目次
目  次
[あ行]
赤あざ(血管腫)
亜急性甲状腺炎
悪性リンパ腫
アジソン病
足白癬(水虫)
アスベスト症
アスペルガー症候群
アスペルギルス症
あせも(汗疹)
圧迫性視神経症
アトピー性皮膚炎
あな痔(痔瘻)
アナフィラキシーショック
アニサキス症
アペール症候群
アポロ病
アメーバ赤痢
アルコール依存症
アルコール性肝障害
アルツハイマー型認知症
アレルギー性結膜炎
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
息切れ
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
遺精
胃切除後障害
一過性脳虚血発作
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ(疣贅)
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
咽頭炎
咽頭がん
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
ウェゲナー肉芽腫症
ウェルシュ菌食中毒
うっ血乳頭
うつ病
エコノミークラス症候群
エルシニア食中毒
円形脱毛症
遠視
円錐角膜
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
太田母班
おたふく風邪
[か行]
外陰炎
外陰がん
壊血病
外傷性視神経症
疥癬
回虫症
外反母趾
開放隅角緑内障
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
解離性大動脈瘤
下咽頭がん
顔の運動異常
過活動膀胱(OAB)
過換気症候群
顎骨腫瘍
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
過呼吸症候群
かぜ
仮性近視
肩凝り
かっけ(脚気)
過敏性血管炎
過敏性腸症候群
かぶれ(接触皮膚症)
花粉症
カポジ肉腫
過眠症
仮面うつ病
仮面高血圧
顆粒球減少症
カルチノイド
加齢黄斑変性
川崎病
感音難聴
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
肝吸虫症
ガングリオン(結節腫)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
肝硬変
カンジダ膣炎
間質性肺炎(肺線維症)
眼精疲労
乾癬
肝臓がん
眼底出血
嵌頓ヘルニア
陥入爪
乾皮症
カンピロバクター食中毒
顔面神経まひ(ベルまひ)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気管支喘息
気胸
季節性うつ病
偽痛風(軟骨石灰化症)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
亀頭包皮炎
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
機能性甲状腺腺腫
機能性子宮出血
気分変調性障害(気分変調症)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
キャッスルマン病
吸収不良症候群
急性胃炎
急性肝炎
急性気管支炎
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性腎炎
急性腎不全
急性膵炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
急性大腸炎
急性中耳炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性白血病
急性鼻炎
急性腹膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
胸郭出口症候群
狭心症
蟯虫症
強迫性障害
強皮症(全身性硬化症)
胸膜炎
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
巨大乳頭結膜炎
ギラン・バレー症候群
切れ痔(裂肛)
筋委縮性側索硬化症
菌血症
近視
緊張性頭痛
くも膜下出血
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
クレブシエラ肺炎
クロイツフェルト・ヤコブ病
クローン病
黒なまず(癜風)
群発頭痛
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
劇症肝炎
結核
血管腫(赤あざ)
月経痛
血精液症
結節性紅斑
結節性多発動脈炎
血栓症
結膜炎
結膜下出血
血友病
腱鞘炎
原爆症
原発性肺高血圧症
原発性無月経
顕微鏡的多発血管炎
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
高血圧症
膠原病
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
高山病
高脂血症
光視症
口臭
甲状腺がん
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
鉤虫症
喉頭炎
喉頭がん
更年期障害
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
五月病
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨髄腫
骨粗鬆症
骨肉腫
コレラ
混合性結合組織病(MCTD)
[さ行]
臍炎
細菌性赤痢
細菌性肺炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
逆さまつげ
坐骨神経痛
匙状づめ
サルコイドーシス
サルモネラ食中毒
三叉神経痛
霰粒腫
シェーグレン症候群
痔核(いぼ痔)
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
色素性母斑(黒あざ、黒子)
色盲、色弱(色覚異常)
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
歯周病
視神経委縮
視神経炎
視神経症
持続勃起症
シックハウス症候群
歯肉がん(歯茎がん)
紫斑病
ジフテリア
自閉症
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
社会不安障害(SAD)
弱視
若年性認知症
斜視
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
住血吸虫症
重症筋無力症
十二指腸潰瘍
十二指腸虫症(鉤虫症)
絨毛がん
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
腫瘍性視神経症
春季カタル
猩紅熱
硝子体混濁
掌蹠膿疱症
上咽頭がん
条虫症
小腸がん
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
静脈血栓症
静脈瘤
睫毛乱生症
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
書痙
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
自律神経失調症
視力障害
脂漏性皮膚炎
痔瘻(あな痔)
白なまず(白斑)
心因性めまい
腎盂がん
腎盂腎炎
腎炎
人格障害
心筋炎
心筋梗塞
神経因性膀胱
神経芽細胞腫
神経性過食症
神経性食欲不振症
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎細胞がん
心室中隔欠損症
心身症
新生児テタニー
新生児メレナ
心臓神経症
心臓ぜんそく
心臓病
心臓弁膜症
腎臓がん
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心内膜炎
塵肺症
腎不全
心房中隔欠損症
心膜炎
じんましん(蕁麻疹)
水晶体嚢性緑内障
水腎症
膵臓がん
水痘(水ぼうそう)
水頭症
髄膜炎
頭痛
精液瘤(精液嚢腫)
生活習慣病
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
正常眼圧緑内障
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
成人スティル病
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
声帯ポリープ、声帯結節
性病
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
脊椎分離症、脊椎すべり症
赤痢
せつ、よう
雪眼炎(雪目)
舌がん
セックス依存症(性依存症)
接触皮膚炎(かぶれ)
セレウス菌食中毒
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
前庭神経炎
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
全般性不安障害(GAD)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
双極性障害(躁うつ病)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
早漏
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
続発性無月経
続発性緑内障
鼠径ヘルニア(脱腸)
そばかす(雀卵斑)
[た行]
ターナー症候群
大血管転位症
体臭
帯状疱疹
大腿骨頭壊死
大腸がん
大腸憩室
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
ダウン症候群
唾液腺がん
多汗症
多形滲出性紅斑
多血症(赤血球増加症)
たこ、魚の目
ただれ目(眼瞼縁炎)
脱水症
脱腸(鼠径ヘルニア)
脱毛、薄毛
多発性硬化症
単純性甲状腺腫
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
胆石症
胆道がん
胆嚢炎、胆管炎
蛋白漏出性胃腸症
蓄膿症
膣がん
チック症
知的障害
中咽頭がん
虫刺症(虫刺され)
中耳炎
中心性網膜脈絡症
虫垂炎
腸炎ビブリオ食中毒
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
聴神経腫瘍
腸チフス、パラチフス
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
痛風
突き目(匐行性角膜潰瘍)
爪白癬(爪の水虫)
手足口病
手足のしびれ
低血圧症
低酸症
適応障害
手湿疹(主婦湿疹)
鉄欠乏性貧血
てんかん
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
統合失調症(精神分裂病)
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
頭部白癬(しらくも)
動脈管開存症
動脈硬化
動揺病(乗り物酔い)
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
特発性視神経炎
特発性食道拡張症
特発性心筋症
特発性脱疽
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
突発性難聴
とびひ(伝染性膿痂疹)
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
鳥インフルエンザ
トリコモナス症
[な行]
ナルコレプシー
軟骨石灰化症(偽痛風)
軟性下疳
難病
軟部肉腫
にきび(尋常性痤瘡)
肉体疲労
ニコチン酸欠乏症
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
日本住血吸虫症
日本脳炎
乳がん
乳腺炎
乳腺症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
尿膜管遺残
認知症(痴呆症)
ヌーナン症候群
熱傷(やけど)
熱中症
ネフローゼ症候群
脳炎
膿胸
脳血管性認知症
脳梗塞
脳腫瘍
膿腎症
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
乗り物酔い(動揺病)
ノロウイルス食中毒
[は行]
パーキンソン病
バージャー病
パーソナリティー障害
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
肺水腫
肺性心
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺動脈狭窄症
肺嚢胞症
肺膿瘍
白衣高血圧
白癬
白内障
白板症
白皮症
はしか
橋本病(慢性甲状腺炎)
破傷風
バセドウ病
白血球増加症
白血病
発達障害
鼻カタル
鼻詰まり
パニック障害
はやり目
原田病
ハンセン病
ハンチントン病
鼻炎
肥厚性鼻炎
膝痛
鼻出血
ヒスタミン食中毒
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
鼻中隔湾曲症
ピック病
非定型うつ病
非定型抗酸菌症
ヒトアジュバンド病
皮膚カンジダ症
皮膚筋炎、多発性筋炎
皮膚結核
皮膚掻痒症
飛蚊症
肥満
びまん性汎細気管支炎
百日ぜき
日和見肺感染症
貧血
ファロー四徴症
不安障害
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
プール熱
フグ中毒
副鼻腔がん
腹壁ヘルニア
ふけ症
不整脈
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
舞踏病
ぶどう膜炎
プランマー病
フリクテン性角膜炎
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
変形性股関節症
変形性膝関節症
片頭痛
扁桃炎
便の変化
蜂窩織炎、丹毒
包茎
膀胱異物
膀胱炎
膀胱がん
膀胱結石
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボーエン病
勃起障害(ED)
ボックダレック孔ヘルニア
ボツリヌス菌食中毒
[ま行]
マイコプラズマ肺炎
マタニティーブルー
末梢動脈疾患(PAD)
マラリア
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性気管支炎
慢性結膜炎
慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性腎炎
慢性腎不全
慢性膵炎
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性中耳炎
慢性腸炎
慢性白血病
慢性鼻炎
慢性腹膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
味覚障害
水虫(足白癬)
水ぼうそう(水痘)
耳鳴り
ミュンヒハウゼン症候群
ムーコル症
無気肺
無月経
虫刺され(虫刺症)
無症候性心筋虚血
むずむず脚症候群
無痛性甲状腺炎
胸焼け
夢遊症
メタノール中毒
メタボリック症候群
メニエール病
めまい
妄想性障害
妄想性人格障害
毛巣瘻
網膜芽細胞腫
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
門脈圧高進症
門脈血栓症
[や行]
夜驚症
薬剤性大腸炎
薬疹
薬物依存症
やけど(熱傷)
やせ
野兎病
夜盲症
幽門狭窄
雪目(雪眼炎)
痒疹
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
翼状片
横川吸虫症
[ら行]
ライム病
ラテックスアレルギー
ラッサ熱
卵管がん
乱視
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
流行性角結膜炎
良性発作性めまい
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
旅行者下痢症
リンゴ病
リンパ浮腫
類宦官症
ルイス・サムナー症候群
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
ループス腎炎
レイノー病
レーベル病
レジオネラ症
裂肛(切れ痔)
レビー小体型認知症
老眼(老視)
老人性角化腫(日光角化症)
肋膜炎
ロタウイルス腸炎
肋間神経痛
[わ行]
ワイル病
若はげ
腋臭
腕神経叢まひ
[A~Z、数字【1~】]
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
IgA腎症
O157感染症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
SSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
WPW症候群
[がん]
悪性リンパ腫
胃がん
陰茎がん
咽頭がん
ウイルムス腫瘍
外陰がん
下咽頭がん
顎骨腫瘍
カポジ肉腫
カルチノイド
肝臓がん
急性白血病
甲状腺がん
喉頭がん
骨髄腫
骨肉腫
子宮がん
子宮頸がん
子宮体がん
歯肉がん(歯茎がん)
絨毛がん
上咽頭がん
小腸がん
食道がん
腎盂がん
神経芽細胞腫
腎細胞がん
腎臓がん
膵臓がん
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
舌がん
前立腺がん
大腸がん
唾液腺がん
胆道がん
膣がん
中咽頭がん
軟部肉腫
乳がん
肺がん
白血病
ページェット病
膀胱がん
ボーエン病
慢性白血病
網膜芽細胞腫
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
老人性角化腫(日光角化症)
[心臓、血管、血液の病気]
エコノミークラス症候群
解離性大動脈瘤
仮面高血圧
顆粒球減少症
狭心症
菌血症
血栓症
血友病
高血圧症
静脈血栓症
静脈瘤
心筋炎
心筋梗塞
心室中隔欠損症
心膜炎
精索静脈瘤
成人T細胞白血病(ATL)
先天性心臓病
大血管転位症
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
多血症(赤血球増加症)
低血圧症
鉄欠乏性貧血
動脈管開存症
特発性心筋症
特発性脱疽
バージャー病
肺性心
肺動脈狭窄症
白衣高血圧
白血球増加症
貧血
ファロー四徴症
不整脈
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
末梢動脈疾患(PAD)
無症候性心筋虚血
リンパ浮腫
レイノー病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
WPW症候群
[呼吸器の病気]
アスペルギルス症
息切れ
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
過換気症候群
過呼吸症候群
かぜ
間質性肺炎(肺線維症)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気胸
急性気管支炎
胸膜炎
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クレブシエラ肺炎
結核
原発性肺高血圧症
細菌性肺炎
サルコイドーシス
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
塵肺症
先天性気管狭窄症
膿胸
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺真菌症
肺水腫
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺嚢胞症
肺膿瘍
非定型抗酸菌症
びまん性汎細気管支炎
日和見肺感染症
ボックダレック孔ヘルニア
マイコプラズマ肺炎
慢性気管支炎
ムーコル症
無気肺
レジオネラ症
肋膜炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
[食道、胃腸、肛門の病気]
あな痔(痔瘻)
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
胃切除後障害
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
横隔膜ヘルニア
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
過敏性腸症候群
嵌頓ヘルニア
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
吸収不良症候群
急性胃炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性大腸炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性腹膜炎
切れ痔(裂肛)
クローン病
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
臍炎
臍帯ヘルニア
臍肉芽腫
臍ヘルニア
痔核(いぼ痔)
十二指腸潰瘍
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
痔瘻(あな痔)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大腸がん
大腸憩室
脱腸(鼠径ヘルニア)
蛋白漏出性胃腸症
虫垂炎
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
低酸症
特発性食道拡張症
尿膜管遺残
ヒステリー球(食道神経症)
腹壁ヘルニア
便の変化
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性腸炎
慢性腹膜炎
胸焼け
毛巣瘻
薬剤性大腸炎
幽門狭窄
裂肛(切れ痔)
ロタウイルス腸炎
[肝臓、胆道、膵臓の病気]
アルコール性肝障害
肝硬変
急性肝炎
急性膵炎
劇症肝炎
胆石症
胆嚢炎、胆管炎
慢性膵炎
門脈圧高進症
門脈血栓症
[内分泌・代謝異常、栄養障害による病気]
亜急性甲状腺炎
ウイルソン病
壊血病
かっけ(脚気)
偽痛風(軟骨石灰化症)
機能性甲状腺腺腫
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
生活習慣病
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
ターナー症候群
単純性甲状腺腫
痛風
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
軟骨石灰化症(偽痛風)
ニコチン酸欠乏症
ヌーナン症候群
橋本病(慢性甲状腺炎)
バセドウ病
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
肥満
プランマー病
慢性甲状腺炎(橋本病)
無痛性甲状腺炎
メタボリック症候群
やせ
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
類宦官症
[アレルギーによる病気、膠原病]
アトピー性皮膚炎
アナフィラキシーショック
アレルギー性結膜炎
ウェゲナー肉芽腫症
過敏性血管炎
強皮症(全身性硬化症)
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
膠原病
混合性結合組織病(MCTD)
サルコイドーシス
シェーグレン症候群
シックハウス症候群
成人スティル病
全身性エリテマトーデス
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
ヒトアジュバンド病
皮膚筋炎、多発性筋炎
ベーチェット病
ラテックスアレルギー
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
[心の病気]
アスペルガー症候群
アルコール依存症
アルツハイマー型認知症 
うつ病
仮面うつ病
季節性うつ病
気分変調性障害(気分変調症)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
強迫性障害
クロイツフェルト・ヤコブ病
肛門神経症(自己臭妄想症)
五月病
自閉症
社会不安障害(SAD)
若年性認知症
書痙
心因性めまい
人格障害
神経性過食症
神経性食欲不振症
心身症
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
セックス依存症(性依存症)
全般性不安障害(GAD)
双極性障害(躁うつ病)
チック症
知的障害
適応障害
統合失調症(精神分裂病)
認知症(痴呆症)
脳血管性認知症
パーソナリティー障害
発達障害
パニック障害
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ピック病
非定型うつ病
不安障害
ミュンヒハウゼン症候群
薬物依存症
レビー小体型認知症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
[脳、脊髄、神経の病気]
アペール症候群
一過性脳虚血発作
顔の運動異常
過眠症
顔面神経まひ(ベルまひ)
ギラン・バレー症候群
筋委縮性側索硬化症
緊張性頭痛
くも膜下出血
クルーゾン症候群
クロイツフェルト・ヤコブ病
群発頭痛
血栓症
坐骨神経痛
三叉神経痛
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
自律神経失調症
水頭症
髄膜炎
頭痛
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
多発性硬化症
聴神経腫瘍
てんかん
ナルコレプシー
脳炎
脳梗塞
脳腫瘍
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
パーキンソン病
発達障害
ハンチントン病
舞踏病
片頭痛
むずむず脚症候群
夢遊症
ルイス・サムナー症候群
肋間神経痛
腕神経叢まひ
[目の病気]
圧迫性視神経症
アポロ病
アレルギー性結膜炎
うっ血乳頭
遠視
円錐角膜
外傷性視神経症
開放隅角緑内障
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
仮性近視
加齢黄斑変性
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
眼精疲労
眼底出血
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨大乳頭結膜炎
近視
結膜炎
結膜下出血
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
光視症
逆さまつげ
サルコイドーシス
霰粒腫
シェ-グレン症候群
色盲、色弱(色覚異常)
視神経委縮
視神経炎
視神経症
弱視
斜視
腫瘍性視神経症
春季カタル
睫毛乱生症
硝子体混濁
視力障害
水晶体嚢性緑内障
正常眼圧緑内障
雪眼炎(雪目)
先天性緑内障(牛眼)
続発性緑内障
ただれ目(眼瞼縁炎)
中心性網膜脈絡症
突き目(匐行性角膜潰瘍)
糖尿病性網膜症
特発性視神経炎
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
白内障
はやり目
原田病
飛蚊症
ぶどう膜炎
フリクテン性角膜炎
ベーチェット病
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
慢性結膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
夜盲症
雪目(雪眼炎)
翼状片
乱視
流行性角結膜炎
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
レーベル病
老眼(老視)
[耳、鼻、のどの病気]
咽頭炎
感音難聴
急性中耳炎
急性鼻炎
喉頭炎
喉頭がん
心因性めまい
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
声帯ポリープ、声帯結節
前庭神経炎
中耳炎
聴神経腫瘍
突発性難聴
乗り物酔い(動揺病)
鼻カタル
鼻詰まり
鼻炎
肥厚性鼻炎
鼻出血
鼻中隔湾曲症
扁桃炎
慢性中耳炎
慢性鼻炎
耳鳴り
メニエール病
めまい
良性発作性めまい
[歯、口腔の病気]
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
口臭
歯周病
白板症
ベーチェット病
ヘルペス性歯肉口内炎
味覚障害
[皮膚の病気]
赤あざ(血管腫)
足白癬(水虫)
あせも(汗疹)
アトピー性皮膚炎
いぼ(疣贅)
いんきんたむし(股部白癬)
円形脱毛症
疥癬
かぶれ(接触皮膚症)
カポジ肉腫
乾癬
陥入爪
乾皮症
黒なまず(癜風)
血管腫(赤あざ)
結節性紅斑
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
匙状づめ
色素性母斑(黒あざ、黒子)
紫斑病
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
掌蹠膿疱症
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
白なまず(白斑)
じんましん(蕁麻疹)
せつ、よう
接触皮膚炎(かぶれ)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
そばかす(雀卵斑)
体臭
帯状疱疹
多汗症
多形滲出性紅斑
たこ、魚の目
脱毛、薄毛
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
虫刺症(虫刺され)
爪白癬(爪の水虫)
手湿疹(主婦湿疹)
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
頭部白癬(しらくも)
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
とびひ(伝染性膿痂疹)
にきび(尋常性痤瘡)
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
熱傷(やけど)
白癬
白板症
白皮症
皮膚カンジダ症
皮膚結核
皮膚掻痒症
ふけ症
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
蜂窩織炎、丹毒
ボーエン病
水虫(足白癬)
虫刺され(虫刺症)
薬疹
やけど(熱傷)
痒疹
リール黒皮症
リンゴ病
老人性角化腫(日光角化症)
若はげ
腋臭
[骨、関節、筋肉の病気]
アペール症候群
外反母趾(ぼし)
肩凝り
ガングリオン(結節腫)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
胸郭出口症候群
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
腱鞘炎
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨粗鬆症
重症筋無力症
脊椎分離症、脊椎すべり症
線維筋痛症
大腿骨頭壊死
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
膝痛
変形性股関節症
変形性膝関節症
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
腕神経叢まひ
[腎臓、泌尿器の病気]
アジソン病
過活動膀胱(OAB)
急性腎炎
急性腎不全
腎盂腎炎
腎炎
神経因性膀胱
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎不全
水腎症
前立腺炎
前立腺肥大症
糖尿病性腎症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
ネフローゼ症候群
膿腎症
膀胱異物
膀胱炎
膀胱結石
慢性腎炎
慢性腎不全
ループス腎炎
IgA腎症
[感染症(性病、寄生虫病を含む)]
アスペルギルス症
アニサキス症
アポロ病
アメーバ赤痢
咽頭結膜炎
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウェルシュ菌食中毒
エルシニア食中毒
オウム病(クラミジア肺炎)
おたふく風邪
疥癬
回虫症
カポジ肉腫
肝吸虫症
カンピロバクター食中毒
急性出血性結膜炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
蟯虫症
菌血症
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
鉤虫症
コレラ
細菌性赤痢
細菌性肺炎
サイトメガロウイルス感染症
サルモネラ食中毒
ジフテリア
住血吸虫症
十二指腸虫症(鉤虫症)
猩紅熱
条虫症
水痘(水ぼうそう)
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣上体炎(副睾丸炎)
性病
赤痢
セレウス菌食中毒
尖圭コンジローム
腸炎ビブリオ食中毒
腸チフス、パラチフス
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
鳥インフルエンザ
軟性下疳
日本住血吸虫症
日本脳炎
ノロウイルス食中毒
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
白癬
はしか
破傷風
ハンセン病
ヒスタミン食中毒
非定型抗酸菌症
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
フグ中毒
副鼻腔がん
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボツリヌス菌食中毒
マラリア
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性腸炎
水ぼうそう(水痘)
水虫(足白癬)
ムーコル症
メタノール中毒
野兎病
横川吸虫症
ライム病
ラッサ熱
旅行者下痢症
リンゴ病
レジオネラ症
ロタウイルス腸炎
ワイル病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
O157感染症
[職業病、公害病、形成外科の病気]
赤あざ(血管腫)
アスベスト症
アペール症候群
太田母班
外傷性視神経症
ガングリオン(結節腫)
クルーゾン症候群
血管腫(赤あざ)
色素性母斑(黒あざ、黒子)
書痙
塵肺症
ヒトアジュバンド病
メタノール中毒
やけど(熱傷)
[男性の病気]
遺精
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
過活動膀胱(OAB)
亀頭包皮症
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
血精液症
持続勃起症
精液瘤(精液嚢腫)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
セックス依存症(性依存症)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
尖圭コンジローム
早漏
癜風(黒なまず)
にきび(尋常性痤瘡)
ページェット病
包茎
勃起障害(ED)
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
類宦官症
レーベル病
[女性の病気]
移動盲腸
外陰炎
外陰がん
外反母趾
過活動膀胱(OAB)
ガングリオン(結節腫)
カンジダ膣炎
機能性子宮出血
強皮症(全身性硬化症)
クラミジア感染症
月経痛
原発性無月経
甲状腺がん
更年期障害
骨粗鬆症
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
しみ(肝斑)
絨毛がん
主婦湿疹(手湿疹)
静脈瘤
性器ヘルペス症
セックス依存症(性依存症)
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
続発性無月経
そばかす(雀卵斑)
膣がん
直腸脱
手湿疹(主婦湿疹)
乳がん
乳腺炎
乳腺症
ページェット病
マタニティーブルー
無月経
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リンパ浮腫
レイノー病
[子供の病気]
赤あざ(血管腫)
アスペルガー症候群
あせも(汗疹)
アペール症候群
アレルギー性結膜炎
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
遠視
横隔膜ヘルニア
おたふく風邪
仮性近視
川崎病
眼瞼下垂
眼瞼内反症
嵌頓ヘルニア
亀頭包皮炎
急性出血性結膜炎
急性白血病
蟯虫症
近視
クルーゾン症候群
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
結核
血管腫(赤あざ)
血友病
臍炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
色素性母斑(黒あざ、黒子)
自閉症
弱視
斜視
春季カタル
猩紅熱
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
神経芽細胞腫
心室中隔欠損症
新生児テタニー
新生児メレナ
心房中隔欠損症
水痘(水ぼうそう)
水頭症
精神遅滞(精神薄弱)
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大血管転位症
大動脈縮窄症
ダウン症候群
脱腸(鼠径ヘルニア)
チック症
知的障害
腸重積症
伝染性膿痂疹(とびひ)
動脈管開存症
とびひ(伝染性膿痂疹)
尿膜管遺残
脳膿瘍
肺動脈狭窄症
白皮症
はしか
白血病
発達障害
百日ぜき
ファロー四徴症
プール熱
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス性歯肉口内炎
ボックダレック孔ヘルニア
水ぼうそう(水痘)
網膜芽細胞腫
夜驚症
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
流行性角結膜炎
リンゴ病
ロタウイルス腸炎
[高齢者の病気]
アルツハイマー型認知症
加齢黄斑変性
偽痛風(軟骨石灰化症)
狭心症
骨髄腫
細菌性肺炎
逆さまつげ
食道がん
心筋梗塞
水晶体嚢性緑内障
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
帯状疱疹
大腸がん
脳血管性認知症
パーキンソン病
肺炎
ピック病
閉塞性動脈硬化症
変形性股関節症
変形性膝関節症
レビー小体型認知症
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アスペルガー症候群

