目次
目  次
[あ行]
赤あざ(血管腫)
亜急性甲状腺炎
悪性リンパ腫
アジソン病
足白癬(水虫)
アスベスト症
アスペルガー症候群
アスペルギルス症
あせも(汗疹)
圧迫性視神経症
アトピー性皮膚炎
あな痔(痔瘻)
アナフィラキシーショック
アニサキス症
アペール症候群
アポロ病
アメーバ赤痢
アルコール依存症
アルコール性肝障害
アルツハイマー型認知症
アレルギー性結膜炎
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
息切れ
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
遺精
胃切除後障害
一過性脳虚血発作
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ(疣贅)
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
咽頭炎
咽頭がん
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
ウェゲナー肉芽腫症
ウェルシュ菌食中毒
うっ血乳頭
うつ病
エコノミークラス症候群
エルシニア食中毒
円形脱毛症
遠視
円錐角膜
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
太田母班
おたふく風邪
[か行]
外陰炎
外陰がん
壊血病
外傷性視神経症
疥癬
回虫症
外反母趾
開放隅角緑内障
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
解離性大動脈瘤
下咽頭がん
顔の運動異常
過活動膀胱(OAB)
過換気症候群
顎骨腫瘍
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
過呼吸症候群
かぜ
仮性近視
肩凝り
かっけ(脚気)
過敏性血管炎
過敏性腸症候群
かぶれ(接触皮膚症)
花粉症
カポジ肉腫
過眠症
仮面うつ病
仮面高血圧
顆粒球減少症
カルチノイド
加齢黄斑変性
川崎病
感音難聴
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
肝吸虫症
ガングリオン(結節腫)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
肝硬変
カンジダ膣炎
間質性肺炎(肺線維症)
眼精疲労
乾癬
肝臓がん
眼底出血
嵌頓ヘルニア
陥入爪
乾皮症
カンピロバクター食中毒
顔面神経まひ(ベルまひ)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気管支喘息
気胸
季節性うつ病
偽痛風(軟骨石灰化症)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
亀頭包皮炎
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
機能性甲状腺腺腫
機能性子宮出血
気分変調性障害(気分変調症)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
キャッスルマン病
吸収不良症候群
急性胃炎
急性肝炎
急性気管支炎
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性腎炎
急性腎不全
急性膵炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
急性大腸炎
急性中耳炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性白血病
急性鼻炎
急性腹膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
胸郭出口症候群
狭心症
蟯虫症
強迫性障害
強皮症(全身性硬化症)
胸膜炎
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
巨大乳頭結膜炎
ギラン・バレー症候群
切れ痔(裂肛)
筋委縮性側索硬化症
菌血症
近視
緊張性頭痛
くも膜下出血
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
クレブシエラ肺炎
クロイツフェルト・ヤコブ病
クローン病
黒なまず(癜風)
群発頭痛
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
劇症肝炎
結核
血管腫(赤あざ)
月経痛
血精液症
結節性紅斑
結節性多発動脈炎
血栓症
結膜炎
結膜下出血
血友病
腱鞘炎
原爆症
原発性肺高血圧症
原発性無月経
顕微鏡的多発血管炎
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
高血圧症
膠原病
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
高山病
高脂血症
光視症
口臭
甲状腺がん
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
鉤虫症
喉頭炎
喉頭がん
更年期障害
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
五月病
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨髄腫
骨粗鬆症
骨肉腫
コレラ
混合性結合組織病(MCTD)
[さ行]
臍炎
細菌性赤痢
細菌性肺炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
逆さまつげ
坐骨神経痛
匙状づめ
サルコイドーシス
サルモネラ食中毒
三叉神経痛
霰粒腫
シェーグレン症候群
痔核(いぼ痔)
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
色素性母斑(黒あざ、黒子)
色盲、色弱(色覚異常)
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
歯周病
視神経委縮
視神経炎
視神経症
持続勃起症
シックハウス症候群
歯肉がん(歯茎がん)
紫斑病
ジフテリア
自閉症
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
社会不安障害(SAD)
弱視
若年性認知症
斜視
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
住血吸虫症
重症筋無力症
十二指腸潰瘍
十二指腸虫症(鉤虫症)
絨毛がん
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
腫瘍性視神経症
春季カタル
猩紅熱
硝子体混濁
掌蹠膿疱症
上咽頭がん
条虫症
小腸がん
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
静脈血栓症
静脈瘤
睫毛乱生症
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
書痙
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
自律神経失調症
視力障害
脂漏性皮膚炎
痔瘻(あな痔)
白なまず(白斑)
心因性めまい
腎盂がん
腎盂腎炎
腎炎
人格障害
心筋炎
心筋梗塞
神経因性膀胱
神経芽細胞腫
神経性過食症
神経性食欲不振症
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎細胞がん
心室中隔欠損症
心身症
新生児テタニー
新生児メレナ
心臓神経症
心臓ぜんそく
心臓病
心臓弁膜症
腎臓がん
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心内膜炎
塵肺症
腎不全
心房中隔欠損症
心膜炎
じんましん(蕁麻疹)
水晶体嚢性緑内障
水腎症
膵臓がん
水痘(水ぼうそう)
水頭症
髄膜炎
頭痛
精液瘤(精液嚢腫)
生活習慣病
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
正常眼圧緑内障
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
成人スティル病
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
声帯ポリープ、声帯結節
性病
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
脊椎分離症、脊椎すべり症
赤痢
せつ、よう
雪眼炎(雪目)
舌がん
セックス依存症(性依存症)
接触皮膚炎(かぶれ)
セレウス菌食中毒
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
前庭神経炎
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
全般性不安障害(GAD)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
双極性障害(躁うつ病)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
早漏
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
続発性無月経
続発性緑内障
鼠径ヘルニア(脱腸)
そばかす(雀卵斑)
[た行]
ターナー症候群
大血管転位症
体臭
帯状疱疹
大腿骨頭壊死
大腸がん
大腸憩室
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
ダウン症候群
唾液腺がん
多汗症
多形滲出性紅斑
多血症(赤血球増加症)
たこ、魚の目
ただれ目(眼瞼縁炎)
脱水症
脱腸(鼠径ヘルニア)
脱毛、薄毛
多発性硬化症
単純性甲状腺腫
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
胆石症
胆道がん
胆嚢炎、胆管炎
蛋白漏出性胃腸症
蓄膿症
膣がん
チック症
知的障害
中咽頭がん
虫刺症(虫刺され)
中耳炎
中心性網膜脈絡症
虫垂炎
腸炎ビブリオ食中毒
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
聴神経腫瘍
腸チフス、パラチフス
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
痛風
突き目(匐行性角膜潰瘍)
爪白癬(爪の水虫)
手足口病
手足のしびれ
低血圧症
低酸症
適応障害
手湿疹(主婦湿疹)
鉄欠乏性貧血
てんかん
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
統合失調症(精神分裂病)
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
頭部白癬(しらくも)
動脈管開存症
動脈硬化
動揺病(乗り物酔い)
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
特発性視神経炎
特発性食道拡張症
特発性心筋症
特発性脱疽
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
突発性難聴
とびひ(伝染性膿痂疹)
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
鳥インフルエンザ
トリコモナス症
[な行]
ナルコレプシー
軟骨石灰化症(偽痛風)
軟性下疳
難病
軟部肉腫
にきび(尋常性痤瘡)
肉体疲労
ニコチン酸欠乏症
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
日本住血吸虫症
日本脳炎
乳がん
乳腺炎
乳腺症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
尿膜管遺残
認知症(痴呆症)
ヌーナン症候群
熱傷(やけど)
熱中症
ネフローゼ症候群
脳炎
膿胸
脳血管性認知症
脳梗塞
脳腫瘍
膿腎症
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
乗り物酔い(動揺病)
ノロウイルス食中毒
[は行]
パーキンソン病
バージャー病
パーソナリティー障害
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
肺水腫
肺性心
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺動脈狭窄症
肺嚢胞症
肺膿瘍
白衣高血圧
白癬
白内障
白板症
白皮症
はしか
橋本病(慢性甲状腺炎)
破傷風
バセドウ病
白血球増加症
白血病
発達障害
鼻カタル
鼻詰まり
パニック障害
はやり目
原田病
ハンセン病
ハンチントン病
鼻炎
肥厚性鼻炎
膝痛
鼻出血
ヒスタミン食中毒
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
鼻中隔湾曲症
ピック病
非定型うつ病
非定型抗酸菌症
ヒトアジュバンド病
皮膚カンジダ症
皮膚筋炎、多発性筋炎
皮膚結核
皮膚掻痒症
飛蚊症
肥満
びまん性汎細気管支炎
百日ぜき
日和見肺感染症
貧血
ファロー四徴症
不安障害
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
プール熱
フグ中毒
副鼻腔がん
腹壁ヘルニア
ふけ症
不整脈
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
舞踏病
ぶどう膜炎
プランマー病
フリクテン性角膜炎
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
変形性股関節症
変形性膝関節症
片頭痛
扁桃炎
便の変化
蜂窩織炎、丹毒
包茎
膀胱異物
膀胱炎
膀胱がん
膀胱結石
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボーエン病
勃起障害(ED)
ボックダレック孔ヘルニア
ボツリヌス菌食中毒
[ま行]
マイコプラズマ肺炎
マタニティーブルー
末梢動脈疾患(PAD)
マラリア
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性気管支炎
慢性結膜炎
慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性腎炎
慢性腎不全
慢性膵炎
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性中耳炎
慢性腸炎
慢性白血病
慢性鼻炎
慢性腹膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
味覚障害
水虫(足白癬)
水ぼうそう(水痘)
耳鳴り
ミュンヒハウゼン症候群
ムーコル症
無気肺
無月経
虫刺され(虫刺症)
無症候性心筋虚血
むずむず脚症候群
無痛性甲状腺炎
胸焼け
夢遊症
メタノール中毒
メタボリック症候群
メニエール病
めまい
妄想性障害
妄想性人格障害
毛巣瘻
網膜芽細胞腫
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
門脈圧高進症
門脈血栓症
[や行]
夜驚症
薬剤性大腸炎
薬疹
薬物依存症
やけど(熱傷)
やせ
野兎病
夜盲症
幽門狭窄
雪目(雪眼炎)
痒疹
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
翼状片
横川吸虫症
[ら行]
ライム病
ラテックスアレルギー
ラッサ熱
卵管がん
乱視
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
流行性角結膜炎
良性発作性めまい
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
旅行者下痢症
リンゴ病
リンパ浮腫
類宦官症
ルイス・サムナー症候群
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
ループス腎炎
レイノー病
レーベル病
レジオネラ症
裂肛(切れ痔)
レビー小体型認知症
老眼(老視)
老人性角化腫(日光角化症)
肋膜炎
ロタウイルス腸炎
肋間神経痛
[わ行]
ワイル病
若はげ
腋臭
腕神経叢まひ
[A~Z、数字【1~】]
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
IgA腎症
O157感染症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
SSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
WPW症候群
[がん]
悪性リンパ腫
胃がん
陰茎がん
咽頭がん
ウイルムス腫瘍
外陰がん
下咽頭がん
顎骨腫瘍
カポジ肉腫
カルチノイド
肝臓がん
急性白血病
甲状腺がん
喉頭がん
骨髄腫
骨肉腫
子宮がん
子宮頸がん
子宮体がん
歯肉がん(歯茎がん)
絨毛がん
上咽頭がん
小腸がん
食道がん
腎盂がん
神経芽細胞腫
腎細胞がん
腎臓がん
膵臓がん
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
舌がん
前立腺がん
大腸がん
唾液腺がん
胆道がん
膣がん
中咽頭がん
軟部肉腫
乳がん
肺がん
白血病
ページェット病
膀胱がん
ボーエン病
慢性白血病
網膜芽細胞腫
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
老人性角化腫(日光角化症)
[心臓、血管、血液の病気]
エコノミークラス症候群
解離性大動脈瘤
仮面高血圧
顆粒球減少症
狭心症
菌血症
血栓症
血友病
高血圧症
静脈血栓症
静脈瘤
心筋炎
心筋梗塞
心室中隔欠損症
心膜炎
精索静脈瘤
成人T細胞白血病(ATL)
先天性心臓病
大血管転位症
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
多血症(赤血球増加症)
低血圧症
鉄欠乏性貧血
動脈管開存症
特発性心筋症
特発性脱疽
バージャー病
肺性心
肺動脈狭窄症
白衣高血圧
白血球増加症
貧血
ファロー四徴症
不整脈
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
末梢動脈疾患(PAD)
無症候性心筋虚血
リンパ浮腫
レイノー病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
WPW症候群
[呼吸器の病気]
アスペルギルス症
息切れ
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
過換気症候群
過呼吸症候群
かぜ
間質性肺炎(肺線維症)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気胸
急性気管支炎
胸膜炎
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クレブシエラ肺炎
結核
原発性肺高血圧症
細菌性肺炎
サルコイドーシス
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
塵肺症
先天性気管狭窄症
膿胸
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺真菌症
肺水腫
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺嚢胞症
肺膿瘍
非定型抗酸菌症
びまん性汎細気管支炎
日和見肺感染症
ボックダレック孔ヘルニア
マイコプラズマ肺炎
慢性気管支炎
ムーコル症
無気肺
レジオネラ症
肋膜炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
[食道、胃腸、肛門の病気]
あな痔(痔瘻)
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
胃切除後障害
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
横隔膜ヘルニア
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
過敏性腸症候群
嵌頓ヘルニア
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
吸収不良症候群
急性胃炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性大腸炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性腹膜炎
切れ痔(裂肛)
クローン病
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
臍炎
臍帯ヘルニア
臍肉芽腫
臍ヘルニア
痔核(いぼ痔)
十二指腸潰瘍
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
痔瘻(あな痔)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大腸がん
大腸憩室
脱腸(鼠径ヘルニア)
蛋白漏出性胃腸症
虫垂炎
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
低酸症
特発性食道拡張症
尿膜管遺残
ヒステリー球(食道神経症)
腹壁ヘルニア
便の変化
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性腸炎
慢性腹膜炎
胸焼け
毛巣瘻
薬剤性大腸炎
幽門狭窄
裂肛(切れ痔)
ロタウイルス腸炎
[肝臓、胆道、膵臓の病気]
アルコール性肝障害
肝硬変
急性肝炎
急性膵炎
劇症肝炎
胆石症
胆嚢炎、胆管炎
慢性膵炎
門脈圧高進症
門脈血栓症
[内分泌・代謝異常、栄養障害による病気]
亜急性甲状腺炎
ウイルソン病
壊血病
かっけ(脚気)
偽痛風(軟骨石灰化症)
機能性甲状腺腺腫
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
生活習慣病
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
ターナー症候群
単純性甲状腺腫
痛風
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
軟骨石灰化症(偽痛風)
ニコチン酸欠乏症
ヌーナン症候群
橋本病(慢性甲状腺炎)
バセドウ病
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
肥満
プランマー病
慢性甲状腺炎(橋本病)
無痛性甲状腺炎
メタボリック症候群
やせ
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
類宦官症
[アレルギーによる病気、膠原病]
アトピー性皮膚炎
アナフィラキシーショック
アレルギー性結膜炎
ウェゲナー肉芽腫症
過敏性血管炎
強皮症(全身性硬化症)
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
膠原病
混合性結合組織病(MCTD)
サルコイドーシス
シェーグレン症候群
シックハウス症候群
成人スティル病
全身性エリテマトーデス
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
ヒトアジュバンド病
皮膚筋炎、多発性筋炎
ベーチェット病
ラテックスアレルギー
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
[心の病気]
アスペルガー症候群
アルコール依存症
アルツハイマー型認知症 
うつ病
仮面うつ病
季節性うつ病
気分変調性障害(気分変調症)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
強迫性障害
クロイツフェルト・ヤコブ病
肛門神経症(自己臭妄想症)
五月病
自閉症
社会不安障害(SAD)
若年性認知症
書痙
心因性めまい
人格障害
神経性過食症
神経性食欲不振症
心身症
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
セックス依存症(性依存症)
全般性不安障害(GAD)
双極性障害(躁うつ病)
チック症
知的障害
適応障害
統合失調症(精神分裂病)
認知症(痴呆症)
脳血管性認知症
パーソナリティー障害
発達障害
パニック障害
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ピック病
非定型うつ病
不安障害
ミュンヒハウゼン症候群
薬物依存症
レビー小体型認知症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
[脳、脊髄、神経の病気]
アペール症候群
一過性脳虚血発作
顔の運動異常
過眠症
顔面神経まひ(ベルまひ)
ギラン・バレー症候群
筋委縮性側索硬化症
緊張性頭痛
くも膜下出血
クルーゾン症候群
クロイツフェルト・ヤコブ病
群発頭痛
血栓症
坐骨神経痛
三叉神経痛
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
自律神経失調症
水頭症
髄膜炎
頭痛
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
多発性硬化症
聴神経腫瘍
てんかん
ナルコレプシー
脳炎
脳梗塞
脳腫瘍
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
パーキンソン病
発達障害
ハンチントン病
舞踏病
片頭痛
むずむず脚症候群
夢遊症
ルイス・サムナー症候群
肋間神経痛
腕神経叢まひ
[目の病気]
圧迫性視神経症
アポロ病
アレルギー性結膜炎
うっ血乳頭
遠視
円錐角膜
外傷性視神経症
開放隅角緑内障
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
仮性近視
加齢黄斑変性
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
眼精疲労
眼底出血
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨大乳頭結膜炎
近視
結膜炎
結膜下出血
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
光視症
逆さまつげ
サルコイドーシス
霰粒腫
シェ-グレン症候群
色盲、色弱(色覚異常)
視神経委縮
視神経炎
視神経症
弱視
斜視
腫瘍性視神経症
春季カタル
睫毛乱生症
硝子体混濁
視力障害
水晶体嚢性緑内障
正常眼圧緑内障
雪眼炎(雪目)
先天性緑内障(牛眼)
続発性緑内障
ただれ目(眼瞼縁炎)
中心性網膜脈絡症
突き目(匐行性角膜潰瘍)
糖尿病性網膜症
特発性視神経炎
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
白内障
はやり目
原田病
飛蚊症
ぶどう膜炎
フリクテン性角膜炎
ベーチェット病
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
慢性結膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
夜盲症
雪目(雪眼炎)
翼状片
乱視
流行性角結膜炎
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
レーベル病
老眼(老視)
[耳、鼻、のどの病気]
咽頭炎
感音難聴
急性中耳炎
急性鼻炎
喉頭炎
喉頭がん
心因性めまい
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
声帯ポリープ、声帯結節
前庭神経炎
中耳炎
聴神経腫瘍
突発性難聴
乗り物酔い(動揺病)
鼻カタル
鼻詰まり
鼻炎
肥厚性鼻炎
鼻出血
鼻中隔湾曲症
扁桃炎
慢性中耳炎
慢性鼻炎
耳鳴り
メニエール病
めまい
良性発作性めまい
[歯、口腔の病気]
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
口臭
歯周病
白板症
ベーチェット病
ヘルペス性歯肉口内炎
味覚障害
[皮膚の病気]
赤あざ(血管腫)
足白癬(水虫)
あせも(汗疹)
アトピー性皮膚炎
いぼ(疣贅)
いんきんたむし(股部白癬)
円形脱毛症
疥癬
かぶれ(接触皮膚症)
カポジ肉腫
乾癬
陥入爪
乾皮症
黒なまず(癜風)
血管腫(赤あざ)
結節性紅斑
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
匙状づめ
色素性母斑(黒あざ、黒子)
紫斑病
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
掌蹠膿疱症
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
白なまず(白斑)
じんましん(蕁麻疹)
せつ、よう
接触皮膚炎(かぶれ)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
そばかす(雀卵斑)
体臭
帯状疱疹
多汗症
多形滲出性紅斑
たこ、魚の目
脱毛、薄毛
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
虫刺症(虫刺され)
爪白癬(爪の水虫)
手湿疹(主婦湿疹)
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
頭部白癬(しらくも)
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
とびひ(伝染性膿痂疹)
にきび(尋常性痤瘡)
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
熱傷(やけど)
白癬
白板症
白皮症
皮膚カンジダ症
皮膚結核
皮膚掻痒症
ふけ症
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
蜂窩織炎、丹毒
ボーエン病
水虫(足白癬)
虫刺され(虫刺症)
薬疹
やけど(熱傷)
痒疹
リール黒皮症
リンゴ病
老人性角化腫(日光角化症)
若はげ
腋臭
[骨、関節、筋肉の病気]
アペール症候群
外反母趾(ぼし)
肩凝り
ガングリオン(結節腫)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
胸郭出口症候群
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
腱鞘炎
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨粗鬆症
重症筋無力症
脊椎分離症、脊椎すべり症
線維筋痛症
大腿骨頭壊死
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
膝痛
変形性股関節症
変形性膝関節症
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
腕神経叢まひ
[腎臓、泌尿器の病気]
アジソン病
過活動膀胱(OAB)
急性腎炎
急性腎不全
腎盂腎炎
腎炎
神経因性膀胱
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎不全
水腎症
前立腺炎
前立腺肥大症
糖尿病性腎症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
ネフローゼ症候群
膿腎症
膀胱異物
膀胱炎
膀胱結石
慢性腎炎
慢性腎不全
ループス腎炎
IgA腎症
[感染症(性病、寄生虫病を含む)]
アスペルギルス症
アニサキス症
アポロ病
アメーバ赤痢
咽頭結膜炎
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウェルシュ菌食中毒
エルシニア食中毒
オウム病(クラミジア肺炎)
おたふく風邪
疥癬
回虫症
カポジ肉腫
肝吸虫症
カンピロバクター食中毒
急性出血性結膜炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
蟯虫症
菌血症
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
鉤虫症
コレラ
細菌性赤痢
細菌性肺炎
サイトメガロウイルス感染症
サルモネラ食中毒
ジフテリア
住血吸虫症
十二指腸虫症(鉤虫症)
猩紅熱
条虫症
水痘(水ぼうそう)
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣上体炎(副睾丸炎)
性病
赤痢
セレウス菌食中毒
尖圭コンジローム
腸炎ビブリオ食中毒
腸チフス、パラチフス
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
鳥インフルエンザ
軟性下疳
日本住血吸虫症
日本脳炎
ノロウイルス食中毒
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
白癬
はしか
破傷風
ハンセン病
ヒスタミン食中毒
非定型抗酸菌症
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
フグ中毒
副鼻腔がん
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボツリヌス菌食中毒
マラリア
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性腸炎
水ぼうそう(水痘)
水虫(足白癬)
ムーコル症
メタノール中毒
野兎病
横川吸虫症
ライム病
ラッサ熱
旅行者下痢症
リンゴ病
レジオネラ症
ロタウイルス腸炎
ワイル病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
O157感染症
[職業病、公害病、形成外科の病気]
赤あざ(血管腫)
アスベスト症
アペール症候群
太田母班
外傷性視神経症
ガングリオン(結節腫)
クルーゾン症候群
血管腫(赤あざ)
色素性母斑(黒あざ、黒子)
書痙
塵肺症
ヒトアジュバンド病
メタノール中毒
やけど(熱傷)
[男性の病気]
遺精
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
過活動膀胱(OAB)
亀頭包皮症
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
血精液症
持続勃起症
精液瘤(精液嚢腫)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
セックス依存症(性依存症)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
尖圭コンジローム
早漏
癜風(黒なまず)
にきび(尋常性痤瘡)
ページェット病
包茎
勃起障害(ED)
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
類宦官症
レーベル病
[女性の病気]
移動盲腸
外陰炎
外陰がん
外反母趾
過活動膀胱(OAB)
ガングリオン(結節腫)
カンジダ膣炎
機能性子宮出血
強皮症(全身性硬化症)
クラミジア感染症
月経痛
原発性無月経
甲状腺がん
更年期障害
骨粗鬆症
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
しみ(肝斑)
絨毛がん
主婦湿疹(手湿疹)
静脈瘤
性器ヘルペス症
セックス依存症(性依存症)
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
続発性無月経
そばかす(雀卵斑)
膣がん
直腸脱
手湿疹(主婦湿疹)
乳がん
乳腺炎
乳腺症
ページェット病
マタニティーブルー
無月経
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リンパ浮腫
レイノー病
[子供の病気]
赤あざ(血管腫)
アスペルガー症候群
あせも(汗疹)
アペール症候群
アレルギー性結膜炎
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
遠視
横隔膜ヘルニア
おたふく風邪
仮性近視
川崎病
眼瞼下垂
眼瞼内反症
嵌頓ヘルニア
亀頭包皮炎
急性出血性結膜炎
急性白血病
蟯虫症
近視
クルーゾン症候群
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
結核
血管腫(赤あざ)
血友病
臍炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
色素性母斑(黒あざ、黒子)
自閉症
弱視
斜視
春季カタル
猩紅熱
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
神経芽細胞腫
心室中隔欠損症
新生児テタニー
新生児メレナ
心房中隔欠損症
水痘(水ぼうそう)
水頭症
精神遅滞(精神薄弱)
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大血管転位症
大動脈縮窄症
ダウン症候群
脱腸(鼠径ヘルニア)
チック症
知的障害
腸重積症
伝染性膿痂疹(とびひ)
動脈管開存症
とびひ(伝染性膿痂疹)
尿膜管遺残
脳膿瘍
肺動脈狭窄症
白皮症
はしか
白血病
発達障害
百日ぜき
ファロー四徴症
プール熱
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス性歯肉口内炎
ボックダレック孔ヘルニア
水ぼうそう(水痘)
網膜芽細胞腫
夜驚症
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
流行性角結膜炎
リンゴ病
ロタウイルス腸炎
[高齢者の病気]
アルツハイマー型認知症
加齢黄斑変性
偽痛風(軟骨石灰化症)
狭心症
骨髄腫
細菌性肺炎
逆さまつげ
食道がん
心筋梗塞
水晶体嚢性緑内障
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
帯状疱疹
大腸がん
脳血管性認知症
パーキンソン病
肺炎
ピック病
閉塞性動脈硬化症
変形性股関節症
変形性膝関節症
レビー小体型認知症
老眼(老視)
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爪甲剥離症

■爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

 爪甲剥離(そうこうはくり)症とは、爪(つめ)の甲が爪床からはがれる状態。爪の半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が抜け落ちることはありません。

 爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、爪甲剥離症では爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

 また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

 爪甲剥離症の原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性の爪甲剥離症もありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

 外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーターなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

 感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

 薬によるものとしては、内服するだけで爪甲剥離症を起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

 皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

 全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴う爪甲剥離症(プランマーズ・ネイル)が最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

■爪甲剥離症の検査と診断と治療 

 念のために、皮膚科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常の爪甲剥離症と異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

 よい治療方法はないのですが、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。甲状腺機能高進症に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

 日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事を避けたほうが安全のようです。


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たこ、魚の目

■刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなった状態

 たこ、魚の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。たこの別名は、べんち。魚の目の別名は、鶏眼(けいがん)。

 厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているものを、たこといいます。逆に、円錐(えんすい)状に下に向かって皮膚が厚くなっているものを、魚の目といいます。

 たこは痛くありませんが、手で触ると硬く感じます。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。魚の目は、中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、その先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

 たこと魚の目では症状が違いますが、できやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

 原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、たこや魚の目になります。大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

 たこや魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

 開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐじん帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のためにじん帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

 ハンマー足指やその他の足指の変形も、たこ、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

 巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にたこ、魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にたこ、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。

 女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、たこ、魚の目ができやすくなるからです。反対に、たこ、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

■たこ、魚の目の検査と診断と治療

 たこ、魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、たこ、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

 また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで削り取ります。たこの場合は痛くない程度に、魚の目の場合は芯の先を少し血が出る程度に削り取ることが必要です。これを何回か繰り返します。

 保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

 手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

 なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。


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日光過敏症(光線過敏症)

■普通量の日光に当たっただけで皮膚に異常が起こる反応

 日光過敏症とは、普通の人では何でもない程度の日光の紫外線が当たっただけで、皮膚に異常が引き起こされる免疫システムの反応。光線過敏症とも、日光アレルギーとも呼ばれています。

 外部から起こる外因性のものと、体の内部から起こる内因性ものがあります。

 外因性の日光過敏症は、日光に当たると敏感になるような化学物質が皮膚に接触して起こります。ある種の薬や化学物質を内服したり、ある種の薬や化粧品などを皮膚に塗った後、日光に当たった場合にのみ現れます。日光過敏を助長させる可能性がある内服剤には、経口糖尿病食、降圧利尿剤、精神安定剤、ある種の抗生物質などがあり、光エネルギーにより活性化される物質(光感作物質)が何らかの経路で皮膚に達し、光エネルギーを吸収して皮膚に異常を起こします。

 内因性の日光過敏症は、小児期では色素性乾皮症、ポルフィリン症などで起こります。大人では、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)や、肝臓の疾患からくるポルフィリン症などで起こります。

 色素性乾皮症というのは、遺伝性の疾患で、日光が当たった部分が日焼けを繰り返し、皮膚が乾燥してくる疾患です。ポルフィリン症は、ポルフィリンという物質の先天性の代謝異常で、皮膚、歯、骨などにこの物質が沈着し、日光に敏感になる疾患です。ペラグラは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患です。

 また、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、単純性疱疹(ほうしん)のように、日光によって誘発されたり、悪化するものもあります。

 症状としては、日焼けのひどい状態から、湿疹(しっしん)、皮膚炎のようなものまでさまざまですが、顔、うなじ、手の甲のように、露出部分に起こるのが特徴です。普通は、強い日光に当たってから数時間で症状が現れます。中には、数日たってから出てくることもあり、日光照射との関係に気が付かない場合もあります。

■日光過敏症の検査と診断と治療

 日光過敏症を診断するための特別な検査はありませんが、それを取り除く必要があるいろいろな原因があるので、各種の検査や診断によって見付けます。

 皮膚が露出した部分だけに発疹が出た場合は、日光過敏症を疑います。その他の疾患、服用した薬、皮膚に塗った薬や化粧品などを詳しく調べると、日光過敏症を起こした原因を特定するのに役立ちます。全身性エリテマトーデスなど一部の発症者で、この反応の感受性を高める疾患を除外するための検査を行うこともあります。

 全身性エリテマトーデスによる日光過敏の発症者などでは、ヒドロキシクロロキンやステロイドを内服すると効果があることがあります。日光過敏のタイプによっては、皮膚を紫外線に対し敏感にする薬剤であるソラレンを併用して、紫外線を当てる光線療法を行うことがあります。この治療法はPUVA療法といいます。しかし、全身性エリテマトーデスの発症者は、この治療に耐えられません。

 原因が何であれ、日光に過敏な人は、紫外線を防止できる衣類を着用し、日光を極力避け、日焼け止めを使います。日光過敏を引き起こす薬や化学物質などは、可能ならば中止します。


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ふけ症

■頭部の角質片のはがれ落ちが目立つ疾患

 ふけ症とは、頭部の表皮の角質層が大小の角質片であるふけとなって、はがれ落ちるのが目立つ疾患。頭部粃糠疹(ひこうしん)とも、乾性脂漏とも呼ばれます。

 頭皮だけでなく全身の皮膚の表面からは、絶えず角質が自然にはがれ落ちています。この角質の細胞は非常に小さいために、目で見ることができません。ふけというのは、角質に皮膚の脂やごみが混ざり、細かい米ぬか状の白色、ないし灰色の角質片となってはがれ落ちたものです。

 健康な人でも生理的な現象として軽度のふけはみられますが、頭皮の新陳代謝が速まって角質がどんどんはがれ落ち、くしでとかすと肩に大小のふけが目立つ場合は病的と考えられます。一般的に、乾いたサラサラのふけを乾性ふけ、粘っこく重いふけを脂性ふけと呼びます。

