目次
目  次
[あ行]
赤あざ(血管腫)
亜急性甲状腺炎
悪性リンパ腫
アジソン病
足白癬(水虫)
アスベスト症
アスペルガー症候群
アスペルギルス症
あせも(汗疹)
圧迫性視神経症
アトピー性皮膚炎
あな痔(痔瘻)
アナフィラキシーショック
アニサキス症
アペール症候群
アポロ病
アメーバ赤痢
アルコール依存症
アルコール性肝障害
アルツハイマー型認知症
アレルギー性結膜炎
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
息切れ
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
遺精
胃切除後障害
一過性脳虚血発作
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ(疣贅)
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
咽頭炎
咽頭がん
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
ウェゲナー肉芽腫症
ウェルシュ菌食中毒
うっ血乳頭
うつ病
エコノミークラス症候群
エルシニア食中毒
円形脱毛症
遠視
円錐角膜
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
太田母班
おたふく風邪
[か行]
外陰炎
外陰がん
壊血病
外傷性視神経症
疥癬
回虫症
外反母趾
開放隅角緑内障
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
解離性大動脈瘤
下咽頭がん
顔の運動異常
過活動膀胱(OAB)
過換気症候群
顎骨腫瘍
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
過呼吸症候群
かぜ
仮性近視
肩凝り
かっけ(脚気)
過敏性血管炎
過敏性腸症候群
かぶれ(接触皮膚症)
花粉症
カポジ肉腫
過眠症
仮面うつ病
仮面高血圧
顆粒球減少症
カルチノイド
加齢黄斑変性
川崎病
感音難聴
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
肝吸虫症
ガングリオン(結節腫)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
肝硬変
カンジダ膣炎
間質性肺炎(肺線維症)
眼精疲労
乾癬
肝臓がん
眼底出血
嵌頓ヘルニア
陥入爪
乾皮症
カンピロバクター食中毒
顔面神経まひ(ベルまひ)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気管支喘息
気胸
季節性うつ病
偽痛風(軟骨石灰化症)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
亀頭包皮炎
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
機能性甲状腺腺腫
機能性子宮出血
気分変調性障害(気分変調症)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
キャッスルマン病
吸収不良症候群
急性胃炎
急性肝炎
急性気管支炎
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性腎炎
急性腎不全
急性膵炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
急性大腸炎
急性中耳炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性白血病
急性鼻炎
急性腹膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
胸郭出口症候群
狭心症
蟯虫症
強迫性障害
強皮症(全身性硬化症)
胸膜炎
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
巨大乳頭結膜炎
ギラン・バレー症候群
切れ痔(裂肛)
筋委縮性側索硬化症
菌血症
近視
緊張性頭痛
くも膜下出血
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
クレブシエラ肺炎
クロイツフェルト・ヤコブ病
クローン病
黒なまず(癜風)
群発頭痛
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
劇症肝炎
結核
血管腫(赤あざ)
月経痛
血精液症
結節性紅斑
結節性多発動脈炎
血栓症
結膜炎
結膜下出血
血友病
腱鞘炎
原爆症
原発性肺高血圧症
原発性無月経
顕微鏡的多発血管炎
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
高血圧症
膠原病
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
高山病
高脂血症
光視症
口臭
甲状腺がん
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
鉤虫症
喉頭炎
喉頭がん
更年期障害
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
五月病
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨髄腫
骨粗鬆症
骨肉腫
コレラ
混合性結合組織病(MCTD)
[さ行]
臍炎
細菌性赤痢
細菌性肺炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
逆さまつげ
坐骨神経痛
匙状づめ
サルコイドーシス
サルモネラ食中毒
三叉神経痛
霰粒腫
シェーグレン症候群
痔核(いぼ痔)
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
色素性母斑(黒あざ、黒子)
色盲、色弱(色覚異常)
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
歯周病
視神経委縮
視神経炎
視神経症
持続勃起症
シックハウス症候群
歯肉がん(歯茎がん)
紫斑病
ジフテリア
自閉症
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
社会不安障害(SAD)
弱視
若年性認知症
斜視
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
住血吸虫症
重症筋無力症
十二指腸潰瘍
十二指腸虫症(鉤虫症)
絨毛がん
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
腫瘍性視神経症
春季カタル
猩紅熱
硝子体混濁
掌蹠膿疱症
上咽頭がん
条虫症
小腸がん
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
静脈血栓症
静脈瘤
睫毛乱生症
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
書痙
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
自律神経失調症
視力障害
脂漏性皮膚炎
痔瘻(あな痔)
白なまず(白斑)
心因性めまい
腎盂がん
腎盂腎炎
腎炎
人格障害
心筋炎
心筋梗塞
神経因性膀胱
神経芽細胞腫
神経性過食症
神経性食欲不振症
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎細胞がん
心室中隔欠損症
心身症
新生児テタニー
新生児メレナ
心臓神経症
心臓ぜんそく
心臓病
心臓弁膜症
腎臓がん
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心内膜炎
塵肺症
腎不全
心房中隔欠損症
心膜炎
じんましん(蕁麻疹)
水晶体嚢性緑内障
水腎症
膵臓がん
水痘(水ぼうそう)
水頭症
髄膜炎
頭痛
精液瘤(精液嚢腫)
生活習慣病
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
正常眼圧緑内障
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
成人スティル病
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
声帯ポリープ、声帯結節
性病
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
脊椎分離症、脊椎すべり症
赤痢
せつ、よう
雪眼炎(雪目)
舌がん
セックス依存症(性依存症)
接触皮膚炎(かぶれ)
セレウス菌食中毒
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
前庭神経炎
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
全般性不安障害(GAD)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
双極性障害(躁うつ病)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
早漏
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
続発性無月経
続発性緑内障
鼠径ヘルニア(脱腸)
そばかす(雀卵斑)
[た行]
ターナー症候群
大血管転位症
体臭
帯状疱疹
大腿骨頭壊死
大腸がん
大腸憩室
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
ダウン症候群
唾液腺がん
多汗症
多形滲出性紅斑
多血症(赤血球増加症)
たこ、魚の目
ただれ目(眼瞼縁炎)
脱水症
脱腸(鼠径ヘルニア)
脱毛、薄毛
多発性硬化症
単純性甲状腺腫
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
胆石症
胆道がん
胆嚢炎、胆管炎
蛋白漏出性胃腸症
蓄膿症
膣がん
チック症
知的障害
中咽頭がん
虫刺症(虫刺され)
中耳炎
中心性網膜脈絡症
虫垂炎
腸炎ビブリオ食中毒
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
聴神経腫瘍
腸チフス、パラチフス
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
痛風
突き目(匐行性角膜潰瘍)
爪白癬(爪の水虫)
手足口病
手足のしびれ
低血圧症
低酸症
適応障害
手湿疹(主婦湿疹)
鉄欠乏性貧血
てんかん
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
統合失調症(精神分裂病)
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
頭部白癬(しらくも)
動脈管開存症
動脈硬化
動揺病(乗り物酔い)
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
特発性視神経炎
特発性食道拡張症
特発性心筋症
特発性脱疽
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
突発性難聴
とびひ(伝染性膿痂疹)
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
鳥インフルエンザ
トリコモナス症
[な行]
ナルコレプシー
軟骨石灰化症(偽痛風)
軟性下疳
難病
軟部肉腫
にきび(尋常性痤瘡)
肉体疲労
ニコチン酸欠乏症
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
日本住血吸虫症
日本脳炎
乳がん
乳腺炎
乳腺症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
尿膜管遺残
認知症(痴呆症)
ヌーナン症候群
熱傷(やけど)
熱中症
ネフローゼ症候群
脳炎
膿胸
脳血管性認知症
脳梗塞
脳腫瘍
膿腎症
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
乗り物酔い(動揺病)
ノロウイルス食中毒
[は行]
パーキンソン病
バージャー病
パーソナリティー障害
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
肺水腫
肺性心
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺動脈狭窄症
肺嚢胞症
肺膿瘍
白衣高血圧
白癬
白内障
白板症
白皮症
はしか
橋本病(慢性甲状腺炎)
破傷風
バセドウ病
白血球増加症
白血病
発達障害
鼻カタル
鼻詰まり
パニック障害
はやり目
原田病
ハンセン病
ハンチントン病
鼻炎
肥厚性鼻炎
膝痛
鼻出血
ヒスタミン食中毒
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
鼻中隔湾曲症
ピック病
非定型うつ病
非定型抗酸菌症
ヒトアジュバンド病
皮膚カンジダ症
皮膚筋炎、多発性筋炎
皮膚結核
皮膚掻痒症
飛蚊症
肥満
びまん性汎細気管支炎
百日ぜき
日和見肺感染症
貧血
ファロー四徴症
不安障害
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
プール熱
フグ中毒
副鼻腔がん
腹壁ヘルニア
ふけ症
不整脈
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
舞踏病
ぶどう膜炎
プランマー病
フリクテン性角膜炎
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
変形性股関節症
変形性膝関節症
片頭痛
扁桃炎
便の変化
蜂窩織炎、丹毒
包茎
膀胱異物
膀胱炎
膀胱がん
膀胱結石
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボーエン病
勃起障害(ED)
ボックダレック孔ヘルニア
ボツリヌス菌食中毒
[ま行]
マイコプラズマ肺炎
マタニティーブルー
末梢動脈疾患(PAD)
マラリア
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性気管支炎
慢性結膜炎
慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性腎炎
慢性腎不全
慢性膵炎
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性中耳炎
慢性腸炎
慢性白血病
慢性鼻炎
慢性腹膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
味覚障害
水虫(足白癬)
水ぼうそう(水痘)
耳鳴り
ミュンヒハウゼン症候群
ムーコル症
無気肺
無月経
虫刺され(虫刺症)
無症候性心筋虚血
むずむず脚症候群
無痛性甲状腺炎
胸焼け
夢遊症
メタノール中毒
メタボリック症候群
メニエール病
めまい
妄想性障害
妄想性人格障害
毛巣瘻
網膜芽細胞腫
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
門脈圧高進症
門脈血栓症
[や行]
夜驚症
薬剤性大腸炎
薬疹
薬物依存症
やけど(熱傷)
やせ
野兎病
夜盲症
幽門狭窄
雪目(雪眼炎)
痒疹
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
翼状片
横川吸虫症
[ら行]
ライム病
ラテックスアレルギー
ラッサ熱
卵管がん
乱視
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
流行性角結膜炎
良性発作性めまい
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
旅行者下痢症
リンゴ病
リンパ浮腫
類宦官症
ルイス・サムナー症候群
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
ループス腎炎
レイノー病
レーベル病
レジオネラ症
裂肛(切れ痔)
レビー小体型認知症
老眼(老視)
老人性角化腫(日光角化症)
肋膜炎
ロタウイルス腸炎
肋間神経痛
[わ行]
ワイル病
若はげ
腋臭
腕神経叢まひ
[A~Z、数字【1~】]
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
IgA腎症
O157感染症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
SSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
WPW症候群
[がん]
悪性リンパ腫
胃がん
陰茎がん
咽頭がん
ウイルムス腫瘍
外陰がん
下咽頭がん
顎骨腫瘍
カポジ肉腫
カルチノイド
肝臓がん
急性白血病
甲状腺がん
喉頭がん
骨髄腫
骨肉腫
子宮がん
子宮頸がん
子宮体がん
歯肉がん(歯茎がん)
絨毛がん
上咽頭がん
小腸がん
食道がん
腎盂がん
神経芽細胞腫
腎細胞がん
腎臓がん
膵臓がん
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
舌がん
前立腺がん
大腸がん
唾液腺がん
胆道がん
膣がん
中咽頭がん
軟部肉腫
乳がん
肺がん
白血病
ページェット病
膀胱がん
ボーエン病
慢性白血病
網膜芽細胞腫
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
老人性角化腫(日光角化症)
[心臓、血管、血液の病気]
エコノミークラス症候群
解離性大動脈瘤
仮面高血圧
顆粒球減少症
狭心症
菌血症
血栓症
血友病
高血圧症
静脈血栓症
静脈瘤
心筋炎
心筋梗塞
心室中隔欠損症
心膜炎
精索静脈瘤
成人T細胞白血病(ATL)
先天性心臓病
大血管転位症
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
多血症(赤血球増加症)
低血圧症
鉄欠乏性貧血
動脈管開存症
特発性心筋症
特発性脱疽
バージャー病
肺性心
肺動脈狭窄症
白衣高血圧
白血球増加症
貧血
ファロー四徴症
不整脈
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
末梢動脈疾患(PAD)
無症候性心筋虚血
リンパ浮腫
レイノー病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
WPW症候群
[呼吸器の病気]
アスペルギルス症
息切れ
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
過換気症候群
過呼吸症候群
かぜ
間質性肺炎(肺線維症)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気胸
急性気管支炎
胸膜炎
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クレブシエラ肺炎
結核
原発性肺高血圧症
細菌性肺炎
サルコイドーシス
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
塵肺症
先天性気管狭窄症
膿胸
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺真菌症
肺水腫
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺嚢胞症
肺膿瘍
非定型抗酸菌症
びまん性汎細気管支炎
日和見肺感染症
ボックダレック孔ヘルニア
マイコプラズマ肺炎
慢性気管支炎
ムーコル症
無気肺
レジオネラ症
肋膜炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
[食道、胃腸、肛門の病気]
あな痔(痔瘻)
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
胃切除後障害
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
横隔膜ヘルニア
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
過敏性腸症候群
嵌頓ヘルニア
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
吸収不良症候群
急性胃炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性大腸炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性腹膜炎
切れ痔(裂肛)
クローン病
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
臍炎
臍帯ヘルニア
臍肉芽腫
臍ヘルニア
痔核(いぼ痔)
十二指腸潰瘍
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
痔瘻(あな痔)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大腸がん
大腸憩室
脱腸(鼠径ヘルニア)
蛋白漏出性胃腸症
虫垂炎
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
低酸症
特発性食道拡張症
尿膜管遺残
ヒステリー球(食道神経症)
腹壁ヘルニア
便の変化
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性腸炎
慢性腹膜炎
胸焼け
毛巣瘻
薬剤性大腸炎
幽門狭窄
裂肛(切れ痔)
ロタウイルス腸炎
[肝臓、胆道、膵臓の病気]
アルコール性肝障害
肝硬変
急性肝炎
急性膵炎
劇症肝炎
胆石症
胆嚢炎、胆管炎
慢性膵炎
門脈圧高進症
門脈血栓症
[内分泌・代謝異常、栄養障害による病気]
亜急性甲状腺炎
ウイルソン病
壊血病
かっけ(脚気)
偽痛風(軟骨石灰化症)
機能性甲状腺腺腫
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
生活習慣病
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
ターナー症候群
単純性甲状腺腫
痛風
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
軟骨石灰化症(偽痛風)
ニコチン酸欠乏症
ヌーナン症候群
橋本病(慢性甲状腺炎)
バセドウ病
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
肥満
プランマー病
慢性甲状腺炎(橋本病)
無痛性甲状腺炎
メタボリック症候群
やせ
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
類宦官症
[アレルギーによる病気、膠原病]
アトピー性皮膚炎
アナフィラキシーショック
アレルギー性結膜炎
ウェゲナー肉芽腫症
過敏性血管炎
強皮症(全身性硬化症)
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
膠原病
混合性結合組織病(MCTD)
サルコイドーシス
シェーグレン症候群
シックハウス症候群
成人スティル病
全身性エリテマトーデス
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
ヒトアジュバンド病
皮膚筋炎、多発性筋炎
ベーチェット病
ラテックスアレルギー
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
[心の病気]
アスペルガー症候群
アルコール依存症
アルツハイマー型認知症 
うつ病
仮面うつ病
季節性うつ病
気分変調性障害(気分変調症)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
強迫性障害
クロイツフェルト・ヤコブ病
肛門神経症(自己臭妄想症)
五月病
自閉症
社会不安障害(SAD)
若年性認知症
書痙
心因性めまい
人格障害
神経性過食症
神経性食欲不振症
心身症
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
セックス依存症(性依存症)
全般性不安障害(GAD)
双極性障害(躁うつ病)
チック症
知的障害
適応障害
統合失調症(精神分裂病)
認知症(痴呆症)
脳血管性認知症
パーソナリティー障害
発達障害
パニック障害
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ピック病
非定型うつ病
不安障害
ミュンヒハウゼン症候群
薬物依存症
レビー小体型認知症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
[脳、脊髄、神経の病気]
アペール症候群
一過性脳虚血発作
顔の運動異常
過眠症
顔面神経まひ(ベルまひ)
ギラン・バレー症候群
筋委縮性側索硬化症
緊張性頭痛
くも膜下出血
クルーゾン症候群
クロイツフェルト・ヤコブ病
群発頭痛
血栓症
坐骨神経痛
三叉神経痛
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
自律神経失調症
水頭症
髄膜炎
頭痛
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
多発性硬化症
聴神経腫瘍
てんかん
ナルコレプシー
脳炎
脳梗塞
脳腫瘍
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
パーキンソン病
発達障害
ハンチントン病
舞踏病
片頭痛
むずむず脚症候群
夢遊症
ルイス・サムナー症候群
肋間神経痛
腕神経叢まひ
[目の病気]
圧迫性視神経症
アポロ病
アレルギー性結膜炎
うっ血乳頭
遠視
円錐角膜
外傷性視神経症
開放隅角緑内障
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
仮性近視
加齢黄斑変性
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
眼精疲労
眼底出血
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨大乳頭結膜炎
近視
結膜炎
結膜下出血
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
光視症
逆さまつげ
サルコイドーシス
霰粒腫
シェ-グレン症候群
色盲、色弱(色覚異常)
視神経委縮
視神経炎
視神経症
弱視
斜視
腫瘍性視神経症
春季カタル
睫毛乱生症
硝子体混濁
視力障害
水晶体嚢性緑内障
正常眼圧緑内障
雪眼炎(雪目)
先天性緑内障(牛眼)
続発性緑内障
ただれ目(眼瞼縁炎)
中心性網膜脈絡症
突き目(匐行性角膜潰瘍)
糖尿病性網膜症
特発性視神経炎
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
白内障
はやり目
原田病
飛蚊症
ぶどう膜炎
フリクテン性角膜炎
ベーチェット病
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
慢性結膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
夜盲症
雪目(雪眼炎)
翼状片
乱視
流行性角結膜炎
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
レーベル病
老眼(老視)
[耳、鼻、のどの病気]
咽頭炎
感音難聴
急性中耳炎
急性鼻炎
喉頭炎
喉頭がん
心因性めまい
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
声帯ポリープ、声帯結節
前庭神経炎
中耳炎
聴神経腫瘍
突発性難聴
乗り物酔い(動揺病)
鼻カタル
鼻詰まり
鼻炎
肥厚性鼻炎
鼻出血
鼻中隔湾曲症
扁桃炎
慢性中耳炎
慢性鼻炎
耳鳴り
メニエール病
めまい
良性発作性めまい
[歯、口腔の病気]
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
口臭
歯周病
白板症
ベーチェット病
ヘルペス性歯肉口内炎
味覚障害
[皮膚の病気]
赤あざ(血管腫)
足白癬(水虫)
あせも(汗疹)
アトピー性皮膚炎
いぼ(疣贅)
いんきんたむし(股部白癬)
円形脱毛症
疥癬
かぶれ(接触皮膚症)
カポジ肉腫
乾癬
陥入爪
乾皮症
黒なまず(癜風)
血管腫(赤あざ)
結節性紅斑
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
匙状づめ
色素性母斑(黒あざ、黒子)
紫斑病
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
掌蹠膿疱症
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
白なまず(白斑)
じんましん(蕁麻疹)
せつ、よう
接触皮膚炎(かぶれ)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
そばかす(雀卵斑)
体臭
帯状疱疹
多汗症
多形滲出性紅斑
たこ、魚の目
脱毛、薄毛
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
虫刺症(虫刺され)
爪白癬(爪の水虫)
手湿疹(主婦湿疹)
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
頭部白癬(しらくも)
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
とびひ(伝染性膿痂疹)
にきび(尋常性痤瘡)
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
熱傷(やけど)
白癬
白板症
白皮症
皮膚カンジダ症
皮膚結核
皮膚掻痒症
ふけ症
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
蜂窩織炎、丹毒
ボーエン病
水虫(足白癬)
虫刺され(虫刺症)
薬疹
やけど(熱傷)
痒疹
リール黒皮症
リンゴ病
老人性角化腫(日光角化症)
若はげ
腋臭
[骨、関節、筋肉の病気]
アペール症候群
外反母趾(ぼし)
肩凝り
ガングリオン(結節腫)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
胸郭出口症候群
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
腱鞘炎
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨粗鬆症
重症筋無力症
脊椎分離症、脊椎すべり症
線維筋痛症
大腿骨頭壊死
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
膝痛
変形性股関節症
変形性膝関節症
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
腕神経叢まひ
[腎臓、泌尿器の病気]
アジソン病
過活動膀胱(OAB)
急性腎炎
急性腎不全
腎盂腎炎
腎炎
神経因性膀胱
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎不全
水腎症
前立腺炎
前立腺肥大症
糖尿病性腎症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
ネフローゼ症候群
膿腎症
膀胱異物
膀胱炎
膀胱結石
慢性腎炎
慢性腎不全
ループス腎炎
IgA腎症
[感染症(性病、寄生虫病を含む)]
アスペルギルス症
アニサキス症
アポロ病
アメーバ赤痢
咽頭結膜炎
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウェルシュ菌食中毒
エルシニア食中毒
オウム病(クラミジア肺炎)
おたふく風邪
疥癬
回虫症
カポジ肉腫
肝吸虫症
カンピロバクター食中毒
急性出血性結膜炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
蟯虫症
菌血症
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
鉤虫症
コレラ
細菌性赤痢
細菌性肺炎
サイトメガロウイルス感染症
サルモネラ食中毒
ジフテリア
住血吸虫症
十二指腸虫症(鉤虫症)
猩紅熱
条虫症
水痘(水ぼうそう)
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣上体炎(副睾丸炎)
性病
赤痢
セレウス菌食中毒
尖圭コンジローム
腸炎ビブリオ食中毒
腸チフス、パラチフス
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
鳥インフルエンザ
軟性下疳
日本住血吸虫症
日本脳炎
ノロウイルス食中毒
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
白癬
はしか
破傷風
ハンセン病
ヒスタミン食中毒
非定型抗酸菌症
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
フグ中毒
副鼻腔がん
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボツリヌス菌食中毒
マラリア
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性腸炎
水ぼうそう(水痘)
水虫(足白癬)
ムーコル症
メタノール中毒
野兎病
横川吸虫症
ライム病
ラッサ熱
旅行者下痢症
リンゴ病
レジオネラ症
ロタウイルス腸炎
ワイル病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
O157感染症
[職業病、公害病、形成外科の病気]
赤あざ(血管腫)
アスベスト症
アペール症候群
太田母班
外傷性視神経症
ガングリオン(結節腫)
クルーゾン症候群
血管腫(赤あざ)
色素性母斑(黒あざ、黒子)
書痙
塵肺症
ヒトアジュバンド病
メタノール中毒
やけど(熱傷)
[男性の病気]
遺精
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
過活動膀胱(OAB)
亀頭包皮症
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
血精液症
持続勃起症
精液瘤(精液嚢腫)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
セックス依存症(性依存症)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
尖圭コンジローム
早漏
癜風(黒なまず)
にきび(尋常性痤瘡)
ページェット病
包茎
勃起障害(ED)
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
類宦官症
レーベル病
[女性の病気]
移動盲腸
外陰炎
外陰がん
外反母趾
過活動膀胱(OAB)
ガングリオン(結節腫)
カンジダ膣炎
機能性子宮出血
強皮症(全身性硬化症)
クラミジア感染症
月経痛
原発性無月経
甲状腺がん
更年期障害
骨粗鬆症
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
しみ(肝斑)
絨毛がん
主婦湿疹(手湿疹)
静脈瘤
性器ヘルペス症
セックス依存症(性依存症)
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
続発性無月経
そばかす(雀卵斑)
膣がん
直腸脱
手湿疹(主婦湿疹)
乳がん
乳腺炎
乳腺症
ページェット病
マタニティーブルー
無月経
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リンパ浮腫
レイノー病
[子供の病気]
赤あざ(血管腫)
アスペルガー症候群
あせも(汗疹)
アペール症候群
アレルギー性結膜炎
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
遠視
横隔膜ヘルニア
おたふく風邪
仮性近視
川崎病
眼瞼下垂
眼瞼内反症
嵌頓ヘルニア
亀頭包皮炎
急性出血性結膜炎
急性白血病
蟯虫症
近視
クルーゾン症候群
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
結核
血管腫(赤あざ)
血友病
臍炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
色素性母斑(黒あざ、黒子)
自閉症
弱視
斜視
春季カタル
猩紅熱
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
神経芽細胞腫
心室中隔欠損症
新生児テタニー
新生児メレナ
心房中隔欠損症
水痘(水ぼうそう)
水頭症
精神遅滞(精神薄弱)
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大血管転位症
大動脈縮窄症
ダウン症候群
脱腸(鼠径ヘルニア)
チック症
知的障害
腸重積症
伝染性膿痂疹(とびひ)
動脈管開存症
とびひ(伝染性膿痂疹)
尿膜管遺残
脳膿瘍
肺動脈狭窄症
白皮症
はしか
白血病
発達障害
百日ぜき
ファロー四徴症
プール熱
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス性歯肉口内炎
ボックダレック孔ヘルニア
水ぼうそう(水痘)
網膜芽細胞腫
夜驚症
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
流行性角結膜炎
リンゴ病
ロタウイルス腸炎
[高齢者の病気]
アルツハイマー型認知症
加齢黄斑変性
偽痛風(軟骨石灰化症)
狭心症
骨髄腫
細菌性肺炎
逆さまつげ
食道がん
心筋梗塞
水晶体嚢性緑内障
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
帯状疱疹
大腸がん
脳血管性認知症
パーキンソン病
肺炎
ピック病
閉塞性動脈硬化症
変形性股関節症
変形性膝関節症
レビー小体型認知症
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非定型抗酸菌症

■慢性的に経過しながら、確実に肺をむしばんでいく疾患

 非定型抗酸菌症とは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌で、通常、非定型抗酸菌と呼ばれるものが起こす疾患。非結核性抗酸菌症とも呼ばれます。

 抗酸菌は酸に対して強い抵抗力を示す菌であり、非定型抗酸菌にはたくさんの種類があって、水や土など広く自然界に存在しています。人間に病原性があるとされているものだけでも10種類以上。日本で最も多いのは、MAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約75パーセントを占めます。次いで、マイコバクテリウム・キャンサシーが約15パーセント、その他が約10パーセントを占めています。

 人間への感染経路は明らかではありませんが、同じ抗酸菌である結核菌よりもかなり病原性の低い菌であり、健康な人ではほとんど発症しません。発症した場合も、人間から人間へは感染しません。

 全身どこにでも病変を作る可能性はあるものの、結核と同様、ほとんどは肺の疾患です。発症様式には、もともと健康であった肺に感染する一次型と、結核後遺症や気管支拡張症などによって傷んだ肺に感染する二次型とがあります。高齢者は、特に二次型に注意が必要。

 症状に際立った特徴はなく、せき、たん、軽い発熱、倦怠(けんたい)感などがあります。自覚症状が全くなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然見付かる場合もあります。

 発症するとその多くは治療が容易ではなく、慢性的に経過しながら少しずつ肺をむしばんでいくのが特徴です。進行した場合は、呼吸困難、喀血(かっけつ)、食欲不振、やせ、発熱などが現れます。肺結核と症状が似ているため、間違えられることもあります。

 肺結核の減少とは逆に発症者が増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。また、HIV感染者への感染するエイズ合併症が問題になっています。

■非定型抗酸菌症の検査と診断と治療

 非定型(非結核性)抗酸菌症に気付いたら、結核に理解のある呼吸器科、あるいは結核療養所を受診します。

 医師による診断では、喀たんなどの検体から非定型抗酸菌を見付けることにより確定されます。ただし、非定型抗酸菌は水や土など広く自然界に存在しており、たまたま喀たんから排出されることもあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床症状、レントゲン写真の陰影の変化と一致することが必要です。

 非定型抗酸菌症と鑑別すべき疾患には、結核のほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなどがあります。

 非定型抗酸菌の多くは抗結核剤に対して耐性を示しますが、治療に際しては、菌によって効果があるため、まずは抗結核剤をいくつか併用します。最も一般的なのはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンの4剤を同時に使用する方法。

 確実に有効な薬がないため、薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があります。 場合によっては、肺切除などの外科療法が行われます。


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日和見肺感染症

■体の抵抗力が低下した時に、病原性の弱い微生物で起こる感染症

 日和見肺感染症とは、体力が落ちて抵抗力が著しく低下している時に、ふだんは疾患の原因になりにくい細菌や、かび、ウイルス、原虫などの微生物によって引き起こされる肺の感染症。

 糖尿病やがん、エイズ(後天性免疫不全症候群)などを患ったり、長期の治療で体の免疫力が落ちていると、感染することがあります。

 日和見感染症の肺炎は、原因となる細菌や微生物などの種類、発症者の体力によって、さまざまです。

 毒性の弱い菌では、風邪に似た発熱、せき、たんなどの症状が現れ、ニューモスティスカリニやサイトメガロウイルスなどでは、高熱、空せき、息苦しさが起きます。ニューモスティスカリニは、かび(真菌)の一種で、自然界に存在し、経気道感染すると考えられています。サイトメガロウイルスは、ヘルペスウイルスの一種で、感染者の血液、唾液(だえき)、尿、精液、頸管(けいかん)粘液、母乳などに含まれ、多くは新生児、乳児期に感染し、日本人の80〜90パーセントは抗体を持っています。

 ふだんはニューモスティスカリニやサイトメガロウイルスに感染しても発症しませんが、体力が落ちて抵抗力が著しく低下している時には、潜伏感染していたものが増殖して、あるいは新たに感染して肺炎を発症します。

■日和見肺感染症の検査と診断と治療

 体が著しく衰弱している時に肺炎の症状がみられたら、日和見感染症を疑って、呼吸器内科、呼吸器科を受診します。重症の場合には死に至ることもあるので、十分に注意しなければなりません。

 たんや血液の検査を始め、胸部X線検査、CT検査(コンピューター断層撮影)などが行われます。さらに、気管支鏡を使って、原因となっている細菌、微生物を探すこともあります。しかし、これらの検査を十分に行っても、原因が特定できない場合も少なくありません。

 日和見肺感染症を招いたもとにある疾患、さらに感染症の原因となった細菌、微生物など、その双方に対して、抗生物質などを用いた薬物療法が行われます。ニューモスティスカリニによる肺炎にはサルファ剤と葉酸拮抗(きっこう)剤のST合剤とペンタミジン、サイトメガロウイルスによる肺炎には抗ウイルス剤であるガンシクロビルが用いられます。これらは予防的にも用いられます。


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マイコプラズマ肺炎

■微生物のマイコプラズマの感染で、子供に多く起こる肺炎

 マイコプラズマ肺炎とは、微生物のマイコプラズマの感染によって起こる肺炎。マイコプラズマは細菌より小さくウイルスより大きな微生物で、生物学的には細菌に分類されますが、ほかの細菌と異なるところは細胞壁がない点です。

 感染している人との会話や、せきに伴う唾液(だえき)の飛沫(ひまつ)によって感染します。インフルエンザのような広い地域での流行はみられず、学校、幼稚園、保育所、家庭などの比較的閉鎖的な環境で、散発的に流行します。日本では一時期、4年ごとのオリンピックの開催年に一致してほぼ規則的な流行を認め、オリンピック病とかオリンピック肺炎と呼ばれたこともありましたが、1990年代に入るとこの傾向は崩れて毎年、地域的に小流行を繰り返すようになっています。

 季節的にはほぼ1年中みられ、特に初秋から早春にかけて多発する傾向がみられます。好発年齢は、幼児から学童、特に5~12歳に多くみられます。4歳以下の乳幼児にも感染はみられますが、多くは不顕性感染または軽症です。潜伏期間は1~3週間。

 風邪に似た症状が現れ、中でもせきが激しいのが特徴。たんは少なめです。たんの出ない乾いたせきが激しく、しかも長期に渡って続き、発作性のように夜間や早朝に強くなります。胸や背中の筋肉が痛くなることも、珍しくありません。

 38〜39度の高熱、のどの痛み、鼻症状、胸痛、頭痛などもみられますが、肺炎にしては元気で全身状態も悪くなく、普通とは違う肺炎という意味で非定型肺炎とも呼ばれます。

■マイコプラズマ肺炎の検査と診断と治療

 学校、幼稚園、保育所などで小流行することが多いので、子供のにせきや発熱などの症状がみられたら、早めに呼吸器科や小児科を受診します。比較的軽症なために普通の風邪と見分けがつきにくく、診断が遅れることがありますが、まれに心筋炎や髄膜炎などを併発することもありますので、油断はしないほうがいいでしょう。

 胸部X線撮影によって肺炎自体の診断はつきますが、原因を確定するのに時間がかかります。咽頭(いんとう)から採取した液を培養してマイコプラズマを検出するまでに、通常1~2週間を要するためです。

 一般に自然治癒傾向の強い疾患ですが、マイコプラズマが検出できない間は、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の両方を想定した治療が行われます。細菌性肺炎と同様、抗生物質によってマイコプラズマを排除しますが、有効な薬を選ばなければ効果が得られません。

 マイコプラズマは細胞壁を持たないので、細胞壁合成阻害剤であるペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がありません。蛋白(たんぱく)合成阻害剤を選択しなければなりません。中でもマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が効果を上げます。小児では、副作用のことも考慮してマクロライド系の抗生物質が第1選択薬です。ニューキノロン系も有効ですが、小児への適応のないものがほとんどです。

 ほとんどの場合、外来の内服治療でマイコプラズマ肺炎は治ります。ただし、小児では重症例や合併症も多く、高熱で脱水症状があるとか、激しいせきで眠れなかったり、食欲が大きく妨げられているような場合は、入院が必要になります。

 子供が学校などからマイコプラズマを持ち帰ると、1〜3週間の潜伏期間を経て、家族に感染することがよくあります。予防接種はなく、決定的な予防法はありません。家庭ではマスクやうがい、手洗い、発症者の使うタオルやコップを使わないなど、普通の風邪と同じような予防法を心掛けます。


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あな痔(痔瘻)

■肛門の周囲に穴が開き、膿が出る疾患

 あな痔(じ)とは、肛門(こうもん)の周囲に穴が開き、膿(うみ)が出る疾患。医学用語では痔瘻(じろう)と呼ばれます。

 あな痔の多くは、肛門周辺膿瘍(のうよう)が進行して発症します。肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分に相当する歯状線のくぼみ部分、すなわち肛門小窩(しょうか)が深い人に、軟らかすぎる下痢便などで傷が付くと、大腸菌などの細菌が入って肛門腺(せん)に炎症が及び、そこに発生する細菌感染で膿を作ります。この膿が直腸の周囲から肛門周囲の組織の間を潜って広がり、いろいろな場所にたまると、肛門周囲膿瘍となります。

 この膿の集まりである膿瘍が、運よく皮膚に近くて、皮膚を破って外に出たり、または一時的に小切開手術が行われて自然に完治しないと、慢性の瘻孔(ろうこう)、ないし瘻管と呼ばれる穴として残ります。この穴が、あな痔です。

 一方、膿の集まりである膿瘍が、組織の間の奥深い場所にあると、皮膚に通じる出口がないため、大きな深部膿瘍を作ったり、そこからいくつも瘻孔の枝道を作って皮膚を破ったり、さらに直腸へ破れたり、肛門周囲の皮膚に破れて、いろいろと複雑化します。

 あな痔では初めから感染が緩やかで、知らない間に瘻孔が作られ、そこから膿などの分泌物が出てきても、下着を汚すくらいで大した痛みもないため、放置する人が少なくありません。この瘻孔がふさがり、膿が中にたまると、はれて痛みます。

 自然治癒はしません。10年〜15年も治療しないで放置し、慢性化して再三炎症を繰り返すと、瘻孔からがんの発生がみられることもあります。

■あな痔の検査と診断と治療

 あな痔(痔瘻)は、痔の中で最も厄介な疾患です。薬では100パーセント治りませんし、進行したまま放置するとがん化する危険性もありますので、肛門科の専門医を受診します。

 あな痔の治療は手術しかありませんが、大きく開放手術と括約筋温存手術の2つに分けられます。

 開放手術は、肛門後部のあな痔を対象として、あな痔ができたところからその外側に至る全瘻孔を周囲の肛門括約筋とともに切除し、そのまま縫い合わせずに開放する方法。手術後、肛門が緩くなるものの、失禁するほどではありません。再発の可能性が少ない方法です。

 括約筋温存手術は、肛門横、前部、深部のあな痔を対象として、瘻孔だけをくり抜く方法。後遺症の懸念があって肛門括約筋を切除しないため、手術後、肛門が緩くなることはありません。ただし、病巣が残る可能性もあるため、再発のリスクが生じます。

 あな痔の手術では、かなり肛門を傷付けることとなりますので、手術後の痛みが発生します。我慢できないくらい大きい痛みの場合は、痛み止めの薬が処方されます。排便時もかなり痛みますので、手術後はすぐに排便がこないように、排便を抑制する薬が処方されます。また、便が硬くなるといけないので、下剤の処方で軟らかくします。

 あな痔の進行度合いにもよりますが、1〜2週間はなかなか痛みがとれないことがあるため、2週間から1カ月くらい入院して、手術後の管理を行う必要があります。

 日常生活では、下痢や便秘をしないように、ふだんから注意します。体力が落ちて、体の免疫力が落ちた時にかかりやすいので、適度の運動と規則正しい食事、睡眠も必要です。アルコールや香辛料は控えめにします。


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胃アトニー

■胃下垂に胃の筋肉のたるみが加わって、胃の機能が低下

 胃アトニーとは、胃下垂に胃の筋肉の緊張低下が加わって、胃の機能が低下する疾患。アトニー(Atonie)とはドイツ語で体の組織が弛緩(しかん)していることを意味し、胃下垂とは胃の曲がり角が骨盤の中に入っている状態です。

 胃アトニーでは、胃の蠕動(ぜんどう)運動が減退した状態になるので、食べた物の消化、吸収ができにくくなります。食欲はありますが、食後に胃がもたれます。ゲップが出たり、むかつきがあったりしても、嘔吐(おうと)するまではいきません。食後に体を動かすと、おなかがゴロゴロ、グルグルと鳴ったり、膨らんだおなかをたたくとポンポン、ピチャピチャと音がすることもあります。

 不快を覚えるほどの症状がなければ、疾患ではないといえます。ただし、便秘気味になったり、胸がつかえて食べ物の通りがよくないと感じることもあります。胃の噴門部の働きも弱った状態になるために、胃液が食道へ逆流してしまう逆流性食道炎を併発しやすくなり、症状として胸焼けを起こすこともあります。

 重度の場合は、頭痛やめまいが生じることもあります。食事に不安を感じるため、量が取れず、体重が減少する傾向もみられます。精神神経症状として、頭痛、肩凝り、憂うつなどもみられます。

 原因は、特に定められていません。なりやすいのは、先天的に筋肉の弱い人、虚弱体質でやせた人。やせすぎで腹の筋肉が軟らかく、症状のひどい人は胃の形状が腹の上から見てもわかることがあります。とりわけ、食後に下腹部が膨張します。

 なお、ピロリ菌の感染が原因で、胃アトニーになるとの報告はありません。

■胃アトニーの検査と診断と治療

 胃アトニーは疾患と認定しにくい症状ですが、重い自覚症状が続く場合に限り胃がんなどの疾患との識別が必要ですので、内科の専門医を受診します。

 医師は、胃のX線検査で診断します。胃がんなどの症状の似たほかの疾患と鑑別するためには、胃内視鏡検査をしたり、胆囊(たんのう)、膵臓(すいぞう)の超音波検査を行います。

 治療は、食事療法が中心です。うどん、そばなどの消化しやすい糖質を取り、豆腐や白身魚などの栄養価が高く、消化しやすい蛋白(たんぱく)質を食べるように心掛けます。食事を1日4〜5回に分けて、少量ずつ食べるのも一案で、胃の負担を軽くできます。水分は食事の初めに摂取し、途中ではあまり飲まないことも工夫の一つ。

 事情が許せば、食後しばらくの間、横になるとよい場合もあります。アルコール類も少量にし、飲みすぎないようにします。

 薬物療法はほとんど行われませんが、胃の運動を正常化させる場合には、胃の運動を活発にする薬や消化剤を服用します。便秘している場合には、緩下剤を服用することがあるものの、習慣になると緩下剤なしで便通がつかなくなるので、あまり処方されません。

 規則正しい生活を送って、できるだけ神経を胃に集中させないようにし、適当に運動するほうがよいとされています。 腹筋が弱い人は、腹筋に重点を置いた筋肉トレーニングも有効です。引き締まった体になれば、胃が正常の位置に持ち上がり、胃アトニーも解消、予防できます。 いきなり激しい腹筋運動をすると胃を痛める可能性がありますので、徐々にならしていき、可能であれば毎日トレーニングします。


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胃潰瘍

■胃液によって胃の粘膜が傷付き、深い欠損を生じる疾患

 胃潰瘍(かいよう)とは、強酸性の胃液によって胃の粘膜が傷付き、ただれて、深い欠損を生じる疾患。胃液で自らの粘膜が消化されてしまうという意味で、十二指腸潰瘍を含めて、消化性潰瘍とも呼ばれます。

 欠損が浅い場合はびらんといいますが、潰瘍は欠損が粘膜固有層を貫いて、筋層まで深くえぐれたものです。十二指腸潰瘍が若者に多いのに対して、胃潰瘍は中年以降に多くみられます。

 胃から分泌される胃液中の胃酸やペプシンと、この胃液から胃の粘膜を守る中性の粘液の分泌とのバランスが崩れ、胃液に対する胃粘膜の防御力が弱まることによって潰瘍が生じます。また、胃潰瘍の70~90パーセントで、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が発見されています。

 つまり、ピロリ菌の感染などで胃の粘膜が傷付いて、胃液への防御力が弱まったところに、ストレスや過度の喫煙、暴飲暴食、刺激の強い飲食物などが誘因となって胃液の分泌が刺激されると、胃の粘膜が消化されて胃潰瘍が発症するのです。

 症状としては、腹痛が代表的。食後少し時間が経過すると、みぞおちの痛みが起こり、背中の痛みも起こることもあります。痛みは潰瘍の活動期に起こり、安定期には無症状です。潰瘍の増悪期には、食後や空腹時を問わず痛むことがあります。そのほか、胸焼け、胃のもたれ、食欲不振、体重減少など多彩な症状を示します。

 場合によっては出血を起こし、頻脈、冷や汗、血圧低下、気分不快、吐血、下血などの症状が出現します。出血量が多いと、ショック症状が現れ、生命に危険が迫ります。高齢者では、胃潰瘍による出血が心筋梗塞(こうそく)や狭心症の引き金になることもあります。

 重度の胃潰瘍の場合は、胃壁の欠損が胃の外側にまでつながる場合もあり、これを穿孔(せんこう)といいます。激痛と吐血を起こし、やはりショック症状を起こします。

 ピロリ菌は、胃の粘膜に生息する細菌で、1980年代の初めに発見され、胃潰瘍や慢性胃炎の発生に関係していることがわかっています。通常、胃の中は、胃酸が分泌されて強い酸性に保たれているため、細菌が生息することはできません。しかし、ピロリ菌は、胃の粘膜が胃酸から胃壁を守るために分泌している中性の粘液の中に生息し、直接胃酸に触れないように身を守っています。

 ピロリ菌はウレアーゼという尿素分解酵素を分泌して、胃の中に入ってくる食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。このアンモニアも胃の粘膜に影響を及ぼし、胃潰瘍や慢性胃炎の原因の一つになると考えられています。ただし、ピロリ菌に感染している人すべてに、症状が現れるわけではありません。感染しても、自覚症状がない場合、そのまま普通の生活を送ることができます。

 ピロリ菌に感染している人の割合は、年を取るほど高くなる傾向があり、20歳未満では9〜11パーセントなのに対して、40〜60歳では55~70パーセントとなっています。このように年齢によって感染率に違いがあるのは、育った時代の衛生環境に関係していると見なされています。

■胃潰瘍の検査と診断と治療

 胃潰瘍と同様の症状を生じる疾患として、機能性胃腸症の頻度が最も高く、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、急性膵(すい)炎、慢性膵炎、胆石、胆嚢(たんのう)炎など、鑑別すべき疾患は極めて多くなっています。

 医師による診断では、内視鏡検査やX線検査が行われます。内視鏡検査では、潰瘍の状態を観察し、疾患がどのレベルまで進んでいるかを観察します。X線検査では、潰瘍の輪郭、潰瘍の回りの粘膜や胃壁の様子を観察します。

 そのほか、胃腸のどこかからの出血の有無を調べる糞便(ふんべん)潜血反応検査、胃液の量や酸の強さを調べる胃液検査を行うことがあります。

 胃潰瘍の治療では、胃酸の分泌を抑え、胃の粘膜を修復する薬剤を服用します。薬剤は、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬(プロトンポンプインヒビター)など。

 ピロリ菌に感染し、再発を繰り返している場合には、2~3種類の抗生物質を同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。 プロトンポンプ阻害薬1種類と抗生物質2種類を組み合わせた3剤を、朝夕2回、1週間服用し続けることもあります。

 出血性の胃潰瘍の場合は、内視鏡的止血法が多く行われるようになっています。そのため、従来の外科的治療は激減しています。穿孔の場合や、内視鏡的に止血、コントロールできない出血の場合は、外科的治療が行われます。

 完治した後も再発を防ぐため、胃酸の分泌を抑制する薬や胃粘膜を修復する薬を継続して服用します。

 日常生活では、過労やストレスを避けます。出血や胃痛など症状のひどい時は、禁酒、禁煙、またコーヒー、濃い紅茶や緑茶など胃酸の分泌を促進する飲み物を控えるようにします。

 食事の量も控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べます。空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間に摂取します。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。

 胃の粘膜を保護する食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいる大根や、豆腐、鶏のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。

 逆に、繊維質が多い物、焼き肉などの脂っこい物、甘味や塩気が強い物、極端に冷たかったり熱かったりする物、強い香辛料は、避けたいところです。


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潰瘍

●皮膚や粘膜に生じた損傷

 潰瘍(かいよう)とは、皮膚や粘膜の上皮組織が何らかの原因で傷付き、深くえぐられた状態のことです。

 通常、より深層の組織も、症例ごとにさまざまな深さで損傷を起こしています。上皮組織を失ったことで受ける外部刺激、特に感染に対する防御反応や、損傷した組織の修復と再生のために、炎症を伴うのが常です。

 潰瘍より軽度の上皮組織の損傷、すなわち肉眼的には上皮が欠損していても、顕微鏡で見ると不連続的に上皮細胞が残っているものは、びらんと呼びます。より深層の組織の傷害も、軽微で限定的です。

 代表的な潰瘍で、頻度が高く健康への影響が大きいのは、胃潰瘍と十二指腸潰瘍。いずれも、本来は食物を消化するために分泌されている胃液によって、胃や十二指腸の粘膜そのものまで消化されて傷付いた結果、発生する病気です。