■言語能力は正常で、自閉症より程度の軽い発達障害

 アスペルガー症候群とは、言語の習得に遅れのない自閉症近似の発達障害の一つ。広汎性発達障害の中に含まれますが、そのほかの広汎性発達障害との違いは、アスペルガー症候群には言葉の遅れがないということです。

 2歳までに単語を発話し、3歳までには二語文を習得するのは自閉症と異なりますが、コミュニケーションをとったり、対人関係を築くことができないため社会生活に困難を生じてしまうのは自閉症のそれと同等です。対人関係の障害のほか、特定の分野への強いこだわりを示したり、感覚的あるいは生理的異常を示したり、運動機能の軽度な障害も見られたりします。

 具体的な治療的対応は高機能自閉症(知的障害がない、あるいはほとんどない自閉症)と同様で、予後もほぼ同様であるとして、高機能自閉症と同じものとして扱われることもあります。しかし、多くの公的な文書においては、アスペルガー症候群と高機能自閉症とは同じ高機能広汎性発達障害の中に含まれますが、区分して取り扱われています。自閉症の延長線上にあっても、知的な遅れのないものが高機能自閉症で、さらに言葉の発達に問題を持たないものがアスペルガー症候群です。

 日本では従来、アスペルガー症候群への対応が進んでいませんでした。2005年4月1日施行の発達障害者支援法により、アスペルガー症候群と高機能自閉症に対する行政の認知は高まった一方、社会的認知は依然として低い状態です。

 オーストリアの小児科医、ハンス・アスペルガーが1944年、小児期より自閉的精神病質(性格異常の一種)を示す4例の症例報告を発表しました。このドイツ語で書かれた論文の存在とアスペルガーの名前を世界的にしたのが、イギリスの自閉症研究者であり臨床医であったローナ・ウイング。1981年の彼女の論文で、アスペルガー症候群の用語が始めて用いられ、1990年代になって世界中で徐々に知られるようになりました。

 アスペルガー症候群の原因は、明らかになっていません。自閉症と同様に、家族的・遺伝的要因の関与を示唆する研究がありますが、結論は一般化されていません。現在、最も注目されているのが脳の先天的な機能障害説で、実験データなどもそろってきています。脳幹障害説、小脳障害説、前頭前野障害説、一時感覚と関連した機能障害説、扁桃体(へんとうたい)システム障害説など、国内外でさまざまな意見があります。

 女性に比べて男性に多く発症することは確実ながら、自閉症ほどの優位性はありません。アスペルガー症候群の子供では、言語の習得に遅れを示さず、特定の分野に極端な関心と知識を持つだけなので、自閉症と比べて障害に気付かれるのが遅くなります。逆に、ユニークであるが早熟な子供と認識している親も、まれではありません。

 運動機能の軽度な障害も見られて、多くが不器用。運動と生活動作の両面で差し障りを示したりします。特徴的なゆらゆら歩きや小刻みな歩き方をし、腕を不自然に振りながら歩くこともあります。手をぶらぶら振る(常同行動)など、衝動的な指、手、腕の動きが認められることもあります。

 他者の気持ちを推測するのが苦手なため、コミュニケーションがうまくとれず、同年齢集団の幼稚園や保育園で友達ができにくく、成績はよいが友達がいないといった子供が多いようです。親とすらうまくコミュニケーションをとれないことも少なくありません。

 また、固定化または儀式化された行動や癖を持ち、手順にこだわったり、大人びた話し方をしたり、話をする時に目を反らしたり、言葉に抑揚がなく単調で一本調子のしゃべり方をしたり、といった特徴もあります。やまびこのように、言葉やその一部を繰り返す反響言語(エコラリア)と呼ばれる症状を示す場合もあります。

 視覚や聴覚、味覚などの感覚的異常、あるいは生理的異常を示すこともあります。例えば、ちょっとした日差しや雑音を嫌い、サングラスや耳栓をつけなければ外出できないような子供もいます。強い匂いに敏感だったり、頭を触られたり、髪をいじられるのを嫌う子供もいます。味覚が偏っているため、偏食になりやすい子供もいます。

 想像力、応用力といった感性が欠如している反面で、規則を守ることが得意で、文字や数字、記号などに強い関心を持ち、絵を描くことなどに独特な才能を持っていることも特徴です。特によく関心の対象となるのは、鉄道・自動車などの輸送手段、コンピューター、数学、天文学、地理、恐竜、法律など。きわめて強い、偏執的ともいえる水準での集中を伴うことがあり、対象に関する大量の情報を記憶することがあります。

 小学校ではほとんどの場合、通常学級で過ごすことになります。成績は科目によって大きく差があり、得意不得意がはっきりしています。学年が進むと、考え方や行動が独特で周囲から特別視される傾向にあります。同年代になじめないことから、いじめが発生したり、社会的になじめないことによるパニック、不穏、不登校といった問題が現れることもあります。

 思春期を迎えると、それなりに周囲に適応するようになります。ただ、適応に失敗すると現実逃避、幻覚症状、気分障害といった二次的症状を引き起こす可能性があります。

 仕事に就いた場合は、得手不得手があり、あいまいなことの判断に迷うなど、大きな問題を持ちます。自分と周囲との差から長続きせず、現実逃避してしまうことがあるといわれています。ただ、興味のある仕事を見付けることができれば、一気に才能が開花するといったこともあります。

■アスペルガー症候群の検査と診断と治療

 児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師は、問診で症状、病歴、家族の病歴、生活習慣などの質問により診断していきます。その後、てんかんやその他の脳の病気でないことを確認するために、脳波検査、CT、MRIなどの脳の画像検査を行います。さらに、認知機能などを確認するために知能検査、人格検査などを行います。

 一般的に疾患は薬や手術を行うことで治療できますが、アスペルガー症候群は治す疾患とは違います。アスペルガー症候群の原因は、現在の医学でははっきりとわかっていません。脳に何らかの障害がある、環境や遺伝に要因があるなど諸説あるものの、明らかな原因は解明されていません。

 そのため、アスペルガー症候群に対する病院側の対応も、診断や療育支援にとどまり、薬を使うのはあくまでも二次的にうつ、不安障害などの症状が出た場合に限られています。うつや不安障害にはSSRI、強迫性障害にはSSRIやSNRI、幻覚・妄想には抗精神薬、気分障害には気分安定剤などが使用されます。

 医師によっては、自閉症のための援助プログラムであるTEACCHや、認知行動療法などを行うことがあります。これらは基本的に、家庭生活で親と一緒に日常的に行う生活の改善や、訓練になります。

 代表的なものは、生活のスケジューリング、明確に意図のある指示出し、なるべく刺激を与えない静かな環境づくり、何かに興味を持った際は応援する、長所を見付けほめる、テレビや映画を音声なしでみせて内容を予想させる訓練をする、演劇をさせ場面ごとにどのような態度をとるべきかを教える訓練をする、不適切な行動を記録し代わりとなる代替行動を教える、などです。


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アルコール依存症

飲酒の量をコントロールできない精神疾患

 アルコール依存症とは、飲酒などアルコールの摂取によって得られる精神的、肉体的な薬理作用に強く捕らわれて、自らの意思で飲酒行動をコントロールできなくなり、強迫的に飲酒行為を繰り返す精神疾患。 薬物依存症の一種で、以前は慢性アルコール中毒、略してアル中とも呼ばれていました。

 厚生労働省の研究班の調査では、アルコール依存症と予備軍は約440万人と推定していますが、医療機関で治療を受けている人はごく一部。

 多量飲酒が長年続いた後に、発症します。多量飲酒は1日当たり日本酒3合以上が目安とされ、乱用からアルコール依存症へと進むリスクが高いと指摘されています。

 アルコール依存症の人は、アルコールによって自らの心身を壊してしまうのを始め、家族に迷惑をかけたり、さまざまな事件や事故、問題を引き起こしたりして、社会的信用と人間的信用を失ったりすることもあります。

 症状の特徴としては、飲酒のコントロールが効かないとともに、飲酒をやめた時に離脱症状が出ることです。離脱症状とは数日以内に起こる精神症状と身体症状で、精神症状としてはイライラ、不安、抑うつ気分、不快感または脱力感があり、身体症状としては発汗、下痢、手の震え、吐き気、起立性低血圧などがあります。飲酒すれば、離脱症状は軽減ないしは消失します。

 飲酒のせいで食欲がわかずに栄養失調になったり、酔って転倒し骨折する危険性も高くなります。

 症状が進行すると、いくつかの精神症状が現れます。その一つはアルコール離脱せん妄というタイプで、従来は振戦(しんせん)せん妄という診断名で呼ばれていたものです。

 飲酒の減量または中止後1週間以内に、せん妄という意識状態の変化が生じ、恐ろしいものが見える幻視を伴ったり、不安になっておびえたりします。幻視は活発で、主に虫やネズミなどの小動物が見えてしまうケースが多くなります。同時に、自律神経機能の高進で頻脈や発汗が出現したり、手足が震える振戰が起こったりします。

 また、飲酒中止時や大量飲酒時に、アルコール幻覚症がみられることがあります。幻覚は、被害的内容の鮮明な幻聴を主とします。複数の人がしゃべっているような幻聴が多く、1~2週間で消失します。しかし、中には数か月も続くことがあります。

 アルコール妄想症がみられることもあります。嫉妬(しっと)妄想を主とするタイプで、自分の妻や恋人が浮気をしているという疑いを抱いて詰問したり、証拠調べをするような行動に出たりします。断酒によって、次第に消失します。

 長期かつ大量の飲酒を続けると、サイアミン(ビタミンB1)の欠乏によって、コルサコフ病(ウェルニッケ・コルサコフ病)と呼ばれる亜急性脳炎を起こす場合があります。意識障害、記銘力や記憶力の障害、場所や時間がわからなくなる失見当識、小脳失調などの症状が出ます。記憶力の障害の結果として、記憶の不確かな部分を作話で補おうとする「コルサコフ作り話」が、よく知られています。

 アルコールが原因で、ビタミンB群とニコチン酸の欠乏による栄養障害が生じて、アルコール性多発神経炎、ないしアルコール性末梢(まっしょう)神経炎と呼ばれる疾患を起こすこともあります。手足の異常感覚や痛み、感覚鈍麻や疼痛(とうつう)、手足の筋肉の脱力、転びやすい、走りにくいなどの症状が出ます。

 アルコール性多発神経炎がコルサコフ病に合併すると、アルコール性多発神経炎性精神病を発症します。コルサコフ病からさらに進行して、アルコール性認知症を発症する場合もあります。

 なお、アルコール依存症の大部分では、臓器障害として肝機能障害、胃腸障害、心障害、膵(すい)障害を伴います。最も多くみられるのは、アルコール性肝炎からアルコール性脂肪肝、アルコール性肝硬変と進むケースです。

 アルコール性肝炎は、肝臓が炎症を起こし、肝細胞が破壊される病気。全身の倦怠(けんたい)感、上腹部の痛み、黄疸(おうだん)、腹水などの症状が出ます。アルコール性脂肪肝は、肝臓に脂肪が蓄積され、放置すると肝硬変、肝臓がんへと進む危険性を持ちますが、自覚症状はほとんどありません。アルコール性肝硬変は、肝細胞の破壊が広範に起こり、細胞が繊維化される病気。肝炎と類似した症状が出ます。

 アルコール性胃炎は、胃粘膜の炎症。慢性化して、胃潰瘍(かいよう)に発展する場合もあります。症状は胃痛、胸焼け、吐血など。アルコール性膵炎は、膵臓の炎症。慢性膵炎の約半数は、アルコール性のものといわれています。症状は腹部や背中の痛み、発熱など。急性膵炎や慢性膵炎が急速に悪化すると、落命することもあります。

 これらの身体症状は、アルコールにより引き起こされているものなので、酒を断つことにより回復するケースもあります。しかし、数日単位での回復は無理で、数カ月から長いものでは数年ほど回復に時間がかかることが、多くみられます。脳や体に不可逆的にダメージを受け、ある程度以上は治癒しないケースも。

 アルコール依存症の人は、飲酒歴が長期に渡っているのが特徴ですが、女性の場合は短期の飲酒歴で、かつ飲酒量が比較的少量でも、急速にアルコール依存症となってしまう危険があります。

 一説によると、習慣飲酒からアルコール依存症への進行の時間は、男性で約10年、女性では約6年であるともいわれています。

 女性は、男性に比べて一般的に体が小さいこと、体内の水分率が男性より低いこと、女性ホルモンがアルコール代謝を阻害する要因となることなどから、同じ量のアルコールを摂取しても男性の2倍悪影響が出ると見なされています。 

■根本的な治療法といえるのは断酒のみ

 アルコール依存症の治療において、まず大切になるのが本人の認識です。アルコール依存症の人は全般的に、自分がアルコール依存症であることを認めたがりません。認めてしまうと、飲酒ができなくなってしまうからです。何よりもまず、本人が疾患の自覚と治療の意志を持つことが大切です。

 アルコール依存症の人の過剰な飲酒に対して、「意志が弱いから」、「道徳感が低いから」といわれたり、不幸な心理的、社会的問題が原因であると考えられがちですが、実際はそうではなく、多くの場合この疾患の結果であることが多く見受けられます。

 つまり、アルコールによって病的な変化が体や心に生じ、そのために過剰な飲酒行動が起こるということです。このことをまず本人や周囲の人が理解し、認めることが、この病気から回復する上での欠かせない第一歩となります。

 ただ、一度アルコール依存症になってしまうと治療は難しく、根本的な治療法といえるものは現在のところ、断酒しかありません。しかし、本人の意志だけでは解決することが難しいため、周囲の理解や協力が求められます。

 重症の場合は、精神科への入院治療が必要になることもあります。入院によって異常行動の監視や情動の安定を図り、精神療法や断酒訓練を通して、アルコールへの依存からの自立を助けることもできます。

 日本で認可されているシアナミド(商品名:シアナマイド)とジスルフィラム(商品名:ノックビン)という2種の抗酒剤や精神安定剤の使用により、アルコール摂取を禁止して治療を進めるとともに、各地にある断酒会や禁酒会などの自助グループへの参加を奨励する医師も多くなっています。

 抗酒剤を服用すると、飲酒時に血中のアセトアルデヒド濃度が高まるため、不快感で多量の飲酒ができなくなります。簡単にいうと、少量の飲酒で悪酔いする薬。飲酒欲求を抑える薬ではないため、医師の指導の下、本人への十分な説明を行った上での服用が必須。この薬を飲んで大量飲酒をすると、命にかかわる危険性があるからです。

 ただし、医師による治療でも完治することはなく、断酒をして数年、十数年と長期間経過した後でも、たった一口、酒を飲んだだけでも早かれ遅かれ、また以前の状態に逆戻りしてしまいます。

 そのため、治療によって回復した場合であっても、アルコール依存症の人が一生涯断酒を続けることは、大変な困難を要します。アルコールは依存性薬物であるからです。

 このため、断酒をサポートする断酒会や禁酒会への参加を、医師も奨励しているのです。断酒会や禁酒会は、アルコール依存症患者とその家族によって作られた自助グループ。会費制で、組織化されており、外部に対してもオープンな姿勢を取っている日本独自の団体です。断酒を続けることを互いにサポートし合い、酒害をはじめ、アルコール依存症に対する正しい理解と知識を広く啓蒙(けいもう)する活動を行っています。

 また、都道府県の精神保健福祉センターや最寄りの保健所では、アルコール依存症に関する無料相談を受けています。専門の病院を紹介してくれることもありますので、アルコール依存症と予備軍の人は困った時に1人で悩まず、気軽に相談するとよいでしょう。


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季節性うつ病

■ある季節にだけ現れる、うつ病に似た症状

 季節性うつ病とは、抑うつ気分などの、うつ病に似た症状が特定の季節に限って現れる精神疾患の一種。多くは冬に症状が出る冬季うつ病ですが、夏など他の季節に症状が現れる人もいます。

 季節性情動障害、季節性気分障害、季節性感情障害などとも呼ばれます。英語ではSeasonal Affective Disorderと呼ばれ、この頭文字を取ってSADと呼ぶのが一般的です。