 ふけ症の原因として、男性ホルモンであるアンドロゲンの影響が指摘されています。しかし、ふけの程度と皮脂の量は必ずしも比例しません。頭部の毛嚢(もうのう)に住み着いている微生物、特にかび(真菌)の一種である癜風(でんぷう)菌の量が増えており、これを抑える薬用シャンプーでふけが減ることから癜風菌が原因との説がありますが、関係はないとの説もあります。

 20歳代がピークで、その後、特に誘因もなく、ふけの量が増えたり減ったりします。40〜50歳代になると、自然に軽快する傾向にあります。普通、かゆみはなく、あっても軽度です。

 ふけ症として治療が必要になってくるのは、ほかの疾患の症状、脂漏性皮膚炎や乾癬(かんせん)などがある場合です。これらの真菌によって起こる疾患では、頭の皮膚が赤くなったり、かゆみを伴ったりしています。また、ふけがかさぶたのように大きく、固着する傾向のある時も、ほかの疾患の症状と考えられます。

 そのほか、若い男性の若はげの前兆として、ふけと抜け毛が多くなることもあり、粃糠性脱毛症と呼ばれます。

■ふけ症の検査と診断と治療

 自分でできるふけ症の対処法として、抗真菌薬であるケトコナゾールを含有するシャンプー(コラージュフルフル)を始め、真菌を抑制するジンクピリジンチオンを含有するメリットシャンプー、カロヤンなどのヘアートニックを用います。これらは、薬局で市販されています。洗髪回数としては、毎日1回または1日おきが適当であり、洗いすぎは逆効果のことがあります。

 日常生活での対処で効果が見られない場合、ほかの疾患の症状としてふけ症がある場合は、皮膚科を受診します。

 ふけ症の特別な検査はありませんが、脂漏性皮膚炎、皮膚の角質が異常増殖する乾癬、水虫の原因である白癬菌が頭皮に感染する頭部白癬、頭虱(あたまじらみ)との区別が必要です。抜けた毛やふけの顕微鏡検査により、白癬菌や頭虱の虫卵の有無が診断されます。

 専門医による治療としては、せっけんでよく洗い、皮膚の状態に合わせて副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)のローションを1日に2〜3回、擦り込むと効果があります。


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ボーエン病

■かなり高い確率でがんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つ

 ボーエン病とは、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病。1912年のジョン・T・ボーエン医師の論文から、命名された疾患です。

 このボーエン病は、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つであり、狭義には表皮内がんと同じです。表皮内がんというのは、がん細胞が皮膚の浅いところにだけあり、この状態では転移の心配はありません。

 しかし、放置していて進行すると、皮膚の深いところである真皮内に、がんが浸潤し体をむしばむ可能性があります。それも広い意味でボーエン病ですが、区別してボーエンがんと呼ぶこともあります。さらに進行すると、リンパ節転移や内臓転移を起こし、ついには死に至ります。

 ボーエン病は大人、特に60歳以上の高齢者に発症します。原因は、日光照射、ヒ素中毒、エイズを含む免疫抑制状態、ウイルス感染、皮膚傷害、慢性皮膚炎などです。

 典型的な症状は、境界が鮮明で、不整形の褐色の色素斑が現れ、上にかさぶたがつき、皮がめくれたりします。有色民族の場合は褐色ですが、白人の場合は紅斑が現れます。かゆみはないものの、湿疹(しっしん)や乾癬(かんせん)のような皮膚病と間違いやすいものです。

 日光の紫外線の影響による場合は、皮膚の露出部に色素斑が現れます。ヒ素やその他の影響による場合は、皮膚の露出部にも現れるとともに、服に覆われている体幹部や下肢、陰部が好発部位となります。

 放置すると、症状が不変の場合もありますが、通常は徐々に拡大します。単発の場合もありますが、多発例も10~20パーセント程度あり、ヒ素による場合は、手のひらと足の裏の角化、体の色素沈着と点状白斑、つめの線状色素沈着などの皮膚症状がみられ、皮膚以外にも肝がん、肺がん、膀胱(ぼうこう)がんなどの内臓悪性腫瘍(しゅよう)を合併します。原因が飲料水のヒ素汚染の場合は、地域的に多数発生します。

■ボーエン病の検査と診断と治療

 かゆみのない褐色の色素斑ができているのに気付いたら、一度、皮膚科専門医を受診します。

 専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹や乾癬など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をすることが必要です。

 ボーエン病と診断されれば、合併率が高い内臓悪性腫瘍の検査も同時にする必要があります。多発性ボーエン病では、ヒ素中毒などを除外するための検査も必要です。

 ボーエン病の治療としては、初期なら手術で病変を切り取れば、完治することがほとんどです。病変が小さければ切り取った後、傷を直接縫い合わせて閉じることもあります。病変が5センチとか10センチ以上では、切り取った後の皮膚欠損が大きく、複雑な形となり、直接縫合することができないこともあります。そういう場合は、植皮術や皮弁形成術で修復が可能です。

 表皮内がんより進行したボーエンがんである場合は、病変の切除と植皮や皮弁で修復することに加え、リンパ節廓清(かくせい)術を組み合わせることがあります。また、状況により放射線療法、抗がん剤の投与、レーザー焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固療法などが行われることがあります。

 病変を切り取った後の傷跡に、拘縮(こうしゅく)や外観の問題が生じることがあります。その場合、形成外科的な手法による改善が検討されます。病変の取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。


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腋臭

●腋の下の汗腺が臭いに関与

 腋臭(わきが)とは、腋の下の汗が原因で体臭が気になる病気です。腋の下のアポクリン腺という汗腺から出た汗に含まれる脂肪酸が、皮膚についている細菌によって分解され、腋臭の臭(にお)いが発生します。また、アポクリン腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン腺も、その臭いの発散に関わっています。

 汗の臭いが気になるという人と、臭いより汗の量が多く、服に染みができて困るという人がいます。狭義では、前者を腋臭、ないし腋臭(えきしゅう)症と呼びます。後者は、多汗症といって区別します。

 世界的に腋臭体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。

 このように日本人では腋臭形質を持つ者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭の症状が気になり、仕事や勉強に集中できない、臭いを嗅(か)がれるのが怖くて他人と交流できないなど、悩みを持つ人の中には、専門の医師による手術を希望するケースも多々あるようです。

 しかし、腋臭は生命を左右するような病気ではないため、たとえ腋の下の汗が多くて臭いが強いからといって、必ず手術しなければいけないものでもありません。本人が気にしなければ、臭いが強くても治療の対象にはならないということです。

●専門家による腋臭の治療法

 専門家による腋臭の治療としては、ボトックス注入、スマートリポ、医療レーザー脱毛などがあります。

 ボトックスは顔のしわの治療で知られますが、腋の下に注入することで、汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えます。注入後3~7日間で効果が現れ、約3、4カ月~半年の間は、汗の量を抑えることが可能です。

 スマートリポでは、腋臭の原因となる腋の下のアポクリン腺とエクリン腺に、スマートリポレーザーを照射し、汗腺を燃焼させます。メスを使用せず、直径1mmの針状のレーザーを毛根部に差し込んで、汗腺を直接照射するので、傷跡が残る心配もありません。治療時間が約30分と短く、治療後すぐに帰宅が可能です。

 医療レーザー脱毛では、高い出力レベルに設定したレーザーで、毛穴に沿って存在しているアポクリン腺を毛穴ごと破壊してしまうことで、臭いを軽減します。ただし、この治療法で腋臭を治療する場合、3 回程度の照射を必要とするなど、症状の適応に限界があります。1回の治療は5分ほどで、日常生活に制限はありません。腋の脱毛も、同時に可能です。


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アペール症候群

■頭の形と顔貌が特徴的で、手足の指の癒合がある先天性疾患

 アペール症候群とは、複数の特定の奇形を持っている先天性の異常疾患。エイパート症候群とも、尖頭(せんとう)合指症候群とも呼ばれます。

 アペール症候群の主な症状は、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症、合指症、合趾(ごうし)症で、頭の形と顔貌(がんぼう)が特徴的で、手足の指に癒合などの奇形があります。症状が似ているため、クルーゾン病と同一視する場合もあります。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 合指症は、隣り合った手の指がくっついている疾患。アペール症候群における合指症の場合、人差し指から小指までの4本の合指、または親指から小指まで5本全部の合指の2つのパターンに大きく分かれるようです。手の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。

 合趾症は、隣り合った足の指がくっついている疾患。5本全部の指がくっついていることが多いようです。合指症と同じく、足の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。そのままでも歩行に問題はありません。

 水頭症のほか、聴力の障害、精神発達障害を伴うこともありますが、ほとんどは知能の発達に異常はありません。発生頻度は1万6000人に1人とされ、典型的な症状を持つ発症者は常染色体性優性遺伝をすることがわかっています。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ないものの、アペール症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■アペール症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしい、手足の指が癒着していると心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 アペール症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。 水頭症予防の手術が必要になる場合もあります。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。アペール症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 手足の指の癒着は、皮膚だけでなく骨まで癒着している場合、機能を損ねないように慎重に分離手術が行われます。歯列矯正を行う時には、アペール症候群の場合は健康保険が適用されます。


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肩凝り

●肩凝りは筋肉からのSOS信号

 現代病とも称される「肩凝り」。その直接の原因は、筋肉への酸素の供給不足と老廃物の蓄積です。しかしながら、筋肉の酸素不足などを招く原因となると、実に多種多様です。肩凝りを治す方法も、原因によって違ってきます。

 肩凝りの原因の8~9割は、使いすぎや年齢、体形などによるものです。若い時から肩の凝りやすい人は、ミドルになるに従って、ますますひどくなり、「背中に鉛の板を背負っているようだ」と表現する人もいます。

 ミドルの肩凝りの原因は、運動不足とストレスがほとんどだといわれています。肩凝りになりやすい人は、運動不足の上に、ストレスが加わり、筋肉に血流が行かなくなって、一種の循環障害を起こしてしまいます。

 また、高血圧や動脈硬化など他の病気が原因で、肩が凝る場合もなきにしもあらずですので、肩凝り以外の症状がある場合には、それぞれの専門医に相談してみましょう。

 一例を挙げれば、めまい、立ちくらみ、頭痛、背中の痛み、耳鳴り、胸が締め付けられるような痛み、などを感じる場合には、肩凝り以外の病気が隠れていることがあります。とりわけ慢性的な症状の場合は、運動不足とストレス以外の病気を疑ったほうがいいでしょう。「いつもと違う痛み」が「いつもより続く」場合には、注意しなければいけません。

 以下、肩凝りを起こす主な原因を紹介します。心当たりのある方は、肩凝りだけでなく、おおもとの原因を治すことが大切になります。

●肩凝りを生じる原因は複雑

 原因

     解   説

     具 体 例

肩凝りになりやすい体形

 肩凝りを起こしやすいのは、右の具体例のようなタイプ。

 例えば、肥満体の人は、頭や腕など肩の筋肉が支えるべきお荷物が重くなる。やせすぎの人は、肩の筋力が衰えているので、凝りを招きやすい。

 このような体形的に肩の筋肉に負担がかかりやすい人のほか、なで肩、猫背などのように、ふだんの姿勢が負担をかけていることもある。

・肥満体

・極端なやせ形(肩の筋肉が貧弱)

・なで肩(首や肩の筋肉が貧弱なことが多い)

・いつも背中が丸まっているような姿勢をとる

・首を下げ、下を向いたような姿勢をとることが多い

肩に無理な姿勢をとることが多い

 筋肉は、緊張させたり、緩めたりすることで、血液の循環を助けている。ところが、長時間にわたって、右の具体例のような姿勢をとっていると、筋肉の緊張状態ばかりが続いて、筋肉の血行が悪くなる。

 デスクワークが多い人などは、その典型。

・腹ばいになって本を読む

・寝転がってテレビを見る

・新聞を床に置いて座ったままで読む

・足を組み、前かがみでデスクワークをする

・枕が高すぎたり、軟らかすぎたりする

冷え症である

 寒い所にいると、私たちは自然に、前かがみの姿勢で肩をすくめ、体を硬くしてしまう。

 また、このような姿勢をとらないまでも、体が冷えると血管が収縮して血行が悪くなってしまう。

・冷え症である

・夏場、クーラーの効きすぎる場所で仕事をしている

・冬場でも、営業の外回りなどで長時間、外にいる機会が多い

精神的なストレスに弱い

 精神的に緊張したり、悩んだり、怒りなどを感じる時、筋肉内の血管も知らず知らずのうちに収縮している。

 このため、特に筋肉を使わなくても血行が悪くなり、筋肉に老廃物がたまってしまう。

・仕事や日常生活で、不安や悩み、怒りを感じることが多い

・責任感が強く、真面目(まじめ)で几帳面(きちょうめん)

・ちょっとしたことでも真剣に悩んだりしてしまう

・データを取り扱う仕事など、間違えないよう神経を使うことが多い

・ノルマや納期などに追われ、気が重くなることが多い

目が疲れている

 眼鏡やコンタクトレンズが合わないために、しっかり見ようとして無理な姿勢をとることで肩凝りにつながるケース、また、目の疲れや頭痛と連動して肩凝りが起こるケースも多い。

・眼鏡やコンタクトレンズがピッタリ適合せず、見えにくい

・パソコンに向かって長時間、仕事をすることが多い

肩や首の骨や関節、筋肉の異常

 年齢を加えるとともに、首、肩などの骨や関節、筋肉に何らかの異常が起きて神経を圧迫し、痛みやしびれを起こすことがある。

 具体例のような症状のある人は、整形外科などに相談してみることがお勧め。

・肩凝りだけでなく、痛みやしびれを感じることが多い

・腕を上げると肩が痛む

内臓系の病気を患っている

 内臓系の病気の自覚症状の一つとして、肩凝りが起こることも多い。例えば、狭心症、心筋梗塞、肺がん、糖尿病、高血圧、低血圧、胆石(胆のう炎)、更年期障害、貧血、胃炎、胃潰瘍など。

 肩凝りのほかに、右の具体例のような症状がいくつかあるようなら、内科医に相談してみよう。

 また、がんでできた腫瘍のせいで、肩凝りと同じような感覚があることもあるし、顎関節症、噛み合わせの悪さ、歯周病など歯の病気が原因になることもある。

・頭痛、頭が重い、めまい、耳鳴り、動悸、手足の冷え、体全体がだるい、急に胸が締め付けられるような痛みに襲われる、背中や右肩などの痛み、立ちくらみ

・歯や顎の異常

 

●温めるべきか、冷やすべきか

 冷やすと「すーっ」として気持ちがいいため、冷やすものと思われがちだが、基本的には温めること。外傷性の打ち身や捻挫などで、熱を持っている場合には、早期なら冷やすこともあるが、「じん」とくるような肩凝りの場合には、とにかく温めて血液の循環をよくしたほうがいいでしょう。


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胸郭出口症候群

■神経や血管が圧迫され首、肩、腕に症状

 胸郭(きょうかく)出口症候群とは、神経や血管が胸郭の出口から出る近辺で圧迫され、首や肩、腕などにさまざまな症状が出る疾患。

 神経や血管が圧迫されるケースとしては、斜角筋症候群、肋鎖(ろくさ)症候群、過外転症候群などがあります。斜角筋症候群は、首の付け根の前斜角筋、中斜角筋という斜めに走っている筋肉の付着部で、2本の筋腱(きんけん)の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。第7頸椎(けいつい)に、小さな肋骨が余計についていると、なお起こりやすくなります。

 肋鎖(ろくさ)症候群は、鎖骨と第1肋骨の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。過外転症候群は、胸のほうからついている小胸筋の付け根と、烏口(うこう)突起という肩甲骨(けんこうこつ)の突起部の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。

 いずれのケースも首、肩、腕、手指のしびれ、痛み、凝り、だるさを引き起こし、時には血行障害を来します。血行障害によって、腕を上げていると手が冷たくなってきたり、腕や手指の色が青白くなってくる場合もあります。

 このような胸郭出口症候群は、先天的な素因があるところへ、不適当な姿勢や動作が加わると、発症することが多くなります。長時間デスクワークを続けた時など、肩凝りがひどくなることはよく経験することで、首や肩の筋肉の緊張が長く続いたためです。

 特に、やせた、なで肩の女性は、もともと胸郭の出口の透き間が狭い上、首や肩を支える筋肉が弱いことから、胸郭出口症候群によるさまざまな症状が出やすい傾向にあります。

■胸郭出口症候群の検査と診断と治療

 胸郭出口症候群の症状を改善するためには、神経と血管の通り道を広げる必要があります。それには、胸郭、肩甲骨などの位置関係や動きを改善する運動を行います。整形外科やリハビリテーション科で指導を受けるとよいでしょう。

 治療の中心となる運動療法では、肩甲骨を上げて筋肉群を強化するトレーニングをして、正しい姿勢を絶えずとるように習慣付けます。例えば、10キロから15キロぐらいのリュックサックを背負い、肩の上げ下げをします。

 また、ひじを曲げたまま腕を大きく回す運動をします。ひじを体の前に突き出し、腕を大きく回してひじを外へ開きます。そのまま、ひじを下のほうへ回して、再び元の位置に戻します。これを5回、反対回しを5回、毎日仕事の合い間などに行います。この時、肩甲骨をゆっくり大きく動かすようにすると、肩周辺の筋肉に刺激が伝わってストレッチ効果も大きくなり、胸郭や肩甲骨などの動きの改善につながります。

 このほか、首をゆっくり前、右、後ろ、前、左、後ろと半円に回す運動を、頭の重みで首の筋肉を伸ばすような感覚で行います。この運動は仕事中でもできますし、入浴時に肩周辺を温めながら行うとより効果的で、血行が改善されて、筋肉の凝りがほぐれます。

 逆に、無理な姿勢や悪い動作を避けることが必要です。例えば、天井のペンキ塗りのような作業や、不適当な姿勢による長時間のデスクワークです。デスクワークを続ける場合は座る姿勢に注意が必要で、あごだけが前に突き出て重心が前に偏らないように、いすに座る時には猫背にならないように、あごを引いた姿勢を心掛けます。

 運動療法と日常生活の配慮で効果の現れない時は、手術が必要になることもあります。腕や手指のしびれや痛み、手指の色の変化などは、脊椎(せきつい)の疾患や肺の腫瘍(しゅよう)などで現れることもあります。


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くる病(骨軟化症)

■カルシウム不足から骨が軟らかくなって、変形

 くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。

 カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

 子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

 くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

 骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

■くる病の検査と診断と治療

 確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

 治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

 骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。


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頸肩腕症候群

■首、肩、腕の痛みや凝りを起こす疾患の総称

 頸肩腕(けいけんわん)症候群とは、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれなどを来すいくつかの疾患の総称。最近では、この頸肩腕症候群からさらに詳しくするために、胸郭出口症候群や腕の神経絞扼(こうやく)症候群などの疾患名が独立して、名付けられるようにもなってきました。

 頸肩腕症候群の原因については、さまざまなことが考えられます。筋肉の過労や姿勢の異常でも起こりますが、頸椎(けいつい)のクッション役を果たしている椎間板が薄くなる椎間板変性症、椎体に骨のとげができる変形性頸椎症、椎体の後ろを縦に走っている靭帯(じんたい)に骨化が起こる後縦(こうじゅう)靭帯骨化症といった中年すぎの疾患などでも起きます。むち打ち症の後遺症や、内臓疾患、精神的なストレスでも起きます。

 このように原因はさまざまですが、いずれも骨、筋肉、血管、神経の何らかの異常が原因です。普通、首筋や肩が凝って、腕がしびれるような場合は、この頸肩腕症候群によることが多いといえます。

 筋肉の過労で起きるケースは、一定の筋肉ばかりに負担がかかるパソコン作業者などでみられます。腕を上げる筋肉は頸椎についているものが多いので、腕を宙に浮かしてする仕事に従事する人は、これらの筋肉の凝りや痛みを起こしがちです。姿勢の異常、例えば前かがみの悪い姿勢では、頭の重心が前に出るので、この頭を支えるために首や肩の筋肉が疲れ、これが痛みに変わることもあります。

 また、頚肩腕症候群の症状もさまざまあり、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれ、脱力感、冷感のほか、背部の痛み、肩甲骨の凝りやこわばり、めまいや頭痛を伴う場合もあります。

■頸肩腕症候群の検査と診断と治療

 頸肩腕症候群の治療法としては、まず安静にすることが求められます。特に、筋肉の過労からくる場合は、2、3日安静にすることで治ることもあります。次に、適度な運動やストレッチをして筋肉を使うことで、筋肉を疲労しにくくさせます。このことで、次に頸肩腕症候群になる可能性が低くなるといわれています。

 症状が軽く、安静と運動でよくなるようであれば、特に病院に行く必要はないかと思われます。痛みや凝りを取り除くための身近な治療薬としては、湿布などもあります。

 そのほか、パソコンの長時間の使用や、同じ姿勢を続けるなどの日常生活を見直し、作業の途中に適当な休息時間を挟む、体操をして筋肉の凝りをほぐすことをふだんから心掛けます。また、過労や睡眠不足とあいまって、精神的なストレスが首、肩、腕の凝りを招くこともありますので、できるだけ睡眠をよくとり、過労にならないように心掛け、努めて精神を平静に保つようにします。

 しかし、頸肩腕症候群の症状が頑固な場合には、病院で受診して原因をはっきりさせることが大切です。ひどい症状を何度も体験していたり、肩凝りの症状のほかにめまいやしびれがひどい場合は整形外科や神経内科、頭痛がひどい場合には脳神経外科などを受診するとよいでしょう。病院では、原因となる疾患を明らかにした上で、その治療を最優先します。鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤を使用することもあります。


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椎間板変性症、変形性脊椎症

■長年の使用による椎間板の変性と変形

 椎間板(ついかんばん)変性症とは、椎骨をつないでいる椎間板に老化など何らかの変性が生じ、組織の構造や成分が変化したために起こってくる疾患。軟骨である椎間板が変性すると、次第に厚さが薄くなり、椎間が狭くなります。

 壮年期から老年期によくみられ、無症状のこともありますが、体を動かすと腰痛が起こることがあります。

 椎間板変性症が進むと、椎間板のクッション性が少なくなり、椎間板に接する椎体と椎体がぶつかりやすくなります。同時に、靭帯(じんたい)の変化も加わった結果、骨のふちに骨棘(こっきょく)という、とげができてきます。これはちょうど、長く使った金づちのように、椎体の周辺に骨の突起物ができた状態で、骨の輪郭がでこぼこした感じになります。そして、とげが神経を刺激したり、圧迫したりすることで、痛みが引き起こされます。これが変形性脊椎(せきつい)症です。

 変形性脊椎症は、高齢者や重労働者に多くみられる疾患で、長年の過度の使用による組織の変化を基盤にして起こります。高齢者では程度は違いますが、ほとんどの人に症状がみられるので、加齢に伴う生理的な変形ともいえます。若い頃に重労働や激しいスポーツを行ってきた人では、40歳以降に発症する場合が多く、頸椎(けいつい)や腰椎に起きやすくなります。

 脊椎の変形が長期間に渡って、徐々に進行する場合は、痛みなどの自覚症状を伴わないことが少なくありません。比較的急速に進行する場合には、症状も強く、体を動かすと痛んだり、押すと痛みが起こることがあります。

 変形が発生する場所によって、痛みを感じる場所が違います。頸椎に発生した場合は、自覚症状がない時もありますが、多くは脊髄圧迫による手足のしびれ、肩凝りを感じたり、首の後ろに痛みを感じます。頸髄が圧迫されると、手足のしびれを感じたり、細かい字を書いたりボタンをかけるなどの軽作業が困難になったり、けいれんして歩きにくくなったりします。腰椎に発生した場合は、腰痛はもちろんのこと、下肢のしびれがあります。腰を曲げたり、反らしたりすると痛み、足に力が入らなくなることもあります。

 変形性脊椎症に加えて、脊髄や馬尾(ばび)神経が収まっている脊柱管が狭くなる脊柱管狭窄(きょうさく)症や、椎間板ヘルニアなどを引き起こすと、症状はさらに悪化します。

■椎間板変性症、変形性脊椎症の検査と診断と治療

 椎間板変性症、変形性脊椎症は主に老化によるもので、でき上がった変形を元に戻すことは困難なため、治療は対症療法になります。安静にした上で、薬物療法、温熱療法、牽引(けんいん)療法、体操療法などの治療法を行い、それらで症状が改善されない場合や、神経がまひしたりした場合は手術療法が行われることもあります。

 しびれや痛みがある場合は、まず局所の安静を保つことが大切で、しばらく床に就いているとか、コルセットを着用します。症状が薄れてきたら、温熱療法や頸椎牽引(けんいん)、骨盤牽引も有効です。強い痛みに対しては、消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの薬剤を使用したり、ビタミン剤を補助的に使用します。注射しやすい場所ならば、ステロイド剤と局所麻酔剤とを注射するのも効果的です。

 症状が軽症であれば、できるだけ体を動かして、体を軟らかくするようにします。多少痛いからといって安静にしすぎると、背骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)が少しずつ弱くなるために腰痛が出るなど、かえって症状が悪化したりする場合がありますので注意が必要です。コルセットなどを着用して負担を少なくする方法もありますが、日常あまり使いすぎると筋肉が弱ってしまいますので、最小限に抑える必要があります。

 軽い体操、ウオーキング、水中ウオーキングなどの運動をしたり、風呂に入って体を温めた後ストレッチをすることで、周りの筋肉の緊張や、こわばりがとれます。重い物を持つなど、無理な姿勢や動作は避けます。


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アジソン病

■副腎が損傷を受けて、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下

 アジソン病とは、副腎(ふくじん)機能の低下によって、すべての副腎皮質ホルモンが不足する疾患。慢性副腎皮質機能低下症、慢性原発性副腎皮質機能低下症とも呼ばれます。

 副腎皮質ホルモンは、生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。この副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあり、アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。

 副腎自体の疾患による場合と、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する下垂体の疾患による場合とで、副腎皮質ホルモンの不足は起こりますが、このうち副腎自体の疾患が原因で慢性に経過したものがアジソン病です。下垂体の疾患で副腎を刺激しないために副腎の機能が低下するものは、続発性副腎機能不全症というアジソン病に似た疾患です。

 副腎は両側の腎臓の上、左右に2つあり、両側の副腎が90パーセント以上損なわれるとアジソン病になります。副腎が損なわれる原因として最も多いのは、副腎結核と自己免疫によるものです。まれに、がんの副腎への転移によるもの、先天性のものなどがあります。

 アジソン病は1855年に、英国の内科医トーマス・アジソンによって初めて報告されました。あらゆる年齢層の人に、また男女いずれにも同じように発症します。乳児や小児の場合は、副腎の遺伝子の異常が原因です。

 現れる症状はさまざまですが、主なものとして、色黒、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、食欲不振、便秘、下痢、低血圧、低血糖などが挙げられます。また、不安、集中力の低下などの精神症状や、腋毛(えきもう)、恥毛の脱落などもしばしば認められる症状です。体内のナトリウムイオンとカリウムイオンのバランスが崩れるので重症の場合、心停止を起こして死ぬこともあります。

 自己免疫が関係する特発性アジソン病の場合、甲状腺(せん)疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。

■アジソン病の検査と診断と治療

 アジソン病の初期では副腎皮質の障害が軽度なので、ホルモンの分泌も生活に支障を来さない程度に保たれています。自覚症状もはっきりしたものではなく、気が付かないことがほとんどです。しかし、この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して危険な状態になることがあります。アジソン病の症状があった場合、内分泌・代謝を専門とする病院で一度精密検査をしておくことが望まれます。

 アジソン病の診断においては、一般的な血液検査、尿検査に加え、ホルモンの検査、腹部CTなどが必要になります。ホルモンの検査は、血液中の副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、尿中に排出される副腎皮質ホルモンなどを測定するほか、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)放出ホルモン(CRH)を投与した後の副腎や下垂体の反応により、副腎の機能を評価します。

 そのほか、副腎を損なう原因を調べるため、結核など感染症に対する検査、がんの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。

 治療においては、疾患の程度、日常生活に合わせて、副腎皮質ステロイド薬を補充します。通常、1日1〜2回の内服ですみますが、けがや発熱などで体に強いストレスがかかる場合は、それに応じて内服量を増やす必要があります。筋力の低下や全身消耗の強い場合は、副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)を補充することもあります。


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急性腎炎

■血液を、ろ過する糸球体に起こる炎症

 腎炎(じんえん)とは、尿を作るために血液を、ろ過する糸球体(しきゅうたい)に、出血性の炎症が起きる疾患です。正確には、糸球体腎炎といいます。

 免疫の異常が関係して起こると考えられており、左右の腎臓とも平等に侵されます。病気が進行すると、毛細血管の塊である糸球体だけではなく、尿細管まで障害が広がります。腎臓病のうちで最も多い病気で、一般に1年以内のものを急性(糸球体)腎炎といい、それ以上長く続くものを慢性(糸球体)腎炎といいます。

■急性腎炎の症状と早期発見法

 急性(糸球体)腎炎は4~10歳の子供に多い疾患で、加齢により発生は減少します。子供では完全に治ることが多いのに対して、成人発病者の一部では慢性腎炎に移行するものもみられますので、慢性化しないよう十分療養するべきです。

 細菌、特に溶連菌による扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎などの上気道感染後、あるいは風邪などのウイルスの感染後、1~3週間たったころ発症する場合がほとんどです。

 腎臓の糸球体に炎症が起こるのは、これらの細菌やウイルスが関係する抗原抗体反応によって生じた免疫複合体(抗原抗体複合物)と呼ばれる物質が、血流に運ばれて糸球体に付着するためと考えられています。

 通常では、この免疫複合体は糸球体にあるメサンギウム細胞が処理し、発病には至りません。あまりに量が多い場合、糸球体に沈着して炎症を引き起こします。炎症が起こると、糸球体の細胞が異常に増殖したり、血液中の白血球の成分が糸球体の中に入り込んで、糸球体の働きを阻害するとされています。

 急性腎炎の症状として、血尿と蛋白(たんぱく)尿が必ずみられます。ただ、血尿は赤ブドウ酒かコーラ様になっている場合もありますが、ほとんどは肉眼ではわからない血尿であり、顕微鏡で検査をして初めて確認されるほうが多いものです。

 ほかに、顔や手のむくみ、血圧上昇、食欲低下、だるさ、尿量減少などがみられます。血圧上昇は病院で測定してもらって、初めて指摘されるのが普通ですが、子供の場合には、高血圧によってけいれん発作が起こる場合もあります。

■治療と療養上の注意

 急性(糸球体)腎炎の治療では、安静と食事療法が主体となります。特に初期の安静は重要なので、入院治療が原則です。食事は蛋白質、塩分、水分の制限が、病気の程度や時期に応じて行われます。

 蛋白質と塩分を制限するのは、腎臓の働きが低下すると、蛋白質から生じる窒素化合物や食塩の成分であるナトリウムの排出がスムーズにいかなくなるためです。蛋白質を減らす分、糖質や脂質でカロリーを十分にとります。むくみのある時や、1日の尿量400ml以下と尿が少ない場合、あるいは無尿の場合は、1日に摂取する水分を制限します。病状の改善とともに運動量は増し、食事の内容も変わってきます。

 腎炎そのものを、根本的に治す特効薬というものはありません。ただし、急性腎炎のきっかけとなった溶連菌などの感染症の治療には、抗生物質が使われます。ほかに、炎症を鎮めるために抗炎症剤、血尿がひどい時には止血剤、乏尿やむくみがひどい時には利尿剤、高血圧に対しては降圧剤が使われます。

 入院して適切な治療を受ければ、むくみや高血圧は、通常1週間以内によくなりますが、病気の程度が重ければ長引くことになります。血尿、蛋白尿なども、2~3カ月で消えていくことが多く、この時点で通学あるいは軽作業が許されるようになります。

