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夏の夜に窓を開けたとする

 あなたが夏の夜、暑苦しくて眠れなくて、窓を開けたとする。そして蚊が入ってこないように、網戸を閉める。意外と涼しい風が入ってくる。

 もう一度横になる。さっきよりは幾分安らかな心になっている。外からの音に耳をすませる。いろんな音が聴こえる。会話がある。女性の声だ。直後に、男性との声も聞こえる。その会話に、聴覚のアンテナを向けていく。少しずつ、少しずつ、会話の内容が聞き取れるようになっていく。完全には聞き取れなくても、欠けた所は心が自動的に補ってくれる。 

 大きな声でどなるように話しているわけじゃない。静かに話している。

 でも、聴こえる。

「ぷしっ」という音が聴こえた。きっとビールの缶を開けたのだ。

「大学では何を勉強していたの?」と女性の声。

「生物学。主に生態学だ。環境とかね、そういうのもからめて」

「生き物が好きなの?」

「好きだね。でもそこそこだ。生態学は、あれはあれでよかったけれども、ああ、俺は生態学好きだよ。でも俺が一番やりたかったのは、ドイツ文学だ。

そうとも・・・ ドイツ文学」

「どうしてドイツ文学がやりたかったのに、生物学部に行ったの?」

「ドイツも好きだが、ロシアもいいな。まぁいい。俺は高校時代、国語の古文ってものがどうしてもできなかったんだ。古文だけじゃなくて、あれだ、えっと、漢文もだ。だから、まとめて古典と呼ぶべきかな。本当に、どうしても、できなかった。

 意義ってものもわからなかった。どうしてさ? 俺が、この俺がだぜ? 現代人だぞ。どうして古文と漢文をやらなきゃいけない? 俺はドイツ文学とロシア文学は好きだったけどね。日本の古典はちっとも面白くなかったね。もののあはれ、とかもさっぱりわからなかったね。特に病気になって死にそうなのが美しいとかさっぱりわからん。ヘルツェンシトゥーべ先生みたいにさっぱりわからん」

「ドイツ文学も、ロシア文学も、一応古典じゃない。それなのに、なぜ、日本と中国の古典だけがだめなの?」

「・・・・ ・・・・ それもそうだな。不思議だ。いや不思議じゃない。今わかった。ドイツ文学とロシア文学は、日本語に、現代の日本語に翻訳されてる! でも古文漢文は昔の文のまま読むんだ。それは読めるわけないさ。

 俺は英語ならできた。なぜできたかはわからねっけど。現代の英語だったからかもな。きっと英語でも何世紀も昔のだったらできないよ。理科系の科目も超得意だった。一応は現代の日本語で書いてあるもん。

 ねぇ、信じられるかよ? 古典を高校でやるんだぜ? こ て ん を こ う こ う で! 先生が黒板に書くんだよ。 漢文を黒板に書くんだぜ? 返り点とか書くんだぜ? まさに異様な光景だよ。それをみんなが、・・・ノートに書き写している!

 しかもさ、ドイツ文学を大学でやるには、古典の試験を受けなきゃあいかんわけで。めちゃくちゃだ。論理が通ってない。どうしてドイツ文学をやるのに、古典がいるん? 俺は先生に訊いたね。なぜ、古典なんか受けなきゃいけないのか。先生は答えた、日本の古典を勉強することで、ドイツの古典もわかるようになるよ、だと。そりゃ結構なことだな。一理あるかもしれね。でもそしたら、日本の古典を勉強しないとドイツの古典も勉強できないっていうのは、おかしい。その資格とか権利すら与えられねぇってのはおかしいじゃないねぇか」

「うん、なるほど」

「俺がドイツ文学を大学で勉強しているときに、ふと思いついたとする、日本の古典はドイツの古典を理解するのに必要だと。そしたらやればいいだけの話だろ。なんで入試の科目に日本の古典があるんだよ」

 コト、カタ、という音が聴こえた。皿が触れ合ったのか、缶が触れ合ったのか、足を組みかえてそのとき何かに当たったのか。

「しかも俺が先生に質問した意味っていうのは、そういうことじゃなかったんだ。なぜ、という意味はさ、もっと、俺は、究極的な理由を知りたかったんだよ。どうして、そういう仕組みになっているのかってことを。でもね、あの先生はわかってはくれなかったよ。それでな、先生のほうから言うんだぜ、『どうして君は古典ができないんだろうね?』と。そんなの、俺が知るか。どういう意味だ、その質問は。国語の先生のくせに、わけわかんないことを言うぜ。ほんとわけわかんねぇよ。俺はそれで、あの先生のことが嫌いになって、ますます古典はわからなくなっていったね。あの先生は、今後いい人生歩まないぜ」