 季節性うつ病の中で最も一般的な冬季うつ病は、秋冬うつ病ともいわれており、10~11月ごろに抑うつが始まって、1~2月ごろに症状が重くなり、3月になると次第に軽くなっていくというサイクルを繰り返します。

 過眠、過食の症状がみられるのが特徴で、特に夕方になると眠くなり、過食による体重増加、炭水化物や甘い物を欲する傾向が強まります。気分の憂うつ、焦燥感、無気力、日常活動に対する関心の低下や引きこもりなど、うつ病に似ている症状もあります。

 冬型の季節性うつ病は、冬が長く厳しい南北の高緯度地域における発症率が高いことから、日照時間が短くなることに原因があると考えられています。もともと、うつ病は日照時間との関係が強く、高緯度地域の人ほど多くみられ、低緯度地域の人はあまりうつ病になりません。

 発症のメカニズムはまだよく分かっていないところもありますが、体内時計をつかさどるメラトニンの分泌の変化が原因という説があります。脳の中央部にある松果体が産生するホルモンであるメラトニンは、普通なら夜間に分泌されます。日照時間が短くなることで、その分泌時間が長くなって分泌が過剰になったり、分泌のタイミングが遅れたりするために、体内時計が狂ってしまうのが原因というものです。また、光の刺激が減ることで、神経伝達物質のセロトニンが減り、脳の活動が低下してしまうのが原因という説もあります。

 冬型の季節性うつ病の多くのケースでは、春から夏になるにつれて回復していきますが、反動で一時的に躁(そう)状態になる人もいます。症状が急転し、エネルギーに満ちて活動的になり、睡眠への欲求が低下し、食欲が減退するなど、冬の症状とは正反対の症状を示すもので、春夏軽躁病ともいわれます。

 夏型の季節性うつ病では、食欲低下、不眠、体重減少などの症状がみられるのが特徴です。

 なお、季節性うつ病の多くの症例では、途中から季節性を獲得したり、途中で季節性を失ったりと、不安定な経過を示すようです。

■季節性うつ病の治療

 冬型の季節性うつ病(冬季うつ病、秋冬うつ病)の治療には、高照度光療法が最も効果があります。閉め切った部屋で人工光を浴びる方法で、治療の目的で特定の季節を再現するため、光の照射時間を夏は長く、冬は短くといった形でコントロールします。光療法の装置は、日本の電気メーカーが市販もしています。

 日光浴、特に朝日を浴びるのも効果的です。薬品による治療も行われますが、通常のうつ病に効く抗うつ剤は、季節性うつ病にはあまり効果がありません。眠らないで起きている断眠療法が行われることもあります。


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強迫性障害

■強迫症状に特徴がある不安障害

 強迫性障害とは、強迫症状と呼ばれる症状に特徴付けられる不安障害の一つ。従来、強迫神経症と呼ばれていたものです。

 強迫症状は、強迫観念と強迫行為からなります。両方が存在しない場合、強迫性障害とは見なされません。強迫観念は、本人の意思と無関係に、不安感や不快感を生じさせる考えが繰り返し浮かんできて、抑えようとしても抑えられない症状。強迫行為は、不安で不快な強迫観念を打ち消したり、振り払おうとして、無意味な行為を繰り返す症状。

 自分でも、そのような考えや行為は不合理である、つまらない、ばかげているとわかっているのですが、やめようとすると不安が募ってくるので、やめられません。例えば、道を歩くのにも電柱を一本一本数えないと歩いて行けない、階段を上り下りするのにも左足からでないと気がすまない、外出の際に家の鍵(かぎ)やガスの元栓を閉めたかが気になって何度も戻ってきて確認する、というような具合です。

 強迫性障害は、人種や国籍、性別に関係なく発症する傾向にあります。調査による推測では、日本の全人口の2パーセント前後が相当します。日本では、対人関係、人間関係に関連した強迫症状が多いのが特徴で、他人と違うことを嫌う社会であるため、幼少期から人間関係に気を使うのが大きな原因とみられます。

 20歳前後の青年期に発症する場合が多いとされますが、幼少期、壮年期に発症する場合もあるため、青年期特有の疾患とはいい切れません。経過は一般に慢性で、よくなったり悪くなったりしながら、長期間に渡って続くのが普通です。ストレスにより、強迫症状が悪化する傾向にあります。また、うつ病が半数以上に合併してくることも特徴で、より苦痛が大きなものとなり、自殺などへの注意が必要になってきます。

 特別なきっかけなしに徐々に発症してくる場合が多く、完全な原因はわかっていません。大脳基底核、辺縁系など脳内の特定部位の障害や、セロトニンやドーパミンを神経伝達物質とする神経系の機能異常、心理的な要因、体質など複数の要因が関係して、発症するのではないかと推定されています。双生児研究から、遺伝的な要因を指摘する説もあります。

 発症者の共通点として、もともと几帳面(きちょうめん)であったり、融通が効かずに生真面目(きまじめ)であったりする性格傾向が挙げられています。

■一般的な強迫症状と、附随する状態

 強迫症状の内容には、個人差があり、人間のありとあらゆる心配事が要因となり得ます。しかし、比較的よく見られる症状があるため、これを下記に記します。

 それぞれの症状についても、発症者自身の対処、すなわち強迫行為の内容は異なり、一人の発症者が複数の強迫症状を持つことも、一般的にみられます。

 不潔強迫(洗浄強迫)

便、尿、ばい菌などで汚染されたのではないかと気になり、人を近付けない、物に触れないなどの回避行動をとります。物に触った後や、帰宅後には、手を何度も洗わないと気がすまなかったり、シャワーや風呂に何度も入らないと気がすみません。

 確認強迫

外出や就寝の際に、家の鍵やガスの元栓、窓を閉めたかが気になり、何度も戻ってきては執拗(しつよう)に確認します。電化製品のスイッチを切ったか、度を越して気にもします。

 加害恐怖

自分の不注意などによって、他人に危害を加える事態を異常に恐れます。例えば、車の運転をしていて、気が付かないうちに人をひいてしまったのではないかと不安にさいなまれて、確認に戻るなどです。

 被害恐怖

自分自身に危害を加えること、あるいは、自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れます。例えば、自分で自分の目を傷付けてしまうのではないかと不安にさいなまれ、鋭利なものを異常に遠ざけるなどです。

 計算強迫

物の数や回数が気になって、数えないと気がすみません。

 縁起強迫(縁起恐怖)

自分が宗教的、社会的に不道徳な行いをしてしまうのではないか、あるいは、してしまったのではないかと恐れるもの。例えば、信仰の対象に対して冒とく的なことを考えたり、発言てしまうのではないか、赤ん坊の首を絞めるのではないかなどと恐れ、恥や罪悪の意識を持ちます。ある特定の行為を行わないと、病気や不幸などの悪い事柄が起きるという強迫観念にさいなまれる場合もあり、靴を履く時は右足からなど、ジンクスのような行動が極端になっているものもみられます。

 不完全強迫(不完全恐怖)

物を順序よく並べたり、対称性を保ったり、きちんとした位置に収めないと気がすまないもの。例えば、机の上にある物や家具が自分の定めた特定の形になっていないと不安になり、常に確認したり直そうとするなど。物事を進めるに当たって、特定の順序を守らないと不安になったりするものもあります。

 数唱強迫

不吉な数や、こだわりの数があり、その数を避けたり、その回数を繰り返したりします。例えば、数字の4は死を連想するため、日常生活で4に関連する事柄を避けるなどの行為。

 個人差によって、以下のような状態が強迫症状に付随することもあります。

 回避

強迫観念や強迫行為は発症者を疲れさせるため、強迫症状を引き起こすような状況を避けようとして、生活の幅を狭めることを回避と呼びます。重症になると、家に引きこもったり、ごく狭い範囲でしか生活しなくなることがあります。回避は強迫行為と同様に、社会生活を阻害し、仕事や学業を続けることを困難にしてしまいます。強迫症状を緩和するために、アルコールを飲み続けてアルコール依存症になる例もあります。

 巻き込み(巻き込み型)

強迫行為が自分自身の行為だけで収まらず、自分で処理しきれない不安を振り払うために、家族や友人に手などを洗ったり、誤りがないか確認するなどの行為を懇願したり、強要したりする場合があります。これを巻き込み、または巻き込み型といいます。巻き込みにより、本人のみならず周囲の人も、強迫症状の対応に疲れ切ってしまうことがあります。

■強迫性障害の診断と治療 

 病気に気付いたら、精神科を受診してください。うつ病や統合失調症など他の精神疾患や、脳器質性疾患の可能性もあるので、それらとの区別のための専門的な診断や検査も必要です。

 脳炎、脳血管障害、てんかんなど脳器質性疾患でも強迫症状がみられますので、区別のための血液検査、髄液検査、頭部CTやMRIといった画像検査、脳波検査などが必要になります。

 治療法には、薬物療法と精神療法があります。薬物療法としては、三環系抗うつ薬であるクロミプラミンが有効であることが確認され、神経伝達物質が病因の一つであることが考えられるようになりました。次いで、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が登場し、第1選択薬の地位を占めることになりました。ベンゾジアゼピン系の抗うつ薬も用いられ、また、不安レベルを下げるという意味で抗不安薬が併用される場合もあります。有効率は50パーセント前後と見なされています。

 精神療法では、暴露反応妨害法と呼ばれる認知行動療法の有効性が、確かめられています。認知行動療法とは、認知や行動の問題を合理的に解決するために構造化された治療法で、認知のゆがみの修正、不適応行動を修正して適応行動を再学習するというもの。暴露反応妨害法では、強迫症状が出やすい状況に発症者をあえて直面させ、強迫行為を行わないように指示し、不安感や不快感が自然に消失するまでそこにとどまらせるという方法です。これらを発症者の不安や不快の段階に応じて、実施します。

 認知行動療法は単独でも用いることができますが、強迫観念が強い場合、薬物療法導入後に行うほうが成功体験が得られやすくなります。適応する発症者が限られており、専門家が少ないのが難点です。


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心因性めまい

■主に心理的な要因の影響で生じるめまい

 心因性めまいとは、主に心理的な要因が影響して生じるめまい。その多くは、疾患としての不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状としてみられます。

 めまいを生じる疾患には、大きく分けて耳の疾患、脳の疾患、精神の疾患の3つがあります。めまいで耳鼻咽喉(いんこう)科や脳神経外科を受診し検査を受けても、特に異常が見付からなかったり、めまいの治療を受けているのになかなか改善しない場合には、単に耳の疾患、脳の疾患だけによって起こるめまいではなく、精神の疾患である不安障害、身体表現性障害、うつ病で生じる心因性めまいの可能性もあります。

 めまいの特徴は発症者ごとに異なり、辺りがグルグルする回転性のめまいから、体がふらついて真っすぐに歩けない浮動性めまいまで多種多様で、耳鳴りの障害を伴うこともあります。めまいだけではなく、気分の落ち込みや倦怠(けんたい)感といった抑うつ状態、食欲不振または過食、睡眠不足または過眠、頭痛や肩凝りなどといった症状がみられるのが特徴です。

 人間関係や仕事のトラブル、育児のストレス、将来への不安などが自律神経に悪影響を与えているのが、原因だと考えられています。

 心因性めまいには、大きく分けて2つのタイプがあります。 耳や脳に異常がある上に心の不調が影響してめまいが起こるタイプと、 耳や脳には異常はなくて心の不調が主な原因となるタイプです。

 前者のタイプは、もともと耳や脳の異常によるめまいがある上に、心の不調が重なることによって悪化しているもの。耳の異常によってめまいが起こる疾患としてメニエール病などがありますが、これらはストレスなども疾患の発症に関与しているため、精神的にも不調になることでさらに症状が悪化すると見なされます。この場合、めまいに関係する耳や脳の異常部位の治療と一緒に、不安障害やうつ病に対する治療も必要になります。

 後者のタイプは、不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状として、めまいが発症しているもの。なぜ、精神の疾患でめまいが発現するかは正確にはわかっていませんが、心理的な要因が交感神経に過度の影響を与えることが関係していると見なされています。また、精神の疾患は意欲や活力を伝える役割を持つセロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質の働きが悪くなり、脳機能が十分に働かなくなることにより起こるとされ、体の中の平衡機能も影響を受けると見なされています。この場合、耳鼻科でめまいの治療を受けても治りませんので、精神科や心療内科などでの治療が必要になります。

 不安障害は、急に激しい不安の発作に襲われるパニック障害と、不安感がいつもあり、仕事や生活に支障を来す全般性不安障害の2種類に分けられます。女性に多くて青年期に発症しやすく、不安障害の発症者の約70パーセントにめまいがあります。

 身体表現性障害は、体の疾患を思わせる症状があるのに、その体の疾患から説明できないか、疾患がないというものです。数年間、さまざまな体の不調を訴えて、体の異常はないと医師から説明を受けても、疾患への恐怖と捕われが続きます。身体表現性障害の発症者の80パーセント以上にめまいがあります。

 うつ病は、気分がひどく落ち込み、何事にもやる気がなくなる精神の疾患で、20人に1人が症状を持っているといわれています。全身に力が入らない感じでふらふらする、疲れ切った感じでふらふらする、目の焦点が合わないなどの訴えが多く、壮年期以降に増える傾向があります。

■心因性めまいの検査と診断と治療

 耳鼻咽喉科で耳の疾患もなく、脳の疾患もない場合に、原因不明とか、気のせいといわれることもありますが、心因性めまいは原因不明でもなく、単なる気のせいでもありません。気持ちだけで、心因性めまいを乗り越えることができません。めまいのもとは、精神の疾患であり、適切な治療で回復します。 ずっと続くめまいに悩まされているようであれば、精神科や心療内科で検査を受けてみます。

 精神科や心療内科での治療は、薬物療法が主となります。不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。一般的には、身体表現性障害を含め、抗不安薬で当面の症状を鎮めて経過をみます。

 うつ病の治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。薬による治療と合わせて、心理療法なども行われます。

 不安障害や身体表現性障害、うつ病の治療には時間がかかりますが、適切な治療が行われれば克服することができます。根気よく治療を続けることが大切です。そのためには、発症者本人だけではなく、周りの家族のサポートや職場の人たちの理解が欠かせません。

 日常生活では、ストレスをためず気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。


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精神疾患

■脳および心の障害で起こる疾患

 精神疾患とは、脳および心の機能的、器質的な障害によって、精神の変調が引き起こされる疾患。統合失調症や躁(そう)うつ病といった重度のものから、不安障害(神経症)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの多くの疾患を含みます。

 精神の変調が髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合も含み、広義の精神疾患として知的障害や人格障害をも含みます。

 精神疾患には多くの種類があり、精神医学の領域では、精神疾患の定義、診断基準が統一されていません。そのために、同じ病状に対して付けられる病名が、精神疾患の分類法によって変わってくることがあります。

 世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)においては、診断カテゴリーを用いて網羅的に分類しています。これにより、個々の精神疾患の診断が世界全体で以前よりも標準化され、一貫性を持つようになりつつあります。

 以下の精神疾患の分類は、世界保健機構による国際疾患分類に基づきます。

●症状性を含む器質性精神障害

 認知症疾患、コルサコフ症候群、頭部外傷後遺症などによる精神疾患

●精神作用物質使用による精神および行動の障害

 アルコール、アヘン、大麻、鎮静薬または催眠薬、コカイン、覚醒(かくせい)剤・カフェイン、幻覚薬、タバコ、揮発性溶剤などの精神作用物質に関連した精神疾患。依存症、乱用、中毒などに分けられる。アルコール依存症、薬物依存症など

●統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害

 統合失調症、統合失調症型障害、持続性妄想性障害、急性一過性精神病性障害、感応性妄想性障害、統合失調感情障害

●気分(感情)障害

 躁病、双極性障害(躁うつ病ともいう)、うつ病

●神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

 不安障害、恐怖症、単一恐怖広場恐怖社会恐怖、パニック障害全般性不安障害、強迫性障害、重症ストレス障害、急性ストレス障害PTSD(心的外傷後ストレス障害)適応障害、 解離性障害、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)、身体表現性障害、転換性障害心気症、疼痛(とうつう)性障害、身体醜形障害

●生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

 摂食障害、神経性無食欲症(拒食症)、神経性大食症(過食症)、 睡眠障害、不眠症、精神生理性不眠症概日リズム睡眠障害、入眠困難中間覚醒早朝覚醒過眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、原発性過眠症反復性過眠症特発性過眠症睡眠時随伴症レム睡眠行動障害睡眠時遊行症、夜驚症 

●成人の人格および行動の障害

 妄想性人格障害、統合失調質人格障害、分裂病型人格障害境界性人格障害(境界例)、自己愛性人格障害、演技性人格障害、反社会性人格障害、強迫性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、性同一性障害、性嗜好(しこう)障害、フェティシズム、露出症、窃視症、小児性愛、サディズム・マゾヒズム、虚偽性障害ミュンヒハウゼン症候群

●精神遅滞

 精神遅滞

●心理的発達の障害

 広汎(こうはん)性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群

●小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害

 多動性障害、チック障害、トゥレット障害 

●その他

 幻覚妄想文化依存症候群神経質対人恐怖症 

■精神疾患の診断と治療

 精神疾患の治療を担当するのは、主に精神科、神経科です。発症者の症状や状況によっては、心療内科や内科など他の科で診察、治療が行われている場合もあります。

 精神疾患の治療とケアを行うための訓練を受けた専門家は、精神科医だけではありません。医師以外の専門家として、臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師などがいます。ただし、このうち薬を処方する資格を持っているのは精神科医だけです。医師以外の精神医療の専門家は、主に心理療法を行います。

 医師による診断においては、精神疾患を判別するための研究が進み、以前よりはるかに正確にできるようになっています。診断方法も進歩し、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、ポジトロンCT(PET)検査(脳の特定領域への血流を測定する画像診断法の1種)といった脳の画像診断が行われています。

 医師による治療法は精神疾患の種類や重症度により異なりますが、大きく分けると、身体療法か心理療法(精神療法)のいずれかです。身体療法には、薬物療法と電気けいれん療法があり、脳に直接働き掛けます。

 心理療法には、個人療法、作業療法、グループ療法、家族療法、夫婦療法といったもののほか、行動療法におけるリラクセーション訓練や暴露療法などの各種技法、催眠療法などがあり、言語や行動を介して治療します。

 重い精神疾患に対しては、薬物療法と心理療法を併用することが治療効果を高めると見なされています。ストレスの緩和は精神疾患の症状の緩和につながることから、音楽療法、運動療法、ユーモア療法などが活用されることもあります。

 精神疾患を予防したり、症状が軽減、消失した後の再発防止のために、社会適応能力を習得したり、趣味やスポーツなどでストレスを適切に管理することも、重要視されています。 

 また、家族など周囲の人間が理解を示すことも必要です。精神疾患に偏見や差別的な見方を持っている人もいるため、それが発症者のストレスとなり、引きこもりがちに、内向的になることもあるためです。


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全般性不安障害(GAD)

●不安障害の一種で、慢性的な不安が特徴

 全般性不安障害(GAD:Generalized Anxiety Disorder: ジーエーディー)とは、不安障害の一種。不安障害とは、誰もが感じる程度をはるかに超える不安を持ち、それが元で日常生活に支障を来してしまう病気の総称です。

 不安障害に数えられる病気の一つである全般性不安障害は、以前はパニック障害と一括して「不安神経症」と呼ばれていました。現在では二つに分けて、慢性的な不安に悩まされているなら 「全般性不安障害」、急な不安発作を繰り返すなら「パニック障害」という診断名で呼ばれるようになりました。「神経症」という用語も、国際疾病分類などでは正式な診断名として使われなくなりました。

 全般性不安障害の特徴は、慢性的な不安と、それに伴う心と体の症状が長く続くことです。誰もが感じる正常な不安は、はっきりした理由があって、一定の期間だけ続きます。しかし、全般性不安障害の場合、理由が定まらず、特殊な状況に限定されない不安が長期間続きます。

 不安や心配の対象は、家庭生活、仕事、学校、将来、近所付き合い、地震や大雨などの天災、不慮の事故、病気、外国での戦争など、あらゆるものが対象になります。そして、自分ではどうすることもできない事柄についても、必要以上に深刻に悩み、不安や心配をコントロールできなくなって、心や体の調子が悪くなり、日常生活に支障を来してしまいます。

 不安障害の中では一般的で、全般性不安障害の患者数はパニック障害の患者数より3~4倍多いとされ、1000人に64人くらいが経験するという報告もあります。まれな病気ではないといえます。

 発症する年齢は10代半ばから20歳前後が多く、男女比は1:2で女性に多くみられます。また、精神科にはかなりの時を経て、受診するケースが多いといわれています。

 アメリカで行われた調査によれば、一生の間に全般性不安障害にかかる人の割合(生涯有病率)は3~5パーセント、不安を専門に診ているクリニックでは、全患者の30パーセント程度が全般性不安障害と診断されており、発病者がかなり多くいる病気であることがわかります。 