 退院後は、病気の回復と合わせて医師と相談の上、無理のない生活を送るようにコントロールしていくことになります。一般的いって、子供の場合には、体育の授業や水泳、遠足などのへの参加は控えましょう。大人の場合は、周囲の理解を求めて夜勤や残業などを避け、最低3年程度、激しいスポーツや肉体労働を見合わせる必要があります。女性の場合には、2年ほど妊娠を避けたほうがよいでしょう。


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神経性頻尿

■女性に多くみられる、尿が近い症状

 神経性頻尿とは、膀胱(ぼうこう)や神経に病気も、異常も認められないのに、尿が近いものをいいます。このような人の多くは、夜間に排尿には起きないものです。膀胱神経症、過敏性膀胱とも呼びます。

 一般に、女性に多くみられます。神経質で几帳面(きちょうめん)、強迫的傾向にある人に多いようです。なお、膀胱は精神的な影響を受けやすい器官ですので、軽い膀胱炎にかかった後も、少しの精神的刺激によって、尿意をたびたび感じるようになることがあります。

 神経性頻尿の原因には、心因的な要素が絡んでいるので、薬剤の投与などではなかなか治りません。緊張を緩和し、とらわれから自らを解放することがポイントで、強迫的な神経症的性格を改めることも大切になります。


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尿失禁

■無意識に尿が漏れて、日常生活に支障

 尿失禁とは、他覚的に認められる尿の不随意な排尿であり、社会的衛生的に何らかのトラブルを引き起こすもの。つまり、無意識に尿が漏れてしまい、社会生活、日常生活に支障を来す状態をいいます。

 尿失禁のうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける失禁を真性尿失禁、または全尿失禁と呼びます。真性尿失禁、全尿失禁の代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。

 一時的な漏れを示す尿失禁のほうは、腹圧性、急迫性(切迫性)、溢流(いつりゅう)性、反射性の4タイプに大別されます。

 腹圧性尿失禁は、中年以降の出産回数の多い女性に、しばしば認められます。せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わる時に尿が漏れるもので、漏れの程度はさまざまです。

 起こる原因は、膀胱(ぼうこう)を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が緩んで、弱くなったためです。肥満の女性に多くみられ、骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。

 急迫性(切迫性)尿失禁は、尿意を感じても我慢することができずに、尿を漏らしてしまうもの。脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系に障害があるものと、膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものとがあります。

 溢流性尿失禁は、前立腺(せん)肥大症や神経因性膀胱などを発症している高齢男性に、しばしばみられます。著しい排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために起こるものです。

 反射性尿失禁は、中枢神経系の障害や、事故による脊髄損傷でしばしば認められます。尿意を感じることができずに排尿の抑制ができないため、尿が一定量たまると、意思とは関係なく排尿が起こるものです。

■尿失禁の検査と診断と治療

 尿失禁の原因が明らかで治療可能なものは、当然、その治療を行います。

 腹圧性尿失禁の程度の軽いものでは、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周りの筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、 仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、 ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、 仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。

 失禁の程度の強いものでは、状態に応じた治療法が選択されます。内視鏡によるペーストなどの注入療法、各種の失禁防止手術が工夫されています。カテーテルによる導尿などの処置が選択される場合もあります。


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膀胱炎

●女性に多い膀胱の炎症

 膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱内の粘膜に炎症が起こる疾患です。女性に多いのが特徴で、特に妊娠可能な年齢で多発しますが、男性にも起こります。細菌の感染による急性膀胱炎がすぐに治るのに対して、慢性膀胱炎は完治が難しいといえます。

 急性膀胱炎の場合、症状は急激ながら経過は短く、泌尿器科の疾患では最も普通にみられます。原因の大部分は細菌感染で、大腸菌が最も多く、ブドウ球菌、連鎖(状)球菌などによることもあります。

 感染経路としては、尿道からの細菌の侵入が最も多く、腎(じん)臓からの感染、周囲の臓器からの感染もあります。この疾患が女性に多発する理由として、尿道が男性に比べて短いために細菌が尿道に入りやすいこと、細菌のいる腟(ちつ)や肛門と尿道との距離が近いことなどが挙げられます。

 膀胱は細菌に対して抵抗力があるので、単に細菌が侵入してきただけでは炎症は起こりにくいのですが、体力の低下、尿の停滞、排尿の我慢のしすぎ、便秘、不潔な性交、妊娠、冷えなどが誘因になって発症します。

 男性では、膀胱炎は女性ほど一般的ではありません。男性はまず尿道が感染し、その感染が前立腺(ぜんりつせん)から、膀胱に広がって発症します。

 症状としてみられるのは、頻尿、残尿感、尿の出が悪い、排尿時の痛み、尿の濁りが特徴。発熱はほとんどみられません。

 医師による治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

 男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

●慢性膀胱炎と間質性膀胱炎

 慢性膀胱炎の場合、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍(しゅよう)、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

 治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

 また、間質(かんしつ)性膀胱炎という特殊な膀胱炎が近年、増加しています。感染症がみられなくても膀胱が炎症を起こす疾患で、痛みを伴う頻尿などの症状があります。顕微鏡で検査すると、尿中に膿(うみ)や血液が認められ、尿に血が混じっているのが肉眼で見えることもあります。

 中年女性に多くみられ、男性がかかることはめったにありません。欧米では以前から割合多くみられていて、いくつかの病因による症候群と見なされていますが、いまだ治療法は確立されていません。

 長期に渡る慢性的な炎症によって膀胱は委縮し、重症の場合は外科手術による膀胱の除去が必要になることも、まれにあります。小腸の一部である回腸を使って代用膀胱を作るか、腎臓にチューブを直接挿入し、体の外に装着した袋に尿を排出することになります。


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アスペルギルス症

■大気中に浮遊する真菌の一種を吸入して、肺に起こる感染症

 アスペルギルス症は、アスペルギルスという大気中に浮遊する真菌(かび)を、気道を通して吸入することにより、肺に起こる感染症。肺真菌症の中でも、最も重要な疾患の一つです。

 アスペルギルスは糸状真菌の一種で、多くは自然界に広く分布し、200以上の種類が知られています。堆肥(たいひ)、断熱材、エアコンまたはヒーターの吹き出し口、手術病棟および病室、病院の備品、浮遊粉塵(ふんじん)などに高頻度に分布していますが、人に疾患を起こすのは、アスペルギルス・フミガータス、アスペルギルス・フレーバス、アスペルギルス・ナイジャーなど数種類に限られています。

 健康である限り、アスペルギルスが肺の中に感染することはありません。白血病や臓器移植後などによる体や気道の抵抗力の低下、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の長期間の服用などを切っ掛けに、肺の中で増殖し、感染症を引き起こします。

 数種類のアスペルギルスは有毒な胞子を持っているため、ぜんそく患者は過敏に反応して、アレルギー性の肺炎を引き起こすこともあります。また、肺膿瘍(のうよう)、肺結核、気管支拡張症などの後にできた肺の空洞に入り込み、真菌の塊である真菌球を作ることもあり、これが崩れると褐色の塊となって、たんととも出てきます。

 アスペルギルス症の症状としては、せき、たん、胸痛、呼吸困難などの一般的な呼吸器症状が現れます。血たんや喀(かっ)血の頻度も、ほかの呼吸器感染症よりも多くみられます。また、アスペルギルスは血管に侵入して出血性壊死(えし)や梗塞(こうそく)を引き起こすため、肺炎、ぜんそく、副鼻腔(ふくびくう)炎、さらに急速進行性の全身疾患の症状を呈することもあります。

■アスペルギルス症の検査と診断と治療

 呼吸器症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。

 医師による診断に際しては、胸部X線検査やCT検査が行われ、たんなどから原因となるアスペルギルスの種類を調べます。血液検査で、アスペルギルスに対する抗体があるかを調べることもあります。

 胸部X線写真で典型的な真菌球が確認されれば、アスペルギルス症自体の診断は比較的容易です。確定診断のためには、たんや病巣からアスペルギルスを検出、培養する必要があり、典型的には気管支鏡検査法により肺から、および前検鼻法により副鼻腔から採取します。

 しかし、培養には時間がかかるため、急性で生命を脅かす病態に対する迅速な確定診断用としては、適していません。発症者の状態が悪いことから、体への負担が大きい気管支鏡検査を行えないケースも多く、確定診断は困難なことがしばしばあります。

 アスペルギルスが検出、培養できない間は、臨床的診断に基づいて治療が行われ、一般に抗真菌剤が用いられます。アムホテリシンB、イトラコナゾール、およびミカファンギンを静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、薬でアスペルギルスの活動を抑えた後、真菌球を外科手術で取り除くこともあります。

 アスペルギルス症などの肺真菌症は、普通の肺炎よりも治りにくく、治療にも時間がかかり、再発するケースも多くみられます。治療中は安静にして、栄養を十分に取ることが大切になります。


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アニサキス症

■海産魚介類の生食によって引き起こされる寄生虫病

 アニサキス症とは、種々の海産魚介類の生食を介して、回虫類の一種であるアニサキスの幼虫が胃腸に寄生し、引き起こされる寄生虫病。アニサキスは1999年(平成11年)に、厚生労働省から食中毒原因物質に指定されています。

 アニサキス類の成虫はクジラやイルカ、アザラシなどの海産ほ乳動物の胃壁に寄生しています。虫卵は糞便(ふんべん)とともに海中に放出され、オキアミなどの甲殻類を中間宿主(しゅくしゅ)として第3期幼虫に発育。幼虫を宿すオキアミが多くの種類の魚やイカに摂食されると、新しい宿主の体内で長さ2〜3cmの第3期幼虫のままとどまって寄生を続け、サバ、アジ、イカなどの生食を介して人体に入り、胃壁や腸壁にもぐり込みます。

 魚介類をすし、刺身で生食する習慣のある日本では、アニサキス症の発生は諸外国に比べて非常に多く、1年間に2000例から3000例に上るとみられます。よく発生する時期は12~3月の寒期で、7~9月の暖期は最も少ない傾向があります。これはアニサキスの感染源となる魚の漁期に関係していて、北方海域ではタラ、オヒョウ、その他の海域ではサバ、イワシなどの漁獲期が寒期であることによります。アニサキス類の感染源となる魚介類は、150種以上に上っています。

 アニサキス類の幼虫が消化器系の粘膜から侵入した時に発症しますが、その症状の強さで激症型と軽症型、その症状が現れる部位から胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキスに分けられます。

 胃アニサキス症は原因となる食品を摂取した後2時間から8時間で発症するものが多く、上腹部に締め付けられるような、差し込むような痛みが起きて持続し、吐き気、嘔吐(おうと)を伴う場合もあります。時に、下痢、じんましん、大量吐血をみることもあります。

 腸アニサキス症は原因となる食品の摂取後、数時間から数日して、へそを中心に差し込むような痛みが出現し、吐き気、嘔吐を伴います。発熱はありませんが、虫垂炎、腸閉塞(へいそく)、腸穿孔(せんこう)などと誤診され、急性腹症として開腹手術を受けることがあります。

 腸管外アニサキス症はまれにしか起こりませんが、アニサキス類の幼虫が消化管を貫通して、消化管以外の胸腔(きょうくう)、肺、腹腔、腸管膜、肝、リンパ節、皮下など体内のあらゆる部位に入り込んで、種々の症状を起こします。ほかの疾患の処置に当たって、偶然に虫体が発見されることもあります。

■アニサキス症の検査と診断と治療

 アニサキス症の症状が現れ、海産魚介類の生食をしたことが明らかであれば、消化器内科専門の医院か消化器内科の医師のいるような総合病院を受診します。重症になると、緊急を要するほかの疾患とすぐには区別できないため、内視鏡専門医と消化器外科医のいる総合病院を受診します。

 医師による診断では、海産魚介類の摂取後に起きた腹痛ということがポイントとなります。腸アニサキス症では、内視鏡で幼虫を見付けるのは困難なため、X線や超音波検査で小腸を調べます。幼虫が胸腔や腹腔、さらにほかの臓器に入り込む腸管外アニサキス症では、抗体検査が行われます。

 治療としては、胃アニサキス症であれば、上部消化管内視鏡で幼虫を確認して、つまみ出します。幼虫をつまみ出した瞬間、うそのように痛みが消えます。もっとも、アニサキス類は人体中では1週間程度で死んでしまうので、幼虫を摘出できなくても対症療法だけで治ります。

 腸アニサキス症では、腸閉塞(イレウス)の症状を示さない状態の時、対症療法を行いながら幼虫が死亡、吸収されることによって症状が緩和するのを待ちます。腸管外アニサキス症では、メベンダゾールなどの駆虫剤を内服しますが、現在のところ、効果的な駆虫薬は開発されていません。

 アニサキス症はたとえ幼虫1匹の感染であっても起きる可能性があり、個人レベルでの予防は海産魚介類の生食を避けることに尽きます。ただし、生食に当たって冷凍処理後に解凍して調理されたものであれば、問題はありません。60 ℃1分以上の熱処理のみならず、冷凍処理を施せば、アニサキス類の幼虫のほとんどが不活性化するからです。


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咽頭結膜炎

■咽頭炎や発熱を伴う結膜炎で、夏に多発■ 

 咽頭(いんとう)結膜炎とは、咽頭炎や発熱を伴う結膜炎のことです。子供に多く見られ、水泳の授業を行う夏期に多発するために、プール熱の別名が付いています。

 原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

 この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

 39度前後 の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜炎、咽頭炎、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

 医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、咽頭結膜炎の特効薬はありません。

 家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

 1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。結膜炎が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

 集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。


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インフルエンザ

インフルエンザは風邪の一つ

 風邪とは、鼻やのどに急性の炎症が起こった状態のことです。風邪の主な原因はウイルスで、その種類は何百とあります。インフルエンザは、風邪の症状を起こすウイルスの一種なのです。

 また、ウイルスのほかにも、細菌やマイコプラズマなどの微生物が、風邪の原因になることもあります。

 これらの病原体は、つば(唾液)とともに空中に飛び散って感染(飛まつ感染)します。

■インフルエンザの特徴は

 インフルエンザは、突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型の風邪をいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状の後に現れてきます。

 こういった全身症状が強い風邪は、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他の風邪ウイルスが起こすこともあります。

 また、インフルエンザウイルスが起こす風邪は、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻風邪(鼻水、鼻詰まりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型の風邪)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

 インフルエンザウイルスが感染して症状が出るまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

 インフルエンザの怖い点は、気管支炎や肺炎、中耳炎を起こす原因になることです。乳幼児が肺炎にかかると、命にかかわることもありますし、65歳以上を中心に、インフルエンザウイルスに感染した人の約1%が肺炎を合併しています。

 インフルエンザに肺炎を合併した場合、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがまれにあり、また、いったん治ったように見えながら、2~3日で肺炎になることもあります。

 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く、流行も目立ちません。一方、A型とB型、特にA型は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも、珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

 インフルエンザのウイルスは風邪の他のウイルスとはまったく違うものですが、症状を見るだけで普通の風邪と区別するのは難しいことです。普通の風邪ウイルスが高熱などの全身症状が強い風邪を起こすケースもありますので、地域ではやっているといった情報がないと、医師でもインフルエンザと診断するのは難しいようです。

 病院に行って風邪と診断され、薬をもらった後も症状が改善しないようなら、再度医師に診てもらうことをお勧めします。

■インフルエンザの予防接種とは

予防接種は1回で終わりではない

 インフルエンザの感染の予防、また、万一感染しても軽くすむのに有効なのが予防接種だ、とされています。

 しかしながら、インフルエンザの予防接種は、1回で一生効果があるものではありません。インフルエンザのウイルスには多様な種類があり、すべてに対抗できるワクチンは作れないからです。

 現在インフルエンザのワクチンは、毎年、“その年にはやりそうなウイルスの型”を予測し、それに対抗するものが作られています。つまり、予防接種でインフルエンザを防ごうとするのなら、毎年接種する必要があるのです。

 もちろん、予測した型と実際に流行するインフルエンザの型とが異なることもありますが、毎年予防接種を受けている人は免疫が蓄積するので、かかった場合でも軽くすむケースが多いようです。 

鶏卵、ゼラチンにアレルギーのある子は注意!!

 予防接種の副反応は、ごくまれに発熱や頭痛がある程度で、特に心配はありません。注意したいのは、ワクチンには 鶏卵やゼラチンが含まれている点で、アレルギーのある赤ちゃんや子供の場合は、接種前に医師に相談しましょう。

■インフルエンザに負けない生活術

 インフルエンザや風邪にかかった場合でも、軽い症状ですませるためにできる対策は、予防接種だけではありません。ウイルスに負けないだけの抵抗力、すなわち体力をつけておくだけでも、かかった時の症状はずいぶん異なるのです。

 赤ちゃんや子供さんの抵抗力をつけるため、家庭で配慮できることを紹介してみましょう。 

(1)動きやすい服装でよく遊ぶ 

 「風邪をひかせるのが怖いから」と考えて厚着をさせるのは、着膨れして動きにくく、運動不足になることもあるため、逆効果。赤ちゃんの場合の大体の目安は、生後1カ月以内で大人の着ている枚数より1枚多いくらい、それ以後は大人と同じ枚数か、1枚少ない程度で大丈夫でしょう。枚数よりも、体が動かしやすい服装を心掛けてやりましょう。

(2)生活時間と栄養バランスに考慮を 

 こちらは大人にも当てはまることですが、仕事で疲労している時に風邪などをひいてしまうと、こじらせやすいもの。赤ちゃんや幼児も、起床、就寝と三食の時間をなるべく規則的にし、栄養バランスを考えた食事がとれるようにしましょう。

(3)手洗い・うがいの習慣をつける

 外出から帰った後、食事の前には必ず手洗いと、うがいの習慣を。8カ月~1歳くらいになって、赤ちゃんがママのまねをするようになったら、水を口に含んで「ペッ」と吐き出す様子を、ママが見せてあげるのも一案です。また、家族やお客さんも、赤ちゃんに触る前には手洗い、うがいの習慣を! 

(4)室内が乾燥しないような配慮を

 乾燥した空気は、のどに負担をかけるもとです。暖房をつけるならまめに換気したり、加湿器を使ったりして、適度な湿度を心掛けましょう。 

(5)冬場の外出は人込みを避けて

 風邪やインフルエンザは、咳やくしゃみによって感染します。冬場は赤ちゃん連れで人込みの多い場所へ外出するのは、極力、避けるようにしましょう。


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カポジ肉腫

■ヘルペスウイルス8型による皮膚がん

 カポジ肉腫(にくしゅ)とは、ピンク色、茶色、紫色などの平らな染み、または、こぶが皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。

 原因となるのは、ヘルペスウイルス8型(HHV-8、別名、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)で、血管内皮細胞に感染して発症し、やがて肺、肝臓、腸管などの臓器に病変が広がります。

 1872年、ハンガリーの医師モーリッツ・カポジが、皮膚病変肉腫として報告。以降、珍しい皮膚がんの一つとして位置付けられていましたが、1994年、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者から初めての発症が報告され、その末期に発症することで知られるようになりました。アメリカでは、カポジ肉腫を発症する人のほとんどが、エイズ患者です。

 このカポジ肉腫は、古典型、アフリカ型、医原性型(免疫抑制治療関連性型)、エイズ型(流行性型)の4つに細分でき、それぞれ症状や進行が異なります。

 古典型は高齢の男性で主に地中海系あるいはユダヤ系の人、アフリカ型は赤道直下の一部地域に住むアフリカ系の小児や若者、医原性型は臓器移植後に免疫抑制薬の投与を受けている人、エイズ型はエイズ患者に発症します。

 高齢の男性が発症する古典型では、カポジ肉腫は紫色や濃い茶色の単独の染みとして、つま先や脚にできます。この染みは数センチ大になり、色も濃くなって、平ら、または、わずかに盛り上がり、出血しやすくなって潰瘍(かいよう)化します。脚には、同様の染みがいくつか現れることがあります。

 この古典型のカポジ肉腫はゆっくりと、時には10~15年かけて進行します。病変が進むにつれて、脚に浮腫(ふしゅ)が生じ、血液が正常に流れにくくなります。しばらくして、病変が他の臓器に広がり、他の種類のがんを発症することもあります。

 医原性型(免疫抑制治療関連性型)のカポジ肉腫は、体が感染と闘うのを助ける免疫系を弱める薬を投与されている人に、発症する可能性があります。肝臓や腎(じん)臓などの臓器移植を受けた人では、移植された臓器を異物と見なして免疫系が攻撃しないように、免疫抑制薬を飲む必要があるためです。

 アフリカ型、エイズ型(流行性型)では、高齢男性が発症する古典型よりもっと悪性です。皮膚に現れる染みは、数が多く、体中どこにでもできます。これらの染みは数カ月以内に体の他の部位に広がりますが、口の中にできることも多く、そうなると物を食べる際に痛みます。

 この腫瘍は、リンパ節や内臓にもできます。特に、消化管にはできやすく、下痢と出血を引き起こし、便に血が混じるようになります。

■放射線療法が一般的な治療法

 医師による治療では、カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術で病変を取り除くか、液体窒素で腫瘍を凍結させて殺します。

 肉腫の数が少なく、他の症状が全く出ていない場合は、症状が広がるまでは治療を受けないという選択も存在します。

 カポジ肉腫が皮膚に多数できている場合は、放射線療法を行います。この放射線療法が一般的な治療法で、がん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させるために、体外の機械からX線や他の高エネルギー線を照射します。

 悪性のカポジ肉腫の場合は、体の免疫システムが正常であれば、インターフェロンの投与や化学療法を行います。化学療法では薬を使ってがん細胞を殺しますが、薬は経口投与されるか、静脈注射または筋肉注射で投与されます。薬が血流に入り、体中を駆け巡り、最初に発生した部位以外のがん細胞も破壊することができるため、化学療法は全身療法とも呼ばれます。カポジ肉腫に化学療法を行う場合、病変に直接注射されることもあります。

 免疫抑制薬の投与を受けている人の場合は、投与を中止すると腫瘍が消えることがあります。免疫抑制薬の投与を継続しなければならない人の場合、化学療法と放射線療法を行いますが、投与を中止した人と比べると成果はよくありません。

 エイズ型のカポジ肉腫の場合、化学療法や放射線療法の効果はあまり期待できません。抗レトロウイルス薬の投与により、免疫システムの機能が改善されれば、結果は良好です。

 高活性抗レトロウイルス療法が行われる場合、レトロウイルスの1つであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を標的として、いくつかの抗レトロウイルス薬が組み合わされます。これらの薬物は、体内でウイルスが増殖するのを阻止し、エイズ型のカポジ肉腫のリスクを低下させるのに役立ちます。

 高活性抗レトロウイルス療法では、薬の投与など他の治療法と併用せず、体内の免疫系によってがんと闘う、生物学的治療が単独で用いられることもあります。生物学的治療とは、体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、疾患に対する体本来の防御機能を強化、あるいは修復するものです。

 治療後に再び悪化(再発)した再発カポジ肉腫では、カポジ肉腫の種類、全身の健康状態、以前に行った治療に対する反応によって、治療法が異なります。肉腫は発生部位で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。


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急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)

■精巣に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患

 急性精巣上体炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患。急性副睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。

 精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。炎症の多くは、精巣の上面に付着している精巣上体に起こります。

 尿の中の細菌などが精巣上体に入り込んで、感染を起こすことが原因です。通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性精巣上体炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

 一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が精巣上体に至ることによって、炎症を起こします。  

 症状は、陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、精巣そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

 歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

 普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。精巣に炎症がおよぶことはまれで、精巣にはれ、圧痛は認められません。

■急性精巣上体炎の検査と診断と治療

 適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

 医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精索捻転(ねんてん)症や精巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

 治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

 発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。精巣上体のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には精巣上体に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、精巣を含めて精巣上体を摘出しなければならないこともあります。

 後遺症として、慢性精巣上体炎に移行したり、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。


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蟯虫症

■蟯虫が盲腸付近に寄生することで引き起こされる寄生虫病

 蟯虫(ぎょうちゅう)症とは、線虫類に属する蟯虫が盲腸付近に寄生することで、引き起こされる寄生虫病。日本で最も多い寄生虫病です。

 小児に多くみられますが、大人も感染します。小児では幼児期から学童期にかけて多く、約5~20パーセントぐらいの感染率があると見なされています。人から人への感染が起こるために、家族内や保育所内、幼稚園内などで集団感染することがあります。

 口から入った蟯虫の卵は、6~8時間で孵化(ふか)して幼虫になり、人の盲腸およびその周辺に寄生します。その後、幼虫は約45日程度で成熟します。成虫は紡錘形で乳白色をしており、体長はオスが2.5センチほど、メスが1センチ前後、寿命はオスが2週間、メスが2カ月程度。交尾をしたメスの体内で卵が十分に発育してくると、メスは人が夜寝ている間に肛門(こうもん)付近に下りてきて、1時間に6000~10000個の卵を産みつけます。卵は1カ所に産むのではなく、卵を産み尽くすまで、産んでは進み産んでは進みを繰り返し、メスは力尽きて死にます。

 その卵は産卵されて数時間以内に感染可能なまでに発育して、手指や衣類、寝具、家具、建具に付着しますので、再び口から人体に入って寄生することになります。人は蟯虫に対しては免疫ができずに何度でも感染しますので、小児がおしりをかいて卵の付着した手指をそのまましゃぶると感染がひどくなります。また、同じ布団で寝たり、密接な接触のある集団内では感染が広がっていきます。

 寄生している蟯虫の数が少ない時は症状のないことも多いのですが、数が多くなると腹痛、リンパ節の炎症が生じたり、メスが下りてくると肛門の周囲のかゆみ、湿疹(しっしん)が生じ、それに伴う睡眠障害がみられることになります。盲腸に寄生しているために、虫垂炎の原因になることもあります。

■蟯虫症の検査と診断と治療

 幼稚園や学校の検査で偶然、見付かることもけっこうありますが、蟯虫症の症状に気付いたら、内科を受診します。同様に感染している可能性がある同居の家族も内科を受診、検査して感染の有無を確かめることが必要です。

 肛門周囲に産みつけられた卵を検出するには、セロハンテープ法という方法が行われます。朝起きてすぐ、布団を出る前に肛門に粘着性のセロハンテープをつけて卵を付着させ、顕微鏡で卵を見付けます。蟯虫は毎日産卵するわけではないので、日を変えて2回、あるいは3日連続して検査します。時々、便の中に長さ1センチ前後の乳白色の蟯虫が見付けられることもあります。
 治療では、駆虫剤のコンバントリン(成分はパモ酸ピランテル)を内服します。駆虫剤は成虫には効くものの、卵には効きませんので1度飲んでから、2週間後、すなわち残った卵が成虫になって卵を生む前に、もう1度飲むほうがよいでしょう。

 蟯虫は病害性の低い寄生虫ですが、見付けたら家族いっせいに駆虫することが、予防の基本です。ふだんから、つめを短く切る、手洗いをよくする、毎日入浴し、できれば朝も入浴して下着を取り替える、寝具や室内を清潔に保つなどの注意が必要です。


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コレラ

■コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症

 コレラとは、コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症。世界中に広く分布する細菌感染症です。

 コレラ菌の性質は、1960年ころまで流行したものと、現在流行しているものとでは多少異なっています。かつてのコレラ菌はアジア型(古典型)コレラと呼ばれ、大流行を幾度となく繰り返し、その病原性の強さによって何百万人もが犠牲になりました。

 現在のコレラは、主にエルトール型コレラと呼ばれるもので、1961年ころからアジア地域で発生し、感染力が強いためアジア型コレラに替わって瞬く間に世界中に広がりました。この流行が現在も世界中に広がっていて、終息する気配がありません。

 世界保健機関(WHO)に報告されている世界の患者総数は、ここ数年20〜30万人ですが、実数はこれを上回っていると推測されています。幸いなことにアジア型コレラに比べて病原性が弱く、死亡率は2パーセント程度といわれています。

 日本では、205種類に分類されているコレラ菌のうち、O1血清型とO139血清型を原因とするものを行政的にコレラとして扱います。O1血清型コレラ菌は、生物学的な特徴によってアジア型コレラと、エルトール型コレラに分けられています。一方、O139血清型コレラ菌によるコレラは、新興感染症の1つで、1992年インド南部で発生し、瞬く間にインド亜大陸に広がり、現在もインドおよびバングラデシュにおいてO1血清型エルトールコレラ菌と交互に、あるいは同時に流行を繰り返しています。

 日本におけるコレラは、最近はほとんどが輸入感染症として発見されています。すなわち、熱帯、亜熱帯のコレラ流行地域への旅行者の現地での感染例で、国内での感染例もありますが、輸入魚介類などの汚染が原因と推定されていて、二次感染例と思われる例はほとんどありません。

 このコレラは、コレラ菌のうちコレラ毒素産生性の菌に汚染された水、氷、食品などを摂取することにより感染します。経口摂取後、胃の酸性環境で死滅しなかった菌が小腸下部に達して定着、増殖し、感染局所で菌が産生したコレラ毒素が細胞内に侵入して症状を引き起こします。

 数時間~5日、通常は1〜3日の潜伏期間の後、下痢や嘔吐(おうと)などが起こります。アジア型コレラでは米のとぎ汁のような水様便が大量に出ますが、エルトール型コレラの場合、症状は比較的軽く、軟便程度から水様便まで幅広い下痢が主です。腹痛や発熱を伴うことはほとんどありません。

 アジア型コレラでは、下痢が激しく、大量の下痢便の排出に伴って高度の脱水状態となり、収縮期血圧の下降、皮膚の乾燥と弾力の消失、意識消失、乏尿または無尿などの症状が現れます。

■コレラの検査と診断と治療

 海外旅行中や旅行後に下痢や嘔吐の症状が現れたら、コレラの可能性があります。検疫所あるいは培養検査のできる医療機関を受診し、便の細菌検査を受けることが必要です。

 日本では、O1血清型とO139血清型を原因とするコレラは感染症法で2類感染症に指定されており、発症者は原則として2類感染症指定医療機関に入院となりますが、無症状者は入院の対象とはならず外来治療も可能です。

 医師による診断では、便の細菌培養を行い、コレラ毒素を産生するコレラ菌が検出されれば確定します。食中毒や、他の細菌による感染性腸炎との区別も、培養結果によります。迅速検査として、コレラ菌の毒素遺伝子を検出する方法も開発されています。コレラもしくは病原体保有者であると診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出ます。

 治療は、大量に喪失した水分と電解質の補給が中心で、輸液の経口投与や静脈内点滴注入を行います。世界保健機関(WHO)では、食塩とブドウ糖を1リットルの水に溶かした経口輸液(ORS:Oral Rehydration Solution)の投与を推奨しています。経口輸液の投与は特に開発途上国の現場では、滅菌不要、大量に運搬可能、安価などの利点が多く、しかも治療効果もよく極めて有効な治療法となっています。

 重症の場合には、抗生物質を投与して、コレラ菌の排出を促し、下痢の期間の短縮を図ります。第一選択薬となるのは、ニューキノロン系薬剤であるテトラサイクリンやドキシサイクリン。これらの薬剤にコレラ菌が耐性の場合には、エリスロマイシン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤やノルフロキサシンなどが投与されます。

 予防としては、コレラが流行している海外の旅行先で、生水、氷、生の魚介類、不衛生な食品を喫食しないことが肝要です。ジュースの中の氷や、氷の上に飾られていたカットフルーツで感染したり、プールの水を誤って飲んで感染した例も報告されています。

 海外旅行をする時、国によりコレラの予防接種を義務付けられているものの、接種をしても絶対に安全というものではありません。無理な旅行日程などを避け、体調を崩すことがないよう心掛けることも大切です。


