目次
行政法の科目って?
はじめに
行政法とは?
第1分野 行政法の一般的な法理論
1:法律に基づく行政の原理
2:私法法規の適用
3:行政活動の主体
4:行政庁の権限
5:行政行為(基準)
6;行政行為(分類)
7:行政行為(効力)
8:行政行為(無効・取消し・撤回)
9:行政行為(附款)
10:行政行為(行政裁量)
11:行政計画、行政契約
12:行政立法
13:行政指導
14:行政上の強制措置
15:行政代執行
16:即時強制、行政調査
第2分野 行政手続法
1:行政手続法の概要、用語
2:申請に対する処分
3:不利益処分
4:聴聞①
5:聴聞②
6:聴聞③
7:行政指導
8:意見公募手続、地方公共団体との関係
第3分野 行政不服審査法
1:行政不服審査法とは?
2:不服申立ての対象
3:不服申立ての種類
4:審査請求適格
5:総代、代理人
6:審査請求期間
7:執行停止
8:教示
9:審査請求の審理
10:裁決・決定
第4分野 行政事件訴訟法
1:行政事件訴訟法について
2:訴訟類型
3:審査請求と処分取消訴訟の関係
4:要件審理①(被告適格、裁判管轄、出訴期間)
5:要件審理②(処分性)
6:要件審理③(原告適格)
7:要件審理④(狭義の訴えの利益)
8:移送、併合、変更
9:執行停止
10:教示
11:取消訴訟の審理
12:無効等確認の訴え、争点訴訟
13:差止めの訴え
14:不作為の違法確認の訴え
15:義務付けの訴え
第5分野 国家賠償法
1:国家賠償法とは?
2:国家賠償法1条の判例
3:国家賠償法2条
4:2条判例
第6分野 地方自治法
1:地方自治の本旨
2:地方公共団体の事務
3:直接請求権
4:住民監査
5:住民訴訟
6:公の施設
7:自治立法
8:議会①
9:議会②
10:議長、副議長、委員会
11:会議
12:議会と長の関係①
13:議会と長の関係②
14:国の関与手続
15:国地方係争処理委員会

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1:法律に基づく行政の原理

 日本は民主主義を採用していることはご存知だと思います。では、民主主義とは一体どのような考えなのでしょうか?
 私は、民主主義とは「国家を国民がコントロールする政治体制」と定義しています。もちろんもっとふさわしい言葉があるかもしれませんが、私としてはこの定義で考えています。国民がコントロールするとはいってもどのようにコントロールするのかという問題が出てきますよね。

 そのコントロールするための基準が法律というわけです。

 法律は国民の代表者である国会議員が国会で話し合って
多数決をもって制定されます。国家は制定された法律を破って行動することはできないようになっているわけです。
 ということは国家の権力の行使の一つである行政活動も、法律の支配下にあるということがいえますよね。こういうのを法治行政とかいいます。


 この法治行政は「法律による行政の原理」という基本原則のもと成り立っているわけです。そしてこの「法律による行政の原理」は3つの原則を生み出すことになりました。

 その原則とは・・・

 法律の法規創造力

 ②法律の優位

 ③法律の留保
 の3つになります。

 ではこの3つの原則についてくわしく説明していきましょう。

法律の法規創造力
 
簡単に言えば、法律は国会だけが制定できますよということです。原則、国会以外の機関は法律を制定することはできないというわけです。
 ちなみに県議会、市議会などの地方議会が制定するのは法律ではなく「条例」ですので、法律にはあたりません。

 

法律の優位

 すべての行政活動は法律に違反したり、無視したりしてはいけないという考え方です。 法律>行政という図式で考えてくれればいいと思います。

法律の留保
 一定の行政活動は法律の根拠に基づいて行われなければならないという考えです。 ただ、この考えを完全に認めてしまうと、意外なことに国民に不利益をもたらすという結果になることがあります。なぜなら法律に制定されている事しかできないのなら、逆に言えば法律に制定がない出来事が起こったときに、行政は国民を助ける行動がとれないわけです。そこで全部の行政行為に法律の留保を適用するのは却って国民に不利益をこうむらせるという考えに至りました。


 そこで、行政活動のうち、
国民の権利、自由を制限したり、国民に新たな義務を課すなど、国民の権利を侵害する行政行為に法律の留保を採用することにしました。
 このような考え方を「侵害留保説」といいます。

 侵害留保説は意外と行政法を考える上で使用しますので、押さえておいてくださいね。


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1:行政手続法の概要、用語

【行政手続法とは?】
 この行政手続法は、成立したのが平成5年という若い法律なんです。行政手続法という名前が示すように行政活動に対する手続を定めた法律です。平成5年ということは、それまで行政活動に対する手続はなかった。もしくは他の法律に定められていたものでしかなかったというわけですね。