●原因と症状の現れ方

 一般に、不安障害の原因は心理的な出来事(心因)とされており、全般性不安障害の場合も、何らかの精神的なショック、心配事、悩み、ストレスなど、精神的原因と思われる出来事をきっかけに、いつの間にか発症しているというのが普通です。しかし、きっかけが全くないこともあります。過労、睡眠不足、風邪など、身体的な状況がきっかけになることもあります。

 性格的には、もともと神経質で、不安を持ちやすい人に多い傾向があります。遺伝的要因や、自律神経の障害なども、発症に影響すると考えられています。

 発病者が訴える症状には、以下のようにさまざまなものがあり、不安と心配を過剰に持つことがいかに、心や体に悪い影響を与えるかがわかります。

【身体症状】

・頭痛、頭重、頭の圧迫感や緊張感、しびれ感

・そわそわ感

・もうろうとする感じ

・めまい感、頭が揺れる感じ、船酔している感じ

・自分の身体ではないような感じ

・身体の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感

・全身に脈拍を感じる

・便秘や頻尿 など

【精神症状】

・注意散漫な感じ

・記憶力が悪くなる感じ

・根気がなく、疲れやすい

・イライラして、怒りっぽい

・ささいなことが気になり、取り越し苦労が多い

・悲観的になり、人に会うのが煩わしい

・寝付きが悪く、途中で目が覚めやすい など

 不安に伴ういろいろな身体症状、精神症状に関しては、多くの発病者は身体症状のほうを強く自覚します。どこか体に重大な病気があるのではないかと考え、あちこちの病院で診察や検査を受けるのが常ですが、症状の原因になるような身体疾患はみられません。

 経過は慢性で、日常生活のストレスの影響を受け、よくなったり悪くなったりが続きます。途中から、気分が沈んで、うつ状態を伴ったり、うつ病に移行することもあります。

●検査、診断、薬物療法と精神療法による治療

 全般性不安障害という病気の名称やその症状については、これまであまり知られていなかったため、医療機関での治療を受けていない人も多いようです。

 また、病院に行っている人の場合でも、自律神経失調症や更年期障害と診断され、全般性不安障害の発病者としての治療の機会を逃がしていることもあるようです。

 発病すると、他の精神科領域の病気、例えば、うつ病、パニック障害、社会不安障害(SAD)などを併発する可能性が高くなるとされておりますので、コントロールできない不安や心配が続き、心や体に不調を来す症状が現れている場合には、早めに精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けてください。

 全般性不安障害の診断基準には、米国精神医学会編「DSM-(協) 精神疾患の分類と診断の手引」が主に使われます。その基準の核となる部分をまとめると、次のようになります。

(1)仕事や学業などの多数の出来事または活動について、過剰な不安と心配がある。しかし、その原因は特定されたものではない。

(2)不安や心配を感じている状態が6カ月以上続いており、不安や心配がない日よりある日のほうが多い。

(3)不安や心配をコントロールすることが難しいと感じている。

(4)不安や心配は、次の症状のうち3つ以上の症状を伴っている。

・そわそわと落ち着かない、緊張してしまう、過敏になってしまう

・疲れやすい

・集中できない、心が空白になってしまう

・刺激に対して過敏に反応してしまう

・頭痛や肩凝りなど筋肉が緊張している

・眠れない、または熟睡した感じがない

 以上の診断基準が使われて、症状と経過から診断が行われます。その人に出ている症状が他の身体疾患や、全般性不安障害以外の不安障害や、うつ病などの精神科領域の疾患によるものではないことを確認することも、重要となります。

 身体疾患を除外するために、尿、血液、心電図、X線、超音波など一般内科的検査が行われ、これらの検査で異常が見付からない場合に診断が確定します。

 治療法には、大きく分けて薬物療法と精神療法の2つがあります。疾患の本態は不安にありますので、まずは薬を使って、不安をコントロール可能なくらいまで軽くし、さらに精神療法によって、発病者自身が不安をコントロールできるようにしていきます。 

【薬物療法】

 不安感の軽減を目的に、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などが用いられています。ベンゾジアゼピン系は長期間服用した場合、精神的依存や眠気などの副作用があります。うつ症状を合併する場合は、抗うつ薬が用いられます。最近は、パロキセチン(パキシル) に代表される新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が報告されていますが、副作用はあります。

【精神療法】 

 発病の原因が、その人の生育歴や性格によっているような場合は、精神療法も重要となります。

 精神療法には、カウンセリング、認知行動療法、セルフコントロール法などがあります。いずれも無意識に存在している「不安の根源」を探し、そのコントロールを目指すものです。

 精神療法は、薬物療法と違って副作用が少ないのが利点ですが、本人の努力がかなり必要なことや主治医の先生との相性などもあり、効果にバラツキが出る場合があります。症状の完全な消失を求めるのでなく、少しでもよくなったら、そのぶん前向きに生活していく態度が、本人にとって肝要です。

●周りに発病者がいる方へ

 発病者は不安や心配を周りに訴えることが多いのですが、その訴えの中には、病気ではない人からみるとナンセンスに感じられることもあるので、じっくりと訴えを聞いてあげることが難しい時もあるかと思います。

 しかしながら、不安や心配に伴って心や体にも不調が長く続いていることを理解して、温かい気持ちで支えてあげてください。

 また、発病者と思われる人が周りにいて、しかも治療を行っていないようでしたら、単なる心配性と見なさないで、なるべく早く精神科や心療内科を担当する専門医の診断を受けるよう勧めてください。


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パニック障害

■強い不安感を主症状とする精神疾患

 パニック障害(PD=Panic Disorder)とは、状況に関係なく突然、発作が起こる精神疾患の一つ。かつては、全般性不安障害とともに不安神経症といわれていました。現在では、世界保健機関 (WHO) の国際疾病分類(ICDー10)によって、独立した病名として登録されています。

 日本人の生涯有病率は、2~3パーセントと見なされています。女性の罹患(りかん)率は、男性に比べて2倍程度に上るとも見なされています。

 発症の原因は、はっきりと解明されているわけではありません。ストレスや脳内の伝達物質の動きに関連があるといわれ、過労や睡眠不足、風邪などの身体的な悪条件が誘因になるともいわれています。

 定型的なパニック障害は、突然に起こるパニック発作によって始まります。続いて、その発作が再発するのではないかと恐れる予期不安と、それに伴う発作の慢性化が生じます。さらに長期化するにつれて、発作が生じた時に逃れられないような、あるいは助けを呼べないような特定の場所や状況を回避して、生活範囲を限定する広場恐怖が生じてきます。

 パニック発作の症状は、さまざまです。動悸(どうき)、発汗、身震い、窒息感、胸痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、強い不安感、非現実感、発狂への恐怖感、死への恐れなどが、代表的です。多くの場合は、10分以内でピークに達し、通常20~30分ほど、長い人でも1時間以内には収まります。

 このパニック発作に、発症者は非常に強烈な恐怖を感じるため、再び発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく予期不安を生じます。生活様式が変化して、神経質になり、いつも心身の状態を観察するようになります。そして、持続的に自律神経症状が起こることとなり、パニック発作が繰り返し生じるようになっていきます。

 パニック発作の反復とともに、広場恐怖の症状、すなわち発作が起きた場合に、その場から逃れられないと思われる状況を回避する症状を生じるようになります。パニック障害を発症した人のうち4人に3人は、多かれ少なかれ広場恐怖が出ると見なされます。

 回避される状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車、バス、飛行機、車、エレベーター、歯科、理容室、美容室、映画館、会議室、商店でのレジ待ち、道路の渋滞といった一定時間、特定の場所に拘束されてしまう環境や、繁華街、ショッピングモールといった人込みの中などが多いようです。

 ちなみに、広場恐怖の「広場」はギリシャ語で「市場」、「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であり、「広い場所」という意味ではありません。

 より不安が強まると、家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもあります。生活上の障害が強まり、社会的役割を果たせなくなっていき、それに伴う周囲との葛藤(かっとう)もストレスとなり、症状の慢性化をさらに推進していくこととなります。

 予期不安や広場恐怖により社会的に隔絶された状態が続くと、ストレスや自信喪失などによって、うつ状態となることも少なくありません。気分の浮き沈みが激しい、夕方近くや夜になると理由なく泣く、いくら寝ても眠い、体が重りをつけたようにだるい、言葉に敏感に反応して切れたり強く落ち込む、時に自傷行為を図るといった、いろいろな逸脱行動が出ます。

 元来うつの症状が見られなかった人でも、繰り返し起こるパニック発作によって不安が慢性化していくことでうつ状態を併発し、実際にうつ病と診断されるケースも多く報告されています。パニック障害にうつ病が併発する割合について、日本では約3割、欧米では約5~6割といった統計も出されています。

 ただし、うつ状態はパニック発作に起因して二次的に発症した別個の疾病であり、パニック障害そのものの症状とは分けて考える必要がある、という見方もあります。

■診断と一般的な治療法

 パニック障害の疑いがあると思う時には、精神科、心療内科を受診する必要があります。

 医師による診断では、予期しないパニック発作が繰り返し起こり、それらに対する予期不安が1カ月以上続く場合、パニック障害の可能性を疑います。診断基準としては、アメリカ精神医学会「DSM-IV 精神障害の診断と統計の手引き」が多く用いられています。

 実際のパニック障害の診断では、広場恐怖を伴わない軽症例と、広場恐怖を伴う慢性化した症例との2つに区分されます。なお、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病、強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われます。

 身体疾患が原因になっている場合も、パニック障害とは診断しません。心血管系の病気、呼吸器の病気、低血糖、薬物中毒、てんかんなど、パニック障害と同じような症状を引き起こす他の疾患がないことを確認するため、尿検査、血液検査、心電図検査、脳波検査なども行われます。

 パニック障害の治療法には、薬物療法、精神療法、生活習慣の改善などがあります。 

 薬物療法では、発作の抑制を目的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や三環系の抗うつ薬が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられます。

 最近では、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いのですが、SSRIの代表とされるパロキセチン(商品名:パキシル)では、飲み忘れなどで服用を中止した数日後に起きる激しいめまい、頭痛などの離脱(禁断)症状が問題となり、パニック障害に対する安全性、有用性に疑問も呈されています。

 一方、米国ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存性が問題とされることが多いのですが、日本では、成人の定型的パニック障害ではあまり問題とならないとする意見も多くみられます。

 精神療法では、最も基礎的で、重要なものが、疾患に対する医師の説明。パニック障害は発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患ですので、医師が明確に症状について説明することが、すべての治療の基礎となります。

 同時に、認知行動療法も行われます。精神療法の中で、有効性について最もよく研究されているのが、この認知行動療法です。不安が誘発される状況に想像的または体験的 に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる暴露療法、過呼吸にならないようなリラクゼーショントレーニングである呼吸法、筋肉を緩めるリラクゼーショントレーニングである筋弛緩法などが行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう訓練、練習を行います。

 認知行動療法は一歩間違えると、症状の悪化につながりかねないので、専門医の指導の元で無理をせず慎重に行う必要があります。 日本では、系統的な認知行動療法を行う施設は多くありませんが、精神科、心療内科の医師が認知行動療法的な指導を行っているケースは多くみられます。

 そのほか、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、森田療法、内観療法も有効とされています。

 パニック障害の発症者にとっては、睡眠不足などの乱れた生活習慣や、精神的なストレスが治療の大敵。生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。 そのためにも規則正しい生活を送り、それぞれに合った気分転換の方法を見付けるとよいでしょう。


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非定型うつ病

■典型的でなく、若い女性に多いうつ病

 非定型うつ病とは、典型的なうつ病とは異なるタイプのうつ病。発症した人は周囲から、うつ病と思われないことや、社会不安障害など他の心の病気を合併することが少なくありません。

 非定型うつ病は従来、不安障害(神経症)や人格障害などと診断されることが多かったものですが、最近は米国などで、典型的なうつ病とは違うアプローチで治療され、その割合も米国では、うつ病全体の3~4割を占めています。日本では精神科医の間でもようやく認知されてきた段階で、大きな環境の変化に対応できない適応障害と間違われて、診断されるケースもあります。

 従来の典型的なうつ病は定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲・食欲・集中力・性欲の低下、不眠などが主な症状となります。

 この定型うつ病とは現れる症状が違うのが非定型うつ病で、気分の落ち込みはあるものの、何か楽しいことがある時には元気が出るのが大きな特徴です。その他、タ方になると調子が悪くなったり、過食や過眠ぎみになるなどの特徴もみられます。

 20~30歳代でかかるうつ病では、多くがこの非定型うつ病に相当すると考えられます。特に、女性の場合は8割が相当し、男性と比べ3~5倍多いとされています。

 以下、定型うつ病と非定型うつ病の症状を比較します。気分の面では、定型うつ病は終始落ち込んで、元気や気力がないのが特徴。出来事の内容を問わず、何に対してもやる気が持てず、今まで積極的に楽しんでいた趣味にも、関心や喜びが持てなくなります。

 一方、非定型うつ病は気分の落ち込みや気力、集中力の低下など、うつ病に特有の症状はあるものの、楽しいことやいいことがあると明るくなります。すなわち、出来事に反応して気分が変わる「気分の反応性」がみられます。発症者は常に落ち込んでいずに気分が高揚している時もあり、社会生活の適応度もそれほど悪くないため、周りからの理解を得にくくなります。

 リズムの面では、定型うつ病は「モーニング・デプレッション」と呼ばれ、朝起きた時に調子が悪く、気分が落ち込みます。家事や仕事も面倒で、何をやる気にもなれないという憂うつな気分がダラダラと続き、やがてタ方くらいになると少し気が楽になってくるのが特徴。

 一方、非定型うつ病は1日のうちでは、タ方になると気持ちが不安定になりやすいのが特徴。午前中から昼は比較的穏やかに過ごせるものの、「サンセット・デプレッション」と呼ばれて、タ方から夜になると不安やイライラが高まって調子が悪くなります。時には、気分が高ぶって泣きわめいたり、リストカットなどをしてしまうことも。調子の悪い時間帯が、定型うつ病と全く逆になります。

 睡眠の面では、定型うつ病は夜、布団に入っても、なかなか眠れず、夜中にも度々目が覚める上、朝早くに目が覚めてしまい、そのまま眠れません。特に早朝に目覚める傾向が強く、慢性の睡眠不足になりがちです。

 一方、非定型うつ病は1日の睡眠時間が10時間以上にも及ぶほど、「過眠」傾向にあります。睡眠時間が長いにもかかわらず、昼間に眠気を感じ、いくら寝ても寝足りないような気がします。

 食欲の面では、定型うつ病は性欲などを含めた基本的な欲求が低下するのが特徴で、食欲が落ちて食べる量も減るため、やせて体重が落ちます。

 一方、非定型うつ病は食べることで、気持ちを紛らわしたり、甘い物が無性に欲しくなって発作的に食べる「過食」傾向がみられ、体重も増加しがち。

 また、非定型うつ病では、疲労感を通り越して、手足に鉛がついたように、体が重くなる「鉛様まひ」を示すこともあります。

 発症する人の性格を分析すると、定型うつ病では、きちょうめんで、まじめで、完壁主義な人ほどなりやすい傾向があります。

 一方、非定型うつ病の場合には、相手からどう見られるかを気にし、他人の顔色をうかがう性格傾向がみられ、特に他人から拒絶されることに過敏になる「拒絶性過敏」が重要な特徴となっています。他人の何気ない一言であっても、過剰な気分の落ち込みの引き金となりやすいのです。

 その根底には、他人の評価が気になってしょうがないといった不安があり、子供のころから、常に相手のいうことを尊重し、従うために「いい子」といわれていた人、人見知りがある人、人前で上がりやすい人、うまく自己主張するのが苦手な人がなりやすい傾向にあります。

 原因を分析すると、定型うつ病では、脳内で情報交換をしている神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが少なくなるために、発病するといわれています。非定型うつ病でも、神経伝達物質のノルアドレナリンが関係していると見なされていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。

 非定型うつ病の日常生活における支障としては、他人の批判を過剰に受け止めてしまうために、親密な人間関係を築くのが困難であったり、他人の批判を恐れるあまりに、人間関係に気を使いすぎてしまうことが挙げられます。過眠傾向にあるため、朝、起きれなくて、約束の時間に遅刻してしまうこともあります。

 また、病気の影響で、大脳の前頭葉の血流が悪くなりやすくなります。ここは、思考や情動をつかさどっていて、人間が人間らしくあるために大切な部分。血流が悪くなると、前頭葉がスムーズに機能しにくくなって、心身の不調として出ることがあります。

■薬物療法と心理療法による治療

 非定型うつ病の症状が2週間以上続き、つらい時には、我慢をせず精神科や心療内科へ相談に行き、適切な治療を受けましょう。

 病院によっては、定型うつ病と非定型うつ病を区別して診断しないこともありますが、治療法や対処法に異なる部分があるため、注意が必要です。そもそも、この非定型うつ病がうつ病の一種として認識されたのは、日本では近年のこと。従来は、適切な治療や投薬が行われないために治りづらく、ほかの病気と診断されることも多かったのです

 非定型うつ病の治療には、薬の服用による薬物療法が行われるほか、生活のリズムを改善するための生活指導や、考え方を整理し捕らえ直すための心理療法が行われます。

 時には、入院による治療が行われることもあります。うつ病には、定型・非定型を問わず自殺の危険性があり、特に非定型では、人間関係のやり取りの中で感情が激し、衝動的に自殺を完遂してしまう恐れがあることに、対処しなければならないためです。 

 非定型うつ病に使われる薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。通常、定型うつ病に多く使われるパキシルなどのSSRIだけでは、非定型うつ病にはあまり有効でないことがわかっているために、薬を組み合わせるのです。

 薬を飲むことで、落ち込みやイライラが改善され、気分が安定して楽になりますが、治るまでには1年は続けて飲むことが必要です。

 薬による治療に加え、認知行動療法などの心理療法的なアプローチも重要です。とりわけ、認知行動療法には薬物療法と同等の効果があることが確認されています。

 非定型うつ病の人は、マイナス思考に捕らわれがちで多角的な思考ができず、突発的な問題が起きると、状況や自分の気持ちを整理することが困難になってしまいます。気分の不安定さを解消するために、ギャンブルや買い物、セックス、お酒などに依存する傾向もあり、そうしたものにのめり込む罪悪感から自傷行為を繰り返してしまうことも。

 そこで、認知行動療法の助けを借りて、自分の考え方の癖を知り、よりよい行動に修正する方法で、カウンセリングやグループ療法を通じて、ストレスへの有効な対処法や人間関係の結び方を身に着けます。この認知行動療法は、前頭葉の働きを高めるのにも効果的な治療法です。

 認知行動療法のプログラム例としては、親など大切な人から愛されているという認知の増強・確認、劣等感の除去、自己主張のスキル、自己の客観視の向上、ストレスヘの対処、情動コントロールがあります。

 しかしながら、休養を取り、薬を第一とした適切な治療を受けることで回復していく定型うつ病と異なり、非定型うつ病の場合は悪循環を繰り返すことが多く、なかなか治りにくいのが現状です。

 治療を続けるうちに、ふとしたきっかけによって、よくなることもあります。人間関係で不快な刺激が少なくなるなど、人によってそのきっかけはさまざま。職場の人間関係が影響する場合、異動を申し出たり、転職を試みるのも一つのきっかけになります。

 症状が治まっても、うつ病は再発しやすい病気ですので、薬を飲み続けることが大切。自己判断で薬をやめるのは禁物です。治癒には平均3年かかるとされるので、焦りも禁物。

 そして、医師による治療も大切ですが、この非定型うつ病の改善には、普段の生活習憤も重要なカギを握っています。 

■非定型うつ病を改善する生活のヒント

 非定型うつ病では過眠傾向になるため、昼夜が逆転し、生活リズムが乱れがちになります。生活のリズムを乱れたままにしておくと、憂うつ、イライラなどの気分や、体の重さといった症状がますます悪化してしまいます。

 規則正しい生活を心掛け、軽い運動を行う。この当たり前のことが、気持ちを安定させる一番の特効薬となります。とりわけ、仕事に行くなど昼間は目的を持って活動することが、リズムの乱れを改善するために大切です。

 具体的な方法を、以下に紹介します。

規則正しい生活をする

 朝はきちんと起きて、3度の食事を食べ、夜は12時前には寝るという規則正しい生活を心掛けましょう。人間の体内リズムは、朝起きて光を浴びることで調整されます。目に光が入ると、脳の松果体から出るメラトニンという睡眠物質の分泌が抑制され、体内リズムがリセットされることによって、1日およそ24時間で一巡する体のリズムが整います。 

可能な場合は仕事に行く

 仕事に行ける場合には、多少つらくても時間どおり会社に出勤し、業務に取り組むことも必要です。やらなければいけないことがあり、それに取り組むことが、精神の覚醒(かくせい)を促すため、体内リズムを正常にしてくれるのです。

毎日、何か目標を持って生きる

 仕事を持っていない人の場合には、朝起きたら「今日はこれをしよう」、「何かをやり遂げよう」と、その日の目標を持って、毎日を生きることが大切。「この本を読もう」など簡単なことでかまいません。自覚を持つことが、昼間の覚醒を促します。

