閉じる


<<最初から読む

4 / 35ページ

「あの…自分、ゲーハモテーヌの能力が残ってて、使ってみたいと思うんですが、今使ってみていいですかね?ちょっと理性が飛ばないか心配なんですけど…。」

「おぅ、使ってみ。」

 正友の許可がおりたので広介は変身すると、ビッグフッド達よりも幾らか体が大きくなった。一方、大介は頭で考えるよりも、今起こっている事態に対応する為に気を集中しているようであった。

 正友は感性で生きるタイプだし、大介は話すのが大の苦手。そんなチグハグな三人だが追い詰められるに至(いた)り、それぞれが必至(ひっし)になる事でどう猛(もう)なビッグフッド達にも劣(おと)らぬ迫力(はくりょく)を醸(かも)し出していた。

 正友達のエンジンがかかるのを待っていたかのように、ビッグフッド達も、ここからが本当の戦いだと言わんばかりに、大きな雄叫(おたけ)びを上げ襲いかかってきた。

 ビッグフッド達は、なんと弓矢を強じんな顎(あご)を使って引いた。先行する矢のすぐ後ろを虎(とら)が駆(か)け抜け、鋭(するど)い牙(きば)と爪(つめ)で死角を襲う。そこまで躱(かわ)したとしても、今度はビッグフッドの斧(おの)が激しい爆風(ばくふう)を巻き起こしながら向かってきて、反撃の糸口を見出す余裕どころか、このままではいつか仕留められてしまうという危機感さえ募(つの)らせ、その危機感は間もなく現実の物となった。

 正友達三人にそれぞれ放たれていた矢が、突如(とつじょ)、広介に向けられた。

「広介ぇーッ!!」

 正友の叫びも虚(むな)しく、広介めがけ放たれた三本の矢の内の一本が、ぶ厚い胸板に突き立った。

 広介の姿に気を取られた正友。その一瞬の隙(すき)をつき、三体のビッグフッドは、今度は正友に向けて矢を放った。とっさの判断で、正友は足元に広がるスクラップとなった自動車を自分の前側に立てかけて盾(たて)の代わりとし、強襲(きょうしゅう)する矢を防いだ。


「畳返(たたみがえ)しならぬ自動車返し…。」

 などと言ってる間に、矢を外したビッグフッドが肉弾戦をしようと迫ってきていた。

「速っ!?…今度はオレが標的(ひょうてき)か。」

 正友の窮地(きゅうち)を察(さっ)し、大介が横から助けを出した。虎は大きな呻(うめ)き声を上げた。大介は得意の貫手(ぬきて)で虎の硬い筋肉にクサビを打ち込んでいたのである。

 バランスを崩した虎の背にいるビッグフッドの一体もよろめいた。正友はその隙(すき)をつきたかったが、重装騎兵(じゅうそうきへい)など及びもしない巨兵が、狂暴(きょうぼう)な牙を持つ軍馬にまたがり二組も駆け寄ってきていて、とても手が出る状態にない。

 二頭の虎は飛びかかろうとしたが、いきなり空中で躓(つまづ)いたようになり、地面に叩きつけられていた。二頭の虎の跳躍(ちょうやく)を阻(はば)んだのは広介であった。広介は虎の尻尾(しっぽ)を摑(つか)み、意表(いひょう)を突かれた虎は事態に対応できず、着地もままならずに地面に倒れこんだのである。

「しめた!!」

 急に虎が倒れたので、ビッグフッドは背中から放り出されてしまう形となった。正友がその好機(こうき)を見逃す訳もなく、二体のビッグフッドに向け、奥義を放った。

「神楽龍球拳超奥義(かぐらりゅうきゅうけんおうぎ) 応龍連撃破(おうりゅうれんげきは)!!」

 ゲーハモテーヌ戦で使った発勁の原理を利用し、正友が掌手(しょうてい)と蹴(けり)りを二体のビッグフッドに浴びせた。抜群(ばつぐん)の機動性(きどうせい)を誇(ほこ)る虎から引き離された上、バランスを崩(くず)した二体のビッグフッドは、なす術もなく、正友の攻撃の餌食(えじき)となっていた。

 百五十キロはゆうに超えるであろうビッグフッド達の巨体は吹き飛ばされてしまった。這(は)いつくばる二頭の虎には、広介の全身の力を溜(た)めた拳(こぶし)が振われ、立ち上がる猶予(ゆうよ)も与えられぬまま大地を削(けず)るようにして転げていった


 一方、大介の貫手(ぬきて)を喰(く)らい、悶絶(もんぜつ)する虎が、痛みにのたうつせいで、背中にいるビッグフッドはロデオでもしているかのように振り回されていた。

「真空豪蛇掌(しんくうごうじゃしょう)!!」

 体勢の整わないビッグフッドと虎に向かい、正友の寮(りょう)をぶち抜いた真空掌(しんくうけん)を、更(さら)に何十倍も強力にしたような気功波(きこうは)が放(はな)たれ、ひとたまりもなく、ビッグフッドは虎(とら)ごと空高く吹き飛ばされた。45度くらいの斜(なな)めに吹き飛ばされた虎とビッグフッド。とぐろを巻いた蛇(へび)のような軌道(きどう)が空に描かれた。やがて落下をはじめると、その終点で彼らは凄まじい勢いで地面に激突した。