 総称して消化性潰瘍と呼び、皮膚にできる潰瘍と違って、粘膜が常に強酸にさらされているため、なかなか治りません。ほかに、口の中、大腸などにできる潰瘍もあります。

 なお、潰瘍を形成する特徴を持った炎症を潰瘍性炎と呼び、組織の損傷がさらに深層に及んで消化管などの壁を貫くものを穿孔(せんこう)性潰瘍と呼びます。


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潰瘍性大腸炎

■大腸の粘膜に多数の潰瘍ができ、再発しやすい難病

 潰瘍(かいよう)性大腸炎とは、大腸の粘膜に多数の浅い潰瘍ができ、出血する疾患。厚生労働省から特定疾患(難病)の一つに指定されています。

 最近、日本でもだんだん増えてきた大腸の慢性の炎症で、20歳代、30歳代で発症する人が多く、子供や50歳以上の人でも起こり、男女差はありません。日本では、人口10万人当たり2〜3人くらいで、毎年おおよそ5000人増加していますが、欧米では日本の2〜3倍多いとされています。

 原因については、まだよくわかっていません。 細菌やウイルスの感染、ある種の酵素の不足、ストレス、体質が関係しているといわれ、近年では自己免疫異常説がかなり有力です。

 私たちの体には、細菌などの有害なものを排除する免疫の仕組みがあります。この免疫の仕組みは腸の中でも働いていて、食べ物が腸を通過する際には、栄養分のように体に必要なものだけを腸の粘膜から吸収し、不要なものや有害なものは吸収せずに、そのまま腸から通過させて便として排出します。 ところが、免疫機構の異常が大腸に生じると、不要なものまで腸の粘膜から吸収されるようになる結果、大腸の粘膜に炎症が起こって潰瘍ができると考えられています。

 また、潰瘍性大腸炎が増加している背景には、大腸がんと同じように、食生活の欧米化、特に脂肪の多い食事の取りすぎがあると推測されます。

 最初、病変が直腸にできる直腸炎型として起こり、直腸からS状結腸に渡って病変が広がって直腸S状結腸炎型となります。さらに、下行結腸へと広がる左側大腸炎型となり、横行結腸から上行結腸へと進んでいき、全大腸炎型になります。

 直腸炎型は最も軽く、全大腸炎型が最も重症です。

 潰瘍性大腸炎の主な症状は、腹痛と血便。最初は腹痛と下痢で始まり、次第に下痢便に血液が混じって血性下痢になります。直腸の一部のみに病変が限られている時は、排便の際に少量の出血がみられる程度のため、内痔核(ないじかく)からの出血とはっきり区別が付けにくいこともあります。

 直腸やS状結腸に強い病変が起こると、渋り腹という状態になり、排便した後もすっきりせず、何回でもトイレに行きます。

 腹痛は、左下腹部に起こることが多く、特に排便の前に強くて、排便後は軽くなって消失します。そのほか、腹部のはれぼったい感じ、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)などが起こってくることもあります。体温の変化は、最初は特にないものの、炎症が進んでくると、発熱するようになります。

 さらに重症になってくると、1日のうち、何回も血性下痢が起こり、食欲不振と体重減少が生じます。

 この潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症のほかにも、いろいろな合併症を引き起こしやすい疾患で、腸の局所的な合併症と、全身的な合併症とがあります。

 局所的な合併症として、痔核、痔瘻(じろう)、肛門(こうもん)周囲膿瘍(のうよう)などの直腸と肛門の疾患や、炎症の結果として、大腸の内腔(ないくう)が狭くなる大腸狭窄(きょうさく)、潰瘍が深くえぐれる大腸穿孔(せんこう)を起こしたりします。

 大出血や、大腸が急にまひして拡張する中毒性大腸拡張症などを合併することもあります。そのほか、血液中の蛋白(たんぱく)質が胃腸から漏れ出る蛋白漏出性胃腸症などを起こして、栄養障害の引き金になることもあります。

 全身的な合併症としては、出血に伴う貧血、結膜炎や虹彩(こうさい)炎などの目の疾患、口内炎や重い皮膚炎、関節炎などがあります。重症の潰瘍性大腸炎では、肝炎や肝硬変、膵炎(すいえん)といった内臓の疾患を合併することもあります。

 症状の経過によって、潰瘍性大腸炎は再発寛解(かんかい)型、慢性持続型、急性電撃型、初回発作型に分けられます。

 再発寛解型は、一時的によくなったり、再発したりを繰り返すタイプ。慢性持続型は、病状がずっと慢性的に続くタイプ。急性電撃型は、最も重症で突然に病状が悪化するタイプ。初回発作型は、1回しか起こらず、直腸だけに限局して軽く、進行しないタイプ。

 一般に、病変に侵された大腸の範囲が広いほど予後が悪く、合併症も多くなります。

■潰瘍性大腸炎の検査と診断と治療

 血便や下痢を起こす疾患は、潰瘍性大腸炎のほかにも、急性腸炎やがんなどいろいろあります。自分の判断で安易に下痢止めや止血剤を使うと、かえって症状をひどくする危険があります。消化器科の専門医を受診して、内視鏡検査などをした上で適切な治療を受けるようにします。潰瘍性大腸炎の合併症も早期に発見できれば、長引かせずに治療することが可能になります。

 医師による診断のための検査では、大腸のX線検査が重要です。腸管を下剤で完全に空にした状態で、肛門から造影剤と空気を入れてX線撮影するもので、大腸の粘膜の凹凸、びらん、潰瘍などが描写され、病変の範囲や、程度を知ることができます。次いで、大腸内視鏡検査によって、より詳細な所見を捕らえ、診断を確実にします。

 潰瘍性大腸炎は原因がはっきりしないため、決定的な治療や予防はまだできないのが現状です。対症療法としては、まず精神的、肉体的な安静を保ち、消化吸収がよく、栄養価の高い食事をとります。豆腐や白身の魚、鶏のささ身などは最適です。

 炎症がひどい時には、脂質の多い食品や、繊維質の多い食品は避ける必要があります。脂質の多い食品は胃腸の負担を増大させますし、繊維質が多い食品は便の量が増えて、大腸の粘膜の傷が刺激されやすくなるからです。また、出血を伴う場合は、わさび、からし、こしょうなどの刺激物や、アルコール類のように血管を拡張させるものも控えるようにします。

 薬物療法としては、軽症ではサラゾスルファピリジンというサルファ剤を内服薬、または座薬として用います。サルファ剤は、特効的に効果を発揮することがあります。中等症では副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の内服薬、座薬が用いられます。重症では抗生物質、輸液、輸血が必要なこともあります。中等症、重症では、入院治療を要します。

 急性電撃型の場合、内科的な治療だけでは無理なため、手術が必要です。全大腸炎型で生命に危険があると判断された場合も、手術が行われます。全身に及ぶ合併症の場合には、消化器科の専門医に加えて、眼科、皮膚科、整形外科などの多くの専門医が協力して、治療に当たることになります。

 この潰瘍性大腸炎は、一時的に快方へ向かっても、しばしば悪化します。精神的なストレスや不安感が引き金になることが多く、しばしば試験勉強などで悪化したり、暴飲暴食で悪化することも少なくありません。

 従って、十分に睡眠をとることと、食事を規則正しくして、過労を避け、精神の安定に努めます。いずれにしても長い経過をとる疾患なので、療養にもそれだけの時間がかかります。


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機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)

■検査をしても異常がないのに、胃腸の不快症状がある疾患

 機能性胃腸症とは、内視鏡などの検査をしても異常が見当たらないのに、胃腸の不快症状がある疾患。中でも、症状が上腹部にあるものを機能性ディスペプシアと呼んでいます。

 消化器の主要部である胃は、ストレスなどの影響を受けやすく、とても敏感な臓器です。胃の働きが悪くなると、「どうも胃が重い」、「もたれる」、「みぞおちがシクシク痛む」、「むかむかする」、「胸焼けする」など、さまざまな症状が出てきます。こうした胃の不快症状は、誰もが経験するものです。 

 胃内部の胃腺(せん)からは、強い消化力を持つ胃酸が分泌されています。通常は、中性の粘液が胃壁を覆い、胃酸から胃を守っています。ところが、ストレスや不規則な食事、胃への刺激物などで、この攻めと守りの均衡が崩れてしまうと、胃にトラブルが発生してしまいます。

 胃の疾患は、内視鏡などの検査では異常がないのに症状が長く続いているというものが大半で、慢性胃炎、胃神経症(神経性胃炎)といわれています。かつては、症状によって胃酸過多症、胃アト二ーなどの疾患名が付いていました。

 しかし、最近では、これらの胃腸の働きが悪くなったために起こる疾患をまとめて、機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと呼び、他の胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの疾患と区別しています。このように機能性胃腸症は新しい疾患というわけではなく、日本人の4人に1人が経験しているといわれるほど有り触れた疾患です。

 胃の機能が低下することによって起こる機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアの症状として、まず胃もたれが挙げられます。胃の動きが悪いと、食べた物や胃液などが十二指腸に送り出されず、胃にたまります。こうなると、食欲が失われたり、食べた物がいつまでもみぞおち付近でこなれていないように感じたり、腹部膨満感やむかつきなどの症状が出てきたりします。胃もたれが起こる原因は、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎ、ストレスなどです。

 次に、胸焼けが挙げられ、胃液が食道に逆流して、酸っぱいものが込み上げてくるものです。原因となるのは、食べすぎや飲みすぎ、前かがみの姿勢を長時間に渡って続けることなどです。また、胃が膨満したために、ぞうきんを絞ったような形をしている胃と食道のつなぎ目が緩んでしまうと、胸焼けになります。肥満や妊娠によって腹圧がかかったり、便秘で胃が圧迫されたりして、胸焼けが起こることも。

 さらに、みぞおちの痛みが挙げられます。胃が過度に膨らんだり、緊張したりすると、胃壁にある神経が突っ張ったり、縮んだりして、痛みが発症します。また、胃酸の分泌が多すぎても、潰瘍が起きた時のような痛みが起こります。ただし、病院で内視鏡検査を受けても、実際には潰瘍はありません。みぞおちの痛みは、胃粘膜が直接胃酸の刺激を受ける空腹時、夜間に起こりやすくなります。原因は、ストレス、不規則な生活、食べすぎ、飲みすぎなどです。

■機能性胃腸症の検査と診断と治療

 胃もたれ、胸焼け、みぞおちの痛みなど気になる症状があれば、病院や診療所へ。胃の疾患は、医師でも症状だけでは判断できないことが多く、検査が必要です。定期検診で異常が見付かることも多いので、検診は積極的に受けましょう。  

 機能性胃腸症、ないし機能性ディスペプシアと診断されたら、投薬としてモリプサドなどの消化管運動機能改善薬が与えられます。さらに、胃もたれには、消化を助ける消化酵素薬(健胃薬)が与えられ、胸焼けや潰瘍症状型には、H2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制薬が与えられます。このH2ブロッカー胃腸薬は市販もされていますが、発疹(ほっしん)や脈の乱れなどの副作用がみられることもあるため、購入する際は薬剤師に相談を。

 各種の症状を伴う混合型の場合には、抗うつ剤、精神安定剤が有効なことがあるので、プラスされます。

 なお、薬を飲んでもよくならない、胃の症状以外に黒い便が出るなどほかの症状を伴う場合は、胃・十二指腸潰瘍や胆石、膵(すい)臓の疾患、がんなど原因となる疾患が潜んでいるかもしれません。自己判断をせず、消化器の専門医に相談します。

 機能性胃腸症、機能性ディスペプシアの症状の軽減には、薬の服用とともに、過剰なストレスを避け、胃や腸に負担をかける生活習慣を改善することが有効です。

●ストレスをためない

 胃は、ストレスの影響を強く受けます。胃が自律神経の働きと密接にかかわっていて、ストレスによって自律神経が乱れると、胃の動きや胃酸の分泌が影響を受けるためです。 疲れたなら、ゆっくり体を休め、心と体をリラックスさせましょう。趣味や運動などで、気分転換を図ることも大切。ウオーキングなど軽く汗ばむほどの運動は、自律神経のバランスを取り戻すのにも効果があります。 

●よく噛んで食べる

 「胃腸の調子がおかしいな」と感じたら、食事の量を控えめにして、少量ずつ、よく噛(か)んで、ゆっくりと食べましょう。満腹になるまで食べると、胃の蠕動(ぜんどう)運動が妨げられ、胃がもたれやすくなりますので、腹8分目程度が胃の動きがスムーズ。よく噛んで食べれば、唾液(だえき)がたくさん出て消化を助けてくれます。

 空気も一緒に飲み込み、おなかが張ってしまう早食いは、好ましくありません。また、食事は1日3食、決まった時間にとりましょう。長時間、食事をしないと、その間は胃酸が薄められず、胃に負担がかかるからです。食後には、20〜30分ほどの食休みをとりましょう。食後すぐに活動すると、血液が体を動かす骨格筋に回ってしまい、胃腸への血流が減って消化活動が低下します。

●胃に優しい食材を選ぶ

 胃の粘膜を保護する成分を食材としては、ビタミンUを含むキャベツ、ムチンを含むオクラやヤマイモ、加熱しても壊れにくいビタミンCを含むジャガイモなどが挙げられます。また、でんぷん質を分解する消化酵素を含んでいるダイコンや、豆腐、鶏(にわとり)のささ身、牛乳、豆乳など消化のよい食材もお勧めです。

 逆に、胃にとどまる時間が長い脂っこい物、繊維質が多い物、甘味や塩気が強い物、香辛料、極端に冷たかったり熱かったりする物は、避けたいところです。アルコール、コーヒー、緑茶も、飲みすぎに注意を。  

●便秘を治す

 胃もたれや胸焼けは、便秘が原因で生ずることもあります。この場合、腸の働きの改善を図りましょう。


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急性腸炎

■細菌感染による急性腸炎に注意

 急性腸炎とは、消化管である腸管が炎症を起こした状態をいい、その経過が急性のものを指します。多くは、まず急性胃炎に始まり、次いで小腸、大腸に炎症が波及します。

 この急性腸炎は、感染性のものと非感染性のものに分けられます。病気の程度は、寝冷えをしておなかを壊した、風邪を引いて下痢をしたなどという軽症のものから、コレラや赤痢などという重症のものまで、原因によってさまざまです。

 原因もさまざまでな中で、細菌感染によるものが多くみられます。細菌感染では食中毒の原因となる細菌がよく知られていて、腸炎ビブリオ菌、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、カンピロバクター菌、ウェルシュ菌、病原性大腸菌O-157などが挙げられます。

 いわゆる伝染病を引き起こす細菌では、赤痢菌、腸チフス菌、パラチフス菌、コレラ菌などが挙げられます。

 細菌感染以外に、ウイルス、真菌、原虫、寄生虫などの感染も原因になりますが、ウイルスを除けば多いものではありません。ウイルスが感染して起こる急性腸炎には、流行する傾向があります。腸管ウイルスのエンテロウイルスによるもの、乳児下痢症の原因となるロタウイルスによるものが多くみられます。

 非感染性の急性腸炎では、暴飲暴食など飲食の不摂生、特定の食べ物に対するアレルギー、抗生物質などの薬剤、風邪や寝冷え、暑さなどによる一時的な体調不良によるものなどが挙げられます。また、鉛、水銀、砒(ひ)素などの化学物質中毒、有毒魚介類中毒、有毒キノコ中毒によるものもあります。

■下痢が主症状で、高齢者や子供は脱水症も

 非感染性の急性腸炎では、多くは軽症であり、普通は下痢が主な症状で、せいぜい吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、おなかがゴロゴロする腹鳴(ふくめい)を伴うくらいです。高熱が出ることはほとんどなく、症状は大抵2~3日で治まります。ただし、薬剤に起因する急性腸炎の中で抗生物質が原因のものは、適切な治療を行わないと重症化するケースがあります。

 感染性の急性腸炎では、主に下痢、腹痛が起こり、しばしば急性胃炎を合併するために胃の重苦しさ、胃痛、吐き気、嘔吐を生じることがあり、一般に高熱も出ます。非感染性の急性腸炎よりも症状が激しく、症状の出方も原因、年齢によって異なるので、注意が必要です。

 下痢は、炎症が大腸や直腸に広がるほど強くなり、1日2~3回から20回以上になることがあります。便は、水様便のほか、大腸が侵されると粘液が多量に混じり、時に血便のこともあります。

 また、食べた物が小腸でほとんど消化されずに、消化不良便になっていることもあります。腸内からできるだけ早く、病原菌やウイルス、毒素などを体外に出してしまおうとする生理的な働きによるものです。

 腹痛は、へその辺りに重苦しい痛みが出たり、鈍痛や、数分ごとに痛くなったり、軽くなったりを繰り返す場合もあります。

 合併症としては、激しい下痢により体内の水分や、ナトリウム、カリウムなどの電解質が失われ、体液が不足して起こる脱水症が重要です。口が渇き、全身の脱力感が強くなります。

 高齢者の場合は、発熱、腹痛などの症状が出にくくなる反面、脱水症にはなりやすいという特徴があります。口が渇き、舌が乾燥していたら、脱水症の危険があります。また、体力的に余裕のない子供の場合も、脱水症になりやすいので、下痢をして元気がなくなってきたら要注意です。 

 感染性の急性腸炎では、治療を怠れば長時間、症状が持続します。時には、激しい中毒症状から発熱、うわ言などの脳症状を合併して、死亡することもあります。家庭で対処はできませんので、医師による治療が必要です。

■薬物療法と食事療法による治療

 医師の側では、便の検査を最も重視し、細菌は培養して確定診断をします。

 ごく軽い急性腸炎は、医師がほとんど治療をしなくても、自然に治ることもあります。一般には、安静にし、腹部を温め、有害物質が腸内に残存すると思われる場合には、初期に下剤を服用して一掃します。

 また、細菌感染によるものは、サルファ剤や抗生物質を使用しますが、治療はすべて医師の指示のもとに行います。自己判断は耐性菌を作って経過を悪くしたり、長引かせたりするので避けてください。 

 初期の食事はついては、口の渇きに応じて番茶、果汁、薄いスープくらいを摂取します。下痢が激しい時には、医師によって適切な点滴が行われます。

 急性症状の回復に伴って、重湯、くず湯、脂肪の少ないスープなどの流動食から、おかゆ、うどん、トースト、ビスケットなど半流動食や半熟卵、脂肪の少ない魚肉、煮野菜などを摂取します。牛乳は1、2日は使用せず、その後から飲用します。

 果汁はよいのですが、生の果物は控えます。サイダー、酒、香辛料も避けましょう。熱すぎるものや、冷たすぎるものもよくありません。


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肛門周囲膿瘍

■肛門腺に炎症が及んで、肛門の回りに膿がたまる疾患

 肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)とは、肛門の回りに膿(うみ)がたまる痔疾。肛門がはれて痛みを生じ、発熱します。

 肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分に相当する歯状線のくぼみ部分、すなわち肛門小窩(しょうか)が深い人に、軟らかすぎる下痢便などで傷が付くと、大腸菌などの細菌が入り、肛門腺(せん)に炎症が及んで、そこに発生する細菌感染で膿を作ります。この膿が直腸の周囲から肛門周囲の組織の間を潜って広がり、いろいろな場所にたまることになります。

 この膿の集まりである膿瘍が、運よく皮膚に近くて、皮膚を破って外に出たり、または一時的に小切開手術が行われると、慢性の瘻孔(ろうこう)として残ります。この慢性瘻孔があな痔(痔瘻)です。

 一方、膿の集まりである膿瘍が、組織の間の奥深い場所にあると、皮膚に通じる出口がないため、大きな深部膿瘍を作ったり、そこからいくつも瘻孔の枝道を作って皮膚を破ったり、さらに直腸へ破れたり、肛門周囲の皮膚に破れて、いろいろと複雑化します。

 肛門周囲膿瘍には、膿瘍がたまる場所によりいろいろな型があり、粘膜下や皮下にたまるもの、内外肛門括約筋の間にたまるもの、外肛門括約筋の外側の座骨直腸窩にたまるもの、骨盤直腸窩にたまるものがあります。

 肛門周囲膿瘍の症状としては、肛門周囲の一部に、しこり、焼けるような感じ、はれ、痛み、寒け、発熱、吐き気などがあります。出血することはまれなものの、時に血膿が出ます。一晩で急速にひどくなる場合もあります。

 膿瘍が深部にある場合は、初めははっきりした症状がなかったり、熱と肛門の奥の違和感だけがあったりしますが、次第に症状が出てきます。進行すれば、排便や歩行が困難となります。

 連日アルコールを飲む、暴飲暴食、それに伴う睡眠不足などで無理が続くと、肛門周囲膿瘍が起こりやすくなります。

■肛門周囲膿瘍の検査と診断と治療

 ほとんどの肛門周囲膿瘍は、切開して膿を出さないと治りません。できるだけ早期に小切開を行って膿を排出させて、周囲への炎症の波及を防止し、同時に抗生物質や鎮痛剤を用います。急性炎症がとれてから、二次的に根治的な切開をします。

 膿瘍を小切開後も膿が出続けると、慢性の瘻孔、すなわちあな痔(痔瘻)となりますので、その後にあな痔になることも考えて、医師の側は適切な切開をすることが重要となります。

 特に、座骨直腸窩膿瘍は肛門周囲の左右に深く広がることが多いので、腰椎(ようつい)麻酔の一種であるサドルブロック麻酔を行った上で大きめに切開し、軟らかい管を入れて、膿を排出します。局所麻酔で中途半端な切開をすると、あな痔になる可能性がさらに高くなります。あな痔に進展した場合は入院の上、根治手術をする必要があります。

 日常生活では、下痢や便秘をしないように、ふだんから注意します。体力が落ちて、体の免疫力が落ちた時にかかりやすいので、適度の運動と規則正しい食事、睡眠も必要です。アルコールや香辛料は控えめにします。


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■成人の3人に1人が悩む国民病■ 

 虫歯に次ぐ「第2位の国民病」といわれているのが、お尻のトラブル、すなわち痔(じ)。成人の3人に1人が、その症状に悩んでいるとされています。

 正確には、痔とは肛門(こうもん)周辺の病気の総称で、大きく分けて3種類、「痔核(じかく)」、「裂肛(れっこう)」、「痔瘻(じろう)」があります。最も多いのが痔核で、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

 痔核は通称「いぼ痔」と呼ばれ、肛門周囲の静脈がふくらんで、こぶになったものです。直腸側にできる「内痔核」と、肛門部にできる「外痔核」があります。

 内痔核は、肛門の中の直腸静脈に静脈血がたまって、感染と腫脹を起こしてできた静脈瘤です。排便、立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかると、静脈瘤ができます。不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて、だんだんうっ血し、直腸の静脈瘤が腫(は)れてきて、内痔核になります。

 この内痔核の症状は、「出血」です。拡張した静脈瘤から出血し、赤い血が飛び散ります。進行すると、出血だけでなく、痔核がだんだん大きくなり、肛門の外に飛び出して「脱肛」になります。重症の内痔核による脱肛者には、医療機関での手術が必要になります。

 外痔核のほうは、肛門の外側で目に見えるところに、皮下の静脈が血栓や静脈瘤を形成したもので、炎症を起こし腫れています。この外痔核も強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。

 裂肛は通称「切れ痔」と呼ばれ、肛門部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのが特徴です。便秘している硬い大便が、肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷ついて出現します。「急性裂肛」の場合には、便を軟らかくしておけば治りますが、裂肛が慢性化すると、排便時には激痛が起こり、ひどくなると、排便後も痛みが長く続きます。 

 痔瘻の通称は「あな痔」で、肛門と直腸の境にあって、分泌物を出している歯状腺という組織が感染して、膿(うみ)がたまり、それが破れて出た跡に瘻管、ないし瘻孔と呼ばれる膿が出る穴ができる病気です。慢性化し、炎症を起こした穴からは、肛門の外側にいつまでも膿がじくじくと出ます。激しい痛みや発熱を伴い、肛門がんになることもあるので、100パーセント手術が必要とされています。

■悪化させない生活習慣が大切■

 肛門周辺に起こる炎症が、お尻のトラブルである痔の原因ですが、炎症を引き起こすのは「便秘」、「下痢」、「肉体疲労」、「ストレス」、「冷え」、「飲酒」といった生活習慣です。中でも、便秘や下痢などの排便の異常は、痔の最大要因となります。

 便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、裂肛や痔核を招くもとになります。逆に、下痢の軟らかすぎる便も、痔瘻をつくる切っ掛けになります。

 また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。

 さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、抹消血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。

 過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。   

■セルフケアと薬が治療の基本■

 どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。

 どんないい薬を使おうと、生活習慣を変えない限り、痔は治りません。手術が必要な痔瘻を除いて、生活習慣の改善と、薬で症状を軽くしていく保存療法が、治療の基本になります。

 日常のセルフケアには、三つのルールがあります。第一には、病名がきちんと診断されていること。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えているので、「本当に痔なのか、ほかの病気は隠れていないのか」、専門の肛門科医に診察してもらうことが必要です。

 とりわけ痔の場合、どんなに不快な症状があっても病院へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる病気ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

 第二には、医師や看護師などの指導を受けて、計画を立てて行なうこと。第三には、長続きできる方法で行なうことです。 

 日常生活におけるセルフケアのポイントを挙げれば、排便のコントロールで、規則正しい便通習慣をつけることが大切です。便意を感じたら我慢しないでトイレに行くこと、便意がないのに息むと肛門に負担を強いるのでトイレは3分で切り上げることも、痔の予防や治療のために心掛けたい習慣です。

 食物繊維を多くとるなど、食事を見直すことも大切。肉体疲労やストレスは痔を誘発するだけでなく、健康も損なうので、休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスをはかるようにします。

 冷え対策としては、冬よりも夏の冷房に要注意です。特に、電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

 飲酒については、酒を断つ必要はありませんが、適量を心掛けましょう。アルコール代謝能力には個人差があるため、ほろ酔い程度が適量となります。

■医療機関における治療■

 病院で医師が薬を使うのは、痔による痛みや出血、腫れを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

 日常生活のセルフケアと薬による保存療法を行なっても、効果や改善がみられないケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっていますし、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で、痔核、裂肛、痔瘻を治療している施設もあります。

 内痔核には、「保存療法」、「切らない治療法」として肛門を清潔にして、便秘や下痢にならないように便通を整える目的で、座薬や軟膏を使用したり、鎮痛剤や抗消炎剤を投与します。

 この内痔核や脱肛の患者には、PPHと呼ばれる自動縫合器による直腸粘膜切除術が日本でも行なわれるようになり、普及しつつあります。PPHという新しい痔の手術法は、1993年にオーストリアのセントエリザベス病院の大腸・肛門外科部長により開発されたもので、治療の対象になるのは主に内痔核。特殊な専用機器で下部直腸粘膜にできた内痔核を上に押し上げ、機器で簡単に切除し、縫合します。手術後の肛門がきれいで、手術後の痛みが少ないのが特徴で、日帰り手術も可能ですが、日本では健康保険に採用されておらず自費となります。

 外痔核の場合、座薬や軟膏の塗布や温浴などにより多くの方が軽快しますが、なかなか治らない場合に手術が行なわれます。

 痔瘻の場合、座薬や軟膏などの外用薬で出血や痛み、腫れなどの症状を和らげた上で切開処置しても、再発を繰り返し、なかなか自然治癒しません。手術で切り取るケースが、ほとんどとなります。

 

 痔の予防と痔を悪化させないための注意事項 

 1)お風呂は毎日入る

 2)肛門を清潔に保つ

 3)規則正しい便通習慣をつける

 4)食物繊維を多くとり、便秘や下痢をしないように注意する

 5)トイレでは、強く息まない

 6)十分な休養と睡眠を心掛け、リラックスをはかる

 7)アルコールは適量、あるいは飲まない

 8)おしりを冷やさない

 9)長く座ったままの状態でいない

 10)便器は、シャワー付き・便座ヒーター付きを利用する


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食道炎

■急性食道炎と逆流性食道炎

 食道炎とは、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こった疾患。炎症が粘膜の下にまで深く及び、強いただれの起こった食道潰瘍(かいよう)も、本質的には食道炎に含みます。

 この食道炎は、急性食道炎と逆流性食道炎に大別されます。急性食道炎は物理的刺激、化学的刺激、かび、細菌感染で起こり、逆流性食道炎は胃液、十二指腸液の食道への逆流によって起こります。

 急性食道炎

 急性食道炎は、熱い食べ物、冷たい食べ物の摂取した時や、魚の骨、義歯といった異物を飲み込んだ時、抗生物質、鎮痛剤、鉄剤、カリウム錠を就寝前に水なしで服用した時に起こります。

 さらに、全身衰弱のある時にはウイルス性食道炎があり、抗生物質、抗がん剤の服用時には、かびの一種が繁殖して起こるカンジダ食道炎もあります。そのほか、酸性やアルカリ性の液体を誤って飲み込んだり、自殺の目的で飲み込んで起こることもあります。

 軽いものは特に症状がないこともありますが、通常は食道に沿って灼熱(しゃくねつ)感があったり、胸焼けが起こります。食べ物が食道に残留している感じを伴うこともあります。

 逆流性食道炎

 正常な人では、胃の入り口である噴門が閉じて、胃の内容物の食道への逆流を防いでいます。たとえ多少の逆流があっても、食道の収縮運動で再び胃内へ戻す働きもあります。

 しかし、手術で胃を全部切除した人は噴門の働きがなく、胆汁の逆流によるアルカリ食道炎を起こします。食道裂孔ヘルニアなどの疾患があると、寝たり、前かがみになったり、食後には、胃液が食道へ逆流して食道炎が起こります。

 膠原(こうげん)病の合併症としてのものや、胃・十二指腸潰瘍でピロリ菌の除菌治療後に発症することもあります。しかし、逆流性食道炎の大部分は、胃酸逆流によるものです。

 この胃酸逆流によるものは、胃食道逆流症(GERD)とも呼ばれ、食道裂孔ヘルニアがなくても起こります。高齢者に多く、近年増加しつつあります。

 症状としては、胸焼け、胸痛が主なもので、狭心症と似ていることもあります。また、早朝の咽頭(いんとう)部の不快感、せきなどもあり、気管支ぜんそくにも似ていることがあります。重症になると、嚥下(えんげ)障害を起こすこともあります。

 食道炎が慢性に経過すると、障害された食道粘膜上皮がなくなり、胃粘膜上皮で覆われることがあり、バレット上皮食道と呼ばれます。ここには食道がんが発症しやすく、注意が必要です。

■食道炎の検査と診断と治療

 食道炎の診断に際しては、内視鏡検査が最も重要な検査の一つです。それは、各食道炎により特徴的な内視鏡像を呈するからです。

 急性食道炎の治療では、原因となっているものをやめ、重症の初期には絶食も必要です。軽ければ飲食を取り、食道粘膜を保護するように心掛けます。また、傷を治す薬を内服します。

 逆流性食道炎の診断でも、内視鏡検査が重要ですが、近年、内視鏡検査でも診断のつかないケースがしばしばあることがわかったため、半日ないし1日の食道内の酸度を連続測定する24時間PH(ペーハー)モニターという方法を行うことがあります。そのほか、逆流を防ぐ噴門の働きや、逆流した胃液を再び胃内へ戻す収縮力が、どのくらいのレベルまで低下しているかを詳しく調べる食道内圧測定もあります。

 逆流性食道炎の治療では、胃酸分泌を抑える薬が効果的。症状が長引いてる場合には、逆流をしないように手術をしなければならないこともあります。

 日常生活における注意としては、脂肪食の制限、禁煙、就寝時に上体を高く上げて胃液の逆流を防ぐ、などがあります。腹部を圧迫しないこと、便秘を避けること、さらに太りすぎの人は標準体重に近付けること、なども大切です。


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虫垂炎

■盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、腹部の痛みを感じる疾患

 虫垂炎とは、盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、上腹部の鈍痛、右下腹部の激痛を感じる疾患。俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれています。

 盲腸は大腸の始まりの部分で、先端から少し上に小腸が大腸につながる回盲部があり、小腸で消化された便が回盲弁から大腸に入り、上行結腸に向かって移動します。虫垂は盲腸の先端に突起している部分で、直径1cm以下、長さ5~10cm程度のミミズのような細い管状のものです。

 虫垂炎は俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれていますが、盲腸炎は実際のところ、虫垂炎の炎症が盲腸にまで及んだもののことをいいます。従って、正しくは虫垂炎と盲腸炎とは異なるものの、虫垂炎がひどくなってから発見された場合は、症状が進んで盲腸炎になっている可能性は十分にあります。

 虫垂炎の根本的な原因は、現在も不明とされています。一般的に有力視されているのは、暴飲暴食、胃腸炎、便秘、過労などによって、虫垂内部のリンパ組織が増殖したり、体内で作られた糞石(ふんせき)といわれる結石が虫垂にたまったりすると、虫垂の中が狭くなって血行障害を引き起こし、そこに細菌やウイルスが感染することで炎症を起こすという説です。家族内の体質が誘因となると考えられていますが、まだ確実なことはわかっていません。

 炎症を起こすと突発的に腹痛が起こるのが特徴で、最初は上腹部の不快感や鈍痛を感じ、その後に右下腹部の激痛を感じ、その場所が限定されてきます。へそから右の腰骨までの線上の外側3分の1の部分を押すと痛みを覚え、この痛みが限定された部分を圧痛点と呼びます。圧痛点には、マックバーネー圧痛点、ランツ圧痛点、キュンメル圧痛点があります。

 そのほか、発熱、食欲減退、吐き気、便秘、嘔吐(おうと)などがみられ、歩いたり飛んだりすると右下腹のつれるような痛みが走ります。症状が悪化すると、虫垂に穴が開いて、うみが横隔膜や骨盤内にでき、全身にも高熱が生じて脈が速まり、血圧も低下してショック状態となります。最悪の場合は、死亡することがあります。

 消化管の外科的な疾患としては最も多いものの一つで、10~20歳代の青少年期に多く、全体的には約5パーセントの人がかかると推定されます。

■虫垂炎の検査と診断と治療

 腹部が痛むなど異変を感じた場合は、早めに医療機関を受診するようにします。虫垂炎の専門科は、消化器科か外科。初期症状だけでよくわからないという場合は、とりあえず内科、子供であれば小児科を受診してもよいでしょう。発症後放置して、治療が遅れてしまうと、虫垂の穿孔(せんこう)や腸管の癒着、腹膜炎を併発する可能性があります。

 医師の側では、まず症状、病歴、生活習慣などについて問診し、腹部を触診して痛みの場所を明らかにし、腹膜炎の併発がないかを調べます。腹膜炎がある場合の特徴は、患部を押さえた手を離すと痛みが響いたり、触っただけでおなかが硬くなったりします。

 ほかに発熱の確認と、血液検査で白血球数や血清アミラーゼが高値であることを確認をします。炎症が進行したものでは、腹部超音波検査や腹部CT検査で虫垂の形態的な変化を確認するほか、糞石がないか、腹水がたまっていないか、卵巣嚢腫(のうしゅ)などがないかを確認することがあります。

 初期で軽度の場合には、抗生物質の投与などの内科的治療も行われますが、虫垂炎は再発の可能性が高いため、ほとんどは外科的手術により、虫垂の摘出を行います。従来は右下腹部を数cmに渡って切開する開腹手術をしていましたが、近年では腹腔(ふくくう)鏡で手術をすることも可能になっています。

 腹腔鏡での手術は、傷が極めて小さく、退院までの日数も短縮できます。しかし、炎症の激しい虫垂炎や過去に腹部の手術を受けたことがある人には向いていません。疾患の状態によって、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらを選択するかが決まってきます。

 手術後の食事は、炎症の程度によって異なります。炎症が軽症の場合は、術後翌日から水分を取り、おならが出れば流動食の食事を開始します。炎症が重症の場合でも、術後2~4日程度で食事を開始することができます。

 虫垂の穿孔が起こり、 炎症が注意の周囲の臓器や周囲に及び、腹膜炎を起こしている場合には、おなかを大きく切開する開腹手術が必要で、治療にも長い期間が必要になります。虫垂周辺の膿汁(のうじゅう)や腹水を取り除き、おなかの中を十分洗浄して、腹腔内の浸出液を体外に誘導し排出するための管を入れて起きます。管を入れる時は、傷口を縫い合わせず、開いたままで治します。管をいつ抜き取るかは、状態によって異なりますが、通常開いた傷が治癒するまで2~3週間を要します。


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直腸ポリープ

■直腸の粘膜の一部が隆起したもので、がん化する可能性も

 直腸ポリープとは、大腸の最終部に当たる直腸の粘膜の一部が隆起したもの。大腸ポリープ全体の7割が、直腸に近い部位にできます 。

 ポリープの形は、茎のある有茎性できのこ状のものと、無茎性でいぼ状のもの、平らに隆起したものなどあります。また、発生の仕組みから、大きく腫瘍(しゅよう)性のものと非腫瘍性のものに分類されています。腫瘍性のポリープには、良性の腺腫(せんしゅ)と、がん化した悪性の腺がんがあります。一方、非腫瘍性のポリープには、若年性ポリープ、過形成ポリープ、炎症性ポリープがあり、がん化する可能性はありません。

 大腸がん、直腸がんの発生と同じく、動物性脂肪や蛋白(たんぱく)質の消費と関係があるといわれていますが、原因についてはわかっていません。

ポリープが小さい場合は、ほとんどが無症状です。ポリープが大きくなってきたり、がん化すると、便に血液や粘液が付着し、排便後に残便感が生じる場合もあります。また、肛門(こうもん)に近い部位にあるポリープは、排便の際に肛門から脱出する場合もあります。

 ほとんどが無症状であるため、人間ドッグの大腸肛門内視鏡検査などで偶然に確認されることがほとんどです。

■直腸ポリープの検査と診断と治療

 直腸ポリープに気付いた場合、またはその疑いがある場合は、肛門科、大腸肛門科の専門医を受診します。

 肛門に近い場所では、大腸肛門外来での診察で多く発見されます。詳しく調べるには、硬性直腸鏡、S状結腸内視鏡検査、または全大腸内視鏡検査が必要です。必要に応じて粘膜の一部を採取して調べる生検が行われます。良性か悪性かの区別が重要です。

 ポリープの数が1個か2個で、小さな場合は、そのまま放置して経過をみることがあります。まれに、ポリープが壊死(えし)して自然に治癒することもあります。

 一般にポリープのサイズが1センチを超える場合、複数の個所にポリープがあるポリポージスの場合には、診断と治療を兼ねて、すべてのポリープを内視鏡により切除します。近年では拡大内視鏡を用いることにより、または熟練した内視鏡医であれば、ポリープを切除する前にある程度の悪性度の判断がつくため、すべてのポリープを切除する必要はありません。治療後に、良性か悪性かを詳しく調査します。

 内視鏡で切除できない大きさのポリープの場合は、肛門側から器具を使って切除手術を行います。近年では、より肛門から遠い直腸でもポリープが確実に切除できるような器具が開発されています。がん化しているものは、開腹手術が必要となります。

 治療後も、追跡検査が大切です。ポリープでは新たな腺腫、およびがんの発生頻度が高いため、医療機関によっては1〜3年後に全大腸内視鏡検査を行っていますが、その間隔はそれぞれの危険因子により決定されています。


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マロリー・ワイス症候群

■激しい嘔吐により、食道と胃の境界付近の粘膜が裂けて出血する疾患

 マロリー・ワイス症候群とは、激しい嘔吐(おうと)によって、食道と胃の境界付近の粘膜が裂けて出血する疾患。出血により吐血、または下血を起こします。

 疾患名は、1929年に初めて報告した2人の医師、ジョージ・ケネス・マロリーとソーマ・ワイスに由来します。日本における発症は男性に多く、発症年齢は平均45〜50歳とされています。

 一般に酒を飲んだ後に嘔吐して起こることが多いのですが、胃と十二指腸の境界部にある幽門に狭窄(きょうさく)があるために、胃から十二指腸への食べ物の通過が悪くなって嘔吐する時や、食中毒、乗り物酔い(動揺病)、妊娠中のつわりで嘔吐する時、腹部を打撲した時、排便時に力んだ時にも起こります。

 むかつきがあるなど強い圧力が胃に加わると、胃の幽門は閉じて、幽門近くから縮まり、胃の中のものを上に押し上げます。これによって、食道と胃の境界付近がアコーディオンのように押し込められて、中の圧力が著しく高くなり、ついには粘膜に縦長の裂傷ができて出血します。

 症状は、吐血、下血のほか、鋭い胸の痛み、呼吸困難、立ちくらみなどがあります。吐血は強い嘔吐を何度か繰り返した後にみられますが、1回目の嘔吐で吐血することもあります。鋭い胸の痛みを伴う場合は、特発性食道破裂の可能性があります。

 大量出血した場合は、精神的な影響も加わってショック状態となり、意識はもうろうとなります。

■マロリー・ワイス症候群の検査と診断と治療

 ほとんどのケースで保存的治療が可能ですので、嘔吐した時や出血した場合は、なるべく早く内視鏡検査が行える診療所、病院を受診します。

 医師は一般の血液検査で、貧血の状態をみます。裂傷部分の判定には、以前は胃X線検査を行っていたのですが、裂傷部が浅い場合はわからないため、現在は上部内視鏡検査(胃カメラ)を行っています。内視鏡検査では、どこから出血しているか、裂傷の深さ、大きさ、出血がどのような形態か、すなわち動脈性か、じわじわとした出血か、すでに止まっているかなどを観察します。

 治療としては、軽症で出血が少ない場合は入院して、安静と絶食をしながら点滴を受け、裂けてしまった粘膜が自然に止血して回復するのを待ちます。出血が多く続く場合や、出血が止まっていても避けている部分が大きくて再出血する可能性が高い場合は、内視鏡下でレーザーを使って粘膜の裂傷部分を閉じ止血処置をします。止血処置には、裂傷の露出している血管にクリップをかける方法、血管を電気焼灼(しょうしゃく)する方法などがあります。

 処置後は、安静、絶食、点滴などの治療を行い、裂傷の治療としてH2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制剤を服用します。

 大量出血した場合は、輸血が必要となることもあります。止血に時間がかかる場合は、内視鏡下で止血し、それでもなお止血が困難であれば手術をすることもあります。なお、食道破裂の場合は、すぐに手術する必要があります。


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裂肛(切れ痔)

■肛門部の皮膚の外傷で、強い痛みがあるのが特徴

 裂肛(れっこう)とは、肛門部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのを特徴とする痔疾。一般的には、切れ痔(じ)とも呼ばれます。

 肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、その症状には成人の3人に1人が悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、痔核(いぼ痔)、この裂肛(切れ痔)、痔瘻(じろう:あな痔)があります。痔核が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

 裂肛は、便秘している硬い大便が肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷付いて出現します。具体的には、肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分である歯状線よりやや前にある肛門上皮が傷付きます。ここは普通の皮膚より薄いため、硬い便によって切れたり裂けたりしやすいのです。

 放置して慢性化すると、大腸菌などの感染によって傷は深くなり、内括約筋を含めて硬くなって、肛門は狭くなります。そのためますます便が出にくく、傷も治りにくくなり、排便後、強い肛門痛が起こります。ひどくなると、数時間から半日以上続きます。

 そのため、肛門上皮の側と直腸粘膜の側に、いぼ状の突起ができたり、小さな潰瘍(かいよう)ができたりします。裂肛の肛門上皮の側にあるいぼは、直腸粘膜の側にも裂肛があることを示すので、見張りいぼといわれます。まれに出血することもあるものの、トイレットペーパーでふいた時に少量の鮮血が付着する程度です。

 裂肛は普通、肛門の後ろにできますが、女性では前にもできます。

■裂肛の検査と診断と治療

 裂肛(切れ痔)などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

 どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

 医師による治療では、出血や痛み、はれに対して座薬や軟こうを局所に用います。消炎剤の服用も、時に痛みやはれなどに効果があります。便を軟らかくすることを目的に、弱い下剤である緩下剤、軟便剤を服用することもあります。医師が薬を使うのは、痛みや出血、はれを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

 初期のうちの裂肛は、薬と排便の調整によって、たいてい治ります。裂肛の治療中は、排便後に入浴するなどして、肛門周辺を清潔にしておくことが望まれます。

 薬と排便調整による保存療法を行っても、効果や改善がみられないケース、肛門が狭かったり潰瘍ができて進行したケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっており、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で裂肛を治療している施設もあります。

 手術でも、単純なものは内括約筋をわずかに切開するだけです。複雑なものは潰瘍とその周囲の組織を取り除き、近くの皮膚をずらして覆います。

 どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。裂肛は、悪化させない生活習慣が大切です。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒といった生活習慣です。

 中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、裂肛を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。食物繊維を多く取るなど、食事を見直すことも大切。

 また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

 さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

 過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。


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ロタウイルス腸炎

 ロタウイルス腸炎とは、オーストラリアのビショップが1975年に発見したロタウイルスの感染により、乳幼児に起こる腸炎です。冬季に気温が5℃以下になると、流行することがあります。別名は、乳児嘔吐(おうと)下痢症、仮性小児コレラ、白色便性下痢症など。

 発展途上国では乳児死亡の主な原因の一つに挙げられていますが、生後6カ月から2歳までの乳幼児が好発年齢であり、発病すると重症化しやすくなります。3カ月未満では母親からの免疫で守られ、3歳以上の年齢層では発病しても一般には軽症です。

 症状としては、1日に数回から十数回の下痢が5~7日続き、酸っぱい臭いの、白い便が出ることが特徴です。発病初期には吐き気、嘔吐を伴うのが普通ですが、通常、半日から1日で落ち着きます。軽い発熱と、せきを認めることもあります。

 ロタウイルスは感染力が強く、下痢便中に大量に排出されるウイルスなので、便に触った手から、口に感染することがほとんどです。乳幼児の世話をする人は、便とオムツの取り扱いに注意が必要です。せっけんを使って十分に手洗いをし、漂白剤や70パーセントアルコールの消毒液で、オムツ交換の場所や周辺をふきましょう。

 ロタウイルス腸炎には、特効薬はありません。医師による治療では、嘔吐の時期には絶食、絶飲、吐き気が治まると、下痢による脱水症状を改善するための対症療法が用いられます。水分投与から始まり、徐々に増量し、さらに野菜スープなどへと進め、脱水と電解質の補給が行われます。

 脱水症状の兆候としては、ぐったりしている、機嫌が悪い、顔色が悪く目がくぼんでいる、皮膚の張りがない、唇が乾燥しているなどが挙げられます。これらの脱水症状の兆候が見られたら、できるだけ速やかに医療機関を受診することが、体力のない乳幼児にとって大切なことです。


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アルコール性肝障害

■肝臓を障害する長期の大量飲酒

 アルコール性肝障害とは、酒の飲みすぎによって肝臓が負担を受け、発症する病気の総称です。

 アルコール性肝障害で最初に生じるのは、アルコール性脂肪肝です。肝細胞に中性脂肪がたまって肥大化し、肝臓が全体的に腫(は)れます。軽い腹部不快感や疲れやすさ、食欲不振、やせなどがみられます。大量飲酒者のほとんどにアルコール性脂肪肝は認められますが、通常は無症状。

 なお大量飲酒を続けると、やがて約2割の人にアルコール性肝炎が起こります。発熱、黄疸(おうだん)、右上腹部痛、肝臓の圧痛、食欲不振、吐き気、下痢などの自覚症状が現れます。

