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これは、オタクの旅である

 人の価値観は、さまざま。

 自分が面白いと思うものが、他人にはつまらないかもしれない。

 自分が美味しいと思うものが、他人には美味しくないかもしれない。

 良いと悪いは、表裏一体。

 それは、受ける側の人間の価値観によって評価される。

 

 現在はネットの口コミによって、様々な価値観を知ることができる。
 同じ事象に対しても、良い評価もあれば悪い評価もある。

 特に旅行は非日常からの脱却であり、それなりの費用もかかることから、絶対に失敗したくないイベントだ。

 事前に情報を入手し、悪い個所は避けたいと思うのは当然のことだ。
 インターネットのない時代を過ごした者にとっては、現在の情報量はアンビリーバブルである。

 国内を問わず、海外の情報すら手に入る。

 行ってみなければ、分からない。

 そういう世界が、縮まった。

 旅に関して言えば、ホテルの内装や設備、利用者の感想まで。

 レストランのメニューと値段。味の支持率。

 ガイドブックに載っていない情報すら、手に入る。

 そうして念入りに下調べを済ませ、ようやく旅のプランを完成させる人も少なくないはずだ。

 

 旅はプラン作りから始まっており、楽しみは既にそこから付随している。
 しかし、中には全て友人や旅行会社任せという人もいる。

 これも価値観の違い。

 どちらが良くて、どちらが悪いという問題ではない。

 問題は、旅に何を求めるかということなのだ。

 

 この点に関しては、筆者である奇怪伯爵は貪欲だ。
 オタク的欲求が渦を巻き、昇龍のごとく天に駆け上がる。

 それだけに、下調べに時間を使う。

 ネットを駆使し、今回の調査期間は約2カ月に渡った。
 それでも、手に入らない情報は山ほどある。
 それは何故か?

 簡単にいえば、ネットですら掲載されていない情報を求めているからだ。

 それはイコール自分が知りたいと思う情報を、公開してくれる人が極めて少ないということになる。

 

 

 

 奇怪伯爵は、オタクだ。

 だが、オタクの種類も千差万別。

 欲求は、無限に存在している。

 奇怪伯爵は、人よりこだわりを持っているが、社交的でない故に要らぬ労苦を被ることが多い。

 これをもって、本書はオタクの旅と称している。

 

 グルメは美味で、コストパフォーマンスの高いもの。

 安くて、美味な烏龍茶の入手。

 アジアン・ホラーの実態調査。

 台湾ゲーム市場の調査。

 パイナップルケーキ食べ比べ。

 などなど……。

 

 

 どうみても、万人ウケするとは思えない興味の欠片たち。

 それを満たすことができる要素が台湾には溢れている。

 伯爵にとっては珠玉の内容であり、ロサンゼルス・ウォルト・ディズニーランド5日間よりも魅力ある旅行なのだ。

 

 おそらく、伯爵の旅を理解できる人間は僅かである。

 また、皆のガイドブック的役割を担おうとは思っていない。

 いうなれば、本書は全く参考にならない内容であり、独断と偏見、科学的根拠や裏付けのない意見に満ちている。

 ツマラナイと罵倒され、うんこ伯爵と呼ばれ、パブー追放という処遇が待っているかもしれない。

 

 それでも、同じ価値観を持った人はいる。

 その人が、旅行に行きたくても行けない状態だとしたら。

 少しでもオタク的喜びを共有してもらうべく、伯爵はこの本を紡ぐ。 

 

 

 

 

 

  


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最終更新日 : 2013-01-06 17:40:41

奇怪伯爵って、何者?

 行動的な人から見れば、 奇怪伯爵の旅はチャンチャラおかしいと思われるだろう。

 消極イズBESTが伯爵のモットーであり、人との交流が好きとか、友達100人とか、始終誰かとメールや電話しているという人間とは対極をなすタイプだと思っていただきたい。

 また、見知らぬ店に入るのは一苦労。

 まずは店外から様子を偵察し、店の前を二度は素通りする。
 自己基準に満たない内装は、入店中止。

 他に客が誰もいない場合は、入店延期。

 など、ビビりの最先端を突き進む。

 行動力がゼロに等しい伯爵は、人との交流をできるだけ避けることを目標にしている。

 

 会社では、仮面サラリーマンを演じなければならない。

 誰にも本性を知られることなく仕事に従事。自分のチームすら持っている万年課長だ。

 ソツなく仕事をこなすことから、適度な地位をキープ。
 一応、数名の部下がいる。

 年間を通しては、かなり多忙。

 平日は、仕事だけの生活。

 定年の訪れをキリンの首ように待ちわびているが、それはかなり先の話である。

 