「でも、生態学を大学で勉強したおかげで、私と知り合えたんじゃない。つまりは、ドイツ文学に行かなかったおかげで、私と知り合えた」

「・・・確かに!」

「きっと、生態学を専攻した意味はそこにある」

「意味、か。そうだな・・・。うん、そうだな・・・。

 いや、それは結果論に過ぎない。運命的に考えればそうなるかもしれないけれど。でもそれは、運命的に考えればそうなるというだけじゃないか。俺は君と知り合うために生態学を専攻したわけじゃないんだ。

 ああだめだな、うまく言えんけれど。こんなこと言うと、まるで君との出会いが、大切なものではなかったかのように聞こえちゃうかもしれない。そうじゃないんだ。

 俺は、君と出会えて本当によかったと思ってる。確かに、結果的には、ドイツ文学に行かなかったおかげで、君と知り合うことができた。それは確かだ。  

 人生全体で眺めれば、ドイツ文学を専攻することよりも、君に出会えたことのほうが大きなプラスになったと思う。きっと、その通りなんだ。でもね、俺は高校時代、そんな先のことなんて知らなかったんだよ?」

「私とドイツ文学専攻とでは、私の方がいいの?」

「そうだ。君の方がいい。比較するのが変だけど」

 ピーポーピーポーと、救急車の音が近づいてくる。不思議だな。この瞬間に、救急車を必要としている場所があるのだ。救急車を呼んだ人はきっと慌てている。実に不思議だ。救急車が最接近したとき、会話は遮られ、聴こえなくなる。救急車の音が、今度は離れていく。まだ遠くでかすかに聞こえる。ピーポーピーポー・・・。

 もう、さっきの二人の会話は、あなたの耳には聴こえてこない。会話の続きは聴こえてこない。どこで誰と誰が話していたのか、あなたに知るすべはない。


出会い

彼女は銀行のオフィスの窓口に座っていた。おとといも昨日も座っていたし、今日も座っている。それが彼女の仕事なのだ。銀行の窓口に座って仕事をする。客の相手をする。そうやってお金をもらっている身なのだ。

そこへ客の一人がメモを差し出す。さっ。

 

ああ 不幸なるかな 

君のような美しい人に

このようなことを頼む僕をどうか許してほしい

 

僕は銀行強盗だ

そうつまり 僕は銀行から金を取ろうとしている 銀行強盗だ

そうだ 僕には金が必要なんだ

ああ 金

ああ そうとも

僕に金をくれないか ベイビー

僕がその金で何をすると思う?

僕がその金で何を買うと思う?

僕はね その金で

君にこの世の あらゆるものをプレゼントしたい

僕はひと目みただけで 

すっかり もはや 君の虜になってしまった

君こそ 僕の人生に 初めて意味を与えることのできる人だ

 

僕は誓う

僕は 絶対に絶対に

一銭たりとも

その金で自分にものを買うことはない

全て君のために使う

金はそのためにある

君がそれで喜んでくれたら

僕は嬉しくなり 涙を流す

僕は君に喜んで欲しい

しかし おお そのためには

ああ 金が 金が 必要だ

ベイビー 僕に金をくれないか

ありったけの そう 金を

 

 

彼女も変な人だった。ズキューンとハートを撃ち抜かれてしまった。その音は彼女の体中を反響した。

ズキューン・・・・・・!

 

そうして二人は結婚し、生まれたのがそう、あそこにいるあいつさ。


べッドにはうさぎがいっぱい

ベッドにはうさぎがいっぱい

 

 俺が家に帰り部屋に入ると、ベッドにはうさぎがいっぱいいた。もこもこしててとっても可愛い。

「やっほー うさぎだー」と俺は嬉しくなって、ベッドにもぐりこみ、たくさんのうさぎを抱いた。暖かくてやわらかい。ずっと前から、こういうことをやってみたかったのだ。

 うさぎたちはおとなしくて、ときどき、もこもこと動いた。それがまた可愛くて仕方がない。その日は気持ちがすごく安心して、ぐっすりと眠ることが出来た。

 次の朝目覚めると、うさぎたちはどこかに行ってしまっていた。布団にはぽろぽろとしたうさぎのうんちが点在していた。やれやれ、またうさぎに一杯食わされた。全く、しょうがないやつらだなぁ。でもまぁ、俺もぐっすり眠ることができたんだし。俺の気持ちはとても平和で、満たされていた。