 非常に重症になる場合もあり、入院治療が必要です。重症型アルコール性肝炎と呼ばれる病態になると、肝性脳症、肺炎、急性腎(じん)不全、消化管出血などの合併症やエンドトキシン血症などを伴い、死亡することもあります。

 幸い重症化しない場合でも、長期に大量飲酒を続け、肝臓への負担が増加するとアルコール性肝線維症をへて、線維化がますます進み肝臓の働きも低下するアルコール性肝硬変になる場合があります。黄疸や疲れやすさ、腹部不快感、右上腹部痛、吐き気、吐血などの症状が出てくることが多くなります。

 アルコール性肝障害の原因としては、アルコールが直接、肝臓を障害することが挙げられます。問題となるのはアルコールの量で、酒の種類は関係ありません。肝臓はアルコールや薬、不要物などの代謝解毒を行っていますが、アルコールを長い間飲み続けると、肝臓が常に負担を受け続けるために、障害が出てくるのです。

 同時に、酒飲みは栄養のある食事を取らないことが多く、とりわけ蛋白(たんぱく)質 の不足が肝臓を悪くする原因の一つになっています。

 およその量として、日本酒にして毎日3合くらいを5年以上飲み続けているとアルコール性脂肪肝に、毎日5合を10年以上のみ続けているとアルコール性肝硬変になる可能性が高いとされています。また、女性は男性よりアルコール性肝障害になりやすく、1日2合の飲酒が続いても肝障害を引き起こす恐れがあります。

 ちなみに、日本では1日平均150g以上のアルコールを飲む人を大量飲酒者と呼びます。この量を酒に換算すると、日本酒で約5合、ビール大びんで約5本、ウイスキーではダブルで約5杯ということになります。健康生活のためには、1日あたり平均30gのアルコール摂取、つまり1日に日本酒で約1合、ビール大びんで約1本が適量と見なされます。

■治療には節酒ではなく、禁酒が大切

 従来、アルコール性肝障害は低栄養の人に多かったのですが、最近は肥満でかつアルコール性肝障害を持って人が増えているので、注意が必要です。

 年に一回は、生活習慣病予防健診で肝臓の検査を受け、肝機能や膵(すい)機能、空腹時血糖に異常がないかどうかチェックしましょう。多くの飲酒者で、血液中のγ(ガンマ)―GTPは高値を示すので、個人差はありますが飲酒量のバロメーターとして利用できます。

 アルコール性肝障害では肝臓の線維化が進んでも、しばしば血液検査で異常が見付からない場合もあるので、詳しく肝臓の状態を知るためには腹部超音波検査や肝生検が必要になります。血清アルブミン値や血小板数に異常が見付かれば、比較的進んだ肝障害があることを意味することが多くなります。

 すでに肝障害が見られる場合には、節酒ではなく、禁酒が必要です。 断酒会などを積極的に利用するのも、一案です。アルコール性肝障害では、最初、脂肪肝だったものを放っておくと肝硬変に進行していきますが、早く見付けて断酒などの対処をすれば、肝がんに進むことはまれです。


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急性膵炎

■腹痛を伴って急激に起こる炎症

 急性膵(すい)炎とは、酒の飲みすぎや胆石などの要因により、膵臓に急激な炎症が起こる疾患。持続的で、激しい上腹部の痛みを伴います。

 比較的軽症で膵臓が腫(は)れるだけで容易に回復する浮腫(ふしゅ)性膵炎、膵臓や周囲が壊死を起こす壊死性膵炎など、さまざまな症状があります。重症の場合には、他の臓器にも障害を来す多臓器不全となったり、重篤な感染症を合併して、ショック状態に陥って死に至る場合もあります。軽症の場合は、2~3日で腹痛はやみ、1週間ほどで治ります。

 厚生労働省では、原因不明の難病の一種で、難病対策推進の調査研究の対象となる特定疾患に、重症急性膵炎を指定しています。

 発症頻度は男性が女性の2倍で、男性では30~60歳代に多くみられ、女性では50~70歳代に発症しやすい傾向がみられます。

 膵臓は胃の後ろに位置する消化腺(せん)であり、外分泌と内分泌という二つのホルモン分泌を行う機能があります。外分泌機能は、消化液である膵液を分泌して十二指腸へ送り込み、食物の消化、吸収を助けるもの。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白(たんぱく)質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。

 一方、インシュリン(インスリン)やグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血糖値を調節するのが内分泌機能です。インシュリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を高くします。

 急性膵炎は、膵液中の消化酵素の働きが異常に高まって、自己の膵臓組織を消化してしまうために起こると考えられています。これを自己消化(自家消化)といいますが、ほかの病気にはみられない現象です。

 通常、膵液は胆のうから分泌された胆汁と混ざり合って十二指腸に流れ込み、そこで初めて活性化されます。ところが、何らかの原因で膵液の流れが滞ると、膵臓の膵管内に膵液がたまるようになり、そこに十二指腸から逆流してきた胆汁が混ざって、膵臓内で活性化してしまうのです。

 急性膵炎を引き起こす主な要因の一つは、胆石です。胆のうから流れ出た胆石が、胆管と膵管の合流地点であるファーター乳頭に詰まると、膵液がうまく流れなくなって膵臓内にたまります。その結果、膵臓が自己消化を起して急性膵炎を発症します。

 酒の飲みすぎも、急性膵炎を招く大きな要因です。アルコールによる急性膵炎の発症メカニズムは、完全には明らかになっていませんが、多量の飲酒の影響で膵臓にむくみが生じ、膵管が狭くなって膵液の流れが滞ると考えられています。一説によると、アルコールの作用によって、膵臓の細胞そのものがダメージを受けるとされます。

 このほか、ウイルスの感染や、血液中の中性脂肪が高い高脂血症などが引き金となったり、原因不明で突発的に起こるケースもみられます。内視鏡的膵胆管造影(ERCP)や上腹部の手術後、あるいはステロイド剤など特殊な薬剤によって引き起こされるケース、膵臓の腫瘍(しゅよう)、特に膵がんによって起こるケース、消化酵素の遺伝子異常によって起こるケースなどもまれにあります。

 急性膵炎の最も典型的な症状は、上腹部に生じる突然の激しい痛みで、多くのケースでは吐き気や嘔吐(おうと)を伴います。痛みの場所はみぞおちから左上腹部で、背中や腰、腹部全体に痛みが広がることもあります。

 胆石などによる腹痛は嘔吐すると和らぐケースが多いのに対し、急性膵炎の痛みは逆に強まりやすいとされています。また、上を向いて寝ると腫大した膵臓が脊椎(せきつい)に圧迫されて痛みが強くなりますが、背中を丸めて横になったり、膝(ひざ)を抱えて前にかがむ姿勢をとると、痛みが軽減する点も特徴です。

 何の前触れもなく痛みが起こることもありますが、食事後、特に油分の多い食事をした後や、アルコールを多く飲んだ後に起こることも少なくありません。そのほかの症状としては、食欲不振、全身倦怠(けんたい)感、腹部膨満感、発熱などがあります。

 激しい腹痛で発症することがほとんどですが、中にはさほど痛みを覚えない場合もあります。こうしたケースは、痛みに対する感受性が低下している高齢者に多いもの。まれに、かなり重い炎症を起こしているにもかかわらず、全く腹痛が現れないこともあり、急性無痛性膵炎と呼ばれます。

■急性膵臓の検査と診断と治療

 急性膵炎では、早期発見、早期治療に努めることが大切。重症になると生命にかかわりますので、軽症のうちにできるだけ早く治療を行う必要があります。

 医師による診断では、まず血液検査と尿検査が行われます。膵臓に炎症があると、膵液に含まれている消化酵素のアミラーゼやトリプシンなどが、血液や尿の中に流出してきます。従って、血液と尿を採取して調べ、アミラーゼなどの消化酵素の量が増えていれば、ほぼ診断が付きます。

 診断を確定するためには、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピューター断層撮影)検査が必要です。特にCT検査は病変の広がり具合、腹部や胸部の変化などを正確に捕らえることができるため、急性膵炎の診断と重症度の判定には欠かせません。

 急性膵炎は、病変の進み具合によって、軽症、中等症、重症の三つの段階に分けられます。

 軽症では、医師による触診の際に左上腹部を押すと痛みが生じ、また押されておなかが硬くなる筋性防御もあります。病変は膵臓の周囲にとどまっていて、腹部超音波検査を行うと膵臓全体に腫れが認められます。血清アミラーゼと尿中アミラーゼの値も上昇します。

 中等症になると、発熱や全身倦怠感が起こり、病変が腹膜組織や腹腔全体に広がります。血液検査の異常値も高くなります。また、血液中に流出した消化酵素のために、さまざまな臓器や組織の壊死が起こることがあり、わき腹や下腹部に皮下出血による出血斑(はん)が現れるケースもみられます。

 重症になると、全身に病変が及び、消化管障害や腹膜炎、急性腎(じん)不全、呼吸不全、意識の低下といった重い症状が現れます。検査数値にみられる異常も、顕著になります。胸部X線検査を行うと胸水の貯留がみられ、腹部X線検査を行うと小腸内にガスがたまっているのがわかります。

 なお、軽症の死亡率は10パーセント以下であるのに対し、重症では50~70パーセントに上ります。急性膵炎全体の死亡率は、20パーセント前後と推定されています。

 急性膵炎の治療には、薬物療法、外科的療法、食事療法などが挙げられます。経過が比較的良好な軽症と、死に至る危険が高くなる重症とでは、治療方法が異なります。

 軽症、中等症の場合は、まず絶飲、絶食をして消化酵素の分泌を抑え、膵臓に負担がかからないようにします。その際、炎症のために失われている水分を補い、一定の栄養状態を維持するために、点滴で水分と電解質を十分に補給します。

 腹痛や背部痛などに対しては、痛みを取る抗コリン剤や中枢性鎮痛剤が用いられますが、痛みがあまりに激しい場合は、麻薬性鎮痛剤のモルヒネが使用されるケースもあります。

 血液中に消化酵素が流出すると、呼吸不全や腎不全といった合併症を引き起こすことがあるので、外分泌を抑える膵臓素阻害剤が使用されます。感染症を防ぐために、抗生物質の投与も行われます。

 こうした治療によって、軽症、中等症のほとんどは、1週間前後で軽快します。

 しかし、重症の場合は、さまざまな臓器に障害が起こるので、集中治療室での全身管理が必要になります。特に、ショック状態に陥って脈拍が増加し、血圧が下降したケースでは、膵臓酵素の活性を抑える働きのある蛋白分解酵素阻害剤のアプロチニン製剤と並行して、抗炎症剤の副腎皮質ホルモン製剤が大量に投与されます。

 このほか、重症の急性膵炎に対して行われる特殊な治療法として、腹膜かんりゅう法が挙げられます。腹膜かんりゅう法は、カテーテルという細い管からおなかの中に腹膜透析液を注入し、腹腔内の有害物質を排除する方法です。

 このような治療によって、悪化していた全身状態がかなり回復してくることがあります。

 急性膵炎では、こうした内科的治療が基本となりますが、胆石が原因で病状が改善されない場合は、内視鏡を用いた胆管結石の除去や、管を挿入して、たまった液を吸引する胆管ドレナージが必要になることがあります。胆石を取り除くために、開腹して胆管を切除したり、胆のうを摘出する手術が必要になることもあります。

 また、中等症や重症で、内科的治療を試みても病状が改善しない場合のほか、膵のう胞や膵腫がんといった合併症が起こっている時も、膵臓の切除手術などの適応となる場合があります。

 膵臓の安静を図り、症状を改善するためには、食事療法も重要な治療の一つです。病状に応じて、適切な食品と摂取量を選択して、栄養状態を良好に保ち、禁酒を原則とします。

 脂肪は膵臓への刺激が最も大きく、膵液の分泌量や濃度が増すことがわかっています。病状が落ち着いても、脂肪を多く含んだ食品を食べると痛みが再発することがあるので、完全に治癒するまでは1日の脂肪摂取量を20~30グラム以下に抑えます。

 蛋白質の多い食品は膵液の分泌を高めるため、症状が著しい時は摂取量を厳重に制限します。回復するに従って、白身魚や豆腐といった良質の蛋白質食品から摂取を開始し、膵臓の機能回復を図ります。

 糖質は、脂肪や蛋白質と違って膵液分泌の刺激とはなりません。また、膵臓から分泌される消化酵素が減少しても、十分に消化、吸収されるので、おかゆやうどんなどで栄養を補給するとよいでしょう。ただし、症状が激しい時期は、1回に摂取する量を少なめにします。

 コーヒーなどのカフェイン飲料、炭酸飲料、香辛料は、食欲を増進させる半面、膵液の分泌を促進させるので、量に注意して摂取します。また、味付けを濃くすると膵液の分泌が高まるので、薄味を心掛けましょう。

 脂肪を控えると脂溶性ビタミンが不足しがちになるので、必要に応じてビタミンA、D、E、Kを含んだ総合ビタミン剤を服用します。

 このような薬物療法、食事療法で早期に適切な治療が行われれば、膵臓にほとんどダメージを残さずに、軽症、中等症の急性膵炎のほとんどは完治します。しかし、大量飲酒を続けたり、胆石を放置するなど、急性膵炎を発症した原因をそのままにしておくと、再発することがあります。再び腹痛が起こった時は、早めに受診しましょう。

 また、急性膵炎を繰り返していると膵臓の壊死を招き、やがては慢性膵炎に移行します。暴飲暴食を避け、禁酒をして、再発を防ぐように、自己管理を心掛けることが大切です。


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亜急性甲状腺炎

■甲状腺の痛みや高熱を伴う疾患

 亜急性甲状腺(せん)炎とは、甲状腺が比較的急に腫(は)れて、痛みを伴う疾患。原因としてウイルスの感染が疑われており、自己免疫疾患である慢性甲状腺炎(橋本病)とは全く別の病気です。この亜急性甲状腺炎から、慢性甲状腺炎に移行するわけではありません。

 ウイルスによって起こるのではないかといわれていますが、まだ確証はありません。ほかの人に移ることはありません。30~40歳代の女性に圧倒的に多く発症し、夏に多くみられます。風邪のようなウイルス性疾患の症状から引き続いて起こることが、よくあります。

 多くの人が初めに、のどの痛みを感じますが、実際は甲状腺に限局した頸(けい)部の痛みです。腫れは甲状腺全体に及ぶこともありますが、多くは右か左の甲状腺1カ所が硬くなり、その部分を押すと跳び上がるほど痛むことがあります。極度の疲労感を覚えることもあります。特に皮膚が赤くなったりすることはありません。

 甲状腺の痛みと腫れがますます強くなり、38度を超える発熱がみられることもあります。痛みと腫れの部位は、しばらくすると頚部の右側から左側、あるいは左側から右側へ移ることもあり、あごや耳に痛みが広がり、頭を回したり、飲食物を飲み込む動作で痛みが強くなります。この亜急性甲状腺炎の初期には、歯、のど、耳の感染症とよく間違えられます。

 多くのケースでは、甲状腺機能亢進(こうしん)症の症状を伴います。これは炎症により甲状腺組織が破壊され、甲状腺に蓄えられていた甲状腺ホルモンが急激に血液中に流れ出すことによります。

 ほとんどのケースでは、甲状腺機能亢進症に続いて、一時的な甲状腺機能低下症を発症し、最終的には甲状腺機能は正常に回復します。

■副腎皮質ホルモンが有効で、予後もよい

 医師による検査では、血沈が著しく速くなります。血液中の甲状腺ホルモンを測定すると、一時的に増加し、その後は減少します。

 原因がはっきりしないので根治治療法はありませんが、アスピリンや他の非ステロイド性抗炎症薬は、痛みと炎症を緩和します。比較的重症の時は、ステロイド薬の副腎(ふくじん)皮質ホルモンがたいへんよく効きます。多くのケースでは、この薬を服用して安静にしていると、翌日には痛みが取れ熱が下がります。

 しかし、すぐに服薬を中止すると、ぶり返します。経過をみながら減量し、少なくとも2カ月ほどかけて中止します。甲状腺機能亢進症の症状が重い場合は、ベータ遮断薬の服用が行われます。

 炎症の強い時期には、なるべく安静にし、入浴も控えたほうがよいでしょう。食事に関しては、特に制限はありません。

 この亜急性甲状腺炎にかかった人の多くは、完全に回復します。一般的に、数カ月のうちに自然に回復し、しかも、甲状腺機能も最終的にはほぼ全例が正常になりますが、時には再発したり、まれに甲状腺をひどく損なって、永続的な甲状腺機能低下症を引き起こすこともあります。


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ウイルソン病

■脳、肝臓に銅が沈着してくる遺伝性疾患    

 ウイルソン病とは、体内に銅が沈着することにより、脳、肝臓、腎(じん)臓、目などが侵される疾患。その原因は、日常の食事で摂取された銅が肝臓から胆汁中へと、正常に排出されないことによります。

 常染色体劣性遺伝に基づく先天性銅代謝異常症であり、病名はウイルソンという人が見付けたことに由来しますが、進行性レンズ核変性症、肝レンズ核変性症とも呼ばれています。

 銅は微量元素の一つで、必須栄養素であり、過剰に摂取した場合、急性や慢性の銅中毒になります。その慢性銅中毒に、ウイルソン病はよく似ています。食物中の銅は、十二指腸や小腸上部で吸収されて、肝臓に運ばれます。肝臓において、銅はセルロプラスミンと結合して銅結合蛋白(たんぱり)質となり、血液中に流れてゆきます。また、脳や骨髄など全身の諸臓器に必要量が分布し、過剰な銅は肝臓から胆汁中、腸管中に排出され、平衡を保っているのです。

 しかし、ウイルソン病においては、この肝臓での銅代謝が障害されています。肝臓中に取り込まれた銅がセルロプラスミンと結合できないために、胆汁中へ銅が排出されず、肝臓にたまっていきます。そして、肝臓からあふれて血液中へ流れ出た銅が、脳、腎臓、目の角膜などへ蓄積します。

 近年、13番染色体上のATP7B遺伝子異常が、ウイルソン病の原因遺伝子として特定されました。ATP7Bは、肝臓に特異的に発現するATP依存性メタルトランスポーターで、この異常によってセルロプラスミンへの銅の取り込みが損なわれます。

 ウイルソン病の発症率は、3~4万人に1人と見なされ、日本全国で1500人の患者がいるといわれています 。発症率は、欧米諸国より高くなっています。年齢的には、3~15歳の小児期を中心に発症し、30~40歳で発症することもあります。

 肝臓の症状は、疲れやすかったり、白眼や皮膚が黄色くなったりして気付かれます。多くの場合は無症状で、血中GOT、GPTなど肝機能の異常を指摘され、発見されます。しかし、原因不明の急性肝炎とか慢性肝炎などと診断されることもあり、急激な肝不全状態となって、黄疸(おうだん)や意識障害などを生じ、急に死亡してしまうこともあります。肝障害は徐々に進行し、思春期過ぎには肝硬変になる場合が多くみられます。

 脳の症状の多くは、思春期ごろから現れます。初期においては、言葉が不明瞭(めいりょう)になり、何かをしようとすると手指が震えたりして、字を書くことや細かい作業が下手になります。

 さらに進行すると、表情が硬くなり、次第に歩くことができなくなり、ついには寝たきりになってしまいます。記憶力や計算力も鈍り、精神状態も不安定、無気力、うつ状態、統合失調症(精神分裂病)様の反応を示すようになります。

 目の症状としては、角膜輪(カイザー・フライシャー輪)をみます。黒目の周りに銅が沈着し、青緑色や黒緑褐色に見えます。この角膜輪が肉眼的にはっきり見えるのは、思春期過ぎです。

 これらの多彩な症状は、すべての罹病(りびょう)者に出るのではなく、無症状期の発症前型、 10歳以下の小児期に多い肝型、 10歳以降に多くて年齢とともに増加する神経型、 神経型と同様の傾向を示す肝神経型に分かれます。治療しなければ進行し、ついには、死亡したり、荒廃したりします。

■遺伝性代謝疾患ながら治療は可能 

 ウイルソン病は、遺伝性代謝疾患のうちでは数少ない、治療可能あるいは発症予防可能な疾患です。遺伝性代謝疾患は、いわゆる難病とされ、治療が不可能なものが多いのです。幸い、常染色体劣性遺伝性の疾患であるウイルソン病は治療ができ、早期発見により発症を予防することもできるのです。

 早期発見ためには、同じ病気を持つ血族の有無も重要になります。兄弟姉妹を検査すると、25パーセントの確率でウイルソン病であったりします。しかし、約30パーセントは突然変異でウイルソン病が発病するため、家族や血族発生のないこともあります。

 家族内検索により発見された小児の場合、発症前型に分類され、治療することにより日常生活や学校生活、就職などすべての面に渡って、正常者と同じ生活を維持することができます。

 ウイルソン病の診断は、問診や臨床症状から銅代謝異常の可能性を疑い、血清総銅量やセルロプラスミン濃度の低下、尿中排出量の増加、眼の角膜輪(カイザー・フライシャー輪)の証明などにより、銅代謝異常のあることを診断します。

 さらに、肝生検による組織診断、肝生検組織の銅染色、肝生検組織中の銅含有量の測定、胆汁中の銅濃度量の測定などにより、診断が確定します。

 治療法としては、銅を多く含む食事の制限を行う食事療法と、D-ペニシラミン(メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン、メタライトといった銅排出促進藥(キレート薬)を服用する薬物療法が基本となります。

 食事療法としては、生涯に渡って銅含有量の多い食物の摂取を制限して、1日1・5ミリグラム以下の低銅食を指導します。銅含有量の多い食物として挙げられるは、貝類、レバー、チョコレート、キノコ類など。

 薬物療法としては、体内にたまった銅の除去、銅毒性の減少を目指して、銅排出促進薬による治療が、発症予防を含めて第一選択になります。この薬剤には副作用がありますし、生涯に渡って服用しなければなりません。

 また、肝障害や神経障害に対する対症療法も必要に応じて行われます。


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壊血病

■ビタミンCの不足で起こる、出血性の障害

 壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって、出血性の障害が体内の各器官で生じる疾患。ビタミンC欠乏症とも呼ばれます。

 水溶性ビタミンであるビタミンCは、血管壁を強くしたり、血液が凝固するのを助けたりする作用を持っています。また、生体内の酸化還元反応に関係し、コラーゲンの生成や骨芽細胞の増殖など、さまざまな作用も持っています。

 成人におけるビタミンCの適正摂取量は、1日に100mgとされています。日本人はもともとビタミンCの摂取量が多く欠乏症になりにくいのですが、3~12カ月に渡る長期、高度のビタミンC欠乏があると、壊血病が生じます。妊娠や授乳時では、ビタミンCの必要量も増えます。

 ビタミンCが欠乏すると、毛細血管が脆弱(ぜいじゃく)となって、全身の皮下に点状の出血を起こしたり、歯肉に潰瘍(かいよう)ができたり、関節内に出血を起こしたりします。また、消化管や尿路から出血することもあります。一般症状として、全身の倦怠感(けんたいかん)や関節痛、体重減少が現れます。

 小児においても、壊血病は生じます。特に生後6~12カ月間の人工栄養の乳児に発生し、モラー・バーロー病とも呼ばれています。現れる症状は、骨組織の形成不全、骨折や骨の変形、出血や壊死(えし)、軟骨や骨境界部での出血と血腫(けっしゅ)、歯の発生障害などです。

■壊血病の検査と診断と治療

 乳児では1日100mg、成人では1日1000mgのビタミンCを投与すると、症状の改善が認められます。ただ、長期に投与すると尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)が生じることがあり、注意が必要です。

 予防としては、新鮮な果物や野菜を十分に取ります。また、煮すぎない、ゆですぎない、ミキサーに長時間かけないなど、調理によるビタミンCの破壊に気を付ければ、まず壊血病の心配はありません。


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かっけ(脚気)

■ビタミンB1の不足から心臓が弱まり、下肢がむくむ疾患

 かっけ(脚気)とは、ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢(まっしょう)神経障害を来す疾患。心不全によって下肢のむくみが、末梢神経障害によって上下肢のしびれが起きます。

 ビタミンB1は、糖質の代謝に重要なビタミンです。白米を主食として副食の少ない食事を長期間続けた際や、重労働、妊娠、授乳、甲状腺(せん)機能高進症などでビタミンB1の消費が一時的に増大した際に、糖質の分解産物であるピルビン酸や乳酸が蓄積されて、かっけが起こります。

 かっけの症状としては、初めは体がだるい、手足がしびれる、動悸(どうき)がする、息切れがする、手足にしびれ感がある、下肢がむくむなどが主なものです。進行すると、足を動かす力がなくなったり、膝(ひざ)の下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射が出なくなり、視力も衰えてきます。

 かつては、かっけ衝心(しょうしん)といって、突然胸が苦しくなり、心臓まひで死亡することもありましたが、現在ではこのような重症例はほとんどありません。

 しかし、三食とも即席ラーメンを食べるといったような極端に偏った食生活によるかっけなどが、最近は若い人に増えてきています。インスタント食品やスナック菓子には脂質とともに糖質も多く含まれているのですが、この糖質の消費に必要なビタミンB1の摂取量が足りていないのです。また、過度なダイエットや欠食、外食によって、女子大学生の血中総ビタミンB1の値が非常に低いことも報告されています。

 さらに、糖尿病の発症者と、高齢の入院患者にも、かっけが増えてきているといいます。糖尿病の場合は、血液中の糖質に対するビタミンB1の相対的な不足が原因となり、高齢の入院患者の場合は、高カロリー(糖質)の輸液に対してやはりビタミンB1の不足が原因となります。食事の代わりに酒を飲むといったアルコール依存症の人も、ビタミンB1欠乏症になる確率が高いと見なされています。

■かっけの検査と診断と治療

 かっけの検査では、ハンマーなどで膝の下を軽くたたく、膝蓋腱反射を利用した方法が広く知られています。足がピクンと動けば正常な反応で、何も反応がなければかっけの可能性がありますが、診断を確定する検査ではありません。

 かっけの治療では、ビタミンB1サプリメントを投与します。なお、かっけの症状は回復したようにみえても、数年後に再発することがあるので注意が必要です。

 ビタミンB1はいろいろな食べ物の中に含まれているので、偏食さえしなければ、欠乏症を起こすことはほとんどありません。過度のダイエット、朝食や昼食を抜く、外食で食事をすませる、インスタント食品に偏るなどの食生活では、ビタミンB1の不足を招き、かっけになりやすくなります。

 ただし、ビタミンB1が不足していても、他の栄養素のバランスがいい場合は、すぐにかっけにはなりません。食生活に偏りがあって、疲労感や倦怠(けんたい)感が続いている場合は、潜在的ビタミンB1欠乏症と考えて、食生活を改善する必要があります。

 お勧めなのは玄米食。玄米にはビタミンB1が多く含まれているからで、玄米を精米した白米ではほぼ全部のビタミン類が取り除かれています。玄米のほかにビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、枝豆、えんどう豆、大豆(だいず)、ごま、ピーナッツなどがあります。これらをうまく組み合わせて、ビタミンB1を摂取していきましょう。


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甲状腺ホルモン不応症

■甲状腺ホルモン受容体の遺伝的な異常

 甲状腺(こうじょうせん)ホルモン不応症とは、体の新陳代謝を調節している甲状腺ホルモンが体の中にたくさんあるのに、ホルモンの働きが鈍くなる疾患。日本においても、世界的に見ても、まれな疾患で、その存在は近年になってはっきりしてきました。 

 特に男性に多く、女性に多いということはありません。先天性の疾患で、子供のころから異常を示すケースも、子供の時は正常で、大人になって初めて甲状腺機能異常の症状を示すケースもあります。異常の程度が強くて、小児期から重い甲状腺機能低下症状を来すような場合は、不可逆的な発育障害を起こしてしまうことがあります。

 甲状腺ホルモンが体の中で働くためには、細胞の中にある特別な甲状腺ホルモン受容体という蛋白(たんぱく)質に結合しなければなりません。甲状腺ホルモン不応症では、甲状腺ホルモン受容体に遺伝的な異常があり、生体の各臓器、組織、細胞への甲状腺ホルモンの結合や、作用の伝達が障害されると考えられています。甲状腺ホルモン受容体以外の異常でも、同じような症状が出る可能性はあるようですが、まだ確認できていません。 

 常染色体優性遺伝という形で、子孫に伝わることが多いようです。具体的には、両親のいずれかが甲状腺ホルモン不応症であると、約2分の1の確率で子供に遺伝します。しかし、両親のいずれにもこの疾患がない場合でも、突然変異によって子供に出ることがあります。

 甲状腺ホルモン受容体に異常があれば、甲状腺ホルモンの作用が弱まるはずですが、その分、頭の中にある脳下垂体が甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの濃度を普通よりも高く設定します。その結果、甲状腺ホルモン受容体に比較的軽い異常があっても、その働きの鈍さを甲状腺ホルモンの濃度が高いことが補って、全身の新陳代謝はほぼ正常人に近くなることが、多くのケースで認められています。

 ただ、どうしても甲状腺に負担がかかるため、正常の人に比べ甲状腺が大きくなる傾向があります。異常の程度が強くなると、甲状腺機能低下症の症状が見られたり、部分的に甲状腺機能亢進(こうしん)症に似た症状を来すこともあります。異常がとても強い場合には、難聴を来したり、注意力低下といった精神障害を伴うこともあります。

 ほとんどの発症者は、特に治療を受けなくても、甲状腺ホルモンがたくさんあることと、甲状腺ホルモン受容体の機能が低下していることがうまくバランスがとれて、普通の生活が送れます。

 むしろ問題は、甲状腺ホルモン不応症の存在がまだ、一般の医師の間でもあまり知られていないことにあります。大抵の発症者は首が腫(は)れているということで受診しますが、甲状腺が腫れていて血中の甲状腺ホルモン濃度も高いことにより、医師にバセドウ病と誤診され、誤った治療が行われてしまう可能性があります。

 欧米の統計によると、発症者の3分の1以上が初めはバセドウ病と間違えられ、不適切な治療を受けていました。その意味で、この病気は治療以上に正しく病気を認識することが大切です。 

 異常の程度が強くて、甲状腺機能低下症の症状が見られる場合は、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。どのように治療するかは個人差が大きいため、内分泌・代謝科のある医療機関で、この疾患に詳しい甲状腺の専門家に相談することが必要です。

 特に薬を使うことなく、正常の人と同じように暮らしている人では、数カ月から1年に1、2回、診察と検査を受けて、経過を見守ることになります。


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ビタミン欠乏症

■ビタミンの欠乏で、いろいろな疾患が出現

 欠乏症を起こす主なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンD、ニコチン酸、およびビタミンCです。

 ビタミン欠乏症は、食べ物から摂取するビタミンの量が体の必要とするビタミン量を満たさないか、あるいは、摂取する量は十分でも体内への吸収や利用が十分でない時に起こります。前者は発育期や授乳で消費が多い時など、後者は胃や腸の一部を手術で切り取った後などが相当します。

ビタミンA欠乏症(夜盲症)

 夜盲(やもう)症とは、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる疾患。俗に、鳥目(とりめ)と呼ばれます。

 先天性では、幼児期より徐々に発症するものと、発症しても生涯進行しないものがあります。後天性では、ビタミンAの欠乏によって発症します。網膜にあって、夜間の視覚を担当するロドプシンという物質が、ビタミンAと補体から形成されているため、ビタミンA不足は夜間視力の低下につながるのです。夜盲症が進行すると、結膜や角膜の表面が乾燥して白く濁り、失明することもあります。

 なお、ビタミンAは発育の促進、皮膚の保護の機能とも関係しているので、これが欠乏すると、乳幼児の発育が遅れたり、皮膚がカサカサになったりすることもあります。

ビタミンB1欠乏症(かっけ)

 かっけ(脚気)とは、ビタミンB1欠乏症の一つで、ビタミンB1(チアミン)の欠乏によって心不全と末梢(まっしょう)神経障害を来す疾患。心不全によって下肢のむくみが、末梢神経障害によって上下肢のしびれが起きます。

 ビタミンB1は、糖質の代謝に重要なビタミンです。白米を主食として副食の少ない食事を長期間続けた際や、重労働、妊娠、授乳、甲状腺(せん)機能高進症などでビタミンB1の消費が一時的に増大した際に、糖質の分解産物であるピルビン酸や乳酸が蓄積されて、かっけが起こります。

 かっけの症状としては、初めは体がだるい、手足がしびれる、動悸(どうき)がする、息切れがする、手足にしびれ感がある、下肢がむくむなどが主なものです。進行すると、足を動かす力がなくなったり、膝(ひざ)の下をたたくと足が跳ね上がる膝蓋腱(しつがいけん)反射が出なくなり、視力も衰えてきます。

 かつては、かっけ衝心(しょうしん)といって、突然胸が苦しくなり、心臓まひで死亡することもありましたが、現在ではこのような重症例はほとんどありません。

 しかし、三食とも即席ラーメンを食べるといったような極端に偏った食生活によるかっけなどが、最近は若い人に増えてきています。インスタント食品やスナック菓子には脂質とともに糖質も多く含まれているのですが、この糖質の消費に必要なビタミンB1の摂取量が足りていないのです。また、過度なダイエットや欠食、外食によって、女子大学生の血中総ビタミンB1の値が非常に低いことも報告されています。

 さらに、糖尿病の発症者と、高齢の入院患者にも、かっけが増えてきているといいます。糖尿病の場合は、血液中の糖質に対するビタミンB1の相対的な不足が原因となり、高齢の入院患者の場合は、高カロリー(糖質)の輸液に対してやはりビタミンB1の不足が原因となります。食事の代わりに酒を飲むといったアルコール依存症の人も、ビタミンB1欠乏症になる確率が高いと見なされています。

 なお、ビタミンB1の欠乏症には、欧米に多いウェルニッケ・コルサコフ症候群もあります。こちらは中枢神経が侵される重症の欠乏症で、蛋白(たんぱく)質、脂質中心の食生活で、アルコールを多飲する人に多発します。症状は、意識障害、歩行運動失調、眼球運動まひ、健忘症など。

ビタミンB2欠乏症

 ビタミンB2欠乏症とは、ビタミンB2(リボフラビン)の欠乏によって、皮膚や粘膜にトラブルが現れたり、子供の発育が悪くなったりする疾患。

 ビタミンB2には皮膚を保護する働きがあるので、欠乏すると皮膚や粘膜にいろいろな症状が現れてきます。例えば、唇の周囲やふちがただれたり、舌が紫紅色にはれたり、肛門(こうもん)や外陰部などの皮膚と粘膜の移行部のただれなどもみられます。目の充血や眼精疲労などの症状のほか、進行すると白内障を起こすこともあります。 脂漏性皮膚炎も認められ、鼻の周囲や顔の中央部に脂ぎった、ぬか状の吹き出物ができます。重症になると、性格変化や知能障害が現れることがあります。

 ビタミンB2にはまた、子供の発育を促す働きがあるので、欠乏した子供では成長不良につながります。成長期には、必要量を十分取らなければなりません。

 ビタミンB2は、体内で糖質、蛋白(たんぱく)質、脂肪をエネルギー源として燃やすのに、不可欠な水溶性ビタミンです。ビタミンB2欠乏症は、アルコールの多飲、糖質過剰摂取、激しい運動、労働、疲労などで、現れることがあります。多量の抗生物質や経口避妊薬、ある種の精神安定薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬などを長期に服用した時にも、現れることがあります。また、心臓病、がん、糖尿病、肝炎、肝硬変などの慢性疾患や吸収不良によって、ビタミンB2欠乏症のリスクが高くなります。血液をろ過する血液透析や腹膜透析でも、同様です。

ビタミンD欠乏症(くる病)

 くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。

 カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

 子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

 くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

 骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)

 ニコチン酸欠乏症とは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患。ナイアシン欠乏症とも呼ばれ、とうもろこしを主食とする中南米などの地域ではペラグラとも呼ばれています。

 ニコチン酸は、ナイアシンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、蛋白(たんぱく)質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。糖質、脂質、蛋白質の代謝に不可欠な栄養素であり、また、アルコールや、二日酔いのもとになるアセトアルデヒドを分解します。人為的にニコチン酸を摂取することで、血行をよくし、冷え性や頭痛を改善しますし、大量に摂取すれば血清のコレステロールや中性脂肪を下げる薬理効果もあります。

 ニコチン酸欠乏症はとうもろこしを主食とする人に多い疾患ですが、日本では、不規則な食事をするアルコール多飲者にみられます。酒を飲むほどニコチン酸が消費されますので、つまみを食べずに大量に飲む人は、栄養不良に注意が必要です。特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が不足すると、ニコチン酸の合成能力が低下します。

 遺伝病であるハートナップ病の人も、トリプトファンが腸から吸収されないために、ニコチン酸欠乏症を発症します。

 症状としては、日光に当たることによって手や足、首、顔などに皮膚炎が起こります。同時に、舌炎、口内炎、腸炎などを起こし、そのために食欲不振や下痢なども起こします。その後、頭痛、めまい、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全による錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。

 日本では普通の食事をしている限り、重症にはなりません。食欲減退、口角炎、不安感などの軽いニコチン酸欠乏症が見られる程度です。

ビタミンC欠乏症(壊血病)

 壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって、出血性の障害が体内の各器官で生じる疾患。ビタミンC欠乏症とも呼ばれます。

 水溶性ビタミンであるビタミンCは、血管壁を強くしたり、血液が凝固するのを助けたりする作用を持っています。また、生体内の酸化還元反応に関係し、コラーゲンの生成や骨芽細胞の増殖など、さまざまな作用も持っています。

 成人におけるビタミンCの適正摂取量は、1日に100mgとされています。日本人はもともとビタミンCの摂取量が多く欠乏症になりにくいのですが、3~12カ月に渡る長期、高度のビタミンC欠乏があると、壊血病が生じます。妊娠や授乳時では、ビタミンCの必要量も増えます。

 ビタミンCが欠乏すると、毛細血管が脆弱(ぜいじゃく)となって、全身の皮下に点状の出血を起こしたり、歯肉に潰瘍(かいよう)ができたり、関節内に出血を起こしたりします。また、消化管や尿路から出血することもあります。一般症状として、全身の倦怠感(けんたいかん)や関節痛、体重減少が現れます。

 小児においても、壊血病は生じます。特に生後6~12カ月間の人工栄養の乳児に発生し、モラー・バーロー病とも呼ばれています。現れる症状は、骨組織の形成不全、骨折や骨の変形、出血や壊死(えし)、軟骨や骨境界部での出血と血腫(けっしゅ)、歯の発生障害などです。

■ビタミン欠乏症の検査と診断と治療

ビタミンA欠乏症(夜盲症)

 ビタミンA欠乏性の夜盲症以外の場合、治療法が確立しておらず、光刺激を防ぐ対策を必要とします。遮光眼鏡を使用したり、屋外での作業を控えるなどです。

 ビタミンA欠乏性では一般に、ビタミンAを経口で服用し、ビタミンAを多く含む食品を適度に取ります。ビタミンAには、レバーやウナギなど動物性のものに含まれるレチノールと、主に緑黄色野菜などの植物性食品に含まれβ-カロチンの2種類があります。ただし、過度に摂取するのは、ビタミンA中毒を引き起こすのでよくありません。

ビタミンB1欠乏症(かっけ)

 かっけの検査では、ハンマーなどで膝の下を軽くたたく、膝蓋腱反射を利用した方法が広く知られています。足がピクンと動けば正常な反応で、何も反応がなければかっけの可能性がありますが、診断を確定する検査ではありません。

 かっけの治療では、ビタミンB1サプリメントを投与します。なお、かっけの症状は回復したようにみえても、数年後に再発することがあるので注意が必要です。

 ビタミンB1はいろいろな食べ物の中に含まれているので、偏食さえしなければ、欠乏症を起こすことはほとんどありません。過度のダイエット、朝食や昼食を抜く、外食で食事をすませる、インスタント食品に偏るなどの食生活では、ビタミンB1の不足を招き、かっけになりやすくなります。

 ただし、ビタミンB1が不足していても、他の栄養素のバランスがいい場合は、すぐにかっけにはなりません。食生活に偏りがあって、疲労感や倦怠(けんたい)感が続いている場合は、潜在的ビタミンB1欠乏症と考えて、食生活を改善する必要があります。

 お勧めなのは玄米食。玄米にはビタミンB1が多く含まれているからで、玄米を精米した白米ではほぼ全部のビタミン類が取り除かれています。玄米のほかにビタミンB1を多く含む食品には、豚肉、うなぎ、枝豆、えんどう豆、大豆(だいず)、ごま、ピーナッツなどがあります。これらをうまく組み合わせて、ビタミンB1を摂取していきましょう。

ビタミンB2欠乏症

 医師による診断は、現れた症状や全身的な栄養不良の兆候に基づいて行います。尿中のビタミンB2排出量を測定し、1日40μg以下であれば欠乏症です。血中のビタミンB2濃度の測定も行われます。

 治療では、ビタミンB2を症状が改善されるまで、経口で服用します。ビタミンB2の1日所要量は成人男性で1・2mg、成人女性で1・0mgとされており、1日10mgを経口で服用すると症状は完全に改善します。他のビタミン欠乏症を伴うことも多く、その場合はビタミンB1、ビタミンB6、ニコチン酸なども服用すると、より効果的です。

 なお、ビタミンB2吸収不良を生じている場合、血液透析や腹膜透析を受けている場合は、ビタミンB2サプリメントを日常から摂取する必要があります。

ビタミンD欠乏症(くる病)

 確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

 治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

 骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。

ニコチン酸欠乏症(ペラグラ)

 ニコチン酸欠乏症の治療は、ニコチン酸を含むビタミンB群の投与です。ニコチン酸アミドを1日50〜100mg投与し、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6も併用して投与します。ビタミンB群は、お互いに協力しあって活動しているため、それぞれの成分だけではなく、ビタミンB群としてまとめて投与することが望ましい栄養素でもあります。

 ニコチン酸の過剰症は特にありませんが、合成品のニコチン酸を100mg以上摂取すると、皮膚がヒリヒリしたり、かゆくなることがあります。とりわけ、ニコチン酸の摂取に際して注意が必要なのは、糖尿病の人です。ニコチン酸はインシュリンの合成に関与し、大量に摂取すると糖質の処理を妨げてしまいます。 一部の医薬品との相互作用を示唆するデータもあるため、すでに他の薬を服用中の場合は主治医に相談の上、ニコチン酸を摂取する必要があります。

ビタミンC欠乏症(壊血病)

 乳児では1日100mg、成人では1日1000mgのビタミンCを投与すると、症状の改善が認められます。ただ、長期に投与すると尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)が生じることがあり、注意が必要です。

 予防としては、新鮮な果物や野菜を十分に取ります。また、煮すぎない、ゆですぎない、ミキサーに長時間かけないなど、調理によるビタミンCの破壊に気を付ければ、まず壊血病の心配はありません。


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肥満

■内臓脂肪型の肥満に注意を

●病気にかかる割合が倍増

 あなたは最近、おなかの回りが気になりませんか? 現代人の多くが悩んでいるのが太りすぎで、肥満に伴う生活習慣病も増加しています。

 この肥満とは、体内に占める脂肪の割合が多い状態のことです。食事から得た摂取エネルギーが消費エネルギーよりも多い時、脂肪細胞は余ったエネルギーを蓄えます。その状態が続くと、脂肪細胞の数が増え、一つ一つの脂肪細胞も大きくなるのです。肥満の人においては、エネルギーの摂取、利用、蓄積、放出というメカニズムが、正常に機能していないことになります。

 肥満には、皮下に脂肪がたまる「皮下脂肪型」と、肝臓や腸管などの周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型」があります。

 皮下脂肪型肥満は若い人や女性に多く見られ、付きにくくて落ちにくいのが皮下脂肪の特徴。

 一方、内臓脂肪型肥満は男性や閉経後の女性に多く見られ、付きやすくて、かつ落ちやすいのが内臓脂肪の特徴で、40~50代から徐々に増えていく傾向があります。

 後者の内臓脂肪型の肥満が特に健康に悪影響をおよぼすことが、近年わかってきました。このタイプの肥満の人は、健康な人に比べて1・5~2倍近く、病気にかかりやすいと見なされています。   

●内臓脂肪型肥満とは 

 内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞から糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化などを引き起こす「生理活性物質」が、体内に多量に放出されます。高尿酸血症や脂肪肝にもつながります。

 その他の肥満のリスクを挙げれば、まず心臓などの臓器に負担がかかります。腰や脚の関節も痛めやすくなります。脂肪がたまって胸郭の動きが悪くなると、呼吸の力が弱まるため、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすケースもあります。女性の場合は、生理不順を招きやすくなります。 

 太り方で肥満の型を見分ける場合、下半身に脂肪が付いた「洋ナシ型」は皮下脂肪型肥満、おなかの回りがポッコリ張り出してくる「リンゴ型」、いわゆる太鼓腹は内臓脂肪型肥満の可能性が高い、と考えられます。

 次に、肥満男性の場合、おなかを指でつまんで、つまめる脂肪が薄いほど皮下脂肪が少なく、危険な内臓脂肪がたまっています。特に、おへそ回りの腹囲が85センチ以上の男性は、注意が必要です。

 女性の場合、女性ホルモンの働きで内臓脂肪は付きにくいのですが、肥満になると皮下脂肪とともに内臓脂肪も増えます。そのため、腹囲が大きいほど内臓脂肪がたまっており、特に、おへそ回りが90センチ以上の女性は、注意が必要になります。 

●肥満度チェック

BMI(体格指数)

 体重と身長から肥満度を判定するのがBMI(=Body Mass Index)。成人にのみ当てはまり、個人差があるので目安として利用します。

 BMI=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)

 日本肥満学会による判定基準では、

 18.5未満   ⇒⇒やせ 

 18.5以上25未満⇒⇒普通(22が最も有病率が低い)

 25 以上     ⇒⇒肥満

体脂肪率

 電気が流れにくいという脂肪の性質を利用し、体に微弱な電流を流して計測するのが体脂肪率。正確に測ることは難しく、あくまでも目安として利用します。内臓脂肪などの状態をきちんと調べるためには、CTスキャン検査が必要となります。

 成人男性 25パーセント以上⇒⇒肥満

 成人女性 30パーセント以上⇒⇒肥満 

■心掛けたい「肥満」対策

●体重を5パーセント減らす

 健康で長生きするためにも、肥満の解消は重要なことです。肥満により糖尿病になった人でも、体重を5パーセント減らすだけで、かなり症状が改善します。例えば、体重が80キロの人ならば、月に1キロ弱ずつ減らすようにして、3カ月から半年間で76キロにすればよいでしょう。

 急な減量を試みると、必要な栄養素を摂取することができず、かえって体調を崩してしまうので、ゆっくりと減らすように心掛けましょう。

●バランスのとれた食事を

 食事の内容は、年齢相応の適切な摂取カロリーを考え、栄養バランスのよいものに。砂糖や脂肪分のとりすぎに注意し、緑黄色野菜を積極的にとります。

 反対に、まとめ食い、とりわけ一日の食事量の半分以上を夜間に食べるのは、内臓脂肪を蓄積するので禁物。

 また、タバコを吸うと体脂肪の分布が変化し、内臓脂肪が付きやすくなるので、注意しましょう。

●食生活を見直す

 肥満が気になる人は、毎回の食事量を2~3割減らし、ゆっくり、よくかんで食べることを実践しましょう。間食の多い人の場合は、毎食の食事をきちんととり、間食は量と時間を決めて1回に。