 それまでの日本の行政スタイルは、行政庁が処分を行い、これに不服があれば事後的に不服申立て、訴訟で対処するというスタイルだったわけです。
 でもこれだと、事後的に救済される違法な行政行為は一握りに過ぎなかったんです。後でやりますが、行政訴訟はたとえ違法であっても、公益に照らし合わせて取消すと影響が大きいものは取消せないという事情判決という判決があるんです。
 そんな、現状ですので事後的救済だけでは国民の権利利益の救済は不十分であったというわけです。
 そこで、行政手続法を制定し、処分の下し方などについて、あらかじめ手続を決定しておくことや、不利益な処分に下される前に主張・反論の機会を与えることにしたというわけです。

◆行政手続法の目的
行政運営における公正の確保と透明性の向上
国民の権利利益の保護

 この2つは暗記しておいてください。記述で聞かれる可能性もあると思います。

 この行政手続法は一般法になりますので、他に法律に定めがあるときは、そちらが優先され、無い時は適用されるというわけです。

 では、基本用語についてやっていきましょう。

(1)申請に対する処分
 これは法令に基づき、申請(行政庁の許認可を求める行為で行政庁が諾否の応答をすべきこととされているもの)に対して下す処分のことです。

(2)不利益処分
 行政庁が法令に基づいて、特定のものを名宛人として、直接に義務を課し、または権利を制限する処分のことです。
(3)行政指導
 行政機関がその権限内において、一定の目的を実現するため、特定のものに一定の作為、または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為のうち処分に該当しないもののことです。

(4)届出
 行政庁に対して一定の事項の通知をする行為のうち神聖を除くものであって法令によって直接に通知が義務付けられているもののことです。

(5)命令等制定
 内閣または行政機関が、法令に基づく命令、審査基準、処分基準、行政指導指針を制定することです。


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1:行政不服審査法とは?

【行政不服審査法とは?】
 行政不服審査法は、大改正を控えているということで、出題数は以前より減らされています。しかし、それでも2問が出題されるので、今後の出題も2問ぐらいかなと私は思っています。
 この2問って結構大きいですのでしっかりやっていきましょう。

 この行政不服審査法とは、行政庁の違法または不当な行為により、国民が損害を受けた時に、行政庁に対して、申立てを行い国民の権利利益の救済を行うための一般法です。

 一般法という事は、もし他の法律に不服申立てに対する定めがあるときはそちらが優先されます。また出題された例として、「不服申立てについて他の法律で定めることが出来るか?」という事を聞かれたことがあります。当然、「できる」ということになります。一般法となっていたら当然、他の法律の兼ね合いもあると考えるべきですね。

 さて、行政庁の行為に不満があり、取消しを求め、国民の権利利益の救済を求める方法は2つあります。

 行政庁に申立てを行う場合と裁判所に訴える場合の2つです。行政庁に申立てをすることを「行政不服申立て」、裁判所に訴えることを「行政事件訴訟」となります。

 行政庁 → 行政不服申立て(行政不服審査法)
 裁判所 → 行政事件訴訟(行政事件訴訟法)

 この違いは、きちんと理解しておいてください。私恥ずかしながら、この区別がなかなかつかずに苦労しました。

 では、何故わざわざ行政行為を取消すために2つの制度が必要なのかについて説明しておきます。

 裁判というのは、時間、手間、費用の面で国民にものすごく負担がかかります。これは裁判の特性上、公正、慎重な審議を行おうとすれば仕方のないことといえます。

 ですが、「仕方がない」ということであきらめてしまったら、国民救済の観点から望ましくないです。
 また裁判での争点は、違法か適法かという判断が争点となります。不当かそうでないかは審議されません。
 不当は「違法でないけど、それはちょっとひどいのでは?」というレベルのものであり

 違法 > 不当 > 適法、納得

 というような位置関係で、微妙な場所にあるものです。

 不当なものであっても国民の権利利益を侵害する場合があるので、国民の権利利益の観点からいえば行政事件訴訟だけでは不十分といえるわけですね。
 その不十分を解消するためにも、行政不服申立てという制度が必要というわけです。


 行政不服審査法の目的は2つありますが、ここまでの説明でなんとなく理解できたのではないでしょうか?