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サルモネラ食中毒

鶏卵や鶏、豚、牛の肉が原因食となって発生する食中毒

 サルモネラ食中毒とは、サルモネラ菌が原因となって起こる食中毒。重症の食中毒を起こすこともあります。

 サルモネラ菌は、もともと自然界に広く分布し、鶏(にわとり)、豚、牛などの家畜や家禽(かきん)、犬や猫などのペットも保有しています。血清型別という方法で約2500種に分けられ、低温や乾燥に強い性質があります。

 一般に、1グラム中に1万個以上の菌が増殖した食品を食べると感染し、中毒症状を起こします。幼児や高齢者では、わずかな菌量でも感染します。一般に、人から人へ伝染することはありませんが、乳幼児や高齢者では、二次感染することもあります。

 原因となる食品としては、サルモネラ菌を持っている鶏、豚、牛などの肉や、鶏卵などをよく火を通さないで食用にしたもののほか、納豆、氷小豆、乳製品などが挙げられます。特に近年では、鶏卵に含まれるエンテリティディスという血清型の菌によって、生卵を始めとして、卵焼き、オムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどからもサルモネラ食中毒が起こっています。

 また、ペットから感染したサルモネラ菌が原因となって、食中毒が起こることもあります。

 原因食を食べてから、12〜48時間の潜伏期間を経て発症し、発熱、寒け、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、全身脱力感などを起こします。下痢は水様便から粘血便で、渋り腹を伴うことが多く、しばしば強い症状が現れます。

 これらの症状は2〜3日で改善し、多くは1週間以内で回復します。

 ただし、潜伏期間や症状は、摂取した菌の量や発症者の健康状態、年齢によって変化します。乳幼児ではわずかな菌量でも発症し、場合によっては激しい下痢、強い腹痛、血便などの重い症状を示すこともあります。

 下痢、嘔吐などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

■サルモネラ食中毒の検査と診断と治療

 食中毒によって乳幼児や高齢者の脱水症状が強くなった場合には、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診します。

 医師は急性の中毒症状から感染を疑いますが、サルモネラ食中毒と確定するには、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。食べた食品、季節、年齢も参考になります。

 感染初期や軽症の場合は、整腸剤や補液の点滴による対症療法を行います。重症化した場合は、抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

 ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

 サルモネラ食中毒を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できるかぎり避ける。ペットに触れた後は、よく手を洗う。


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性器ヘルペス症

■単純ヘルペスウイルスによって発症する性感染症

 性器ヘルペス症とは、単純ヘルペスウイルスによって発症する疾患。主に性行為によって、性器へ感染して起こります。

 女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

 症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純ヘルペスウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

 症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頚部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

 女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4 週間近くを要します。

 単純ヘルペスウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、性器ヘルペスの再発型を発症し、単純ヘルペスウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

 再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。多くは1週間以内に治ります。 再発の回数は月2~3回から年1~2 回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

 性器ヘルペスの問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

 性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、性器ヘルペスは世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

 また、妊娠末期に性器ヘルペス症になると、乳児が産道感染して重症になり、死亡することが多いので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純ヘルペスウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。 

■性器ヘルペス症の検査と診断と治療

 急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

 医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

 病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純ヘルペスウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

 症状が軽いものには、単純ヘルペスウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

 急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。


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ノロウイルス食中毒

■カキなどの貝類を介してノロウイルスが感染し、引き起こされる食中毒

 ノロウイルス食中毒とは、ノロウイルスが水や貝類などの食品を介して感染して引き起こされる食中毒。ノロウイルスが食品を介さずに人から人に感染する場合は、感染性胃腸炎と呼ばれます。

 ノロウイルスはカキなどの二枚貝の中腸腺(せん)に蓄積されやすく、貝類を生あるいは十分に加熱しないで食べることで主に感染し、人間の小腸粘膜で増殖して食中毒を引き起こします。また、感染性胃腸炎は、ウイルス感染者の糞便(ふんべん)や嘔吐(おうと)物から大量に排出されたノロウイルスが食品、調理器具、手指に付着し、 食事の際や手指が口に触れた際に侵入して感染を引き起こします。

 食中毒、感染性胃腸炎のどちらも1年を通して発生しますが、ノロウイルスが乾燥や寒さに強いことから、冬場の11月から3月にかけて最も多く発生します。特に、保育園、幼稚園、学校、老人福祉施設などで発生した場合は、集団発生につながることがあります。

 ノロウイルスは2002年8月、国際ウイルス学会で命名されましたが、元はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていました。ちなみに、ノロとは発見された地名に由来しています。

 非常に小さい球形の生物で、直径0.03マイクロメーター前後の蛋白(たんぱく)質でできた球の中に遺伝子(RNAリボ核酸)が包まれた構造をしています。近年、新しい検査法(PCR法)の普及によって、食品からのウイルスの検査が可能になり、100粒子以下の少量で感染するなど食中毒との関係が明らかになってきました。 多くの遺伝子型が存在しますので、一度感染したからといって次に感染しないとは限らず、何度でも感染します。

 感染しても全員が発症するわけではありませんが、24~48時間の潜伏期間を経て発症した場合の主症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、水のような下痢、腹痛、38℃以下の発熱で、風邪に似ています。普通の成人は発症しても軽症ですみ、通常3日以内で回復します。免疫力の低下した高齢者や乳幼児では、少量のウイルスを摂取することで発症し、死亡することもあります。

■ノロウイルス食中毒の検査と診断と治療

 ノロウイルス食中毒、感染性胃腸炎を発症した場合、すぐに医療機関を受診し適切な処置を受けます。自己判断で下痢止めの薬などを飲むと、回復を遅らせることもあります。

 医師による診断に際しては、検便によってウイルスの保菌状況を確認します。

 効果のある抗ウイルス剤は現在のところありませんので、治療法は通常、対症療法しかありません。高齢者や乳幼児では脱水症状や体力の消耗を引き起こすこともあるため、水分と栄養の補給を十分に行います。普通の成人は発症から1~2日程度、3日以内には治癒します。

 なお、糞便からのウイルスの排出は下痢などの症状がなくなっても、 通常では1週間程度、長い時には1カ月程度続くことがありますので、症状が改善した後も、 しばらくの間は直接食品を扱わないこと大事です。

 予防法としてはまず、カキなどの貝類は中心部まで十分に加熱してから食べることです。湯通し程度の加熱では、ウイルスは死にません。次に、トイレの後や食事の前、調理前によく手を洗うことです。逆性せっけんや消毒用アルコールは効きませんが、十分な手洗いでノロウイルスを洗い流せます。

 また、タオルや調理器具、容器も清潔なものを使用するよう心掛けます。ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や糞便などを片付ける際にはビニール手袋、マスクなどを使用し、衣類は消毒します。


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ハンセン病

らい菌によって起こる慢性の感染症

 ハンセン病とは、抗酸菌に分類される、らい菌によって起こる慢性の感染症。らい病とも従来は呼ばれ、主に脳・脊髄(せきずい)から出る末梢(まっしょう)神経、皮膚、精巣、目、鼻の粘膜が侵されます。

 治療しないと外見が変形することから、ハンセン病の発症者は長い間恐れられ、遠ざけられてきました。感染力が強いわけではなく、死に至ることもなく、抗生物質で治療可能な疾患であるにもかかわらず、今なお一般の人々に根深く恐れられています。そのため、ハンセン病にかかった人は、心理的、社会的問題に苦しむことも多いのです。現在の日本では、ハンセン病は感染症法には含まれず、らい予防法は1996年4月に廃止されました。

 ハンセン病は世界中に100万人以上もの発症者がいる疾患で、インドとネパールを始めとするアジア、タンザニアなどのアフリカ、ブラジルなどの中南米、太平洋諸国に多くみられます。20〜30歳代の人に多くみられますが、どの年齢でも発症します。近年の日本では、新たな発症者は年間10名程度で推移し、そのうち半数以上を在日外国人が占めています。

 感染経路ははっきりしていませんが、発症者の鼻や口からまき散らされた飛沫(ひまつ)を吸ったり、接触したりすることによる人から人への感染が、1つの経路として考えられています。ところが、空気中にらい菌が存在しても、ほとんどの人はハンセン病にはかかりません。約95パーセントの人では、免疫システムが感染を防御するのです。

 発症者の約半数は、おそらく感染者の近くで長期に渡って接触のあった人だと考えられます。たまたま発症者と接触したというような短い接触では感染は起こらず、俗にいわれるような、触っただけで移るなどということはありません。医療従事者は発症者と長いことかかわりますが、ハンセン病にはかかりません。らい菌の感染源としてはほかに、土壌、ほ乳動物のアルマジロ、トコジラミ、蚊などが考えられます。

 発症する場合は、類結核型のような軽いものから、らい腫(しゅ)型のような重いものまでさまざまです。類結核型には、感染性はありません。ハンセン病を起こす細菌は非常にゆっくり増殖するので、症状が出るのは感染してから少なくとも1年後、平均で5〜7年後になります。また、症状が出てからの進行も緩やかです。

 症状は主に、皮膚と末梢神経に現れます。皮膚には、特徴的な発疹(はっしん)や隆起が現れます。神経が侵されると、その神経によって制御される範囲の皮膚に感覚がなくなり、筋力が低下します。

 皮膚の斑(まだら)の数と形状によって、ハンセン病は類結核型、らい腫型、境界型、および未定型に分類されます。これらの病型によって、長期的な経過の見通し(予後)、起こる可能性のある合併症、抗生物質による治療が必要な期間が異なります。

 類結核型では、白い平らな部分が1つないし少数ある発疹が現れます。発疹が現れた部位では、皮下の神経が細菌に侵されるため、感覚がなくなります。

 らい腫型では、皮膚にたくさんの小さな隆起や、より大きく盛り上がった大小さまざまな形の発疹が現れます。類結核型に比べて、感覚のなくなる範囲が広く、一部の筋肉に脱力感が現れます。

 境界型では、類結核型とらい腫型の両方の特徴が出ます。放置した場合、症状が改善すれば類結核型になり、悪化してらい腫型に似た症状になることもあります。

 ハンセン病の最も重い症状は、末梢神経の感染により触覚がなくなることで、痛みや熱さ、冷たさを感じることができなくなります。このため、自分自身の体がやけどや切り傷などを負っても、気が付かないことがあります。繰り返し障害が起こると、足や手の指を失うことにもなります。

 また、末梢神経の障害は筋力の低下も引き起こし、そのために手の指がかぎ爪のように曲がる、足首が底側に曲がる(尖足〔せんそく〕)など、体の変形が起こることもあります。皮膚感染では、はれやしこりがあちこちにでき、顔にできると特に変形が目立ちます。

 さらに、足の裏がただれます。鼻の粘膜が侵されると、慢性的な鼻詰まりが起こり、治療しないで放置しておくと鼻全体が侵されてきます。目に障害が起こると、失明につながります。らい腫型の男性では、勃起(ぼっき)機能不全(インポテンス)が起き、精巣で作られる精子や男性ホルモンの1つであるテストステロンの量が減るため、生殖能力がなくなります。

 ハンセン病は経過によっては、治療を受けていても、体の免疫応答による炎症反応を起こすことがあります。発熱、皮膚や末梢神経の炎症が多く、ほかにリンパ節、関節、精巣、腎(じん)臓、肝臓、目の炎症も起こります。

■ハンセン病の検査と診断と治療

 なかなか消えない特徴的な発疹、触覚の喪失、筋力の低下による体の変形などの症状があれば、ハンセン病が強く疑われます。らい予防法の廃止後、ハンセン病は保険診療の適用になり、診断と治療は一般の医療機関、主に皮膚科外来で行われています。

 診察ではまず、出身地・出身国、小児期の居住地、家族歴、気付かずにいるやけどやけがの既往などを問診し、その後、皮膚症状の検査、神経症状の検査、らい菌の検出、病理組織検査などを行います。診断の確定には、らい菌の検出が重要です。らい菌の培養は現在のところ不可能なので、皮膚症状のある部位にメスを刺して組織液を採取する皮膚スメア検査、皮膚の病理組織を抗酸菌染色する検査、らい菌の特異的な遺伝子(DNA)を証明する検査のうち、複数の検査が行われています。

 かつて、ハンセン病の発症者は顔や体が変形するために社会から追放され、施設や特定の集落などに隔離されてきました。今でもまだ、こういうことが行われている国はあります。しかし、ハンセン病は隔離の必要はありません。感染力があるのは未治療のらい腫型だけで、それも簡単に感染するものではありませんし、いったん治療を始めれば感染力はなくなります。

 さらに、ほとんどの人はハンセン病に対する免疫をもともと持っており、感染のリスクがあるのは、ハンセン病の発症者の近くで長期間一緒に過ごす人に限られています。リスクがある人は定期的に検査を受ける必要がありますが、抗生物質の予防投与は行われません。結核の予防に使われるBCGワクチンがある程度ハンセン病にも予防効果を持ちますが、あまり使われていません。

 抗生物質による治療を行えば、ハンセン病の進行は抑えられます。すでに障害を受けた神経や体の変形を元に戻すことは、できません。それだけに、早期発見と早期治療により後遺症を残さないことが、非常に重要です。特定の抗生物質に耐性を示すらい菌もあるので、治療には通常複数の抗生物質を使います。ダプソン(DDS)とリファンピシン(抗結核剤)の併用が標準的に用いられます。

 ダプソンは比較的安価で、副作用もアレルギー性の発疹や貧血がたまに出る程度の安全な薬です。リファンピシンはやや高価で、薬効も強いですが、重い副作用として肝障害やインフルエンザ様症状が起こることがあります。重症例の治療では、クロファジミンを追加的に使います。ほかには、エチオナミド、ミノサイクリン、クラリスロマイシン、オフロキサシンなどが使われます。

 らい菌は根絶しにくいので、抗生物質による治療を長期間行う必要があります。感染症の重症度や医師の判断によって、6カ月から数年に渡って続けます。らい腫型の場合は、治療を一生続けることを勧める医師もいます。


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ボツリヌス菌食中毒

■ボツリヌス菌の作る毒素によって起こる食中毒

 ボツリヌス菌食中毒とは、強力な毒素を産生するボツリヌス菌によって引き起こされる食中毒。

 ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。この菌による食中毒は、欧米では古くからハム、ソーセージなどによる腸詰め中毒として恐れられていて、ハム、ソーセージに発色剤として添加される硝酸塩は発色作用よりも、ボツリヌス菌の繁殖を抑える目的で使用されています。

 酸素がなくて水分や栄養分があるなど一定の発育条件がそろった食品中で、猛毒の神経毒素であるボツリヌス毒素を産生。食品とともに摂取された毒素は、主に小腸上部で吸収され、リンパ管をへて血液中に入り、末梢(まっしょう)性の神経まひ症状を起こします。現在知られているものでは最強の毒力があるといわれ、テロリストによって生物兵器として使われるのではないかと心配されています。

 菌は毒素の抗原性の違いによりA~Gまでの型に7分類され、人に対する中毒はA、B、E、F型で起こります。A、B型は芽胞の形で土壌中に分布し、E、F型は海底や湖沼に分布します。

 日本では、缶詰、ビン詰、容器包装詰低酸性食品(レトルト食品類似食品)、自家製の飯鮨(いずし)などによる食中毒がみられます。海外では、キャビア、野菜などの自家製ビン詰や缶詰、ハム、ソーセージによる食中毒がみられます。

 日本では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品、飯鮨(いずし)による食中毒が数多く知られています。飯鮨は生魚、飯、酢、食塩、砂糖などを混ぜた自家製の保存食品で、調理に加熱工程がないことや、海底にボツリヌスE型菌が分布していることなどが、発生原因とされています。

 しかし、1998年と1999年に連続して、容器包装詰低酸性食品を原因とするA型およびB型毒素による食中毒が発生して以降、ボツリヌス菌食中毒の発生はありません。

 潜伏期間は平均1〜2日で、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの腹部症状に続いて、物が二重に見える複視、発語困難、舌のもつれ、口渇、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などの神経まひ症状が現れます。さらに症状が進むと、便秘、尿閉、四肢のまひが現れ、次第に呼吸困難に陥ります。

 10日以上経過すれば死亡を免れますが、それ以前に呼吸筋のまひによる呼吸不全などで死亡することも少なくありません。

■ボツリヌス菌食中毒の検査と診断と治療

 ボツリヌス菌食中毒は極めて致死率が高いため、医師による検査および診断は、迅速な対応が求められます。診断は中毒の原因と推定された食品、発症者の糞便(ふんべん)、血液、胃内容、吐物などから毒素の証明をし、菌を分離することで行われます。

 近年では、糖とボツリヌス毒素を結合させ、毒素遺伝子を迅速かつ特異的にレーザーで検出する遺伝子増幅法が普及しています。区別が必要な疾患には、脳卒中、急性球まひ、メタノール中毒などがあります。

 治療では、抗毒素を注射で投与するとともに、輸液によりブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。さらに症状の経過に応じて、 人工呼吸器による呼吸の補助など、さまざまな対症療法も行われます。日本では1962年に抗毒素療法が導入された結果、致命率は著しく低下しました。

 このボツリヌス菌食中毒のほとんどは、自家製食品によって起こっています。菌の食品汚染は、原材料に由来するとされています。食中毒を防ぐためには、以下のことを心掛けます。

 新鮮な原材料を用いて十分に洗浄する。低温下で素早く調理する。飯鮨などの魚肉発酵食品には、酢酸を添加する。食肉製品や魚のスモークは十分に加熱する。自家製の缶詰、真空パック、びん詰を製造後は、冷蔵あるいは冷凍下で保存する。製造後あるいは保存中に異臭がする食品や、容器包装詰低酸性食品の食べ残しなどは廃棄する。


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メタノール中毒

■メタノールを飲んだり、吸い込んで引き起こされる食中毒

 メタノール中毒とは、酒(エタノール)と間違えるなどしてメタノールを誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込んで、引き起こされる食中毒。

 メタノールはアルコールの一種で、別名としてメチルアルコール 、木精、カルビノールメチールとも呼ばれます。

 このメタノールは、アルコールランプなどの燃料、自動車のフロントガラス用などの洗浄剤、溶剤として、またフェノール樹脂、接着剤、酢酸、ホルマリンなど各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのために、誤飲する機会も多く、工場などで急性、慢性に吸入することも多くあります。

 エタノールと同様に、メタノールも体に入ると酔いをもたらします。ただし、エタノールが体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸(ぎさん)に分解されます。

 この蟻酸がたまることにより、視神経を傷付けて、視力障害さらには失明を引き起こします。それ以外に、急性下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、出血性胃炎、急性膵(すい)炎、頭痛、めまいなど、さまざまな症状を引き起こします。

 急性中毒の場合、メタノールを故意に、あるいは間違って飲んだり、吸い込んだりしてから半日〜1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような酔いが起こるだけで、ほかには特に症状は出ません。ただし、吸い込んだ場合には、目や鼻の刺激を覚えることがあります。

 翌日から吐き気、嘔吐、頭痛、めまいのほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、血液が酸性になる代謝性アシドーシスも生じます。1週間以内に、視神経委縮と視野狭窄(きょうさく)のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。

 多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸まひを起こし、死ぬこともあります。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。

■メタノール中毒の検査と診断と治療

 メタノール中毒に気付いたら、まずできるだけ吐かせ、次に酒(エタノール)をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送します。

 医師による急性中毒の診断では、発症者の話をよく聞いて、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切です。それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、目などの症状と代謝性アシドーシスが診断の手掛かりになります。視力障害がみられる時は、視神経の委縮と視野の狭窄の有無を調べます。慢性中毒の場合は、目の所見と尿中のメタノールの量を調べます。

 急性中毒の治療では、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。メタノールもエタノールもアルコール脱水素酵素などの同じ酵素で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなるためです。また、必要に応じて胃洗浄を行ったり、下剤を投与して、メタノールを排出させるようにします。

 重症の場合には、人工透析を行って血液中のメタノールを取り除く場合もあります。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行います。


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赤あざ(血管腫)

■皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤いあざ

 赤あざとは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見え、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

 異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

 この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。

 ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

 正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

 また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

 出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。この赤あざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

 自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

■赤あざの検査と診断と治療

 赤あざ(血管腫)を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

 医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

 カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

 顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

 即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

 単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。


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クルーゾン症候群

■遺伝が原因として考えられる先天性の異常疾患

 クルーゾン症候群とは、遺伝が原因として考えられている先天性の異常疾患。生まれ付き、頭や顔、あご、手足の異常を起こします。

 クルーゾン症候群の主な症状としては、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症が挙げられます。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ありませんが、クルーゾン症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■クルーゾン症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしいと心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 クルーゾン症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。クルーゾン症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨、顔面骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。


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メタノール中毒

■メタノールを飲んだり、吸い込んで引き起こされる食中毒

 メタノール中毒とは、酒(エタノール)と間違えるなどしてメタノールを誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込んで、引き起こされる食中毒。

 メタノールはアルコールの一種で、別名としてメチルアルコール 、木精、カルビノールメチールとも呼ばれます。

 このメタノールは、アルコールランプなどの燃料、自動車のフロントガラス用などの洗浄剤、溶剤として、またフェノール樹脂、接着剤、酢酸、ホルマリンなど各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのために、誤飲する機会も多く、工場などで急性、慢性に吸入することも多くあります。

 エタノールと同様に、メタノールも体に入ると酔いをもたらします。ただし、エタノールが体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸(ぎさん)に分解されます。

 この蟻酸がたまることにより、視神経を傷付けて、視力障害さらには失明を引き起こします。それ以外に、急性下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、出血性胃炎、急性膵(すい)炎、頭痛、めまいなど、さまざまな症状を引き起こします。

 急性中毒の場合、メタノールを故意に、あるいは間違って飲んだり、吸い込んだりしてから半日〜1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような酔いが起こるだけで、ほかには特に症状は出ません。ただし、吸い込んだ場合には、目や鼻の刺激を覚えることがあります。

 翌日から吐き気、嘔吐、頭痛、めまいのほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、血液が酸性になる代謝性アシドーシスも生じます。1週間以内に、視神経委縮と視野狭窄(きょうさく)のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。

 多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸まひを起こし、死ぬこともあります。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。

■メタノール中毒の検査と診断と治療

 メタノール中毒に気付いたら、まずできるだけ吐かせ、次に酒(エタノール)をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送します。

 医師による急性中毒の診断では、発症者の話をよく聞いて、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切です。それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、目などの症状と代謝性アシドーシスが診断の手掛かりになります。視力障害がみられる時は、視神経の委縮と視野の狭窄の有無を調べます。慢性中毒の場合は、目の所見と尿中のメタノールの量を調べます。

 急性中毒の治療では、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。メタノールもエタノールもアルコール脱水素酵素などの同じ酵素で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなるためです。また、必要に応じて胃洗浄を行ったり、下剤を投与して、メタノールを排出させるようにします。

 重症の場合には、人工透析を行って血液中のメタノールを取り除く場合もあります。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行います。


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遺精

■性行為、自慰行為によらず、ほとんど無意識のうちに射精が生じる現象

 遺精とは、性行為、自慰行為などによらず、ほとんど無意識のうちに射精が生じる現象。

 睡眠中に遺精を生じることがありますが、これを夢精、あるいは夜間遺精と呼んでいます。遺精は昼間に突然、起こることもあります。

 夢精には、睡眠中に性的な夢を見てオルガズムを伴い、勃起(ぼっき)してから射精する場合と、性的な夢、オルガズム、勃起を伴わない場合があります。10~16歳くらいの思春期の男子に多くみられる生理的現象で、疾患ではありません。まれには、精嚢炎などで起こることもあります。

 思春期には、精液の成分を作っている精嚢腺(せいのうせん)や前立腺が分泌液を大量に作るため、自律神経を介する射精反射が起こることが原因と考えられています。とりわけ夜間は、膀胱(ぼうこう)が尿で充満するため、これに接している精嚢腺や前立腺が圧迫されて夢精が発生すると考えられています。

 かつては思春期を迎えると、夢精で精通を経験する比率が高かったとされていますが、近年は自慰行為を覚えるのが低年齢化しており、夢精を経験せずに自慰行為を始めるケースが多いと見なされています。一般的に自慰行為を頻繁に行うと夢精を経験する割合が下がり、年齢とともに少なくなっていくのが普通。一説には、成長に伴い過剰な精液の成分を排尿時に一緒に排出する能力が備わるため、夢精によって排出する必要がなくなるからといわれます。

 夢精が毎晩起こったり、遺精が頻繁にみられるようになると、病的な遺精といえます。その原因となる疾患としては、脊髄(せきずい)神経疾患、精嚢炎、前立腺炎、極度の精神的疲労、神経衰弱、性的神経症、禁欲などが挙げられ、治療が必要な場合もあります。

 一説には、精神的疲労や肉体的疲労がたまっている際には、筋肉の硬直から遺精が引き起こされやすいといわれます。

■遺精の検査と診断と治療

 病的な遺精は、その原因となる脊髄神経疾患、精嚢炎、前立腺炎などの疾患を治すことが必要ですので、泌尿器科の専門医を受診します。精嚢炎、前立腺は細菌などによって炎症が起こるもので、あらゆる年代の男性に起こります。

 極度の精神的疲労、神経衰弱、性的神経症が原因となることもありますので、できるだけ精神的な過労を避けるように努めることも大切です。


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亀頭包皮症

■陰茎の亀頭部と包皮に炎症が生じる疾患

 亀頭(きとう)包皮炎とは、男性の陰茎の先に当たる亀頭部と、陰茎を包んでいる皮膚に当たる包皮に炎症を生じる疾患。亀頭が包皮に包まれている包茎の場合に多く、細菌感染などで炎症が起こります。

 小児の亀頭は、通常、包皮に包まれています。そのため亀頭と包皮の間にカスやアカがたまりやすいために、亀頭包皮炎を発症します。おむつをしている乳児には、しばしばみられます。

 症状としては、亀頭と包皮が赤くはれて、うみが出たり、排尿の時に痛がります。おむつやパンツには、黄色いうみが付きます。

 成人の場合も、主に亀頭と包皮の内側の間にアカがたまることによって、細菌などに感染し発症します。包茎があると発症しやすくなりますが、包茎がなくても発症します。セックス、オーラルセックスの際、気付かないうちに亀頭に傷ができてしまい、その傷が治る前に細菌が入って発症することもあります。女性からカンジダや淋菌(りんきん)などの細菌や、単純ヘルペスウイルスを移されて、発症することもあります。

 これ以外にもいろいろな原因があり、尿や薬品などが原因で起こるアレルギー性のものもあります。

 症状は、どんな細菌、ウイルスが入るかによって違うところもあり、どんな細菌、ウイルスでも同じに出る症状もあります。軽度のものは、亀頭と包皮のかゆみ、痛み、はれ、発赤、焼けるような感じが現れます。高度のものは、びらんを作り、うみを持つことがあり、排尿時に痛みを発します。時に出血することもあります。

 カンジダに感染した場合は、亀頭部の付け根に当たる環状溝や包皮に、白っぽいカスが付着し、かゆくなるのが特徴です。淋菌に感染した場合は、黄色いうみ状の液が出るのが特徴です。ヘルペスに感染した場合は、痛みを伴う水疱(すいほう)ができて、破れます。アレルギー性のものでは、かゆみとむくみを伴い発赤します。

■亀頭包皮炎の検査と診断と治療

 亀頭や包皮に発赤、はれ、痛み、かゆみが現れたならば、小児科、あるいは泌尿器科の専門医を受診します。

 小児の場合は、小児科医、泌尿器科医が診察すれば容易に診断できるので、特別な検査は不要です。成人の場合は、いろいろな原因があり、症状だけでは診断できないことも多くなります。性器に皮膚疾患を示しているカンジダ症などの原因疾患について調べ、尿の検査を行うこともあります。ラテックス製コンドーム使用の有無を問診することもあります。治りにくいものでは、基礎疾患に尿道炎や糖尿病、免疫病、腫瘍(しゅよう)がないか組織検査を行うこともあります。

 治療では、無理のない範囲で包皮をむいて、分泌物や退廃物を洗浄したり、うみを出して消毒したりした後で、抗生剤の軟こうを塗ります。びらんを作っているなど炎症が強い時には、抗生剤の内服が必要なこともあります。カンジダが原因となっている場合は抗真菌剤、淋菌が原因となっている場合は抗生物質、アレルギー性の場合は抗アレルギー剤を使って治します。

 手で包皮をむいても亀頭が顔を出さないものを真性包茎と呼びますが、真性包茎で亀頭包皮炎を繰り返すと、皮膚自体が弱まり、皮膚が部分的に切れる包皮裂傷などの原因となります。この真性包茎で再発を繰り返す場合や、尿が出にくい場合、なかなか治癒に至らない難治性の場合、他の疾患の合併症などが生じた場合は、炎症が治まった時点での手術が考慮されます。手術には、包茎の環状切除または包皮形成術があります。

 小児の場合、治癒した後は再発を防ぐため、入浴時には皮をむいて洗うようにします。また、汚れた手で性器を触らないように注意します。成人の場合も、再発を防ぐためには、できるだけ性器を清潔に保ち、細菌やウイルスが広がりにくいようにすることが欠かせません。


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早漏

■パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

 早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

 男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

 性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

 すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

 これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

 「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

 例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

 基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

 元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

 ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

 ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

 これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

■早漏の検査と診断と治療

 精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

 早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

 包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

 陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

 薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

 近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

 泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。


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包茎

●包茎とはどういう状態なのか

 男性の包茎というのは、ペニス(陰茎)の先の亀頭部が包皮に包まれたままの状態を指し、包皮が亀頭に比べて小さいために翻転できないことです。

 この包茎には、包皮のむけ具合によって、いろいろな程度があります。大別すると、「真性包茎」と「仮性包茎」の二つがあり、真性は完全にむけないもの、仮性は平常時には亀頭を覆っているが、勃起時や包皮を手で陰茎部のほうにたぐれば、亀頭が簡単に出てくるものをいいます。

 一般的にいわれている仮性包茎は病的状態ではなく、むしろ、大部分の日本人男性が仮性包茎状態です。常に亀頭部が露出した状態はむしろ少数であることは、あまり知られていません。

 小児では、亀頭は完全に包皮に包まれているのが普通です。思春期以後から、包皮を押しのけて亀頭が表れるようになります。つまり、一人前の大人の男性として、ペニスの脱皮が図られるようになるのです。包皮に保護された温室から外界に出て、ペニスは幾多の試練?に合うことになります。

 思春期以後、ペニスがうまく発育して亀頭が露出すれば、問題はありません。そうはうまくゆかないから、困ります。

●包茎はなぜいけないのか

 幼児や小児では、ペニスは排尿さえできればよいのですが、思春期を迎えて性ホルモンが活発に働き始めると分泌物が多くなり、これが白く、黄色く、特殊な臭いがする恥垢(ちこう、ちく)となって、包皮の内側にたまってきます。清潔にしないでほうっておくと、包皮炎や亀頭炎を起こすこともあります。

 手を加えて包皮の翻転ができるなら、時々、皮をめくって、ぬるま湯とせっけんできれいに垢(あか)をとるべきです。もし炎症が起こっていれば、マーキュロを塗布します。きつい消毒液は、粘膜を痛めるので使用しないことです。 

 極端な包茎では、亀頭が包皮によってピッチリ覆われ、排尿障害を起こすことがあります。また、「篏頓(かんとん)包茎」の場合、無理に包皮を翻転させると、そのまま戻らなくなって包皮が腫脹(しゅちょう)し、亀頭に不快な痛みが生じます。

 これらは、睡眠中に起こったり、外陰部に強い圧力がかかったり、激しいマスターベーションを行った際などにみられます。処置としては、温湿布で局部のむくみをとってからぬるま湯で洗い、両手で包皮を整復すればよいでしょう。

 また、女性にとって都合が悪いということでも、包茎が問題となります。排尿ができて、射精するのみならば、包茎は男性にとってさほどの障害にはなりませんが、セックスパートナーとなる女性にも喜んでもらうためには、真性包茎、嵌頓包茎では支障が生じます。