かえるライフ

 布団に入って耳を澄ますと、田んぼのかえるがけろけろと鳴いている声が耳に入ってくる。これがものすごく癒される。神経が癒される。最高だ。これで僕はかえるファンになった。

 次の日早速、かえる取りを開始した。気味悪いくらい大きなかえるではなくて、ちっちゃくてぴょこぴょこ跳ねる可愛いかえるを集めた。かえるを捕まえるのは結構簡単なのだ。

 水槽にいっぱいかえるが集まった。何にも考えていないような眼が可愛い。水槽の内壁に登ってくるのもいる。可愛いぞ、お前ら可愛いぞ。

 その晩、僕はかえるの鳴き声に浸り、最高にリラックスした状態で入眠した。

 僕は風呂を最近使っていない。シャワーで済ます。だから、浴槽にかえるを放すことにした。

 かえるたちは気持ちよさそうに泳ぎ、あっちにいったりこっちにいったり、壁に登ったり、へりで跳ねたりしていた。

 僕が家に帰ると、かえるの半分くらいは浴槽から脱走し、家のあちこちの床に点在していた。壁に登っているやつもいる。窓にしがみついているやつもいる。可愛いから許す。

 でも、間違えて一匹踏み潰してしまった。かわいそう。でも、僕はそれよりも、潰れたかえるをよく観察した。なるほど。小さい身体にいろいろ詰まっている。

 なんだか部屋全体が臭くなってきた。動物園のような臭さだ。そこで僕は部屋のかえるを全部捕まえて、浴槽の中のも捕まえて、再び水槽の中に集めた。水槽の蓋を開けて、そして田んぼの傍に置いておいた。お前ら、みんな逃げていいぞ。

 次の日、水槽を見に行ってみると、9割が逃げて、1割は水槽の中で、またもや何も考えていない眼をして、けろけろと鳴いていた。

 これだからかえるはやめられない。おたまじゃくしから育ててみたいものだ。けろけろけろけろ、けろけろけろけろ。


B級映画妄想 クロコダイル・ハンティング

さっきシャワー浴びながら考えた「いかにもありがちな映画」の話をしよう。

映画の題名はおそらく「クロコダイル・ハンティング(邦題 THE HUNT ON THE LAKE)」
製作:1984年 アメリカ

最初、霧のかかった湖でボートを漕ぐカップル。女性はピンクのラフなドレスみたいのを着ていて、男性はジーパンにジージャン。
女性「ねぇ 湖のこんなに奥まで漕いできて大丈夫なの?」
男性「大丈夫さ。何か怖いものでもあるのかい? ふたりっきりになれた」
女性、周りを見渡しながら「霧が濃いわ。帰り道がわかるの? ジョージ?」
女性が振り返ると、男性はいない。
女性「ジョージ! どこにいるの? 馬鹿な真似はやめてよ! あたしほんとに怖いのよ・・・ 冗談はよして! ねぇ! ジョージったら! 返事して! 全然面白くないわよ!」
カメラは湖水面を写す。ぶくぶくと泡が上がってくる。
女性「ジョージ! ねえったら! 返事してよ!」
ジョージはわかりやすいほどピンチなのに、女性はそれを信じようとせず、ジョージのジョークだと思い込もうとしている。それがこういう映画の登場人物というものなのだ。
女性は泡があがってくるのを発見する。
その瞬間!
泡に血が混じる!
女性「きゃああああ」
フェードアウト。

ででーん・・・ オープニングに入る。
黒い背景に白い文字が出る。

監督 ・・・・・・・

主演 ・・・・・・・

そしてタイトル。
THE HUNT ON THE LAKE が大きく映し出される。
タイトルが違ってる。新聞のTV欄に書いてあるのと違ってる。
でもTVの前の子どもは英語が読めないからそんなことには気がつかない。
日本の現実母親「なんだこれ つまんなそうな映画 ニュースみよ」
こども「変えないで!」

映画のシーンは湖畔へ。
翌日、警察が捜査に来ている。
太った警官「事件があったのはここか?」
背の高い警官「ええそうです」
太った警官「どっちにしろ・・・ 俺だったらこんなところに彼女をデートに誘ったりはしないね」
部下数人「わははは 同感です」
太った警官と背の高い警官がブルーシートをはぐ。
ブルーシートの中から警官二人を映し出す視点。二人の驚いた顔をカメラが映す。
背の高い警官「なんだこれは! ひどい・・・!」
太った警官「まったくだ・・・ いったいどんなにすれば人間の身体がこんなになっちまうんだ!」
死体は映さない。