掃除や片付けなど、整理整頓を心掛ける

 体を動かす方法としては、掃除や片付けなどの整理整頓(せいとん)もお勧め。適度な運動になるだけでなく、「今日は部屋の掃除をする」ということが目標になって、リズム調整に役立ちます。きれいになると達成感もあり、周囲の人に感謝されることで人間関係の改善にもなり、気分がよくなります。

外に出て散歩などで体を動かす

 1日1回は外に出て、太陽の光を浴び、公園を散歩するなど体を動かすようにします。ウォーキングなどの軽い有酸素運動をすると、脳では気分を安定させる脳内物質の分泌が増え、心も体もリラックスします。

身近な人がうつ病になったら

 うつ病のタイプによって、接し方が違います。典型的なうつ病である定型うつ病の場合は、とにかくゆっくりと体を休め、休養を取ることが必要。周囲の人が「頑張れ」と言葉を掛けたり、励ましたりすると、本人が自分自身を追い込んでしまうため、よくありません。

 逆に、非定型うつ病の場合は、少し励ますことがかえって本人のためになります。「決まった時間に起きて会社に行こうよ」、「1日1万歩を目指して歩いてみたら」など掛ける言葉は優しくても、心は厳しく持ちながら、本人の気力を奮い立たせるように接することが大切です。

 また、非定型うつ病では、周囲の人に助けを求めるサインとして、衝動的に自殺を企てる恐れがあります。不安や焦燥感が強い時は、しっかり見守ることが大切になります。


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アペール症候群

■頭の形と顔貌が特徴的で、手足の指の癒合がある先天性疾患

 アペール症候群とは、複数の特定の奇形を持っている先天性の異常疾患。エイパート症候群とも、尖頭(せんとう)合指症候群とも呼ばれます。

 アペール症候群の主な症状は、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症、合指症、合趾(ごうし)症で、頭の形と顔貌(がんぼう)が特徴的で、手足の指に癒合などの奇形があります。症状が似ているため、クルーゾン病と同一視する場合もあります。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 合指症は、隣り合った手の指がくっついている疾患。アペール症候群における合指症の場合、人差し指から小指までの4本の合指、または親指から小指まで5本全部の合指の2つのパターンに大きく分かれるようです。手の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。

 合趾症は、隣り合った足の指がくっついている疾患。5本全部の指がくっついていることが多いようです。合指症と同じく、足の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。そのままでも歩行に問題はありません。

 水頭症のほか、聴力の障害、精神発達障害を伴うこともありますが、ほとんどは知能の発達に異常はありません。発生頻度は1万6000人に1人とされ、典型的な症状を持つ発症者は常染色体性優性遺伝をすることがわかっています。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ないものの、アペール症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■アペール症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしい、手足の指が癒着していると心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 アペール症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。 水頭症予防の手術が必要になる場合もあります。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。アペール症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 手足の指の癒着は、皮膚だけでなく骨まで癒着している場合、機能を損ねないように慎重に分離手術が行われます。歯列矯正を行う時には、アペール症候群の場合は健康保険が適用されます。


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一過性脳虚血発作

■脳に行く血液の流れが一過性に悪くなり、発作が起こるもの

 一過性脳虚血発作とは、突然、手足のしびれやまひ、視力障害などの発作が起こり、短時間のうちに回復して、後遺症状を残さないもの。脳梗塞(こうそく)の発作を起こす以前の前触れ症状として、重要な発作です。

 動脈硬化を起こしている血管壁から、小さな血液の塊がはがれて、もっと細い脳の血管の一部に引っ掛かって症状が起こります。脳の血管が詰まると、その部分の組織の循環と代謝に障害が起こり、機能が停止します。脳の機能はそれぞれの部位で違うので、損なわれた部位により症状は違ってきます。短時間のうちに、血液の塊が溶けてしまうか、副血行路が形成されるために、発作は一過性ですみます。

 そのほか、血圧が急に著しく低下すると、脳に血液が十分いかなくなり、一過性の脳虚血発作を起こすこともあります。この場合は、急性の出血や心筋梗塞、不整脈など、ほかの因子が作用している場合も少なくありません。

 症状としては、一過性の片側だけの手足まひである片まひ、手足の一方だけのまひである単まひ、意識消失発作、失語症、半身知覚鈍麻、視力障害、めまい発作などが現れます。これらの症状は、普通は数分から数時間、長くても一昼夜くらいで、後遺症も残さずに消えてしまいます。

 しかしながら、このような発作を繰り返しているうちに脳梗塞に移行するので、必ず医師の治療を受けることが必要です。一過性脳虚血発作があった場合、約10パーセントが1年以内に、約30パーセントが5年以内に脳梗塞を発症すると見なされています。

■一過性脳虚血発作の検査と診断と治療

 発作の最中に診察を受けることはほとんどないため、多くは発作後、病歴から診断することになります。脳動脈硬化のあることが、この疾患の条件です。診断には頸(けい)動脈の超音波ドプラー検査が有用で、血管の内中膜の厚さや、動脈硬化の指標になるプラークの状態を調べます。血管の病変が原因の一過性脳虚血発作では、詰まりの源になる脳血管の病変を調べることが重要で、脳血管撮影を行い、その狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)の部位とそれらの程度をみます。

 拡散強調画像MRIは、急性期の脳梗塞の有無をみるのに有用です。頸部から血管の雑音を聴き取ることもあります。心疾患が疑われる場合には、心エコー検査を行います。

 2週間以内に4回以上の発作がある場合、2週間以内に頻度、持続時間、重症度が急速に増している場合、心臓の異常が閉塞の原因と考えられる場合は、早期入院が必要です。

 一過性脳虚血発作は多くの場合、診察時には症状が治まっているので、再発予防が重要です。そのためには、脳梗塞の危険因子となる高血圧、糖尿病、高脂血症の管理、禁煙指導、心疾患の治療、経口避妊薬の中止、運動指導などを行います。

 再発予防のための薬物治療としては、発作を繰り返すような場合には、抗凝固剤が使われます。この薬物療法は、最低6カ月、通常は1〜2年は継続する必要があります。また、血管撮影によって脳の血管に狭窄や閉塞が確かめられた場合は、手術によって取り除くこともあります。


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過眠症

■突然に起きる強い睡眠発作を中核症状とする神経疾患

 過眠症とは、突然に眠り込んでしまう激しい睡眠発作を中核症状とする神経疾患。ナルコレプシー、居眠り病とも呼ばれます。

 夜の睡眠は十分に取れていても、昼間、急に睡魔が襲ってきて自分では抑制できず、眠ってしまいます。会話中、車の運転中、食事中、はたまたセックスの最中など、通常では考えられない状況で、突然、すーっと眠り込んでしまうといった具合です。

 睡眠発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下。意図的に短い仮眠を取った時には、すっきりと目覚めます。この睡眠発作は、ノンレム睡眠を経過せずに、いきなりレム催眠に入るのが特徴です。

 過眠症のもう1つの特徴は、脱力発作(情動脱力発作、カタプレキシー)です。笑ったり、喜んだり、怒ったり、驚いたり、自尊心がくすぐられたりなどの突発的な感情が誘因となって、全身の脱力発作が起こって力が抜け、物を落としてしまったり、ろれつが回らなくなったり、数秒~数分間、筋肉がまひしてその場に崩れ込んでしまったりします。

 意識ははっきりしているし、見たり聞いたりもできますが、ただ動けないだけです。この脱力発作は、レム睡眠に入ると筋肉の緊張が完全に消えることと似ています。

 ほかに、睡眠まひ、入眠時幻覚を伴います。睡眠まひでは、寝入ったばかりや目が覚めた直後に、体を動かそうとして動かせない状態になります。いわゆる金縛りと呼ばれる状態で、開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができません。本人は非常な恐怖に駆られますが、他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、まひは数分後には自然に治まります。

 入眠時幻覚では、睡眠発作により眠り込んだ際や、夜間に寝入った直後、まれに目覚めた際に、現実感の強い幻覚、幻聴を経験します。これらの幻覚、幻聴は正常な夢に似ていますが、もっと強烈で鮮明です。

 夜間は、頻回の中途覚醒(かくせい)や、睡眠まひ、幻覚を体験するなどのため、睡眠も妨げられます。

 日本人の過眠症の有病率は、1万人当たり16人~18人といわれています。すべての人種において発病がみられる中で、日本人の有病率は世界で最も高く、欧米では1万人に2~4人といわれています。

 家族内に起こる傾向がありますが、原因は不明です。過眠症のほとんどは通常、思春期から青年期にかけて発症するため、脳の性的成熟と関係があるとも考えられています。また、オレキシンという視床下部から分泌される神経伝達物質の欠乏と関係があるとも考えられています。

 症状は一生涯続きますが、症状のすべてが現れる人は全体の約10パーセントにすぎず、大部分の人は2、3の症状が出るだけです。

■過眠症の検査と診断と治療

 昼間に強い眠気を感じる時は、内科や睡眠外来、神経内科を受診します。

 診断は症状に基づいて行われますが、別の疾患が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠まひと幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こり得ます。診断が確定しない時は、脳波検査を行って脳の電気活動の記録を取ります。過眠症があると、寝入りばなにレム睡眠の活動が起きていることを示す典型的な波形が現れます。正常であれば、レム睡眠は睡眠サイクルの後のほうで起こります。画像診断で見付かるような異常によっては、過眠症は起こりません。

 根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。中枢神経刺激剤を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリンアンフェタミン、デキストロアンフェタミンなどが使用されます。中で、モダフィニルは他より副作用の少ない薬剤です。脱力発作や睡眠まひの症状を軽くするためには、イミプラミン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ剤、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使用されます。

 イライラ、異常行動、体重減少などの副作用が起こらないように薬剤の量の調整が必要なため、薬物療法を行っている人の体調は慎重に監視されます。

 抗うつ剤によって夜の眠りを安定させ、中枢神経刺激剤を朝と昼に服用することにより、日中の睡眠発作をほとんどなくすことができます。しかし、根気よく治療を続けることが必要で、長い年月がたつと症状がかなり軽くなり、多くのケースでは薬剤の量を減らすことができるようになります。

 治療では、薬剤によって症状を軽減するとともに、生活習慣の改善も図ります。大事なのは規則正しく生活をし、夜にしっかり睡眠を取ることで、睡眠表をきちんとつけることにより、自分の睡眠生活が理解できるようになります。日中に15〜20分程度の短い昼寝をこまめに取ると、睡眠発作の予防効果があります。


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顔面神経まひ(ベルまひ)

■顔の筋肉の運動がまひする疾患

 顔面神経まひとは、顔面神経がはれて圧迫され、顔の筋肉の運動がまひする疾患。顔面神経は、運動神経以外にも舌の前3分の2の味覚を伝達したり、音量を調節する小さな筋であるアブミ骨筋を支配しています。

 男女差、年齢層に関係なく、急性あるいは亜急性に発症します。原因疾患が明らかな症候性顔面神経まひと、明らかな原因が不明な特発性顔面神経(ベルまひ)とに分けられます。

 症候性顔面神経まひの原因疾患として多いのは、単純性疱疹(ほうしん)、帯状疱疹などのヘルペスウイルス感染症で、一般的には口唇ヘルペスを患ったことがある人が突然の顔面神経まひで発症します。ほかには、腫瘍(しゅよう)や代謝疾患が原因となる場合もあります。

 特発性顔面神経まひの原因はいまだ不明ですが、考えられる可能性としてはウイルス感染、アレルギー、局所浮腫、寒冷刺激などがあります。いずれにしても、顔面神経は顔面神経管と呼ばれる骨で取り囲まれた狭いトンネルを通って脳から外に出ますが、何らかの原因で顔面神経がはれると、顔面神経が圧迫されてまひが現れると見なされています。

 症状は普通、片側だけに起こります。まれには、両側に起こります。侵された側の表情筋が緩むために、顔がゆがむ、額にしわが寄らず仮面様の顔付きになる、口の一方が曲がって食べ物やよだれが出てしまう、目が完全に閉じられない、などの症状が現れます。

 そのほか、まひ側の舌の前方3分の2の味覚障害を伴うこともあり、物を食べた時、金属を口に入れたような感じがしたりします。まひ側の耳が過敏になり、音が大きく響くように感じることもあります。目が閉じにくいために目を涙で潤すことができず、夜間などに角膜が乾燥しやすくなるため、角膜に潰瘍(かいよう)ができることもあります。

 帯状疱疹(ほうしん)が耳たぶや内耳にできた場合は、激しいめまい、耳鳴り、歩行障害、味覚の消失とともに、顔面のまひが起こります。

■顔面神経まひの検査と診断と治療

 基本的には外来で治療可能な場合が多いのですが、検査が必要な場合、診断がはっきりしない場合、顔面神経まひの程度が強い場合などでは、入院が必要です。

 顔面神経まひの診断は、典型的な顔の表情から比較的容易です。しかし、原因となる疾患がある場合、両側に同時に発症したり何度も繰り返す場合などは、MRIなどの画像診断が必要です。サルコイドーシス、ライム病などの珍しい疾患で起こった可能性が疑われる場合には、血液検査などの検査が必要になります。障害の程度や回復の正確な評価のために、筋電図や誘発電位検査が行われることもあります。

 普通の顔面まひは、数週間で自然に回復することが多いものです。しかし、急性期にはステロイド剤、ビタミンB複合剤などを処方して治療を行います。マッサージや電気治療も行われます。また、目が閉じにくい場合、人工涙液を点眼して角膜を保護します。

 帯状疱疹の治療では、原因療法として抗ウイルス剤、対症療法として消炎鎮痛剤が処方されます。抗ウイルス剤は、ウイルスの増殖を阻止して治癒を早めます。神経がまだ破壊されていない初期の段階で使用すれば、帯状疱疹後神経痛の予防が期待できます。また、痛みがひどい場合は、神経ブロックを行って痛みを止める治療法が有効です。神経ブロックとは、局所麻酔剤を用いて、神経の流れを一時的に遮断する治療法です。この治療法によって血液循環がよくなるとともに、神経の緊張が和らぎ、その神経が支配している領域の痛みを止めることができるのです。

 帯状疱疹が原因で起こった場合には、比較的、経過が長く、顔面まひがある程度残ることが多いようです。また、再生した顔面神経が本来の支配先と異なった筋を支配してしまった場合には、口を閉じると目が一緒に閉じたり、熱い物や冷たい物を食べた時に涙が出たりする異常連合運動が起こることがあります。
 顔面神経まひでは、リハビリテーション療法も重要です。家庭でできるマッサージとしては、朝夕30分間ほど、手で額や目の周りの筋肉をゆっくりと回すようにしてマッサージしたり、まひした口角を引っ張り上げるようにしたり。顔面の筋肉を働かせるために百面相の練習をしたりすると、効果があります。


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ギラン・バレー症候群

■筋肉を動かす運動神経の障害で、急に手足が脱力

 ギラン・バレー症候群とは、広範囲に渡って末梢(まっしょう)神経を侵してくる多発性神経炎の一種で、ウイルスなどの感染が関係している自己免疫疾患。急性感染性多発性神経炎とも呼ばれています。

 筋肉を動かす運動神経の障害のため、急に両手両足に力が入らなくなります。小児まひ(ポリオ)が発生しなくなった先進国においては、脳卒中を除けば、急に手足が動かなくなる原因として最も多い疾患であることが知られています。人口10万人当たり年間1〜2人発症し、日本では少なくとも年間2000人以上発症していることが推定されています。日本では特定疾患に認定された指定難病。

 慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど多くの自己免疫疾患は女性のほうが多いのですが、ギラン・バレー症候群では男性のほうがかかりやすいと見なされています。乳児から高齢者まで、どの年齢層でも発病し得ますが、遺伝はしません。

 発症の原因は、ウイルスなどを排除して自分を守るための免疫システムが異常となり、運動神経、感覚神経など自分の末梢神経を攻撃するためと考えられています。最も症状の強いピークの時には、約3分の2の発症者の血液中に、神経に存在する糖脂質という物質に対する抗体が認められ、これが自分の神経を攻撃する自己抗体として働いている可能性があります。そのほかに、リンパ球などの細胞成分やサイトカインなどの液性成分も、関係していると考えられています。

 約7割ほどの人が発症の前に、風邪を引いたり、下痢をしたりしています。軽い発熱、頭痛、咽喉(いんこう)痛、下痢が数日続いた後、1週間前後を経て、急に手足の脱力が始まってくるのが普通です。片側の手足が動かなくなる脳卒中と異なり、両手両足が動かなくなります。大部分の人は運動神経だけでなく感覚神経も傷害されて、手足の先のしびれ感もしばしば伴います。

 顔面の筋肉や目を動かす筋肉に力が入らなくなって、目を閉じられなくなったり、物が二重に見えたり、ろれつが回らなくなったり、食事を飲み込みにくくなったりすることもあります。手足のまひの程度は発症してから1〜2週以内に最もひどくなり、その後は改善していきます。重症の場合には、寝たきりになったり、呼吸もできなくなります。

■ギラン・バレー症候群の検査と診断と治療

 ギラン・バレー症候群では、発症してからなるべく早い急性期に免疫グロブリン大量静注療法、あるいは単純血漿(けっしょう)交換療法を行うと、ピークの時の症状の程度が軽くなり、早く回復することがわかっています。単純血漿交換療法では、人工透析のような体外循環の回路に血液を通して、血液を赤血球、白血球などの血球成分と、血球以外の血漿成分に分けます。自己抗体を含む血漿成分を捨てて、ウイルスが混入していない代用血漿と自分の血球を体内に戻します。

 重症の場合は、まひが次第に体の上のほうに広がって、呼吸まひを起こすようになるので、呼吸管理に気を付ける必要があります。ピークの時には人工呼吸器を用いたり、血圧の管理を行ったりといった全身管理が重要であり、回復する時期にはリハビリテーションも大切となります。

 症状は遅くとも1カ月以内にピークとなり、その後徐々に回復に向かい、6~12カ月で多くの発症者はほぼ完全によくなります。比較的、良性の疾患ながら、何らかの障害を残す人が約2割いて、急性期やその後の経過中に亡くなられる人が約5パーセントと報告されています。再発率は多くても、5パーセント未満と見なされています。


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自律神経失調症

●自律神経とは?

 「頭痛がする」「体がだるくて、つらい」「動悸が激しい」など、いろいろな症状があるのに、病院で検査をしても何も異常がない――。

 こんな時、医師から「自律神経失調症」と診断されることがあります。自律神経のバランスが失調し、調整機能が働いていない状態のことをいいますが、では、自律神経とはどういうものなのでしょうか。 

【体性神経と自律神経】

 私たちの身体の隅々まで張り巡らされている神経には、大きく分けて脳と脊髄からなる中枢神経と、中枢神経から出ている末梢神経に分けられます。末梢神経には、「体性神経」と「自律神経」の二つがあります。

身体機能の調整 

○体性神経

 体性神経は、体表でキャッチした「熱い」「痛い」などの知覚を脳に伝えたり、口や手足などの体の各部分を自分の意思で動かす働きをしています。会話をする、食べる、走るなどは、体性神経によるものです。 

○自律神経

 自律神経は自分の意思とは無関係に、体表や身体の内部の刺激に反応して身体の機能を調整する働きをしています。走ると“ハ~ハ~”と激しく息をして心臓がドキドキとするのは、自律神経によって呼吸や心臓の動きが速くなったためです。

●バランスの失調

 自律神経の交感神経と副交感神経という、まったく正反対の働きをする二つの神経は、意思とは関係なく自動的に働いて体の環境を調整していますが、外部の環境や精神的な刺激によってバランスを崩すことがあります。

 自律神経のバランスが崩れることによって、いろいろな症状が現われる要因として、次のことが考えられます。まず、自律神経を支配しているのは視床下部で、これは本能や感情をつかさどる大脳辺縁系に支配されています。そこで、外部の環境や精神的な刺激などによって、本能や感情を抑制してしまうことは、視床下部を通じ自律神経へと影響を及ぼすためです。自律神経の交感神経や副交感神経が正常に働かず、どちらかが強く働きすぎたり、弱くなったりすると、体の各器官に症状が現われるようになるのです。

●病名ではなく診断名

 ここで注意しなければならないのは、「自律神経失調症」とは「頭痛がする」「だるくて辛い」「動悸が激しい」などいろいろな症状があるのに病院で検査をしても何も異常がない場合につけられる<診断名>で、<病名>ではありません。さまざまな要因によって、体を自動的に調節している自律神経のバランスが崩れた状態を指しているのが、<診断名>です。

 つまり、原因となる問題を解決していけば、体に現われていた症状が次第になくなっていくのも、自律神経失調症の特徴です。

●どんな症状が現れるのか?

 症状には、現れ方の強弱や期間など個人差があり、さまざまですが、主な症状を挙げます。 

【全身的な症状】

 自律神経を支配している視床下部の変調によって、全身的な症状が現れます。例えば、「体がだるい」「疲れがとれない」「眠れない」「食欲がない」など。 

【体の各器官に現れる症状】

 頭痛、頭が重い、動悸、胸が苦しい、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、吐き気、胃もたれ、便秘、下痢など、さまざまです。

●自律神経失調症を防ぐには?