 日ごろ包皮に包まれ、外界に接触していない亀頭粘膜は、すこぶる敏感なのです。ちょっとした刺激でも興奮して、射精が早く起こる早漏になりやすいのです。一般的に包茎の人の多数が早漏といわれるのも、粘膜が敏感なためで、セックスに対する経験不足によって、脳中枢での興奮刺激のコントロールができない点も加われば、女性にとって歓迎すべきことではありません。

 恥垢がたまりやすい包茎では、女性側の子宮内膜炎の原因にもなりかねません。また、男性側の包皮も皮膚炎を起こしやすく、女性と接触後、相手の体液やコンドームの潤滑剤により、アレルギー性の皮膚のかゆみ、発疹(はっしん)を起こすことがあります。亀頭粘膜も弱いため、粘膜感染しやすく、性病にかかりやすいと見なされます。

 包茎は早めに、適切に処置すべきです。子供のころから、排尿の時、適当にペニスをむいて用を足すように習慣づければ、包茎は自然に解消されます。

●包茎の手術と費用

 自分で処置できない時は、泌尿器科か外科の専門医に相談するのが望ましいでしょう。

 包茎手術に踏み切る場合、真性包茎、篏頓包茎では「生活に支障をきたす=病気」と判断されることが多く、健康保険が適用されます。自己負担額は1万円から3万円ほど。仮性包茎では、「生活に支障をきたす」というよりは「カッコ悪い」、「恥ずかしい」といった精神的問題と見なされるため、ほとんどの場合において健康保険は適用されません。

 一般の病院・クリニックの泌尿器科、外科での保険治療の対象になる手術方法は、背面切開法、または環状切開法です。背面切開法とは、包皮に縦の切れ目を入れることで、「とりあえずむける」ようにするための手術方法です。長い皮は短くなりません。真性包茎や篏頓包茎を仮性包茎にするための手術で、傷跡はあまり目立ちません。

 環状切開法のほうは、ペニスの周囲にグルッと一回り切れ目を入れて、余分な包皮を縫い縮める手術です。一般的には、クランプという器具をかぶせて、血管も一緒に切ります。傷跡は、背面切開法より目立ちます。

 手術は極めて簡単ですから、入院の必要はありません。手術後1~2日は局部の疼痛(とうつう)と不快感がありますが、我慢できないほどではありません。2、3日は尿に血が混じったり、排尿時に陰茎痛があることもありますが、過激な運動さえしなければ1週間で完全に治ります。 

 手術によって「ペニスがいびつになるのではないか」と心配する人も、いることでしょう。皮を切り取るだけの手術ですから、心配は無用。手術後、切断の残りの包皮の部分に浮腫(ふしゅ)を見ることがあっても、自分の手で圧迫すればすぐ取れるし、医師に相談すれば簡単に治してくれます。

 包茎専門の泌尿器科、形成外科、美容整形外科等の専門病院・クリニックで、手術を受ける選択肢もあります。健康保険は効かず自由診療になりますが、個人のペニスに合わせた丁寧な手術をしてくれます。女性の美容整形と同じイメージですので、縫合も丁寧で、一般病院の泌尿器科での手術に比べて、環状切開法での傷跡が目立ちません。また、血管の位置なども計算して手術してくれるので、出血も少なく、痛みも軽くなります。

 ちなみに、形成外科などの専門病院での手術費用は、だいたい以下の通りです。仮性包茎手術の相場は、おおよそ8万~16万円程度。真性包茎、篏頓包茎の手術の相場は、おおよそ20万円前後です。病院によっては、学割が適用されるところもあります。

 しかし、すべての専門病院が、上記の範囲におさまるわけではありません。手術を考えている人は、必ず病院でしっかりと説明を受けてください。


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勃起障害(ED)

■精神的、ないし身体的な原因で満足な性行為が行えない状態

 勃起(ぼっき)障害とは、性的な刺激を受けても、陰茎の形や大きさが不足したり、勃起を射精時まで維持できなかったりして、満足な性行為が行えない状態。勃起不全、ED(Erectile Dysfunction)、インポテンツ(性交不能症)とも呼ばれます。

 男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

 性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑菌が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

 すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。

 勃起障害は心因性(機能性)の障害と、身体的(器質性)の障害に大別することができますが、大部分は前者です。

 心因性障害は、基本的には体に異常がないものの、精神的な原因で勃起の障害を来します。具体的には、不安、ストレス、心の病、性器や性行為能力への不信、家の構造上の問題などが原因となります。勃起が起こるには基本的に性的な刺激が必要で、精神的ストレスなどがある時はいくら刺激を受けても、勃起を起こす大脳中枢神経、自律神経、ホルモン系などに悪影響を及ぼし、勃起のメカニズムが正常に作用しなくなります。

 身体的(器質性)障害では、糖尿病によるものが著しく増加しています。そのほか、脊髄損傷、脳障害、動脈硬化、高血圧、泌尿器疾患、内分泌機能障害、薬の副作用が、原因となっています。内分泌機能障害の一つには、男性ホルモンの低下が挙げられます。

■勃起障害の検査と診断と治療

 現在のところ、勃起障害には絶対的な解決策は存在しません。 状態が緊急を要したり、症状が重い場合は、医師へ相談することも選択肢の一つです。

 医師による心因性(機能性)障害の場合の治療は、カウンセリング、性的教育などが主体となりますが、薬物療法を用いることもしばしばあります。

 身体的(器質性)障害の場合は、陰圧式勃起補助具の使用や、陰茎プロステーシスの海綿体内埋め込み手術などがありますが、保険診療では認められていません。

 勃起障害の治療薬としては、労働厚生省にも認可されているバイアグラ(クエン酸シルデナフィル)や、レビトラ(バルデナフィル)が有名です。バイアグラの作用は、勃起のメカニズムのうちでサイクリックGMPの代謝を抑制します。このことで海綿体平滑筋の弛緩(しかん)が増強されるために、勃起も増強されます。つまり、勃起の増強剤であり、決して万能の薬ではありません。

 勃起に関する神経や血管の完全障害の人には、バイアグラは全く効果がありません。また、心臓病でニトログリセリンなどの血管拡張剤を使用している人では、死亡ケースも出ており使用できません。動脈硬化の強い人や高齢者などの使用にも、十分な注意が必要です。専門の医師にも相談の上、使用することが大切となります。

 なお、生活習慣の改善、禁煙・禁酒の実行、性行為時のちょっとしたアイデアで、勃起障害を解決したというケースもあります。


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移動盲腸

■盲腸部が固定されずに、ある範囲以上に移動しやすくなっている状態

 移動盲腸とは、大腸の始まりの部分に相当する盲腸が固定されずに、ある範囲以上に移動しやすくなっている状態。

 盲腸は腹腔(ふくくう)内において、成人前後に背中側の腹膜に固定されますが、正常な状態でも多少の移動性があり、上方約6cm、内方約2cmを生理的限界として移動します。移動盲腸では、先天的に腹膜固定が不十分なために腸間膜が延長し、生理的限界以上に移動しやすく、盲腸に異常な動きが生じます。

 20~30歳代の女性に多く、とりわけ、やせていて、胃下垂、遊走腎(じん)などの内臓下垂がある人に多くみられます。

 症状はないのが普通なものの、時には、右下腹部の慢性の張りや痛み、ガスがたまるための不快感、便秘と下痢を交互に繰り返す便通異常、腰痛、疲労感などを起こすことがあります。便に粘液が混じることもあり、まれに虫垂炎と間違われることもあります。

■移動盲腸の検査と診断と治療

 初診に適した受診科は、消化器科、内科です。

 医師による腹部の触診で、盲腸の盛り上がり、圧痛が認められることもあります。腹部超音波検査や腹部CT検査で、盲腸の移動を確認することができるものの、盲腸の移動量には個人差が大きく、正常な範囲を超えて移動していても問題がない人もいます。

 症状が軽い場合は、特別に治療を行わなくてもよく、食事に注意して適度の運動をすることで、体調を整え便通がよくなるようにします。症状が重い場合、以前は手術を行って盲腸を背中側の腹膜に固定したり、盲腸を縫い縮めたりしたことがあるものの、現在ではこのような処置を特にしないのが普通です。 疾患名としても、あまり使われなくなっています。


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外陰炎

■いろいろな原因により、女性性器の外陰部に発生する炎症

 外陰炎とは、いろいろな原因によって女性性器の外陰部に発生する炎症。

 外陰とは、性器の外側の部分である恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称です。この外陰部に、細菌やウイルス、かびなどの病原体が感染したり、薬物などの化学物質や腟からの下り物などが刺激になって、急性、慢性の炎症を引き起こします。

 外陰単独に発生することもありますが、多くの場合は膣炎を合併しており、その下り物の刺激に体の抵抗力の低下が加わって発症しています。糖尿病やアレルギーのある人は、特になりやすい傾向があります。また、高齢者や子供のように外陰部の皮膚や粘膜が弱い人でも、発症しやすくなります。

 初期の症状としては、かゆみですが、炎症が進むと赤くはれて痛みます。ただれたりすると、少量の出血をみます。炎症が慢性化すると、皮膚や粘膜が白っぽくなり、頑固なかゆみが続きます。

■外陰炎の検査と診断と治療

 外陰部のかゆみが現れて2〜3日しても治らない時は、婦人科あるいは産婦人科を受診します。頑固なかゆみが続く時は、外陰部の粘膜が白く硬くなる硬化性苔癬(たいせん)や悪性病変も考えられるので、必ず受診するようにします。

 医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰や腟分泌物中の病原体を検出します。糖尿病があると発症しやすいため、しばしば再発するような時は、糖尿病の有無も調べます。

 治療では、原因に応じて、細菌やウイルス、かびに効く抗生物質の入った軟こうを用います。時には、かゆみを止める抗ヒスタミン剤や、ステロイドホルモン含有の軟こうを用います。高齢者のように外陰や腟粘膜の弱い場合は、ホルモン剤を投与して強化を図ります。

 なお、外陰炎がある時は、局所を化粧せっけんなどで洗うと症状が悪化するので、お湯で洗い流すだけにするか、無刺激性のせっけんを使用するようにします。


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外反母趾

■足の親指の先端が小指側へ曲がり、痛みを伴う

 外反母趾(ぼし)とは、足の親指(母趾)の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態。通常、痛みを伴います。

 発生の原因としては、先天性あるいは遺伝性の解剖学的要素と、足の指に外から加わる環境因子とが組み合わさって発生したり、関節リウマチなどの疾患で発生します。
解剖学的要素とは、親指が人差指より長いエジプト型前足部であったり、親指の骨頭が巨大であったり、偏平足であったり、親指の骨が内反していたり、腱(けん)、筋(すじ)などの走行に異常があった場合などに出現します。環境因子は、窮屈な履物の常用であり、また路面や床面が硬くなったことが原因として挙げられます。

 男女の発生では女性が男性の10倍ぐらい発生し、好発年齢は初経期(13~14歳頃)と閉経期(50歳代)の2つのピークがみられます。また、前者には高頻度の家族内発生がみられます。

 足の親指の付け根関節において、親指のそれより先端が外反して小指側へ曲がると、関節の内側が突出して、時にはこの部分に炎症を引き起こし、痛みを生じます。そして、外反変形が進むと親指が人差し指の底側に入り込み、人差し指と中指の付け根関節の底側に痛みを伴うタコを形成します。発症の初期には、窮屈な履物を履いて行動した時しか親指の基部に痛みは生じませんが、症状が進むと、裸足で立っているだけで疼痛(とうつう)が出るようになります。症例によっては、親指以外の他の足指の骨頭部が痛んだり、痛みのあるタコができます。

■外反母趾の検査と診断と治療

 外反母趾に特徴的な症状で、ほぼ診断はつきます。そして、荷重時、非荷重時の足部X線撮影を行い、外反母趾角および親指、人差し指角を測定します。外反母趾角は15°以上、親指、人差し指角10°以上を病的と診断し、また親指の付け根関節の変形性変化、脱臼(だっきゅう)、亜脱臼の有無、側面像では偏平足のチェックも行います。

 外反母趾があっても、痛みがなければ特に治療はしないことが原則です。治療にも含まれますが、日常生活において窮屈な革靴、例えばハイヒールなどの履物をやめ、窮屈すぎない靴、材質が柔らかく、靴の先端が広くかつ足のアーチ構造が無理なく保持できるアーチ・サポートがあるものを選びます。

 そして、体重を増やさないこと、長時間の立位、歩行を避けること、親指の付け根関節の内反、外旋運動、足部の筋肉の強化訓練などを行います。症例により、靴の中に入れる足底挿板、靴型装具を作成する場合もあります。それで、痛みはかなり軽減されるはずです。

 治療用装具としてゴム、革、プラスチックなどを材料とした各種装具が開発されていますが、これらの装具を徹底して装着するのは無理なようです。そのためにかえって、鎮痛消炎剤の経口投与、湿布などが必要となったり、また、なるべく気に入った靴などを履きたい要望が多くなります。そのような人には、夜間のみでもよいので装具を付けるよう指導します。また、関節リウマチなどの疾患で発症している場合は、それに対する治療が必要です。

 手術療法は、保存療法をいろいろ行っても治療効果のない場合に行われます。手術法にもいろいろありますが、マックブライト法が一般的に行われています。これは軟部組織の手術を主体としたもので、親指の基節骨外側に付いている内転筋を切り離して、親指頸部(けいぶ)外側に移行するもので、比較的軽症の人に行われます。重症例には、親指の骨切り術を主体とするハーモン法、ミッチェル法が行われます。変形性関節症が強い症例では関節固定術が行われる場合がありますが、最終的な手術法と見なされています。


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機能性子宮出血

■性ホルモンの濃度の変化によって起こる、子宮からの不正出血

 機能性子宮出血とは、器質的な異常も血液の疾患もないのに、子宮から不正出血が起こる状態。機能性出血とも呼ばれ、月経以外で発生します。

 この不正出血は、性器に腫瘍(しゅよう)や炎症、妊娠など器質的な異常がなく、また出血傾向を起こすような血液疾患もないような人に起こるもので、妊娠可能年齢の初期と末期にみられることが多く、その20パーセントは思春期の女子にみられる思春期出血、50パーセント以上は45歳以上の女性にみられる更年期出血です。

 原因は、卵巣から出ている2種類の卵巣ステロイドホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの濃度の変化。卵巣ステロイドホルモンの分泌は、脳、下垂体、甲状腺(せん)、副腎(ふくじん)などの内分泌器官によって調節されているので、これらの部位に異常が起きれば卵巣の働きが異常になってホルモンの濃度が変化し、機能性出血が起こることになります。

 例えば、受験の失敗、失恋、家庭内のトラブルなどは、脳に影響し、脳から出る下垂体調節ホルモン分泌に異常が起こり、排卵が障害されるために不正出血が起こります。

 この機能性子宮出血には、エストロゲンの濃度が高くなった時に起こる破綻(はたん)出血と、エストロゲンの濃度が低くなった時に起こる消退出血に分けられます。よく起こるのは破綻出血で、エストロゲンの濃度が高いとプロゲステロンの濃度とのバランスが取れず、排卵が起こりません。その結果として、子宮内膜が厚くなった後、内膜は不完全かつ不規則にはがれて出血を起こします。

 また、排卵周期に起こる排卵性機能出血と、排卵のない時期に起こる無排卵性機能出血に分けられます。

 年齢との関係でみると、性腺機能の未熟な女子に起こる思春期出血は無排卵性機能出血が多く、破綻出血によるものがほとんどです。月経が始まって数年間、卵巣の働きがまだ完成されていないために、ちょっとした精神的ストレスで排卵が障害されて起こりやすくなります。繰り返し起こる場合や、長く続く場合は、貧血を起こし、根気がなくなったり、疲れやすくなり、また心臓にも負担がかかるので、早期治療が必要です。

 この思春期出血の75パーセントは、対症療法をするだけで治り、成人してからの結婚や出産にも差し支えのないものです。しかし、25パーセントくらいに多膿胞(のうほう)卵巣症候群などの治りにくい異常があり、これは早く治療を始めないと、不妊症になったり、早くに閉経してしまうという異常が残ります。

 45歳以上の女性にみられる更年期出血においては、性腺機能の低下に伴う機能性子宮出血が多くなります。これは排卵障害が原因ですが、破綻出血、消退出血いずれのパターンもあり得ます。

 思春期出血、更年期出血のほかに、月経の1週間くらい前に起こる出血も、機能性子宮出血のものが多く含まれています。この場合は排卵はあるのですが、黄体ホルモンが不足すると起こります。

 排卵の時期に一致して出血する、いわゆる中間期出血も機能性子宮出血のものです。これが毎月連続して起こったり、量が多ければ、ホルモン療法の対象になります。

■機能性子宮出血の検査と診断と治療

 機能性子宮出血が疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診します。子宮がんを始めとしてさまざまな重い疾患が隠れている場合もありますので、検査を受けることは大切です。

 医師は、基礎体温表の評価、血液検査による卵巣ステロイドホルモンならびに脳下垂体ホルモンの測定により、排卵の有無と卵巣機能を評価します。思春期の女子では、血液疾患などの全身性の出血傾向を伴う疾患ではないことを確認します。子宮がんなどの器質的疾患ではないことを確認するためには、内診、超音波断層法などの画像診断、子宮内膜細胞診、子宮内膜組織診などの病理学的検査が行われます。

 機能性子宮出血と診断されるのは、子宮からの出血があり、他の原因がすべて除外された場合です。

 発症者が苦痛を訴えている場合や、貧血などが合併している場合に治療が必要になりますが、軽度のものは経過観察だけです。治療では、投薬や注射によるホルモン療法、排卵誘発薬、止血剤、消炎鎮痛薬 経口避妊薬などが、機能性子宮出血の原因や状態に応じて用いられます。

 薬物療法でも改善がみられない場合は、子宮内膜の表面を引っかくようにして剥離(はくり)させる子宮内掻爬(そうは)を行うことがあります。大量出血でショックを起こした場合は、輸血をすることもあります。


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子宮筋腫

■女性の病気の中でも、特に多い病気

 子宮筋腫(きんしゅ)とは、子宮の筋肉にできる良性腫瘍(しゅよう)で、こぶのように硬い球形の腫瘍です。その90~95パーセントが子宮の体部に発生し、残りの5~10パーセントが子宮の頸部(けいぶ)に発生すると見なされ、子宮筋の内側にできる場合と外側に張り出してくる場合とがあります。

 女性の病気の中でも特に多く、35歳以上の女性では約20パーセントに認められることが知られています。年代的には40歳代に最も多く、ほとんどの場合30~50歳に発見されますが、ごく小さな米粒ぐらいの筋腫まで含めれば、過半数の人が持っていると考えられます。つまり、子宮筋腫があることに気付かないまま、過ごしている人も少なくないのです。

 子宮の壁は、平滑筋という筋肉でできています。妊娠によって子宮が大きくなったり、出産の時に陣痛が起こるのも、筋肉が伸縮するからです。この筋肉層にできる腫瘍が子宮筋腫で、平滑筋の細胞が異常に増殖するものです。

 なぜ、細胞が異常な増殖を始めるのか、その原因はよくわかっていません。しかし、初経(初潮)が始まった後に子宮筋腫ができてくることから、生まれ付き持っている素因に、エストロゲンなど女性ホルモンの影響が加わり、筋腫が成長していくのではないか、と考えられています。

 卵巣からの女性ホルモンの分泌が止まる閉経後では、子宮の縮小に伴って筋腫も退縮し、小さくなっていきます。

 筋腫がどの方向に育っていくかによって、子宮筋腫は3種類に分けられます。その種類によって、症状の現れ方にも違いがあります。

 一番多いのが、子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていく筋層内筋腫、次が子宮の外側に向かって成長する漿(しょう)膜下筋腫、そして、数は少ないのですが症状が一番強く現れやすいのが子宮の内側に向かって発育していく粘膜下筋腫。

 一般的には、子宮筋腫は月経がダラダラ続く、月経時の出血量が多い、貧血がある、月経痛がひどいなど、月経に関連した症状で気付くことが多いようです。月経が10日以上も続いたり、出血量が多くなって貧血を起こしたり、動悸(どうき)や息切れを起こす人もいます。

■3種類の筋腫で違いをみせる症状

 症状が一番強く現れやすいのが、粘膜下筋腫です。筋腫が子宮の内側に向かって発育するため、出血しやすく、まだ筋腫が小さいうちから出血がダラダラ続いたり、月経時の出血量が多いといった症状が現れやすいのです。逆に、内側に筋腫ができるので、外からは触れにくいのも特徴です。

 子宮筋腫があると妊娠しにくくなるといわれますが、粘膜下筋腫は胎児が宿る子宮の内腔(ないくう)に突き出てくるため、とりわけ妊娠しにくくなります。また、粘膜下筋腫が大きくなり、茎を持ってぶらさがるように子宮の中で発育すると、まれには腟(ちつ)の中に筋腫が顔を出すこともあります。

 こうした状態を筋腫分娩(ぶんべん)と呼びます。不正出血が続いたり、筋腫を伝わって腟の中から子宮の中に細菌感染が起こり、危険な状態になることもあります。実際、不妊症の検査で筋腫が発見される人も、大勢います。

 筋腫がかなり大きくなるまで症状が現れにくいのが、筋腫が子宮の外に向かって成長していくタイプ、すなわち漿膜下筋腫です。ふつう子宮は60~70gほどの重さですが、中には1kg、まれには2kgもの筋腫を抱えるようになる人もいます。

 外からしこりに触れるような大きさになっても、月経に関連したつらい症状がほとんどないことが多く、そのために見過ごされてしまうことも多いのが、漿膜下筋腫の特徴です。

 筋肉の中で筋腫が成長する筋層内筋腫の場合は、大きくなるにつれて、子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされていきます。そのため、月経痛や月経時の出血が多くなり、下腹部を触るとしこりがわかるようになります。

 しかしながら、筋腫がゆっくりと大きくなっていくと、自覚しにくいこともあります。「下腹部のしこりは、最近太ったからだろう」、「月経血が多いのは、自分の体質のせい」と、勝手に解釈していることも少なくありません。

■検査と診断、薬物療法と摘出手術

 病気は、ふつう治療するものです。しかし、子宮筋腫の場合は、どうなれば治療をするというはっきりした基準がありません。基本的には、自覚症状がどのくらいつらいかが、治療を受けるかどうかの判断基準になります。

 過多月経、不正出血などの出血傾向が強くて、次第に貧血がひどくなる場合、鎮痛薬が効かないような強い月経痛がある場合には、治療の対象になります。筋腫が不妊や習慣性流産、早産の原因になると考えられる場合も、対象になります。

 筋腫の大きさがこぶし大以上になった場合も、治療を考えるべきでしょう。筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、便秘になる、尿が近い、下腹部が張る、月経時以外にも下腹部痛や腰痛などに悩まされる、といったことも起こります。さらに筋腫が巨大になると、尿管を圧迫して腎(じん)臓から膀胱(ぼうこう)に尿が流れにくくなり、腎臓を悪くする水腎症になることもあります。

 子宮筋腫自体は良性の腫瘍なので、命にかかわることはありませんが、急激に大きくなったものや下腹部がいっぱいになるほど大きなものは、まれに肉腫などの悪性腫瘍の場合もあります。

 今は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)など画像診断機器が進歩しているので、子宮筋腫の有無は触診と超音波検査でほぼわかります。筋腫の中でもどの種類なのか、とりわけ子宮の内側に発育した粘膜下筋腫は診断が付きにくかったのですが、子宮内部の様子を外から観察し、診断をすることが可能になりました。

 治療には薬物療法と摘出手術という2つの方法がありますが、根本的な治療は手術になります。

 薬物療法は、ホルモン剤によって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を一時的に停止させる方法です。Gn-RH製剤と呼ばれる薬が使われ、月1回注射を打つ方法、1日に2~3回、鼻に噴霧する方法などがあります。これによって、筋腫の重さを半分から3分の2くらいまで縮小させることができます。

 しかしながら、この方法では人工的に閉経したのと同じような状態を作るため、更年期障害が現れ、骨粗鬆(こつそしょう)症のリスクも高めることになります。Gn-RH製剤を使うのは、半年が限度とされています。その後、半年治療を中断すれば、骨も元に戻り、骨粗鬆症のリスクも低下しますが、筋腫もまた元の大きさ近くに戻りますので、根本的な治療にはなりません。

 最近は、閉経が間近な人や、手術の前に月経を止めて貧血を治したり、筋腫を小さくさせる必要のある人などに対して、補助的な意味合いで使われることも多いようです。

 また、子宮に栄養を供給する子宮動脈を人工的に詰まらせ、筋腫を栄養不足にすることで小さくする、子宮動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。X線でモニターしながら、大腿(だいたい)部の動脈から子宮動脈まで細い管を挿入し、詰め物で血管に栓をします。まだ一般的な治療ではなく、一部の施設で試みられている段階です。

 手術で筋腫を摘出する場合は、筋腫のみを摘出して子宮を残す方法と、子宮ごと筋腫を摘出する方法とがあります。どの方法を選ぶかは、年齢や妊娠の希望の有無、筋腫の状態、症状の程度などによって決定されます。

 手術の方法も、おなかにメスを入れる開腹手術だけではなく、腟から子宮を取る手術や、腹腔鏡など内視鏡によって開腹せずに行う手術もあります。

 開腹手術によって腹部からメスを入れる方法は、大きな筋腫も摘出できるのが長所。半面、傷跡も多少目立ちます。

 子宮が握りこぶし大より小さくて癒着がなく、悪性腫瘍や卵巣嚢腫(のうしゅ)などの合併もなく、腟からの分娩を経験したことのある人ならば、腟のほうからメスを入れて子宮の摘出を行う腟式手術を行うこともできます。

 近年、急速に広まっている内視鏡による手術は、傷跡が小さいかほとんどなく、回復が早いのが長所です。

 子宮を残して筋腫だけを摘出する場合、子宮の内側に筋腫ができた粘膜下筋腫ならば、子宮鏡が使われます。腟から子宮の中に子宮鏡を入れ、電気メスで筋腫を少しずつ 削り取っていきます。筋腫はあまり大きくない4~6cm以下、筋腫が内側に飛び出していることなど、いくつかの条件があります。

 一方、腹部にいくつか穴を開けて細い管を挿入し、電気メスなどを操作して子宮筋腫を切除するのが、腹腔鏡手術です。子宮を丸ごと摘出することも、筋腫だけを摘出することも可能で、適応になるのは筋層内筋腫や漿膜下筋腫。

 なお、開腹手術でも内視鏡による手術でも、子宮を残せば、子宮筋腫の再発の可能性があります。特に20代、30代で手術をした人は、その後の長い年月、エストロゲンにさらされますので、筋腫が再発してまた大きくなる危険性があります。複数の筋腫があった人も、再発の危険性が高くなります。

 再手術になると、筋腫だけを取ることは難しいので、子宮の全摘手術を受けることになります。


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子宮頸がん

■40、50歳代に多く、若年層にも増加傾向

 子宮頸(けい)がんとは、子宮頸部の上皮から発生するがんのことをいいます。子宮頸部は、膣(ちつ)から子宮への入り口部分で、とっくりを逆さにしたような形をしている子宮の細い部分に当たり、その先端が腟の側に突き出ています。

 先端の部分と内方の部分では、上皮の組織が異なっています。腟の側に突き出ている先端部分は、皮膚と同じく、数層の平ベったい細胞が重なった扁平(へんぺい)上皮で覆われています。これに対して、子宮体部の側の内方部分は、粘液を分泌する一層の細胞である腺(せん)上皮(円柱上皮)で覆われています。

 一般にいう子宮頸がんは、約85パーセントが扁平上皮の細胞から発生する子宮頸部扁平上皮がんで、性成熟期に多く発症します。一方、腺上皮の細胞から発生する子宮頸部腺がんは、閉経後に多く発症します。子宮頸部扁平上皮がんは子宮膣部がん、子宮頸部腺がんは子宮頸管がんとも呼びます。

 発生したがんは初め、扁平上皮、あるいは腺上皮の中にとどまっていますが、次第に子宮の筋肉に浸潤。さらに、腟や子宮の周りの組織に及んだり、骨盤内のリンパ節に転移したりします。ひどく進行すると、膀胱(ぼうこう)、直腸を侵したり、肺、肝臓、骨などに転移したりします。

 子宮がん全体の中では、子宮頸がんは60〜70パーセントを占めています。30歳代で増え始め、40、50歳代で最も多くみられますが、20歳代の人や80歳以上の人にもみられます。とりわけ、性交開始が低年齢化するとともに若年者の発症が多くなっているために、平成16年4月の厚生労働省の通達で、子宮頸がん検診の開始年齢を20歳に引き下げました。

 死亡数は、激減しています。前がん病変での早期発見、早期治療のケースが増加し、がんになる前に治療がされるようになったことと、がんになったとしても、がんの進み具合を表す臨床進行期で0(ゼロ)期〜Ia期に当たる早期がんのうちに、約65パーセントが発見され、ほぼ100パーセント治癒するようになったためです。

 しかしながら、発生率は少なくなっていません。子宮頸部腺がんでは、検診で比較的発見されにくく、進行してから発見される場合もあります。放射線治療や化学療法が効きにくいなど、扁平上皮がんと比べると子宮頸部腺がんの予後は、悪い傾向にあります。

■ヒトパピローマウイルスの感染が誘因に

 直接、発がんと結び付く原因はまだわかっていませんが、いくつかの疑わしい因子はわかっています。以前から、多産婦に多いことが統計学的に証明されているほか、高リスクの因子として、初めての性交年齢の若い人、性行為の相手が複数いる人、喫煙歴のある人などが挙げられています。

 近年、注目されている高リスク因子は、性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス:HPV)。ほとんどの子宮頸がんで、このウイルスが組織中から検出されるため、がんの発生の引き金となると考えられています。

 ヒトパピローマウイルスは、いぼを作るウイルスの一種で、男性性器の分泌物などに含まれています。70種類以上あるタイプの中のいくつかのものが、前がん病変の形成や頸がんの発生に関与。一般に、ウイルスを持った男性との性交渉によって、外陰部、腟、子宮頸部などの細胞に感染します。

 外陰がんや腟がんは非常にまれにしか生じないのに対して、子宮頸がんは比較的多く発生します。とはいっても、実際に子宮頸がんになる人は、ヒトパピローマウイルスに感染した人の中の一部にすぎません。

 前がん病変が形成されても、軽度の場合は経過観察しているうちに、約70パーセントが自然に消失することも知られています。発がんには、ウイルスに感染した人の体質、すなわち遺伝子の不安定性や免疫なども関係しているようです。

 初期の子宮頸がんではほとんどが無症状ですが、子宮がん検診で行う子宮頸部細胞診により発見することができます。

 進行した際の自覚症状としては、月経以外の出血である不正性器出血が最も多く、特に性交時に出血しやすくなります。膿(うみ)のような下り物が増えることもあります。下腹部痛、腰痛、下肢痛や血尿、排尿障害、血便、下痢などが現れることもあります。

■がんの進行度で異なる治療法

 不正性器出血があったら、婦人科で検査を受けるのがよいでしょう。症状がなくても、年に1回程度は子宮がん検診を受けることが最善です。

 子宮頸がんの検査では、子宮頸部を綿棒などでこすって、細胞診用の検体を採取します。細胞診で異型細胞が認められた場合には、コルポスコープと呼ぶ膣拡大鏡で5〜25倍に拡大して観察しながら、疑わしい部分の組織を組織診用に採取し、病理学的に検査して診断を確定します。

 進行がんの場合は肉眼で見ただけでわかりますが、確定のために細胞診と組織診が行われます。さらに、内診、直腸診で腫瘍(しゅよう)の大きさや広がりを調べます。

 子宮頸がんの診断が付いた場合は、胸部X線検査、経静脈性尿路造影、膀胱鏡、直腸鏡検査を行い、臨床進行期が決定されます。腹部超音波検査、CT、MRIによって病変の広がりを調べることも、治療法の選択に当たって重要視されます。