 映画や漫画、小説等にのっぴきならない興味を示し、特にネット上ではホラー映画レビューを中心としたブログも開設。

 それが高じて、日本版が発売されないようなホラー映画も鑑賞するようになった。

 ファミコン以前からテレビゲームに手を染め、初代使用パソコンはシャープのMZ-2000。

 数々のコンシューマー・ゲーム機を所持し、ゲームに明け暮れた学生時代を過ごしている。

 現在はPCで輸入ゲーに手を染める。

 永続的に金欠で、金が惜しいがために英語のゲームで遊ぶのだ。(輸入版は日本語版んび比べて概ね安価なのだ)

 

 音楽は、ソプラノボイスの女性シンガーやヘヴィ・メタルなど。

 日本のバンドでは『陰陽座』・『LIV MOON』。

 海外は北欧系パワメタやシンフォニック・メタルを主に。

 ツイン・ギターにキーボード編成で、ボーカルの声質とギター・ソロ重視。

 その反面、台湾アイドル・王心凌やKARAにもハマる無節操さで、ロビンソン・クルーソー的孤立感を漂わせている。

 

 グルメに興味はあるが、高いものには手を出さない。

 この値段で、この美味さかよッ!

 これが、伯爵の中で最も価値ある評価だ。

 高い金を出して美味いのは当たり前。

 それに安さが加わって、初めて真の姿を知ることができる。

 もっとも、高い金を出せない身分にあるのだが……。

 三つ星レストランなぞ、おそらく一生行くことはない。

 しかし、伯爵には数々のグルメ漫画やエッセイのウンチクが蓄積されている。

 『美味しんぼ』を繰り返し読み、『孤独のグルメ』の真似をする。
 『ソムリエ』読んでワインを齧り、『大人の週末』を毎月欠かさない。

 ウンチク無くば、味知らずと唱えたのは、ニーチェだったか。

 とにもかくにも、ウンチクだけのエセグルメを気取ることをお許しいただきたい。

 

 思いつくままに自分像を列挙してみたが、自分で自分が理解できない。

 ただ、相当に面倒くさいヤツであることは間違いなく、旅に求めるものも一般とはかけ離れていることが何となくおわかりいただけるかと思う。

 奇怪伯爵の旅。

 相当に面倒だ。

 

 

 

 


2
最終更新日 : 2013-01-06 17:54:53

オタクが台北で出来ること

 人は具体的な目標を持った方が、行動を効率化することができる。

 今回の旅にも、具体的な目標が必要だ。

 それが実現できれば達成感を得ることができるし、最終的な旅の満足度は上昇する。

 そこで興味のあるモノを書き出し、達成の難易度別にカテゴライズ。

 これが、今回の旅プラン原案となる。

 

 □実現可能度:高

 ・お茶を買う(前回購入した店プラス新規開拓店)

 ・パイナップルケーキを買う(微熱山丘・その他店舗)

 ・辛い麺を食べる

 ・鼎泰豊に行く

 ・ゲームを探す

 ・台北地下街を歩く

 ・孔子廟に行く

 ・春水堂でタピオカ・ミルクティーを飲む

 ・書店で台湾オリジナルの漫画を探す

 

 □実現可能度:中

 ・ホラー映画DVDを探す

 ・映画『那些年』DVDを探す

 ・『パレ・デ・シン』ホテルのアフタヌーンティーを体験する

 ・『宇宙人探索展』および『変形金剛展』を見る

 

 □実現可能度:低

 ・台湾ドラマ『18禁不禁?』サウンド・トラックを購入する

 ・中国の特撮モノ『鎧甲勇士』DVD-BOXを探す

 ・韓国の特撮モノ『RAY FORCE』のDVDを探す

 

 なんという壮大な計画。

 会社で言うなら、年間売上総利益・前年比120%を目標にしたに等しい内容だ。

 立てよ、国民。

 立てよ、オタク。

 お前なら、やれるさ、トム。

 誰よりも遠くへ。

 地平線の彼方で待っている、素晴らしい明日に向かって……。

 伯爵は体を震わせ、期待と不安の両方を噛みしめていた。

 

 闇雲に列挙された目標を見て、貴方は意味不明と思うことも多々あるだろう。

 しかし、ご安心いただきたい。

 次章以降で懇切丁寧に解説するつもりである。

 