 揚げ物、脂の多い物は、控えます。また、味付けが濃いとご飯もお酒も進んで、食べすぎにつながりがちですので、だしをしっかりとり、塩分、糖分を控えた薄味にしましょう。

 ワカメ、寒天、ヒジキ、昆布などの海藻、青菜、根菜といった野菜類など食物繊維の多い食材を毎食、とり入れましょう。さらに、動物性脂肪を減らして、魚、豆類をとり、穀類は大麦やヒエ、アワといった雑穀などを加えて、食物繊維やミネラルを増やしましょう。油脂では、植物性のオリーブオイルや魚の油脂がお勧めです。

●有酸素運動を行う

 肥満が気になる人にとっては、食事の見直しだけでなく、有酸素運動も必要です。運動不足になると、基礎代謝が減少し、貯蔵エネルギーが増えやすくなるからです。

 運動を併せて行えば、筋肉を落とさず、さらに脂肪を燃焼することができます。短距離走や重量挙げのような無酸素運動は筋力を増やし、ウオーキングなどの有酸素運動は脂肪を燃やします。特に、内臓脂肪は運動で減りやすく、これもまた欠かせないのです。

 どなたにもお勧めできる運動としては、ウオーキング、ジョギング、ラジオ体操、水泳などの全身を使う有酸素運動が挙げられます。これらの運動は週に3回以上行う必要があり、軽い運動なら毎日から1日置きとし、休日などを利用して十分な時間をとるのがよいでしょう。

 運動の強度については、いきなり強い運動をしないこと。軽い運動から始めて、徐々に慣らしていくのがよいでしょう。ウオーキングを主体にして、ダンベルなどを利用した筋力トレーニング、ストレッチも併用するのが、一番のお勧めです。


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メタボリック症候群

■数倍に跳ね上がる生活習慣病リスク■

 メタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)は、内臓脂肪症候群、代謝異常症候群、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群などとも呼ばれています。内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の人が、高血糖や高血圧、高脂血症の芽を二つ以上持っている状態を指します。

 高血糖症、高血圧症、高脂血症……いずれも中高年がかかりやすい生活習慣病ですが、これら三つの病気は、共通の根っこから発症すると考えられています。すなわち、脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常、内臓肥満……など。

 こうした根っこが一つならまだしも、複数持ち合わせている場合は、病気のリスクが高くなります。メタボリック症候群は、まさにこうした複数の危険因子を抱えている状態を指すわけです。

 実際、メタボリック症候群の人では、 動脈硬化の危険因子である「肥満」、「高血圧」、「高血糖」、「高中性脂肪(トリグリセリド)血症」、または「高コレステロール血症」が重複して発症していることがあり、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのです。危険度が高まるとさまざまな生活習慣病が同時に発症し、場合によっては死につながることも。

 肥満に関しては、上半身肥満のうち内臓脂肪型肥満が、メタボリック症候群になりやすいとされています。肥満には大きく分けて、二つのタイプがあります。女性に多い洋ナシ型と、男性に多いタル型で、洋ナシ型ではおしりや下腹部など皮下に脂肪がつきますが、タル型では内臓回りに脂肪が蓄積されます。

 WHO(世界保健機構)によれば、このメタボリック・シンドロームにかかっている人は、現在、世界的に増え続けているといいます。米国では、実に成人の4人に1人が該当するほど。

 食事が欧米化している日本人も、決して無縁ではありません。厚生労働省の調査によれば、メタボリック症候群の疑いが強い人は、予備軍を含めると中高年男性の約半数に達します。

■日本と海外での診断基準■

 自分の状態を知るには、体重やおなかの回りをチェックするとよいでしょう。   

 日本でのメタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)の診断基準(2005年4月8日に策定)を下記に示します。

 下記4項目のうち、 1)肥満が必須条件で、さらに以下の3項目のうち、2項目以上が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)肥満:ウエスト(おへその高さでの腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上

 2)高脂血症:中性脂肪150mg/dl以上 、または HDL(高比重リボタンパク:high density lipoprotein)コレステロール40mg/dl未満

 3)高血圧:最大血圧(収縮期血圧)で130mmHg以上、または最小血圧(拡張期血圧)で85mmHg以上、いずれか、または両方。

 4)糖尿病:空腹時血糖値が110mg/dl以上

 海外でのメタボリック症候群の診断基準としては、米国高脂血症治療ガイドライン(2001年)と、WHOによる診断基準の2種類があります。

 米国高脂血症治療ガイドラインでは、下記5項目のうち3項目が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)ウエスト(腹囲)が男性で102cm以上、女性で88cm以上

 2)中性脂肪が150mg/dl以上

 3)HDLコレステロールが男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満

 4)血圧が最大血圧で130mmHg以上、または最小血圧で85mmHg以上

 5)空腹時血糖値が110mg/dl以上

 WHOによる診断基準は、下記のようになります。

 高インスリン血症、または空腹時血糖値110mg/dl以上に加え、以下のうちの2つ以上を持つものです。

 1)内臓肥満:ウエスト/ヒップ比>0.9(男性)、>0.85 (女性)、またはBMI(体格指数:body mass index)30以上、または腹囲94cm以上

 2)脂質代謝異常:中性脂肪150mg/dl以上、またはHDLコレステロール35mg/dl未満(男性)、39mg/dl未満(女性)

 3)高血圧:140/90mmHg以上か、降圧剤内服中

 4)マイクロアルブミン尿症:尿中アルブミン排泄率20μg/min以上か、尿中アルブミン/クレアチニン比30mg/g.Cr以上

 それでは、メタボリック症候群はどうして起こるのでしょうか。はっきりとはわかっていませんが、大きな要因は主に体質と生活習慣の二つです。

 体質については不明な点が多いのですが、今のところ有力視されている説では、すい臓から分泌されるホルモンであるインスリンの抵抗性や、脂肪細胞の機能異常が関わっている、と見なしています。 

 まず、私たちが肥満になると、脂肪組織や筋組織における糖の取り込み能力が低下してしまうため、糖を代謝する時に必要なインスリンがうまく働かなくなります。肥満はさらに、筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下させます。

 結果的に、血糖値が高くなり、ますますインスリンの働きが阻害されてしまいます。インスリンがうまく機能しないと、糖尿病や高血圧、高脂血症の危険が高まります。動脈硬化が促進され、冠動脈疾患にかかる可能性も出てきます。

 歴史的に見れば、肥満が問題にされているのは、ごく最近のことにすぎません。人類は太古の昔から、ずっと飢餓の歴史に耐えてきました。お陰で、エネルギーが枯渇した場合の身体システムは発達しましたが、近代の飽食に直面して以降、エネルギーがあふれた状態を解消する仕組みができていないために、新たな病も派生しているのではないでしょうか。

■ライフスタイルの見直しを■ 

 メタボリック症候群の主原因は、高カロリー食・高脂肪食のとりすぎと、運動不足という生活習慣に尽きます。

 メタボリック症候群にかかっている人や、疑いが強い人は、三食とも規則正しく、いつもと同じ時間に、摂取カロリーを抑制した食事をとりましょう。外食やファーストフードは、ほどほどに。

 体重減少のために、日ごろから掃除、庭仕事、洗車、子供と遊ぶ、犬の散歩などで、こまめに体を動かすように心掛け、中等度の運動を毎日30分以上、最低でも10分以上行いましょう。ウエストの減少、肥満防止には、出勤前のジョギングもお勧め。中性脂肪、血圧、血糖値を減らし、禁煙するよう努力しましょう。

 厚生労働省の「健康日本21」によると、健康維持に最適な運動消費カロリーは1週間で2000kcal、 1日あたり約300kcalとされております。1日300kcalを消費するために、1日で1万歩を歩きましょう。同じく厚労省の調査によると、メタボリック症候群の予防に効果があるとされる運動習慣がある人は、約3割にとどまっています。

 内臓脂肪型肥満の別名は「タル型肥満」であり、「りんご型肥満」ともいいます。腹部がふくらんでいるのが特徴で、特に男性に多いとされていますが、肥満の予防が健康維持に大切なのは、女性にとっても同じこと。

 「昔に比べて、おなか回りに脂肪がついてきた」、「年々ウエストがきつくなっている」といった場合は、無理なく体重を落とすことから始めたいものです。

 

 メタボリック・シンドローム予防の10か条

●適正体重を維持する

●野菜や乳製品や豆類などをしっかり食べ、バランスのとれた食事を

●規則正しく食事をし、朝食を抜いたり、寝る直前に夜食を食べたりしない

●脂肪のとりすぎに気を付ける

●塩辛い味付けを避ける

●ジュースやお菓子など、糖分の多い食品を食べすぎない

●ウォーキングやジョギング、水泳など、毎日適度な運動を

●睡眠、休養は十分に

●たばこは百害あって一利なし。思い切って禁煙を

●お酒はほどほどに。週に2回は休肝日を設けて

 

 診断のめやすは、次の5項目のうち3つを満たしている場合です(米国の診断基準による)。 

□耐糖能異常(または2型糖尿病)

□高中性脂肪血症

□低HDL(善玉)コレステロール血症

□内臓肥満

□高血圧 

 もし該当する場合、糖尿病を発症するリスクは通常の9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは3倍。また、それぞれの異常度はさほど高くない、という人も含まれるので警戒が必要です。

 日本の企業労働者12万人の調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」、 「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は心臓病の発症リスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3~4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。

 厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3900万人、高脂血症は2200万人、糖尿病(予備軍を含む)は1620万人、肥満症は468万人といわれております。これらの患者は 、年々増加しております。


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アトピー性皮膚炎

●アトピー性皮膚炎とは

 アトピー性皮膚炎は乳幼児期に始まることが多く、よくなったり、悪くなったりを繰り返しながら長期間続く皮膚炎で、症状は痒みのある湿疹が中心です。原因には体質的なものと環境的なものとが絡んでいると考えられていますが、まだ詳細はわかっていません。

 乳幼児期に始まったアトピー性皮膚炎が成人期まで続くこともあり、中には成人になってから始まる人もいます。喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎など他のアレルギー疾患が同時に見られることが多く、伝染性膿痂疹(とびひ)などの感染症、白内障、網膜剥離などもみられます。

 このアトピー性皮膚炎は、近年、世界的にも、日本国内でも増加傾向にあります。症状や経過には個人差が大きいので、治療効果をみながら、注意深く、根気強く治療する必要があります。

1.アトピー性皮膚炎はなぜ起こるのか? 

 アトピー性皮膚炎は、「アトピー素因(アトピー体質)」という遺伝的に痒みを起こしやすい体質の人が、さまざまな「アレルゲン(抗原)」と「機械的刺激」に曝された時に起こる皮膚炎であると考えられていますが、その原因やメカニズムは、まだ充分にはわかっていません。悪化の原因として、ストレスなどの精神的要因もあげられています。 

●体質 

 体質的に皮膚が痒みを起こしやすいのは、以下の2つが主な原因です。 

 アトピー素因 

  生まれつきアレルギー反応を起こしやすい体質のことをいいます。 

 皮膚過敏性 

  外部からの刺激に対する防御機能が弱い皮膚の状態です。 

●原因 

 原因物質(アレルゲン、抗原) 

  アトピー性皮膚炎の原因となる物質には、ハウスダスト(家庭内のほこり)、ダニ、ス   

 ギ、ブタクサなどの花粉、空中に浮遊している真菌(カビの一種)、犬や猫の垢(上皮)、 

 さらには昆虫の糞や住宅建材の処理剤といった、生活環境中の物質が多く認められます。ま

 た、特乳幼児では牛乳、卵、大豆、ソバ、小麦粉などの食物がアレルゲンとなることも

 少なくありません。

【アトピー性皮膚炎患者に認められるアレルゲンの例】

ダニアレルゲン

コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニなど

食物アレルゲン

卵白、ミルク、小麦、大豆、米、トウモロコシ、ゴマ、ソバなど

花粉アレルゲン

ブタクサ、ヨモギ、アキノキリンソウ、ハルガヤ、カモガヤ、ギョウギシバ、オオアワガエリ、アシなど

真菌アレルゲン

カンジダ、ペニシリウム、クラドスポリウム、アスペルギルス、アルテリナリアなど

動物上皮アレルゲン

ネコ、イヌなど

     

●悪化因子 

 過敏性のある皮膚が常に刺激される状態にあると、痒みを感じます。痒くなれば、その部分をどうしても掻いてしまい、それが刺激となってますます痒くなります。掻くことによって皮膚が傷つけられると、アレルゲンが皮膚から入ってきやすくなるため、アレルギーの面からも悪化の要因となり、さらに湿疹が悪化するという悪循環に陥ってしまいます。

 刺激のもとは、髪の毛や毛糸のセーターなどの他に、直接皮膚につく刺激物質としてシャンプーや石鹸、香水などの化粧品類、汗、よだれや食べこぼしなどがあげられます。

 また、直接的な刺激以外にも、精神的なストレスや生活リズムの乱れ、食習慣の極端な偏りなども、悪化の原因となることがあります。

2.症状の現れ方 

 典型的なアトピー性皮膚炎では、痒みのある湿疹が、おでこ、目・耳・口のまわり、唇、首、手足の関節の内側、胴体などに左右対称にみられます。症状が出現するのは、早い例では生後2~6ヶ月ですが、1歳、4~5歳、学童期、思春期になって始まることもあり、最近は成人になってから症状がでてくる人もいます。1歳未満で発症して、成人期まで続くこともあります。成人期のアトピー性皮膚炎は、特に成人型アトピー性皮膚炎とよばれます 

3.アトピー性皮膚炎と喘息、鼻炎との関係 

 アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎などの病気(アトピー性疾患)に共通しているのは、アトピー素因(体質)です。これらの病気ではアレルギー反応(アトピーアレルギー)が起こる場所がちがうだけ、ということもできます。そのため、これらの病気を合併することが少なくなく、年齢が高くなるほど合併率が高くなる傾向があります。年を経るにつれて1つ1つ新しいアトピー性疾患が加わり、これらが出たり消えたりしながら進行していくという考え方もあります。ただし、すべてのアトピー性疾患が同時に悪化することは、普通はありません。 

●アトピー性皮膚炎の検査 

 アレルギーを起こしている原因(アレルゲン)を知るためにRAST、スクラッチテスト、パッチテスト、除去・負荷試験などが行われます。RASTでは、特異的IgE抗体の量を知ることができます。また、炎症の程度を知るための一般血液検査も行われます。 

●治療 

 アトピー性皮膚炎の治療は、スキンケア、アレルギー反応の抑制、および、炎症の抑制の3点に分けられます。湿疹の症状をまず改善し、症状が治まったら皮膚炎を予防する治療を行います。皮膚炎の症状や程度は一人一人異なるため、使われる方法も手順もさまざまです。きちんと医師の診察を受け、気長に治療、予防することが大切です。

 現在はさまざまな治療法が考えられていますが、以下に、おもに薬剤を使った治療法を紹介します。 

1.外用療法 

 外用療法は、アトピー性皮膚炎に対する治療の中心です。皮膚の炎症にはステロイド外用薬や非ステロイド消炎薬も使われます。ドライスキンを改善するものとしては尿素軟膏、白色ワセリン、亜鉛華軟膏などの保湿性外用剤があり、入浴剤などのスキンケア用品もあります。

 ステロイド外用剤は、作用の強さによって分類されており、湿疹のひどさや状態、湿疹がある場所や年齢によって使い分けます。また、剤型として軟膏、クリーム、ローション、ゲルなどがあり、使い心地や目的に合わせて選ぶことができます。ステロイド外用剤は、医師の指示以上に用いると副作用が出ることがあるので、医師の指示をきちんと守ることが大切です。 

2.内服療法 

 アトピー性皮膚炎に使用される内服薬としては、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬があります。抗ヒスタミン薬は痒みを起こす物質であるヒスタミンの遊離を抑え、抗アレルギー薬は、アレルギーを抑えます。比較すると、抗ヒスタミン薬のほうが早く効き目が現れます。 

●悪化を防ぐためには 

 悪化する原因がはっきりしている場合は、その原因をできるだけ避けるようにします。 

1.室内 

 床は、ダニを増やさず、除去しやすいように板張りが理想です。畳の上に絨毯を敷くのは、ダニにとって最も都合のよい環境を提供することになります。部屋によく風を通し、こまめに掃除することが大切です。

 スギなどの花粉がアレルゲンになっている場合は、外出先から花粉を持ち帰らないようコートをよく叩いてから部屋に入るようにしたり、風の強い日は窓をあけないようにします。 

2.寝具

 皮膚への刺激を少なくするため、毛羽立ちのない、柔らかい素材のシーツやカバーを使います。毛布にもカバーをします。羽毛の布団や、ソバ殻の枕が原因の場合は、それらを使わないようにします。また、ダニ防止のための手入れをします。頻回に布団、枕を日光にあて、ほこりを掃除機で吸い取ります。 

3.衣類 

 直接肌に当たる衣類は、吸水性と通気性のよい素材が一番です。毛羽立ちのない柔らかいものを使います。衣類が汚れていたり、洗剤が残っていても湿疹の原因になることがあります。新品で防虫加工などがされている場合も、それが原因になることもありますので、洗濯してから使います。

 洗濯は、洗剤が残らないよう、すすぎを1回多くします。洗濯糊や柔軟剤は使わないようにします。 

4.入浴 

 アトピー性皮膚炎では、汗、汚れなど皮膚への刺激物を除くことが大切です。石鹸や入浴剤は、自分に合ったものを選びます。石鹸を使う時は、まずよく泡立てて、その泡で皮膚を洗うようにします。ゴシゴシ擦ると、湿疹は却って悪化します。あがった後まで石鹸分が残らないよう、充分にお湯をかけて洗い流すようにします。入浴剤は、保湿効果のあるものもありますが、むやみには使わず、お湯の温度はぬるめにします。入浴後は、タオルをそっとあてて水分を吸い取ったあと、スキンケアをしておきましょう。 

5.ストレス 

 精神的な要因で、アトピー性皮膚炎が悪化することがあります。可能であれば、ストレスをできるだけ避けるようにしましょう。 

6.食事療法 

 アトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関与している場合は、原因の食物を食べないという食事制限が有効なことがあります。しかし、成長途上の子どもに過度の食事制限を行うと成長障害を起こすこともあり、医師の監督下において慎重に行う必要があります。 

 アトピー性皮膚炎について解説しました。みなさまの健康を守るために少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などがある場合は、お近くのかかりつけ医などの医療機関にご相談ください。


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アナフィラキシーショック

●生命にかかわる重大なアレルギー反応

 アナフィラキシーとは「急激なアレルギー反応」のことで、アレルギーの原因となる物質であるアレルゲンが体内に侵入してから数十分程度の短時間で、過剰なアレルギー反応を引き起こします。

 このうち、アレルゲンが侵入してから数分~30分程度で起きる「即時型アレルギー反応」で、生命の危険を伴うような重大なショック症状を、アナフィラキシーショックと呼びます。

 一度ハチに刺され、ハチの毒に対する抗体が体に作られた人が、再度ハチに刺された場合などに起こります。ハチ毒のほか、ハムスターなどの動物、ダニなどに由来するハウスダスト、スギやヒノキなどの花粉、抗生物質やサルファ剤などの薬物、牛乳や卵白などの食物なども原因となります。

 軽度のケースの症状は、全身のじんましんや腹痛、発熱。重度のケースでは動悸(どうき)、息切れ、めまい、血圧低下、じんましんなどが挙げられ、そのまま放置すると、全身に循環不全を起こして、呼吸困難、意識不明といった危険な状態に陥ります。発症の際には、救急車で病院へ向かうなど、速やかな処置が必要とされます。


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アレルギー性結膜炎

■付着した異物に対するアレルギー反応で、結膜に起こる炎症

 アレルギー性結膜炎とは、外から入ってくる異物に対して過剰に反応するアレルギーによって、結膜に炎症の起こる疾患。アレルギー反応を起こしやすいアトピー体質の人は、起こりやすくなります。

 結膜とは、上下のまぶたの裏側と白目の表面を覆っている半透明の薄い膜で、皮膚に似た構造をしています。細かい血管が豊富に存在し、リンパ組織という免疫反応を起こす組織もあるため、外から異物が付着すると炎症反応が起こります。その結果、充血やかゆみ、流涙などの症状が出現します。

 目のアレルギーを起こす原因物質としては、花粉、ハウスダストといわれるダニやかび、動物の毛やふけなどが代表的。

 このアレルギー性結膜炎には、季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)、通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストによるアレルギー性結膜炎)、春季カタルのほか、目薬などの薬品や化粧品、コンタクトレンズに関連するものがあります。

 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)は、花粉が主な原因となって特定の季節にのみ起こり、その季節が過ぎれば自然に治ります。花粉症を起こす植物としては、春先に多いスギ、ヒノキ、5〜6月に多いカモガヤ、ハルガヤ、秋に多いブタクサ、ヨモギなどが知られています。

 花粉そのものが毒性を持っているわけではありませんが、花粉が体に入ってくると、好酸球という細胞が過剰に反応して、ヒスタミンなどの化学伝達物質をたくさん作ってしまうことが原因です。

 症状としては、かゆみが強く、結膜充血、浮腫(ふしゅ)、異物感、目やに、まぶたのはれなどがみられます。結膜のほか、黒目の表面を覆っている角膜にも軽い傷ができることもあります。角膜病変があれば、視力低下が起こります。目以外に、くしゃみ、鼻水を伴うこともあります。

 通年性アレルギー性結膜炎(ハウスダストによるアレルギー性結膜炎)は、年間を通して慢性的にみられる結膜炎で、室内のほこり、ダニ、かび、ペットの毛など、常に身の回りにあるハウスダストが原因となって起こります。

 保湿性が高く、通気性の悪い住宅環境などによって起こりやすくなります。症状は、季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)と同様です。

 春季カタルは、アレルギー性結膜炎の慢性重症型です。小学生の男子に多く見られ、特に10歳以下で湿疹(しっしん)や喘息(ぜんそく)、季節性アレルギーのある男子に多いのが特徴です。何が症状を誘発するのかまだはっきりわかっていませんが、ハウスダストないし花粉が原因となっていることが多いとされています。

 目のかゆみが非常に強い上、上まぶたの裏側に多数の突起が石垣のように並ぶこともあります。角膜の表面に多くの小さな傷ができることもあり、異物感が強く、光をまぶしく感じます。炎症が強い時は、角膜に白い濁りができることがあります。ひどくなると、白く濁った部分がはがれ落ちて、角膜潰瘍(かいよう)という状態になります。

 春季カタルは症状が悪くなったり、軽くなったりしながら、毎年繰り返すことが多いものの、普通は青年期までに自然に治ります。アトピー性皮膚炎を合併した場合は、20歳代でも強い症状がみられることもあります。

 コンタクトレンズによるアレルギー性結膜炎は、近年、発症者が急増しているもので、巨大乳頭結膜炎とも呼ばれています。目がかゆく、目やにが増え、進行すると上まぶたの裏側に、乳頭と呼ばれるぶつぶつができます。汚れたコンタクトレンズを装用することで引き起こされ、特にソフトレンズはハードレンズに比べて汚れが付着しやすいため、巨大乳頭結膜炎を生じる頻度が高くなります。ほかのアレルギー性結膜炎にかかっている人がコンタクトレンズを装用すると、コンタクトレンズの刺激によって症状がひどくなります。

■アレルギー性結膜炎の検査と診断と治療

 アレルギー性結膜炎を確実に判断するためには、眼科専門医の診察、治療を受ける必要があります。

 医師は通常、充血やかゆみなどの症状や結膜の状態から、容易に診断することができます。目やにや、結膜をこすり取ったサンプルを顕微鏡で調べ、好酸球という細胞が見付かれば、確実にアレルギー性結膜炎と診断できます。アレルギーを起こしている原因物質を調べる方法には、針先などで腕の皮膚に小さな傷を付けて、そこにアレルギーの原因と思われる物質の入った液体を落とし、赤くなるかどうかを見るスクラッチテストや、血液検査などがあります。

 治療では、まず目薬を使います。目薬にはいろいろな種類がありますが、主として抗アレルギー剤の目薬を使用し、一般に1回1~2滴を1日3~4回点眼します。

 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)の場合、あらかじめ季節が判明している時には、花粉が飛散する2週間前くらいから点眼し始めると、かゆみなどの症状の出現を予防したり、軽くしたりすることができます。

 症状が重い場合には、ステロイド剤の目薬を使う場合もあります。この目薬は、症状を抑える効果が強い一方、眼圧を上昇させるなどの副作用が出やすいので、眼科に通院しながら注意深く使う必要があります。

 目薬だけで症状が治まらない場合には、抗アレルギー剤を内服することもあります。春季カタルなどの重症例では、少量のステロイド剤を内服したり、結膜へのステロイド剤の注射などを併用したりすることもあります。

 以上の治療法は、症状を抑える対症療法といわれる方法です。これに対し、アレルギーのそのものを改善する方法として、減感作療法という治療法があります。アレルギーの原因が検査で明らかである場合に、その原因物質を低い濃度から徐々に高い濃度へ半年ぐらいかけて注射することにより、アレルギー反応を起こさないようにするものです。

 コンタクトレンズ関連のアレルギー性結膜炎の場合は、いったんコンタクトレンズの装用を中止して前記の治療を行い、治ってから装用を再開します。レンズの種類としては、ハードコンタクトレンズか使い捨てのソフトコンタクトレンズがよいでしょう。ソフトコンタクトレンズを装用する場合は、コンタクトレンズの装用時間の短縮、つけおき洗浄からクリーナーによるこすり洗いへの変更、煮沸消毒からコールド消毒への変更、連続装用の中止など、毎日の適切なレンズケアにより対処します。同時に、医師による定期検査が勧められます。

 アレルギー性結膜炎の予防方法としては、花粉症の場合、症状の出現しやすい季節にできるだけ花粉と接しないように工夫することが重要です。ゴーグル型の眼鏡や花粉防止用のマスクの着用が最も効果的。花粉が飛びやすい日には、外出や洗濯物などを外に干すことを避けたり、外出から帰宅した時には服についた花粉を十分に落とすようにします。

 目を洗うことは、目を傷付けてしまうこともあるためあまり勧められません。洗顔して目の回りを洗うことはよいでしょう。

 ハウスダストの場合、部屋の清潔と通気を心掛けたり、寝具をこまめに干したりするのが効果的です。空気洗浄器を置いたり、エアコンのフィルターをよく洗うのもよいでしょう。また、犬、猫、小鳥などを屋内で飼うことは避けたほうがよいでしょう。


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混合性結合組織病(MCTD)

■2つ以上の膠原病の症状が混合して現れる疾患

 混合性結合組織病(Mixed Connective Tissue Disease: MCTD)とは、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発性筋炎、強皮症などの膠原(こうげん)病の症状が少しずつ混在した疾患。関節リウマチの関節症状が現れることもあります。

 性別では圧倒的に女性に多い疾患で、30〜40歳代の女性に多くみられます。1972年に米国のシャープらによって提唱された疾患概念で、日本では1993年から厚生労働省が特定疾患に指定していることもあり、MCTD診断名は広く用いられています。

 他の膠原病と同様に混合性結合組織病の原因は不明ですが、自分の体の細胞核成分を攻撃する抗核抗体(自己抗体)の一つである、抗U1—RNP抗体の産生が関係していると考えられています。この抗核抗体の産生には、多くの遺伝的要因とウイルス感染などの環境因子が関与していると推定されています。

 初発症状として、寒冷時や精神的に緊張した時に手指の皮膚が白色や青紫色になるレイノー現象、手指のはれ、手指の皮膚硬化、顔面紅斑(こうはん)、関節痛、筋力低下、筋肉痛、リンパ節のはれなど、さまざまな膠原病の症状がみられます。食道運動低下による嚥下(えんげ)困難、胸焼け、肺線維症(間質性肺炎)による空ぜき、息切れを認めることもあります。

 そのほか、肺の血管の抵抗が強くなって心臓に負担がかかる肺高血圧症、顔の一部がピリピリする知覚障害がみられる三叉(さんさ)神経痛、胸や心臓に水がたまる胸膜炎、甲状腺(せん)のはれ、シェーグレン症候群を伴うこともあります。

■混合性結合組織病の検査と診断と治療

 混合性結合組織病の診断に必須なのは、血液検査を行って、抗核抗体の一つである抗U1—RNP抗体を調べることです。皮膚筋炎・多発性筋炎の合併例では、クレアチンキナーゼなどの筋由来の酵素の増加を認めるほか、筋電図が異常を示します。胸部X線検査では、約30パーセントの頻度で肺線維症を認めます。

 原因が不明で、原因に基づく治療を行うことができない混合性結合組織病では、症状や重症度に応じて、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を中心とする薬物療法が基本となります。また、関節痛に対しては非ステロイド性消炎鎮痛剤が用いられます。レイノー現象に対しては、寒冷やストレスを避けるようにし、血管を広げて血行を促す血管拡張剤が用いられます。

 予後は良好な疾患ですが、治療が難しい肺高血圧症の頻度がやや高く、死因の第1位となっているので注意を要します。肺高血圧に対しては、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤、血管拡張剤、抗凝固剤などが用いて、症状の進行を遅らせます。


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シックハウス症候群

■新築住居などの室内空気の汚染で起こる疾患

 シックハウス症候群とは、新築や改築直後の室内の空気汚染によって引き起こされる疾患。

 建材や建材関連品には、大量の揮発性化学物質が使われています。それらは、建材の防腐剤や接着剤、塗料の成分として、さらにはシロアリなど昆虫の防虫剤として、家のあらゆるところに使用されています。新築や改築直後の家の中に入ると、ツーンと鼻をつく匂いがしますが、これらの多くは放散しているホルムアルデヒドやトルエン、エチルベンゼン、クロルピリホス(防蟻〔ぎ〕剤)などの揮発性化学物質の臭気であり、微量でも極めて有害な成分が含まれる場合があります。

 新築や改築直後から遅くても数カ月以内に、家の中に入ると目がしみる、涙が出てくる、鼻水が出る、鼻が詰まる、のどが痛い、動悸(どうき)がする、頭が重い、めまいがするなど、多彩な症状が出現するようになります。また、不眠や慢性的な疲労感、倦怠(けんたい)感として、症状が始まる場合もまれではありません。

 症状には個人差が大きく、同じ家で起居していても、非常に強く症状の出る人から、まったく症状の出ない人もいることから、いわゆる引越し疲れと思い込んで生活している場合もあり、初期の対応が遅れるケースがほとんどです。さらに、もともとアレルギー疾患を有する子供では、アトピー性皮膚炎や小児気管支喘息(ぜんそく)の悪化という形で出現する場合もあり、注意が必要です。

 シックハウス症候群の予防には、シックハウス対策に十分な知識と経験のある施工業者を選定し、事前に十分な打ち合わせをすること、新築中、改築中も施工業者任せにしないで、自ら足を運んで作業工程を確認、把握することが必要です。近年では、揮発性有機化合物(VOC)放散量の低い建材や接着剤、塗料が開発、発売されています。不幸にもシックハウスと思われる症状が出現したら、まず施工業者か、最寄りの保健所に相談し、室内空気の質を評価してもらうことが肝要です。保健所の場合は簡易測定にはなりますが、無料で行ってもらえます。

 室内から原因物質を減らすためには、十分な換気が必要。建物の高気密化がシックハウス症候群の一因ともなっており、換気設備が設置されている場合には運転しておくことが望まれます。一方、カビや微生物による空気汚染が広い意味でのシックハウス症候群の原因となることも考えられるため、これらの発生防止や除去なども必要です。日常生活で使われる殺虫剤や香料などが原因となる場合もあり、注意が必要です。

 なお、海外ではシックビルディング症候群と呼ばれますが、日本では住居以外のオフィスビルや病院などの建築物で起きるものを特にシックビル症候群と呼んでいます。また、新品の自動車でも同様の症状が報告されており、シックカー症候群と呼んでいます。

■シックハウス症候群の検査と診断と治療

 医師による診断のポイントは、第1に自覚症状が出現した経過です。原因となった住居への入居前後での体調の変化を詳細に問診します。つまり、自覚症状の発症経過と居住環境の変化が1つの線で結び付けられるかどうかが、重要となります。初診時に症状が出現する場所の空気測定結果を持参することは、大きな診断の助けとなります。

 シックハウス症候群の大半のケースでは、何らかの中枢神経系あるいは自律神経系の機能障害が認められるため、診断のための検査では神経眼科検査が有用。神経眼科検査では、目の動きが滑らかかどうかを評価する眼球電位図(EOG)、目の感度を評価する視覚コントラスト感度検査(視覚空間周波数特性検査)、光に対する瞳(ひとみ)の反応を評価する電子瞳孔(どうこう)計による瞳孔検査などがあり、シックハウス症候群では、異常値を示すケースが多いことがわかっています。

 例えば、目の動きを調べる眼球電位図(EOG)検査では、程度に差はあるもののシックハウス症候群発症者の85パーセント以上に滑動性追従運動異常が認められます。また、開眼時、閉眼時重心動揺検査でも、高い頻度で異常値を認めます。ただ、これらの検査は、シックハウス症候群発症者にみられる一般的特徴を調べるもので、確定診断法としてのツールにはなりません。

 確定診断法として唯一の方法は、ブーステストあるいはチャレンジテストと呼ばれ、実際に揮発性化学物質を発症者に曝露(ばくろ)し、何らかの症状が誘発されるかどうかを結果の再現性も含めて確認する検査方法しかありません。しかし、この検査を行うためには、化学物質を低減化したクリーンルームが設備として必要で、今のところこの設備を有する特殊専門病院は国内でも数カ所程度しかなく、現在の医療水準では確定診断は難しいといわざるを得ない状況です。

 シックハウス症候群の治療は、身体状況の改善という医学的アプローチと、原因となった居住環境の改善という建築工学的アプローチの二本立てで行います。

 身体状況の改善としては、ゆっくり歩いて30分などの軽い運動療法、少しぬるいと感じる39度前後の半身浴、60度前後の低温サウナなどの温熱療法が自覚症状の改善に有効で、居住環境が整えば数カ月~6カ月程度で、多くの症状は軽快します。また、解毒剤、水溶性ビタミン剤も身体状況の改善に有効であり、タチオン、タウリン散、ノイロビタン、アスコルビン酸末などの服薬治療も併せて行うことが一般的です。

 発症者によっては、シックハウス症候群を契機に、通常では気にならないほんのわずかな芳香剤、たばこ、香水などのにおいが気になったり、極めて微量の化学物質にさらされるだけでも多彩な症状が出現するようになったりするケースもまれにみられます。このようなケースでは、多くの場合、社会生活が制限されるため、心療内科医によるケアを併せて行う必要があります。

 居住環境の改善としては、自覚症状の原因が室内空気汚染ですから、空気汚染の原因はどこにあるのか、何をどのように改善すればよいのか、汚染された建材や建材関連品の交換、新しい家具などの吟味、十分な換気量の確保を含めて、施工業者と十分に相談して善後策を立てることです。


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ラテックスアレルギー

 ラテックスアレルギーとは、天然ゴム製品に含まれる水溶性蛋白(たんぱく)質がアレルゲンとなって、すぐに起こる即時型アレルギー反応です。ゴム手袋、輪ゴム、ゴム風船、粘着テープ、コンドームなどに皮膚が触れると、むくみやじんましんが出現します。

 重症例では、ラテックスの付着したパウダーを吸い込んだだけで、喘息(ぜんそく)発作やアレルギー性鼻炎、結膜炎などを起こしたりします。ひどい場合は、血圧低下が起こり、ショック状態に陥ることも。

 症状が軽い場合、抗ヒスタミン薬の内服で治まりますが、症状が重い場合、それぞれの症状に合わせた対処療法が必要となります。

 ラテックスアレルギーと診断された人は、原因物質となる天然ゴム製品を使わないようにすることで予防できます。 しかし、医療従事者や、ゴム製品をよく用いている人、何らかのアレルギーがある人など、ふだんアレルギーとまったく無縁だった人たちにも起こり得ます。

 ラテックスアレルギーを発症する素因を持っているのは、食物アレルギーのある人、中でもバナナ、アボカド、キウイフルーツ、クリなど、蛋白質がゴムの木のと似ている食物にアレルギーのある人で、注意が必要とされます。


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リウマチ

●慢性関節リウマチとは?

【リウマチとは違うのか?】

 あなたは、「リウマチ」という言葉をよく耳にしませんか? 手足の関節が腫れあがり、「リウマチで辛くて…」と訴えている人が身近におられるのではないでしょうか?

 本来、リウマチという言葉はギリシャ語で「流れ」を意味し、この病気が「悪い液が脳から流れて、関節や体の各部分に痛みや腫れを起こす」と考えられていたためです。

 一般的にリウマチという時は、「慢性関節リウマチ」を指します。全身の関節の痛みや腫れを伴う病気を「リウマチ性疾患」といい、全身性エリテマトーデスや全身性進行性硬化症や皮膚筋炎などの膠原病や、脊椎関節症、骨関節症などが挙げられます。その中で、リウマチ性疾患の代表的な病気が「慢性関節リウマチ」です。

【慢性関節リウマチとは?】

 慢性関節リウマチとは、手足を始めとする全身の関節に激しい痛みや腫れを起こす病気です。医学の発展した現在でも原因は不明のため、完治することは難しく、進行すると関節が変形して日常生活にも支障をきたすことがあります。

 さらに、心臓や消化器などで血管炎を起こしたり、心筋梗塞や重い肺炎を引き起こすような「悪性関節リウマチ」へ進展することもあります。悪性関節リウマチは厚生労働省の「特定疾患治療研究事業対象疾患」、いわゆる原因が不明で治療法が確立されていない難病に指定されており、医療費の自己負担分について公的な補助を受けることができます。 

●慢性関節リウマチに関するデータ 

 慢性関節リウマチの患者さんは、毎年約1万5000人が発症し現在の日本で約70万人、人口の約0.6%に当たると推定されています。

 男女比は、女性が男性の4倍以上。女性に多い病気なのです。

 発病する年齢の傾向は30~50歳の働き盛りの年代であるため、症状が重い場合は日常生活に支障をきたすなど、患者さんにとって精神的にも、経済的にも大きな負担となっています。 

●慢性関節リウマチの原因

 前述したように、慢性関節リウマチの原因は現在も解明されていませんが、本来は自分の体を守るべき「免疫」機能に異常が起こり、誤って自分の体を攻撃してしまうことから起こると考えられています。

 免疫機能に異常を起こす要因としては、慢性関節リウマチになりやすい体質(遺伝的な素因)であることや、ウイルスや細菌の感染の関与が考えられています。

●どんな症状が現われるのか? 

【関節に起こる症状】

 慢性関節リウマチは、滑膜に炎症が起こり慢性化していく病気ですが、まず初めに手足の指や手首に痛みと腫れが起こることが典型的な症状といわれています。慢性化して進行すると、四肢の大きな関節が腫れてくるようになります。 

 関節の痛みや腫れは、初めに1、2個所の関節が同時に腫れ、左右の同じ場所が腫れることも特徴的です。

 腫れている部分は、滑膜の炎症が起こっているために関節液の分泌が増え、水が溜まったような状態になります。その部分は柔らかく、強く圧迫すると痛みがあります。タオルを絞ったりしても痛く、時には何の動作もしていないのに激しい痛みを感じることもあります。

 また、体を動かし始める際にこわばりが強く、動かしにくく感じられます。特に朝起きた際によくみられるので「朝のこわばり」と呼ばれています。曲げ伸ばしをしているとこわばりは解消されますが、炎症が重い時には、こわばりが一日中続くこともあります。

 関節の痛みや腫れは放置しておくと次第に炎症が重くなり、関節軟骨の破壊から骨の破壊まで進み、関節の脱臼などによって関節の変形が始まります。そうなると、痛みが激しく曲げ伸ばしも不自由になるため、筋肉を縮めたり延ばしたりする働きも衰えて、よりいっそう関節が動かなくなって変形の度合いが強くなります。 

 関節の変形には慢性関節リウマチ特有のものが、いくつかあります。ものは、

「尺側偏位(しゃくそくへんい)」・・・手指の付け根から小指側に曲がる変形。

「スワンネック変形」・・・白鳥の首のように曲がる変形。

「ヒッチハイカー変形」・・・親指がヒッチハイクするときに合図する指の形に曲がる変形。など。

 足の関節でも同様の変形が起こります。歩く時に体重を支えクッションの役目をしている土踏まずのアーチがつぶれたり、歩行困難になる重大な変形もみられます。 

【関節以外に起こる症状】

 慢性関節リウマチは関節で起こるだけでなく、全身的な症状が現われる場合もあります。脱力感、疲れやすさ、体重減少、貧血などが代表的です。

 また、「リウマチ結節」といって皮膚の下にすぐ骨があるような肘関節の外側や後頭部などに“こぶ状”の固まりができることもあります。

 重症の場合には、血管の壁に炎症が起こる「血管炎」によって皮膚潰瘍、神経炎などがみられます。

●慢性関節リウマチの検査と診断 

【検 査】

 慢性関節リウマチの検査のおもなものには、「リウマトイド因子(RF)」「血沈」「CRP」「MRI」があります。 

○リウマトイド因子(RF)

 リウマトイド因子は、体の防御反応としてつくられた免疫グロブリンに対する自己抗体で、血清中のリウマトイド因子の有無を調べます。慢性関節リウマチ患者で陽性を示すのは約80%陽性ですが、肝硬変でも約50%が陽性を示すといわれており、かならずしも陽性だからといって慢性関節リウマチとはいえないので注意が必要とされています。 

○血沈

 赤血球の沈降速度を測ることで、炎症の強さを調べます。通常は1時間に10mm以下ですが、慢性関節リウマチの場合40~100mmの異常値を示します。 

○CRP(C-反応性タンパク)

 血清中にタンパク質の一種が増えているかを測定することで、炎症の度合いを調べます。陽性で増えている場合は慢性関節リウマチが疑われます。 

○MRI(核磁気共鳴撮像法)

 初期の関節の異常を発見するにはMRIによる画像診断が有効です。 

【診 断】

 慢性関節リウマチの診断基準として、アメリカリウマチ協会(ARA)(現 アメリカリウマチ学会(ACR))の「ACR改訂診断基準」が用いられています。  

■■慢性関節リウマチの診断基準(ACR)■■

(1)1時間以上続く朝のこわばり(主に手指)

(2)3個所以上の関節の腫れ

(3)手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ

(4)対称性の関節(左右同じ関節)の腫れ

(5)手のエックス線写真の異常所見

(6)皮下結節

(7)血液検査でリウマチ反応が陽性

 上記の(1)から(7)のうち、4項目以上を満たせば、慢性関節リウマチと診断される。

 ただし、(1)から(4)までは、6週間以上持続することが必要。  

 この診断基準や検査の結果、問診、全身症状の観察などから慢性関節リウマチを診断します。

 また、進行度を表す基準については、アメリカのスタインブロッカーによる「進行度の病気分類」と「日常動作における機能分類」があります。 

●慢性関節リウマチの治療

 原因がまだ解明されていない慢性関節リウマチは、完治させるための治療は難しく、現在は症状を軽減したり、進行を防ぐことに重点が置かれています。とくに関節の痛みや腫れを放置することは、関節の変形を引き起こすことにもなるので、早期にしっかりと治療することが大切です。

【病気を理解し、前向きに治療に取り組む】

 慢性関節リウマチは原因が不明の病気ですが、恐れずに前向きに病気と付き合うことが肝心です。わずかな変化を見逃さないことが進行を防ぎ、症状の軽減にもつながります。

【安静と運動】

 関節の痛みや腫れがひどい炎症の激しいときに体を動かすことは、炎症を助長させることになります。炎症が激しいときには安静が第一です。

 痛みや腫れがひどくなく、炎症もおさまっているときには、運動機能訓練を行います。筋肉は使わないと筋力がどんどん低下し、日常生活を不自由なく過ごすことが難しくなることもあります。プールでの水中運動訓練をはじめ、無理のない運動で筋力を高めます。

【薬物療法】

 病気への理解、安静と運動と同時に、関節の痛みや炎症を抑えるために「非ステロイド性抗炎症薬」や「副腎皮質ステロイド剤」などを用います。その他、「抗リウマチ薬」で炎症を抑えます。また、抗リウマチ薬が効かない場合は、「免疫抑制薬」を用いる場合があります。

【外科的手術療法】

 滑膜の炎症が激しい場合には滑膜切除術が行われ、関節の骨が破壊されてしまった場合には人工関節置換術などが行われます。

【理学療法】

 関節の痛みを和らげ、筋肉の緊張をとるための「温熱療法」、関節の動かせる範囲をゆっくりと十分に伸ばし、筋力を強化する「関節可動域体操」と「筋力強化」や関節の変形予防やすでに変形していても残った機能を支えるための「補助具」などがあります。


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アスペルガー症候群

■言語能力は正常で、自閉症より程度の軽い発達障害

 アスペルガー症候群とは、言語の習得に遅れのない自閉症近似の発達障害の一つ。広汎性発達障害の中に含まれますが、そのほかの広汎性発達障害との違いは、アスペルガー症候群には言葉の遅れがないということです。

 2歳までに単語を発話し、3歳までには二語文を習得するのは自閉症と異なりますが、コミュニケーションをとったり、対人関係を築くことができないため社会生活に困難を生じてしまうのは自閉症のそれと同等です。対人関係の障害のほか、特定の分野への強いこだわりを示したり、感覚的あるいは生理的異常を示したり、運動機能の軽度な障害も見られたりします。

 具体的な治療的対応は高機能自閉症(知的障害がない、あるいはほとんどない自閉症)と同様で、予後もほぼ同様であるとして、高機能自閉症と同じものとして扱われることもあります。しかし、多くの公的な文書においては、アスペルガー症候群と高機能自閉症とは同じ高機能広汎性発達障害の中に含まれますが、区分して取り扱われています。自閉症の延長線上にあっても、知的な遅れのないものが高機能自閉症で、さらに言葉の発達に問題を持たないものがアスペルガー症候群です。

 日本では従来、アスペルガー症候群への対応が進んでいませんでした。2005年4月1日施行の発達障害者支援法により、アスペルガー症候群と高機能自閉症に対する行政の認知は高まった一方、社会的認知は依然として低い状態です。

 オーストリアの小児科医、ハンス・アスペルガーが1944年、小児期より自閉的精神病質(性格異常の一種)を示す4例の症例報告を発表しました。このドイツ語で書かれた論文の存在とアスペルガーの名前を世界的にしたのが、イギリスの自閉症研究者であり臨床医であったローナ・ウイング。1981年の彼女の論文で、アスペルガー症候群の用語が始めて用いられ、1990年代になって世界中で徐々に知られるようになりました。

 アスペルガー症候群の原因は、明らかになっていません。自閉症と同様に、家族的・遺伝的要因の関与を示唆する研究がありますが、結論は一般化されていません。現在、最も注目されているのが脳の先天的な機能障害説で、実験データなどもそろってきています。脳幹障害説、小脳障害説、前頭前野障害説、一時感覚と関連した機能障害説、扁桃体(へんとうたい)システム障害説など、国内外でさまざまな意見があります。

 女性に比べて男性に多く発症することは確実ながら、自閉症ほどの優位性はありません。アスペルガー症候群の子供では、言語の習得に遅れを示さず、特定の分野に極端な関心と知識を持つだけなので、自閉症と比べて障害に気付かれるのが遅くなります。逆に、ユニークであるが早熟な子供と認識している親も、まれではありません。