 子宮頸がんの主な治療法は、手術療法または放射線療法。年齢、全身状態、病変の進行期を考慮して、治療法が選択されます。治療成績は手術、放射線ともほぼ同じですが、日本では手術が可能な進行期までは、手術療法が選ばれる傾向にあります。

 早期がんである0期に対しては、子宮頸部だけを円錐(えんすい)形に切り取る円錐切除術を行うことで、術後に妊娠の可能性を残すことができます。また、レーザーによる治療を行うこともあります。レーザー治療では、子宮頸部をほぼ原形のまま残し、術中まったく出血することなく、痛みもないので無麻酔下で行える利点があり、治療成績も良好です。妊娠の希望がない場合は、単純子宮全摘術を行うこともあります。

 進行期の中で浸潤が浅いIa 期の場合は、単純子宮全摘術が標準的ですが、妊娠を強く希望される人の場合は、円錐切除術のみが行われることがあります。

 明らかな浸潤がんのIa2期や、子宮の周囲にがんが広がるII期の場合は、広汎(こうはん)子宮全摘術が一般的です。広汎子宮全摘術では、子宮だけでなく、子宮の周りの組織や腟を広い範囲で切除し、通常は卵巣も切除します。40歳未満の場合は、卵巣を温存することもあります。摘出物の病理診断でリンパ節転移や切除断端にがんがあった場合は、術後に放射線療法を追加します。

 がんの浸潤が深く、広い範囲に及んで手術ができないIII〜IV期の進行がんの場合や、高齢者、全身状態の悪い人の場合は、手術の負担が大きいため放射線療法を行います。

 放射線療法は通常、子宮を中心とした骨盤内の臓器におなかの外側から照射する外部照射と、子宮、腟の内側から細い器具を入れて照射する腔内照射を組み合わせて行われます。外部照射ではリニアックというX線を用い、腔内照射ではラジウムに替わってイリジュウムが使われるようになっています。

 さらに近年、新しく有効な抗がん薬の開発が進み、主治療の手術や放射線療法を行う前に、原発病巣の縮小と遠隔転移の制御を目的にして、主治療前補助化学療法(NAC)も行われるようになりました。点滴で薬を投与するのが一般的な投与法ですが、子宮動脈へ動注する方法もあります。

 IIb期やIIIa期でも、先に化学療法を行ってがんを小さくしてから、手術することもあります。IIIb〜IVa期などの本来は手術ができない進行期のがんも、NACを行った後に、手術ができることもあります。NAC併用後に手術ができた場合、放射線療法単独の場合よりも治療効果が高いことが報告されており、最近ではNACを行うことが標準的になっています。


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子宮後屈

■通常は前方に傾いている子宮が後方に傾いている状態

 子宮後屈とは、通常は前方に傾いている子宮が後方に傾いている状態。子宮の後屈と呼ぶこともあります。

 子宮は骨盤のほぼ中央に位置し、通常は前方、すなわち恥骨側に前傾前屈の位置をとっていますが、時として後方に後傾後屈の位置をとる状態が子宮後屈であり、正常女性の約20パーセントに認められるといわれています。

 特に障害を伴わない場合は、疾患とは見なしません。かなり以前には病的と考えられて、不妊症や流産、腰痛を起こす原因になるとされ、手術が行われていた時代もありましたが、現在では治療の対象とは考えられていません。

 原因には、先天的なものと、子宮内膜症や骨盤内の炎症などの疾患によるものがあります。

 症状は、下腹部のだるさ、頻尿、排尿困難など。子宮の位置に問題があっても、特に症状がないことも多く、産婦人科の検査によって指摘され、初めて知るというケースも少なくありません。

 子宮内膜症などが原因で、子宮と直腸、あるいは子宮と骨盤腹膜とが癒着し、非可動性の子宮後屈になっている場合には、原因疾患による症状が現れることはあります。

■子宮後屈の検査と診断と治療

 子宮の位置が後屈であると、妊娠しにくい場合もあるので、不妊の症状があれば婦人科、産婦人科の専門医を受診し、相談するようにします。一般的には、子宮後屈で不妊になることは少なくなっています。

 医師の側では、内診や超音波検査により診断します。

 特に問題がなければ、治療の必要はありません。後屈は自然に治ったり、妊娠を切っ掛けに治ることもあります。しかし、後屈が子宮内膜症によって生じた場合は、ホルモン療法や手術を行います。ホルモン療法では、ホルモン剤を内服したり、鼻から噴霧することで治療します。手術は子宮内膜症の原因によって癒着がひどくなったり、卵巣がはれた場合に行われますが、根治手術、準根治手術、保存手術の別があります。

 また、出産により周辺の靭帯(じんたい)が緩み、子宮が後屈して軽い症状が見られる場合には、靭帯を鍛える運動を行うことで改善を図ります。


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子宮内膜症

■増えている3大子宮トラブルの1つ

 子宮内膜症とは、子宮内膜と同じ組織細胞が子宮内腔(ないくう)以外の部位に発生し、女性ホルモンのエストロゲンの刺激を受けて増殖する疾患です。

 子宮内膜症の大部分は骨盤内に位置する、子宮筋肉の中、子宮の外側、子宮の外の卵巣、卵管、S字結腸、骨盤腹膜、直腸、膀胱(ぼうこう)に発生し、その病変部は月経の際に、子宮内膜と同じようにはがれて出血します。

 生殖年齢にある女性の10~15パーセントに、子宮内膜症が存在するといわれていますが、特に最近増えています。子宮筋腫(きんしゅ)、子宮頸がんとともに、3大子宮トラブルの1つといえます。

 子宮内膜症が増えている理由としては、腹腔鏡検査が進んで診断能力が向上したため病気が見付かっていること、初婚年齢と初産年齢が上がっていること、出産回数が減少していることなどが指摘されています。

 なぜ、子宮内面の壁にあるべき組織が、子宮筋肉や子宮の外側、子宮の外など別のところに散らばって存在するのか。原因はよくわかっていませんが、子宮内膜移植説と体腔上皮化生説の2つが有力です。

 子宮内膜移植説は、卵管を経て逆流した月経血中にある子宮内膜細胞が腹腔内に到達し、腹腔面に生着するという説です。一方、体腔上皮化生説は、腹膜内の組織細胞がエストロゲンや月経血の刺激を受け、子宮内膜の組織細胞のように変化して、子宮内膜症が発生するというものです。

■症状の特徴は疼痛と不妊

 主な症状は、月経困難症と同じ疼痛(とうつう)で、月経時の腰痛、下腹部痛、下痢、または便秘などを起こします。月経時以外の排卵の時や、排便時、性交時に、痛みを感じることも多くみられます。

 また、子宮内膜症になると、不妊になる率が高いことがよく知られています。卵管や卵巣の周囲に病変が発生した場合には、癒着により卵管が狭くなったり、閉鎖したりします。それにより卵管の可動性が失われて、卵巣から排卵された卵子の卵管内に取り入れが損なわれるため、不妊症になることがしばしばあります。

 卵巣内で病巣が増殖すると、毎月、卵巣にチョコレート状になった古い血液がたまって大きく膨れ、いわゆるチョコレート嚢腫(のうしゅ)になります。この嚢腫は大きくなると破裂することがあり、突然の激しい下腹部痛や吐き気、嘔吐(おうと)、時に発熱などがみられることがあります。

 子宮内膜症は徐々に進行するとされていますが、長年に渡って変化しない場合もあります。また、妊娠、出産を契機に治ることもあります。閉経後は卵巣機能がなくなり低エストロゲン状態になるので、病巣は自然に委縮し、症状もなくなります。

■検査と診断と治療の方法

 激しい月経痛があったら、子宮内膜症を疑ってみるべきです。妊娠を望んでいるのに、なかなか妊娠しないことも一つのサイン。

 医師による診断は、内診、超音波検査、MRI、腹腔鏡検査などにより行われます。

 治療には薬物療法と手術療法がありますが、どちらを選択するかは、症状の種類、程度、進行度、年齢、子供をつくる希望の有無などを総合的に考慮して決めます。

 薬物療法としては、月経時だけ鎮痛薬を服用する対症療法があります。軽い子宮内膜症は、ホルモン剤を内服したり、鼻から噴霧することで治療します。

 また、経口避妊薬による偽(ぎ)妊娠療法、男性ホルモン誘導体のダナゾールやGnRHアゴニストによる偽閉経療法があります。偽妊娠療法は疑似的に妊娠したような状態にするもので、偽閉経療法は疑似的に閉経したような状態にするものです。ダナゾール、GnRHアゴニストの両薬はその作用は異なりますが、内膜の増殖を抑える働きがあり、一般に6カ月間、服用します。

 手術療法は、癒着がひどくなったり、卵巣がはれた場合に行われますが、根治手術、準根治手術、保存手術の別があります。

 根治手術は、子宮摘出と同時に、両側の付属器である卵巣、卵管を摘出する手術です。子供を希望せず、薬物療法が無効な重症例が対象となります。

 準根治手術は、子宮全摘と病巣の摘出を行う手術です。正常な卵巣を可能な限り残すことによって、術後の肩凝り、のぼせ、発汗などの卵巣機能欠落症状が防止できます。しかし、子宮内膜症の再発を完全に否定することはできません。

 保存手術は、病巣だけを摘出して子宮や卵巣を温存し、妊娠する能力を残すために行う手術で、開腹手術と腹腔鏡で行う手術とに分けられます。開腹手術では、病巣の摘出、形成、癒着の剥離(はくり)、子宮位置の矯正などが行われます。腹腔鏡下手術では、病巣の焼灼(しょうしゃく)、癒着の剥離、チョコレート嚢腫の摘出などが行われます。


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レイノー病

■手足の指が変色し、しびれや痛みを感じる疾患

 レイノー病とは、寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴う疾患。虚弱体質で比較的若い女性に多くみられ、左右対称に現れるのが特徴です。

 冷たい水に触る、冷気に触れるなどの寒冷刺激、精神的ストレスなどを受けると、指の先の細い動脈が過敏に反応、収縮して血液が滞るために起こります。なぜ細い動脈に過敏な発作が生じるのかは不明ですが、交感神経や副交感神経中枢の異常によると考えられています。

 こういうレイノー症状が、膠原(こうげん)病の人や、振動工具を使って作業をした人に起きることもあります。こちらはレイノー症候群といって、レイノー病と区別しています。

 レイノー病の症状は秋から冬に多くみられ、突発的に手の指が真っ白になり、次いでチアノーゼのように青紫色に変色し、通常10〜30分の経過で肌色に戻って正常に回復します。中には、白い変色のみを示したり、しびれ、冷感、痛みを左右の手に示す場合もあります。進行すると、足の指や口唇などにも症状が現れるようになります。重症な場合、指先の潰瘍(かいよう)や変形を起こすことがまれにあります。

■レイノー病の検査と診断と治療

 医師による診断では、症状からレイノー病を考えます。次いで、血液検査や血管造影により、膠原病や血管疾患などの基礎疾患を除外するための検査を行います。冷水に手を入れる冷水誘発試験や指尖(しせん)容積脈波・サーモグラフィーを行うこともあります。皮膚の色調変化が左右対称に突然生じ、ほかに原因と考えられる疾患がない時に、レイノー病と確定します。

 細い動脈に過敏な発作が生じる原因がわからないので、根本的な治療法はありません。薬物療法としては、さまざま種類の血管拡張剤を用います。重症の場合には、交感神経切除術が行われます。β(ベータ)遮断薬や経口避妊薬の使用は避けます。

 発作時以外には臨床的な問題はありませんが、症状の繰り返しを避けて悪化させないようにするには、手袋や靴下などで手足の保温を心掛け、寒冷刺激を避けます。また、たばこ、香辛料、コーヒー、紅茶などの刺激物も控えます。精神的ストレスをためない注意も必要です。

 一般的に予後は良好ながら、医師と相談しながら経過を追っていくことも必要です。当初は原因となる基礎疾患が不明であっても、数年後に膠原病などの疾患が明らかになることもあるからです。


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赤あざ(血管腫)

■皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤いあざ

 赤あざとは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見え、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

 異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

 この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。

 ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

 正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

 また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

 出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。この赤あざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

 自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

■赤あざの検査と診断と治療

 赤あざ(血管腫)を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

 医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

 カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

 顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

 即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

 単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。


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ウイルソン病

■脳、肝臓に銅が沈着してくる遺伝性疾患    

 ウイルソン病とは、体内に銅が沈着することにより、脳、肝臓、腎(じん)臓、目などが侵される疾患。その原因は、日常の食事で摂取された銅が肝臓から胆汁中へと、正常に排出されないことによります。

 常染色体劣性遺伝に基づく先天性銅代謝異常症であり、病名はウイルソンという人が見付けたことに由来しますが、進行性レンズ核変性症、肝レンズ核変性症とも呼ばれています。

 銅は微量元素の一つで、必須栄養素であり、過剰に摂取した場合、急性や慢性の銅中毒になります。その慢性銅中毒に、ウイルソン病はよく似ています。食物中の銅は、十二指腸や小腸上部で吸収されて、肝臓に運ばれます。肝臓において、銅はセルロプラスミンと結合して銅結合蛋白(たんぱり)質となり、血液中に流れてゆきます。また、脳や骨髄など全身の諸臓器に必要量が分布し、過剰な銅は肝臓から胆汁中、腸管中に排出され、平衡を保っているのです。

 しかし、ウイルソン病においては、この肝臓での銅代謝が障害されています。肝臓中に取り込まれた銅がセルロプラスミンと結合できないために、胆汁中へ銅が排出されず、肝臓にたまっていきます。そして、肝臓からあふれて血液中へ流れ出た銅が、脳、腎臓、目の角膜などへ蓄積します。

 近年、13番染色体上のATP7B遺伝子異常が、ウイルソン病の原因遺伝子として特定されました。ATP7Bは、肝臓に特異的に発現するATP依存性メタルトランスポーターで、この異常によってセルロプラスミンへの銅の取り込みが損なわれます。

 ウイルソン病の発症率は、3~4万人に1人と見なされ、日本全国で1500人の患者がいるといわれています 。発症率は、欧米諸国より高くなっています。年齢的には、3~15歳の小児期を中心に発症し、30~40歳で発症することもあります。

 肝臓の症状は、疲れやすかったり、白眼や皮膚が黄色くなったりして気付かれます。多くの場合は無症状で、血中GOT、GPTなど肝機能の異常を指摘され、発見されます。しかし、原因不明の急性肝炎とか慢性肝炎などと診断されることもあり、急激な肝不全状態となって、黄疸(おうだん)や意識障害などを生じ、急に死亡してしまうこともあります。肝障害は徐々に進行し、思春期過ぎには肝硬変になる場合が多くみられます。

 脳の症状の多くは、思春期ごろから現れます。初期においては、言葉が不明瞭(めいりょう)になり、何かをしようとすると手指が震えたりして、字を書くことや細かい作業が下手になります。

 さらに進行すると、表情が硬くなり、次第に歩くことができなくなり、ついには寝たきりになってしまいます。記憶力や計算力も鈍り、精神状態も不安定、無気力、うつ状態、統合失調症(精神分裂病)様の反応を示すようになります。

 目の症状としては、角膜輪(カイザー・フライシャー輪)をみます。黒目の周りに銅が沈着し、青緑色や黒緑褐色に見えます。この角膜輪が肉眼的にはっきり見えるのは、思春期過ぎです。

 これらの多彩な症状は、すべての罹病(りびょう)者に出るのではなく、無症状期の発症前型、 10歳以下の小児期に多い肝型、 10歳以降に多くて年齢とともに増加する神経型、 神経型と同様の傾向を示す肝神経型に分かれます。治療しなければ進行し、ついには、死亡したり、荒廃したりします。

■遺伝性代謝疾患ながら治療は可能 

 ウイルソン病は、遺伝性代謝疾患のうちでは数少ない、治療可能あるいは発症予防可能な疾患です。遺伝性代謝疾患は、いわゆる難病とされ、治療が不可能なものが多いのです。幸い、常染色体劣性遺伝性の疾患であるウイルソン病は治療ができ、早期発見により発症を予防することもできるのです。

 早期発見ためには、同じ病気を持つ血族の有無も重要になります。兄弟姉妹を検査すると、25パーセントの確率でウイルソン病であったりします。しかし、約30パーセントは突然変異でウイルソン病が発病するため、家族や血族発生のないこともあります。

 家族内検索により発見された小児の場合、発症前型に分類され、治療することにより日常生活や学校生活、就職などすべての面に渡って、正常者と同じ生活を維持することができます。

 ウイルソン病の診断は、問診や臨床症状から銅代謝異常の可能性を疑い、血清総銅量やセルロプラスミン濃度の低下、尿中排出量の増加、眼の角膜輪(カイザー・フライシャー輪)の証明などにより、銅代謝異常のあることを診断します。

 さらに、肝生検による組織診断、肝生検組織の銅染色、肝生検組織中の銅含有量の測定、胆汁中の銅濃度量の測定などにより、診断が確定します。

 治療法としては、銅を多く含む食事の制限を行う食事療法と、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン、メタライトといった銅排出促進藥(キレート薬)を服用する薬物療法が基本となります。

 食事療法としては、生涯に渡って銅含有量の多い食物の摂取を制限して、1日1・5ミリグラム以下の低銅食を指導します。銅含有量の多い食物として挙げられるは、貝類、レバー、チョコレート、キノコ類など。

 薬物療法としては、体内にたまった銅の除去、銅毒性の減少を目指して、銅排出促進薬による治療が、発症予防を含めて第一選択になります。この薬剤には副作用がありますし、生涯に渡って服用しなければなりません。

 また、肝障害や神経障害に対する対症療法も必要に応じて行われます。


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ウイルムス腫瘍

■染色体異常が原因で、乳幼児の腎臓に発生する悪性腫瘍

 ウイルムス腫瘍(しゅよう)とは、乳幼児の腎臓(じんぞう)に発生する悪性腫瘍。胎生期の未分化な腎組織から発生するので、腎芽腫、腎芽細胞腫とも呼ばれます。

 子供の腎臓に発生する腫瘍のうち、このウイルムス腫瘍が90パーセントを占めます。頻度は出生数1万2000~1万5000人に1人、年間では80~100人が発症していると推定されています。半数は2歳前に発症しており、90パーセントは5歳までに発症しています.発症率の男女差は、同等かやや女児に多い傾向があります。

 2つある腎臓のうち、ほとんどは片側に腫瘍ができます。まれには、左右両側にできることもあります。原因は染色体異常で、染色体の11番目の短腕の部で、がんを抑制する遺伝子が欠失している時に発症します。無虹彩症や半身肥大症、腎臓の奇形、尿道下裂、水腎症、停留精巣など、生まれ付きの奇形と合併しやすい特徴もあり、大人の腎臓がんとは根本的に違います。

 おなかに硬いしこりができ、膨らむのが、最も多い症状。疾患が進行すると、肝臓など近くの臓器へ広がったり、肺に転移することが多く、リンパ節、骨などに転移することもあります。治療法の進歩によって、早い時期に見付かればほとんどが治るようになったものの、予後不良組織群と呼ばれる全体の約10パーセントの腫瘍群は極めて治りにくいものです。

 しこりがかなり大きくなるまで自覚症状はあまりみられず、ほとんどが入浴時などに偶然、おなかのはれやしこりに家族が気が付いた時に、発見されます。わき腹に表面が滑らかで硬いしこりとして触れる特徴があります。呼吸によって、しこりが動くことはありません。

 一般に、しこりに痛みはありませんが、腹痛や吐き気が起こったり、血尿が出ることもあります。また、不機嫌、顔面蒼白(そうはく)、食欲低下、体重の減少、発熱、高血圧などがみられることもあります。 

■ウイルムス腫瘍の検査と診断と治療

 乳幼児のおなかに硬いしこりや、異様な膨らみを認めたり、腹痛を訴えて血尿がみられたら、ウイルムス腫瘍の可能性もありますので、すぐに小児科、あるいは泌尿器科を受診します。進行は比較的ゆっくりなものの、肺やリンパ節に転移しやすく、他のがんと同様に早期発見が大切です。

 医師による診断では、胸部と腹部のX線撮影のほか、超音波検査、CT検査、MRI検査を行い、腫瘍の大きさ、周囲への進展状態、リンパ節転移の有無などの情報を得ます。特にMRI検査は、腫瘍と血管との関係から腫瘍の外科的切除が可能かどうかを判断する上でも有用です。肺に転移していると、胸部X線写真で丸い不透明な影が認められます。

 血尿は症状としては多くはありませんが、顕微鏡的血尿は約3分の1にみられるとされています。無虹彩症、半身肥大症、尿道下裂などの奇形の合併をしばしばみることもあります。

 ウイルムス腫瘍は腫瘤(しゅりゅう)のできる固形性のがんの中では最も治療しやすく、新生児期に発見して手術で腎臓を摘出すれば、抗がん剤や放射線の治療を受けなくても、もう片方の腎臓が十分にその機能を果たし、完全に治癒することがあります。

 一般には、腎臓とともに腫瘤を摘出後、抗がん剤による強力な化学療法を行い、時に放射線照射を併用することによって、腫瘍の病変が完全に消失した状態が長期に持続します。手術前に抗がん薬による化学治療を行って腫瘤を小さくしてから、摘出することもあります。両側性のウイルムス腫瘍では、両方の腎臓を摘出せずに腎臓の部分切除を行い、腎臓の温存を図ります。

 転移がある場合でも、腫瘤がある腎臓を摘出して抗がん剤や放射線による治療を行うことで、かなり治ります。成人の腎臓がんと違って、肺への転移が致命的になることはありません。


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おたふく風邪

■耳下腺が腫れる合併症の多い感染症■ 

 おたふく風邪とは、ムンプスウイルスによる急性ウイルス感染症で、耳の前から下にかけての腫(は)れを特徴とします。しっかり腫れると、おたふくのお面のように、下膨れします。流行性耳下腺(じかせん)炎、ウイルスの名前をとってムンプスとも呼ばれます。

 感染者の唾液(だえき)から、飛沫(ひまつ)感染します。流行に周期性はなく、季節性も明確ではありませんが、春先から夏にかけて比較的多く発生します。かかりやすい年齢は1~9歳、とりわけ3~4歳。感染しても発病しない不顕性感染が、30~40パーセントの乳幼児、学童にみられます。

 耳の下の唾液腺の一種である耳下腺が腫れることで知られますが、ムンプスウイルスは、体中を回って、ほかのいくつかの臓器にも症状を起こします。

 突然、37~38℃の発熱が1~2日続いた後に、耳の下に痛みを訴え、片側の耳下腺が腫れてきます。子供は口を開けたり、触ったりすると痛がります。発熱せず、最初から耳下腺が腫れてくるケースもあります。

 一般的に、1~3日して、もう片方の耳下腺が腫れてきますが、4人に1人は片方の耳下腺しか腫れません。腫れは3日めぐらいがもっともひどく、その後、徐々にひいて、5~7日で消えていきます。

 発熱がある間は、水分を十分に与え、静かに過ごさせましょう。耳下腺の腫れたところは、冷湿布などで冷やして痛みを和らげます。食事は流動食、ないし軟らかい物とし、刺激物は避けましょう。特に酸っぱい物や香辛料は、耳下腺からの唾液の分泌を増加させ、痛みが強くなります。

 一度下がった熱が再発し、腹痛、嘔吐(おうと)、頭痛、精巣の腫れなどを生じた場合、無菌性髄膜炎、膵(すい)炎、精巣炎などの合併症が起きた可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。

 ムンプスウイルスに効く薬はありませんが、精巣炎を起こしていれば副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬を使ったり、頭痛や耳下腺の痛みに対し鎮痛薬を使うことがあります。

 おたふく風邪は合併症の多い感染症ですから、全身状態がよくても安静、保温、栄養など、乳幼児、学童に対する基本的な看護が大切です。


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臍炎

■新生児のへそに細菌が感染し、周囲にも炎症が及んだ状態

 臍炎(さいえん)とは、新生児の臍帯(へその緒)が取れたくぼみの部分に細菌感染が起こり、へそやへその周囲に炎症が及んだ状態。

 出生時に母胎と切り離された新生児の臍帯は、生後1週間〜10日で乾いて自然に脱落し、跡はすぐ皮膚で覆われたくぼみになります。このくぼみにたまった垢(あか)や汗、異物などに細菌が感染すると、臍炎が生じます。

 症状としては、へそやその周囲に発赤、はれ、痛みが起こったり、へそから分泌液や、うみが出てジクジクしたりします。出血することもあります。

■臍炎の検査と診断と治療

 へそやへその周囲が赤くはれている、分泌物が出ている、出血している、新生児が痛がるなどの症状が出ている場合には、早めに小児科を受診します。

 医師による治療は、感染した垢や異物を取り除き、うみを十分に排液しながら消毒を行います。さらに、抗生物質を服用したり、軟こうを塗布します。

 このような処置で通常は比較的短期間に治癒することが多いのですが、症状が長引く場合や再発を繰り返す場合は、ほかの病状を考える必要があります。

 胎生の初期では、臍帯が腸管や膀胱(ぼうこう)とつながっているために、まれに腸管の一部が臍部に残る臍ポリープを生じたり、膀胱とのつながりが臍部に残る尿膜管遺残を生じたりすることがあります。これらは臍炎とは別のもので、治りにくく手術が必要です。

 臍炎の予防としては、へその緒が取れたくぼみの部分がきれいに乾くまで、しっかり消毒します。入浴後に消毒し、滅菌ガーゼを張っておくのがよく、出産した病院でもらえる臍消毒セットを使い切るぐらいまでやっておくと安心です。


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臍帯ヘルニア

■へその部分の腹壁が生まれ付き欠損し、腸管などが脱出

 臍帯(さいたい)ヘルニアとは、生まれ付き欠損している、へその部分の腹壁から、腸などの腹腔(ふくくう)内臓器が体の外に脱出した状態。脱出した臓器は、羊膜、臍帯膠質(こうしつ)、腹膜の3層からなる薄い膜で覆われています。

 臍帯ヘルニアは、腹壁にできた穴の場所により臍上部型、臍部型、臍下部型の3つに分けられます。最も多いのは臍部型で、他の型と比較すると奇形の合併は少ないものの、穴が5センチ以上と大きい場合は腸だけでなく肝臓も出ていることがあります。臍上部型と臍下部型では、いろいろな種類の重い奇形を合併していることが知られています。

 全体でみると、50パーセント以上の症例で染色体異常、消化管、心血管、泌尿生殖器、中枢神経系などの重い奇形を合併しています。

 また、穴が小さく小腸の一部だけがわずかに出ているものは臍帯内ヘルニアと呼ばれ、重い奇形の合併は少ないものの、腸の奇形を伴うことが多く、治療する時に確認が必要です。

 原因としては、胎生早期の3〜4週の腹壁形成障害(腹壁形成不全説)と、胎生8週ころの中腸の腹腔内への還納(かんのう)障害(腹腔内還納不全説)の2つの説があります。肝臓の脱出を伴うような大きな臍帯ヘルニアでは腹壁形成障害、小さな臍帯ヘルニアでは還納障害が有力と見なされています。

 在胎20週ころの胎児エコー(超音波)により出生前に診断される場合が多く、出生後でも臍帯内に脱出した腸が認められるため診断は容易です。へその緒(臍帯)が極端に太いために異常に気付かれ、小さな臍帯ヘルニアが見付かることもあります。 発生の頻度は出生5000人に1人。

 症状としては、脱出した臓器を覆う薄い膜であるヘルニア嚢(のう)の表面が破れたり、細菌感染を起こしたりします。ヘルニア嚢が破れたものは、破裂臍帯ヘルニアと呼ばれます。

■臍帯ヘルニアの検査と診断と治療

 出生前診断で臍帯ヘルニアが疑われた場合は、新生児科と小児外科の専門医がそろった医療機関での出産が望まれます。出生後に診断された場合は、同様の医療機関への緊急搬送が必要です。搬送に際しては、ヘルニア嚢と脱出臓器が滅菌乾燥ガーゼで覆われます。

 医師による診断に際しては、破裂臍帯ヘルニアと先天性腹壁破裂との見極めが必要になります。他の奇形の合併の確認も大切です。

 臍帯ヘルニアの治療では、脱出している臓器を腹腔内に戻し、腹壁の穴を皮膚で覆う手術を行います。脱出臓器が少なければ、1回の手術で腹壁を閉めることができます。脱出臓器が多い場合や肝臓も出ている場合は、1回の手術では腹壁を閉めることができないため、何回かに分けて少しずつ臓器を腹腔内に戻します。通常、1~2週間で戻すことが可能です。

 生まれ付き心臓の疾患などの重い奇形の合併があり、全身状態が悪い場合は、生まれてすぐに手術をすることが危険なので、ヘルニア嚢を特殊な液で消毒しながら皮膚のように硬く強くなるのと、1歳を過ぎて体が大きくなるのを待って、腹壁を閉める根治手術を行います。


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サイトメガロウイルス感染症

■サイトメガロウイルスによって起こり、さまざま症状を生じる感染症

 サイトメガロウイルス感染症とは、ヒトヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス(CMV)に感染することによって、さまざまな症状を生じる疾患。

 サイトメガロウイルスは世界中で見られるウイルスで、その感染は直接的、間接的な人と人の接触によって起こります。感染源になり得るものとしては、唾液(だえき)、鼻汁、子宮頸管(けいかん)粘液、腟(ちつ)分泌液、精液、母乳、涙、血液、尿、便などが知られており、一見健康にみえる人からもウイルスの排出が起こることもあります。

 日本人の大多数は、誕生前の胎児の段階で母子間でサイトメガロウイルスに初めて感染し、潜伏した状態で体内にウイルスを保有します。この先天性感染では、胎児に重い後遺症を残すこともあり、重症の場合には肝臓のはれ、黄疸(おうだん)、出血などの症状に加え、小頭症や水頭症といった神経の異常も加わり、胎児や新生児が死亡することもあります。5歳ころまでに、難聴や知能の障害、目の異常などの症状が出てくる場合もあります。

 小児や成人の段階で初めてサイトメガロウイルスに感染する後天性感染では、症状が現れる場合でも発熱、肝臓やリンパ節のはれというような軽い症状がほとんどです。しかし、一度、サイトメガロウイルスに感染すると、症状が消えて治ったように見えても一生の間、体内に生きたサイトメガロウイルスが潜伏しています。

 疾患や薬など何らかの原因で免疫力や抵抗力が低下した状態になると、潜伏感染していたサイトメガロウイルスが再活性化して、ほとんどの人に症状が現れます。発熱、白血球減少、血小板減少、肝炎、関節炎、大腸炎、網膜炎、間質性肺炎などの症状が現れると重症になります。

■サイトメガロウイルス感染症の検査と診断と治療

 免疫状態や抵抗力が低下している場合は、治療が必要です。それ以外の場合は無症状か軽症のことが多く、治療が不必要なこともあります。

 医師による診断は、血清抗体の測定や尿などの臨床材料からウイルスを検出することで確定します。妊娠中に超音波検査などで胎児に異常が見付かった場合は、羊水のウイルス検査を行うこともあります。サイトメガロウイルスの遺伝子は健常人の組織中にもあり、無症状でウイルスを排出することもあります。

 治療では、ガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル 、アシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス剤、抗サイトメガロウイルス高力価(こうりきか)免疫グロブリン、ヒト型抗サイトメガロウイルス単クローン抗体などが用いられます。

 予防のためには、サイトメガロウイルスを含む唾液、母乳、膣分泌物、精液、血液、尿、便を介して人から人への感染が起こると考えられますので、これらの体液に触れた後は、よく手を洗うようにします。


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小児喘息

 季節の変わり目に悪化しやすいのが、この病気です。子供のうちに症状を改善させるためには、きちんと治療を続け、アレルギーを起こす物質である「アレルゲン」を生活から取り除くことが、大切となります。

●小児喘息の原因と症状について

 喘息(ぜんそく)とは、肺に流入する空気の通路に当たる「気道」に炎症が起こったために、空気の通り道が狭くなった状態を指します。

 小児喘息の原因のほとんどは、アレルギーです。気道にアレルギーを引き起こす物質である、ホコリやダニ、カビ、動物の毛といった「アレルゲン」が入ると、気道の粘膜が刺激されて炎症が起こり、小さな刺激にも過敏に反応するようになります。

 従来は3、4歳から小学生に多かった病気でしたが、最近では1歳以下の乳幼児にも発症が増えています。

 見られる症状は、軽いものから重いものまでさまざま。せきが出る。たんが出る。胸が圧迫される感じがする。呼吸が苦しい。息を吐く際に、のどがゼーゼー、ヒューヒューと鳴る。のどがイガイガする。ちょっとした刺激で、ひどくせき込む。風邪をひきやすい。

 こういった症状がもっとも悪化しやすい時季は、初夏や初秋といった季節の変わり目ですので気をつけたいものです。 

●どのような治療が行われるのか?