 さて、書き出された目標(あるいは欲望)の全てを実現することは不可能である。

 特に食は、基本一日三食。
 それに比べて、行きたい店はその三倍はある。
 今回の旅に相応しくなるよう、厳選しなければならない。
 鼎泰豊は、外せない。

 麵も食いたい。

 肉魯飯も試したい。

 茶芸館の食事もいいな。

 などと話はまるで進まなくなり、プランの見直しを余儀なくされる。

 通勤電車の中。

 仕事中。

 トイレの中。

 伯爵の頭は、常に台湾のことを考える。

 ツライ仕事の最中に、台湾に在る自分を想像。

 負けないで。

 頑張って。

 もう少しだから。

 ああ、台湾が自分を応援する声が聞こえるう……。

 そんなヤバい精神状態が、何日続いたことか。

 そして欲望の欠片たちは、しだいに一つの形を作っていった。

 それこそが、2012年12月の台湾旅行プランだ。

 苦しみの中で、ひたすら拾い集めた希望。

 一年の疲れを癒してくれるであろう心の糧。

 この旅行には、並々ならぬ決意と希望と喜びを詰め込もう。

 たとえ、それが他人にオタクと言われようとも。

 


3
最終更新日 : 2013-01-06 17:54:33

羽田空港へ

 今回で台湾は5回目。

 オタク的欲求を開花させてからは、3回目である。

 1回目は、大学の仲間とともに一般的な観光ツアー。

 2回目は、会社絡みの研修ツアー。

 共に、一般的なツアーだった。

 そして、オタク的要素を帯び始めた2011年の6月と12月の3・4回目。

 ここから、奇怪伯爵はひたすらにマニアックになっていく。

 

 欲求の変化も著しいい。

 初めは台湾のアキバといわれる光華商場を目指すだけだった。

 小籠包も、食べられれば」良いという程度。

 CDやDVDも、日本より価格が安いだけという認識。

 土産は、あまり美味しいと感じないパイナップル・ケーキを挨拶程度に購入。

 

 それが大幅に方針変更し、マニアックな形態へとチェインジ。

 同僚からは、『また台湾行くんですか?ハマってますね』などと言われるものの、伯爵のハマり具合なぞ彼には理解できるはずがない。

 これは、オタク的気質を持つものにしか分からぬ、神の領域である。

 夢の中にオタク神が降臨し、道を示されたことがあるか?

 あるはずもない人間に、伯爵の感じる醍醐味を理解できるはずもない。

 だから、伯爵は本心を口にしない。 

 『ええ、まあ。食事が安くて、美味しいですし……』

 などと一般人を装い、昼行燈を演じている。

 伯爵がオタク的旅を楽しんでいるなど、誰も思わない。

 誰も知らない。

 知られちゃ、いけない。

 奇怪伯爵が、誰なのか。

 

 2012年12月のとある早朝。

 前々日までに鬼のような残業をこなし、ようやく休暇をもぎ取った伯爵は起床した。

 就寝時間午前2時30分。

 起床時間午前5時ジャスト。

 これから海外へ行こうする人間には、あまりに過酷な状況だった。

 6時過ぎにには電車に乗ったものの、予想外の混雑。

 座れないのは、大きな誤算だった。

 仕方ないので、吊革につかまってジョジョ立ち

 やることないので、ジョジョ立ち

 呼吸を深くして、波紋を練ったり。

 片足で立ってみたり。

 途中、意識が飛んだりするものの、ジョジョ立ちで目が覚める。

 

 

 

 ようやく降り立った浜松町駅。

 ピス小僧サンタ・フォームに『行ってきます』の挨拶を施し、モノレールに乗り換えて羽田空港・国際線ターミナルで下車。

 ここまで来ると、一安心。

 チェックイン開始の1時間も前に到着し、安堵の息を漏らした。

 朝食でも食べるかと、レストラン街を調査。

 昨年食べた蕎麦屋が、まだ開店していない。

 寿司屋もやっていない。

 開店時間を変更したに違いないが、これはショックが大きい。

 寝不足と空腹のダブルパンチ。

 開いている店もあるが、メニューとコスパの観点から判断に迷う。

 旅行なのだから、ちょっと気を大きくしても良いのではないか。

 そのような迷いはあるものの、まだ日本の段階で金を使って良いものか。

 結局、探索範囲を拡大することにし、レストラン街を離れた。

 

 探索の結果、『上島珈琲店』発見の狼煙。

 胡麻ポテト&チキンサンドとドリンクセット490円が、ねずみ小僧の撒いた小判のようにありがたい。

 窓際の席は、モノレールを間近に眺められるグッド・ロケーション。

 立ち上る珈琲の香りが心地良く、しばしホンノリ・ムードに。

 なんとなく幸先が良い気がして、順調なスタートを喜ぶ。

 調子に乗って、モノレールをパチリ。

 写真撮っているの、伯爵だけだなあ。

 

 

 

 

  

 

 

 


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最終更新日 : 2013-01-06 20:32:45

エバー航空

 羽田-松山空港・台北便の就航は、ヘタレな伯爵にもパッケージツアー卒業という快挙をもたらした。

 松山空港にはMRT(地下鉄)の駅があり、タクシーやバスに乗らずとも移動が可能。

 タクシー・バス嫌いな伯爵にとって、これはポイントが高い。

 

