目次

閉じる


戦場はメリークリスマス

『まもなく降下ポイント、各員再度装備のチェックを行え』
「サーイエッサー」
俺の名前はサンダース
とある国の特殊部隊の訓練生だ
ここは高度32000フィートの上空
高高度降下低高度開傘
通称HALO(ヘイロー)訓練の真っ最中
ただでさえ危険な夜間降下の訓練を
よりによって
クリスマスイブにやるだなんて
まったく、どーかしてる……

ブー
ブザーがなりランプが点灯する
降下の合図だ
飛行機のドアがゆっくり開くとともに
冷たい空気がマスクとヘルメットの
隙間の肌を刺す

『降下開始』
「メリークリスマス!」
「メリークリスマス!」
仲間たちが次々に
闇の中へと身を投げていく
次は俺の番だ
ハーネスのベルトを引き、計器を確認し、
つばを飲み込み
「メリークリスマス!」
俺も闇の中へと体を躍らせた

いま自分がどのくらいの高さにいるのか
日中ならば距離感もあるが
夜の闇の中の降下は計器の音だけが頼りだ
大気の抵抗を全身に感じながら
パラシュートを開くタイミングを計るため
計器の音に神経を集中する
ピー ピー ピー ピー
ピピピピピピピ……
いまだ!高度約100フィート
俺はパラシュートの紐を勢いよく引っ張る
しばらくしてガクンという衝撃が伝わる
どうやらパラシュートが
うまく開いたようだ
俺は目標の施設へと向かって
パラシュートを操る
暗視装置の助けもあって
無事目標の施設へと到達した
大急ぎでパラシュートをバッグへとしまう
これからこの施設への潜入を行うのだ

施設の人間に気づかれないように侵入し
目標へと接近
指定の場所に目印をおいて
無事脱出するまでがこの訓練の中身だ

決して施設内の人間に危害を与えない
そして決して見つかってはいけない
それがこの訓練のルールだ
だから銃器の類は持っていない
持っているのは強力な催眠スプレーだけ
しかしこのスプレーの封印をといた瞬間
俺は罰として毒ガスを吸ったり
のどを焼かれたりするような
地獄のような戦場へと送られるらしい
くそったれ
ようやく対象の部屋に潜入した
後は相手に気がつかれないように
目印をおいてくるだけだ
足場が悪い
慎重に進めなければ……

「おいちゃんだれ……? あぁ!」
クソッタレ
あと一息というところで
このままじゃ大声で人を呼ばれる
優先事項は決して気づかれないこと
俺は奴にスプレーを吹き付けた
地獄行きが……決まった

「パーティー会場へようこそ
この間抜けども!
うまいことやった奴らは
カワイコちゃんと
デートへと繰り出したぞ!
奴らは近いうちに人生の墓場行きだが
お前らにはそれより一足先に
地獄を見せてやる
サンダース!
一番槍の栄光は貴様にくれてやる!」
「サー!サンキュー・サー!」
シュールストレミング
隊長が差し出したバカでかい缶詰に
缶切りを立てると
地獄のようにくさい汁が噴出した
隊長は半分溶けたニシンの切り身を
パンの上に上げると俺に差し出す
「メリークリスマス!
俺からのプレゼントだ!
心して味わえ!」
「サー!サンキュー・サー!」
生ごみのようにくさくて塩辛いそれを
ろくにかまずに飲み込むと
のどが焼けるようなアルコール度数の
アクアビットで流し込んだ
「メリークリスマス!」
地獄のパーティーは始まったばっかりだ

おしまい

この本の内容は以上です。


読者登録

チョコボール加藤さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について