家の中でトランクス一丁で寝てる男が映し出される。当然いびきをかいている。当然だ。
その家の前にパトカーが静かに止まる。
太った警官が降りてくる。
「おーい ハリー! いるんだろ! 返事しろよ!」
こんこんこんとドアをノックする。どんどんどんとうるさくドアをノックする。
トランクス一丁男が目を覚ます。目を覚ますときの吹き替え音声は「ぐごお!」
一丁男「あんだってんだ、土曜の朝だってのに・・・」
一丁男はとりあえずたばこをくわえて、火をつけないで玄関に向かう。
太った警官はひっきりなしにドアをたたいて「ハリー! ハリー!」と叫んでいる。
この! パンツ一丁男こそ! この映画の主人公 ハリーである!
下に名前の紹介字幕が出る。


ハリー・マックイーン
(・・・・  ・・・・)


一丁男「だれだぁ? よおっと!」ドアを開ける。「なんだ? グレイクじゃねぇか?」
会話の中で太った警官グレイクはハリーの過去と現在をそれとなく話す。
ハリーは昔警官だったこと、かつてグレイクとコンビを組んでいたこと、奥さんに逃げられたこと、今は引退して地元湖のレンジャーをやっていること・・・
ハリー「おいおいやめてくれよ、昔の話はこぉりごりだぜ。で、オレにその事件を頼みたいってことかよ?」
グレイク「まぁそういうことだ、ハリー。やってくれるな?」
ハリー「はぁん。警察も随分丸くなっちまったもんだな」

ハリーは死体を見る。でも死体はカメラには映さない。特殊メイクとか人形に金がかかるから。
ハリー「なるほどねぇ。警察じゃあどうしようもないわけだぜ・・・ 犯人は人間じゃねぇんだからな!」

グレイク「ところで、お前にこいつを預けたいと思うんだ。まだ新米だがよ!」
栗毛の新米「はじめまして! スティーブといいます」
ハリー「おいおいやめてくれよ! オレに子守りをさせる気か?」
グレイク「現場検証をこいつにしてもらうんだよ! お前にカメラを持たせたら湖に落としちまうぜ! それに、お供はこいつだけじゃない」
そこにバイクに乗ってさっそうと現れるピンクでボディコンでドレスの金髪女!
ヘルメットを取ると金髪がなびく。
化粧が濃くて、金髪には部分パーマかかってて、口紅が濃くて、ちちが不自然なほどでかくて、アイシャドウが濃くて、うっふんな感じで、でかいイヤリングが濃くて、ところでこの人はなんでピンクドレスなんだ?流行ってたのか? そしてマスカラが濃くて・・・
足コプターはさっぱりこういう人の魅力がわからない。
ほ ん と う に さ っ ぱ り み り ょ く を か ん じ な い
しかし、ハリーは「わお、とびっきりの美人が現れたな」
ちなみにこの台詞を副音声で再生すると「Oh,Wow! What’s going on here!?」となります。
化粧の濃い女「おせじなんかいわなくていいのよ?」
ハリー「おせじじゃないぜ! 誓うって・・・」
グレイク「彼女はアニタ。お前が引退したあとに配属した警官で・・・」
グレイクの話を聞いていないハリー「あんたどこからきたんだよ?」
化粧の濃いアニタ「コネチカットよ」
グレイク「お前とは逆にレンジャーから警官になったんだ、そして・・・」
ハリー「あんた、名前は?」
アニタ「アニタっていうの。よろしくね」

ハリー、スティーブ、アニタの3人でモーターボートに乗って湖を行く光景。
スティーブ「ぼくは昔から写真のことばっかり勉強してたんだ・・・ でも平凡なカメラマンになんてなりたくなくて、警察官になったんだ!」
ハリー、アニタに向かって「あんた、結婚してんのか?」
アニタ「まだだけど・・・ 私って男運がないみたいなの」
ハリー「あんたみたいなヒトだったら、いい男もたくさん寄って来るだろうのによ!」
スティーブ「ねぇ! あれ、何かな!」
熱心に写真をとりまくるスティーブ。
アニタ「クロコダイルよ。大きいわね。でもあいつじゃないわ。犯人は」
ハリー「あんたの胸のモノのほうが大きいって!」
アニタ「もっと大きいのがいるのよ・・・ 間違いないわ!」
ハリー「オレのアレも大きくなりそう!」
TVの前にいる思春期前のこどもは話についていけない。