 料金や発着時間の観点から、航空機はここ数回、全てエバー航空を利用。

 2012年12月の段階では、往路BR189便が羽田10:45発-台北・松山13:30。

 復路BR190便は台北・松山16:00-羽田19:50着。
 現地での滞在時間が、伯爵にとって好都合だ。

 機材や時間は変更の可能性があるので、あくまで本旅行当日のこととして紹介するが、機材はエアバス330-300。

 座席配列が2-4-2になっており、ペアの旅行には最適。
 となりにムサいオッサンや規格外ファットマンが座るというリスクも回避できる。

 航空運賃(エコノミーでも)によっては事前座席指定が可能で、座席に拘る方にも嬉しいパフォーマンス。

 

 

 

 機内食は、私的感想では可もなく不可もなくといったところ。

 伯爵はドリンクに白ワインを選択し、全てを食べきった。

 今回の旅行では、往路も復路もハロー・キティ仕様。

 機内食用のプラスチック・ナイフやフォークはピンクに色付けられており、中年男性には相当の羞恥心を投げつける。

 ピンクのフォークを持って、ワインをすする。

 周囲の乗客の目が気になってならない。

 ワインはステータスをあげるが、ピンクはどうよ!?

 林家パー子の一人笑いが、なぜか脳裏に浮ぶ。

 美人のCAが通りがかれば、すかさずフォークを置く。

 必然的な外的環境にもかかわらず、伯爵は己のプライドを貫くのだった。

 

 

 

 伯爵は、日頃の疲れからか、移動時にはすぐに睡眠に入る。 

 しかし、エバー航空では寝てなどいられない。

 なぜなら、機内上映の映画が充実しているからだ。

 前回はそのことを知らず、惰眠をむさぼった。

 その教訓を活かし、今回はすかさずラインナップをチェック。

 

 伯爵の気になった映画

 ・『エクスペンタブルズ2』 日本ではDVD発売前

 ・『るろうに剣心』 同じくDVD発売前

 ・『バンコック・カンフー』 タイ映画。事前情報全くなし。格闘映画らしい

 ・『クラッシュ』 ベトナム産の格闘アクション

 

 その他、CSIやHawaii-FiveOなど海外テレビもあった。

 往路のフライト時間は3時間45分。復路は気流の関係で2時間50分。
 離陸時等は見れないし、食事時間は集中できないから、時間は大切にしなければならない。

 すかさず作品をセレクトし、行動に移す必要がある。
 気になるラインナップからの脱落は、まず『クラッシュ』。
 実は既に輸入版を購入済み。

 ここで出逢えるならば、購入しなかったよ、たぶん。

 

 少々複雑な思いを残すも、次の選択へ。

 やはり気になる、『バンコック・カンフー』。

 なんなのだ、これは!?

 全く知らんぞ。

 一般ウケしそうもないから、日本版が発売される可能性は低いだろう。

 ここで見なければ、二度と出逢うことはないかもしれない。

 他の2作品は、まちがいなく再会の可能性があるな。

 という訳で、まずは『バンコック・カンフー』を。

 

 タイトルどおり、タイのバンコック舞台。

 幼い子供たちを誘拐し、芸を仕込んで金を稼がせる闇組織が暗躍。

 言うことを聞かぬ子供たちには、キツイお仕置きが待っている。

 両目を潰される子供。

 舌を切られる子供。

 ヒぃ~。

 ホラーか、これは?と思っていたら、謎の爺さんが登場。

 爺さんは空を飛び、拳銃の弾丸をよけ、悪人たちを一掃。

 残された子供たちは、爺さんに引き取られ、超絶技をマスターした若者となる。

 成長した若者たちは、皆イケ面の男達。

 仲間うちですったもんだがあって、最終的には闇組織に復讐を遂げるといったストーリー。

 残念ながら英語の字幕で、話が分かりづらい部分もあって、解釈率70%。

 イケ面俳優起用のためか、カンフーシーンは特殊効果に依存だったのが残念。

 氣で相手をスッ飛ばしたり、氣功砲を放ったり。

 やはり日本発売は微妙な内容なので、ここで鑑賞は正解。

 

 続いて、もう一丁。

 すかさず『るろうに剣心』を鑑賞開始。

 やはり途中で着陸となり、続きは復路に持ち越されるのであった。

 窓から見える景色は曇天。

 いや、雨が降っているようだ。

 まずい。

 この後の計画に狂いが……。

 不安に駆られながら、CAには笑顔を振りまく伯爵。

 いざ、台北。

 

 

 

 

 

機内食:豚=かつ丼だった

 

機内食:鳥


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最終更新日 : 2013-01-06 20:34:02


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