「スゲェ~。」

 正友は大介の大技の威力(いりょく)に驚(おどろ)き、思わずそう漏(も)らしていた。

「そ、そうかなぁ~。」と、照れる大介。

 技に見とれていたのも束(つか)の間(ま)。広介の事が気になり、正友は駆け寄って行った。

「大丈夫か?広介。」

「えぇ…まぁなんとか。」

「矢が刺さった時は、本当にビックリしたよ。でも、あれくらいの刺さり方じゃ、肺までは行ってねぇと思ったんで安心してたけどな。苦しそうなフリして、迫真(はくしん)の演技(えんぎ)だったよな。」

 矢が刺さった時に倒れたのは広介の演技であった。正友はそれを瞬時(しゅんじ)に判断し、広介には何か策(さく)があると見て、その芝居(しばい)に付きあっていたのであった。

「さすが正友さん、アレを見抜いたんですね。」

「“死んだフリ作戦”とでも名付けようかな。うまくハマッたよな。」

 広介が考えた策にすぐさま対応した正友。広介は最初に抱いた不安から自分なりに気を利かせて敵の油断(ゆだん)を誘(さそ)い、倒そうとしたが、それは正友と広介が何も考えてないように見えたためで、三人で共に戦った事がないからであった。が、そんな心配は不要なのだと知った。


 達人には実戦における優れた洞察力(どうさつりょく)を元にして、柔軟(じゅうなん)に対応できる能力があるのが分かったからである。その頼(たの)もしい仲間を得た事に力強さを実感し、笑顔で健闘(けんとう)を讃(たた)えあう正友達であったが―

「うっ…」

 広介が苦しそうな声を急に出した。

「どうした広介!?」

 その急変に驚く正友。

「いや、胸がやけに痛くて…。」

 それを聞いた正友が広介の胸を見ると、矢の刺さった胸板(むないた)の辺りが青黒くなっていて、触(ふ)れるととても冷たかった。

「これは…凍傷(とうしょう)だ!」

 危険な行為だとは分かっていたが、凍傷の原因が矢じりにあると踏んだ正友は、広介の胸から矢を抜き去った。

「おい、大丈夫か?」

「えぇ…矢が抜けたら少し楽になりました。」

「なんだ?この冷たい矢は…。」

 異常な冷たさを発する矢じりは、氷の塊(かたまり)のようであった。だが、普通の氷とは何かが違う。鋼(はがね)のような広介の胸板に突き刺さり、軽度ではあったが凍傷にしてしまえるような氷などが果してあり得るのであろうか。正友には分からずにいた。すると―

「正友さーん!こっちも終わりました。」

 と、功一の声がしたので、正友はそちらに向かった。木刀を持った功一と洋一の足元には、傷つき横たわる黒服の男達がいた。

「この矢じりは何だ?答えろ!!」

 鬼の形相(ぎょうそう)で話さなければ容赦(ようしゃ)しないといった感じで、正友が男達に問い詰めた。


「それは永久(えいきゅう)凍土(とうど)の最深部(さいしんぶ)より取り出した物だ。何万年もの間、溶ける事もなく蓄積(ちくせき)された冷気は、自体だけに止まらず、触れた対象にまでも影響を及ぼす。」

 男の一人がそう答えた。

「…あの化物みたいな虎と毛深い男は、一体何なんだ。」

「その永久凍土に眠っていた太古の生物。我々がそれらを科学技術を使って再生させた。」

「ほう。それで詩音ちゃんを何の目的でさらおうとしてるんだ?」

「…。」 沈黙する男。

「答えろ!!」

 正友は語気を荒げ、男の肋(あばら)を踏みつけた。

「グワッ!!…シオンは我らが探し当てた“女王”だ。」

「“女王”!?どういう意味だ?」

「ビッグフッドとスノータイガー。この二つを組み合わせた最強の兵士には、それらを統(す)べる王の存在があった。その子孫の血を引く者がシオンだ。」

「デタラメを言うな!!詩音ちゃんはそんなコト、何も言ってなかったぞ。お前ぇらだって知らないって言ってんだ。だからこれ以上、つきまとうなッ。」

「それは彼女の血がまだ目覚めていないからだ。」

「血だと?」

「そうだ。シオンとは氷の血族に伝わる王の呼び名。先代の王[シオン]が亡くなられ、その血は絶たれたかに見えた。先代の子は第二次大戦の混乱期(こんらんき)に消息不明となったからだ。だがその子孫は生きていた。先代の王のひ孫に当たるのが、そこの少女だ。」

「そんな…。」 驚く正友。

「その少女を渡せ。そのお方は我らの王だ。」

 男はそう言って正友に迫った。

「そいつは出来ない相談だな。」

「秀さん!」



読者登録

Ψさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について