 運動機能の軽度な障害も見られて、多くが不器用。運動と生活動作の両面で差し障りを示したりします。特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くこともあります。手をぶらぶら振る(常同行動)など、衝動的な指、手、腕の動きが認められることもあります。

 他者の気持ちを推測するのが苦手なため、コミュニケーションがうまくとれず、同年齢集団の幼稚園や保育園で友達ができにくく、成績はよいが友達がいないといった子供が多いようです。親とすらうまくコミュニケーションをとれないことも少なくありません。

 また、固定化または儀式化された行動や癖を持ち、手順にこだわったり、大人びた話し方をしたり、話をする時に目を反らしたり、言葉に抑揚がなく単調で一本調子のしゃべり方をしたり、といった特徴もあります。やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語(エコラリア)と呼ばれる症状を示す場合もあります。

 視覚や聴覚、味覚などの感覚的異常、あるいは生理的異常を示すこともあります。例えば、ちょっとした日差しや雑音を嫌い、サングラスや耳栓をつけなければ外出できないような子供もいます。強い匂いに敏感だったり、頭を触られたり、髪をいじられるのを嫌う子供もいます。味覚が偏っているため、偏食になりやすい子供もいます。

 想像力、応用力といった感性が欠如している反面で、規則を守ることが得意で、文字や数字、記号などに強い関心を持ち、絵を描くことなどに独特な才能を持っていることも特徴です。特によく関心の対象となるのは、鉄道・自動車などの輸送手段、コンピューター、数学、天文学、地理、恐竜、法律など。きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがあり、対象に関する大量の情報を記憶することがあります。

 小学校ではほとんどの場合、通常学級で過ごすことになります。成績は科目によって大きく差があり、得意不得意がはっきりしています。学年が進むと、考え方や行動が独特で周囲から特別視される傾向にあります。同年代になじめないことから、いじめが発生したり、社会的になじめないことによるパニック、不穏、不登校といった問題が現れることもあります。

 思春期を迎えると、それなりに周囲に適応するようになります。ただ、適応に失敗すると現実逃避、幻覚症状、気分障害といった二次的症状を引き起こす可能性があります。

 仕事に就いた場合は、得手不得手があり、あいまいなことの判断に迷うなど、大きな問題を持ちます。自分と周囲との差から長続きせず、現実逃避してしまうことがあるといわれています。ただ、興味のある仕事を見付けることができれば、一気に才能が開花するといったこともあります。

■アスペルガー症候群の検査と診断と治療

 児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師は、問診で症状、病歴、家族の病歴、生活習慣などの質問により診断していきます。その後、てんかんやその他の脳の病気でないことを確認するために、脳波検査、CT、MRIなどの脳の画像検査を行います。さらに、認知機能などを確認するために知能検査、人格検査などを行います。

 一般的に疾患は薬や手術を行うことで治療できますが、アスペルガー症候群は治す疾患とは違います。アスペルガー症候群の原因は、現在の医学でははっきりとわかっていません。脳に何らかの障害がある、環境や遺伝に要因があるなど諸説あるものの、明らかな原因は解明されていません。

 そのため、アスペルガー症候群に対する病院側の対応も、診断や療育支援にとどまり、薬を使うのはあくまでも二次的にうつ、不安障害などの症状が出た場合に限られています。うつや不安障害にはSSRI、強迫性障害にはSSRIやSNRI、幻覚・妄想には抗精神薬、気分障害には気分安定剤などが使用されます。

 医師によっては、自閉症のための援助プログラムであるTEACCHや、認知行動療法などを行うことがあります。これらは基本的に、家庭生活で親と一緒に日常的に行う生活の改善や、訓練になります。

 代表的なものは、生活のスケジューリング、明確に意図のある指示出し、なるべく刺激を与えない静かな環境づくり、何かに興味を持った際は応援する、長所を見付けほめる、テレビや映画を音声なしでみせて内容を予想させる訓練をする、演劇をさせ場面ごとにどのような態度をとるべきかを教える訓練をする、不適切な行動を記録し代わりとなる代替行動を教える、などです。


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アルコール依存症

飲酒の量をコントロールできない精神疾患

 アルコール依存症とは、飲酒などアルコールの摂取によって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強く捕らわれて、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神疾患。 薬物依存症の一種で、以前は慢性アルコール中毒、略してアル中とも呼ばれていました。

 厚生労働省の研究班の調査では、アルコール依存症と予備軍は約440万人と推定していますが、医療機関で治療を受けている人はごく一部。

 多量飲酒が長年続いた後に、発症します。多量飲酒は1日当たり日本酒3合以上が目安とされ、乱用からアルコール依存症へと進むリスクが高いと指摘されています。

 アルコール依存症の人は、アルコールによって自らの心身を壊してしまうのを始め、家族に迷惑をかけたり、さまざまな事件や事故、問題を引き起こしたりして、社会的信用と人間的信用を失ったりすることもあります。

 症状の特徴としては、飲酒のコントロールが効かないとともに、飲酒をやめた時に離脱症状が出ることです。離脱症状とは数日以内に起こる精神症状と身体症状で、精神症状としてはイライラ、不安、抑うつ気分、不快感または脱力感があり、身体症状としては発汗、下痢、手の震え、吐き気、起立性低血圧などがあります。飲酒すれば、離脱症状は軽減ないしは消失します。

 飲酒のせいで食欲がわかずに栄養失調になったり、酔って転倒し骨折する危険性も高くなります。

 症状が進行すると、いくつかの精神症状が現れます。その一つはアルコール離脱せん妄というタイプで、従来は振戦(しんせん)せん妄という診断名で呼ばれていたものです。

 飲酒の減量または中止後1週間以内に、せん妄という意識状態の変化が生じ、恐ろしいものが見える幻視を伴ったり、不安になっておびえたりします。幻視は活発で、主に虫やネズミなどの小動物が見えてしまうケースが多くなります。同時に、自律神経機能の高進で頻脈や発汗が出現したり、手足が震える振戰が起こったりします。

 また、飲酒中止時や大量飲酒時に、アルコール幻覚症がみられることがあります。幻覚は、被害的内容の鮮明な幻聴を主とします。複数の人がしゃべっているような幻聴が多く、1~2週間で消失します。しかし、中には数か月も続くことがあります。

 アルコール妄想症がみられることもあります。嫉妬(しっと)妄想を主とするタイプで、自分の妻や恋人が浮気をしているという疑いを抱いて詰問したり、証拠調べをするような行動に出たりします。断酒によって、次第に消失します。

 長期かつ大量の飲酒を続けると、サイアミン(ビタミンB1)の欠乏によって、コルサコフ病(ウェルニッケ・コルサコフ病)と呼ばれる亜急性脳炎を起こす場合があります。意識障害、記銘力や記憶力の障害、場所や時間がわからなくなる失見当識、小脳失調などの症状が出ます。記憶力の障害の結果として、記憶の不確かな部分を作話で補おうとする「コルサコフ作り話」が、よく知られています。

 アルコールが原因で、ビタミンB群とニコチン酸の欠乏による栄養障害が生じて、アルコール性多発神経炎、ないしアルコール性末梢(まっしょう)神経炎と呼ばれる疾患を起こすこともあります。手足の異常感覚や痛み、感覚鈍麻や疼痛(とうつう)、手足の筋肉の脱力、転びやすい、走りにくいなどの症状が出ます。

 アルコール性多発神経炎がコルサコフ病に合併すると、アルコール性多発神経炎性精神病を発症します。コルサコフ病からさらに進行して、アルコール性認知症を発症する場合もあります。

 なお、アルコール依存症の大部分では、臓器障害として肝機能障害、胃腸障害、心障害、膵(すい)障害を伴います。最も多くみられるのは、アルコール性肝炎からアルコール性脂肪肝、アルコール性肝硬変と進むケースです。

 アルコール性肝炎は、肝臓が炎症を起こし、肝細胞が破壊される病気。全身の倦怠(けんたい)感、上腹部の痛み、黄疸(おうだん)、腹水などの症状が出ます。アルコール性脂肪肝は、肝臓に脂肪が蓄積され、放置すると肝硬変、肝臓がんへと進む危険性を持ちますが、自覚症状はほとんどありません。アルコール性肝硬変は、肝細胞の破壊が広範に起こり、細胞が繊維化される病気。肝炎と類似した症状が出ます。

 アルコール性胃炎は、胃粘膜の炎症。慢性化して、胃潰瘍(かいよう)に発展する場合もあります。症状は胃痛、胸焼け、吐血など。アルコール性膵炎は、膵臓の炎症。慢性膵炎の約半数は、アルコール性のものといわれています。症状は腹部や背中の痛み、発熱など。急性膵炎や慢性膵炎が急速に悪化すると、落命することもあります。

 これらの身体症状は、アルコールにより引き起こされているものなので、酒を断つことにより回復するケースもあります。しかし、数日単位での回復は無理で、数カ月から長いものでは数年ほど回復に時間がかかることが、多くみられます。脳や体に不可逆的にダメージを受け、ある程度以上は治癒しないケースも。

 アルコール依存症の人は、飲酒歴が長期に渡っているのが特徴ですが、女性の場合は短期の飲酒歴で、かつ飲酒量が比較的少量でも、急速にアルコール依存症となってしまう危険があります。

 一説によると、習慣飲酒からアルコール依存症への進行の時間は、男性で約10年、女性では約6年であるともいわれています。

 女性は、男性に比べて一般的に体が小さいこと、体内の水分率が男性より低いこと、女性ホルモンがアルコール代謝を阻害する要因となることなどから、同じ量のアルコールを摂取しても男性の2倍悪影響が出ると見なされています。 

■根本的な治療法といえるのは断酒のみ

 アルコール依存症の治療において、まず大切になるのが本人の認識です。アルコール依存症の人は全般的に、自分がアルコール依存症であることを認めたがりません。認めてしまうと、飲酒ができなくなってしまうからです。何よりもまず、本人が疾患の自覚と治療の意志を持つことが大切です。

 アルコール依存症の人の過剰な飲酒に対して、「意志が弱いから」、「道徳感が低いから」といわれたり、不幸な心理的、社会的問題が原因であると考えられがちですが、実際はそうではなく、多くの場合この疾患の結果であることが多く見受けられます。

 つまり、アルコールによって病的な変化が体や心に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということです。このことをまず本人や周囲の人が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となります。

 ただ、一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえるものは現在のところ、断酒しかありません。しかし、本人の意志だけでは解決することが難しいため、周囲の理解や協力が求められます。

 重症の場合は、精神科への入院治療が必要になることもあります。入院によって異常行動の監視や情動の安定を図り、精神療法や断酒訓練を通して、アルコールへの依存からの自立を助けることもできます。

 日本で認可されているシアナミド(商品名:シアナマイド)とジスルフィラム(商品名:ノックビン)という2種の抗酒剤や精神安定剤の使用により、アルコール摂取を禁止して治療を進めるとともに、各地にある断酒会や禁酒会などの自助グループへの参加を奨励する医師も多くなっています。

 抗酒剤を服用すると、飲酒時に血中のアセトアルデヒド濃度が高まるため、不快感で多量の飲酒ができなくなります。簡単にいうと、少量の飲酒で悪酔いする薬。飲酒欲求を抑える薬ではないため、医師の指導の下、本人への十分な説明を行った上での服用が必須。この薬を飲んで大量飲酒をすると、命にかかわる危険性があるからです。

 ただし、医師による治療でも完治することはなく、断酒をして数年、十数年と長期間経過した後でも、たった一口、酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に逆戻りしてしまいます。

 そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症の人が一生涯断酒を続けることは、大変な困難を要します。アルコールは依存性薬物であるからです。

 このため、断酒をサポートする断酒会や禁酒会への参加を、医師も奨励しているのです。断酒会や禁酒会は、アルコール依存症患者とその家族によって作られた自助グループ。会費制で、組織化されており、外部に対してもオープンな姿勢を取っている日本独自の団体です。断酒を続けることを互いにサポートし合い、酒害をはじめ、アルコール依存症に対する正しい理解と知識を広く啓蒙(けいもう)する活動を行っています。

 また、都道府県の精神保健福祉センターや最寄りの保健所では、アルコール依存症に関する無料相談を受けています。専門の病院を紹介してくれることもありますので、アルコール依存症と予備軍の人は困った時に1人で悩まず、気軽に相談するとよいでしょう。


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季節性うつ病

■ある季節にだけ現れる、うつ病に似た症状

 季節性うつ病とは、抑うつ気分などの、うつ病に似た症状が特定の季節に限って現れる精神疾患の一種。多くは冬に症状が出る冬季うつ病ですが、夏など他の季節に症状が現れる人もいます。

 季節性情動障害、季節性気分障害、季節性感情障害などとも呼ばれます。英語ではSeasonal Affective Disorderと呼ばれ、この頭文字を取ってSADと呼ぶのが一般的です。

 季節性うつ病の中で最も一般的な冬季うつ病は、秋冬うつ病ともいわれており、10~11月ごろに抑うつが始まって、1~2月ごろに症状が重くなり、3月になると次第に軽くなっていくというサイクルを繰り返します。

 過眠、過食の症状がみられるのが特徴で、特に夕方になると眠くなり、過食による体重増加、炭水化物や甘い物を欲する傾向が強まります。気分の憂うつ、焦燥感、無気力、日常活動に対する関心の低下や引きこもりなど、うつ病に似ている症状もあります。

 冬型の季節性うつ病は、冬が長く厳しい南北の高緯度地域における発症率が高いことから、日照時間が短くなることに原因があると考えられています。もともと、うつ病は日照時間との関係が強く、高緯度地域の人ほど多くみられ、低緯度地域の人はあまりうつ病になりません。

 発症のメカニズムはまだよく分かっていないところもありますが、体内時計をつかさどるメラトニンの分泌の変化が原因という説があります。脳の中央部にある松果体が産生するホルモンであるメラトニンは、普通なら夜間に分泌されます。日照時間が短くなることで、その分泌時間が長くなって分泌が過剰になったり、分泌のタイミングが遅れたりするために、体内時計が狂ってしまうのが原因というものです。また、光の刺激が減ることで、神経伝達物質のセロトニンが減り、脳の活動が低下してしまうのが原因という説もあります。

 冬型の季節性うつ病の多くのケースでは、春から夏になるにつれて回復していきますが、反動で一時的に躁(そう)状態になる人もいます。症状が急転し、エネルギーに満ちて活動的になり、睡眠への欲求が低下し、食欲が減退するなど、冬の症状とは正反対の症状を示すもので、春夏軽躁病ともいわれます。

 夏型の季節性うつ病では、食欲低下、不眠、体重減少などの症状がみられるのが特徴です。

 なお、季節性うつ病の多くの症例では、途中から季節性を獲得したり、途中で季節性を失ったりと、不安定な経過を示すようです。

■季節性うつ病の治療

 冬型の季節性うつ病(冬季うつ病、秋冬うつ病)の治療には、高照度光療法が最も効果があります。閉め切った部屋で人工光を浴びる方法で、治療の目的で特定の季節を再現するため、光の照射時間を夏は長く、冬は短くといった形でコントロールします。光療法の装置は、日本の電気メーカーが市販もしています。

 日光浴、特に朝日を浴びるのも効果的です。薬品による治療も行われますが、通常のうつ病に効く抗うつ剤は、季節性うつ病にはあまり効果がありません。眠らないで起きている断眠療法が行われることもあります。


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強迫性障害

■強迫症状に特徴がある不安障害

 強迫性障害とは、強迫症状と呼ばれる症状に特徴付けられる不安障害の一つ。従来、強迫神経症と呼ばれていたものです。

 強迫症状は、強迫観念と強迫行為からなります。両方が存在しない場合、強迫性障害とは見なされません。強迫観念は、本人の意思と無関係に、不安感や不快感を生じさせる考えが繰り返し浮かんできて、抑えようとしても抑えられない症状。強迫行為は、不安で不快な強迫観念を打ち消したり、振り払おうとして、無意味な行為を繰り返す症状。

 自分でも、そのような考えや行為は不合理である、つまらない、ばかげているとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってくるので、やめられません。例えば、道を歩くのにも電柱を一本一本数えないと歩いて行けない、階段を上り下りするのにも左足からでないと気がすまない、外出の際に家の鍵(かぎ)やガスの元栓を閉めたかが気になって何度も戻ってきて確認する、というような具合です。

 強迫性障害は、人種や国籍、性別に関係なく発症する傾向にあります。調査による推測では、日本の全人口の2パーセント前後が相当します。日本では、対人関係、人間関係に関連した強迫症状が多いのが特徴で、他人と違うことを嫌う社会であるため、幼少期から人間関係に気を使うのが大きな原因とみられます。

 20歳前後の青年期に発症する場合が多いとされますが、幼少期、壮年期に発症する場合もあるため、青年期特有の疾患とはいい切れません。経過は一般に慢性で、よくなったり悪くなったりしながら、長期間に渡って続くのが普通です。ストレスにより、強迫症状が悪化する傾向にあります。また、うつ病が半数以上に合併してくることも特徴で、より苦痛が大きなものとなり、自殺などへの注意が必要になってきます。

 特別なきっかけなしに徐々に発症してくる場合が多く、完全な原因はわかっていません。大脳基底核、辺縁系など脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常、心理的な要因、体質など複数の要因が関係して、発症するのではないかと推定されています。双生児研究から、遺伝的な要因を指摘する説もあります。

 発症者の共通点として、もともと几帳面(きちょうめん)であったり、融通が効かずに生真面目(きまじめ)であったりする性格傾向が挙げられています。

■一般的な強迫症状と、附随する状態

 強迫症状の内容には、個人差があり、人間のありとあらゆる心配事が要因となり得ます。しかし、比較的よく見られる症状があるため、これを下記に記します。

 それぞれの症状についても、発症者自身の対処、すなわち強迫行為の内容は異なり、一人の発症者が複数の強迫症状を持つことも、一般的にみられます。

 不潔強迫(洗浄強迫)

便、尿、ばい菌などで汚染されたのではないかと気になり、人を近付けない、物に触れないなどの回避行動をとります。物に触った後や、帰宅後には、手を何度も洗わないと気がすまなかったり、シャワーや風呂に何度も入らないと気がすみません。

 確認強迫

外出や就寝の際に、家の鍵やガスの元栓、窓を閉めたかが気になり、何度も戻ってきては執拗(しつよう)に確認します。電化製品のスイッチを切ったか、度を越して気にもします。

 加害恐怖

自分の不注意などによって、他人に危害を加える事態を異常に恐れます。例えば、車の運転をしていて、気が付かないうちに人をひいてしまったのではないかと不安にさいなまれて、確認に戻るなどです。

 被害恐怖

自分自身に危害を加えること、あるいは、自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れます。例えば、自分で自分の目を傷付けてしまうのではないかと不安にさいなまれ、鋭利なものを異常に遠ざけるなどです。

 計算強迫

物の数や回数が気になって、数えないと気がすみません。

 縁起強迫(縁起恐怖)

自分が宗教的、社会的に不道徳な行いをしてしまうのではないか、あるいは、してしまったのではないかと恐れるもの。例えば、信仰の対象に対して冒とく的なことを考えたり、発言てしまうのではないか、赤ん坊の首を絞めるのではないかなどと恐れ、恥や罪悪の意識を持ちます。ある特定の行為を行わないと、病気や不幸などの悪い事柄が起きるという強迫観念にさいなまれる場合もあり、靴を履く時は右足からなど、ジンクスのような行動が極端になっているものもみられます。

 不完全強迫(不完全恐怖)

物を順序よく並べたり、対称性を保ったり、きちんとした位置に収めないと気がすまないもの。例えば、机の上にある物や家具が自分の定めた特定の形になっていないと不安になり、常に確認したり直そうとするなど。物事を進めるに当たって、特定の順序を守らないと不安になったりするものもあります。

 数唱強迫

不吉な数や、こだわりの数があり、その数を避けたり、その回数を繰り返したりします。例えば、数字の4は死を連想するため、日常生活で4に関連する事柄を避けるなどの行為。

 個人差によって、以下のような状態が強迫症状に付随することもあります。

 回避

強迫観念や強迫行為は発症者を疲れさせるため、強迫症状を引き起こすような状況を避けようとして、生活の幅を狭めることを回避と呼びます。重症になると、家に引きこもったり、ごく狭い範囲でしか生活しなくなることがあります。回避は強迫行為と同様に、社会生活を阻害し、仕事や学業を続けることを困難にしてしまいます。強迫症状を緩和するために、アルコールを飲み続けてアルコール依存症になる例もあります。

 巻き込み(巻き込み型)

強迫行為が自分自身の行為だけで収まらず、自分で処理しきれない不安を振り払うために、家族や友人に手などを洗ったり、誤りがないか確認するなどの行為を懇願したり、強要したりする場合があります。これを巻き込み、または巻き込み型といいます。巻き込みにより、本人のみならず周囲の人も、強迫症状の対応に疲れ切ってしまうことがあります。

■強迫性障害の診断と治療 

 病気に気付いたら、精神科を受診してください。うつ病や統合失調症など他の精神疾患や、脳器質性疾患の可能性もあるので、それらとの区別のための専門的な診断や検査も必要です。

 脳炎、脳血管障害、てんかんなど脳器質性疾患でも強迫症状がみられますので、区別のための血液検査、髄液検査、頭部CTやMRIといった画像検査、脳波検査などが必要になります。

 治療法には、薬物療法と精神療法があります。薬物療法としては、三環系抗うつ薬であるクロミプラミンが有効であることが確認され、神経伝達物質が病因の一つであることが考えられるようになりました。次いで、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が登場し、第1選択薬の地位を占めることになりました。ベンゾジアゼピン系の抗うつ薬も用いられ、また、不安レベルを下げるという意味で抗不安薬が併用される場合もあります。有効率は50パーセント前後と見なされています。

 精神療法では、暴露反応妨害法と呼ばれる認知行動療法の有効性が、確かめられています。認知行動療法とは、認知や行動の問題を合理的に解決するために構造化された治療法で、認知のゆがみの修正、不適応行動を修正して適応行動を再学習するというもの。暴露反応妨害法では、強迫症状が出やすい状況に発症者をあえて直面させ、強迫行為を行わないように指示し、不安感や不快感が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。これらを発症者の不安や不快の段階に応じて、実施します。

 認知行動療法は単独でも用いることができますが、強迫観念が強い場合、薬物療法導入後に行うほうが成功体験が得られやすくなります。適応する発症者が限られており、専門家が少ないのが難点です。


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心因性めまい

■主に心理的な要因の影響で生じるめまい

 心因性めまいとは、主に心理的な要因が影響して生じるめまい。その多くは、疾患としての不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状としてみられます。

 めまいを生じる疾患には、大きく分けて耳の疾患、脳の疾患、精神の疾患の3つがあります。めまいで耳鼻咽喉(いんこう)科や脳神経外科を受診し検査を受けても、特に異常が見付からなかったり、めまいの治療を受けているのになかなか改善しない場合には、単に耳の疾患、脳の疾患だけによって起こるめまいではなく、精神の疾患である不安障害、身体表現性障害、うつ病で生じる心因性めまいの可能性もあります。

 めまいの特徴は発症者ごとに異なり、辺りがグルグルする回転性のめまいから、体がふらついて真っすぐに歩けない浮動性めまいまで多種多様で、耳鳴りの障害を伴うこともあります。めまいだけではなく、気分の落ち込みや倦怠(けんたい)感といった抑うつ状態、食欲不振または過食、睡眠不足または過眠、頭痛や肩凝りなどといった症状がみられるのが特徴です。

 人間関係や仕事のトラブル、育児のストレス、将来への不安などが自律神経に悪影響を与えているのが、原因だと考えられています。

 心因性めまいには、大きく分けて2つのタイプがあります。 耳や脳に異常がある上に心の不調が影響してめまいが起こるタイプと、 耳や脳には異常はなくて心の不調が主な原因となるタイプです。

 前者のタイプは、もともと耳や脳の異常によるめまいがある上に、心の不調が重なることによって悪化しているもの。耳の異常によってめまいが起こる疾患としてメニエール病などがありますが、これらはストレスなども疾患の発症に関与しているため、精神的にも不調になることでさらに症状が悪化すると見なされます。この場合、めまいに関係する耳や脳の異常部位の治療と一緒に、不安障害やうつ病に対する治療も必要になります。

 後者のタイプは、不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状として、めまいが発症しているもの。なぜ、精神の疾患でめまいが発現するかは正確にはわかっていませんが、心理的な要因が交感神経に過度の影響を与えることが関係していると見なされています。また、精神の疾患は意欲や活力を伝える役割を持つセロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質の働きが悪くなり、脳機能が十分に働かなくなることにより起こるとされ、体の中の平衡機能も影響を受けると見なされています。この場合、耳鼻科でめまいの治療を受けても治りませんので、精神科や心療内科などでの治療が必要になります。

 不安障害は、急に激しい不安の発作に襲われるパニック障害と、不安感がいつもあり、仕事や生活に支障を来す全般性不安障害の2種類に分けられます。女性に多くて青年期に発症しやすく、不安障害の発症者の約70パーセントにめまいがあります。

 身体表現性障害は、体の疾患を思わせる症状があるのに、その体の疾患から説明できないか、疾患がないというものです。数年間、さまざまな体の不調を訴えて、体の異常はないと医師から説明を受けても、疾患への恐怖と捕われが続きます。身体表現性障害の発症者の80パーセント以上にめまいがあります。

 うつ病は、気分がひどく落ち込み、何事にもやる気がなくなる精神の疾患で、20人に1人が症状を持っているといわれています。全身に力が入らない感じでふらふらする、疲れ切った感じでふらふらする、目の焦点が合わないなどの訴えが多く、壮年期以降に増える傾向があります。

■心因性めまいの検査と診断と治療

 耳鼻咽喉科で耳の疾患もなく、脳の疾患もない場合に、原因不明とか、気のせいといわれることもありますが、心因性めまいは原因不明でもなく、単なる気のせいでもありません。気持ちだけで、心因性めまいを乗り越えることができません。めまいのもとは、精神の疾患であり、適切な治療で回復します。 ずっと続くめまいに悩まされているようであれば、精神科や心療内科で検査を受けてみます。

 精神科や心療内科での治療は、薬物療法が主となります。不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。一般的には、身体表現性障害を含め、抗不安薬で当面の症状を鎮めて経過をみます。

 うつ病の治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。薬による治療と合わせて、心理療法なども行われます。

 不安障害や身体表現性障害、うつ病の治療には時間がかかりますが、適切な治療が行われれば克服することができます。根気よく治療を続けることが大切です。そのためには、発症者本人だけではなく、周りの家族のサポートや職場の人たちの理解が欠かせません。

 日常生活では、ストレスをためず気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。


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精神疾患

■脳および心の障害で起こる疾患

 精神疾患とは、脳および心の機能的、器質的な障害によって、精神の変調が引き起こされる疾患。統合失調症や躁(そう)うつ病といった重度のものから、不安障害(神経症)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの多くの疾患を含みます。

 精神の変調が髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合も含み、広義の精神疾患として知的障害や人格障害をも含みます。

 精神疾患には多くの種類があり、精神医学の領域では、精神疾患の定義、診断基準が統一されていません。そのために、同じ病状に対して付けられる病名が、精神疾患の分類法によって変わってくることがあります。

 世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)においては、診断カテゴリーを用いて網羅的に分類しています。これにより、個々の精神疾患の診断が世界全体で以前よりも標準化され、一貫性を持つようになりつつあります。

 以下の精神疾患の分類は、世界保健機構による国際疾患分類に基づきます。

●症状性を含む器質性精神障害

 認知症疾患、コルサコフ症候群、頭部外傷後遺症などによる精神疾患

●精神作用物質使用による精神および行動の障害

 アルコール、アヘン、大麻、鎮静薬または催眠薬、コカイン、覚醒(かくせい)剤・カフェイン、幻覚薬、タバコ、揮発性溶剤などの精神作用物質に関連した精神疾患。依存症、乱用、中毒などに分けられる。アルコール依存症、薬物依存症など

●統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害

 統合失調症、統合失調症型障害、持続性妄想性障害、急性一過性精神病性障害、感応性妄想性障害、統合失調感情障害

●気分(感情)障害

 躁病、双極性障害(躁うつ病ともいう)、うつ病

●神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

 不安障害、恐怖症、単一恐怖広場恐怖社会恐怖、パニック障害全般性不安障害、強迫性障害、重症ストレス障害、急性ストレス障害PTSD(心的外傷後ストレス障害)適応障害、 解離性障害、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)、身体表現性障害、転換性障害心気症、疼痛(とうつう)性障害、身体醜形障害

●生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

 摂食障害、神経性無食欲症(拒食症)、神経性大食症(過食症)、 睡眠障害、不眠症、精神生理性不眠症概日リズム睡眠障害、入眠困難中間覚醒早朝覚醒過眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、原発性過眠症反復性過眠症特発性過眠症睡眠時随伴症レム睡眠行動障害睡眠時遊行症、夜驚症 

●成人の人格および行動の障害

 妄想性人格障害、統合失調質人格障害、分裂病型人格障害境界性人格障害(境界例)、自己愛性人格障害、演技性人格障害、反社会性人格障害、強迫性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、性同一性障害、性嗜好(しこう)障害、フェティシズム、露出症、窃視症、小児性愛、サディズム・マゾヒズム、虚偽性障害ミュンヒハウゼン症候群

●精神遅滞

 精神遅滞

●心理的発達の障害

 広汎(こうはん)性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群

●小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害

 多動性障害、チック障害、トゥレット障害 

●その他

 幻覚妄想文化依存症候群神経質対人恐怖症 

■精神疾患の診断と治療

 精神疾患の治療を担当するのは、主に精神科、神経科です。発症者の症状や状況によっては、心療内科や内科など他の科で診察、治療が行われている場合もあります。

 精神疾患の治療とケアを行うための訓練を受けた専門家は、精神科医だけではありません。医師以外の専門家として、臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師などがいます。ただし、このうち薬を処方する資格を持っているのは精神科医だけです。医師以外の精神医療の専門家は、主に心理療法を行います。

 医師による診断においては、精神疾患を判別するための研究が進み、以前よりはるかに正確にできるようになっています。診断方法も進歩し、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、ポジトロンCT(PET)検査(脳の特定領域への血流を測定する画像診断法の1種)といった脳の画像診断が行われています。

 医師による治療法は精神疾患の種類や重症度により異なりますが、大きく分けると、身体療法か心理療法(精神療法)のいずれかです。身体療法には、薬物療法と電気けいれん療法があり、脳に直接働き掛けます。

 心理療法には、個人療法、作業療法、グループ療法、家族療法、夫婦療法といったもののほか、行動療法におけるリラクセーション訓練や暴露療法などの各種技法、催眠療法などがあり、言語や行動を介して治療します。

 重い精神疾患に対しては、薬物療法と心理療法を併用することが治療効果を高めると見なされています。ストレスの緩和は精神疾患の症状の緩和につながることから、音楽療法、運動療法、ユーモア療法などが活用されることもあります。

 精神疾患を予防したり、症状が軽減、消失した後の再発防止のために、社会適応能力を習得したり、趣味やスポーツなどでストレスを適切に管理することも、重要視されています。 

 また、家族など周囲の人間が理解を示すことも必要です。精神疾患に偏見や差別的な見方を持っている人もいるため、それが発症者のストレスとなり、引きこもりがちに、内向的になることもあるためです。


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全般性不安障害(GAD)

●不安障害の一種で、慢性的な不安が特徴

 全般性不安障害(GAD:Generalized Anxiety Disorder: ジーエーディー)とは、不安障害の一種。不安障害とは、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それが元で日常生活に支障を来してしまう病気の総称です。

 不安障害に数えられる病気の一つである全般性不安障害は、以前はパニック障害と一括して「不安神経症」と呼ばれていました。現在では二つに分けて、慢性的な不安に悩まされているなら 「全般性不安障害」、急な不安発作を繰り返すなら「パニック障害」という診断名で呼ばれるようになりました。「神経症」という用語も、国際疾病分類などでは正式な診断名として使われなくなりました。

 全般性不安障害の特徴は、慢性的な不安と、それに伴う心と体の症状が長く続くことです。誰もが感じる正常な不安は、はっきりした理由があって、一定の期間だけ続きます。しかし、全般性不安障害の場合、理由が定まらず、特殊な状況に限定されない不安が長期間続きます。

 不安や心配の対象は、家庭生活、仕事、学校、将来、近所付き合い、地震や大雨などの天災、不慮の事故、病気、外国での戦争など、あらゆるものが対象になります。そして、自分ではどうすることもできない事柄についても、必要以上に深刻に悩み、不安や心配をコントロールできなくなって、心や体の調子が悪くなり、日常生活に支障を来してしまいます。

 不安障害の中では一般的で、全般性不安障害の患者数はパニック障害の患者数より3~4倍多いとされ、1000人に64人くらいが経験するという報告もあります。まれな病気ではないといえます。

 発症する年齢は10代半ばから20歳前後が多く、男女比は1:2で女性に多くみられます。また、精神科にはかなりの時を経て、受診するケースが多いといわれています。

 アメリカで行われた調査によれば、一生の間に全般性不安障害にかかる人の割合(生涯有病率)は3~5パーセント、不安を専門に診ているクリニックでは、全患者の30パーセント程度が全般性不安障害と診断されており、発病者がかなり多くいる病気であることがわかります。 

●原因と症状の現れ方

 一般に、不安障害の原因は心理的な出来事(心因)とされており、全般性不安障害の場合も、何らかの精神的なショック、心配事、悩み、ストレスなど、精神的原因と思われる出来事をきっかけに、いつの間にか発症しているというのが普通です。しかし、きっかけが全くないこともあります。過労、睡眠不足、風邪など、身体的な状況がきっかけになることもあります。

 性格的には、もともと神経質で、不安を持ちやすい人に多い傾向があります。遺伝的要因や、自律神経の障害なども、発症に影響すると考えられています。

 発病者が訴える症状には、以下のようにさまざまなものがあり、不安と心配を過剰に持つことがいかに、心や体に悪い影響を与えるかがわかります。

【身体症状】

・頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感

・そわそわ感

・もうろうとする感じ

・めまい感、頭が揺れる感じ、船酔している感じ

・自分の身体ではないような感じ

・身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感

・全身に脈拍を感じる

・便秘や頻尿 など

【精神症状】

・注意散漫な感じ

・記憶力が悪くなる感じ

・根気がなく、疲れやすい

・イライラして、怒りっぽい

・ささいなことが気になり、取り越し苦労が多い

・悲観的になり、人に会うのが煩わしい

・寝付きが悪く、途中で目が覚めやすい など

 不安に伴ういろいろな身体症状、精神症状に関しては、多くの発病者は身体症状のほうを強く自覚します。どこか体に重大な病気があるのではないかと考え、あちこちの病院で診察や検査を受けるのが常ですが、症状の原因になるような身体疾患はみられません。

 経過は慢性で、日常生活のストレスの影響を受け、よくなったり悪くなったりが続きます。途中から、気分が沈んで、うつ状態を伴ったり、うつ病に移行することもあります。

●検査、診断、薬物療法と精神療法による治療

 全般性不安障害という病気の名称やその症状については、これまであまり知られていなかったため、医療機関での治療を受けていない人も多いようです。

 また、病院に行っている人の場合でも、自律神経失調症や更年期障害と診断され、全般性不安障害の発病者としての治療の機会を逃がしていることもあるようです。

 発病すると、他の精神科領域の病気、例えば、うつ病、パニック障害、社会不安障害(SAD)などを併発する可能性が高くなるとされておりますので、コントロールできない不安や心配が続き、心や体に不調を来す症状が現れている場合には、早めに精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けてください。

 全般性不安障害の診断基準には、米国精神医学会編「DSM-(協) 精神疾患の分類と診断の手引」が主に使われます。その基準の核となる部分をまとめると、次のようになります。

(1)仕事や学業などの多数の出来事または活動について、過剰な不安と心配がある。しかし、その原因は特定されたものではない。

(2)不安や心配を感じている状態が6カ月以上続いており、不安や心配がない日よりある日のほうが多い。

(3)不安や心配をコントロールすることが難しいと感じている。

(4)不安や心配は、次の症状のうち3つ以上の症状を伴っている。

・そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう

・疲れやすい

・集中できない、心が空白になってしまう

・刺激に対して過敏に反応してしまう

・頭痛や肩凝りなど筋肉が緊張している

・眠れない、または熟睡した感じがない

 以上の診断基準が使われて、症状と経過から診断が行われます。その人に出ている症状が他の身体疾患や、全般性不安障害以外の不安障害や、うつ病などの精神科領域の疾患によるものではないことを確認することも、重要となります。

 身体疾患を除外するために、尿、血液、心電図、X線、超音波など一般内科的検査が行われ、これらの検査で異常が見付からない場合に診断が確定します。

 治療法には、大きく分けて薬物療法と精神療法の2つがあります。疾患の本態は不安にありますので、まずは薬を使って、不安をコントロール可能なくらいまで軽くし、さらに精神療法によって、発病者自身が不安をコントロールできるようにしていきます。 

【薬物療法】

 不安感の軽減を目的に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などが用いられています。ベンゾジアゼピン系は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用があります。うつ症状を合併する場合は、抗うつ薬が用いられます。最近は、パロキセチン(パキシル) に代表される新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が報告されていますが、副作用はあります。

【精神療法】 

 発病の原因が、その人の生育歴や性格によっているような場合は、精神療法も重要となります。

 精神療法には、カウンセリング、認知行動療法、セルフコントロール法などがあります。いずれも無意識に存在している「不安の根源」を探し、そのコントロールを目指すものです。

 精神療法は、薬物療法と違って副作用が少ないのが利点ですが、本人の努力がかなり必要なことや主治医の先生との相性などもあり、効果にバラツキが出る場合があります。症状の完全な消失を求めるのでなく、少しでもよくなったら、そのぶん前向きに生活していく態度が、本人にとって肝要です。

●周りに発病者がいる方へ

 発病者は不安や心配を周りに訴えることが多いのですが、その訴えの中には、病気ではない人からみるとナンセンスに感じられることもあるので、じっくりと訴えを聞いてあげることが難しい時もあるかと思います。

 しかしながら、不安や心配に伴って心や体にも不調が長く続いていることを理解して、温かい気持ちで支えてあげてください。

 また、発病者と思われる人が周りにいて、しかも治療を行っていないようでしたら、単なる心配性と見なさないで、なるべく早く精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けるよう勧めてください。


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パニック障害

■強い不安感を主症状とする精神疾患

 パニック障害(PD=Panic Disorder)とは、状況に関係なく突然、発作が起こる精神疾患の一つ。かつては、全般性不安障害とともに不安神経症といわれていました。現在では、世界保健機関 (WHO) の国際疾病分類(ICDー10)によって、独立した病名として登録されています。

 日本人の生涯有病率は、2~3パーセントと見なされています。女性の罹患(りかん)率は、男性に比べて2倍程度に上るとも見なされています。

 発症の原因は、はっきりと解明されているわけではありません。ストレスや脳内の伝達物質の動きに関連があるといわれ、過労や睡眠不足、風邪などの身体的な悪条件が誘因になるともいわれています。

 定型的なパニック障害は、突然に起こるパニック発作によって始まります。続いて、その発作が再発するのではないかと恐れる予期不安と、それに伴う発作の慢性化が生じます。さらに長期化するにつれて、発作が生じた時に逃れられないような、あるいは助けを呼べないような特定の場所や状況を回避して、生活範囲を限定する広場恐怖が生じてきます。

 パニック発作の症状は、さまざまです。動悸(どうき)、発汗、身震い、窒息感、胸痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、強い不安感、非現実感、発狂への恐怖感、死への恐れなどが、代表的です。多くの場合は、10分以内でピークに達し、通常20~30分ほど、長い人でも1時間以内には収まります。

 このパニック発作に、発症者は非常に強烈な恐怖を感じるため、再び発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく予期不安を生じます。生活様式が変化して、神経質になり、いつも心身の状態を観察するようになります。そして、持続的に自律神経症状が起こることとなり、パニック発作が繰り返し生じるようになっていきます。

 パニック発作の反復とともに、広場恐怖の症状、すなわち発作が起きた場合に、その場から逃れられないと思われる状況を回避する症状を生じるようになります。パニック障害を発症した人のうち4人に3人は、多かれ少なかれ広場恐怖が出ると見なされます。

 回避される状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車、バス、飛行機、車、エレベーター、歯科、理容室、美容室、映画館、会議室、商店でのレジ待ち、道路の渋滞といった一定時間、特定の場所に拘束されてしまう環境や、繁華街、ショッピングモールといった人込みの中などが多いようです。

 ちなみに、広場恐怖の「広場」はギリシャ語で「市場」、「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であり、「広い場所」という意味ではありません。

 より不安が強まると、家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもあります。生活上の障害が強まり、社会的役割を果たせなくなっていき、それに伴う周囲との葛藤(かっとう)もストレスとなり、症状の慢性化をさらに推進していくこととなります。

 予期不安や広場恐怖により社会的に隔絶された状態が続くと、ストレスや自信喪失などによって、うつ状態となることも少なくありません。気分の浮き沈みが激しい、夕方近くや夜になると理由なく泣く、いくら寝ても眠い、体が重りをつけたようにだるい、言葉に敏感に反応して切れたり強く落ち込む、時に自傷行為を図るといった、いろいろな逸脱行動が出ます。

 元来うつの症状が見られなかった人でも、繰り返し起こるパニック発作によって不安が慢性化していくことでうつ状態を併発し、実際にうつ病と診断されるケースも多く報告されています。パニック障害にうつ病が併発する割合について、日本では約3割、欧米では約5~6割といった統計も出されています。

 ただし、うつ状態はパニック発作に起因して二次的に発症した別個の疾病であり、パニック障害そのものの症状とは分けて考える必要がある、という見方もあります。

■診断と一般的な治療法

 パニック障害の疑いがあると思う時には、精神科、心療内科を受診する必要があります。

 医師による診断では、予期しないパニック発作が繰り返し起こり、それらに対する予期不安が1カ月以上続く場合、パニック障害の可能性を疑います。診断基準としては、アメリカ精神医学会「DSM-IV 精神障害の診断と統計の手引き」が多く用いられています。

 実際のパニック障害の診断では、広場恐怖を伴わない軽症例と、広場恐怖を伴う慢性化した症例との2つに区分されます。なお、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われます。

 身体疾患が原因になっている場合も、パニック障害とは診断しません。心血管系の病気、呼吸器の病気、低血糖、薬物中毒、てんかんなど、パニック障害と同じような症状を引き起こす他の疾患がないことを確認するため、尿検査、血液検査、心電図検査、脳波検査なども行われます。

 パニック障害の治療法には、薬物療法、精神療法、生活習慣の改善などがあります。 

 薬物療法では、発作の抑制を目的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や三環系の抗うつ薬が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられます。

 最近では、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いのですが、SSRIの代表とされるパロキセチン(商品名:パキシル)では、飲み忘れなどで服用を中止した数日後に起きる激しいめまい、頭痛などの離脱(禁断)症状が問題となり、パニック障害に対する安全性、有用性に疑問も呈されています。

 一方、米国ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存性が問題とされることが多いのですが、日本では、成人の定型的パニック障害ではあまり問題とならないとする意見も多くみられます。

 精神療法では、最も基礎的で、重要なものが、疾患に対する医師の説明。パニック障害は発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患ですので、医師が明確に症状について説明することが、すべての治療の基礎となります。

 同時に、認知行動療法も行われます。精神療法の中で、有効性について最もよく研究されているのが、この認知行動療法です。不安が誘発される状況に想像的または体験的 に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる暴露療法、過呼吸にならないようなリラクゼーショントレーニングである呼吸法、筋肉を緩めるリラクゼーショントレーニングである筋弛緩法などが行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう訓練、練習を行います。

 認知行動療法は一歩間違えると、症状の悪化につながりかねないので、専門医の指導の元で無理をせず慎重に行う必要があります。 日本では、系統的な認知行動療法を行う施設は多くありませんが、精神科、心療内科の医師が認知行動療法的な指導を行っているケースは多くみられます。

 そのほか、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、森田療法、内観療法も有効とされています。

 パニック障害の発症者にとっては、睡眠不足などの乱れた生活習慣や、精神的なストレスが治療の大敵。生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。 そのためにも規則正しい生活を送り、それぞれに合った気分転換の方法を見付けるとよいでしょう。


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非定型うつ病

■典型的でなく、若い女性に多いうつ病

 非定型うつ病とは、典型的なうつ病とは異なるタイプのうつ病。発症した人は周囲から、うつ病と思われないことや、社会不安障害など他の心の病気を合併することが少なくありません。

 非定型うつ病は従来、不安障害(神経症)や人格障害などと診断されることが多かったものですが、最近は米国などで、典型的なうつ病とは違うアプローチで治療され、その割合も米国では、うつ病全体の3~4割を占めています。日本では精神科医の間でもようやく認知されてきた段階で、大きな環境の変化に対応できない適応障害と間違われて、診断されるケースもあります。

 従来の典型的なうつ病は定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲・食欲・集中力・性欲の低下、不眠などが主な症状となります。

 この定型うつ病とは現れる症状が違うのが非定型うつ病で、気分の落ち込みはあるものの、何か楽しいことがある時には元気が出るのが大きな特徴です。その他、タ方になると調子が悪くなったり、過食や過眠ぎみになるなどの特徴もみられます。

 20~30歳代でかかるうつ病では、多くがこの非定型うつ病に相当すると考えられます。特に、女性の場合は8割が相当し、男性と比べ3~5倍多いとされています。

 以下、定型うつ病と非定型うつ病の症状を比較します。気分の面では、定型うつ病は終始落ち込んで、元気や気力がないのが特徴。出来事の内容を問わず、何に対してもやる気が持てず、今まで積極的に楽しんでいた趣味にも、関心や喜びが持てなくなります。

 一方、非定型うつ病は気分の落ち込みや気力、集中力の低下など、うつ病に特有の症状はあるものの、楽しいことやいいことがあると明るくなります。すなわち、出来事に反応して気分が変わる「気分の反応性」がみられます。発症者は常に落ち込んでいずに気分が高揚している時もあり、社会生活の適応度もそれほど悪くないため、周りからの理解を得にくくなります。

 リズムの面では、定型うつ病は「モーニング・デプレッション」と呼ばれ、朝起きた時に調子が悪く、気分が落ち込みます。家事や仕事も面倒で、何をやる気にもなれないという憂うつな気分がダラダラと続き、やがてタ方くらいになると少し気が楽になってくるのが特徴。

 一方、非定型うつ病は1日のうちでは、タ方になると気持ちが不安定になりやすいのが特徴。午前中から昼は比較的穏やかに過ごせるものの、「サンセット・デプレッション」と呼ばれて、タ方から夜になると不安やイライラが高まって調子が悪くなります。時には、気分が高ぶって泣きわめいたり、リストカットなどをしてしまうことも。調子の悪い時間帯が、定型うつ病と全く逆になります。

 睡眠の面では、定型うつ病は夜、布団に入っても、なかなか眠れず、夜中にも度々目が覚める上、朝早くに目が覚めてしまい、そのまま眠れません。特に早朝に目覚める傾向が強く、慢性の睡眠不足になりがちです。

 一方、非定型うつ病は1日の睡眠時間が10時間以上にも及ぶほど、「過眠」傾向にあります。睡眠時間が長いにもかかわらず、昼間に眠気を感じ、いくら寝ても寝足りないような気がします。