なぜか大雨が降って夜のシーン。なぜ夜までいるんだ。
ハリー「ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ 
それでよ オレの車ぶっ壊れちまったんだ! ぎゃはは!」
アニタ「静かに! 何か来るわ!」
ぬーんと向こう側に動く影。
スティーブ「なんだろう、あれ」
アニタ「スティーブ、・・・ 銃を構えて」
スティーブ、リボルバー拳銃を構える。
ハリーもショットガンを持つ。
そのとき、がぶりと大きな顎がスティーブの両足に噛み付く!
明らかにワニのはりぼて。眼球もうごかない。
しかしそんなことを気にしてはいけない。
この映画が作られたのは80年代なのだ。
我々はCGで眼が肥えているのだ。
スティーブ「うわあああ! 助けて! アニタ! ハリィィィィー!」
スティーブはクロコダイルに向かって拳銃を乱射!
しかしひるまない! 血すら出ない!
スティーブ「銃が効かないー!」
クロコダイルが2回くらい顎をがぷがぷやるとスティーブの胸まで飲み込んで、彼を水中にさらっていく。
アニタ「逃げて!」

ボートを一直線に飛ばすハリー。
なぜか洞窟がある。
アニタ「やつは今頃満腹のはず。襲ってこないわ」
アニタの化粧は崩れない。
そこで二人で焚き火して夜を明かす。
二人で一緒の毛布に包まる。
Hなシーンはなしだ!
なぜならこれは、硬派のパニック・アクション・ムービーだからだ!

次の日。
ハリー「昨日は大雨で吸えなかったからな うまいぜ!」
赤いマルボロ。ライトたばこなんてこの時代には多分ない!
アニタの化粧は崩れない。
ボートで広い湖を走る。
ハリー「どうだ? やつは出そうか?」
アニタ「見て! あそこに!」
でかいワニの影。
消える。
水面に銃を向けながらハリー「どこだ? どこへ消えやがった!」
がぼむ! 船体にかじりつくクロコダイル!
ハリー撃つ。しかし効かない。
ハリー「弾切れだ!」
クロコダイルの体当たり! 船体が大きく揺れる!
アニタ「ああん!」
ハリー支える! 「大丈夫か!?」
アニタ「それよりやつを!」
でかい口あけて現れるクロコダイル!
アニタ「これを! ぶちこんでやるのよ!」
アニタはボートのガソリンタンクを外してクロコダイルの口にぶっこむ。
アニタ「今よ!」
ハリー、たばこを投げる。どがぼん! 
別角度から撮影したフィルムをスローモーションで3回繰り返す!
爆発炎上するクロコダイルの口! そして静かに湖に沈んでゆく・・・。
ハリー「やれやれ。帰れなくなっちまったじゃねえか」
アニタ「いいじゃないの。帰れなくたって。もう敵はいないんだし・・・ 今日は日曜日よ」
ハリー「そうだな・・・」
湖の反射光きらめく。シルエットになったふたりはキスを交わす・・・
フェードアウト。


TV版なのでスタッフロールはカット。
見たい人はDVD買ってください。
BDは出ません。

ナレーター「さああて! 来週の洋画劇場は!
錯綜する思惑! 飛び交うサスペンス! 一本の電話が全ての切り札!
次週! 6/22! ダイアルZ! 

再来週の洋画劇場は!
集まるテロリスト! やつらの殲滅のために特殊部隊が向かう!
しかしそこで彼らを待っていたのは!
6/29! エイリアンコマンドー2!」

声の出演
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・

「イケメン二人組みでお台場のスイーツを食べ尽くす!
こんなに大食いなの、イケメンじゃあない~!?
カロリー無限伝説! このあとすぐ! チャンネルはそのまま!」

TVの前の子どもが気づくと、両親はもう寝ている。
一人で歯を磨く。
鏡に映る自分の姿が少し怖く見える。
歯磨き粉の泡がたまってきたのを理由にして、歯を全て磨き終える前に口をゆすぐ。
こどもの奥歯はそろそろ生え変わる。
こどもは布団をかぶる。
ワニが出てきそうで怖いとか、そんなことは全然思わずに眠る。
こどもは思う、明日は土曜だってのに、部活の練習試合かぁ、さぼりたいなぁ。

 

おしまい



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