 そう一つ目は、「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済」です。裁判のように手間、時間、費用をかけない「簡易迅速な手続」で「国民の権利利益を救済する」のが目的というわけです。

 そしてもう一つは、行政庁自身に訴えることにより、自分たちの行為の意義を考えることを与えることになります。「国民からこんな意見が来た・・・」「この行為は適正でなかったのか?」と行政が自分たちで考えることにより、よりよい行政のあり方を目指すことになります。

 ということでもう一つの目的は「行政の適正な運営の確保」となります。

 この2つが行政不服審査法の目的になります。この目的を達成するために、どんな制度がつくられたかをやっていくことになります。


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1:行政事件訴訟法について

【行政事件訴訟法とは?】
 行政事件訴訟法は、択一問題で3問、記述式で1問で出題される傾向が強いので、行政法の中でも非常に重要ですので、がんばっていきましょう。

 行政事件訴訟法は、その名の通り、「行政事件に関する訴訟」つまり行政裁判のための法律という事になります。

 裁判ということは事は、争う対象というのは当該行政行為が適法か違法かということになります。ですので、不服申立てよりも、国民救済の対象が多少狭くなってしまいます。ただし、不服申立ては簡易迅速な手続による国民救済でしたが、審査を行うのは同じ行政、つまり身内でした。そういった点で出される裁決、決定には公平性に対してどうしても、疑いが残るのは否定できません。

 そこで、行政とは独立した司法機関である裁判所に中立、公平な裁判所による救済である行政事件訴訟制度が設けられているというわけです。

 瑕疵ある行政行為の救済は、不服申立て行政事件訴訟の2つによって行われるということをまず頭に入れておいてください。


 行政事件訴訟法は、行政事件に関する一般法ですので、他の法律に定めがある時は、そちらが適用されますし、行政事件訴訟法に定めがなく、他の法律に定めがない場合は民事訴訟の例により救済が図られるということになっています。


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1:国家賠償法とは?

【国家賠償法とは?】
 国家賠償法とは、国家に対して賠償を請求するための法律です。

 ちなみに、補償と賠償の違いを知っていますか?

 補償→適法な行為によるもの
 賠償→違法な行為によるもの

 ものすごく簡単に違いを説明すればこうなります。ということは、国家賠償法というのは国家の違法行為によって国民に何らかの損害が出たときに適用される法律というわけですね。

 さて国家賠償の要件(1条)は…
公権力の行使に当たる行為であること
公務員の行為であること
公務員の職務によって発生した損害であること
公務員に故意・過失があること
違法に与えられた損害であること

 となっています。

 この5つの要件を満たす時に、国家賠償法は行えるというわけです。なお、行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求は当然のことながら出来ます。注意してほしいのは、別に当該行政処分について取消しか無効等確認の判決を得ないでよいということです。
 ここは、過去問での出題例があります。

 この国家賠償法においては、賠償責任者は、行政主体である国または公共団体となります。
 決して公務員個人に直接請求できるわけではありませんので注意しておいてください。
 これは何故かと言うと2つ理由があります。
 1つ目は、国家賠償法の第一の目的は被害者の救済なんです。もし公務員に直接請求できるようにすると公務員個人に支払い能力がない場合、十分な救済が受けれなくなる可能性が出てきます。そのために行政主体である国または公共団体が賠償責任を負うということにすることで被害者の救済を行うというわけです。
 2つ目は、もし公務員個人に直接賠償をしてしまうと、公務員が萎縮してしまい、適正な公務に支障が出てしまうかもしれません。そのために公務員個人への賠償請求は認められないというわけです。

 ただし、誤解しないでほしいのですが加害公務員が一切責任を取ることはないと考えないでください。公務員が違法な公権力を行使しておきながら国、公共団体だけが責任を負うというのでは、やはり不合理な場合もあります。
 そのために公務員の行為が目に余る場合(故意または重過失)は、国、公共団体は公務員個人に対して求償権を行使できると規定されています。

〈求償権の要件〉
国または公共団体が被害者の現実に賠償を行ったこと
加害公務員に故意又は重過失があること

 この2点を満たしているときは、国、公共団体は求償権を行使できます。
 この時の求償権の範囲なんですが、国、公共団体が支払った賠償金とその法定利息となっています。裁判に要した弁護士費用などは求償の対象外となっています。

 そうそう、忘れていましたが公務員の範囲なんですが、普通に皆さんが考える公務員とは役所に勤めている人、警察官、学校の先生などだと思うんですが、国や公共団体に委託を受けた人も公務員と考えておいてください。


 最後に、公務員の選任・監督者と俸給・給与負担者が異なる場合には、被害者はいずれに対しても損害賠償請求ができます。
 例えば小学校や中学校で、市立中学校とかありますよね。そこで勤務する先生方の監督者は市町村が行うんですが、給料は都道府県から支払われるんです。

 このように、公務員の選任・監督者と給与負担者が異なるというのは、それほど珍しいじれではないんです。
 そんな場合には、どちらに対しても損害賠償請求できたほうが、被害者救済の観点から都合がいいですね。
 またこの場合に賠償したほうが、内部関係において一方に求償権を有することになります。



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