 食欲の面では、定型うつ病は性欲などを含めた基本的な欲求が低下するのが特徴で、食欲が落ちて食べる量も減るため、やせて体重が落ちます。

 一方、非定型うつ病は食べることで、気持ちを紛らわしたり、甘い物が無性に欲しくなって発作的に食べる「過食」傾向がみられ、体重も増加しがち。

 また、非定型うつ病では、疲労感を通り越して、手足に鉛がついたように、体が重くなる「鉛様まひ」を示すこともあります。

 発症する人の性格を分析すると、定型うつ病では、きちょうめんで、まじめで、完壁主義な人ほどなりやすい傾向があります。

 一方、非定型うつ病の場合には、相手からどう見られるかを気にし、他人の顔色をうかがう性格傾向がみられ、特に他人から拒絶されることに過敏になる「拒絶性過敏」が重要な特徴となっています。他人の何気ない一言であっても、過剰な気分の落ち込みの引き金となりやすいのです。

 その根底には、他人の評価が気になってしょうがないといった不安があり、子供のころから、常に相手のいうことを尊重し、従うために「いい子」といわれていた人、人見知りがある人、人前で上がりやすい人、うまく自己主張するのが苦手な人がなりやすい傾向にあります。

 原因を分析すると、定型うつ病では、脳内で情報交換をしている神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが少なくなるために、発病するといわれています。非定型うつ病でも、神経伝達物質のノルアドレナリンが関係していると見なされていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。

 非定型うつ病の日常生活における支障としては、他人の批判を過剰に受け止めてしまうために、親密な人間関係を築くのが困難であったり、他人の批判を恐れるあまりに、人間関係に気を使いすぎてしまうことが挙げられます。過眠傾向にあるため、朝、起きれなくて、約束の時間に遅刻してしまうこともあります。

 また、病気の影響で、大脳の前頭葉の血流が悪くなりやすくなります。ここは、思考や情動をつかさどっていて、人間が人間らしくあるために大切な部分。血流が悪くなると、前頭葉がスムーズに機能しにくくなって、心身の不調として出ることがあります。

■薬物療法と心理療法による治療

 非定型うつ病の症状が2週間以上続き、つらい時には、我慢をせず精神科や心療内科へ相談に行き、適切な治療を受けましょう。

 病院によっては、定型うつ病と非定型うつ病を区別して診断しないこともありますが、治療法や対処法に異なる部分があるため、注意が必要です。そもそも、この非定型うつ病がうつ病の一種として認識されたのは、日本では近年のこと。従来は、適切な治療や投薬が行われないために治りづらく、ほかの病気と診断されることも多かったのです

 非定型うつ病の治療には、薬の服用による薬物療法が行われるほか、生活のリズムを改善するための生活指導や、考え方を整理し捕らえ直すための心理療法が行われます。

 時には、入院による治療が行われることもあります。うつ病には、定型・非定型を問わず自殺の危険性があり、特に非定型では、人間関係のやり取りの中で感情が激し、衝動的に自殺を完遂してしまう恐れがあることに、対処しなければならないためです。 

 非定型うつ病に使われる薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。通常、定型うつ病に多く使われるパキシルなどのSSRIだけでは、非定型うつ病にはあまり有効でないことがわかっているために、薬を組み合わせるのです。

 薬を飲むことで、落ち込みやイライラが改善され、気分が安定して楽になりますが、治るまでには1年は続けて飲むことが必要です。

 薬による治療に加え、認知行動療法などの心理療法的なアプローチも重要です。とりわけ、認知行動療法には薬物療法と同等の効果があることが確認されています。

 非定型うつ病の人は、マイナス思考に捕らわれがちで多角的な思考ができず、突発的な問題が起きると、状況や自分の気持ちを整理することが困難になってしまいます。気分の不安定さを解消するために、ギャンブルや買い物、セックス、お酒などに依存する傾向もあり、そうしたものにのめり込む罪悪感から自傷行為を繰り返してしまうことも。

 そこで、認知行動療法の助けを借りて、自分の考え方の癖を知り、よりよい行動に修正する方法で、カウンセリングやグループ療法を通じて、ストレスへの有効な対処法や人間関係の結び方を身に着けます。この認知行動療法は、前頭葉の働きを高めるのにも効果的な治療法です。

 認知行動療法のプログラム例としては、親など大切な人から愛されているという認知の増強・確認、劣等感の除去、自己主張のスキル、自己の客観視の向上、ストレスヘの対処、情動コントロールがあります。

 しかしながら、休養を取り、薬を第一とした適切な治療を受けることで回復していく定型うつ病と異なり、非定型うつ病の場合は悪循環を繰り返すことが多く、なかなか治りにくいのが現状です。

 治療を続けるうちに、ふとしたきっかけによって、よくなることもあります。人間関係で不快な刺激が少なくなるなど、人によってそのきっかけはさまざま。職場の人間関係が影響する場合、異動を申し出たり、転職を試みるのも一つのきっかけになります。

 症状が治まっても、うつ病は再発しやすい病気ですので、薬を飲み続けることが大切。自己判断で薬をやめるのは禁物です。治癒には平均3年かかるとされるので、焦りも禁物。

 そして、医師による治療も大切ですが、この非定型うつ病の改善には、普段の生活習憤も重要なカギを握っています。 

■非定型うつ病を改善する生活のヒント

 非定型うつ病では過眠傾向になるため、昼夜が逆転し、生活リズムが乱れがちになります。生活のリズムを乱れたままにしておくと、憂うつ、イライラなどの気分や、体の重さといった症状がますます悪化してしまいます。

 規則正しい生活を心掛け、軽い運動を行う。この当たり前のことが、気持ちを安定させる一番の特効薬となります。とりわけ、仕事に行くなど昼間は目的を持って活動することが、リズムの乱れを改善するために大切です。

 具体的な方法を、以下に紹介します。

規則正しい生活をする

 朝はきちんと起きて、3度の食事を食べ、夜は12時前には寝るという規則正しい生活を心掛けましょう。人間の体内リズムは、朝起きて光を浴びることで調整されます。目に光が入ると、脳の松果体から出るメラトニンという睡眠物質の分泌が抑制され、体内リズムがリセットされることによって、1日およそ24時間で一巡する体のリズムが整います。 

可能な場合は仕事に行く

 仕事に行ける場合には、多少つらくても時間どおり会社に出勤し、業務に取り組むことも必要です。やらなければいけないことがあり、それに取り組むことが、精神の覚醒(かくせい)を促すため、体内リズムを正常にしてくれるのです。

毎日、何か目標を持って生きる

 仕事を持っていない人の場合には、朝起きたら「今日はこれをしよう」、「何かをやり遂げよう」と、その日の目標を持って、毎日を生きることが大切。「この本を読もう」など簡単なことでかまいません。自覚を持つことが、昼間の覚醒を促します。

掃除や片付けなど、整理整頓を心掛ける

 体を動かす方法としては、掃除や片付けなどの整理整頓(せいとん)もお勧め。適度な運動になるだけでなく、「今日は部屋の掃除をする」ということが目標になって、リズム調整に役立ちます。きれいになると達成感もあり、周囲の人に感謝されることで人間関係の改善にもなり、気分がよくなります。

外に出て散歩などで体を動かす

 1日1回は外に出て、太陽の光を浴び、公園を散歩するなど体を動かすようにします。ウォーキングなどの軽い有酸素運動をすると、脳では気分を安定させる脳内物質の分泌が増え、心も体もリラックスします。

身近な人がうつ病になったら

 うつ病のタイプによって、接し方が違います。典型的なうつ病である定型うつ病の場合は、とにかくゆっくりと体を休め、休養を取ることが必要。周囲の人が「頑張れ」と言葉を掛けたり、励ましたりすると、本人が自分自身を追い込んでしまうため、よくありません。

 逆に、非定型うつ病の場合は、少し励ますことがかえって本人のためになります。「決まった時間に起きて会社に行こうよ」、「1日1万歩を目指して歩いてみたら」など掛ける言葉は優しくても、心は厳しく持ちながら、本人の気力を奮い立たせるように接することが大切です。

 また、非定型うつ病では、周囲の人に助けを求めるサインとして、衝動的に自殺を企てる恐れがあります。不安や焦燥感が強い時は、しっかり見守ることが大切になります。


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アペール症候群

■頭の形と顔貌が特徴的で、手足の指の癒合がある先天性疾患

 アペール症候群とは、複数の特定の奇形を持っている先天性の異常疾患。エイパート症候群とも、尖頭(せんとう)合指症候群とも呼ばれます。

 アペール症候群の主な症状は、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症、合指症、合趾(ごうし)症で、頭の形と顔貌(がんぼう)が特徴的で、手足の指に癒合などの奇形があります。症状が似ているため、クルーゾン病と同一視する場合もあります。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 合指症は、隣り合った手の指がくっついている疾患。アペール症候群における合指症の場合、人差し指から小指までの4本の合指、または親指から小指まで5本全部の合指の2つのパターンに大きく分かれるようです。手の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。

 合趾症は、隣り合った足の指がくっついている疾患。5本全部の指がくっついていることが多いようです。合指症と同じく、足の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。そのままでも歩行に問題はありません。

 水頭症のほか、聴力の障害、精神発達障害を伴うこともありますが、ほとんどは知能の発達に異常はありません。発生頻度は1万6000人に1人とされ、典型的な症状を持つ発症者は常染色体性優性遺伝をすることがわかっています。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ないものの、アペール症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■アペール症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしい、手足の指が癒着していると心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 アペール症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。 水頭症予防の手術が必要になる場合もあります。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。アペール症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 手足の指の癒着は、皮膚だけでなく骨まで癒着している場合、機能を損ねないように慎重に分離手術が行われます。歯列矯正を行う時には、アペール症候群の場合は健康保険が適用されます。


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一過性脳虚血発作

■脳に行く血液の流れが一過性に悪くなり、発作が起こるもの

 一過性脳虚血発作とは、突然、手足のしびれやまひ、視力障害などの発作が起こり、短時間のうちに回復して、後遺症状を残さないもの。脳梗塞(こうそく)の発作を起こす以前の前触れ症状として、重要な発作です。

 動脈硬化を起こしている血管壁から、小さな血液の塊がはがれて、もっと細い脳の血管の一部に引っ掛かって症状が起こります。脳の血管が詰まると、その部分の組織の循環と代謝に障害が起こり、機能が停止します。脳の機能はそれぞれの部位で違うので、損なわれた部位により症状は違ってきます。短時間のうちに、血液の塊が溶けてしまうか、副血行路が形成されるために、発作は一過性ですみます。

 そのほか、血圧が急に著しく低下すると、脳に血液が十分いかなくなり、一過性の脳虚血発作を起こすこともあります。この場合は、急性の出血や心筋梗塞、不整脈など、ほかの因子が作用している場合も少なくありません。

 症状としては、一過性の片側だけの手足まひである片まひ、手足の一方だけのまひである単まひ、意識消失発作、失語症、半身知覚鈍麻、視力障害、めまい発作などが現れます。これらの症状は、普通は数分から数時間、長くても一昼夜くらいで、後遺症も残さずに消えてしまいます。

 しかしながら、このような発作を繰り返しているうちに脳梗塞に移行するので、必ず医師の治療を受けることが必要です。一過性脳虚血発作があった場合、約10パーセントが1年以内に、約30パーセントが5年以内に脳梗塞を発症すると見なされています。

■一過性脳虚血発作の検査と診断と治療

 発作の最中に診察を受けることはほとんどないため、多くは発作後、病歴から診断することになります。脳動脈硬化のあることが、この疾患の条件です。診断には頸(けい)動脈の超音波ドプラー検査が有用で、血管の内中膜の厚さや、動脈硬化の指標になるプラークの状態を調べます。血管の病変が原因の一過性脳虚血発作では、詰まりの源になる脳血管の病変を調べることが重要で、脳血管撮影を行い、その狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)の部位とそれらの程度をみます。

 拡散強調画像MRIは、急性期の脳梗塞の有無をみるのに有用です。頸部から血管の雑音を聴き取ることもあります。心疾患が疑われる場合には、心エコー検査を行います。

 2週間以内に4回以上の発作がある場合、2週間以内に頻度、持続時間、重症度が急速に増している場合、心臓の異常が閉塞の原因と考えられる場合は、早期入院が必要です。

 一過性脳虚血発作は多くの場合、診察時には症状が治まっているので、再発予防が重要です。そのためには、脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、高脂血症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、経口避妊薬の中止、運動指導などを行います。

 再発予防のための薬物治療としては、発作を繰り返すような場合には、抗凝固剤が使われます。この薬物療法は、最低6カ月、通常は1〜2年は継続する必要があります。また、血管撮影によって脳の血管に狭窄や閉塞が確かめられた場合は、手術によって取り除くこともあります。


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過眠症

■突然に起きる強い睡眠発作を中核症状とする神経疾患

 過眠症とは、突然に眠り込んでしまう激しい睡眠発作を中核症状とする神経疾患。ナルコレプシー、居眠り病とも呼ばれます。

 夜の睡眠は十分に取れていても、昼間、急に睡魔が襲ってきて自分では抑制できず、眠ってしまいます。会話中、車の運転中、食事中、はたまたセックスの最中など、通常では考えられない状況で、突然、すーっと眠り込んでしまうといった具合です。

 睡眠発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下。意図的に短い仮眠を取った時には、すっきりと目覚めます。この睡眠発作は、ノンレム睡眠を経過せずに、いきなりレム催眠に入るのが特徴です。

 過眠症のもう1つの特徴は、脱力発作(情動脱力発作、カタプレキシー)です。笑ったり、喜んだり、怒ったり、驚いたり、自尊心がくすぐられたりなどの突発的な感情が誘因となって、全身の脱力発作が起こって力が抜け、物を落としてしまったり、ろれつが回らなくなったり、数秒~数分間、筋肉がまひしてその場に崩れ込んでしまったりします。

 意識ははっきりしているし、見たり聞いたりもできますが、ただ動けないだけです。この脱力発作は、レム睡眠に入ると筋肉の緊張が完全に消えることと似ています。

 ほかに、睡眠まひ、入眠時幻覚を伴います。睡眠まひでは、寝入ったばかりや目が覚めた直後に、体を動かそうとして動かせない状態になります。いわゆる金縛りと呼ばれる状態で、開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができません。本人は非常な恐怖に駆られますが、他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、まひは数分後には自然に治まります。

 入眠時幻覚では、睡眠発作により眠り込んだ際や、夜間に寝入った直後、まれに目覚めた際に、現実感の強い幻覚、幻聴を経験します。これらの幻覚、幻聴は正常な夢に似ていますが、もっと強烈で鮮明です。

 夜間は、頻回の中途覚醒(かくせい)や、睡眠まひ、幻覚を体験するなどのため、睡眠も妨げられます。

 日本人の過眠症の有病率は、1万人当たり16人~18人といわれています。すべての人種において発病がみられる中で、日本人の有病率は世界で最も高く、欧米では1万人に2~4人といわれています。

 家族内に起こる傾向がありますが、原因は不明です。過眠症のほとんどは通常、思春期から青年期にかけて発症するため、脳の性的成熟と関係があるとも考えられています。また、オレキシンという視床下部から分泌される神経伝達物質の欠乏と関係があるとも考えられています。

 症状は一生涯続きますが、症状のすべてが現れる人は全体の約10パーセントにすぎず、大部分の人は2、3の症状が出るだけです。

■過眠症の検査と診断と治療

 昼間に強い眠気を感じる時は、内科や睡眠外来、神経内科を受診します。

 診断は症状に基づいて行われますが、別の疾患が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠まひと幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こり得ます。診断が確定しない時は、脳波検査を行って脳の電気活動の記録を取ります。過眠症があると、寝入りばなにレム睡眠の活動が起きていることを示す典型的な波形が現れます。正常であれば、レム睡眠は睡眠サイクルの後のほうで起こります。画像診断で見付かるような異常によっては、過眠症は起こりません。

 根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。中枢神経刺激剤を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリンアンフェタミン、デキストロアンフェタミンなどが使用されます。中で、モダフィニルは他より副作用の少ない薬剤です。脱力発作や睡眠まひの症状を軽くするためには、イミプラミン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ剤、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使用されます。

 イライラ、異常行動、体重減少などの副作用が起こらないように薬剤の量の調整が必要なため、薬物療法を行っている人の体調は慎重に監視されます。

 抗うつ剤によって夜の眠りを安定させ、中枢神経刺激剤を朝と昼に服用することにより、日中の睡眠発作をほとんどなくすことができます。しかし、根気よく治療を続けることが必要で、長い年月がたつと症状がかなり軽くなり、多くのケースでは薬剤の量を減らすことができるようになります。

 治療では、薬剤によって症状を軽減するとともに、生活習慣の改善も図ります。大事なのは規則正しく生活をし、夜にしっかり睡眠を取ることで、睡眠表をきちんとつけることにより、自分の睡眠生活が理解できるようになります。日中に15〜20分程度の短い昼寝をこまめに取ると、睡眠発作の予防効果があります。


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顔面神経まひ(ベルまひ)

■顔の筋肉の運動がまひする疾患

 顔面神経まひとは、顔面神経がはれて圧迫され、顔の筋肉の運動がまひする疾患。顔面神経は、運動神経以外にも舌の前3分の2の味覚を伝達したり、音量を調節する小さな筋であるアブミ骨筋を支配しています。

 男女差、年齢層に関係なく、急性あるいは亜急性に発症します。原因疾患が明らかな症候性顔面神経まひと、明らかな原因が不明な特発性顔面神経(ベルまひ)とに分けられます。

 症候性顔面神経まひの原因疾患として多いのは、単純性疱疹(ほうしん)、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症で、一般的には口唇ヘルペスを患ったことがある人が突然の顔面神経まひで発症します。ほかには、腫瘍(しゅよう)や代謝疾患が原因となる場合もあります。

 特発性顔面神経まひの原因はいまだ不明ですが、考えられる可能性としてはウイルス感染、アレルギー、局所浮腫、寒冷刺激などがあります。いずれにしても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経がはれると、顔面神経が圧迫されてまひが現れると見なされています。

 症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。

 そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。

 帯状疱疹(ほうしん)が耳たぶや内耳にできた場合は、激しいめまい、耳鳴り、歩行障害、味覚の消失とともに、顔面のまひが起こります。

■顔面神経まひの検査と診断と治療

 基本的には外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。

 顔面神経まひの診断は、典型的な顔の表情から比較的容易です。しかし、原因となる疾患がある場合、両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRIなどの画像診断が必要です。サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査が行われることもあります。

 普通の顔面まひは、数週間で自然に回復することが多いものです。しかし、急性期にはステロイド剤、ビタミンB複合剤などを処方して治療を行います。マッサージや電気治療も行われます。また、目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。

 帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。

 帯状疱疹が原因で起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。
 顔面神経まひでは、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできるマッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり。顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。


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ギラン・バレー症候群

■筋肉を動かす運動神経の障害で、急に手足が脱力

 ギラン・バレー症候群とは、広範囲に渡って末梢(まっしょう)神経を侵してくる多発性神経炎の一種で、ウイルスなどの感染が関係している自己免疫疾患。急性感染性多発性神経炎とも呼ばれています。

 筋肉を動かす運動神経の障害のため、急に両手両足に力が入らなくなります。小児まひ(ポリオ)が発生しなくなった先進国においては、脳卒中を除けば、急に手足が動かなくなる原因として最も多い疾患であることが知られています。人口10万人当たり年間1〜2人発症し、日本では少なくとも年間2000人以上発症していることが推定されています。日本では特定疾患に認定された指定難病。

 慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性のほうが多いのですが、ギラン・バレー症候群では男性のほうがかかりやすいと見なされています。乳児から高齢者まで、どの年齢層でも発病し得ますが、遺伝はしません。

 発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、感覚神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。最も症状の強いピークの時には、約3分の2の発症者の血液中に、神経に存在する糖脂質という物質に対する抗体が認められ、これが自分の神経を攻撃する自己抗体として働いている可能性があります。そのほかに、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの液性成分も、関係していると考えられています。

 約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく感覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。

 顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。

■ギラン・バレー症候群の検査と診断と治療

 ギラン・バレー症候群では、発症してからなるべく早い急性期に免疫グロブリン大量静注療法、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することがわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。

 重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。

 症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。


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自律神経失調症

●自律神経とは?

 「頭痛がする」「体がだるくて、つらい」「動悸が激しい」など、いろいろな症状があるのに、病院で検査をしても何も異常がない――。

 こんな時、医師から「自律神経失調症」と診断されることがあります。自律神経のバランスが失調し、調整機能が働いていない状態のことをいいますが、では、自律神経とはどういうものなのでしょうか。 

【体性神経と自律神経】

 私たちの身体の隅々まで張り巡らされている神経には、大きく分けて脳と脊髄からなる中枢神経と、中枢神経から出ている末梢神経に分けられます。末梢神経には、「体性神経」と「自律神経」の二つがあります。

身体機能の調整 

○体性神経

 体性神経は、体表でキャッチした「熱い」「痛い」などの知覚を脳に伝えたり、口や手足などの体の各部分を自分の意思で動かす働きをしています。会話をする、食べる、走るなどは、体性神経によるものです。 

○自律神経

 自律神経は自分の意思とは無関係に、体表や身体の内部の刺激に反応して身体の機能を調整する働きをしています。走ると“ハ~ハ~”と激しく息をして心臓がドキドキとするのは、自律神経によって呼吸や心臓の動きが速くなったためです。

●バランスの失調

 自律神経の交感神経と副交感神経という、まったく正反対の働きをする二つの神経は、意思とは関係なく自動的に働いて体の環境を調整していますが、外部の環境や精神的な刺激によってバランスを崩すことがあります。

 自律神経のバランスが崩れることによって、いろいろな症状が現われる要因として、次のことが考えられます。まず、自律神経を支配しているのは視床下部で、これは本能や感情をつかさどる大脳辺縁系に支配されています。そこで、外部の環境や精神的な刺激などによって、本能や感情を抑制してしまうことは、視床下部を通じ自律神経へと影響を及ぼすためです。自律神経の交感神経や副交感神経が正常に働かず、どちらかが強く働きすぎたり、弱くなったりすると、体の各器官に症状が現われるようになるのです。

●病名ではなく診断名

 ここで注意しなければならないのは、「自律神経失調症」とは「頭痛がする」「だるくて辛い」「動悸が激しい」などいろいろな症状があるのに病院で検査をしても何も異常がない場合につけられる<診断名>で、<病名>ではありません。さまざまな要因によって、体を自動的に調節している自律神経のバランスが崩れた状態を指しているのが、<診断名>です。

 つまり、原因となる問題を解決していけば、体に現われていた症状が次第になくなっていくのも、自律神経失調症の特徴です。

●どんな症状が現れるのか?

 症状には、現れ方の強弱や期間など個人差があり、さまざまですが、主な症状を挙げます。 

【全身的な症状】

 自律神経を支配している視床下部の変調によって、全身的な症状が現れます。例えば、「体がだるい」「疲れがとれない」「眠れない」「食欲がない」など。 

【体の各器官に現れる症状】

 頭痛、頭が重い、動悸、胸が苦しい、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、吐き気、胃もたれ、便秘、下痢など、さまざまです。

●自律神経失調症を防ぐには?

 自律神経失調症から身を守るには、第一に自律神経が失調状態にならないようにストレスを避ける、あるいは解消することです。そのためには、不規則な生活を改めたり、ストレスを解消するための休養を十分にとったり、リラックスできるようなストレス解消法を持つことです。

【生活のリズムを夜型から朝型へ変える】

 自律神経の二つの神経は、一日の中で働く時間帯がだいたい決まっています。交感神経は体を活発に動かすときに働く「活動型・アクセル型神経」で、おもに日中働きます。一方、副交感神経は体を休めて体力を回復させるときに働く「休息型・ブレーキ型神経」で、おもに夜間働きます。

 生活リズムが夜型になっている人は、副交感神経が働くことで体力を回復させる時間帯に交感神経が働いている状態です。体が求めているリズムに逆らうことは、さまざまな症状が現われる原因です。就寝する時間を少しずつ早めて、朝起きることを心がけてリズムを正常に戻すようにしましょう。

【栄養バランスと時間帯を考えた食事をとる】

 精神と肉体が健康的であるには、まずは食事が大切です。空腹を満たすためだけに、ファストフードや菓子・清涼飲料水ばかりを摂っていては、体を維持する栄養バランスが保てません。外食が多くなりがちな人は、品数の多い定食にしたり野菜類をとるなど、自分なりの工夫をしたいものです。

 また、食事をとる時間帯についても、寝る前に食べることは胃に負担をかけて翌朝の調子を崩すことになりかねません。夕食はなるべく早めにとることを心がけましょう。空腹が強いときは温めたミルクなどをとることもよいでしょう。

【ストレスをためない方法を見付ける】

 仕事や人間関係などでストレスがたまるのは、避けようもありません。でも、そのストレスが少しでも小さくなるような自分なりの方法を見付けることが、「ストレス解消法」です。

 好きな音楽を聴く、本やマンガを読む、散歩をする、気の合った仲間とおしゃべりをする、スポーツをする……、いろいろな方法があります。どれか一つだけに絞らず、「今日は音楽を聴く気分」「今は体を動かそう」など、その時々の気分や体調に合わせて柔軟な姿勢で自分の体や心を「お疲れさま」と、いたわりほぐすようにしたいものです。

【専門家にかかる】

 つらい症状があってもどこも異常が見付からない……、そんな状態は周囲の人になかなか理解されず、「怠けている」とか「気にしすぎだ」ととらえられてしまうことが少なくありません。

 また、頭痛や胃痛などその症状に合わせて専門の科をアチコチ巡るが、原因がわからない――ということを繰り返す「ドクターショッピング」も、見受けられます。

 そこで、自律神経失調症のようなストレスによる体の変化を診療するには、心療内科の医師や心理療法士などのカウンセラーにかかることをお勧めします。つらい症状の背景にある心理的、社会的ストレスを解消する方法を探ったり、薬剤などで症状を軽減するなどの対症療法を行うことができます。


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聴神経腫瘍

■脳の腫瘍による障害が聴神経に及び、聴力が低下する疾患

 聴神経腫瘍(しゅよう)とは、脳の聴神経の回りを鞘(さや)のように覆っているシュワン細胞から発生する非がん性の腫瘍。聴神経鞘腫(しょうしゅ)、前庭神経鞘腫、第8脳神経腫とも呼ばれます。

 聴神経には、聴覚に関係する蝸牛(かぎゅう)神経と、平衡感覚に関する前庭(ぜんてい)神経があります。腫瘍は通常、前庭神経から生じますが、前庭神経と一緒に脳から出る蝸牛神経に障害が及んで聴力の低下が生じることが多いので、聴神経腫瘍という疾患名が付けられています。

 良性の腫瘍であり、非常にゆっくりとしたスピードで大きくなります。腫瘍が成長するのに時間がかかるので、これによる症状が出現するまでには何年もかけて大きくなってきていることが多いと思われます。まれに、短期間で腫瘍が大きくなることもあります。

 聴神経腫瘍の初期症状として最も多いのは、聴力の低下。腫瘍は聴神経の回りを覆っているシュワン細胞から発生するので、まず一番に聴神経を圧迫して、腫瘍のある側の耳の聞こえが悪くなるという症状が出現します。聴力の低下は徐々に出現するため、初めのうちは本人もあまり意識しないこともあるものの、悪いほうの耳では電話の声が聞こえにくいなどの兆候があったりします。

 突然耳が聞こえなくなる突発型難聴を起こすものも、少なくありません。耳の聞こえがよくなったり悪くなったり、聴力の程度が変動することもあります。その他の初期症状として、片側の耳のみの耳鳴り、めまい、急に向きを変えるとバランスを失ったり、ふらつくなどがみられます。

 腫瘍が大きくなって、顔面神経や三叉(さんさ)神経といった脳の他の部分の神経を圧迫すると、顔面のしびれ、顔の筋肉の脱力やまひ、嚥下(えんか)障害などが生じます。

 聴神経腫瘍の原因は明らかではないものの、遺伝したりするものではありません。神経線維腫症といって特殊例として両側に腫瘍が生じるものでは、遺伝性の原因が明らかにされています。

 多くのケースでは、片側の耳の聞こえの悪さを覚えて耳鼻科を受診し、頭のCTスキャンなどの検査をして、腫瘍が見付かるという経過をとります。

■聴神経腫瘍の検査と診断と治療

 片側の耳の聞こえが徐々に悪くなってきたり、めまいの発作を繰り返すなどの症状がある場合は、聴神経腫瘍の可能性を疑って、まず耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医を受診します。

 聴力検査、音刺激に反応する脳波を調べる聴性脳幹反応、平衡機能(めまい)検査により聴神経腫瘍が疑われる場合は、頭部MRIによる画像検査が行われます。特に、造影剤を静脈に注射しながら行う造営MRI検査では、小さい腫瘍も見付けることができます。そのほかにも、頭部の単純レント ゲンや、CTスキャンの検査が行われ、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。

 治療は大きく、手術療法と放射線療法に分かれます。手術療法には、腫瘍が発生した部位や大きさ、残存聴力などに応じていくつかの手術方法があり、耳鼻咽喉科または脳外科が担当します。顕微鏡を用いた手術であるマイクロサージャリーが、行われることもあります。

 マイクロサージャリーは、耳の後ろの部分の皮膚に小さな切開を加え、顕微鏡で拡大しながら周辺の脳神経を損傷しないように注意を払って、腫瘍を摘出します。通常10日から2週間程度の入院期間が必要です。

 放射線療法には、ガンマナイフまたはリニアックによる治療法があり、腫瘍を消失させるのではなく、腫瘍が大きくなるのを抑えることを目的としています。それぞれの治療法は、聴力の悪化、顔面神経まひなど合併症に関して長所と短所があり、専門医の説明をよく聞いて選択します。

 聴神経腫瘍は比較的ゆっくり成長する良性腫瘍であるため、高齢者で腫瘍が小さい場合には治療を行わずに経過をみることもあります。


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脳梗塞

●脳梗塞の原因による3タイプ

 脳梗塞(こうそく)とは、脳の血管が詰まって血流を止めてしまうため、脳に供給される酸素や栄養が不足して、脳が十分な機能を果たせなくなる病気です。動脈硬化などがあると、脳の細動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍(しゅよう)塊などが詰まりやすくなり、ある日突然、発症します。

 この脳梗塞には「脳血栓」と「脳塞栓」の2通りがありますが、その原因によって次の3タイプに分けられます。

1、アテローム血栓性脳梗塞

 太い血管の動脈硬化が原因となります。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病による動脈硬化によって、脳の太い動脈や頚動脈が詰まるタイプで、特に睡眠時に多く発症します。現在、脳梗塞患者の3割以上を、このタイプが占めると見なされています。

2、ラクナ梗塞

 高血圧などによって、脳の細い血管が詰まるのが原因となります。梗塞部が小さいので症状が全く出ないか、出ても比較的軽いのが特徴で、特に睡眠時に多く発症します。脳梗塞患者の約4割を、このタイプが占めるとされています。

3、心原性脳塞栓

 心臓にできた血栓が血流に乗って脳に流れて行き、血管が詰まるのが原因となります。心房細動、急性心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、不整脈などにより、心臓内の血液が停滞してできた血栓や血の塊が脳血管を詰まらせて血流がストップし、脳組織が壊死した 状態に陥るので、重症の脳梗塞を起こします。

 突然の発作として起こるタイプで、日中の活動時に多く発症します。脳梗塞患者の約2割を占めると見なされ、 60~70歳代の人に多くみられます。

 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺(まひ)、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡(こんすい)などが見られます。脳血栓では、症状が数日かけてゆっくり出現することが多いのに対して、脳塞栓では突然、意識障害などが出てきます。 

 統計学的にみると、「脳梗塞」と「脳出血」、「くも膜下出血」の総称である「脳血管障害」、いわゆる「脳卒中」による死亡者数は、2004年の統計で約12万9000人。2006年現在では、脳卒中の死亡者の70パーセントが脳梗塞、20パーセントが脳出血、10パーセントがくも膜下出血となっています。食生活の欧米化などによって、30数年前には脳梗塞より多かった脳出血が減少し、最近は脳梗塞が増加しております。

 脳梗塞を含む脳卒中は、がん、心臓病に次いで、日本人の死亡原因の第3位です。しかし、3大疾病の中でも脳卒中は有病率が増加しており、突然、何かに当たったように発症する怖い病気なのです。脳卒中の「卒」には「突然」、「中」には「当たる」という意味があります。幸いにして一命をとりとめても、寝たきりになったり、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ったりする、厄介な病気でもあります。

●前ぶれ症状と治療法について

 脳梗塞は急に起きますが、発症前に30パーセントの人に一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる前ぶれ症状が現れます。

 TIAの症状としては、運動障害として、ふらふらしてまっすぐ歩けない、感覚障害として、片方の手足のしびれ、片足を引きずる、手足から急に力が抜ける、ものにつまずきやすい、知覚障害として、片方の目が一時的に見えなくなる、物が二重に見える、言語障害として、言葉がで出なかったり・理解できない、バランス感覚の障害として、急にめまいがするようになったなどです。

 一時的にでも前ぶれ症状があったら、1分でも早く脳卒中専門医を受診してください。

 医師の側でも、脳梗塞が脳血栓によるものか、脳塞栓によるものかを正確に診断するのは困難です。脳梗塞が疑われる場合、病変の起きた部位を確認するために、 CT、MRI、脳血管撮影などの検査を行います。心原性脳梗塞の場合は、心房細動が原因となるのでホルター心電図(24時間心電図)をとって調べます。

 脳梗塞の治療法としては、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

 欧米では10年以上前から、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が実施され、日本でも2005年10月より健康保険に導入されました。脳保護療法には活性酸素の働きを防止するエダラボンという薬剤を発症後24時間以内に使用すると後遺症が軽減されます。

 脳梗塞を起こした部位が1~2日するとむくみが起こるので、抗脳浮腫療法により脳浮腫の原因となる水分を取り除きます。脳梗塞になって3時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。

 脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。発症時にカテーテルを使い血管の血流を再開通させることも可能です。頚動脈の血栓内膜剥離術とバイパス手術により脳血流を改善させる手術も行います。いずれの治療法も脳の血管が詰まって壊死しかけている脳細胞(ケナンブラ)を助けることを目的としております。

●危険因子を取り除く生活改善を 

 脳梗塞を起こした人が社会復帰するまでの間に、いろいろな訓練が必要になります。これがリハビリテーションです。リハビリテーションの目的は残された機能を最大限に引き上げて、家庭復帰や職場復帰をさせるために行います。

 脳梗塞の再発を防ぐには、血液をサラサラにして血栓を作らないようにすることが重要です。そのために抗血小板薬としてアスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾールなどを用います。またフィブリンができるのを防ぐためにワルファリンカルシウムを用います。ただし、納豆を食べると薬の効果が弱くなるので、注意しましょう。

 このほか、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を管理しましょう。食べすぎないよう注意し、適度な運動、禁煙、禁酒が必要です。再発の兆候を見つけるために、1年に1回MRIやMRA、頚動脈エコーなどの検査をして画像診断で脳血管や頚動脈の状態を調べましょう。

 突然起こる脳梗塞は、さまざまな危険因子を抱えている人に、ある日発症しかねません。脳梗塞の危険因子としては、60歳以上の人、脳卒中の罹病(りびょう)歴のある家族がいる人、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている人、喫煙、大量飲酒、ストレスなどです。

 脳梗塞にならないためには、生活習慣を改善しましょう。塩分を控えめにして1日に10g以内に抑え、ナトリウムの排泄を促すりんご、枝豆、バナナ、カボチャなどの食品を積極的に摂取しましょう。血圧を下げる作用がある乳製品などの食品や、マグネシウムを含む焼きのり、昆布、ごまなどの食品も食べましょう。

 逆に、動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品は控えめにし、アジ、サバ、イワシなどに多く含まれるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を積極的にとりましょう。

 適度な運動で積極的に体を動かし、太りすぎないように注意しましょう。十分な睡眠と休養、禁煙、節酒を心掛けましょう。夏は脱水症や夏風邪から脳梗塞になる人が多いので、水分を十分補給しましょう。


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圧迫性視神経症

■頭骸骨や眼窩の中にできた腫瘍が原因で起こる視力障害

 圧迫性視神経症とは、目の情報を脳に伝える視神経が腫瘍(しゅよう)によって圧迫され、視力や視野の障害が起こった状態。その裏に大きな疾患が隠れていることが多く、脳外科的治療が必要となります。

 眼球を入れる頭蓋(とうがい)骨のくぼみである眼窩(がんか)の中に腫瘍ができたり、頭蓋骨の中に腫瘍ができた場合に、視神経が圧迫されて障害が起こります。

 眼球から後方に伸びる視神経は、後端から約30ミリのところで視神経管を経て頭蓋内に入り、間もなく視交叉(こうさ)という左右の視神経が集合する部位で50パーセントは交叉し、50パーセントは交叉せずに、視索を経て脳に入ります。この途中で、何らかの腫瘍によって圧迫されると、徐々に視神経線維に直接的な圧迫や循環障害が生じます。

 視神経を圧迫する原因となる疾患としては、甲状腺(せん)機能の異常に伴って外眼筋が腫大する甲状腺眼症、蓄膿(ちくのう)手術後の嚢胞(のうほう)や悪性腫瘍などの副鼻腔(ふくびくう)の病変、髄膜腫や頭蓋咽頭(いんとう)腫などの頭蓋内腫瘍、頭蓋内内頸動脈瘤(ないけいどうみゃくりゅう)や内頸動脈硬化症などが挙げられます。

 圧迫性視神経症の症状は、片目に現れ、数カ月に渡ってゆっくりと進行していくことが特徴です。痛みはありません。ただし、副鼻腔の腫瘍の場合は痛みを伴うことが多く、眼窩内の病変による場合は眼球突出を伴うことがあります。

 視力の障害は中心視力が低下することが多いのですが、視力が低下しないこともあります。視野の障害も中心が見えにくくなる中心暗点から、耳側か鼻側半分が見えにくくなる半盲性(はんもうせい)障害までさまざまです。

■圧迫性視神経症の検査と診断と治療

 圧迫性視神経症の多くは片目に現れ、痛みもなく、急激発症の形をとらないため、たまたま片目を閉じて見えにくいことに気付くケースがほとんどです。ゆっくりではあるものの慢性的に進行しますので、そのようなケースではできるだけ早く、眼科で精密検査を受けます。

 医師による眼底検査では、進行すれば視神経乳頭に委縮所見を示しますが、多くの場合は眼窩の中に異常はありません。片眼性の場合は瞳孔(どうこう)の対光反応に左右差があることが特徴的で、左右の動きがあまりに違うと圧迫性視神経症が疑われます。

 眼底検査、視野検査、瞳孔反応などから圧迫性視神経症が疑われる場合は、確定診断のためにCT、MRIなどの画像診断が行われます。頭蓋内内頸動脈瘤など血管性病変が疑われる場合は、MRA(MRアンジオグラフィ)や脳血管造影が行われます。

 また、蓄膿の手術歴があるか、甲状腺疾患を指摘されたことがあるかなど、十分な病歴聴取も診断の一助とされます。

 圧迫性視神経症の治療では、原因となる疾患の手術などによる治療が基本となり、脳外科や耳鼻科などとの連携がとられます。手術後は、視神経の保護目的でビタミンB12製剤(メチコバール)を内服することがあります。



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角膜炎

■黒目の表面を覆う角膜に、炎症が起こる状態の総称

 角膜炎とは、目の角膜に炎症が起こる疾患。細菌性角膜炎、流行性角結膜炎などによって角膜に炎症を来した状態を総称して、角膜炎といいます。

 角膜とは、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

 この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。 そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。

 角膜炎の原因としては、細菌、かび、ウイルス、アメーバなどによる感染症が最も多いのですが、外傷、角膜異物、重症のドライアイ。紫外線・放射線、種々の眼科手術、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、三叉神経や顔面神経のまひ、先天的な奇形、ビタミンB2複合体の欠乏などで生じることもあります。

 角膜炎の症状は、炎症の原因、位置、大きさなどによって異なりますが、一般的には激しい目の痛み、目の充血、視力低下、異物感、流涙、目のかすみ、まぶしさなど。角膜には三叉神経が走っているために、炎症が起きると激しい痛み、異物感が生じます。そして、炎症が進行すると角膜が濁って視力が低下していきます。ひどくなると、角膜に穴が開いて失明する危険性も伴います。角膜が一度濁ると元に戻らないため、早期に治療することが大切です。

 角膜炎は炎症を起こしている位置により、表層性、深層性、アレルギー性などいくつもの種類にわけられます。

■角膜炎の検査と診断と治療

 傷を受けた後の角膜は急速に悪化しますので、できるだけ早く治療すべきです。 「そのうちに治るだろう」と安易に考えて放って置くと、角膜潰瘍(かいよう)という失明に至る疾患に進行してしまいます。

 眼科の専門医による角膜炎の診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して、角膜炎の診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。感染性の角膜炎の可能性がある場合は、組織を採取して調べる生検を実施します。
 感染性の角膜炎に対しては、適切な治療を迅速かつ集中的に行う必要があります。治療の原則は、原因となる病原体を同定し、感受性を示す抗菌剤を必要かつ十分に投与することです。ただし、病原体の同定や薬剤感受性試験結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因菌を想定して、治療を開始する必要があります。通常は点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては抗菌剤の結膜下注射、点滴、内服などを併用することもあります。

 角膜炎の原因が非感染症の場合は、ステロイド剤の点眼や角膜保護治療剤、抗生剤などが使用されます。原因がビタミンB2複合体の欠乏の場合は、ビタミンB2の内服、点眼が行われます。

 症状が軽い場合は、短期間で治って予後も良好です。 治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

 角膜炎の治療中は、風、ゴミ、光などの刺激から目を守ることが重要です。


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眼精疲労

■目の症状と全身症状が出現した状態

 眼精疲労とは、いわゆる疲れ目のこと。読書や自動車の運転などのように目を持続的に使った際に、目の疲労感、重圧感など目の症状だけでなく、疲労、頭痛、肩凝り、吐き気、倦怠(けんたい)感、いらいら、めまいなどの全身症状が起こり、休息や睡眠を取っても十分に回復し得ない状態をいいます。

 最初は目が重い感じがしますが、目が痛くなったり、かすんできたり、まぶしくなったり、じんじんしたり、赤くなったり、涙が出たりします。

 眼精疲労で体に症状が現れる理由はよくわかっていませんが、物が見にくくなるために、よく見ようとして不自然な姿勢を取るのが肩凝りなどを引き起こすということは、容易に考えられます。また、視力が低下すれば、目を凝らしたり、集中力をより高める必要があることによる緊張の連続が、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感の原因かもしれません。精神的ストレスによって、目と体の不調が同時に起きている可能性もあります。

 眼精疲労をもたらす原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が、多く見受けられます。

 眼精疲労の原因は、大きく4つに分けて考えられています。目に原因があるもの、全身疾患に原因があるもの、精神的なもの、環境的なものです。

●目に原因があるもの

 屈折異常によるもの

 遠視、近視、乱視があったり、両目の屈折度に著しい差がある場合に、物が適正に見えないため、それを無理に調節して見ようとして、目を無理に働かせることによって眼精疲労が発生します。眼球の内部では、フィルムに相当する網膜に何とかピントを合わせようとして、レンズに相当する水晶体の厚さを調節する筋肉である毛様体の緊張が続くからです。

 遠視の場合は、調節力が低下し始める30歳代後半~40歳代にかけて起こりやすいのですが、20歳代でも起こります。

 近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないために眼精疲労が起きることも、少なくありません。例えば、眼鏡屋で近視の眼鏡を作る時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために眼精疲労を訴える人を時々見掛けます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。

 調整力の低下によるもの

 調整力、つまり近くの物をはっきり見る力が低下している時も、眼精疲労が発生します。老視(老眼)の場合がそうですが、若い人でも起こります。特に、老視は40歳代半ばから60歳ぐらいまでの間に急速に進み、この年齢層は眼精疲労を訴える人の年齢層のピークと一致します。

 調整力が低下しているために目が疲れる場合には、遠用鏡と近用鏡を両方作り、使いわける必要があります。

 斜視、斜位によるもの

 物を見る時には両目が連動して動き、わずかに寄り目になって視線を一点に合わせます。両目の視線が一致せずに左右別々の方角を向いてしまうことを斜視といい、眼精疲労の原因になります。一方、ふだんは両眼視できても、片目を手で隠すなどすると目の位置がずれる状態を斜位といいます。

 斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって眼精疲労は起こりませんが、斜位の場合は両眼視をしようと努力を強いられるために、眼精疲労が現れやすくなります。水平方向の眼位(目の位置)の異常よりも、上下方向の眼位の異常のほうが、左右の目に映った像を一つにまとめて見る融像という働きの幅が狭いために、眼精疲労を起こしやすくなります。

 程度が強い斜位は手術が勧められますが、比較的軽い場合には、目を使いすぎないようにし、プリズムの眼鏡で斜位の矯正をすることもあります。

 不等像視によるもの

 左右の視力差が大きく、それを無理にレンズの度が相当違う眼鏡で矯正している場合、左右の目に感じる映像の大きさが異なる不等像視によって、眼精疲労が起こります。この場合は、コンタクトレンズにすると眼精疲労は起こりにくくなります。

 その他の目の病気によるもの

 逆さまつ毛、結膜炎、角膜炎などによっても、眼精疲労が起こります。最近では、特にパソコンなどを使用する機会が増えたため、VDT(Visual Display Terminal:画像情報端末)作業によるドライアイが原因の眼精疲労が増えています。

 一連の細かい操作が必要となるVDT作業による目の疲れは、テレビを見ているのと比べものになりません。しかも、VDT作業中は、まばたきの回数が極端に減ります。その結果、涙が蒸発して、眼球の表面の角膜や結膜が乾燥する疾患であるドライアイになりやすくなります。

 緑内障も、眼精疲労の原因になります。網膜の視神経が障害されて視野が狭くなる疾患が緑内障で、初期には調節力が低下してくることがあり、老視が早くきたかと思い違いすることがあります。

 また、緑内障の一種である慢性閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障の場合は、時々、霧がかかったように見えたりして眼精疲労と感じることがあります。緑内障をしっかり治療せずにいると、失明することもあります。緑内障の人は眼球の内圧である眼圧が高い場合が多く、眼圧が高い時には頭痛が起きやすくなります。

 白内障も、水晶体が濁るために視力が低下したり、まぶしさを感じたりして、眼精疲労の原因となります。白内障は手術で治せますが、手術後に少し見え方が変わるので、それが眼精疲労を起こすこともあります。

 まぶたが垂れ下がってくる眼瞼(がんか)下垂も、視野の上のほうが見えなくなるので、 物を見る時に頭を後ろへ反らすなどしなければならず、眼精疲労の原因になります。

●全身疾患に原因があるもの

 全身疾患によっても、眼精疲労が起こります。高血圧、低血圧、糖尿病、バセドウ病、貧血、自律神経失調症、月経異常、更年期障害、風邪、インフルエンザなど、さまざまな疾患で眼精疲労が発生します。

●精神的なもの

 職場での不適合、心身症、神経症、うつ病などによっても、眼精疲労が起こります。ストレスが強くなると、不安感が異常に強まったり、イライラして落ち着かなかったり、眠れないといった精神的なことに影響が現れる一方で、体に対しても、高血圧、血行不良、胃潰瘍(かいよう)といった多様な病気を引き起こす一つとして、眼精疲労が起こることがあるのです。