 自律神経失調症から身を守るには、第一に自律神経が失調状態にならないようにストレスを避ける、あるいは解消することです。そのためには、不規則な生活を改めたり、ストレスを解消するための休養を十分にとったり、リラックスできるようなストレス解消法を持つことです。

【生活のリズムを夜型から朝型へ変える】

 自律神経の二つの神経は、一日の中で働く時間帯がだいたい決まっています。交感神経は体を活発に動かすときに働く「活動型・アクセル型神経」で、おもに日中働きます。一方、副交感神経は体を休めて体力を回復させるときに働く「休息型・ブレーキ型神経」で、おもに夜間働きます。

 生活リズムが夜型になっている人は、副交感神経が働くことで体力を回復させる時間帯に交感神経が働いている状態です。体が求めているリズムに逆らうことは、さまざまな症状が現われる原因です。就寝する時間を少しずつ早めて、朝起きることを心がけてリズムを正常に戻すようにしましょう。

【栄養バランスと時間帯を考えた食事をとる】

 精神と肉体が健康的であるには、まずは食事が大切です。空腹を満たすためだけに、ファストフードや菓子・清涼飲料水ばかりを摂っていては、体を維持する栄養バランスが保てません。外食が多くなりがちな人は、品数の多い定食にしたり野菜類をとるなど、自分なりの工夫をしたいものです。

 また、食事をとる時間帯についても、寝る前に食べることは胃に負担をかけて翌朝の調子を崩すことになりかねません。夕食はなるべく早めにとることを心がけましょう。空腹が強いときは温めたミルクなどをとることもよいでしょう。

【ストレスをためない方法を見付ける】

 仕事や人間関係などでストレスがたまるのは、避けようもありません。でも、そのストレスが少しでも小さくなるような自分なりの方法を見付けることが、「ストレス解消法」です。

 好きな音楽を聴く、本やマンガを読む、散歩をする、気の合った仲間とおしゃべりをする、スポーツをする……、いろいろな方法があります。どれか一つだけに絞らず、「今日は音楽を聴く気分」「今は体を動かそう」など、その時々の気分や体調に合わせて柔軟な姿勢で自分の体や心を「お疲れさま」と、いたわりほぐすようにしたいものです。

【専門家にかかる】

 つらい症状があってもどこも異常が見付からない……、そんな状態は周囲の人になかなか理解されず、「怠けている」とか「気にしすぎだ」ととらえられてしまうことが少なくありません。

 また、頭痛や胃痛などその症状に合わせて専門の科をアチコチ巡るが、原因がわからない――ということを繰り返す「ドクターショッピング」も、見受けられます。

 そこで、自律神経失調症のようなストレスによる体の変化を診療するには、心療内科の医師や心理療法士などのカウンセラーにかかることをお勧めします。つらい症状の背景にある心理的、社会的ストレスを解消する方法を探ったり、薬剤などで症状を軽減するなどの対症療法を行うことができます。


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聴神経腫瘍

■脳の腫瘍による障害が聴神経に及び、聴力が低下する疾患

 聴神経腫瘍(しゅよう)とは、脳の聴神経の回りを鞘(さや)のように覆っているシュワン細胞から発生する非がん性の腫瘍。聴神経鞘腫(しょうしゅ)、前庭神経鞘腫、第8脳神経腫とも呼ばれます。

 聴神経には、聴覚に関係する蝸牛(かぎゅう)神経と、平衡感覚に関する前庭(ぜんてい)神経があります。腫瘍は通常、前庭神経から生じますが、前庭神経と一緒に脳から出る蝸牛神経に障害が及んで聴力の低下が生じることが多いので、聴神経腫瘍という疾患名が付けられています。

 良性の腫瘍であり、非常にゆっくりとしたスピードで大きくなります。腫瘍が成長するのに時間がかかるので、これによる症状が出現するまでには何年もかけて大きくなってきていることが多いと思われます。まれに、短期間で腫瘍が大きくなることもあります。

 聴神経腫瘍の初期症状として最も多いのは、聴力の低下。腫瘍は聴神経の回りを覆っているシュワン細胞から発生するので、まず一番に聴神経を圧迫して、腫瘍のある側の耳の聞こえが悪くなるという症状が出現します。聴力の低下は徐々に出現するため、初めのうちは本人もあまり意識しないこともあるものの、悪いほうの耳では電話の声が聞こえにくいなどの兆候があったりします。

 突然耳が聞こえなくなる突発型難聴を起こすものも、少なくありません。耳の聞こえがよくなったり悪くなったり、聴力の程度が変動することもあります。その他の初期症状として、片側の耳のみの耳鳴り、めまい、急に向きを変えるとバランスを失ったり、ふらつくなどがみられます。

 腫瘍が大きくなって、顔面神経や三叉(さんさ)神経といった脳の他の部分の神経を圧迫すると、顔面のしびれ、顔の筋肉の脱力やまひ、嚥下(えんか)障害などが生じます。

 聴神経腫瘍の原因は明らかではないものの、遺伝したりするものではありません。神経線維腫症といって特殊例として両側に腫瘍が生じるものでは、遺伝性の原因が明らかにされています。

 多くのケースでは、片側の耳の聞こえの悪さを覚えて耳鼻科を受診し、頭のCTスキャンなどの検査をして、腫瘍が見付かるという経過をとります。

■聴神経腫瘍の検査と診断と治療

 片側の耳の聞こえが徐々に悪くなってきたり、めまいの発作を繰り返すなどの症状がある場合は、聴神経腫瘍の可能性を疑って、まず耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医を受診します。

 聴力検査、音刺激に反応する脳波を調べる聴性脳幹反応、平衡機能(めまい)検査により聴神経腫瘍が疑われる場合は、頭部MRIによる画像検査が行われます。特に、造影剤を静脈に注射しながら行う造営MRI検査では、小さい腫瘍も見付けることができます。そのほかにも、頭部の単純レント ゲンや、CTスキャンの検査が行われ、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。

 治療は大きく、手術療法と放射線療法に分かれます。手術療法には、腫瘍が発生した部位や大きさ、残存聴力などに応じていくつかの手術方法があり、耳鼻咽喉科または脳外科が担当します。顕微鏡を用いた手術であるマイクロサージャリーが、行われることもあります。

 マイクロサージャリーは、耳の後ろの部分の皮膚に小さな切開を加え、顕微鏡で拡大しながら周辺の脳神経を損傷しないように注意を払って、腫瘍を摘出します。通常10日から2週間程度の入院期間が必要です。

 放射線療法には、ガンマナイフまたはリニアックによる治療法があり、腫瘍を消失させるのではなく、腫瘍が大きくなるのを抑えることを目的としています。それぞれの治療法は、聴力の悪化、顔面神経まひなど合併症に関して長所と短所があり、専門医の説明をよく聞いて選択します。

 聴神経腫瘍は比較的ゆっくり成長する良性腫瘍であるため、高齢者で腫瘍が小さい場合には治療を行わずに経過をみることもあります。


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脳梗塞

●脳梗塞の原因による3タイプ

 脳梗塞(こうそく)とは、脳の血管が詰まって血流を止めてしまうため、脳に供給される酸素や栄養が不足して、脳が十分な機能を果たせなくなる病気です。動脈硬化などがあると、脳の細動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍(しゅよう)塊などが詰まりやすくなり、ある日突然、発症します。

 この脳梗塞には「脳血栓」と「脳塞栓」の2通りがありますが、その原因によって次の3タイプに分けられます。

1、アテローム血栓性脳梗塞

 太い血管の動脈硬化が原因となります。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病による動脈硬化によって、脳の太い動脈や頚動脈が詰まるタイプで、特に睡眠時に多く発症します。現在、脳梗塞患者の3割以上を、このタイプが占めると見なされています。

2、ラクナ梗塞

 高血圧などによって、脳の細い血管が詰まるのが原因となります。梗塞部が小さいので症状が全く出ないか、出ても比較的軽いのが特徴で、特に睡眠時に多く発症します。脳梗塞患者の約4割を、このタイプが占めるとされています。

3、心原性脳塞栓

 心臓にできた血栓が血流に乗って脳に流れて行き、血管が詰まるのが原因となります。心房細動、急性心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、不整脈などにより、心臓内の血液が停滞してできた血栓や血の塊が脳血管を詰まらせて血流がストップし、脳組織が壊死した 状態に陥るので、重症の脳梗塞を起こします。

 突然の発作として起こるタイプで、日中の活動時に多く発症します。脳梗塞患者の約2割を占めると見なされ、 60~70歳代の人に多くみられます。

 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺(まひ)、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡(こんすい)などが見られます。脳血栓では、症状が数日かけてゆっくり出現することが多いのに対して、脳塞栓では突然、意識障害などが出てきます。 

 統計学的にみると、「脳梗塞」と「脳出血」、「くも膜下出血」の総称である「脳血管障害」、いわゆる「脳卒中」による死亡者数は、2004年の統計で約12万9000人。2006年現在では、脳卒中の死亡者の70パーセントが脳梗塞、20パーセントが脳出血、10パーセントがくも膜下出血となっています。食生活の欧米化などによって、30数年前には脳梗塞より多かった脳出血が減少し、最近は脳梗塞が増加しております。

 脳梗塞を含む脳卒中は、がん、心臓病に次いで、日本人の死亡原因の第3位です。しかし、3大疾病の中でも脳卒中は有病率が増加しており、突然、何かに当たったように発症する怖い病気なのです。脳卒中の「卒」には「突然」、「中」には「当たる」という意味があります。幸いにして一命をとりとめても、寝たきりになったり、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ったりする、厄介な病気でもあります。

●前ぶれ症状と治療法について

 脳梗塞は急に起きますが、発症前に30パーセントの人に一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる前ぶれ症状が現れます。

 TIAの症状としては、運動障害として、ふらふらしてまっすぐ歩けない、感覚障害として、片方の手足のしびれ、片足を引きずる、手足から急に力が抜ける、ものにつまずきやすい、知覚障害として、片方の目が一時的に見えなくなる、物が二重に見える、言語障害として、言葉がで出なかったり・理解できない、バランス感覚の障害として、急にめまいがするようになったなどです。

 一時的にでも前ぶれ症状があったら、1分でも早く脳卒中専門医を受診してください。

 医師の側でも、脳梗塞が脳血栓によるものか、脳塞栓によるものかを正確に診断するのは困難です。脳梗塞が疑われる場合、病変の起きた部位を確認するために、 CT、MRI、脳血管撮影などの検査を行います。心原性脳梗塞の場合は、心房細動が原因となるのでホルター心電図(24時間心電図)をとって調べます。

 脳梗塞の治療法としては、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

 欧米では10年以上前から、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が実施され、日本でも2005年10月より健康保険に導入されました。脳保護療法には活性酸素の働きを防止するエダラボンという薬剤を発症後24時間以内に使用すると後遺症が軽減されます。

 脳梗塞を起こした部位が1~2日するとむくみが起こるので、抗脳浮腫療法により脳浮腫の原因となる水分を取り除きます。脳梗塞になって3時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。

 脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。発症時にカテーテルを使い血管の血流を再開通させることも可能です。頚動脈の血栓内膜剥離術とバイパス手術により脳血流を改善させる手術も行います。いずれの治療法も脳の血管が詰まって壊死しかけている脳細胞(ケナンブラ)を助けることを目的としております。

●危険因子を取り除く生活改善を 

 脳梗塞を起こした人が社会復帰するまでの間に、いろいろな訓練が必要になります。これがリハビリテーションです。リハビリテーションの目的は残された機能を最大限に引き上げて、家庭復帰や職場復帰をさせるために行います。

 脳梗塞の再発を防ぐには、血液をサラサラにして血栓を作らないようにすることが重要です。そのために抗血小板薬としてアスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾールなどを用います。またフィブリンができるのを防ぐためにワルファリンカルシウムを用います。ただし、納豆を食べると薬の効果が弱くなるので、注意しましょう。

 このほか、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を管理しましょう。食べすぎないよう注意し、適度な運動、禁煙、禁酒が必要です。再発の兆候を見つけるために、1年に1回MRIやMRA、頚動脈エコーなどの検査をして画像診断で脳血管や頚動脈の状態を調べましょう。

 突然起こる脳梗塞は、さまざまな危険因子を抱えている人に、ある日発症しかねません。脳梗塞の危険因子としては、60歳以上の人、脳卒中の罹病(りびょう)歴のある家族がいる人、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている人、喫煙、大量飲酒、ストレスなどです。

 脳梗塞にならないためには、生活習慣を改善しましょう。塩分を控えめにして1日に10g以内に抑え、ナトリウムの排泄を促すりんご、枝豆、バナナ、カボチャなどの食品を積極的に摂取しましょう。血圧を下げる作用がある乳製品などの食品や、マグネシウムを含む焼きのり、昆布、ごまなどの食品も食べましょう。

 逆に、動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品は控えめにし、アジ、サバ、イワシなどに多く含まれるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を積極的にとりましょう。

 適度な運動で積極的に体を動かし、太りすぎないように注意しましょう。十分な睡眠と休養、禁煙、節酒を心掛けましょう。夏は脱水症や夏風邪から脳梗塞になる人が多いので、水分を十分補給しましょう。


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圧迫性視神経症

■頭骸骨や眼窩の中にできた腫瘍が原因で起こる視力障害

 圧迫性視神経症とは、目の情報を脳に伝える視神経が腫瘍(しゅよう)によって圧迫され、視力や視野の障害が起こった状態。その裏に大きな疾患が隠れていることが多く、脳外科的治療が必要となります。

 眼球を入れる頭蓋(とうがい)骨のくぼみである眼窩(がんか)の中に腫瘍ができたり、頭蓋骨の中に腫瘍ができた場合に、視神経が圧迫されて障害が起こります。

 眼球から後方に伸びる視神経は、後端から約30ミリのところで視神経管を経て頭蓋内に入り、間もなく視交叉(こうさ)という左右の視神経が集合する部位で50パーセントは交叉し、50パーセントは交叉せずに、視索を経て脳に入ります。この途中で、何らかの腫瘍によって圧迫されると、徐々に視神経線維に直接的な圧迫や循環障害が生じます。

 視神経を圧迫する原因となる疾患としては、甲状腺(せん)機能の異常に伴って外眼筋が腫大する甲状腺眼症、蓄膿(ちくのう)手術後の嚢胞(のうほう)や悪性腫瘍などの副鼻腔(ふくびくう)の病変、髄膜腫や頭蓋咽頭(いんとう)腫などの頭蓋内腫瘍、頭蓋内内頸動脈瘤(ないけいどうみゃくりゅう)や内頸動脈硬化症などが挙げられます。

 圧迫性視神経症の症状は、片目に現れ、数カ月に渡ってゆっくりと進行していくことが特徴です。痛みはありません。ただし、副鼻腔の腫瘍の場合は痛みを伴うことが多く、眼窩内の病変による場合は眼球突出を伴うことがあります。

 視力の障害は中心視力が低下することが多いのですが、視力が低下しないこともあります。視野の障害も中心が見えにくくなる中心暗点から、耳側か鼻側半分が見えにくくなる半盲性(はんもうせい)障害までさまざまです。

■圧迫性視神経症の検査と診断と治療

 圧迫性視神経症の多くは片目に現れ、痛みもなく、急激発症の形をとらないため、たまたま片目を閉じて見えにくいことに気付くケースがほとんどです。ゆっくりではあるものの慢性的に進行しますので、そのようなケースではできるだけ早く、眼科で精密検査を受けます。

 医師による眼底検査では、進行すれば視神経乳頭に委縮所見を示しますが、多くの場合は眼窩の中に異常はありません。片眼性の場合は瞳孔(どうこう)の対光反応に左右差があることが特徴的で、左右の動きがあまりに違うと圧迫性視神経症が疑われます。

 眼底検査、視野検査、瞳孔反応などから圧迫性視神経症が疑われる場合は、確定診断のためにCT、MRIなどの画像診断が行われます。頭蓋内内頸動脈瘤など血管性病変が疑われる場合は、MRA(MRアンジオグラフィ)や脳血管造影が行われます。

 また、蓄膿の手術歴があるか、甲状腺疾患を指摘されたことがあるかなど、十分な病歴聴取も診断の一助とされます。

 圧迫性視神経症の治療では、原因となる疾患の手術などによる治療が基本となり、脳外科や耳鼻科などとの連携がとられます。手術後は、視神経の保護目的でビタミンB12製剤(メチコバール)を内服することがあります。



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角膜炎

■黒目の表面を覆う角膜に、炎症が起こる状態の総称

 角膜炎とは、目の角膜に炎症が起こる疾患。細菌性角膜炎、流行性角結膜炎などによって角膜に炎症を来した状態を総称して、角膜炎といいます。

 角膜とは、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

 この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。 そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。

 角膜炎の原因としては、細菌、かび、ウイルス、アメーバなどによる感染症が最も多いのですが、外傷、角膜異物、重症のドライアイ。紫外線・放射線、種々の眼科手術、アレルギー性疾患、自己免疫性疾患、三叉神経や顔面神経のまひ、先天的な奇形、ビタミンB2複合体の欠乏などで生じることもあります。

 角膜炎の症状は、炎症の原因、位置、大きさなどによって異なりますが、一般的には激しい目の痛み、目の充血、視力低下、異物感、流涙、目のかすみ、まぶしさなど。角膜には三叉神経が走っているために、炎症が起きると激しい痛み、異物感が生じます。そして、炎症が進行すると角膜が濁って視力が低下していきます。ひどくなると、角膜に穴が開いて失明する危険性も伴います。角膜が一度濁ると元に戻らないため、早期に治療することが大切です。

 角膜炎は炎症を起こしている位置により、表層性、深層性、アレルギー性などいくつもの種類にわけられます。

■角膜炎の検査と診断と治療

 傷を受けた後の角膜は急速に悪化しますので、できるだけ早く治療すべきです。 「そのうちに治るだろう」と安易に考えて放って置くと、角膜潰瘍(かいよう)という失明に至る疾患に進行してしまいます。

 眼科の専門医による角膜炎の診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して、角膜炎の診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。感染性の角膜炎の可能性がある場合は、組織を採取して調べる生検を実施します。
 感染性の角膜炎に対しては、適切な治療を迅速かつ集中的に行う必要があります。治療の原則は、原因となる病原体を同定し、感受性を示す抗菌剤を必要かつ十分に投与することです。ただし、病原体の同定や薬剤感受性試験結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因菌を想定して、治療を開始する必要があります。通常は点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては抗菌剤の結膜下注射、点滴、内服などを併用することもあります。

 角膜炎の原因が非感染症の場合は、ステロイド剤の点眼や角膜保護治療剤、抗生剤などが使用されます。原因がビタミンB2複合体の欠乏の場合は、ビタミンB2の内服、点眼が行われます。

 症状が軽い場合は、短期間で治って予後も良好です。 治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

 角膜炎の治療中は、風、ゴミ、光などの刺激から目を守ることが重要です。


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眼精疲労

■目の症状と全身症状が出現した状態

 眼精疲労とは、いわゆる疲れ目のこと。読書や自動車の運転などのように目を持続的に使った際に、目の疲労感、重圧感など目の症状だけでなく、疲労、頭痛、肩凝り、吐き気、倦怠(けんたい)感、いらいら、めまいなどの全身症状が起こり、休息や睡眠を取っても十分に回復し得ない状態をいいます。

 最初は目が重い感じがしますが、目が痛くなったり、かすんできたり、まぶしくなったり、じんじんしたり、赤くなったり、涙が出たりします。

 眼精疲労で体に症状が現れる理由はよくわかっていませんが、物が見にくくなるために、よく見ようとして不自然な姿勢を取るのが肩凝りなどを引き起こすということは、容易に考えられます。また、視力が低下すれば、目を凝らしたり、集中力をより高める必要があることによる緊張の連続が、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感の原因かもしれません。精神的ストレスによって、目と体の不調が同時に起きている可能性もあります。

 眼精疲労をもたらす原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が、多く見受けられます。

 眼精疲労の原因は、大きく4つに分けて考えられています。目に原因があるもの、全身疾患に原因があるもの、精神的なもの、環境的なものです。

●目に原因があるもの

 屈折異常によるもの

 遠視、近視、乱視があったり、両目の屈折度に著しい差がある場合に、物が適正に見えないため、それを無理に調節して見ようとして、目を無理に働かせることによって眼精疲労が発生します。眼球の内部では、フィルムに相当する網膜に何とかピントを合わせようとして、レンズに相当する水晶体の厚さを調節する筋肉である毛様体の緊張が続くからです。

 遠視の場合は、調節力が低下し始める30歳代後半~40歳代にかけて起こりやすいのですが、20歳代でも起こります。

 近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないために眼精疲労が起きることも、少なくありません。例えば、眼鏡屋で近視の眼鏡を作る時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために眼精疲労を訴える人を時々見掛けます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。

 調整力の低下によるもの

 調整力、つまり近くの物をはっきり見る力が低下している時も、眼精疲労が発生します。老視(老眼)の場合がそうですが、若い人でも起こります。特に、老視は40歳代半ばから60歳ぐらいまでの間に急速に進み、この年齢層は眼精疲労を訴える人の年齢層のピークと一致します。

