベースは豪快に伊勢海老が一匹まるまる入っており、 殻付きの牡蠣に、小さめの鯛が一匹入っていた。再び白のグラスワインを注文する。 そうして、もう一つのメイン、子羊のローストバルサミコソース添えが来る。 流石にもうお酒は飲めないので、メインをじっくり味わった。 満腹だと言いながら、やはりデザートは別バラなのである。私はパンナコッタとシフォンケーキフルーツ添えのセット。とし君はティラミスを頼み、紅茶を飲んだ。 とし君が突然言った。


真実と復讐。

「そういやさっ、今日会社の後輩が事故にあってさ、亡くなったんだよね。」 「そいつ、昔花ちゃんの働いていた定食屋に良く連れて行っていた後輩なんだけど、五年前に会社やめててさっ、その後実家にも帰って無かったみたいで、 親からも電話かかって来て、捜索願いだしたんだけれど、警察も相手にしてくれなくてさ、結局行方不明になってたんだけれど、何か会社のやつが、 そいつにそっくりなホームレスを見たって噂してたんだ。」 「まるで、ゾンビみたいだったって。」 「あいつ会社辞める前には、失語症にもなっていたから、皆心配はしてたんだけれど、仕事出来ないやつだったから、その後は何かにつけて話のネタにされてたよ。」 「実はそいつ、花ちゃん事凄く気に入っててさ。ずっと、俺に恋の相談してたんだ。」

「俺に相談なんかしなきゃ会社も辞めずに済んだのにな。あいつ。」

「まさか、死んで見つかるとは思って無かったよ。そいつ手にこれ持ってたんだって。」と言ってとし君は、ピンク色のコスモスの栞を差し出した。

「花ちゃんピンク色のコスモスの花言葉って知ってる?」

「えっ?。」

「それ何で、とし君が持っているの?」 

私はその後、急激な吐き気に襲われて、トイレに駆け込んだ。 ようやく落ち着いて顔を上げる。 そう言えば、生理が二週間ほど遅れている。

「花ちゃん、大丈夫?落ち着いた?」 とし君は私に水を差し出す。

「それ俺の子供だよね?」

とし君は笑顔で言った。



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