●環境的なもの

 最近注目されているVDT作業による眼精疲労のほか、紫外線や赤外線、過度の照明などの光刺激による眼精疲労があります。また、機械的刺激によるものとして、エアコンの風やごみなどがあります。

 化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、近年では、新築の家などで起こるシックハウス症候群が注目され、住居の建材に含まれる化学物質などの影響による体調不良と眼精疲労の関係も指摘されています。 

■眼精疲労の検査と診断と治療 

 眼精疲労の原因を特定し、それが発見されれば排除することが必要です。原因が精神的なもの、環境的なものと予想が付いた時は、自分でそれをまず除外して下さい。

 眼鏡やコンタクトレンズを使用している人では、目に合っているかのチェックも重要です。眼鏡の度などが合わない人は作り直したり、使用状況に合わせて眼鏡をいくつか作って使い分け、目の負担を軽くするのも一案です。

 パソコンを使用する機会の多い人では、作業時の照明の明るさ、自分の姿勢、パソコンを置く位置をチェックしてみましょう。作業中は適度な休憩をとって目を休めて下さい。

 室内が乾燥したり、エアコンの風が目に当たると、ドライアイを引き起こします。また、眼精疲労の意外な原因として、周囲の人のたばこの煙も挙げられます。これらについては、家庭や職場で相談して調整してもらいましょう。

 そして、睡眠を十分とりましょう。寝不足の時には、目を使う時間が長くなる一方で目を休める時間が減るのですから、目が疲れて当然です。目の筋肉は、体の中で最もデリケートな筋肉で、体の疲労がすぐ目にも現れてくるのです。趣味や散歩、スポーツなどで、ストレスを解消することも大切です。

 眼精疲労の背後に目や全身の疾患が疑われる時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。

 眼科では、視力、視野、眼圧、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などの一般検査が、まず行なわれます。目に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて原因を精密検査します。

 眼精疲労の的確な治療は、その原因によって異なりますので、原因追及が最も重要です。ただし、いくつかの小さな原因が重なり合って目の負担が増え、眼精疲労になりますので、原因と思われる病気を治したのに、眼精疲労が治らないことも少なくありません。そのようなケースでは、問診や検査で原因と考えられるものを洗い出し、それを一つひとつ治療、解決していきます。

 原因を特定できない場合にも、ビタミン剤の配合された点眼薬や内服薬で、症状が改善することがよくあります。ビタミン剤は、細胞の新陳代謝を助けるのです。


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結膜下出血

■突然、目の白目に赤い出血斑が現れる状態

 結膜下出血とは、突然、目の白目に赤い出血斑(はん)現れる状態。白目の一部分がわずかに赤く見えるもの、黒目の回りが真っ赤になるものなどがあります。

 目をぶつけたり、強くこすったりした時、または、そのような原因が思い当たらない場合にも起こります。通常は痛み、かゆみなどの自覚症状はないため、朝起きて鏡を見て見付けたり、周囲の人に指摘されたりして気が付くこともよくあります。

 赤い出血斑は、白目の表面を覆っている眼球結膜に存在する大小の血管が破れて、結膜の下に広がったものです。小さな点状のものから、斑状、時に眼球結膜全体を覆う広範なものもあります。また、血腫(けっしゅ)を作ることもあります。

 通常の出血では多少、目がごろごろする程度で、ほとんど痛み、かゆみ、目やになどの症状は伴いません。また、眼球内部に血液が入ることはないため、目が見えにくくなったり、視野が狭くなったりすることもありません。

 普通は、1~2週間で自然に吸収されてきれいな白目に戻ります。出血斑の状態は、赤色、茶褐色、黄色、白色と変化することになります。まれに、茶褐色が比較的長期間残ることがあります。中には、出血が自然に吸収されてきれいな白目に戻るまで、2~3カ月かかるものもあります。時間はかかりますが、出血は吸収されますので心配はいりません。

 多くの場合、結膜下出血は特別な治療の必要はなく、放置しておいてもかまいませんが、目に外傷を受けた場合、痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合、熱を伴う場合は、自分の症状をしっかりと眼科医に伝えアドバイスを受けます。

 なお、出血と充血の違いを挙げると、出血は血管が破れて血液が出たもので、血管の走行が見えません。一方、充血は細い血管が拡張した状態で、血管の走行が見えます。充血の場合は、血管収縮剤を使うと赤みが少なくなります。

■結膜下出血の検査と診断と治療

 結膜下出血で痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合には、高血圧症や動脈硬化症、出血しやすくなる疾患などの有無を検査します。

 医師の治療では、目の疾患や全身性疾患が要因になっている場合は、原因疾患の治療を行います。目に外傷を受けている場合は、感染の予防などのため直ちに穿孔(せんこう)部を閉じる必要があります。隠れた目の外傷があって結膜下出血がなかなか消えない場合も、穿孔部を閉じる必要があります。

 出血が止まっても赤目が広範で長引いているひどい場合は、吸収促進のために血栓溶解剤などを結膜下注射することもあります。

 ほとんどの場合、結膜下出血が起こった後に眼底出血が起こることはありません。しかし、動脈硬化、高血圧、糖尿病、出血性素因(貧血、白血病、紫斑病など)、腎炎(じんえん)に伴って起こるような疾患が原因の場合は、眼底出血が起こり、失明することもありますので注意が必要です。


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色盲、色弱(色覚異常)

■色を感じる働きである色覚に、生まれ付きの障害

 色盲、色弱とは、色を感じる働きである色覚が生まれ付き障害されている状態。色覚異常、色覚障害とも呼ばれます。

 人間がいろいろな色を感じることができるのは、主に網膜の最も敏感なである黄斑(おうはん)に分布する錐体(すいたい)細胞の働きによるものです。この錐体細胞には、赤、緑、青のそれぞれの光に感じる3種類の細胞があり、物をみると、それらへの刺激が起こり、網膜や脳で処理された上で色として感じられるのが、色覚という働きです。

 色覚異常は、日本人男性の4〜5パーセントにみられ、女性ではその10分の1くらいにみられます。男性に多いのは、色覚異常が伴性劣性遺伝をするためです。

 この色覚異常は、起こり方によって、全色盲(全色弱)、部分色盲、部分色弱に分けられます。

 全色盲(全色弱)は、色の見分けが全くできないもので、弱視や、眼球が左右に揺れたり、ぐるぐる回転する眼球振盪(しんとう)、明るい光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)を伴い、視力も0・1以下であるものを全色盲といいます。また、視力は正常でも、すべての色に対する色覚が欠けているものを全色弱といいます。

 色覚がないために、すべての物を黒色、灰色、白色の変化として見ていることになります。

 部分色盲は、 赤と緑の区別ができないものを赤緑色盲といい、これはさらに、赤色盲と緑色盲に分けられます。

 赤色盲とは、赤の光に対する感覚がなく、青緑の光に対する感覚にも異常があるため、赤と緑の区別ができない色盲です。第一色盲ともいいます。

 緑色盲とは、緑の部分が灰色か黒色に見え、赤の光に対する感覚にも異常があって、赤と緑の区別ができない色盲です。第二色盲ともいいます。

 このほか、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲もあり、第三色盲ともいいますが、非常にまれです。

 部分色弱は、赤と緑に対する感度が低下しているが、色盲より障害の程度が軽いもので、赤緑色弱といいます。これもさらに、赤色弱と緑色弱に分けられます。

 このほか、青黄色弱もあります。

 赤色盲と赤色弱を合わせて第一異常、緑色盲と緑色弱を合わせて第二異常、青黄色盲と青黄色弱を合わせて第三異常と呼ぶこともあります。

■色盲、色弱の検査と診断と治療 

 色覚異常は遺伝子の変異であるため、治療法はありません。

 2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。

 2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。


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視神経委縮

■視神経の中の神経線維が減少、消失する眼疾

 視神経委縮とは、視神経を侵すいろいろな疾患が進行して、最終結果として現れる病変。視神経を構成している線維の軸索や髄鞘(ずいしょう)が減少、消失して、視神経は回復できない状態にまで変性しています。

 視神経は視覚情報を伝える100万本以上の神経線維を含んでいて、網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っていますので、視神経が損傷すると物を見る働きも、部分的にまたは完全に損なわれてしまいます。

 片目、または両目の視力の減退や視野の欠損などが、主な症状として現れます。視界のぼやけ、色覚の障害 、光を目に差し入れた時の瞳孔(どうこう)の縮瞳の減弱、 同じ光を左右の目に差し入れた時の障害側でのまぶしさの減少なども現れます。視神経乳頭と呼ばれる眼球後方の円盤状の部分は青白くなり、最後には失明することが多くみられます。

 この視神経委縮には、単純性委縮、炎性視神経委縮、軸性視神経委縮、網膜性視神経委縮、緑内障性神経委縮、遺伝性視神経委縮があります。

 単純性委縮は、球後視神経炎や視神経管骨折、脊髄癆(せきずいろう)などでみられるものです。視神経管骨折は梅毒、頭蓋(ずがい)底骨折、脳腫瘍(しゅよう)、内頸動脈瘤(ないけいどうみゃくりゅう)、外傷によって起こるもので、早期に手術を行えば、失明せずにすむことがあります。

 炎性視神経委縮は、うっ血乳頭や乳頭炎、視神経炎の経過後に起こるものです。

 軸性視神経委縮は、ビタミンの欠乏、たばこの過剰摂取、アルコール中毒、あるいは悪性貧血などによる軸性視神経炎の経過後に起こるものです。

 網膜性視神経委縮は、中心性網膜脈絡症の進行期に、視神経乳頭が黄白色調を現すものです。

 緑内障性神経委縮は、緑内障で眼球の中の圧力が高い時に視神経が圧迫されて起こるもので、視神経乳頭の陥没を伴います。

 遺伝性視神経委縮は、視神経が正常な発達をしなかった場合にみられるものです。思春期の男子に発症し、両眼性の急激で高度の視力障害が起こるレーベル病のほかに、常染色体性優性遺伝や劣性遺伝の視神経委縮があります。

 最も多い視神経委縮としては、その発生原因が不明のものも少なくはありません。

■視神経委縮の検査と診断と治療

 視神経委縮では、早期にその原因となる疾患を明らかにして、それを取り除くことで進行を止めるという早期診断、早期治療が最も有効ですので、視野の欠損や視力の低下を自覚した際には、眼科の専門医を受診します。

 眼科医による検査では、眼底鏡を使って瞳孔(どうこう)を通し、眼球後方の円盤状の部分である視神経乳頭を観察します。視神経の委縮があるならば、この小さな視神経乳頭は視神経線維の減少を反映して、蒼白(そうはく)あるいは白いと表現されるように変化していますので、視神経委縮と診断されます。

 この眼底検査のほか、視力検査、瞳孔の反応検査、視野検査、MRI検査、血液検査、髄液検査などが必要に応じ行われます。

 視神経委縮の治療としては、その原因となった疾患の治療が基本で、脳外科や耳鼻科などと連携した治療が必要です。しかし残念ながら、視神経委縮に対しては、初期以外は有効な治療法は存在しません。視神経の中の神経線維が失われてしまうと、その線維は復活することはありません。

 早期にその原因を明らかにして、それを取り除くことで進行を止めるという早期診断が、最も治療には有効なのです。 その原因の治療を早く行えば、視野の欠損や視力の低下の進行を抑えられるだけでなく、治療のできる疾患が隠れていることに気が付く場合が少なくありません。

 例えば、ゆっくり進行する良性の脳腫瘍が数年後に見付かることも、まれではありません。視神経委縮という診断ですでに視力を失っている発症者も、数年に一度は再度詳細な検査を受けることが勧められます。

 なお、視神経に有害な物質が原因で発症した視神経委縮の場合は、たばこやアルコール、その他の有害な物質を避ける必要があります。アルコール摂取が要因だと考えられる場合は、バランスのよい食事を取るとともに、ビタミン類のサプリメントを摂取します。

 栄養の不足が原因の視神経委縮の場合は、サプリメントにより不足した栄養が補われます。ただし、ビタミンB12の不足が原因の場合は、サプリメントの摂取だけでは不十分で、ビタミンB12が注射で補われます。視神経が委縮していない限り、ある程度の視力回復が期待できます。


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斜視

■注視点に向かう両目の視線がずれている状態

 斜視とは、両目が見ようとする目標に向かわず、一方の目は目標に向いているのに、片方の目はよそを向いている状態。俗に、やぶにらみとも呼ばれます。

 よそを向く方向によって、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視、回旋斜視などに区別されます。内斜視では、 右目または左目だけが内側(中心)を向いています。外斜視では、 右目または左目だけが外側を向いています。上斜視では、 右目または左目だけが上を向いています。下斜視では、 右目または左目だけが下を向いています。回旋斜視では、視野が時計回りか反時計回りかに回るようなずれ方をします。人間の目には、回転する円盤のような物を見た時にも視野をぶれなくする仕組みがあり、それに対応した斜視が回旋斜視です。どちらの目がよそを向くかは、人によってさまざまです。

 また、斜視の状態によって、恒常性斜視、間欠性斜視、隔日性斜視に区別されます。恒常性斜視では、 常に斜視の状態にあります。間欠性斜視では、時々視線がずれます。隔日性斜視では、 斜視の日とそうでない日が交互に現れます。

 さらに、斜視には両目で見ている時、明らかに視線がずれている斜視と、ある種の検査によって初めてずれがわかる斜位(潜在性斜視)とがあります。

 斜視の自覚症状としては、その独特の目の動きのほか、物が二重に見える復視、眼精疲労、距離感がつかみにくいっといった空間知覚の異常、目の違和感、頭痛など、さまざまなものがあります。

 一般に、斜視は子供に多くみられます。特に、生後6カ月以内に発症した乳児内斜視は、目の寄り方が大きく、目が外へ向かずに上を向いている上斜位を伴っていたり、斜視になったほうの目が使われないので弱視になりやすいという特徴があります。その他、調節性内斜視といい、遠視が強いために物を見ようと努力することによって、内斜視になっているものがあります。

 早期に治療を開始したほうがよく、早期発見のために母親などの十分な注意が必要となります。子供が物を見る時、顔を傾けて見る、あごを上げて見る、あごを下げて見る、片目をつぶって見るといったような、何らかの見づらそうな行動をとった時は要注意です。

 斜位(潜在性斜視)は、左右の眼筋の均衡がとれていないために、眼球を正しい位置に保つのに努力がいる状態です。この斜位が軽度の場合は無症状のことが多いのですが、強度の人や軽度であっても神経質な人は、読書時の疲労や頭痛、時には、めまい、吐き気などを生じることがあります。

 斜視のようにみえても、眼科的には斜視ではないものを偽斜視といいます。特に、子供のころには、内斜視にみえても実際には内斜視ではないものが多いようです。小さな子供で目頭に余分な皮膚がある状態があると、目の鼻寄りの白目の部分が皮膚で覆われるために、目が寄っているようにみえ、本当の斜視か偽斜視かわかりにくいことがあります。この場合、光の反射像が両目同じ位置にあれば偽斜視です。

■斜視の検査と診断と治療

 子供の目に異変を感じたら、できるだけ早く専門医の診断を受けることが勧められます。

 斜視の治療では、まず眼鏡による屈折矯正が行われます。屈折矯正だけで治ることもありますが、症状によっては手術が必要になってくることもあります。手術の時期については、疾患の状態によって異なるものの、乳幼児斜視では2歳頃までの早期手術が勧められています。

 手術では、目の筋肉のバランスを整えることで斜視を治療します。例えば、外に目が向いている場合は、外についている筋肉を弱める、または内についている筋肉を強めれば、目の位置が正常に戻ります。子供の場合は全身麻酔が必要ですが、大人なら局所麻酔で入院なしに手術を行うことができます。手術では、1つの筋肉で30分程度を要します。術後は目が赤くなりますが、10~14日ほどで赤みは次第に消えていきます。

 なお、成長期にある子供の場合には、内斜視の手術後数年で外斜視になることもありますし、外斜視の手術後数年で内斜視になってしまうこともありますので、再手術が必要になる可能性があることも考慮すべきです。

 ボツリヌス毒素注射療法といって、ボツリヌス菌が出すボツリヌス毒素を注射して、筋肉の収縮を抑制させ、バランスをとって斜視を治療する方法もあります。例えば、内斜視の内直筋に注射すると、外側に目が動きます。治療効果が永続的でないため、繰り返し行う必要があります。

 遠視が原因で斜視が起こっている調節性内斜視の場合は、まず遠視の眼鏡で矯正します。眼鏡で治らない部分については、手術を行います。

 斜視のずれがわずかな斜位(潜在性斜視)が軽度の場合は、自覚症状がなければ治療の必要はありません。プリズム眼鏡と呼ばれる光線を曲げる眼鏡をかけることで、物が二重に見えるのを治療できることもあります。


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視力障害

■目が見えにくいのはなぜ■

 物がはっきり見えなくなる原因は、加齢のせいばかりとは限りません。目の怖い病気が潜んでいる場合も、あり得るのです。

 人間の目には120万から130万本もの視神経があり、膨大な量の情報を処理していますが、この視神経は年を加えるとともに年間、約5000本が失われていきます。同時に、目の組織自体も活性酸素などによる老化現象によって年々、感度が悪くなっていきます。年とともに、レンズの働きを担う水晶体の弾力性も失われていきますので、物がはっきり見えにくくなっていくのは、ある程度、仕方のないことです。

 しかしながら、見えにくさの背後に、失明の危険がある病気が隠れている可能性も、あります。「私も年だから」と放っておくと、病気が進行して取り返しのつかないことになりかねません。

 最近の傾向としては、パソコンやゲームの画面に視線を集中して、まばたきが減るために角膜が乾燥するドライアイが、確実に増えています。目の病気に直接つながることはありませんが、注意が必要でしょう。 

●自覚症状がある障害

《老眼》

●近くだけが見えにくい

 40代くらいから、水晶体の弾力性が失われ、ピントを合わせることができなくなります。そのために、30~35センチの読書距離に焦点を合わせることが、むずかしくなります。 

《白内障》

●霧の中にいるようにぼやける ●まぶしく感じる

 水晶体を形成する蛋白質が白く濁る病気。水晶体の周りから濁っていくケースが多く、初期には視野の中心は正常に見えるために、気が付かないこともあります。60代で60パーセント、80代ではほとんどの人が、発症しています。

《飛蚊(ひぶん)症》

●黒い点や糸くずなどがちらつく

 硝子体(しょうしたい)という眼球を満たすゼリー状の組織の中に濁りが出て、眼球の動きとともに、濁りの影が網膜に落ちて、ちらつきが起こります。加齢による硝子体の変性が原因であれば、それほど心配はありません。 

 注意が必要なのは、稲妻のような光が見えた後、飛蚊症が生じた場合です。網膜に穴が開いた可能性があり、早急な治療を要します。 

●意識的に自分でチェックすべき障害

《網膜剥離(はくり)》

●見えにくい部分がある ●像がゆがむ

 網膜に穴が開き、液体が網膜の下に入って網膜が浮き上がり、はがれてしまうもの。どんどんはがれてしまうため、早期発見が大切となります。

 発症には二つのピークがあり、30代と50~60代。 

《黄斑(おうはん)変性症》 

●視野の中心が見えない ●ゆがんで見える ●視力が非常に落ちる 

 年齢を加えるのにつれて、網膜の中心部にある黄斑部の働きが悪くなって、発症するもので、欧米では失明原因のトップです。日本でも増加傾向にあり、高齢化や食生活の欧米化が原因と見られています。  

●自覚症状がなく危険な障害

《緑内障》 

 眼球内部を満たす液体は、常に入れ替わっています。その出口がふさがれて眼圧が高くなるなどが原因となって、視神経が傷付き、視野が狭くなるもので、徐々に進行します。自分では気付かないことが多いので、眼科での眼圧、眼底、視野の検査が必要です。

 潜在的な患者は、40代以降で17人に1人と推定されています。 

《糖尿病網膜症》 

 日本人の失明原因で最も多いのが、実は糖尿病の合併症です。糖尿病は血管に大きな負担がかかるせいで、網膜に張り巡らされた細い血管がもろくなり、破れて出血すると視力障害を引き起こします。 

 糖尿病の人は白内障、緑内障にもなりやすく、注意が必要です。

■対策へのアドバイス■ 

●毎日、片目ずつチェック

 通常のように両目で見ると、片目の視野が欠けていても、もう一方の目で補ってしまいます。手で片目を隠し、視野が欠けていないか、物がゆがんで見えないか、二重に見えないか、見え方が左右で違わないかなど、チェックを行いましょう。

 毎朝、窓の外や鏡などを見て調べる習慣をつけましょう。

●定期検査を受ける

 緑内障では、眼圧が正常の範囲内に収まっているケースが6割を占めているため、内科の定期検診では見逃される場合もあります。眼圧に加えて、眼底と視野の検査をすればわかりますので、心配な人は眼科で検診を受けましょう。 

 また、網膜には痛みの神経がないために、穴が開いたり、出血したりしても、痛みを感じません。とりわけ糖尿病や高血圧、動脈硬化がある人は、眼底の異常を起こしやすいので、年に2回の眼底検査を受けましょう。 

●紫外線を避ける

 紫外線は化学作用が強く、目の老化を早めます。眼鏡をかけている人は、UV カットのものにし、白内障で光がまぶしく感じられる人は、波長の短い光をカットする黄色やオレンジ、赤系統のサングラスをかけるのがお勧めです。

●パソコンを使いすぎない

 人間は通常、1分間に15~20回のまばたきをして、目の乾燥を防いでいます。ところが、パソコンやゲームの画面を見ている際には、極端に減り、5回以下になってしまいます。目は乾燥すれば自然に涙が出て潤いますが、高齢になると涙の分泌が減るために、角膜が乾いてトラブルも起こりやすくなります。  

 「目が疲れたな」と自覚したら、目薬を差すなどして注意しましょう。目薬の中でも、防腐剤の入っていない人工涙液の使用がお勧めで  

●緑黄色野菜をたっぷりと

 目の老化を予防する栄養素を含む食材としては、抗酸化作用のあるビタミンを含む緑色野菜と黄色野菜、いわゆる緑黄色野菜がお勧めです。

 また、ビタミンとともに最近、注目されているのがルテインで、ホウレンソウやブロッコリーなどに豊富に含まれています。ルテインは目の水晶体や黄斑部に分布していますが、人間の体内では作ることができないため、食物から摂取しなければなりません。

 ルテインが不足すると、白内障や黄斑変性症のリスクが高まると見なされています。


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ドライアイ

■涙の減少によって生じる障害

 テレビ、パソコンなどに取り囲まれて、目が酷使されてしまう現代社会では、「目が疲れやすい」、「何となく目に不快感がある」という人が、確実に増えています。視覚を担う目に不快感や違和感が生じれば、仕事や勉強を始めとした日常生活で、大変な不便を感じてしまいます。

 このような疲れ目などの原因として最近、注目を集めているのが、目の乾き、すなわちドライアイです。

 あなたの目の不快感も、目を使いすぎたせいばかりでなく、実はドライアイが原因かもしれません。ドライアイは自分では気が付きにくく、「何となく目が疲れるわ」といった症状で病院や診療所に行き、医師から指摘される人が多いのです。

 簡単にいえば、ドライアイとは、涙液、すなわち涙の減少によって目が乾き、表面に障害を生じる疾患です。涙が減少すると涙の役割が低下し、乾きのために角膜が傷付きます。重症になると、角膜の表面に無数の傷が付きます。

 我が国ではドライアイの疾患を持つ人が多く、潜在患者は800万人いるともいわれています。放置しておくと眼病のもとになるので、早めに専門医に診察してもらうのが、お勧めです。

 専門医によるドライアイの検査では、シルマー試験紙という目盛りの付いた細い紙を下まぶたに挟んで、涙の染みる量を測定するシルマーテストを行います。このほか、ローズベンガル試験、蛍光色素試験で涙の分泌低下を調べます。 

■目は、なぜ乾いてしまうのか

 涙腺から分泌される涙は、泣く時以外にも少しずつ出されており、目の表面の保護や、栄養分・酸素の供給、ゴミ・細菌の侵入防止といった働きをしています。

 この涙が乾いてくると、眼球の前面を覆う透明な膜である角膜の上に、ドライスポットと呼ばれる穴のような物が、開いてしまいます。通常であれば、そこをすぐ涙が覆い、やがて穴はふさがっていくのですが、ある一定量以上に涙が減り続けると穴は残ったままとなり、最も傷付きやすい角膜が露出して障害が生じるのが、ドライアイなのです。

 ドライアイの主な原因を挙げると、

1)涙の質・量の低下をきたす場合:シェーグレン症候群などの涙が減少する病気、あるいは加齢、夜間作業、大きなストレス、降圧剤や精神安定剤などの服用の影響で涙の質が低下したり、量が少なくなることが、ドライアイの原因になります。

2)涙が蒸発しやすい・まばたきが少ない場合:エアコンなどの影響で部屋が乾燥している環境、あるいは、まばたきの少なさ、コンタクトレンズの装着、アレルギー性結膜炎の罹患、パソコン・テレビの見すぎ、目の酷使などが、ドライアイの原因になります。

 ちなみに、私たちの目全体に涙をゆきわたらせてくれるのが、まばたきなのですが、パソコンなどを凝視すると、まばたきの回数は通常の1/4にもなります。

 下の項目で、長期にわたって当てはまるものが5つ以上あれば、要注意!

.目が疲れやすい

.何もしていないのに涙が出る

.目やにが多く出る

.視界がかすむ

.目がゴロゴロする

10.何となく目がかゆい

.目が乾いた感じがする

11.光がまぶしく感じる

.重たい感じがする

12.なぜか目が赤い

.何となく目に不快感がある

13.涙が出ない 

.目が痛い

14.悲しい時でも涙が出ない

 

■目を乾燥させないための対処法

 ドライアイによって、目が疲れたりするだけでなく、肩が凝ったり、頭痛を引き起こしたりと、体に変調をきたします。集中力も当然低下し、仕事や勉強の能率は落ちます。

 ドライアイを予防したり、進行させないための基本は、目を乾燥させないことです。そのためのケアの一部を紹介します。「乾いているな」と感じる方は、お試しを。

 

目薬を上手に使う
 目を乾燥させないためには、やはり目薬が手ごろ。この目薬にもいろいろな種類がありますが、いちばんいいのは眼科で処方してもらう目薬です。市販されている目薬を使う場合には、防腐剤が入っていないものを選ぶよう注意しましょう。

 目薬は通常、開封した後に非常に細菌感染を起こしやすい構造になっていて、カビが増殖しやすいために、防腐剤が入っていることが多いのです。目薬を使用した時に「目に染みる」と感じるのは、防腐剤のせいです。

 ドライアイの場合には、目の表面に傷が付いていることが多く、また防腐剤を洗い流すだけの涙が足りないために、悪影響を及ぼす恐れもあります。よって、防腐剤が入っていないかどうかを確認して購入し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

 病院、診療所での治療においても目薬が有効で、ドライアイ用の防腐剤を抜いた目薬や人工涙液などを使用します。目の乾燥のひどい患者さんに対しては、涙の排水口である涙点を小さなシリコンプラグや手術でふさぐ方法もあるので、専門医に相談しましょう。

 

何よりリラックスを
 涙腺は、リラックスした時に優位になる副交感神経によってコントロールされています。従って、くつろぐことで涙がより多く出ます。

 逆に、緊張していては目が乾きます。車で出掛ける時などは、余裕あるドライビングをしたいもの。運転中は無意識に緊張が高まり、まばたきの回数も減少し、さらに目が乾きます。風が目に直接当たるのも、避けましょう。

 冷暖房の効いている部屋では、エアコンの風が直接当たらないようにしましょう。目が乾きやすい人は、加湿器やぬれタオルを干すなどして保湿に注意すればよいでしょう。

 

できればコンタクトレンズの使用を避ける
 ドライアイの初期の場合、コンタクトレンズを使うこともできますが、基本的には勧められません。本来、目には常に新鮮な涙が供給されていなければならないのに、コンタクトで角膜にフタをした状態では、まばたきによる涙の交換率がハードで約20%、ソフトでは2~3%にも低下してしまう、と見なされています。

 コンタクトレンズ使用者は、防腐剤抜きの人工涙液タイプの目薬を使うように注意しましょう。保湿成分のヒアルロン酸入りの目薬も出ています。また、目を温めることでもドライアイが改善します。

 

 ドライアイ用眼鏡を使用する
 顔と眼鏡の透き間を、プラスチックのカバーで覆ったものや、水を含ませるスポンジが内側についた物もあります。「たかがカバー?」と侮るなかれ、スキーのゴーグルのようなものをつけると涙が蒸発しないのでよいとされている通り、かなりの効果があります。ゴミや花粉も防ぐことができます。外出用のほか、パソコン用としてもよいでしょう。

 

たばこの煙を避ける

 たばこの煙もドライアイの大敵! 吸っている人がいた場合は、その煙が自分の目に入らないように気を付けましょう。目は煙の粒子を洗い流そうとしますが、ドライアイの人には相当の負担となります。自分が吸っている人は、この際、禁煙してみてはいかがですか。

 

パソコン作業には工夫を
 パソコンの作業では、1時間したら10分間の休憩が必要で、作業中はまばたきを意識的に増やしましょう。正常では、まばたきは1分間に20回前後です。パソコンのモニターの位置を低くして、目線を下向きにするだけでも、涙の蒸発と目の乾燥が防げます。

 私たち人間は、夜になると涙の出る量が少なくなり、朝にはカラカラ状態になっています。頭や体は起きていても、「目が開けられない!」という事態もあり得ます。このような時、無理をして開けると角膜に傷が付きます。目薬をさすなどするようにしましょう。


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原田病

■眼球を覆っている、ぶどう膜が炎症を起こす疾患の一つ

 原田病とは、眼球を覆っている、ぶどう膜の一部あるいは、すべてが炎症を起こす疾患。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

 ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、ぶどうの色をしていて、形も果物のぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の三つの部分で構成されています。

 虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

 虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

 脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

 このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが本症ですが、炎症がぶどう膜の一部に限定されている場合は、その場所によって前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜全体に及ぶ炎症は、びまん性ぶどう膜炎、もしくは全ぶどう膜炎と呼ばれています。

 また、ぶどう膜炎は、炎症を起こしている部位によって虹彩炎、脈絡膜炎、網膜脈絡膜炎と呼ばれることもあります。網膜脈絡膜炎は、脈絡膜とその上の網膜の両方に及ぶ炎症です。普通、片側の目だけに炎症が出ますが、両目に出ることもあります。 

 ぶどう膜に対する過剰な自己免疫反応や、細菌、ウイルス、真菌(かび)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばで、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。

 原田病は頻度の高いぶどう膜炎として、ベーチェット病、サルコイドーシスとともに三大ぶどう膜炎に挙げられています。三大ぶどう膜炎はいずれも、目ばかりでなく、それぞれの疾患に特徴的な全身症状が認められます。原田病とサルコイドーシスは自己免疫系の異常が原因で発症し、ベーチェット病は原因不明で、ウイルス説、アレルギー説、自己免疫説などが考えられています。

 原田病では、色素細胞に対する自己免疫反応が起こることが原因と考えられ、目のぶどう膜だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎症候群とも呼ばれています。

 なぜ色素細胞に対する自己免疫反応が起こるのかは、不明。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中の特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

 発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両目に現れます。 網膜と脈絡膜の間に水がたまり、滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

 原田病は、日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。

■原田病の検査と診断と治療

 治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めに眼科を受診します。

 医師が眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

 造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

 原田病の治療は、目に永久的な障害が出るのを防ぐため、早期に開始する必要があります。治療の中心は、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量点滴投与です。

 ホルモンの一種でるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。

 前部ぶどう膜炎を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド剤の点眼や、虹彩と水晶体の癒着防止のための散瞳(さんどう)剤の点眼も行われます。

 多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力も戻ってきます。回復後、眼底は色素脱失により、いわゆる夕焼け状眼底と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、まゆ毛などの一部が白くなることもあります。

 目の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。特に、過労やストレスが再発の誘引になることがありますので、日ごろから規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。

 万一、原田病と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。


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慢性結膜炎

■結膜の充血、目やにが長く続く状態

 慢性結膜炎とは、結膜の軽い充血、目やにが続く状態。急性結膜炎より症状は軽いものですが、なかなか治りにくいことがあります。

 結膜とは、まぶたの裏側から白目の表面を覆っている薄い膜のことで、この部分に起こる炎症を総称して結膜炎といい、症状が比較的急激に現れる急性結膜炎と、発症が緩やかでいつごろかわからない慢性結膜炎とに大きく分けられます。

 慢性結膜炎の原因はいろいろで、細菌の感染、真菌(かび)の感染、アレルギー、機械的刺激、薬品類の化学的刺激、涙液の分泌が低下するドライアイなどによるものがあります。細菌類では、ブドウ球菌類や緑膿(りょくのう)菌が主な原因となります。

 症状としては、結膜の軽い充血があり、少し目やにが出ます。また、流涙、異物感、不快感、かゆみ、目が乾いた感じなどがあることがあります。目やには、急性結膜炎ほどではなく、朝の起床時に目頭やまつげに少量ついている程度のことがほとんど。

 時々、症状がひどくなることもあります。コンタクトレンズの使用などが原因となって、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜に、ぶつぶつの乳頭ができたり、小さな砂状の結晶である結膜結石ができることもあります。

 なお、白目が赤く充血してはいるものの結膜炎ではないものに、虹彩(こうさい)毛様体炎、強膜炎、上強膜炎などがあります。目だけではなく全身の疾患の一つの現れである場合がありますので、気を付けなければいけません。

■慢性結膜炎の検査と診断と治療

 ひどくない程度でも不快な症状が持続するようなら、眼科専門医の診察を受けます。

 医師の診断では、目やにの中の細菌培養を始め、結膜からこすり取った細胞のサンプルや目やにの構成成分の顕微鏡検査などが行われます。ドライアイが疑われれば、涙液分泌能検査が行われます。

 治療としては、細菌性、真菌性では抗菌剤の点眼が行われます。非ステロイド性消炎剤や消炎酵素剤の点眼も行われます。アレルギー性でかゆみの強い場合は、初めはステロイド剤の点眼で強力に炎症を抑え、次いで非ステロイド性の抗アレルギー剤、消炎剤や消炎酵素剤の点眼で病状の鎮静化が図られます。

 ドライアイでは、人工涙液の点眼、乾燥予防などが行われます。結膜結石では、結膜から露出すると異物感の原因となるので、点眼麻酔をして針先などで除去します。

 慢性結膜炎は、急性結膜炎に比べるとなかなか頑固で、治りにくいものです。根気よく治療し、睡眠、食事にも気を配り、体調を整えることが必要となります。急性結膜炎の場合と同様、洗眼はかえって好ましくありません。

 充血を除く目的のみで点眼薬を連用するのも、副作用を招いたり、後にかえって充血を招いたりすることがあるので、好ましくありません。


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網膜色素変性症

■網膜の中の視細胞が障害される疾患

 網膜色素変性症とは、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患。遺伝性、進行性で、夜盲を来す疾患の中でも特に重要なものです。

 通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

 一般的に、幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲、俗に呼ばれる鳥目が主です。生活環境によっては、夜盲に気が付きにくいことも多いようです。

 最初に、視野狭窄(きょうさく)が起こることもあります。人にぶつかりやすくなったり、車の運転で支障が出たりといったことが、視野が狭くなっていることに気付くきっかけになります。

 最初に夜盲を起こした人も徐々に進行すると、視野が周辺部から狭くなってきます。続いて、視力の低下を自覚するようになり、色覚の異常を自覚する場合もあります。この視力低下や色覚異常は、後から出てくるのが典型的です。

 なお、ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力、すなわち眼科でレンズを使用して測定する視力のことです。裸眼視力の低下は、疾患の進行や網膜の能力と関係ありません。

 進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になります。

 この網膜色素変性症では、目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜に存在している各種の細胞のうち、視細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激である電気信号に変える働きを担当しています。電気信号は視神経から脳へ伝達され、人間は物を見ることができるわけです。

 視細胞には、大きく分けて二つの種類の細胞があります。一つは網膜の中心部以外に多く分布している杆体(かんたい)細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や、視野の広さなどに関係した働きをしています。もう一つは網膜の中心部である黄斑(おうはん)に分布して錐体(すいたい)細胞で、この細胞は主に中心の視力や色覚などに関係しています。

 網膜色素変性症では、二種類の視細胞のうち杆体細胞が主に障害されることが多いために、暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてくるのです。

 視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって、網膜色素変性症は起こるとされています。遺伝が関係する場合、血族結婚の子供に多くみられ、いろいろな遺伝形式をとることが知られています。

 しかし、明らかな遺伝傾向が確認できる人は全体の50パーセントで、後の50パーセントの人では確認できず、親族に誰も同じ疾患の人がいません。その遺伝が確認できない場合でも、体を作っているさまざまな物質の設計図に当たる遺伝子のどこかに異常があると考えられ、ほとんどは何らかの形で遺伝と関係するものと捕らえるべきです。

 遺伝傾向が確認できる人のうち最も多いのは、常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35パーセント程度を占めます。次に多いのが、常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10パーセント。最も少ないのが、X連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)を示すタイプで、全体の5パーセント程度となっています。少し特殊になりますが、ミトコンドリア遺伝を示すタイプもあります。常染色体性の遺伝では、発病に性差がほとんどみられません。

 常染色体劣性の遺伝の仕方は、両親に同じ疾患が認められず、兄弟姉妹に同じ疾患の人がいる場合に疑われます。両親が血族結婚であったり、同じ地域の出身同士、親戚同士であったりすると、可能性が高くなります。父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子がありますが、常染色体劣性遺伝の仕方をとる場合は片方の変化だけでは発症せず、網膜色素変性症を起こす遺伝子の同じ変化を両親からそれぞれ受け取ると発症します。

 常染色体優性遺伝は、親子で同じ疾患がある場合に疑われます。両親から受け取った遺伝子のどちらか片方にある変化によって、疾患を発症します。網膜色素変性症を持つ人から子供へ、同じ遺伝子の変化が伝わる確率は、50パーセントとなります。

 X連鎖性遺伝は、通常男性が網膜色素変性症を発症します。その場合、祖父が同じ疾患で、その娘に当たる母親が遺伝子異常を持っているが、発症しない保因者という形をとります。保因者の母親を詳しく検査すると、軽い変化が見付かることがあっても、自覚症状はほとんどありません。

 以上のタイプの遺伝傾向が確認できる場合、原因となる遺伝子異常には多くの種類があり、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型があるため、症状も多彩となっています。

 基本的には進行性の疾患ですが、症状の進行の早さにも個人差がみられます。さらに、症状の起こる順序や組み合わせにも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚の異常を自覚し、後になって夜盲を自覚する人もいます。

 他の目の病気も合併します。水晶体が濁ってくる白内障は高齢になると増える病気ですが、網膜色素変性症の一部の人では、より若い時から起こるために見づらくなることもあります。白内障の治療は 通常の手術と同じように行なうことができます。

 網膜色素変性症を発症してから長い経過の後に、矯正視力0.1以下の字が読みにくい状態になる人は多いのですが、暗黒になる人はあまり多くありません。

■網膜色素変性症の検査と診断と治療

 同じ網膜色素変性症であっても、それぞれの遺伝子異常に対応した型があり、症状も多彩で、症状の進行の早さにも個人差があることを、十分に理解して下さい。その上で、自分の疾患の重症度や進行度を、専門医に診断してもらうとよいでしょう。

 医師の側が進行度をみるためには当然、1回の診察だけでは診断が不可能です。定期的に何回か診察や検査を受けて初めて、その人の進行度を予想することができます。

 網膜色素変性症の人の眼底を検査すると、灰白調に混濁し、黒い色素斑(はん)が多数散在しています。網膜電位図検査で波形が平坦(へいたん)化することから、診断は比較的容易です。

 網膜色素変性症には現在のところ、網膜の機能を元の状態に戻したり、確実に進行を止める根本的な治療法はありません。対症的な治療法として、遮光眼鏡の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬の内服、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。

 通常のサングラスとは異なるレンズを用いている遮光眼鏡は、明るいところから急に暗いところに入った時に感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、明るいところで感じる眩(まぶ)しさを軽減したりします。

 ビタミンAは、アメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されています。しかし、この効果についてはさらなる検討が必要と見なされ、通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。

 循環改善薬の内服による治療は、必ずしも全員に対して有効であるわけではありません。内服によって、視野が少し広がったり、明るくなる人もみられます。

 確実な治療法がない現在、大切となるのは、非常に進行の遅い眼科疾患であることを理解して視力や視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野検査結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力や視野を有効に使い生活を工夫することです。

 補助器具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読んだり、書いたりすることが可能です。コンピューターの音声ソフトを使えば、インターネットに接続したり、メールを送受信することも可能です。

 さらに、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜など、網膜色素変性症を治療するための研究が、主として動物実験で行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても行える治療法とはなっていませんが、その成果は次第に上がってきています。

 アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な網膜色素変性症の遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

 また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を長く作り続ける細胞を入れた小さなカプセルを、目の中に埋め込む治療も試みられています。

 日本ではまだ、これらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始っています。

 網膜色素変性症は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、担当医に相談して下さい。


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網膜剥離

■眼底から網膜が、はがれてしまう疾患

 網膜剥離(はくり)とは、何らかの原因で網膜が眼底からはがれて、硝子体(しょうしたい)中に突出する疾患。治療せずに放置した場合、網膜の機能の回復が難しく失明する可能性が高くなります。

 どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが、20歳代と50歳代の近視の人に多いといわれています。男女の性差は、はっきりしていません。

 目の奥にある網膜は、物を見るための神経の膜で、厚さ約0.1~O.4ミリ。物を見る時、光は角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入り、水晶体で屈折された後、硝子体を通って網膜に到達します。この時、網膜で感じ取られた光の刺激が視神経を介して脳に伝えられ、見えると認識されます。

 網膜の中央に位置して、物を見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して非常に敏感な部分です。また、網膜は10層の組織から構成されていて、内側の9層は神経網膜といい、最も外側の1層を網膜色素上皮と呼びます。神経網膜には、光を感じる細胞が並んでいます。

 硝子体は、細かい繊維でできたゲル状の透明な物質で、眼球の中に満たされています。光が通りやすく、目の形を保つのに役立っています。

 網膜色素上皮と神経網膜の接着は弱いため、何らかの原因で神経網膜が網膜色素上皮からはがれて、硝子体の中に浮き上がってしまうのが、網膜剥離です。

 原因はさまざまで、網膜に穴が開くことによって起こるものや、滲出(しんしゅつ)液という水分が網膜の下にたまって起こるものなどがあります。網膜に穴が開く原因として挙げられるのは、老化、高度の近視、網膜の委縮などで、誘因として挙げられるのは、目の外傷、強い体の振動、過労などです。

 最も多いのは、網膜に網膜裂孔という穴が開いてしまい、液化硝子体という硝子体の中にある水がその穴を通って、網膜の下に入り込むことで発生する裂孔原性網膜剥離です。中高年になると、硝子体に液化硝子体ができて、眼球の動きとともに硝子体が眼球内で揺れ動くようになっています。硝子体と網膜が強く癒着している部分があると、眼球の動きで網膜が引っ張られ網膜裂孔ができてしまい、液化硝子体が入り込んで網膜がはがれるのです。

 また、ボールが目に当たるなど、強い力が目に加わって網膜が剥離してしまう外傷性網膜剥離も、裂孔原性網膜剥離の一つです。

 糖尿病網膜症では、出血しやすい血管を含んだ膜が網膜の上にでき、この膜が収縮して網膜を引っ張ると、網膜が剥離してしまう牽引(けんいん)性網膜剥離が起こります。

 ぶどう膜といって、眼球の外側の強膜の内側にあって、眼球を覆う脈絡膜、毛様体、虹彩(こうさい)からなる膜に炎症があったり、眼球内に腫瘍(しゅよう)などがあると、網膜血管や脈絡膜から血液中の水分がにじみ出し、網膜下にたまって網膜が剥離する続発性網膜剥離が起こります。これらの病変による場合は、その原因となっている疾患の治療がまず必要となります。

 一般に、初めのうちは剥離した網膜の範囲は小さくても、この範囲が時間とともにだんだんと拡大するというような経過をたどります。重症の場合は、すべての網膜がはがれてしまいます。

 はがれた網膜は、青灰白色に混濁して、しわが寄り、光の刺激を脳に伝えることができません。また、はがれた網膜には栄養が十分に行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと、徐々に網膜の機能が低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。

 網膜剥離の先行的な症状として、黒い点や小さなゴミのようなものが見える飛蚊(ひぶん)症や、視界の中に閃光(せんこう)のようなものが見える光視(こうし)症を自覚することがありますが、無症状のこともあります。

 病状が進んでくると、カーテンをかぶせられたように見ている物の一部が見えにくくなる視野欠損や、見たい物がはっきり見えない視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。

■網膜剥離の検査と治療と予後

 飛蚊症や光視症のような網膜剥離の先行的な症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。

 網膜剥離で最も大切な検査は、眼底検査です。点眼薬で瞳孔を開き、眼底の様子を調べます。硝子体出血などで眼底が見えない時には、超音波検査を行います。

 見えない部分の位置を調べる視野検査も行われます。見えない部分と、病変の部分は対応しています。

 網膜裂孔だけであれば、レーザーによるレーザー光凝固術で、高エネルギーの光線を瞳孔を通して送り、網膜を焼いて裂け目の周囲をふさぎ、網膜剥離への進行が抑えられることもあります。

 すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。手術には、大きく分けて二つの方法があります。

 一つの方法は、目の外から網膜裂孔に相当する部分に当て物をし、さらに穴の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って、剥離した網膜をはがれにくくし、必要があれば網膜の下にたまった水を抜くというやり方です。はがれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼球内に空気や特殊なガスを注入することがあります。

 もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法で、網膜に裂け目ができた時に血管からの出血によって濁った硝子体を取り除きます。この方法では、はがれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスを入れます。

 眼球内に空気や特殊なガスを注入した場合は、手術後に、うつぶせ姿勢による安静が必要です。空気やガスは軽いので、上方に向かう特性があります。うつぶせ姿勢を保って安静にすることで、空気やガスは網膜を元の位置に戻し、くっつける手助けをします。

 手術療法によって、多くの網膜剥離は元の位置に戻す網膜復位が可能ですが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。

 手術後の視力に関しては、網膜剥離が発生から間もない状態であり、はがれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で、見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。物を見る中心部分の黄斑がはがれていない場合には、手術前と同程度にまで回復する場合もあります。黄斑がはがれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなってしまいます。

 手術を受ける側の心構えとしては、あまり動くと剥離が広がる恐れがあるので、手術を受けるまで安静にします。ストレスを感じたり、むやみに心配したりして、精神的に緊張するのもよくありません。不安なことや不明なことがあれば、遠慮せず担当医に相談し、心身ともにリラックスして手術を受けるようにします。

 手術の後は、担当医の指示に従って安静にします。レーザー光凝固術の場合は、入院の必要はなく、通院治療を行います。その他の手術では経過によりますが、多くは約10日間程度で退院できます。

 手術後に目を動かしても、手術の結果に大きな影響はありませんが、眼内の状態が落ち着くまでに1~3カ月必要です。少なくとも手術後1カ月間は、疲れない程度に目を使用します。