 医師による治療では、発作が起きないように薬物療法でコントロールすることが、重要と見なされます。炎症を抑える吸入ステロイド薬、アレルギー反応を弱める抗アレルギー薬などが、主に用いられています。

 霧状にしたものを口から吸い込むのが吸入ステロイド薬で、気道の粘膜に直接、薬が届きます。症状によって、吸入する量や回数は異なります。吸入した後、うがいで口の中に残った薬を洗い流せば、副作用が起こることはほとんどありません。抗アレルギー薬のほうは飲み薬で、吸入ステロイド薬と併用するケースがよくあります。

 こうした薬をきちんと服用し、気道の粘膜の状態を整えることで、喘息の発作を起こりにくくしますので、症状がよくなったからといって、勝手に薬をやめないことが大切。何かの刺激によって、大きな発作が起こることもあります。

 発作の時には、狭くなっている気道を広げる薬が用いられます。薬が効かず、ふだんと小児の様子が違う際には、すぐに医師の診断を受けてください。  

●日常生活における留意点について

 小児喘息は、きちんと治療を続ければ生活に支障がなくなります。薬の量を減らしたり、使わなくてすむようになることもあります。

 そのためには、ふだんの暮らしの中で、次のような点を心掛けましょう。まず、風邪に対する予防策を十分にとること。風邪を切っ掛けに喘息が悪化することが少なくないためで、日ごろから、うがいや手荒いを実践し、天気や気温の変化に気をつけましょう。

 次に必要なのは、原因となるアレルゲンを身の回りからできるだけ減らすこと。部屋のホコリやダニ、カビ、ペットの毛などがアレルゲンとなる場合には、こまめに掃除をしたり、ペットを室内で飼わないといったことが、悪化を防ぐことにつながります。

 アレルゲンになりやすい食べ物にも、要注意です。タバコの煙も気道を刺激しますので、家族は子供の近くでタバコを吸わないこと。また、周りの大人が気を配って、タバコの煙に子供を近付けないようにしましょう。

 これらに加えて、軽い運動を続けて体を鍛え、基礎体力をつけることも大切です。


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小児まひ

■ポリオウイルスで発症する感染症■

 小児まひは、ポリオ (Polio) 、脊髄(せきずい)性小児まひ、急性灰白髄(かいはくずい)炎(poliomyelitis)とも呼ばれ、ポリオウイルスによって発症する感染症のことです。

 ポリオウイルスが感染して、脊髄神経の灰白質という部分を侵すため、初めの数日間、発熱、頭痛、背骨の痛み、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が現れた後、急に足や腕がまひして動かなくなります。

 5歳以下の小児の罹患(りかん)率が高かったことから、一般には小児まひと呼ばれることが多いのですが、大人がかからないわけではありません。病原ウイルスは感染者ののどにいますが、主な伝染源になるのが感染者の大便とともに排出されたウイルスで、さまざまな経路で経口感染します。季節的には、夏から秋にかけて多く発生します。

 日本では1960年に新潟、北海道、九州で大流行し、61年から生ワクチンの服用が全国的に実施されています。1980年には、自然感染による小児まひが根絶され、現在ではポリオワクチンからの2次感染でしか発症していませんが、海外ではまだ流行している地域があります。世界保健機関(WHO)では、撲滅を目指しています。

 なお、日本国内での2次感染での発症は計12件で、2008年2月に北海道の男の乳児が発症、2000年に宮崎県で発生して以来のこととなりました。生ワクチンの服用では、弱毒化したポリオウイルスを体内に取り込んで免疫を作りますが、450万回に1回の割合で発症するとされます。


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シラミ症

■シラミが寄生して、皮膚がかゆくなる疾患

 シラミ症とは、シラミが人体に寄生し、皮膚を吸血するために、かゆくなる疾患。

 第2次大戦後、日本でも大流行し、DDTを頭から真っ白になるまで散布することで下火になりましたが、近年、幼稚園や小学校での流行がみられます。

 人間に寄生するシラミには、アタマジラミ、コロモジラミ、ケジラミの3種類があり、それぞれ寄生する場所が違っていて、それぞれに疾患名がついています。

 アタマジラミは、体長が2~4センチで主に頭髪に寄生し、0・5ミリほどの白い光った卵を産みつけます。毛に固着した卵は、フケとの区別がつけにくくなります。症状として頭皮のかゆみがありますが、自覚症状がない場合もあります。幼稚園や小学校で流行しているのは、このアタマジラミ症で、成虫の移動に伴って周囲に移ります。

 コロモジラミは、アタマジラミと形が全く同様で、下着の縫い目の間などに潜み、下着の繊維に卵を産みつけて増加します。成虫、幼虫ともに吸血しますので、激しいかゆみを生じます。この型のコロモジラミ症は、第2次大戦後には大流行したものの、近年ではほとんど発生していないようです。

 ケジラミは、体長が1ミリ前後と小型で主に陰毛に寄生するほか、わき毛、体毛、まゆ毛、まつ毛などにつくこともあります。虫自体は、毛根部に頭を入れていることが多く、見付けにくくなっています。卵は、たくさん陰毛に付着しているので、見付けられます。ケジラミの糞(ふん)で、下着に点状の赤黒い汚れがつくことで、気付くケースもあります。

 症状として陰部の強いかゆみがありますが、自覚症状のない場合もあります。性行為の時に感染する場合が多いものの、まれに家族内感染もあり、幼児の頭、まゆ毛にケジラミがついている場合もあります。

■シラミ症の検査と診断と治療

 近年、幼稚園児、小学校の児童を中心にアタマジラミ症が流行していますが、気が付くまでにかなりの日数がかかる場合や、医療機関を受診せずにすまそうとして治療開始が遅れるケースもあります。

 親、兄弟や友人などに発生していないかどうかを確認し、いじめの対象にならないよう、正しい知識を持って同時に治療を開始することが必要です。ケジラミ症の場合は、性行為のパートナーにも感染している可能性が高いので、確認して同時に治療します。

 医師による検査では、頭髪、陰毛部でシラミの成虫を捕獲するか、頭髪、陰毛部に固着したシラミの卵を確認すれば、診断確定です。アタマジラミの卵は肉眼でも大体見当はつきますが、顕微鏡で見ればはっきりわかります。

 治療では、フェノトリン(スミスリン・パウダー)という、非常に毒性が低くて人体にも使用できるピレスロイド系の殺虫剤を用います。頭髪部には1回7グラム、陰毛部には1回2グラム程度のフェノトリンのパウダーをまんべんなく散布し、約1時間後に入浴して、せっけんで十分に洗い落とします。これを3~4日に1回ずつ、3~4回繰り返すと、シラミは全滅します。パウダー以外にシャンプータイプもあります。

 フェノトリンは虫には効きますが、卵には効かないために、卵が孵化(ふか)する時間に合わせ、数回繰り返す必要があるのです。しかしながら、いくら低毒性でも殺虫剤なので、長時間そのまま放置することはよくありません。1時間あれば、成虫は十分に殺すことができます。

 シラミ症も家庭内感染を起こすので、治療は家族全員で行い、場合によっては、寝具や床などにも殺虫剤をまけば、たまたま人体から落ちたシラミによる感染も防ぐことができます。

 なお、アタマジラミとケジラミは頭髪、陰毛部に卵がついているので、毛を全部そり落とすことでも治療できます。


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先天性心臓病

■心臓と周辺の構造の先天的な異常で生じる疾患

 先天性心臓病とは、心臓や、その周辺の大動脈、大静脈の構造が生まれ付き異常なために生じる疾患。世界中どこでも、先天性心臓病の頻度は新生児の約1パーセントとほぼ同じ割合です。

 いろいろな種類があり、症状が軽くて放置しても心配のないものから、すぐに手術の必要な重症のものまであります。また、成人になってから初めて症状の出現するものもあり、手術によって完全に治るものばかりでもありません。

 すなわち、先天性心臓病は小児期のみの疾患ではなく、妊娠や次の世代への遺伝を含めた一生の疾患と認識することが大切。胎児の心臓は妊娠3週ごろから形成され始め、妊娠6週すぎに心臓、大血管の構造がほぼ完成します。この過程が障害され、構造異常が発生した状態が先天性心臓病です。

 原因としては、環境因子と遺伝の二つがあります。例えば妊娠1〜4カ月の母親が風疹(ふうしん)にかかると、胎児が感染しやすく、先天性心臓病を始めとする種々の異常を持った子供が生まれることがあります。一方、ある一つの先天性心臓病、例えば心室中隔欠損症がメンデルの遺伝の法則に従って遺伝することはありませんが、種々の先天性心臓病が家族性に発生しやすいことは知られており、多因子遺伝が関係していると考えられます。

 実際に環境因子と遺伝で原因がわかっているのは5パーセントくらいで、残りの95パーセントは原因不明であり、環境因子と多因子遺伝の相互作用によると考えられています。

 先天性心臓病の症状としては、ほかの心臓病と同様に、運動時および安静時の息切れ、動悸(どうき)、むくみ、めまいなどが起こります。先天性の場合の比較的特徴的なものとして、成長障害、チアノーゼ(低酸素血症)のほか、指先が膨らんで太鼓のばちのようになったり、心臓に接する前胸部が膨らんで盛り上がったりします。

 主に心不全を起こす先天性心臓病には、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症、動脈管開存症、大動脈縮窄(しゅくさく)症などの種類があります。主にチアノ-ゼを生じる先天性心臓病には、ファロー四徴(しちょう)症、大血管転位症、単心室、無牌(むはい)症候群などの種類があります。

 チアノーゼは、唇や指先が紫色になる現象。血液の酸素不足によるもので、主として右心系の静脈血が動脈内に混じり込んでいることを示しています。一般に、チアノーゼのみられる疾患は重症であり、心臓手術を行わなければ、小児期までに死亡することが少なくありません。

 また、心臓病は生まれ付きの異常のために、症状も乳児期から起こると考える人もいるでしょうが、多くの例は徐々に症状が出現し、成人になって初めて心臓病がわかることもあります。

■先天性心臓病の検査と診断と治療

 病歴、身体所見、X線、心電図の基本的検査により、多くの先天性心臓病はおおよその診断がつきます。より正確な診断のためには、心機図、超音波検査、CT検査(コンピュータ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像撮影法)などの無侵襲診断法が行われます。

 また、手術を決定するためには心臓カテーテル法を行い、内腔(ないくう)の圧測定、血液ガス分析、心血管造影を行う必要があります。

 先天性心臓病は自覚症状がないことが多く、幼児や小児期の健康診断や、ほかの疾患で病院を訪れた時に、発見されることが多く見受けられます。病状が出現してからでは、心筋、弁、肺などに不可逆的な変化が生じていることが多くなります。なるべく早期の診断が必要なので、これらの検診は積極的に受けるようにします。

 治療においては、心臓病の重症度に応じて、運動制限、減塩食、水分制限を行います。学校での体育実技、クラブ活動については、専門医による指導が必要。

 内科的には、心機能の低下に対する強心薬や利尿剤の使用、不整脈に対する治療が行われます。しかし、内科的治療には限度があり、一部の特殊な疾患を除いて根本的な治療は存在しません。

 外科的には、心臓の構造異常の多くは修復可能で、疾患の種類に応じて各種の手術法がとられます。例えば重い先天性心臓病に対しては、人工心肺を使った手術で、壁に開いた穴をふさいだり、血管や弁の異常を治します。この際、異常な部分を正常に修復する根治手術ができれば最善です。異常の程度が高度であったり、複雑な異常のために根治手術が不可能であったり、年少のためや合併症のために大手術に耐えない時には、一時的により簡単な待機的手術も行うこともあります。

 また、根治手術を行い、構造が正常に戻っても、心機能障害の低下や不整脈が残る場合もあります。人工構造物である人工弁、パッチなどの経時的な変化を観察しなければならぬため、定期的な通院が必要とされます。


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ダウン症候群

■染色体の異常により、体と精神の発達が遅れる疾患

 ダウン症候群とは、染色体の異常によって、精神遅滞とさまざまな体の異常が生じる疾患。ダウン症とも呼ばれます。

 22対の常染色体と2本の性を決定する染色体を合わせて46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態をトリソミーと呼びます。新生児で最もよくみられるトリソミーは、21番染色体が3本ある21トリソミー。ダウン症候群の症例のうち、約95パーセントの原因が21トリソミーです。

 卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。まれに、21番染色体と別の染色体が互いに切断されて結合している転座型や、受精後の初期細胞分裂の際に染色体の不分離が起こるモザイク型によって、ダウン症候群が起こることもあります。

 1866年に英国の眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンが初めてその存在を報告し、以来、本症例にみられる異常所見が多く報告され、現在のダウン症候群としての症状を導いてきています。しかし、1959年にフランス人のジェローム・レジューンによって、21番染色体がトリソミーを形成していることが初めて証明されるまでは、その原因は不明でした。

 日本では現在、新生児1000人に1人の割合でダウン症候群がみられます。母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、ダウン症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。

 ダウン症候群の子供では、精神と体の発達が遅れます。知能指数(IQ)には幅がありますが、正常な子供の知能指数が平均100であるのに対し、平均でおよそ50。聞くために必要な能力より、絵を描くなどの視覚動作能力が優れている傾向があるため、典型的には言語能力の発達が遅くなります。

 身体的な特徴として、特異な顔貌(がんぼう)と多発奇形が挙げられます。頭が小さく、顔は広く偏平で、斜めにつり上がった目と低い鼻を持つ傾向があります。舌は大きく、耳は小さくて頭の低い位置についています。手は短くて幅が広く、手のひらを横切るしわが1本しかありません。指は短く、第5指の関節は3つではなく2つしかないことが多く、内側に曲がっています。足指の第1指と第2指の間が、明らかに広くなっています。

 乳児期には体の筋力が弱く、軟らかいのも特徴で、身長、体重の増えもよくないことがあります。運動の発達も遅れ、歩行開始の平均年齢も2歳くらいになります。

 多くの合併症が知られていて、これらの程度が生命的な予後に大きく関係しています。約40パーセントに先天性の心臓疾患がみられ、多くに甲状腺(こうじょうせん)疾患が起こります。耳の感染症を繰り返し、内耳に液体がたまりやすいため、聴覚に障害が起こりやすい傾向があります。角膜と水晶体に問題があるため、視覚障害も起こしやすい傾向があります。そのほか、十二指腸閉鎖や鎖肛(さこう)といった消化管の奇形、頸椎(けいつい)の異常、白血病がみられることもあります。

 40歳以降には、アルツハイマー病でみられるような記憶喪失、知能低下の進行、人格の変化などの認知症の症状が高確率で起こります。

■ダウン症候群の検査と診断と治療

 ダウン症候群は、生まれる前に診断することも可能です。妊娠15〜16週ごろに、産婦人科病院で行う羊水染色体検査が相当しますが、妊婦は自ら医療側に進言しないと正式には行ってもらえません。

 ダウン症候群の乳児には、診断を促す特徴的な外見があります。確定診断には、乳児の染色体を検査して21トリソミー、あるいは21番染色体のそのほかの疾患を調べます。診断がついたら、超音波検査や血液検査などを行って、ダウン症候群に関連する異常がないか調べます。

 根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行います。検査で発見した異常を治療すると、それにより健康が損なわれることを防止できます。ダウン症候群の子供の死因の多くは心臓の疾患と白血病ですが、心臓の異常はしばしば、薬剤や手術で治療できます。

 重い合併症のないダウン症候群の子供は、元来健康で、温厚、陽気な性格であることが多く、訓練や教育により日常生活は可能となります。最近は、早期からの集団保育、集団教育が望ましいといわれています。家族の会などから情報を得ることも役立ちます。遺伝カウンセリングを受けることも重要で、特に転座型では親の片方が均衡転座保因者である場合もあり、次の子供の再発率を知るためには両親の染色体検査が必須です。

 ダウン症候群の子供の大半は、死亡することなく成人になり、平均寿命は約50歳といわれています。数十年前までは平均寿命が20歳前後でしたが、当時は循環器合併症の外科的治療ができなかったためであり、合併症と奇形を治療すれば健康状態は改善することができます。


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脱腸(鼠径ヘルニア)

■足の付け根などから腸などの臓器が脱出した状態

 脱腸とは、足の付け根の特に内側の部分や下腹部から、腸などの臓器が脱出した状態。脱腸は通称であり、医学的には鼠径(そけい)ヘルニアと呼ばれます。

 おなかを覆う腹膜が弱いことが原因になって、腹筋の圧力で臓器が脱出します。先天性(若年性)と後天性のものがあります。

 男性の場合、脱出した臓器は主に陰嚢(いんのう)に飛び出るため、袋が大きく膨らみます。女性の場合、または男性でも部位によっては、下腹部にポコッとした膨らみができます。膨らんだ部分によって、脱腸(鼠径ヘルニア)は細かく外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿(だいたい)ヘルニアに分けられます。

 体の中の至る所にできるヘルニアの中で最も多いのが外鼠径へルニアで、大部分は小児期、特に乳幼児期に発生し、右側、左側、そして両側の順に多く、男女比は4対1です。乳幼児の場合は、泣いた時、入浴させた後、おむつを取り替える時などに気付きます。

 胎児の段階で、袋状になっている腹膜鞘状(しょうじょう)突起というものが形成され、成長に従って陰嚢に下がってきて、本来であれば袋の口がふさがります。生まれ付き、袋の口がふさがっていなかったり、ふさがっていても不十分だったりすることが、先天性鼠径ヘルニアの原因になります。

 生後1年以内で自然に治る可能性がありますが、年を加えるにつれて、その可能性は少なくなります。また、学童期に近付いて運動が激しくなるにつれて、症状が著明になります。

 後天性鼠径ヘルニアは高齢者にみられ、加齢することで腹膜や筋肉が弱るために、小腸などの臓器が鼠径部分に脱出してきます。たいてい脱出する穴であるヘルニア門が非常に大きく、ヘルニアの内容部が大きく袋状に突き出ます。 起こしやすいのは、ふだんから立って作業することが多い人や、重い荷物を持ち上げることの多い人、便秘気味でトイレで気張る人、妊婦、前立腺(ぜんりつせん)肥大の人、せきやくしゃみをよくする人、太った人など。

 当初のうちは、腹に力を入れると下腹部に軟らかい膨らみを感じる程度で、手で押したり、横になってリラックスすれば簡単に引っ込のが普通です。しかし、何回も繰り返していくうちに、ヘルニア門が広がってきて突き出す部分が増え、痛みや便秘などの症状を伴うことになります。

 まれに、臓器の突き出した部分がヘルニア門で締め付けられて戻らなくなってしまうことがあります。これを嵌頓(かんとん)ヘルニアと呼び、締め付けられた状態が長期に及ぶと、血流の流れが妨げられて、腸が腐る壊死(えし)に至ることがあり、激しい痛み、嘔吐(おうと)などの腸閉塞の症状が出現します。

■脱腸の検査と診断と治療

 大人の脱腸(鼠径ヘルニア)の場合、放置していると悪化していく一方で、嵌頓ヘルニアにもなりやすいので、早めに消化器科、外科を受診します。乳幼児の場合も、見た目で気付きやすいので、早めに受診します。

 生後1年以内で自然に治る可能性がある乳幼児の鼠径ヘルニアの治療としては、ヘルニアバンドによってヘルニア内容物の脱出、増大を防ぎます。乳児ではヘルニアバンドをしているだけで自然に治る可能性があります。

 年長児や大人の鼠径ヘルニアの治療としては、一応、臓器が突出しないようにヘルニアバンドで抑える方法もありますが、常時装着しておく必要があるなど通常生活にかなりの負担を強いることになり、早いうちに手術を受けることが勧められます。

 臓器の突き出した部分が戻らなくなる嵌頓ヘルニアの場合、専門的な医師による整復処置でとりあえず元に戻りますが、整復処置をしても元に戻らない場合は、ヘルニア内容物の腸や精巣、卵巣などが血行障害に陥って障害される危険があるため、嵌頓を解除する緊急手術も考慮されます。

 乳幼児期の手術に関しては、生後3カ月以降であれば発見次第すぐ行う医療機関と、ある程度の年齢まで待機して行う医療機関とがあります。未熟児で生まれた乳児では、手術可能な時期は生後3か月よりも遅くなります。

 整復処置で嵌頓が解除された場合も、ヘルニアの原因は修復されていないため、後に手術で原因となった構造を修復する必要があります。 特に女児の場合は、卵巣などの女性付属器が絶えずヘルニアとして飛び出していることが多く、手術は早めにしたほうがよいとされています。

 手術は大きく分けて、従来法の手術(バッシーニ法)、腹腔(ふくくう)鏡下手術、メッシュ法の3種類が行われます。

 従来法の手術は、腸管などの出てくる穴を周囲の筋肉を寄せて縫い合わせてふさぐ方法。入院が1週間と長い、術後に痛みがある、再発率が15パーセントと高いなどの問題があって、今はそれほど行われない手術法です。

 腹腔鏡下手術は、腹部に小さな穴を3カ所開けて、モニターを見ながら手術を行う方法。脱出部に、腹腔内からポリプロピレン製のメッシュで閉鎖固定をして補強します。手術時間が1時間と長いというデメリットがある。

 手術の主流となっているのは、メッシュ法。全世界の鼠径ヘルニア手術の90パーセントを占め、日本でも85パーセントを占めています。再発率が3パーセントと低い、手術時間が15~20分と短い、局所麻酔で行える、手術創が3~4センチと小さくて痛みが軽いなどのメリットがあります。

 メッシュ法の中のメッシュ&プラグ法では、脱出した小腸などを押し戻して穴にふたをするように、ポリプロピレン製のバドミントンの羽根のような形のプラグを入れ、さらに、鼠径管内にメッシュシートを入れて補強し、皮膚を縫合します。メッシュ法にはこのほか、リヒテンシュタイン法、クーゲル法、PHS(プロリン・ヘルニア・システム)法などがあります。

 脱腸(鼠径ヘルニア)は、立ち仕事の人、重い荷物を持ち上げることの多い人、せきをよくする人、妊娠している人、便秘症の人、太っている人がなりやすいといわれています。その点から、食生活で行う予防方法は以下の3点です。

 野菜を積極的に摂取。野菜は葉物と根の物をバランスよく、また赤、黄、緑、白など色合いも考えて1日350グラムは取るようにすると、肥満予防に結び付きます。

 食物繊維を十分に摂取。今日の日本人の食物繊維摂取量は1日平均15グラムですが、1日平均20~25グラムにします。そのために、豆類、海藻類、キノコ類、山菜類を積極的に取ると、バナナのような健康的な硬さの便になります。

 ヨーグルトやオリゴ糖を摂取。腸内の善玉菌であるビフィズス菌はヨーグルトで増え、オリゴ糖はビフィズス菌のエサになります。善玉菌が優位になると便秘知らずに。


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はしか

●10代、20代での感染が増加中

 はしかは麻疹(ましん)ともいい、麻疹ウイルスによって引き起こされる小児期に多い急性の感染症として知られていますが、近年は、10代、20代の若年者での感染が多く見られ、社会的にも関心を集めています。

 麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で、その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100パーセント発症します。一度感染して発症すると、一生免疫が持続するといわれています。

 毎年、春から初夏にかけて流行が見られ、感染してから約10日後に発熱や、せき、鼻水といった風邪のような症状が現れて、2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と赤い発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると見なされています。

 かつては小児のうちに、はしかに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。近年は2001年にあった以降、大きな流行がないことから、成人になるまで発症したことがない場合や、小児の時に予防接種をしたという場合でも、大人になって感染する例が目立ってきました。

 ワクチンの予防接種が、有効です。また、はしかの患者に接触した場合、72時間以内にワクチンの予防接種をすることも、効果的です。接触後5、6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えられる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、医師とご相談ください。


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発達障害

■脳の機能的な問題が原因に

 発達障害とは、乳児期から幼児期にかけての発達過程が何らかの原因によって阻害され、認知、言語、社会性、運動などの機能の獲得が障害された症状の総称。基本的には、脳の機能的な問題が原因で起こるものです。

 脳医学の進歩により、今までは落ち着きがない、集中力がない、親の躾(しつけ)がなってないといわれていた子供たちの脳に、発達の遅れや障害が見付かるようになり、それぞれの症状に応じて名称が付けられています。どの発達障害にも共通しているのは、人とのコミュニケーションが苦手という点です。

 多くの子供たちは成長とともに、障害を適切な療育や教育によって克服したり、投薬で自己コントロールの方法を学んでいきます。大人になっても発達障害の克服が難しい場合は、障害者手帳の交付などを受けて、福祉支援を受けることができます。

 発達障害の代表的なものとして、知的障害(精神発達遅滞)、広汎性発達障害(自閉症)、高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などがあります。

 発達障害の原因は遺伝子異常、染色体異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境などさまざまですが、多くの場合、はっきりとした原因はわかりません。養育態度の問題など心理的な環境要因や教育が原因となったものは、発達障害に含めません。

 学術的には、発達障害に知的障害を含みますが、一般的に、あるいは法律上は、知的障害を伴わない軽度発達障害だけを指します。平成17年4月に施行された発達障害者支援法も、知的障害者以外の軽度発達障害者だけを支援対象として規定しています。

 軽度発達障害は、高機能広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害の3つが代表的なものです。この軽度発達障害の子供では、障害の程度が軽く、一見普通と変わらないた、社会での認知度が低く、わがままや育て方の問題などとされていることが少なくありません。学童期の子供の5~6パーセントが軽度発達障害と考えられており、とりわけ教育現場での適切な対応が求められています。

■発達障害のそれぞれの症状

 知的障害(精神発達遅滞)は、年齢相応の知的能力がなく、社会的自立の上で支援が必要とされます。ダウン症など染色体異常によるものもありますが、原因が特定できないものも多くあります。人口の2~3パーセントが該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

 広汎性発達障害(自閉症)は、主たる兆候が幼児期に顕著。生後3年以内に下記の3つの兆候が同時にある場合に、自閉症と診断されます。(1)社会性の障害で、他者とのやりとりが苦手、他者の意図や感情が読み取りにくい、仲間を作ることが苦手。(2)コミュニケーションの障害で、言葉の発達が遅れる、おうむ返しが多い、会話が一方的で自分の興味関心事だけ話す、ごっこ遊びや物まね遊びができない。(3)こだわり行動で、興味の偏りと決まりきったパターンへの固執、同じ行動をいつまでも繰り返す。人口の0.5パーセント程度が自閉症に該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

 高機能広汎性発達障害 (アスペルガー症候群・高機能自閉症)は、自閉症と同じ幼児期の兆候を持ちますが、発達するにつれて症状が目立たなくなります。自閉症と診断されても、知的な遅れのないものが高機能自閉症で、さらに言葉の発達に問題を持たないものがアスペルガー症候群です。

 知的には標準またはそれ以上で、関心ある領域には博士並みの知識を持っていることがあり、自分の気持ちがすむかどうかへのこだわりがあります。また、動作が不器用であることが少なくありません。中核症状である社会性の障害は軽くはなく、仕事の得手不得手があり、あいまいなことの判断に迷うなど、社会的自立においては大きな問題を持ちます。

 注意欠陥多動性障害(AD/HD)は、(1)注意集中が難しい、(2)多動、落ち着きがない、(3)衝動的、思い付いたらた行動に移してしまうの3つが同時にある場合に、障害と診断されます。学業や社会的な活動に支障を来し、集団生活が始まると特徴が次第にはっきりしてきます。

 「注意集中が難しい」は、忘れ物が多い、気が散りやすい、指示に従えず授業を最後までやり遂げられない、気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避けるなどの症状を指しています。「多動」は、すぐに席を離れてしまう、手足をいつもそわそわ動かしている、しゃべりすぎるなどが特徴です。「衝動的」は、順番を待つのが難しい、他の人がしていることを遮ったり、じゃましたりする、すぐにキレて手が出てしまうなどの症状です。チックを伴っていることもよくあり、人口の3パーセント程度が該当すると見なされますが、薬物療法が著効する場合もあります。

 学習障害(LD)は、一般的な知的発達は標準またはそれ以上ですが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定能力の一部だけの習得と使用に困難を示し、学力の著しい偏りがあります。読み書きがとても不得意、数の概念がわからず計算ができない、テストの問題の意味がわからないといった症状がみられます。注意集中力や落ち着きがない場合や、不器用な場合もあります。人口の5パーセント程度が該当するというデータもあります。

 以上の発達障害の、それぞれの症状とは別に、周囲から障害を理解されないために、家族から虐待されたり、同級生や教師から不当ないじめにあったりすることが、少なくありません。それによって2次的に心因反応が起こったり、身体化症状が出たりすることがよくあります。

■一般的な治療法と生活上の注意

 児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師による診断では、面接や診察、質問用紙や発達テストなどを使って、症状を調べます。実際には、それぞれの病気がきちんと分かれて診断されるとは限らず、症状が重なっていることが少なくありません。

 また、それぞれのの発達障害に対する根本的な治療はなく、どのように社会に適応していくかということが大切になります。

 高機能広汎性発達障害は、基本的には治る病気ではありません。社会生活でのトラブルをたくさん経験することになりますが、青年期を上手に過ごすことができれば、その後の生活も安定して過ごせることが多いといわれています。

 注意欠陥多動性障害は、その約3分の1は自然に治ります。しかし、約半数は成人になっても障害を持ち続け、社会生活のトラブルの原因となることがあります。

 この注意欠陥多動性障害には、中枢神経興奮剤の塩酸メチルフェニデートが有効とされています。この薬には覚醒(かくせい)作用があり、多動を抑制し集中力を高める効果があります。

 しかし、効果は3~4時間と短いため、学校での生活に合わせて朝1回、あるいは朝昼2回服用とします。休日や夏休みには使用しないのが、一般的です。副作用として食欲不振、興奮、チック症状の悪化などがあります。実際によく使われていますが、日本の保険制度では効能、効果として注意欠陥多動性障害は認められていません。6歳未満の小児では安全性が確立していないため、使用しないことになっています。

 塩酸メチルフェニデートの効果がない場合、抗うつ薬のイミプラミンが有効なことがあります。また、中枢性降圧剤のクロニジンも有効なことがあり、特にクロニジンはチック症状にも効果があるとされています。

 薬物は根本的な治療ではないとして、治療に反対する意見もあります。アメリカでは、注意欠陥多動性障害の治療のために塩酸メチルフェニデートを投与されていた大人や子どもに死亡例があることを、食品医薬品局(FDAF)が公表し、注意を促しています。