 調整力が低下しているために目が疲れる場合には、遠用鏡と近用鏡を両方作り、使いわける必要があります。

 斜視、斜位によるもの

 物を見る時には両目が連動して動き、わずかに寄り目になって視線を一点に合わせます。両目の視線が一致せずに左右別々の方角を向いてしまうことを斜視といい、眼精疲労の原因になります。一方、ふだんは両眼視できても、片目を手で隠すなどすると目の位置がずれる状態を斜位といいます。

 斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって眼精疲労は起こりませんが、斜位の場合は両眼視をしようと努力を強いられるために、眼精疲労が現れやすくなります。水平方向の眼位(目の位置)の異常よりも、上下方向の眼位の異常のほうが、左右の目に映った像を一つにまとめて見る融像という働きの幅が狭いために、眼精疲労を起こしやすくなります。

 程度が強い斜位は手術が勧められますが、比較的軽い場合には、目を使いすぎないようにし、プリズムの眼鏡で斜位の矯正をすることもあります。

 不等像視によるもの

 左右の視力差が大きく、それを無理にレンズの度が相当違う眼鏡で矯正している場合、左右の目に感じる映像の大きさが異なる不等像視によって、眼精疲労が起こります。この場合は、コンタクトレンズにすると眼精疲労は起こりにくくなります。

 その他の目の病気によるもの

 逆さまつ毛、結膜炎、角膜炎などによっても、眼精疲労が起こります。最近では、特にパソコンなどを使用する機会が増えたため、VDT(Visual Display Terminal:画像情報端末)作業によるドライアイが原因の眼精疲労が増えています。

 一連の細かい操作が必要となるVDT作業による目の疲れは、テレビを見ているのと比べものになりません。しかも、VDT作業中は、まばたきの回数が極端に減ります。その結果、涙が蒸発して、眼球の表面の角膜や結膜が乾燥する疾患であるドライアイになりやすくなります。

 緑内障も、眼精疲労の原因になります。網膜の視神経が障害されて視野が狭くなる疾患が緑内障で、初期には調節力が低下してくることがあり、老視が早くきたかと思い違いすることがあります。

 また、緑内障の一種である慢性閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障の場合は、時々、霧がかかったように見えたりして眼精疲労と感じることがあります。緑内障をしっかり治療せずにいると、失明することもあります。緑内障の人は眼球の内圧である眼圧が高い場合が多く、眼圧が高い時には頭痛が起きやすくなります。

 白内障も、水晶体が濁るために視力が低下したり、まぶしさを感じたりして、眼精疲労の原因となります。白内障は手術で治せますが、手術後に少し見え方が変わるので、それが眼精疲労を起こすこともあります。

 まぶたが垂れ下がってくる眼瞼(がんか)下垂も、視野の上のほうが見えなくなるので、 物を見る時に頭を後ろへ反らすなどしなければならず、眼精疲労の原因になります。

●全身疾患に原因があるもの

 全身疾患によっても、眼精疲労が起こります。高血圧、低血圧、糖尿病、バセドウ病、貧血、自律神経失調症、月経異常、更年期障害、風邪、インフルエンザなど、さまざまな疾患で眼精疲労が発生します。

●精神的なもの

 職場での不適合、心身症、神経症、うつ病などによっても、眼精疲労が起こります。ストレスが強くなると、不安感が異常に強まったり、イライラして落ち着かなかったり、眠れないといった精神的なことに影響が現れる一方で、体に対しても、高血圧、血行不良、胃潰瘍(かいよう)といった多様な病気を引き起こす一つとして、眼精疲労が起こることがあるのです。

●環境的なもの

 最近注目されているVDT作業による眼精疲労のほか、紫外線や赤外線、過度の照明などの光刺激による眼精疲労があります。また、機械的刺激によるものとして、エアコンの風やごみなどがあります。

 化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、近年では、新築の家などで起こるシックハウス症候群が注目され、住居の建材に含まれる化学物質などの影響による体調不良と眼精疲労の関係も指摘されています。 

■眼精疲労の検査と診断と治療 

 眼精疲労の原因を特定し、それが発見されれば排除することが必要です。原因が精神的なもの、環境的なものと予想が付いた時は、自分でそれをまず除外して下さい。

 眼鏡やコンタクトレンズを使用している人では、目に合っているかのチェックも重要です。眼鏡の度などが合わない人は作り直したり、使用状況に合わせて眼鏡をいくつか作って使い分け、目の負担を軽くするのも一案です。

 パソコンを使用する機会の多い人では、作業時の照明の明るさ、自分の姿勢、パソコンを置く位置をチェックしてみましょう。作業中は適度な休憩をとって目を休めて下さい。

 室内が乾燥したり、エアコンの風が目に当たると、ドライアイを引き起こします。また、眼精疲労の意外な原因として、周囲の人のたばこの煙も挙げられます。これらについては、家庭や職場で相談して調整してもらいましょう。

 そして、睡眠を十分とりましょう。寝不足の時には、目を使う時間が長くなる一方で目を休める時間が減るのですから、目が疲れて当然です。目の筋肉は、体の中で最もデリケートな筋肉で、体の疲労がすぐ目にも現れてくるのです。趣味や散歩、スポーツなどで、ストレスを解消することも大切です。

 眼精疲労の背後に目や全身の疾患が疑われる時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。

 眼科では、視力、視野、眼圧、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などの一般検査が、まず行なわれます。目に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて原因を精密検査します。

 眼精疲労の的確な治療は、その原因によって異なりますので、原因追及が最も重要です。ただし、いくつかの小さな原因が重なり合って目の負担が増え、眼精疲労になりますので、原因と思われる病気を治したのに、眼精疲労が治らないことも少なくありません。そのようなケースでは、問診や検査で原因と考えられるものを洗い出し、それを一つひとつ治療、解決していきます。

 原因を特定できない場合にも、ビタミン剤の配合された点眼薬や内服薬で、症状が改善することがよくあります。ビタミン剤は、細胞の新陳代謝を助けるのです。


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結膜下出血

■突然、目の白目に赤い出血斑が現れる状態

 結膜下出血とは、突然、目の白目に赤い出血斑(はん)現れる状態。白目の一部分がわずかに赤く見えるもの、黒目の回りが真っ赤になるものなどがあります。

 目をぶつけたり、強くこすったりした時、または、そのような原因が思い当たらない場合にも起こります。通常は痛み、かゆみなどの自覚症状はないため、朝起きて鏡を見て見付けたり、周囲の人に指摘されたりして気が付くこともよくあります。

 赤い出血斑は、白目の表面を覆っている眼球結膜に存在する大小の血管が破れて、結膜の下に広がったものです。小さな点状のものから、斑状、時に眼球結膜全体を覆う広範なものもあります。また、血腫(けっしゅ)を作ることもあります。

 通常の出血では多少、目がごろごろする程度で、ほとんど痛み、かゆみ、目やになどの症状は伴いません。また、眼球内部に血液が入ることはないため、目が見えにくくなったり、視野が狭くなったりすることもありません。

 普通は、1~2週間で自然に吸収されてきれいな白目に戻ります。出血斑の状態は、赤色、茶褐色、黄色、白色と変化することになります。まれに、茶褐色が比較的長期間残ることがあります。中には、出血が自然に吸収されてきれいな白目に戻るまで、2~3カ月かかるものもあります。時間はかかりますが、出血は吸収されますので心配はいりません。

 多くの場合、結膜下出血は特別な治療の必要はなく、放置しておいてもかまいませんが、目に外傷を受けた場合、痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合、熱を伴う場合は、自分の症状をしっかりと眼科医に伝えアドバイスを受けます。

 なお、出血と充血の違いを挙げると、出血は血管が破れて血液が出たもので、血管の走行が見えません。一方、充血は細い血管が拡張した状態で、血管の走行が見えます。充血の場合は、血管収縮剤を使うと赤みが少なくなります。

■結膜下出血の検査と診断と治療

 結膜下出血で痛みやかゆみ、目やにを伴う場合、頻繁に繰り返す場合には、高血圧症や動脈硬化症、出血しやすくなる疾患などの有無を検査します。

 医師の治療では、目の疾患や全身性疾患が要因になっている場合は、原因疾患の治療を行います。目に外傷を受けている場合は、感染の予防などのため直ちに穿孔(せんこう)部を閉じる必要があります。隠れた目の外傷があって結膜下出血がなかなか消えない場合も、穿孔部を閉じる必要があります。

 出血が止まっても赤目が広範で長引いているひどい場合は、吸収促進のために血栓溶解剤などを結膜下注射することもあります。

 ほとんどの場合、結膜下出血が起こった後に眼底出血が起こることはありません。しかし、動脈硬化、高血圧、糖尿病、出血性素因(貧血、白血病、紫斑病など)、腎炎(じんえん)に伴って起こるような疾患が原因の場合は、眼底出血が起こり、失明することもありますので注意が必要です。


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色盲、色弱(色覚異常)

■色を感じる働きである色覚に、生まれ付きの障害

 色盲、色弱とは、色を感じる働きである色覚が生まれ付き障害されている状態。色覚異常、色覚障害とも呼ばれます。

 人間がいろいろな色を感じることができるのは、主に網膜の最も敏感なである黄斑(おうはん)に分布する錐体(すいたい)細胞の働きによるものです。この錐体細胞には、赤、緑、青のそれぞれの光に感じる3種類の細胞があり、物をみると、それらへの刺激が起こり、網膜や脳で処理された上で色として感じられるのが、色覚という働きです。

 色覚異常は、日本人男性の4〜5パーセントにみられ、女性ではその10分の1くらいにみられます。男性に多いのは、色覚異常が伴性劣性遺伝をするためです。

 この色覚異常は、起こり方によって、全色盲(全色弱)、部分色盲、部分色弱に分けられます。

 全色盲(全色弱)は、色の見分けが全くできないもので、弱視や、眼球が左右に揺れたり、ぐるぐる回転する眼球振盪(しんとう)、明るい光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)を伴い、視力も0・1以下であるものを全色盲といいます。また、視力は正常でも、すべての色に対する色覚が欠けているものを全色弱といいます。

 色覚がないために、すべての物を黒色、灰色、白色の変化として見ていることになります。

 部分色盲は、 赤と緑の区別ができないものを赤緑色盲といい、これはさらに、赤色盲と緑色盲に分けられます。

 赤色盲とは、赤の光に対する感覚がなく、青緑の光に対する感覚にも異常があるため、赤と緑の区別ができない色盲です。第一色盲ともいいます。

 緑色盲とは、緑の部分が灰色か黒色に見え、赤の光に対する感覚にも異常があって、赤と緑の区別ができない色盲です。第二色盲ともいいます。

 このほか、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲もあり、第三色盲ともいいますが、非常にまれです。

 部分色弱は、赤と緑に対する感度が低下しているが、色盲より障害の程度が軽いもので、赤緑色弱といいます。これもさらに、赤色弱と緑色弱に分けられます。

 このほか、青黄色弱もあります。

 赤色盲と赤色弱を合わせて第一異常、緑色盲と緑色弱を合わせて第二異常、青黄色盲と青黄色弱を合わせて第三異常と呼ぶこともあります。

■色盲、色弱の検査と診断と治療 

 色覚異常は遺伝子の変異であるため、治療法はありません。

 2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。

 2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。


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視神経委縮

■視神経の中の神経線維が減少、消失する眼疾

 視神経委縮とは、視神経を侵すいろいろな疾患が進行して、最終結果として現れる病変。視神経を構成している線維の軸索や髄鞘(ずいしょう)が減少、消失して、視神経は回復できない状態にまで変性しています。

 視神経は視覚情報を伝える100万本以上の神経線維を含んでいて、網膜に映った物の形や色、光などの情報を脳神経細胞に伝達するという役割を担っていますので、視神経が損傷すると物を見る働きも、部分的にまたは完全に損なわれてしまいます。

 片目、または両目の視力の減退や視野の欠損などが、主な症状として現れます。視界のぼやけ、色覚の障害 、光を目に差し入れた時の瞳孔(どうこう)の縮瞳の減弱、 同じ光を左右の目に差し入れた時の障害側でのまぶしさの減少なども現れます。視神経乳頭と呼ばれる眼球後方の円盤状の部分は青白くなり、最後には失明することが多くみられます。

 この視神経委縮には、単純性委縮、炎性視神経委縮、軸性視神経委縮、網膜性視神経委縮、緑内障性神経委縮、遺伝性視神経委縮があります。

 単純性委縮は、球後視神経炎や視神経管骨折、脊髄癆(せきずいろう)などでみられるものです。視神経管骨折は梅毒、頭蓋(ずがい)底骨折、脳腫瘍(しゅよう)、内頸動脈瘤(ないけいどうみゃくりゅう)、外傷によって起こるもので、早期に手術を行えば、失明せずにすむことがあります。

 炎性視神経委縮は、うっ血乳頭や乳頭炎、視神経炎の経過後に起こるものです。

 軸性視神経委縮は、ビタミンの欠乏、たばこの過剰摂取、アルコール中毒、あるいは悪性貧血などによる軸性視神経炎の経過後に起こるものです。

 網膜性視神経委縮は、中心性網膜脈絡症の進行期に、視神経乳頭が黄白色調を現すものです。

 緑内障性神経委縮は、緑内障で眼球の中の圧力が高い時に視神経が圧迫されて起こるもので、視神経乳頭の陥没を伴います。

 遺伝性視神経委縮は、視神経が正常な発達をしなかった場合にみられるものです。思春期の男子に発症し、両眼性の急激で高度の視力障害が起こるレーベル病のほかに、常染色体性優性遺伝や劣性遺伝の視神経委縮があります。

 最も多い視神経委縮としては、その発生原因が不明のものも少なくはありません。

■視神経委縮の検査と診断と治療

 視神経委縮では、早期にその原因となる疾患を明らかにして、それを取り除くことで進行を止めるという早期診断、早期治療が最も有効ですので、視野の欠損や視力の低下を自覚した際には、眼科の専門医を受診します。

 眼科医による検査では、眼底鏡を使って瞳孔(どうこう)を通し、眼球後方の円盤状の部分である視神経乳頭を観察します。視神経の委縮があるならば、この小さな視神経乳頭は視神経線維の減少を反映して、蒼白(そうはく)あるいは白いと表現されるように変化していますので、視神経委縮と診断されます。

 この眼底検査のほか、視力検査、瞳孔の反応検査、視野検査、MRI検査、血液検査、髄液検査などが必要に応じ行われます。

 視神経委縮の治療としては、その原因となった疾患の治療が基本で、脳外科や耳鼻科などと連携した治療が必要です。しかし残念ながら、視神経委縮に対しては、初期以外は有効な治療法は存在しません。視神経の中の神経線維が失われてしまうと、その線維は復活することはありません。

 早期にその原因を明らかにして、それを取り除くことで進行を止めるという早期診断が、最も治療には有効なのです。 その原因の治療を早く行えば、視野の欠損や視力の低下の進行を抑えられるだけでなく、治療のできる疾患が隠れていることに気が付く場合が少なくありません。

 例えば、ゆっくり進行する良性の脳腫瘍が数年後に見付かることも、まれではありません。視神経委縮という診断ですでに視力を失っている発症者も、数年に一度は再度詳細な検査を受けることが勧められます。

 なお、視神経に有害な物質が原因で発症した視神経委縮の場合は、たばこやアルコール、その他の有害な物質を避ける必要があります。アルコール摂取が要因だと考えられる場合は、バランスのよい食事を取るとともに、ビタミン類のサプリメントを摂取します。

 栄養の不足が原因の視神経委縮の場合は、サプリメントにより不足した栄養が補われます。ただし、ビタミンB12の不足が原因の場合は、サプリメントの摂取だけでは不十分で、ビタミンB12が注射で補われます。視神経が委縮していない限り、ある程度の視力回復が期待できます。


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斜視

■注視点に向かう両目の視線がずれている状態

 斜視とは、両目が見ようとする目標に向かわず、一方の目は目標に向いているのに、片方の目はよそを向いている状態。俗に、やぶにらみとも呼ばれます。

 よそを向く方向によって、内斜視、外斜視、上斜視、下斜視、回旋斜視などに区別されます。内斜視では、 右目または左目だけが内側(中心)を向いています。外斜視では、 右目または左目だけが外側を向いています。上斜視では、 右目または左目だけが上を向いています。下斜視では、 右目または左目だけが下を向いています。回旋斜視では、視野が時計回りか反時計回りかに回るようなずれ方をします。人間の目には、回転する円盤のような物を見た時にも視野をぶれなくする仕組みがあり、それに対応した斜視が回旋斜視です。どちらの目がよそを向くかは、人によってさまざまです。

 また、斜視の状態によって、恒常性斜視、間欠性斜視、隔日性斜視に区別されます。恒常性斜視では、 常に斜視の状態にあります。間欠性斜視では、時々視線がずれます。隔日性斜視では、 斜視の日とそうでない日が交互に現れます。

 さらに、斜視には両目で見ている時、明らかに視線がずれている斜視と、ある種の検査によって初めてずれがわかる斜位(潜在性斜視)とがあります。

 斜視の自覚症状としては、その独特の目の動きのほか、物が二重に見える復視、眼精疲労、距離感がつかみにくいっといった空間知覚の異常、目の違和感、頭痛など、さまざまなものがあります。

 一般に、斜視は子供に多くみられます。特に、生後6カ月以内に発症した乳児内斜視は、目の寄り方が大きく、目が外へ向かずに上を向いている上斜位を伴っていたり、斜視になったほうの目が使われないので弱視になりやすいという特徴があります。その他、調節性内斜視といい、遠視が強いために物を見ようと努力することによって、内斜視になっているものがあります。

 早期に治療を開始したほうがよく、早期発見のために母親などの十分な注意が必要となります。子供が物を見る時、顔を傾けて見る、あごを上げて見る、あごを下げて見る、片目をつぶって見るといったような、何らかの見づらそうな行動をとった時は要注意です。

 斜位(潜在性斜視)は、左右の眼筋の均衡がとれていないために、眼球を正しい位置に保つのに努力がいる状態です。この斜位が軽度の場合は無症状のことが多いのですが、強度の人や軽度であっても神経質な人は、読書時の疲労や頭痛、時には、めまい、吐き気などを生じることがあります。

 斜視のようにみえても、眼科的には斜視ではないものを偽斜視といいます。特に、子供のころには、内斜視にみえても実際には内斜視ではないものが多いようです。小さな子供で目頭に余分な皮膚がある状態があると、目の鼻寄りの白目の部分が皮膚で覆われるために、目が寄っているようにみえ、本当の斜視か偽斜視かわかりにくいことがあります。この場合、光の反射像が両目同じ位置にあれば偽斜視です。

■斜視の検査と診断と治療

 子供の目に異変を感じたら、できるだけ早く専門医の診断を受けることが勧められます。

 斜視の治療では、まず眼鏡による屈折矯正が行われます。屈折矯正だけで治ることもありますが、症状によっては手術が必要になってくることもあります。手術の時期については、疾患の状態によって異なるものの、乳幼児斜視では2歳頃までの早期手術が勧められています。

 手術では、目の筋肉のバランスを整えることで斜視を治療します。例えば、外に目が向いている場合は、外についている筋肉を弱める、または内についている筋肉を強めれば、目の位置が正常に戻ります。子供の場合は全身麻酔が必要ですが、大人なら局所麻酔で入院なしに手術を行うことができます。手術では、1つの筋肉で30分程度を要します。術後は目が赤くなりますが、10~14日ほどで赤みは次第に消えていきます。

 なお、成長期にある子供の場合には、内斜視の手術後数年で外斜視になることもありますし、外斜視の手術後数年で内斜視になってしまうこともありますので、再手術が必要になる可能性があることも考慮すべきです。

 ボツリヌス毒素注射療法といって、ボツリヌス菌が出すボツリヌス毒素を注射して、筋肉の収縮を抑制させ、バランスをとって斜視を治療する方法もあります。例えば、内斜視の内直筋に注射すると、外側に目が動きます。治療効果が永続的でないため、繰り返し行う必要があります。

 遠視が原因で斜視が起こっている調節性内斜視の場合は、まず遠視の眼鏡で矯正します。眼鏡で治らない部分については、手術を行います。

 斜視のずれがわずかな斜位(潜在性斜視)が軽度の場合は、自覚症状がなければ治療の必要はありません。プリズム眼鏡と呼ばれる光線を曲げる眼鏡をかけることで、物が二重に見えるのを治療できることもあります。


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視力障害

■目が見えにくいのはなぜ■

 物がはっきり見えなくなる原因は、加齢のせいばかりとは限りません。目の怖い病気が潜んでいる場合も、あり得るのです。

 人間の目には120万から130万本もの視神経があり、膨大な量の情報を処理していますが、この視神経は年を加えるとともに年間、約5000本が失われていきます。同時に、目の組織自体も活性酸素などによる老化現象によって年々、感度が悪くなっていきます。年とともに、レンズの働きを担う水晶体の弾力性も失われていきますので、物がはっきり見えにくくなっていくのは、ある程度、仕方のないことです。