 網膜剥離の重症度や個々のケースにもよりますが、事務織や管理職の人は手術後1カ月目から、運転手や重労働の人は2カ月ごろから仕事に復帰できます。日常生活でも、手術後1カ月間は重い物を持ったり、走ったり、車の運転をすることなどは避けます。また、年に1、2回の定期検査を必ず受けましょう。


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咽頭炎

■のどに炎症の起こる疾患で、急性と慢性の別

 咽頭(いんとう)炎とは、のどに炎症の起こる疾患。急性咽頭炎と慢性咽頭炎とがあります。特に口蓋扁桃(こうがいへんとう)の炎症が強い場合は、扁桃炎として区別しています。

急性咽頭炎

 急性咽頭炎はウイルス、細菌感染によって起こり、しばしば風邪の一症状として現れます。

 鼻とのどの境目あたりの乾燥感、のどの入り口あたりの咽頭のつかえる感じや引っ掛かる感じの異物感に始まり、次第に痛みが起こります。特に強く痛みを感じるのは、食べ物を飲み込む時です。扁桃炎があれば、症状はさらに強くなります。

 また、高熱、全身倦怠(けんたい)などの全身症状も伴います。食べ物が少ししか飲み込めないような状態が続けば、全身衰弱も起こります。

慢性咽頭炎

 咽頭炎の慢性化の原因として挙げられるのは、急性咽頭炎の繰り返しや、ほこり、過度の喫煙、飲酒などによる咽頭粘膜への持続的な刺激、副鼻腔炎などの鼻の疾患、口腔(こうくう)の不衛生などです。糖尿病や胃腸病、貧血などの全身的な疾患が原因になることもあります。

 症状は、のどがいがらっぽい、かゆい、乾燥するといった異物感がいつもあり、のどの痛み、頭痛、微熱もあります。頸部(けいぶ)リンパ節がはれることもあります。急性咽頭炎、扁桃炎を起こしやすく、この時は強い症状が出ます。

■咽頭炎の検査と診断と治療

急性咽頭炎

 急性咽頭炎は、耳鼻科の視診で診断はつきます。発症者自身が口を開けて鏡に映してみても、のどが赤くはれ、つぶつぶが見えます。つぶつぶは、咽頭リンパ濾胞(ろほう)がはれて、大きくなったもの。扁桃も赤くはれ、白いこけがついています。

 軽度ならば、安静、うがい、抗生物質の服用ですぐ治ります。全く食べられない状態であれば、点滴により栄養補給を行うほか、強力な抗生物質療法、鎮痛剤、解熱剤が必要になります。

慢性咽頭炎

 耳鼻科で治療を受けます。急性咽頭炎と同様のうがい薬やトローチなどで、のどを清潔に保ち、炎症を抑えます。ただし、抗生物質は慢性の疾患に長い間、使い続けると副作用が気になるため、スプレー(ネブライザー)として用いる方法が中心となります。禁煙、節酒、刺激物を避ける、無理をしないなど生活上の節制も重要です。


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耳管狭窄症、滲出性中耳炎

■耳管が狭窄した疾患と、中耳に液がたまる疾患

 耳管狭窄(きょうさく)症とは、中耳腔(くう)と鼻の奥の鼻咽腔(びいんくう)をつなげている、耳管という管が狭窄を起こした疾患。狭窄の結果、時に中耳腔に液がたまると、滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こします。

 耳管は中耳腔と外耳道の圧を調節するためのもので、唾液(だえき)や食べ物を飲み込んだり、あくびをした際などは、この耳管が開き、中耳腔に空気が入る仕組みになっています。この圧の調節によって、鼓膜の内外は圧が等しくなり、振動しやすくなります。

 耳管が狭窄すると、中耳腔の気圧は外気圧より低くなり、耳内がふさがった感じ、難聴、自分の声が強く響く、耳鳴りなどの症状が出てきます。

 飛行機が急に下降した際や、新幹線がトンネルに入った際、スキューバダイビングで海に潜った際などにも、同じく中耳腔と外気の圧のアンバランスが起こり、似たような症状が起こります。これを航空性、または気圧性中耳炎といいます。

 耳管狭窄症の原因となるのは、風邪などによって炎症を起こす耳管炎、アデノイド増殖症、上咽頭のがんなど。この耳管狭窄症は、子供の難聴の主な原因になっています。

 滲出性中耳炎の原因となるのは、不完全な急性中耳炎の治療、弱毒性菌による中耳炎ともいわれています。近年、小児にたいへん増えており、大きな問題となっています。

■耳管狭窄症、滲出性中耳炎の検査と診断と治療

 医師による耳管狭窄症の診断では、鼓膜の観察や聴力検査を行ったり、鼻からカテーテルという管を入れて、耳管の通り具合を調べます。

 治療では、狭窄を起こす原因をなくすことが第一とされます。空気を送って中耳腔に入れる通気法が、一般に行われています。

 中耳腔に液がたまる滲出性中耳炎の診断では、鼓膜を観察したり、インピーダンスオージオメトリーという検査を行ったりします。

 治療では、鼓膜を穿刺(せんし)、または切開して液を出します。それでもよくならなければ、鼓膜を通して中耳腔に小さな管を入れ、たまった液が外に出るようにします。

 自ら中耳腔に空気を送る方法として、鼻をつまんで、ゴクンと唾液を飲むと空気が耳に入ります。簡単にできるので、1日に何回かやってみます。ただし、風邪の最中には、耳管の炎症が中耳腔に及んで中耳炎を起こすため、勧められません。


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声帯ポリープ、声帯結節

■声の乱用で、声帯のふちに結節やポリープが発生

 声帯結節とは、声帯のふちに小さな、いぼのような突起ができるもの。声帯ポリープとは、声帯結節が大きくなって、キノコ状になったもの。

 声帯結節は、両側の声帯のふち、それも前3分の1くらいにできます。この声帯結節はまた、歌を歌う人にできやすいため、謡人(ようじん)結節とも呼ばれています。声帯ポリープも、声帯の前3分の1にできることが多く、通常片側に発生します。ポリープの大きさはさまざまで、まれに両側の声帯にできることもあります。ポリープができると、発声時の声帯の強い振動で、ポリープの中に出血することがあります。

 また、声帯全体がぶよぶよに、カエルの水かきのようにはれることもあります。これをポリープ様声帯と呼んでいます。さらに、声帯のすぐ上に喉頭(こうとう)室というくぼみがありますが、その粘膜がぶよぶよとはれ、声帯ポリープのように飛び出してくることがあります。これを喉頭室脱出症と呼んでいます。

 声帯ポリープなどの原因は慢性喉頭炎と同じように、声の使いすぎにあるといわれていますが、不明な点もたくさんあります。カラオケ、怒鳴り声、演説などの一過性の急激な発声が誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて内出血を起こし、ポリープなどを形成するという説が有力です。

 声がれ、すなわち嗄声(させい)が声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、喉頭室脱出症ともの主症状ですが、のどの違和感や発声時の違和感などの症状を示すこともあります。突起が大きくなると、息苦しさなどの呼吸困難を起こすようになります。

■声帯ポリープ、声帯結節の検査と診断と治療

 疾患の症状に気付いたら、声をなるべく使わないようにして、のどの安静を心掛けます。それでも2週間で改善しなければ、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診します。

 医師による診断は、喉頭に小さな鏡である喉頭鏡を入れたり、鼻からファイバースコープを入れて、声帯を直接観察し、ポリープなどを確認すればすぐつきます。喉頭がんなど他の疾患との鑑別が、必要なこともあります。

 治療では、突起がごく小さい場合は、発声を制限し、消炎剤の投与や蒸気吸入、薬剤吸入(ネブライザー)を行います。この治療法以外では、手術が早くて確実です。声帯は狭く、深く、小さいところなので、手術は一般的には入院の上、全身麻酔で顕微鏡下に行い、ぶよぶよの個所を切開したり、切除します。

 全身麻酔が不可能な場合や、入院を希望しない場合などは、外来でファイバースコープを用いて摘出することもあります。また、この手術の後には声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。

 声帯ポリープは悪性化はしませんが、まれにポリープのような外観のがんがあるので、摘出されたポリープは病理組織検査で、悪性化の有無をチェックします。

 なお、声帯ポリープや声帯結節などは、職業で声帯を酷使しなければならない場合には、再発の可能性があります。


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鼻詰まり

■慢性的な鼻詰まりの原因は?

●空気の通る道が狭くなる状態

 私たち人間の鼻の中は、鼻腔(びくう)と呼ばれる空洞が広がり、鼻腔の表面はひだ状の粘膜で覆われています。鼻には、この鼻腔上部の粘膜上皮に約五百万個ある嗅細胞でにおいを嗅ぐ嗅覚機能のほかにも、呼吸作用を効率よく行うための役割があります。

 まず、鼻から吸い込まれた冷たい空気がそのまま肺に送られとよくないので、鼻甲介の血管の収縮によって、空気を吸い込んだ瞬間に三十度くらいまでに温度を上げる暖房の機能、加温機能があります。

 その次は加湿機能で、鼻の中の粘膜は水分が九十五パーセント前後あり、入ってきた乾燥した空気に湿り気を与え、喉などの粘膜を保護するわけです。

 また、鼻腔内の数百万本も生えている繊毛によって、外から侵入するホコリなどを体外へ排出する浄化機能という役目も、鼻は果たしています。

 しかしながら、風邪のウイルスや異物などが鼻粘膜の内部にまで入り込み、さらに細菌感染も加わって炎症を起こすと、粘膜が腫れるために過剰な粘液が分泌されて、空気の通る道が狭くなります。この状態が、鼻詰まりなのです。

 長く続く鼻詰まりで圧倒的に多いのはアレルギー性鼻炎で、それに続くのが慢性副鼻腔炎、鼻中隔わん曲症。それらが重なっているケースも、多く見られます。

 鼻詰まりの症状がひどいと、日常生活にも支障が出るので、適切な対処をする必要があります。注意したいのは、嗅覚障害や頭痛、睡眠不足などを招いたり、乾燥した空気を吸うために呼吸器系に悪影響を与えたりすることです。集中力が欠ける原因や、口臭の原因にもなります。 

●多くみられる鼻詰まりの原因

 それぞれの病気や症状により、薬物療法や手術などが医師によって行われます。

アレルギー性鼻炎

 鼻から吸い込んだ異物に対して免疫システムが過剰に反応するため、すなわちアレルギー反応を起こすために、鼻腔の粘膜が腫れて、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを招きます。透明で水のような鼻水が出るのが特徴ですが、少し黄色い場合も。

 代表的なのは、スギ、ヒノキなどの花粉によって起こる花粉症。そのほかにハウスダスト、ダニ、カビなどが原因となりますので、原因物質を避けることが大切です。 

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

 副鼻腔とは、鼻腔に続いて周囲の骨内に陥入している四対の小さい空洞です。鼻詰まりが長引くと、副鼻腔の中でも炎症が起こり、うみがたまります。この状態が3カ月以上続くのが慢性副鼻腔炎で、急性副鼻腔炎と違って治りにくいとされています。黄色く粘り気のある鼻汁が特徴で、うみが口臭を引き起こすこともあります。

 耳鼻咽喉科では、定期的に鼻腔や副鼻腔内を洗浄し、噴霧薬や内服薬などによる治療が行われます。内服薬では、粘膜によい影響があるとされるマクロライド系の抗生物質が最近、一般的に使われ、少量ずつ、効果を確かめながら2、3カ月服用します。ひどい症状のケースでは、手術も。 

鼻中隔わん曲症

 鼻中隔とは、鼻腔を左右に分ける隔壁であり、板状の薄い骨からなっています。前方は軟骨で、周囲は三つの骨で構成されていますが、それぞれの骨の成長速度の違いから、隔壁がわん曲します。日本人の約85パーセントは、左か右、どちらかに曲がっているとされています。

 その曲がり方がはなはだしい場合は、鼻詰まりの原因となります。鼻中隔わん曲症は、10歳から15歳の成長段階に発症する鼻の構造異常。鼻中隔が飛び出ている側だけでなく、反対側も粘膜が厚くなって、左右とも鼻詰まりになりますが、比較的安全な手術で治ります。 

●その他の鼻詰まりの原因

鼻たけ

 鼻たけとは、鼻の粘膜にできる寒天状のポリーフ。慢性副鼻腔炎が進行してできるケースが多く、空気の通り道が狭くなるために、鼻詰まりを招きます。軽い副鼻腔炎で、大きな鼻たけができるケースもあります。

 長い期間をかけて作られるので、口呼吸が習慣化している人では、鼻詰まりの自覚症状がない場合もあります。 

アデノイド肥大

 アデノイドとは、鼻の奥にある扁桃(へんとう)組織です。幼児期に大きくなり、10代以降は自然に小さくなります。

 そのため、小学生までの子供にはアデノイド肥大は珍しくなく、鼻詰まりがはなはだしかったり、炎症を起こしたりしなければ問題はありませんが、大きいケースは手術も行われます。 

腫瘍

 鼻の中に、鼻たけに似たブヨブヨした腫瘍がいくつもできると、鼻詰まりの原因になります。腫瘍はほとんどが良性ですが、まれには鼻腔がん、副鼻腔がんなどの悪性の腫瘍もあります。

 片側の鼻が常に詰まっていたり、少量の鼻血が度々、出たりするケースでは、耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。 

■心掛けたい「鼻詰まり」対策

●鼻うがいの実行を

 鼻の炎症を抑えるには、鼻うがいも効果的です。蒸留水か生理食塩水で鼻の中を洗い流す際には、市販されている鼻うがい専用の器具を使うのがよいでしょう。

 なお、蒸留水は薬局で購入できますが、生理食塩水は医師の処方箋が必要となります。 

●鼻は強くかまない

 鼻は優しくかみましょう。鼻の奥には耳に通じる穴があり、強く鼻をかむと、その圧力で鼻にたまったうみが耳へと流れ、中耳炎を起こす病原菌となってしまう可能性があるからです。 

●点鼻薬は一日一回まで

 血管収縮性(粘膜収縮性)の点鼻薬は粘膜を縮ませますので、すぐに鼻詰まりに効きます。しかし、効果は一時的で依存性もあるものなので、使用は鼻詰まりで眠れない時などに限って、一日一回までに。

 長期にわたって乱用すると、作用しにくくなったり、かえって使用前よりも粘膜が腫れる点鼻薬性の鼻炎を起こすので、注意が必要です。 

●風邪をひかない 

 風邪をひかない、ひいたらこじらせない。二点が、鼻詰まりへの最も有効な対策です。鼻への刺激を減らすには、マスクが有効。空気が乾燥すると、鼻の粘膜は炎症を起こしやすいため、特に冬期には有効です。

 また、花粉症の人も早めにマスクの利用を。スギ花粉の平均的な飛散開始時期は、九州や四国の南部が2月上旬、関東南部が2月中旬、関東北部が2月下旬、東北地方は3月で、気温の上昇に伴って増加します。    

●食材で風邪を予防する

 風邪のウイルスに打ち勝つためには、ビタミンA(お勧め食材は春菊、ホウレンソウ、ニラなどの青菜類)、ビタミンC(お勧め食材はジャガイモ、サツマイモ、カボス、スダチ、ユズ)、ビタミンE(お勧め食材はゴマ、豆乳、カボチャ)と良質なたんぱく質が必要です。

 ビタミンAは、鼻やのどの粘膜を強化します。ビタミンCは、体内の抗酸化力を高めます。ビタミンA、Cの働きを助けるのが、ビタミンEです。

 体を温めることも大切で、鍋料理がお勧め。体を温める効果があるショウガ、ネギ、ニンニク、唐辛子などの香辛野菜を、料理に添えることも忘れずに。


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慢性中耳炎

■中耳に起こる炎症で、耳垂れが主症状

 慢性中耳炎とは、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に起こる炎症。耳垂れ、すなわち耳漏が主症状で、同じ中耳の炎症でも、耳痛、発熱、耳鳴りを伴う急性中耳炎とは、かなり様子が違っています。

 慢性中耳炎の多くは、小児期からの持ち越しです。この慢性中耳炎には、2つの型があります。1つは、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿(かのう)菌の感染による慢性化膿性中耳炎。もう1つは、鼓膜に穴が開く穿孔(せんこう)から、回りの上皮が中耳に入り込んで、上皮の剝脱(はくだつ)角化物がたまり、腫瘍(しゅよう)のようにみえる真珠腫性中耳炎。

 症状としては、鼓膜に穿孔があり、持続的に耳垂れが出ます。真珠腫性では、耳垂れに悪臭があります。耳垂れの刺激で外耳道炎を起こしやすく、多くは難聴を伴います。

 経過中にめまいを起こせば、内耳炎の併発が疑われ、発熱や激しい頭痛があれば、脳合併症の疑いもあります。急いで、専門医に診てもらいます。

■慢性中耳炎の検査と診断と治療

 慢性中耳炎の診断は、比較的簡単で、鼓膜の穿孔、耳垂れの有無が目標になります。耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

 治療では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

 鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。


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メニエール病

【症 状】

■回転性のめまい。聴力低下も■

 メニエール病とは、「めまい」や「耳鳴り」、「難聴」、「吐き気」などを伴う発作が繰り返し起こる病気です。フランスの医師メニエールが1861年、初めて報告したために、この病名が付けられました。メニエール症候群ともいわれ、耳の奥の内耳に異常が生じて現れます。

 突然、トンネルに入った時や飛行機が下降する時のような塞(ふさ)がった感じが、片方の耳に生じます。これに伴って、耳鳴りや回転性のめまいが起こります。同時に、嘔吐(おうと)や冷や汗、下痢を起こすこともあります。

 こうした症状には個人差があり、自律神経の働きの弱い人や、乗り物酔いをよくする人は、ひどくなる傾向があります。発作の時間はそれほど長くはなく、数分で治まりますが、数時間続くこともあります。また、長期間にわたって何度も発作を繰り返す人もいれば、発作が一回限りの人もいます。

 30~50歳代の働き盛りに多く、緊張感の続く状況にある人がかかりやすいと見なされています。以前は男性に多く見られましたが、現在では男女差がほとんどありません。高齢者にはあまり見られないのも、特徴の一つです。

 地域的には都市部に多く、中でもストレスをためやすい職業に就いている人や、不規則な生活を送っている人に多い傾向があります。

 突然、天井や床がぐるぐる回るめまいに襲われるため、「大変な病気に違いない」と恐怖心を募らせてしまう方も多いのですが、生命にかかわるほどの病気ではありません。

 ただし、放っておいて発作を何度も繰り返すと、耳鳴りが残ったり、難聴が進んだりすることもあります。発作が起こるたびに、耳の中で音を感じ取る役割を担う蝸牛(かぎゅう)が、壊れます。特に低音が聞こえにくくなり、初めのうちは修復されて聴力も回復しますが、発作を何度も繰り返すと、めまいが治まっても回復せず、難聴になってしまうこともあるのです。

 耳鳴り  めまいの発作が起こる前に、ひどくなるようです。発作を繰り返すうちに、慢性的な耳鳴りになっていきます。

 難聴  発作とともに難聴になる場合と、発作を繰り返すうちに聴力が落ちてくる場合があります。一般的には、低音が聞きとりにくくなります。

 ふわふわ感  体が傾く感じになって、実際によろけてしまったり、静止している物が動いているように見えたりします。

 その他  発作の時には自律神経の働きがおかしくなり、吐き気や顔面蒼白、冷や汗、頭重(ずじゅう)、肩凝り、頭痛、下痢などの症状が現れることがあります。 

【原 因】

■内耳の内リンパ液が増加し、膜が破れるのが原因■ 

 外界の音を感じ取ったり、自らの体の傾きや回転を感知したりするのが、内耳の役割です。この内耳の感覚細胞の周りを満たす内リンパ液が増えてたまり、やがては内耳の中の膜が持ちこたえられずに破れてしまった結果、めまいが起こると見なされています。

 内リンパ液がたまってしまう理由は、よくわかっていません。ただし、ストレス、過労、不規則な生活などによって体調が悪い時に、発作が起こりやすく、昼夜逆転したような生活を送っている人は、特に注意が必要です。 

【対 策】

■早めの対処と、ストレスをためない工夫が必要■

 もしメニエール病の発作が起きても、慌てないこと。めまいがしている時は、動かずに体をじっと横たえるなど、最も楽な姿勢で安静にしましょう。「冷たい濡れタオルなどで目を覆って、冷やすと楽になる」という人も、います。

 「めまい」の経験は、健康な人にもあります。それだけに、「この程度で休んでいられない」といった無理解や誤解も多いようで、無理をして仕事に出たり、学校へ行ったりということも、ありがちです。

 発作が治まったなら、なるべく早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。最初の1、2回の発作で、適切な診断と治療を受ければ、8割は治るとされています。 

 日常生活においては、細かいことにとらわれず、「病気と気楽に付き合っていく」くらいの気の持ち方が、必要かもしれません。 

 日常、気を付けて置きたいこと!

□過労や睡眠不足に注意する

□ストレスをため込まない

 夜はなるべく12時前に寝て、リズム感のある規則正しい生活を送りたいものです。一度かかってしまっても、睡眠を十分にとって体を休め、ストレスをため込まないように心掛ければ、再発を防ぐことができます。さらに、

□バランスのとれた食事をする

□タバコは禁物、アルコールはほどほどに

□週1回はスポーツで汗を流すなど、気分転換を図る  

 残念ながら、メニエール病の根本的な治療法は、見付かっていません。基本は、発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法になります。

 発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、メニエール病であることがはっきりするので、ステロイド中心の薬による治療が行われます。

 具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。

 薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われますが、メニエール病は症状の現れ方や程度にかなり個人差があります。

 最近は、「めまい外来」という診療窓口も出てきていますので、専門医に相談しながら、自分に合った治療法を根気よく見付けていくことが大切です。

【メニエール病と紛らわしい病気】

●聴神経腫瘍(しゅよう)

 聴神経に発生する良性腫瘍で、耳鳴り、聴力低下、顔面の感覚異常などの症状があります。進行すると、ふらついたり、立ちくらみのめまいを起こします。

 対処法としては、腫瘍が脳のほうへ広がる前に、手術をしなければなりません。

●小脳の障害

 回転性のめまいに加えて、ふらつく、ろれつが回らない、物が二重に見える、などの症状があります。

 とりわけ、小脳出血は危険です。回転性のめまい、激しい頭痛、嘔吐が特徴で、麻痺(まひ)を伴う場合もありますから、緊急に神経内科や脳神経外科に行く必要があります。


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良性発作性めまい

■頭の位置加減によって、突然めまいが起こる良性の障害

 良性発作性めまいとは、急に頭を動かすなど頭の位置加減によって、突然めまいが起こる障害。良性発作性頭位めまい、良性発作性頭位変換性めまいとも呼ばれます。

 耳が原因で起こるめまいの中で最も頻度の高いもので、発症年齢は20~70歳代までに渡り、好発年齢は50~70歳代です。男女比では、女性が男性の1.8倍とやや多くなっています。

 ほとんどの場合、起き上がる、横たわる、寝返りを打つ、見上げるために頭を後ろに反らすなど、頭の位置を変える動作が引き金になって、急激に回転性の激しいめまいが起こります。人によって、めまいが起こりやすい頭の位置があります。

 症状は数秒から数分で自然に落ち着くことがほとんどですが、また頭を動かすとめまいが反復します。吐き気を伴うこともあります。通常、耳鳴りや難聴などの聴覚の症状、 頭痛、しびれ、体のふらつきは自覚しません。2~3週間くらいは、何度かめまいが起こります。

 この良性発作性めまいは、内耳の中の耳石が頭の位置により、バランス機能を補助している三半規管の中に入り込んで、三半規管の有毛細胞を刺激するために起こります。

 耳の一番奥にある内耳は、聴覚器官である蝸牛(かぎゅう)と、平衡器官である前庭という二つの部分から構成されています。そして、前庭器官にある耳石器の上には、炭酸カルシウムでできている耳石が多数乗っています。正常であれば、頭が動くと耳石が三半規管の内側にある神経受容体(毛細胞)を刺激し、これらの細胞が頭の動いた方向を示す信号を脳へ送ります。

 しかし、この耳石が何らかの原因で本来の位置からずれ、入り込んだ三半規管内の1カ所で塊になって浮遊したり、三半規管内のクプラと呼ばれる部位に付着することがあります。この状態で頭を動かすと、過大な信号が送られ、頭が実際以上に動いたとする誤った情報が脳へ伝わります。この誤った情報と目からの情報にずれが生じると、回転性めまいの発作が起こるのです。

 良性発作性めまいを起こしやすいのは、交通事故などで頭部外傷を負った人、慢性中耳炎を患う人、過去に結核を患いストレプトマイシンでの治療を受けたことのある人、中耳ないし、あぶみ骨の手術を受けた人とされています。

 回転性めまいを起こす姿勢をとらなければ避けられますので、めまい発作の起こる頭の位置を見付け、その頭位を避けるようにして対処します。

■良性発作性めまいの検査と診断と治療

 良性発作性めまいは、次第に症状が軽くなってくることが多く、それほど深刻な疾患ではありません。通常は2~3週間で治癒しますから、心理面でもそれほど怖くないのですが、中には、まためまい発作が襲ってくるのではないかと不安を募らせ、恐怖心を抱く人もいます。また、この疾患に似た症状で、内耳の障害ではなく脳の疾患の場合もありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医の診断を受けます。

 医師による検査では、めまいが起こる頭の位置で眼振(がんしん)が現れ、次第に増強、減弱します。眼振というのは、眼球が不随意に小刻みに揺れ動く状態。ほとんどの場合、聴力検査、温度眼振検査で異常を認めることはありません。まれに、温度眼振検査で患っている側の耳の温度反応が高度に低下したり、反応がなくなったりすることもあります。体全体のバランスが悪くなることはありません。

 治療としては、内耳の機能を改善するための抗めまい剤や脳循環改善剤、ビタミン剤、めまいに伴う吐き気を抑える抗ヒスタミン剤などが用いられます。めまい発作ががまた出るのではないかという不安、恐怖心が強い人には、心理的不安を取り除くための抗不安剤などが用いられることもあります。

 めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとるといった理学療法によるリハビリテーションをすることも治癒を早めます。その頭位を何度も繰り返しとると、その都度めまいは出現するものの、次第に軽くなって、やがてめまいは消失します。

 最近では、エプリー法、パーンズ法、セモン法などといって、頭位と体位を変換する姿勢をとることで、遊離した耳石の塊をほぐして三半規管全体に再度行き渡らせる理学療法が開発され、良好な成績を上げています。エプリー法などにより、およそ9割以上の発症者は薬を使わずに、回転性めまいが治っています。発症者の一部は回転性めまいを再発するため、エプリー法などを自宅で繰り返し行う必要があります。

 理学療法が全く効果を発揮しないで、めまいの症状が反復して起こる場合には、手術が行われることもありますが、きわめてまれなケースです。このような場合、手術を検討する以前に、この疾患と同様な症状であっても、内耳障害ではなく脳障害の場合があるので、専門医の診断が必要となります。


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口腔カンジダ症(鵞口瘡)

■カンジダ菌の感染で、口の粘膜が白い苔状物で覆われる疾患

 口腔(こうくう)カンジダ症とは、口腔内に常在するカンジダ菌という真菌によって、主として斑点(はんてん)状の白い苔(こけ)のようなものが生じる疾患。急性偽膜性カンジダ症とも呼ばれ、以前は鵞口瘡(がこうそう)とも呼ばれていました。

 乳幼児や老人に多い疾患ですが、生後間もない健康な乳児にみられるものは、放置しておいても自然に消えます。成人がかかることもあります。

 原因は真菌(かび)の一種のカンジダ菌の感染で、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。誘因としては全身の衰弱、抗生物質の長期連用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)、免疫抑制剤、抗がん剤などの使用、がんの放射線治療、ビタミン欠乏、全身疾患による免疫機能の低下が挙げられます。

 カンジダ菌は酵母菌(イースト)の一種で、元来、人間の口腔粘膜や腸管の中に住んでいます。これが誘因があってたまたま増殖すると、口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症になるのですが、このカンジダ菌は水虫などを起こす白癬菌とは異なって、体の内部に侵入する力があります。そのため、免疫機能の低下がある時には、全身に増殖して、重篤な疾患になることがあります。

 口腔カンジダ症の最初は、口腔粘膜、舌、歯肉が赤くはれ、表面が白い斑点状の苔状物の膜で覆われます。この苔状物の膜は軟らかくて、こするとすぐはがれ、はがれたところは赤くただれます。普通、痛みは軽度ですが、舌のズキズキする痛み、違和感、味覚異常を伴うこともあります。熱などの全身症状は、ほとんどありません。

 適切な処置をすれば、比較的早くよくなりますが、まれには進行して咽頭(いんとう)から食道、肺に広がって、カンジダ性肺炎を生じることもあります。

■口腔カンジダ症の検査と診断と治療

 口腔カンジダ症が味覚異常の原因になっていることもありますので、口の中を清潔に保ち、消毒力のあるうがい薬を使ってみます。それで舌などの口腔内の違和感が治らない場合、また全身状態が悪い場合には、食道や肺に広がることがあるので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

 医師は病状から診断しますが、カンジダ菌が証明されれば確定します。証明のためには、KOH検査(皮膚真菌検査)と培養検査が行われます。KOH検査では、綿棒で皮膚の表面をこすり、それを水酸化カリウム溶液で溶かして、顕微鏡で観察します。5分もあれば結果が出ますが、カンジダ菌の種類の特定までは困難です。培養検査では、クロモアガー・カンジダ培地などで培養します。検査に時間がかかりますが、菌の種類を特定できます。

 治療においては、抗真菌剤の外用が主体で、殺菌性消毒剤による口すすぎも有効です。外用剤では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダ菌に対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤があります。口腔カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

 なお、抗真菌剤の外用剤は近年、たくさんの新しい薬剤が開発されかなり有効ですが、中には白癬菌にだけ効き、カンジダ菌には効きにくい薬剤もありますので、注意が必要です。

 症状が強い場合には、抗真菌剤の内服を行います。内服剤では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。特殊な内服剤として、口腔・食道カンジダ症用で、ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード)ゲルがあります。1日1〜2本を4回に分けて内服しますが、口腔カンジダ症では病変部に塗るだけでも有効です。


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ヘルペス性歯肉口内炎

■単純へルペス1型ウイルスの感染で、乳幼児に起きる口内炎

 ヘルペス性歯肉口内炎とは、単純ヘルペス1型が初めて感染することで、口の中に炎症が起きるウイルス性口内炎の一種。へルペス性口内炎とも呼ばれます。

 生後6カ月以降から3歳までの乳幼児に多く発症し、口唇ヘルペスと呼ばれる潰瘍(かいよう)が数個から多数まとまって、口や唇、皮膚などに現れます。単純ヘルペスウイルスは、ウイルスを持つ人が洗顔や歯磨き後に使うタオルや、食器、唾液などに触れることで、感染が起こるとされています。ヘルペスウイルスを持っている母親が子供にキスをして、移してしまう場合もあります。飛沫(ひまつ)感染もあります。

 単純ヘルペス1型ウイルスに初感染すると、普通は4~10日の潜伏期間をへて発症します。歯茎の炎症や口の中の強い痛み、かなりの高熱、頚部(けいぶ)リンパ節がはれるなどの症状が現れます。口の中に水疱(すいほう)ができ、それが破裂すると、潰瘍となります。歯を磨いた時に、歯茎から出血することもあります。

 痛みは5~7日、発熱は2~5日、症状全体は7日〜14日続き、治癒します。

 乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎になると、口内炎ができる前に口の中がチクチクと痛むので、不快感を訴えて泣きますが、症状が見えないため、親は疾患に気が付かない場合もあります。口内炎になると口の中が痛いために、よだれが増え、食事や水分を受け付けずに、脱水症状になることもあるので、注意が必要です。
 また、もともと慢性湿疹(しっしん)があって副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟膏を塗っている乳幼児が、このヘルペス性歯肉口内炎にかかった場合、湿疹部にヘルペスウイルスが広がって、ヘルペス性湿疹に進行して重症化しますので、特に注意が必要です。

 ヘルペス性歯肉口内炎は乳幼児に多い疾患ですが、成人になってから起こすこともあります。この場合、乳幼児の時に発症するよりも重症になるケースが多くみられます。

■へルペス性歯肉口内炎の検査と診断と治療

 乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペス性口内炎)を起こした場合、適切な処置をすれば比較的早くよくなりますので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

 医師による治療は、単純ヘルペスウイルスを抑えるゾビラックスという抗ヘルペスウイルス剤を1日4回服用で、数日間続けます。発熱やのどの痛みといった症状を和らげるために、解熱鎮静剤や痛み止めの薬、ビタミン剤が使われることもあります。発熱は数日で落ち着きますが、口内炎など症状全体は治るまで1週間~10日ほどかかります。

 家庭での食事に関しては、口内の痛みが強く、食べたがらないことが多いので、口当たりのよいプリンやゼリー、アイスクリーム、豆腐などを与えます。何回かに分けて、少量ずつ与えるのも一つの方法です。硬い食べ物、熱い食べ物、あるいは刺激のある味付けは、痛みを強めるので避けます。食後は、ぬるめのお湯やイソジンなどでうがいをし、口の中を清潔にします。

 食事ができない時は、脱水症状を起こさないように十分に水分を与えます。牛乳、お茶、イオン飲料などがよいでしょう。食べなくても、水分をしっかりとれていれば大丈夫です。乳酸菌飲料やジュース類は痛みを増すことがあるので、与えないほうが無難です。

 唾液などから移りますので、タオル、食器は別にします。入浴は熱がある場合でも、特に具合が悪そうでなければかまいません。

 熱が下がって普通の生活ができるようになるまで、学校や幼稚園、保育所などは休み、外出も控えます。完全に治っていないと、他の子供に移してしまう可能性があります。


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赤あざ(血管腫)

■皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤いあざ

 赤あざとは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見え、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

 異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

 この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。

 ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

 正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

 また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

 出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。この赤あざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

 自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

■赤あざの検査と診断と治療

 赤あざ(血管腫)を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

 医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

 カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

 顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

 即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

 単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。


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足白癬(水虫)

■足に生じる感染症で、日本人の4人に1人が発症者

 足白癬(はくせん)とは、真菌(かび)の一種である白癬菌で足に生じる感染症。俗に、水虫と呼ばれます。

 白癬菌で全身の皮膚に生じる白癬の中では、圧倒的に多く、全白癬発症者の65パーセント程度を占めます。さらに、足白癬にかかっていても皮膚科を受診しない人も多く、日本人の4人に1人くらいがかかっているというデータもあります。

 この足白癬は、趾間(しかん)型、小水疱(しょうすいほう)型、角質増殖型に病型分類されます。複数の病型を示すことも、多くみられます。

 趾間型は、足の指の間に浸軟、あるいは乾いた鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑性局面を示し、びらん(ただれ)や亀裂を伴うことがあります。小水疱型は、足の底から足の側縁にかけて、半米粒大までの集まったり癒合する傾向のある水疱、膿疱(のうほう)を伴う紅斑性局面を示します。ともに春から夏にかけて発症したり悪化しやすく、かゆみを伴うことが多いのですが、必ずではありません。角質増殖型は、かかとを中心に足の底全体の皮膚の肥厚と角化、細かく皮膚がむける落屑を特徴とします。かゆみは少なく、冬もあまり軽快しません。

 足白癬を放置していると、白癬菌が爪(つめ)を侵し、爪(そう)白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。高齢者に多くみられます。

 爪の甲の肥厚と白濁を主な特徴とし、自覚症状はありません。まれに、爪の甲の点状ないし斑(まだら)状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

 足白癬と区別すべき主な疾患は、接触皮膚炎、汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹(しっしん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症、掌蹠角化症などです。炎症症状の強い足白癬の悪化時に、手あるいは白癬病変のない足に小水疱が左右対称に生じることがあります。この病変中からは白癬菌は検出されず、一種のアレルギー反応と考えられ、白癬疹と診断されます。

■足白癬の検査と診断と治療

 医師による足白癬(水虫)の検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。手足に水膨れがみられ、原因が明確になっていない汗疱との区別が、足白癬の検査では必要とされます。

 治療法としては、白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。4週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では、内服療法を行います。爪白癬の場合、少なくても3〜6カ月間の内服が必要です。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

 生活上で足白癬に対処する注意点を挙げると、真菌(かび)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。ふだんから足の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。家族で他に足白癬の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。


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いんきんたむし(股部白癬)

■白癬菌が皮膚、特に内またなどに感染して起こる皮膚病

 いんきんたむしとは、かび(真菌)の一種の白癬(はくせん)菌が原因となって起こる皮膚病で、特に、またやしり、太もも、下腹部など、すれて湿っている部分にできるもの。頑癬、股部(こぶ)白癬ともいいます。

 夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。白癬菌は皮膚糸状菌とも呼ばれ、日本では10種類ほどみられるとされていますが、いんきんたむしの原因菌は大部分が猩紅(しょうこう)色菌で、まれに鼠径(そけい)表皮菌によることもあります。

 初めの変化は、丘疹と小さな膿疱(のうほう)です。丘疹とは、小さなぶつぶつで皮膚面からわずかに盛り上がっているものです。膿疱とは、黄色く濁った液が入っている小さな水疱です。

 これらが集まって輪状に並び、堤防状に盛り上がって、境界が鮮明になっていきます。中心部の皮膚は一見、治ったように見え、厚く硬くなって、褐色の色素沈着がみられるようになります。辺縁部には、赤いやや水っぽい丘疹が集まり、むけかかった皮がついているのが特徴です。激しいかゆみを伴い、体が温まると強くなります。

 なお、白癬菌は高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)を栄養源とするため、男性の陰茎、陰のうに白癬菌がつくことは、まれです。

■いんきんたむしの検査と診断と治療

 医師による、いんきんたむしの検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。

 治療法としては、表在性の白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。普通、1週間から10日で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるものでは、内服療法を行います。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

 生活上で、いんきんたむしに対処する注意点を挙げると、真菌は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。毎日、入浴して、その日についた汚れをせっけんや、ボディソープできれいに洗い流して、後は十分に水をふき取ります。湿った下着類も毎日、取り替えます。ふだんから体の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。


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カポジ肉腫

■ヘルペスウイルス8型による皮膚がん

 カポジ肉腫(にくしゅ)とは、ピンク色、茶色、紫色などの平らな染み、または、こぶが皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。

 原因となるのは、ヘルペスウイルス8型(HHV-8、別名、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)で、血管内皮細胞に感染して発症し、やがて肺、肝臓、腸管などの臓器に病変が広がります。

 1872年、ハンガリーの医師モーリッツ・カポジが、皮膚病変肉腫として報告。以降、珍しい皮膚がんの一つとして位置付けられていましたが、1994年、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者から初めての発症が報告され、その末期に発症することで知られるようになりました。アメリカでは、カポジ肉腫を発症する人のほとんどが、エイズ患者です。

 このカポジ肉腫は、古典型、アフリカ型、医原性型(免疫抑制治療関連性型)、エイズ型(流行性型)の4つに細分でき、それぞれ症状や進行が異なります。

 古典型は高齢の男性で主に地中海系あるいはユダヤ系の人、アフリカ型は赤道直下の一部地域に住むアフリカ系の小児や若者、医原性型は臓器移植後に免疫抑制薬の投与を受けている人、エイズ型はエイズ患者に発症します。

 高齢の男性が発症する古典型では、カポジ肉腫は紫色や濃い茶色の単独の染みとして、つま先や脚にできます。この染みは数センチ大になり、色も濃くなって、平ら、または、わずかに盛り上がり、出血しやすくなって潰瘍(かいよう)化します。脚には、同様の染みがいくつか現れることがあります。

 この古典型のカポジ肉腫はゆっくりと、時には10~15年かけて進行します。病変が進むにつれて、脚に浮腫(ふしゅ)が生じ、血液が正常に流れにくくなります。しばらくして、病変が他の臓器に広がり、他の種類のがんを発症することもあります。

 医原性型(免疫抑制治療関連性型)のカポジ肉腫は、体が感染と闘うのを助ける免疫系を弱める薬を投与されている人に、発症する可能性があります。肝臓や腎(じん)臓などの臓器移植を受けた人では、移植された臓器を異物と見なして免疫系が攻撃しないように、免疫抑制薬を飲む必要があるためです。

 アフリカ型、エイズ型(流行性型)では、高齢男性が発症する古典型よりもっと悪性です。皮膚に現れる染みは、数が多く、体中どこにでもできます。これらの染みは数カ月以内に体の他の部位に広がりますが、口の中にできることも多く、そうなると物を食べる際に痛みます。

 この腫瘍は、リンパ節や内臓にもできます。特に、消化管にはできやすく、下痢と出血を引き起こし、便に血が混じるようになります。

■放射線療法が一般的な治療法

 医師による治療では、カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術で病変を取り除くか、液体窒素で腫瘍を凍結させて殺します。

 肉腫の数が少なく、他の症状が全く出ていない場合は、症状が広がるまでは治療を受けないという選択も存在します。

 カポジ肉腫が皮膚に多数できている場合は、放射線療法を行います。この放射線療法が一般的な治療法で、がん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させるために、体外の機械からX線や他の高エネルギー線を照射します。

 悪性のカポジ肉腫の場合は、体の免疫システムが正常であれば、インターフェロンの投与や化学療法を行います。化学療法では薬を使ってがん細胞を殺しますが、薬は経口投与されるか、静脈注射または筋肉注射で投与されます。薬が血流に入り、体中を駆け巡り、最初に発生した部位以外のがん細胞も破壊することができるため、化学療法は全身療法とも呼ばれます。カポジ肉腫に化学療法を行う場合、病変に直接注射されることもあります。

 免疫抑制薬の投与を受けている人の場合は、投与を中止すると腫瘍が消えることがあります。免疫抑制薬の投与を継続しなければならない人の場合、化学療法と放射線療法を行いますが、投与を中止した人と比べると成果はよくありません。

 エイズ型のカポジ肉腫の場合、化学療法や放射線療法の効果はあまり期待できません。抗レトロウイルス薬の投与により、免疫システムの機能が改善されれば、結果は良好です。

 高活性抗レトロウイルス療法が行われる場合、レトロウイルスの1つであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を標的として、いくつかの抗レトロウイルス薬が組み合わされます。これらの薬物は、体内でウイルスが増殖するのを阻止し、エイズ型のカポジ肉腫のリスクを低下させるのに役立ちます。

 高活性抗レトロウイルス療法では、薬の投与など他の治療法と併用せず、体内の免疫系によってがんと闘う、生物学的治療が単独で用いられることもあります。生物学的治療とは、体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、疾患に対する体本来の防御機能を強化、あるいは修復するものです。

 治療後に再び悪化(再発)した再発カポジ肉腫では、カポジ肉腫の種類、全身の健康状態、以前に行った治療に対する反応によって、治療法が異なります。肉腫は発生部位で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。


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陥入爪

■つめの甲が弓なりに曲がり両側縁に食い込んだ状態

 陥入爪(かんにゅうそう)とは、つめの甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に食い込み、爪廓部を損傷する状態。陥入爪が高度に湾曲したものを、巻きづめと呼んでいます。

 足のつめに起こることがほとんどで、まれには手のつめにもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

 主な原因は、先天的なつめの異常、つめの外傷、つめの下がうむ疾患であるひょうそ後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴によるつめの圧迫、不適当なつめ切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、つめの水虫によるつめの甲の変形などが加わって、悪化します。

 つめの甲の端が爪廓にくい込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、陥入したつめの甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

 つめの甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く食い込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどにつめが深く突き刺さってしまうこともあります。

 この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤いできものを生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)と呼びます。

■陥入爪の検査と診断と治療

 ひょうそなどの感染は、陥入爪を誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。陥入爪の再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

 治療法の基本となるのは、つめの端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術でつめの端を取り除く方法です。つめの変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

 樹脂製のチューブをつめの端に装着するガター法も、行われています。つめを切開して、つめの端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。同時に、ワイヤー矯正術も行われ、つめの湾曲を修正します。

 陥入爪を治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀を陥入爪でできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

 陥入爪がひどい場合には、つめの元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

 生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

 窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、つめを過度に圧迫するので避けます。つめ切りの際には、かえって陥入爪を増強させる深づめにしないように気を付けます。


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匙状づめ

■つめの甲の先端、あるいは全体の表面がへこんでいる状態

 匙状(さじじょう)づめとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。スプーンネイルとも呼ばれます。

 全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。

 鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、匙状づめの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。

 また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。

 また、匙状づめは、手先に圧迫のかかるような職業の人にも多くみられます。

■匙状づめの検査と診断と治療 

 医師による匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

 徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。

 匙状づめは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

 成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

 蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むといいでしょう。


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ジベルばら色粃糠疹

■胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚病

 ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)とは、胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚疾患。粃糠疹とは、表皮の細かい角質片が発疹に付着したものをいい、この疾患の特徴です。

 主として、比較的年齢の若い10歳代から30歳代にみられます。かゆみはあったり、なかったりで、発疹が派手にたくさんできる割には、全身症状も少なく、心配のない疾患です。

 一つひとつの発疹は、直径3〜4センチまでの卵円形の赤い斑点(はんてん)で、大きくなると中心が褐色になり、辺縁が赤く、表皮の細かい角質片はがれ落ち、次第に拡大していくのが特徴です。腹部、背中に多くみられ、皮膚のしわ方向に沿って発疹が出現するため、クリスマスツリー様となることがあります。手足の先端や顔には、発疹は出ません。

 症状が出る前の数日から数週間ほど前に、ツバキの葉っぱほどの大きさの発疹が1つだけ、体のどこかに出現することもあります。この初発疹をヘラルドパッチと呼びますが、かゆみがあまりないため発見されることはあまりありません。

 ジベルばら色粃糠疹の多くは、放置しても3週間から1カ月で治ります。感染力は弱く、家族内感染も普通はみられません。

 1860年に、フランスのカミーユ・メルシオール・ジベール医師が世界で最初に発見したため、この疾患名がつきました。原因は、現在でも不明。ウイルス感染説を始め、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などと同じような細菌感染に関係するアレルギー説、胃腸障害による蛋白(たんぱく)質の分解異常による中毒説などがありますが、いまだに結論は出ていません。

■ジベルばら色粃糠疹の検査と診断と治療 

 派手にたくさんの赤い斑点ができるため、驚く人が多いようですが、放置しても3週間から1カ月で治る疾患ですので、あまり心配はいりません。かゆみがなければ、自然に治癒するのを待ってもかまいません。

 しかし、健康食品などの薬疹、ウイルス性発疹症などの全身的な疾患、あるいは湿疹、体部白癬(はくせん)、乾癬などの疾患と紛らわしい場合もありますので、一応は皮膚科の専門医を受診したほうが安心です。

 医師の診断は、特徴的な発疹とその分布、経過により判断します。かゆみが強ければ、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めの内服剤、あるいは外用剤を処方し、発疹には副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を処方します。

 発症者の中には、なかなか副腎皮質ホルモン外用剤に反応しないことや、普通の湿疹と誤診されやすいという理由で、多数の医療機関を駆け回るドクターショッピングをする人もいます。

 日常生活は、ふだんと同様でかまいません。学校への登校、会社などへの出勤も、問題はありません。妊婦の感染によって胎児に影響することも、ありません。通常、入浴も問題はありませんが、こすり過ぎると皮膚に傷ができやすいので注意します。