 学習障害は、障害がなくなるということはありません。しかし、自分をきちんと理解し適切な仕事につければ、普通の社会生活を送ることができます。


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アルツハイマー型認知症

■認知症の代表的な疾患

 アルツハイマー型認知症とは、認知機能の低下と人格の変化を主な症状とする認知症の一種。認知症とは、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が持続的に低下した状態を指します。

 日本においては、認知症のうちで、アルツハイマー型認知症が最も多いタイプであり、全認知症の50~60パーセントを占め、85歳以上の20パーセントにみられる頻度の高い疾患です。続いて多い認知症のタイプとしては、脳血管性認知症、レビー小体型認知症が挙げられます。 

 1970年代では、認知症の原因疾患別の有病率は、脳血管性認知症がおよそ60パーセントで、アルツハイマー型認知症の2倍程度を占めていました。その後、脳血管性認知症の有病率が下がる一方で、アルツハイマー型認知症が増加し、現在ではアルツハイマー型認知症が50~60パーセント、脳血管性認知症が約30パーセントと逆転しています。 

 「アルツハイマー型」の名は、アルツハイマー病の最初の症例報告を1907年に行ったドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマーに由来しています。アルツハイマー病は、40歳代から50歳代中心の初老期に脳の変性委縮によって発症し、数年の経過で死亡するもの。

 このアルツハイマー病における脳の委縮と、60歳、ないし65歳以上の老年期で発症する疾患における脳の全般的委縮の変化が同じことから、後者は「アルツハイマー型老年認知症」と呼ばれるようになりました。

 現在では、初老期発症のアルツハイマー病(家族性アルツハイマー病)と老年期発症のアルツハイマー型老年認知症の間には病理学的な差はなく、発症を促進する因子に差があると考えられるようになり、通常は区別せずに「アルツハイマー型認知症」と呼ばれています。

 アルツハイマー型認知症の原因としては、脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉に、アミロイドという蛋白(たんぱく)の一種が蓄積していくことが疾患の始まりと考えられていて、さらにタウという蛋白も神経細胞の中に蓄積するようになり、神経細胞を壊していくことがわかっています。

 なぜこのような現象が起こるのか、アミロイドの産生高進や蓄積が発症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについては、まだ結論は得られていません。

 アルツハイマー型認知症は、加齢、老化と深い関係があり、65~69歳での発症はわずかですが、70歳以降、年を加えるとともに出現する頻度が高まっていきます。男女比は1:3で、女性に多くみられます。

 大脳皮質という知能活動の中核が第一義的に侵されることから、すべての認知機能が一様に低下し、その程度も大きくなります。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性、多弁であることが多くみられます。

 もう一つ重要なことは、アルツハイマー型認知症では、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点です。いつかわからないほど発症はゆっくりで、進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよいでしょう。

■中核症状と周辺症状

 症状は、発症者の全員にみられる中核症状と、発症者の一部にみられる周辺症状に分けられます。

 中核症状とは、脳の細胞が壊れることによって直接起こる症状で、物事を記憶し、考え、判断し、人と会話するといった日常生活に欠くことのできない能力である認知機能の障害であり、記銘力・記憶力障害、見当識(けんとうしき)障害、遂行機能障害が相当します。

 記銘力・記憶力障害においての記銘力とは物を覚える能力のこと、記憶力とは覚えた物をずっと保持しておく能力のことを意味し、この双方が著しく障害されます。最近自分が経験した出来事を覚えられず、覚えたとしても忘れる、電灯のつけっ放し、ガス栓の閉め忘れなどに始まり、進んでくると、食事を終えた直後に食事をしたことを忘れてしまって、再び要求したりするようになります。

 また、今話したことをすぐ忘れてしまうなど、日常生活や社会生活に重大な影響を与えることになります。これらの状態は、注意力散漫、自発性低下などによって、さらに増強されます。

 認知症で特徴的なのは、最近の事柄に対する記憶の障害が顕著なことです。対照的に、比較的昔の事柄、つまり遠い昔に記憶したことは覚えています。病気が進むと、過去に経験した記憶や、学習した記憶も失われるようになります。

 中核症状の一つの見当識障害でいう見当識とは、時、所、人などについて見当が付いていることを意味します。だから、見当識障害は、今日は何日で、今どこにいて、目の前の相手は誰か、などがわからなくなるもの。

 この障害は、認知症の初期の診断において、最も重要なチェックポイントとなっています。認知症のごく初期においては、記銘力、記憶力の軽度の低下を生理的、あるいは病的と明確に区別することは難しいのですが、生理的な老化の範囲では見当識障害はみられません。つまり、見当識障害の有無が、生理的な脳の老化と、病的な認知症を区別する、信頼できる症状なのです。

 また、入院や寝たきり状態の場合はともかくとして、その他の場合、日時を知らないこと、自分のいる場所を知らないことは、社会生活に重大な支障を来すことからも、認知症の症状として特に重要視されます。

 見当識障害が高度になれば、朝昼夕夜の区別もわからなくなります。場所についての見当識が障害されるために、入院患者では自分の部屋を忘れることがしばしば。徘徊(はいかい)癖のある例では、想像もできないほど遠方に出掛けて、帰ることができなくなり、交番などから問い合わせのあるケースもみられます。

 人に対する見当識障害も、はっきりしてきます。家族、あるいは同居している人を認識できなくなると、高度の認知症と見なされます。

 もう一つの中核症状である遂行機能障害が起こると、判断して決定することが困難になり、順番に段取りよく物事を進めたり、仕事を計画的に行うことが難しくなったりします。

 男性では買物へ行かなくなったり、好きでやっていたことをやらなくなったりしますし、女性では料理が困難になります。また、やらなくなったことに対してさまざまな言い訳をするようになります。

 周辺症状とは、本人がもともと持っている性格、環境、人間関係などさまざまな要因が絡み合って起こってくるもので、日常生活への適応を困難にする感情障害、思考力障害、行動異常、各種の精神症状があります。

 感情障害としては、感情が不安定になり、容易に興奮しやすくなったり、うつや不安感、無気力といった症状がみられます。

 思考力障害としては、中核症状と相まって、系統的に物を考えることができなくなります。判断力も低下します。連想も不十分となり、思考の内容が貧弱で、質問に対して同じ答えを繰り返すことが多くなります。頑固で、自分の考えに固執するようになることもしばしば。一方、自分の周りの状態を正確に把握していないため、質問に対して思いも寄らない答えを繰り返すこともあります。

 行動異常としては、無意味な、理解のできない行動が出現します。タンスの物を全部出したり、ご飯にお汁などの副食物を入れてかき混ぜたり、便所でない場所に排便したり、おしめの便をこね回したり、無断で家や病室を抜け出して遠方で見付けられたり、必要でもない物を買いあさったり、毎日同じ料理だけを作ったりなど、行動の異常は実に多彩です。

 精神症状としては、徘徊や、夜中に眠らずウロウロ動き回ったり、騒ぐといった夜間せん妄、妄想、幻覚といった症状がみられます。

 このような症状がゆっくり進行していきますが、時間によって、日によって、接する人によって、症状は大きく変化します。とりわけ一番熱心に介護している人に対して強く症状が出ることがあり、介護を大変にする大きな原因になっています。 

 さまざまな身体的な症状も出てきます。進行すると、歩行がつたなく小刻みになり、重度になると、摂食や着替え、意思疎通などもできなくなり、最終的には寝たきりになってしまいます。

■早期発見と治療

 アルツハイマー型認知症では、できるだけ早く発見して、治療を開始するとともに、介護保険を利用して社会資源を十分に使っていくことが、発症者本人にとっても、介護者にとっても大事です。家族が一人だけで看護し、介護し続けることは困難です。高齢者の場合どうしても年齢のせいと考えがちですが、おかしいと思ったら早めに医師に相談してください。

 医師による診断では、アルツハイマー型認知症の特徴的な症状に加えて、MRI(磁気共鳴画像)や脳血流シンチといった画像検査が参考になります。

 診断基準はいろいろありますが、一般的には、日常生活に支障が出る程度の、記銘力・記憶力障害、見当識障害、遂行機能障害という三つの中核症状がみられる時に、認知症と診断されます。周辺症状の有無は問われません。

 知能が以前と比べて低下していることが必須で、生まれ付き脳の器質的障害があり、知能発達面での障害や運動の障害などがある場合は、知的障害に分類されます。

 残念ながら、まだアルツハイマー型認知症の根本的な治療法はありません。アルツハイマー型認知症などの変性性認知症や、脳血管障害が原因の血管性認知症などほとんどの認知症では、治療によって病態そのものの進行を改善することはできず、現段階ではさまざまな治療法により進行を抑えることしかできません。

 近年、認知機能改善薬としてドネペジル(商品名:アリセプト)が開発され、アルツハイマー型認知症を中心として効果が期待されていますが、中核症状となっている狭い意味の認知機能低下、つまり記銘力・記憶力の際立った低下、見当識障害は、薬によって進行を遅らせることはできても、完全には治りません。

 アルツハイマー型認知症の発症者は中核症状のみならず、不眠、自発性低下、意欲減退、不安、焦燥、うつ状態、発語減少、情緒障害、幻覚、妄想、異常行動などの周辺症状を呈すことがありますので、その際は適宜、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗てんかん薬などの対症的な薬物療法が有効なこともあります。

 結局、認知症の治療で主体となるのは、薬物療法によって進行をできるだけ抑制しながら、心理社会的療法を積極的に行うことで残された認知機能を維持し、認知症の人のQOL(生活の質)を低下させないケアが主体となります。この心理社会的療法では、認知症の人に対するアプローチと同時に、家族や介護者に対するアプローチも並行して行われます。

 認知症を発症しても、薬物療法と心理社会的療法による早期治療によって、脳の代償機能と呼ばれるメカニズムが働くようにすることができれば、残された認知機能は維持され、社会生活機能を保つことは可能です。

 脳にはもともと、ある部位の機能が失われても、他の障害されていない部位の神経細胞がその機能を補うように働く代償機能が備わっており、たとえ脳の病変があったとしても、代償機能が働くことで発症を抑えたり、症状の進行を抑制することが可能なのです。 

 散歩などによる昼夜リズムの改善、なじみのある写真や記念品をそばに置いて安心感を与える回想法、昔のテレビ番組を見るテレビ回想法などが、不眠や不安などに有効な場合もあります。

 アルツハイマー型認知症の予防法としては、以下の食習慣、運動習慣、知的生活習慣が効果があることがわかっています。

 食習慣では、EPA・DHAなどの脂肪酸を多く含む魚の摂取、ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなどを多く含む野菜や果物の摂取、ポリフェノールを多く含む赤ワインの摂取などが、発症を抑えます。ほとんど魚を食べない人に比べ、1日に1回以上魚を食べている人は、発症の危険性が約5分の1であるというデータもあります。

 運動習慣では、ウォーキングなどの有酸素運動を行えば、高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増し、発症の危険性を下げます。ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している人は、全く運動しない人と比べて、発症の危険が半分になっていました。

 知的生活習慣も、発症の危険性を下げます。テレビ・ラジオを視聴し、トランプ・チェスなどのゲームをし、文章を読み、楽器の演奏をし、ダンスなどをよく行う人は、発症の危険性が減少するという研究があります。


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加齢黄斑変性

■高齢者の失明原因となる疾患の一つ

 加齢黄斑(おうはん)変性とは、眼球内部の網膜にある黄斑が変性を起こして、視力が低下する疾患。加齢に伴って起こるもので、高齢者の失明原因の一つです。

 黄斑とは、光を感じる神経の膜である網膜の中央に位置し、物を見るために最も敏感な部分であるとともに、色を識別する細胞のほとんどが集まっている部分。網膜の中でひときわ黄色く観察されるため、昔から黄斑と呼ばれてきました。

 この黄斑に異常が発生すると、視力に低下を来します。また、黄斑の中心部には中心窩(か)という部分があり、ここに異常が発生すると、視力の低下がさらに深刻になります。

 加齢黄斑変性には、網膜よりさらに外側に位置している脈絡膜から、異常な血管である新生血管(脈絡膜新生血管)が生えてくることが原因で起こる滲出(しんしゅつ)型と、新生血管は関与せずに黄斑そのものが変性してくる非滲出型(委縮型)の二つのタイプがあります。

 新生血管とは、網膜に栄養を送っている脈絡膜から、ブルッフ膜を通り、網膜色素上皮細胞の下や上に伸びる新しい血管です。正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。

 滲出型加齢黄斑変性の初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。

 病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。また、片目に病巣が認められたら、4割程度の人では経過とともに両目に発症するといわれています。医師に本疾患と診断された人は、良いほうの目も定期的に診てもらうべきです。

 非滲出(委縮)型加齢黄斑変性の場合は、黄斑の加齢変化が強く現れた状態で、網膜色素上皮細胞が委縮したり、網膜色素上皮細胞とブルッフ膜の間に黄白色の物質がたまったりします。病状の進行は緩やかで、滲出型と比較すると視力低下の程度も軽度であることがほとんどで、視力はあまり悪くなりません。

 しかし、新生血管が発生することもあるので、定期的に眼底検査、蛍光眼底検査を行い、経過をみる必要があります。特に、片目がすでに滲出型加齢黄斑変性になっている場合は、注意深く経過をみなければいけません。

 加齢黄斑変性は高齢者に多く発症することから、黄斑、とりわけ網膜色素上皮細胞の加齢による老化現象が主な原因と考えられています。また、はっきりしたことはわかっていませんが、高血圧や心臓病、喫煙、ビタミンやカロチン、亜鉛などの栄養不足のほか、遺伝の関与も報告されています。しかし、加齢黄斑変性の原因と病態は完全には解明されておらず、現在もなお、さまざまな研究がなされています。

 もともと加齢黄斑変性は欧米人に多く、日本人には少ない疾患でした。その主な理由としては、欧米人の目が日本人の目に比べて、目の老化を促進する原因となる光刺激に弱いことが挙げられます。アメリカでは現在、本疾患が中途失明を来す疾患のトップです。

 最近では、日本でも発症数が増加の一途をたどっており、日本人の平均寿命の延びが原因として挙げられています。食生活を中心に生活様式が欧米化したことや、TVやパソコンの普及により目に光刺激を受ける機会が非常に多くなったことも、原因の一つと考えられています。日本人では、女性の約3倍と男性に発症しやすいことを示す研究報告もあります。

■加齢黄斑変性の検査と診断と治療

 健康診断で、加齢黄斑変性が早期に発見されることもあります。50歳以後の中高年の人は、視力を保つために早めに検査を受けましょう。

 今まではあまり有効な治療法はありませんでしたが、近年、新しい方法が試みられるようになり、早期発見、早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきました。

 病気の診断、程度の判定、最適な治療を考える上で、医師による多くの検査が必要です。特に重要なのは、眼底検査と蛍光眼底検査。

 眼底検査は、眼底にある網膜の状態を詳しく調べるために行われます。検査の前に目薬をさして、瞳孔(どうこう)を開きます。まぶしくて近くが見えない状態が約3時間続きますが、自然に元に戻ります。

 蛍光眼底検査は、網膜や脈絡膜の血液の流れを把握する目的で行われ、腕の静脈に蛍光色素を注射してから眼底を調べます。蛍光色素によって血管だけが浮き彫りになりますから、血管の弱い部分や詰まった個所、新生血管の発生した位置を突き止めたり、病状の程度を判定したりすることが可能です。

 その他、主として脈絡膜の血液循環を調べるための特殊な造影検査もあります。

 加齢黄斑変性の治療では、レーザーによるレーザー光凝固術や、場合によっては手術が行われます。近年、経瞳孔温熱療法や光線力学療法などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この病気の予後の向上が期待されるようになってきています。

 レーザー光凝固術は、新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまいますので、新生血管が中心窩にある場合はほとんど実施されません。

 手術には、新生血管抜去術と黄斑移動術があります。新生血管抜去術は、新生血管を外科的に取り去る治療法です。新生血管が中心窩にある場合も実施されますが、中心窩を傷付けてしまう可能性もあります。

 黄斑移動術は、中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法です。新生血管が中心窩にある場合に実施されますが、物が二つに見えるなどの副作用が起こる場合もあります。

 新しい治療法の経瞳孔温熱療法は、弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇によって、新生血管の活動性を低下させる治療法です。

 光線力学的療法のほうは、光に反応する薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時にレーザーを照射する治療法です。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞(へいそく)します。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響を及ぼしません。継続的に行う治療法であり、3カ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施されます。

 薬物療法として、ステロイド剤や血管新生阻害剤などの投与が試みられています。効果を得るには繰り返しの投与が必要で、経瞳孔温熱療法との併用も考えられています。

 治療後の視力は、病状の進行度によってさまざまです。一般に早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にあります。黄斑の中でも特に重要な中心窩に病態が現れている場合は、視力の低下は著明です。

 治療後も、定期的に医師による目のチェックを受けるとともに、バランスの取れた食事で目の健康を保ち、全身の健康を維持しましょう。

 亜鉛の血中濃度の低下と加齢黄斑変性の関連が、指摘されています。加齢に伴って、亜鉛が含まれている食品の摂取量が少なくなるとともに、腸の亜鉛を吸収する力が低下してしまうことから、亜鉛不足になりやすいといわれています。亜鉛を多く含んでいる食品である穀類、貝類、根菜類を、なるべく摂取するようにしましょう。

 同じく、カロチン(カロチノイド)の摂取量が少ないと、加齢黄斑変性を発症しやすいという研究報告もあります。カロチンを多く含んでいるカボチャ、ニンジン、トマト、さやいんげん、ピーマンなどの緑黄色野菜を、なるべく摂取するようにしましょう。


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前立腺肥大症

■高齢男性のほとんどがかかる病気

 尿道が圧迫されて、排尿障害をもたらすことが知られている前立腺肥大症は、高齢の男性によく見られる病気です。

 年齢と深い関係にあり、40、50代で症状が出始め、60歳を過ぎると半数以上の人が夜間頻尿と放尿力低下を訴え、65歳前後で治療を開始する人が多くなります。そして、80歳までには80パーセントの人が前立腺肥大症になるとみられています。

 程度の差こそあれ、高齢の男性はほぼ全員が発症するため、男性の更年期症状とか、老化現象の一種という見方もできます。

 尿道付近の前立腺組織が肥大して、尿道を圧迫するために起こる病気であり、ガンとは違って良性の増殖ですので、生命にかかわるような病気ではありませんが、放っておくと尿閉といって尿が全く出なくなることもあります。

 症状には、第1期から第3期までがあります。

【第1病期(膀胱刺激期)】

 夜間にトイレに行く回数が多くなる、尿の勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる(排尿障害)などの症状が出てきます。

【第2病期(残尿発生期)】

 尿をした後もすっきりとせず、残っているような感じがする(残尿感)といった症状が出てきます。

【第3病期(慢性尿閉期)】

 昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになります。時には、尿が全く出なくなってしまうこともあります(尿閉)。

■前立腺肥大症の検査と診断

 前立腺肥大症は、男性であれば誰でもなる可能性があります。50歳を過ぎて尿の出が悪いと感じたら、一度泌尿器科の検査を受けてみてください。

 前立腺肥大症の診断には、一般的に次のような検査が必要です。

問 診

 自覚症状としての排尿障害の程度や、他の疾患との鑑別をするため、既往歴などを詳しく聞きます。

尿流量測定

 他覚所見として、排尿障害の程度を数値化して表します。

直腸診

 前立腺の大きさ、硬さ、表面の状態(なめらかさ・凹凸)がわかります。

超音波診断

 前立腺の腹側の状態、残尿のおおよその量も推定できます。

血液検査

(腫瘍マーカーの測定)

 腫瘍マーカー検査は、前立腺ガンとの鑑別のために行います。

■前立腺肥大症の治療法

【薬物療法】

 現在行なわれている薬物療法は、

1. 機能的閉塞に対するα1-ブロッカー

2. 機械的閉塞に対する抗アンドロゲン剤

3. 不安定膀胱に伴う刺激症状(頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁)に対する生薬・漢方薬があります。

 これらの3項目が基本となり、第一選択薬としてα1-ブロッカーを使用し、機能的閉塞を解除することから行われます。

■主な治療薬     

α1-ブロッカー

  排尿時は膀胱頸部の開大を助け、尿勢を増し、蓄尿時は膀胱の過活動を抑制し、日中および夜間の頻尿を軽減させます。 めまい・ふらつき・立ちくらみなどの低血圧に伴う症状が生じる場合があります。

抗アンドロゲン剤

 前立腺を縮小させ、腺腫による直接的な機械的閉塞を改善させます。 肝機能障害、性機能障害や女性化乳房などがあります。

生薬・漢方薬

 排尿困難、頻尿、尿意切迫、残尿感など複雑な自覚症状を改善させるといわれていますが、どのように作用するかは解明されていません。 軽度の消化器症状を認める程度です。

【手術的治療】

 手術に踏み切る一定した基準はありません。病期でいえば第2病期以降で、薬物療法で思うように症状が改善しない場合や、残尿が100ml以上あり、尿閉を繰り返すような場合に手術を考えます。

■主な手術法

経尿道的前立腺切除術(TURP)

 先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。 体内に入った灌流液が電解質のバランスを崩し、吐き気や血圧の低下などを起こすTURP反応と呼ばれる副作用が起こることがあります。

レーザー治療

 尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。 組織を焼いてしまうため、ガンの有無を調べられません。また、組織が壊死し脱落が起こるまで、症状の改善は見られません。

温熱療法

 尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF派やマイクロ派を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。 根治的な治療ではないため、半年から一年で症状はもとに戻ってしまいます。

尿道バルーン拡張法尿道ステント挿入法

 肥大結節によって狭くなった前立腺部の尿道を物理的な力によって押し広げたり、管を挿入して尿道を確保する方法です。 救急的な意味合いの強い対処療法と位置付けられているため、あくまで手術ができない患者さんのための処置です。

■前立腺肥大症にならないために

 前立腺肥大症の最大の危険因子は、加齢です。これを防ぐことは誰にもできません。しかし、身に着けたほうがよいと考えられている生活習慣が、いくつかあります。それらをご紹介します。

1.オシッコを我慢しない

 排尿を我慢すると尿閉になることあります。

2.体を冷やさない

  特に下半身を冷やさないようにし、骨盤内の血液の循環を常に良い状態に保つようにする。

3.適度な運動を

  血液の循環を良くし、前立腺のうっ血を予防する。

4.便秘に気を付ける

  膀胱も腸と同じ平滑筋なので、便秘の人は排尿状態が悪くなっている可能性があります。

■前立腺肥大症になったら

 すでに前立腺肥大症になってしまった方は、上記4項目に加えて下記のことも守ってください。

1. 薬には十分注意する

 薬の中には急性尿閉を起こすものがありますので、他の病院で診療を受ける時は、医師に必ず前立腺肥大症であることを伝えてください。

2. 水分を十分とる

 夜間頻尿を恐れるあまり、水分摂取を抑えると脱水状態になり腎機能障害を起こすことがあります。

3. 過度なセックスは控える

 神経質になる必要はありませんが、長時間にわたる過度なセックスなどは避けたほうが無難です。

4. 手術後は安静に

 水分を多めに取り、こまめに排尿することが大切です。また、手術した部分を圧迫するような運動は避けてください。


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パーキンソン病

■手足や体の震えと硬直

 パーキンソン病の主な症状は、両手足の震えと筋肉の硬直です。1817年、イギリスの病理学者であるジェームス・パーキンソンによって見いだされた進行性の病気で、以前は「振戦(しんせん)まひ」と呼ばれていました。

 神経系統のうち、筋肉の運動や緊張を調整している錐体(すいたい)外路系が侵されるために、運動調節機能が障害され、日常の行動や動作に変調を来します。近年の研究によれば、この錐体外路系の大脳基底核にある黒質(こくしつ)と線条体における「ドーパミン神経」の変性と脱落によって起こる、と明らかにされました。パーキンソン病の罹患者の脳中では、黒質で作られる「ドーパミン」という物質が減少しているのです。

 日本における有病率は人口10万人当たり50~100人で、65歳以上では500人に1人の割合で出現すると見なされています。

 また、この病気とよく類似した症状を現すものに、脳炎、脳動脈硬化症、一酸化炭素中毒・ガス中毒後遺症、梅毒、脳腫瘍(しゅよう)などが原因となって起こるものもあります。脳炎などの二次的なものも含めて呼ぶ際は、パーキンソン症候群と呼ばれます。

■症状をチェック

 40~50歳ごろから、徐々に発病します。最も特徴的な症状は、手足や顔の筋肉が突っ張り、硬くなることと、手足が震え、動作が緩慢になることです。

 まばたきが少なく、無表情となり、手足が硬くなる影響で、首を少し下げ、膝(ひざ)と肘(ひじ)を軽く曲げた特有の姿勢となってきます。手の震えは、親指と人差し指、およびほかの指を少し曲げたまま、丸薬を丸めるようにリズミカルに横ゆれするのが特徴。

 運動をすると、筋肉が硬くなって関節が動きにくくなる影響で、立ち上げるなどの動作がとてもゆっくりで、すくみ足による歩行障害も見られます。歩き始めようとしても第一歩がなかなか出ず、細かい足踏みをしてから初めて足を進めます。歩き方は、足を床にこすりつけるようにして狭い歩幅で歩く、小刻み歩行が普通。体が前かがみになり、バランスをとれずに、つんのめることもしばしばです。

■対策へのアドバイス

●医療機関での治療と経過

 パーキンソン病の薬物治療では、L-ドーパという有効な薬が見いだされ、そのほかブロモクリプチン、アマンタジンやアトロピン系の合剤が作られ、治療効果を上げています。ただし、筋肉の硬直、振戦、動作緩慢などは改善されますが、すくみ足はなかなかよくなりませんし、薬は病気を根本的に治すものではなく、症状を緩和させることを目的としています。

 ドーパミンの薬剤で効果が期待できない場合に脳外科手術も検討されますが、高齢者やあまりに障害の程度が高い場合には、手術の効果は期待できません。

 多くのケースでは、パーキンソン病は10年~10数年という長い経過をとり、末期には寝たきりとなって、老衰や肺炎などの合併症で亡くなります。

●家庭で根気よく療養に努める

 軽度の方については、散歩や体操を一定時間に繰り返して、リハビリテーションを行ってください。慢性進行性で治ることはありませんが、寿命にはさして影響はないと考えても、よいのではないでしょうか。

 罹患者は精神的に過敏、抑うつ、不安を持ちやすくなるので、周囲の温かい心配りが必要です。本人も家族も根気よく、家庭での療養に努めるようにしましょう。


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変形性膝関節症

■膝関節の軟骨が擦り減り、歩くと痛む疾患

 変形性膝(ひざ)関節症とは、関節の軟骨が傷んで擦り減り、歩く際に痛みが生じる疾患。老化変性を基盤として起こりますが、関節に過度の負担がかかったり、関節機構に異常があったりすると、軟骨の摩耗が加速されて、必ずしも中高年齢者でなくても発症します。

 関節軟骨は、関節の骨の表面を覆っている厚さ2~7mm程度の層で、正常では透明感のある白色に輝いていて、表面は非常に滑らかですべすべしています。水を含んだスポンジのように、関節の水分を吸ったり出したりすることで、体重の負担を分散するクッションとして、その衝撃を軽くしています。また、関節軟骨同士の接触面は、摩擦による抵抗が非常に少なくなっています。関節軟骨の内容は、プロテオグリカン、コラーゲン、水からなっています。

 しかし、中高年になると筋力が低下し、その筋力でカバーできない負担が継続的に掛かる仕事や、瞬間的に大きな負担がかかるスポーツなどで、関節軟骨が衝撃を吸収しきれなくなると傷んでしまいます。関節軟骨はその構造上、表面がいったん傷んでくると、元に戻りにくく、だんだん擦り減って悪くなる傾向があります。

 変形性膝関節症は中高年齢者に多く、50歳代で発症し、65歳以上で急増します。また、男性に比べ2~4倍、女性に多いのも特徴です。肥満している人、O脚変形(いわゆる、がにまた)のある人にもよくみられ、O脚では内側に過度な体重、圧迫が加わることになり、内側の軟骨の摩耗が進んでいきます。

 症状としては、膝関節のはれや、こわばっている感じがし、正座ができなくなります。歩き始めに膝が痛みますが、少し歩いているうちに楽になり、また歩きすぎると痛みが出てきます。

 片側の膝だけに発症することもありますが、両側性のこともしばしばあります。症状が進行すると、関節内に水、すなわち増量した関節液がたまってくるようになり、関節のすきまから前内側膝蓋(しつがい)部にかけて押すと痛むところが現れます。さらに進行すると、膝関節を完全に伸ばすことができなくなり、屈曲も制限され、関節が側方にぐらつくようになることもあります。

■変形性膝関節症の検査と診断と治療

 X線写真では、関節の端に骨の出っ張りがみられ、関節の透き間が狭くなったり、軟骨下骨の組織が硬化している像などがみられます。膝関節が内側に反るように変形し、下腿(かたい)軸の異常が起こります。そのため、荷重した状態で下肢の全長正面像を撮影することが重要になります。

 診断は年齢、臨床所見、X線所見から行います。さらに、関節造影や関節鏡を行うことで、より正確なものになります。鑑別診断で重要なものは、関節リウマチと膝関節結核との区別です。

 治療上で注意することは、まず関節になるべく負担をかけないようにすることで、肥満を避けたり、無理な運動をしないようにします。やむを得ず比較的長距離を歩かなければならないような場合には、膝のサポーターも有用です。

 しかし、膝が悪いからといって、ほとんど歩かないようにしては、かえって膝に悪影響を及ぼします。関節は動かすことによって、生理的な状態が維持されるので、体重負荷がかからないようにした膝関節の屈伸運動で、太ももの前面の大腿(だいたい)四頭筋の強化を図ります。

 まず、いすに腰掛けて、片方の足を上げて、膝をピンと伸ばします。太ももの前面の特に膝の内側に力こぶができるように、しっかり力を入れます。そのまま、数秒間足を上げたまま止めます。 この一連の運動を左右交互に行なって1度に10回から20回、これを1日に2~3回を目安に行なうと効果的です。足首に抵抗となるおもりをつけて行えば、より効果的です。

 筋力がかなり落ちている場合や、膝関節痛が強い場合は、かかとを床に着けたままで、太ももの前面に力こぶを作る運動をします。このような運動は頑張れば必ず効果が出て、膝関節の安定性と関節水腫(すいしゅ)の改善が期待できますので、少なくとも2、3カ月は続けてみましょう。

 そのほか、自転車乗りや平泳ぎ以外の水泳、水中ウオーキングなども、膝に負担のかからない運動として適している上、減量にもつながります。
 症状が強く、関節内に水がたまってくるような場合には、感染に対する厳重な注意の下で関節穿刺(せんし)が行われ水を吸引してから、炎症を抑えるためにヒアルロン酸、または副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を注入することもあります。

 ヒアルロン酸は、軟骨の一成分で、関節液中にも存在する関節の潤滑油でもあります。変形性膝関節症ではヒアルロン酸の量が減るため、注射で補うことで、痛みを和らげ、炎症を抑え、関節の動きをよくするなどの効果があるといわれています。副腎皮質ホルモンには、強い炎症止めの効果と鎮痛効果がありますが、あまり頻繁に使用すると、副作用が多くなるといわれています。 

 また、膝の変形、特に片足で立った時にO脚変形が著明で、主に体重が関節の内側だけにかかるような場合には、O脚を改善させる足底板の装着が有効です。足底板の装着で治療が期待できない場合には、手術も行われます。まだ変形を起こしていない関節面が残っている場合に、脛骨(けいこつ)の骨切りを行って、体重が関節全体に均等にかかるようにします。 

 変形性の変化が重度である場合は、人工関節全置換術という手術も行われます。これらの手術で痛みは明らかに改善しますが、術後の合併症である血栓症による肺梗塞(こうそく)、脳梗塞、心筋梗塞の発生に十分注意を払う必要があります。


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