 しかしながら、見えにくさの背後に、失明の危険がある病気が隠れている可能性も、あります。「私も年だから」と放っておくと、病気が進行して取り返しのつかないことになりかねません。

 最近の傾向としては、パソコンやゲームの画面に視線を集中して、まばたきが減るために角膜が乾燥するドライアイが、確実に増えています。目の病気に直接つながることはありませんが、注意が必要でしょう。 

●自覚症状がある障害

《老眼》

●近くだけが見えにくい

 40代くらいから、水晶体の弾力性が失われ、ピントを合わせることができなくなります。そのために、30~35センチの読書距離に焦点を合わせることが、むずかしくなります。 

《白内障》

●霧の中にいるようにぼやける ●まぶしく感じる

 水晶体を形成する蛋白質が白く濁る病気。水晶体の周りから濁っていくケースが多く、初期には視野の中心は正常に見えるために、気が付かないこともあります。60代で60パーセント、80代ではほとんどの人が、発症しています。

《飛蚊(ひぶん)症》

●黒い点や糸くずなどがちらつく

 硝子体(しょうしたい)という眼球を満たすゼリー状の組織の中に濁りが出て、眼球の動きとともに、濁りの影が網膜に落ちて、ちらつきが起こります。加齢による硝子体の変性が原因であれば、それほど心配はありません。 

 注意が必要なのは、稲妻のような光が見えた後、飛蚊症が生じた場合です。網膜に穴が開いた可能性があり、早急な治療を要します。 

●意識的に自分でチェックすべき障害

《網膜剥離(はくり)》

●見えにくい部分がある ●像がゆがむ

 網膜に穴が開き、液体が網膜の下に入って網膜が浮き上がり、はがれてしまうもの。どんどんはがれてしまうため、早期発見が大切となります。

 発症には二つのピークがあり、30代と50~60代。 

《黄斑(おうはん)変性症》 

●視野の中心が見えない ●ゆがんで見える ●視力が非常に落ちる 

 年齢を加えるのにつれて、網膜の中心部にある黄斑部の働きが悪くなって、発症するもので、欧米では失明原因のトップです。日本でも増加傾向にあり、高齢化や食生活の欧米化が原因と見られています。  

●自覚症状がなく危険な障害

《緑内障》 

 眼球内部を満たす液体は、常に入れ替わっています。その出口がふさがれて眼圧が高くなるなどが原因となって、視神経が傷付き、視野が狭くなるもので、徐々に進行します。自分では気付かないことが多いので、眼科での眼圧、眼底、視野の検査が必要です。

 潜在的な患者は、40代以降で17人に1人と推定されています。 

《糖尿病網膜症》 

 日本人の失明原因で最も多いのが、実は糖尿病の合併症です。糖尿病は血管に大きな負担がかかるせいで、網膜に張り巡らされた細い血管がもろくなり、破れて出血すると視力障害を引き起こします。 

 糖尿病の人は白内障、緑内障にもなりやすく、注意が必要です。

■対策へのアドバイス■ 

●毎日、片目ずつチェック

 通常のように両目で見ると、片目の視野が欠けていても、もう一方の目で補ってしまいます。手で片目を隠し、視野が欠けていないか、物がゆがんで見えないか、二重に見えないか、見え方が左右で違わないかなど、チェックを行いましょう。

 毎朝、窓の外や鏡などを見て調べる習慣をつけましょう。

●定期検査を受ける

 緑内障では、眼圧が正常の範囲内に収まっているケースが6割を占めているため、内科の定期検診では見逃される場合もあります。眼圧に加えて、眼底と視野の検査をすればわかりますので、心配な人は眼科で検診を受けましょう。 

 また、網膜には痛みの神経がないために、穴が開いたり、出血したりしても、痛みを感じません。とりわけ糖尿病や高血圧、動脈硬化がある人は、眼底の異常を起こしやすいので、年に2回の眼底検査を受けましょう。 

●紫外線を避ける

 紫外線は化学作用が強く、目の老化を早めます。眼鏡をかけている人は、UV カットのものにし、白内障で光がまぶしく感じられる人は、波長の短い光をカットする黄色やオレンジ、赤系統のサングラスをかけるのがお勧めです。

●パソコンを使いすぎない

 人間は通常、1分間に15~20回のまばたきをして、目の乾燥を防いでいます。ところが、パソコンやゲームの画面を見ている際には、極端に減り、5回以下になってしまいます。目は乾燥すれば自然に涙が出て潤いますが、高齢になると涙の分泌が減るために、角膜が乾いてトラブルも起こりやすくなります。  

 「目が疲れたな」と自覚したら、目薬を差すなどして注意しましょう。目薬の中でも、防腐剤の入っていない人工涙液の使用がお勧めで  

●緑黄色野菜をたっぷりと

 目の老化を予防する栄養素を含む食材としては、抗酸化作用のあるビタミンを含む緑色野菜と黄色野菜、いわゆる緑黄色野菜がお勧めです。

 また、ビタミンとともに最近、注目されているのがルテインで、ホウレンソウやブロッコリーなどに豊富に含まれています。ルテインは目の水晶体や黄斑部に分布していますが、人間の体内では作ることができないため、食物から摂取しなければなりません。

 ルテインが不足すると、白内障や黄斑変性症のリスクが高まると見なされています。


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ドライアイ

■涙の減少によって生じる障害

 テレビ、パソコンなどに取り囲まれて、目が酷使されてしまう現代社会では、「目が疲れやすい」、「何となく目に不快感がある」という人が、確実に増えています。視覚を担う目に不快感や違和感が生じれば、仕事や勉強を始めとした日常生活で、大変な不便を感じてしまいます。

 このような疲れ目などの原因として最近、注目を集めているのが、目の乾き、すなわちドライアイです。

 あなたの目の不快感も、目を使いすぎたせいばかりでなく、実はドライアイが原因かもしれません。ドライアイは自分では気が付きにくく、「何となく目が疲れるわ」といった症状で病院や診療所に行き、医師から指摘される人が多いのです。

 簡単にいえば、ドライアイとは、涙液、すなわち涙の減少によって目が乾き、表面に障害を生じる疾患です。涙が減少すると涙の役割が低下し、乾きのために角膜が傷付きます。重症になると、角膜の表面に無数の傷が付きます。

 我が国ではドライアイの疾患を持つ人が多く、潜在患者は800万人いるともいわれています。放置しておくと眼病のもとになるので、早めに専門医に診察してもらうのが、お勧めです。

 専門医によるドライアイの検査では、シルマー試験紙という目盛りの付いた細い紙を下まぶたに挟んで、涙の染みる量を測定するシルマーテストを行います。このほか、ローズベンガル試験、蛍光色素試験で涙の分泌低下を調べます。 

■目は、なぜ乾いてしまうのか

 涙腺から分泌される涙は、泣く時以外にも少しずつ出されており、目の表面の保護や、栄養分・酸素の供給、ゴミ・細菌の侵入防止といった働きをしています。

 この涙が乾いてくると、眼球の前面を覆う透明な膜である角膜の上に、ドライスポットと呼ばれる穴のような物が、開いてしまいます。通常であれば、そこをすぐ涙が覆い、やがて穴はふさがっていくのですが、ある一定量以上に涙が減り続けると穴は残ったままとなり、最も傷付きやすい角膜が露出して障害が生じるのが、ドライアイなのです。

 ドライアイの主な原因を挙げると、

1)涙の質・量の低下をきたす場合:シェーグレン症候群などの涙が減少する病気、あるいは加齢、夜間作業、大きなストレス、降圧剤や精神安定剤などの服用の影響で涙の質が低下したり、量が少なくなることが、ドライアイの原因になります。

2)涙が蒸発しやすい・まばたきが少ない場合:エアコンなどの影響で部屋が乾燥している環境、あるいは、まばたきの少なさ、コンタクトレンズの装着、アレルギー性結膜炎の罹患、パソコン・テレビの見すぎ、目の酷使などが、ドライアイの原因になります。

 ちなみに、私たちの目全体に涙をゆきわたらせてくれるのが、まばたきなのですが、パソコンなどを凝視すると、まばたきの回数は通常の1/4にもなります。

 下の項目で、長期にわたって当てはまるものが5つ以上あれば、要注意!

.目が疲れやすい

.何もしていないのに涙が出る

.目やにが多く出る

.視界がかすむ

.目がゴロゴロする

10.何となく目がかゆい

.目が乾いた感じがする

11.光がまぶしく感じる

.重たい感じがする

12.なぜか目が赤い

.何となく目に不快感がある

13.涙が出ない 

.目が痛い

14.悲しい時でも涙が出ない

 

■目を乾燥させないための対処法

 ドライアイによって、目が疲れたりするだけでなく、肩が凝ったり、頭痛を引き起こしたりと、体に変調をきたします。集中力も当然低下し、仕事や勉強の能率は落ちます。

 ドライアイを予防したり、進行させないための基本は、目を乾燥させないことです。そのためのケアの一部を紹介します。「乾いているな」と感じる方は、お試しを。

 

目薬を上手に使う
 目を乾燥させないためには、やはり目薬が手ごろ。この目薬にもいろいろな種類がありますが、いちばんいいのは眼科で処方してもらう目薬です。市販されている目薬を使う場合には、防腐剤が入っていないものを選ぶよう注意しましょう。

 目薬は通常、開封した後に非常に細菌感染を起こしやすい構造になっていて、カビが増殖しやすいために、防腐剤が入っていることが多いのです。目薬を使用した時に「目に染みる」と感じるのは、防腐剤のせいです。

 ドライアイの場合には、目の表面に傷が付いていることが多く、また防腐剤を洗い流すだけの涙が足りないために、悪影響を及ぼす恐れもあります。よって、防腐剤が入っていないかどうかを確認して購入し、開封後は早めに使い切るようにしましょう。

 病院、診療所での治療においても目薬が有効で、ドライアイ用の防腐剤を抜いた目薬や人工涙液などを使用します。目の乾燥のひどい患者さんに対しては、涙の排水口である涙点を小さなシリコンプラグや手術でふさぐ方法もあるので、専門医に相談しましょう。

 

何よりリラックスを
 涙腺は、リラックスした時に優位になる副交感神経によってコントロールされています。従って、くつろぐことで涙がより多く出ます。

 逆に、緊張していては目が乾きます。車で出掛ける時などは、余裕あるドライビングをしたいもの。運転中は無意識に緊張が高まり、まばたきの回数も減少し、さらに目が乾きます。風が目に直接当たるのも、避けましょう。

 冷暖房の効いている部屋では、エアコンの風が直接当たらないようにしましょう。目が乾きやすい人は、加湿器やぬれタオルを干すなどして保湿に注意すればよいでしょう。

 

できればコンタクトレンズの使用を避ける
 ドライアイの初期の場合、コンタクトレンズを使うこともできますが、基本的には勧められません。本来、目には常に新鮮な涙が供給されていなければならないのに、コンタクトで角膜にフタをした状態では、まばたきによる涙の交換率がハードで約20%、ソフトでは2~3%にも低下してしまう、と見なされています。

 コンタクトレンズ使用者は、防腐剤抜きの人工涙液タイプの目薬を使うように注意しましょう。保湿成分のヒアルロン酸入りの目薬も出ています。また、目を温めることでもドライアイが改善します。

 

 ドライアイ用眼鏡を使用する
 顔と眼鏡の透き間を、プラスチックのカバーで覆ったものや、水を含ませるスポンジが内側についた物もあります。「たかがカバー?」と侮るなかれ、スキーのゴーグルのようなものをつけると涙が蒸発しないのでよいとされている通り、かなりの効果があります。ゴミや花粉も防ぐことができます。外出用のほか、パソコン用としてもよいでしょう。

 

たばこの煙を避ける

 たばこの煙もドライアイの大敵! 吸っている人がいた場合は、その煙が自分の目に入らないように気を付けましょう。目は煙の粒子を洗い流そうとしますが、ドライアイの人には相当の負担となります。自分が吸っている人は、この際、禁煙してみてはいかがですか。

 

パソコン作業には工夫を
 パソコンの作業では、1時間したら10分間の休憩が必要で、作業中はまばたきを意識的に増やしましょう。正常では、まばたきは1分間に20回前後です。パソコンのモニターの位置を低くして、目線を下向きにするだけでも、涙の蒸発と目の乾燥が防げます。

 私たち人間は、夜になると涙の出る量が少なくなり、朝にはカラカラ状態になっています。頭や体は起きていても、「目が開けられない!」という事態もあり得ます。このような時、無理をして開けると角膜に傷が付きます。目薬をさすなどするようにしましょう。


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原田病

■眼球を覆っている、ぶどう膜が炎症を起こす疾患の一つ

 原田病とは、眼球を覆っている、ぶどう膜の一部あるいは、すべてが炎症を起こす疾患。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

 ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、ぶどうの色をしていて、形も果物のぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の三つの部分で構成されています。

 虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

 虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

 脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

 このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが本症ですが、炎症がぶどう膜の一部に限定されている場合は、その場所によって前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜全体に及ぶ炎症は、びまん性ぶどう膜炎、もしくは全ぶどう膜炎と呼ばれています。

 また、ぶどう膜炎は、炎症を起こしている部位によって虹彩炎、脈絡膜炎、網膜脈絡膜炎と呼ばれることもあります。網膜脈絡膜炎は、脈絡膜とその上の網膜の両方に及ぶ炎症です。普通、片側の目だけに炎症が出ますが、両目に出ることもあります。 

 ぶどう膜に対する過剰な自己免疫反応や、細菌、ウイルス、真菌(かび)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばで、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。

 原田病は頻度の高いぶどう膜炎として、ベーチェット病、サルコイドーシスとともに三大ぶどう膜炎に挙げられています。三大ぶどう膜炎はいずれも、目ばかりでなく、それぞれの疾患に特徴的な全身症状が認められます。原田病とサルコイドーシスは自己免疫系の異常が原因で発症し、ベーチェット病は原因不明で、ウイルス説、アレルギー説、自己免疫説などが考えられています。

 原田病では、色素細胞に対する自己免疫反応が起こることが原因と考えられ、目のぶどう膜だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎症候群とも呼ばれています。

 なぜ色素細胞に対する自己免疫反応が起こるのかは、不明。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中の特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

 発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両目に現れます。 網膜と脈絡膜の間に水がたまり、滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

 原田病は、日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。

■原田病の検査と診断と治療

 治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めに眼科を受診します。

 医師が眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

 造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

 原田病の治療は、目に永久的な障害が出るのを防ぐため、早期に開始する必要があります。治療の中心は、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量点滴投与です。

 ホルモンの一種でるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。

 前部ぶどう膜炎を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド剤の点眼や、虹彩と水晶体の癒着防止のための散瞳(さんどう)剤の点眼も行われます。

 多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力も戻ってきます。回復後、眼底は色素脱失により、いわゆる夕焼け状眼底と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、まゆ毛などの一部が白くなることもあります。

 目の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。特に、過労やストレスが再発の誘引になることがありますので、日ごろから規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。

 万一、原田病と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。


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慢性結膜炎

■結膜の充血、目やにが長く続く状態

 慢性結膜炎とは、結膜の軽い充血、目やにが続く状態。急性結膜炎より症状は軽いものですが、なかなか治りにくいことがあります。

 結膜とは、まぶたの裏側から白目の表面を覆っている薄い膜のことで、この部分に起こる炎症を総称して結膜炎といい、症状が比較的急激に現れる急性結膜炎と、発症が緩やかでいつごろかわからない慢性結膜炎とに大きく分けられます。

 慢性結膜炎の原因はいろいろで、細菌の感染、真菌(かび)の感染、アレルギー、機械的刺激、薬品類の化学的刺激、涙液の分泌が低下するドライアイなどによるものがあります。細菌類では、ブドウ球菌類や緑膿(りょくのう)菌が主な原因となります。

 症状としては、結膜の軽い充血があり、少し目やにが出ます。また、流涙、異物感、不快感、かゆみ、目が乾いた感じなどがあることがあります。目やには、急性結膜炎ほどではなく、朝の起床時に目頭やまつげに少量ついている程度のことがほとんど。

 時々、症状がひどくなることもあります。コンタクトレンズの使用などが原因となって、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜に、ぶつぶつの乳頭ができたり、小さな砂状の結晶である結膜結石ができることもあります。

 なお、白目が赤く充血してはいるものの結膜炎ではないものに、虹彩(こうさい)毛様体炎、強膜炎、上強膜炎などがあります。目だけではなく全身の疾患の一つの現れである場合がありますので、気を付けなければいけません。

■慢性結膜炎の検査と診断と治療

 ひどくない程度でも不快な症状が持続するようなら、眼科専門医の診察を受けます。

 医師の診断では、目やにの中の細菌培養を始め、結膜からこすり取った細胞のサンプルや目やにの構成成分の顕微鏡検査などが行われます。ドライアイが疑われれば、涙液分泌能検査が行われます。

 治療としては、細菌性、真菌性では抗菌剤の点眼が行われます。非ステロイド性消炎剤や消炎酵素剤の点眼も行われます。アレルギー性でかゆみの強い場合は、初めはステロイド剤の点眼で強力に炎症を抑え、次いで非ステロイド性の抗アレルギー剤、消炎剤や消炎酵素剤の点眼で病状の鎮静化が図られます。

 ドライアイでは、人工涙液の点眼、乾燥予防などが行われます。結膜結石では、結膜から露出すると異物感の原因となるので、点眼麻酔をして針先などで除去します。

 慢性結膜炎は、急性結膜炎に比べるとなかなか頑固で、治りにくいものです。根気よく治療し、睡眠、食事にも気を配り、体調を整えることが必要となります。急性結膜炎の場合と同様、洗眼はかえって好ましくありません。

 充血を除く目的のみで点眼薬を連用するのも、副作用を招いたり、後にかえって充血を招いたりすることがあるので、好ましくありません。


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網膜色素変性症

■網膜の中の視細胞が障害される疾患

 網膜色素変性症とは、目の中で光を感じる組織である網膜に異常がみられる疾患。遺伝性、進行性で、夜盲を来す疾患の中でも特に重要なものです。

 通常、日本人の4000~8000人に1人の割合で、起こるといわれています。比較的多めに見積もるとおよそ5000人に1人、少なめに見積もるとおよそ10000人に1人と考えられます。

 一般的に、幼年期から思春期ごろ両眼性に発症します。初期は、夜間や暗い場所での視力、視野が著しく衰え、目がよく見えなくなる夜盲、俗に呼ばれる鳥目が主です。生活環境によっては、夜盲に気が付きにくいことも多いようです。

 最初に、視野狭窄(きょうさく)が起こることもあります。人にぶつかりやすくなったり、車の運転で支障が出たりといったことが、視野が狭くなっていることに気付くきっかけになります。

 最初に夜盲を起こした人も徐々に進行すると、視野が周辺部から狭くなってきます。続いて、視力の低下を自覚するようになり、色覚の異常を自覚する場合もあります。この視力低下や色覚異常は、後から出てくるのが典型的です。

 なお、ここで視力というのは、網膜の能力を表す矯正視力、すなわち眼科でレンズを使用して測定する視力のことです。裸眼視力の低下は、疾患の進行や網膜の能力と関係ありません。

 進行はゆっくりですが、40~50歳ごろになると、視野狭窄が顕著なため、竹の筒から外を見るような感じになり、一人で歩くことが困難になります。

 この網膜色素変性症では、目の中にあってカメラでいえばフィルムに相当する網膜に存在している各種の細胞のうち、視細胞が最初に障害されます。視細胞は目に入ってきた光に最初に反応して、光の刺激を神経の刺激である電気信号に変える働きを担当しています。電気信号は視神経から脳へ伝達され、人間は物を見ることができるわけです。

 視細胞には、大きく分けて二つの種類の細胞があります。一つは網膜の中心部以外に多く分布している杆体(かんたい)細胞で、この細胞は主に暗いところでの物の見え方や、視野の広さなどに関係した働きをしています。もう一つは網膜の中心部である黄斑(おうはん)に分布して錐体(すいたい)細胞で、この細胞は主に中心の視力や色覚などに関係しています。

 網膜色素変性症では、二種類の視細胞のうち杆体細胞が主に障害されることが多いために、暗いところで物が見えにくくなったり、視野が狭くなったりするような症状を最初に起こしてくるのです。

 視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞に特異的に働いている遺伝子の異常によって、網膜色素変性症は起こるとされています。遺伝が関係する場合、血族結婚の子供に多くみられ、いろいろな遺伝形式をとることが知られています。

 しかし、明らかな遺伝傾向が確認できる人は全体の50パーセントで、後の50パーセントの人では確認できず、親族に誰も同じ疾患の人がいません。その遺伝が確認できない場合でも、体を作っているさまざまな物質の設計図に当たる遺伝子のどこかに異常があると考えられ、ほとんどは何らかの形で遺伝と関係するものと捕らえるべきです。

 遺伝傾向が確認できる人のうち最も多いのは、常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35パーセント程度を占めます。次に多いのが、常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10パーセント。最も少ないのが、X連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)を示すタイプで、全体の5パーセント程度となっています。少し特殊になりますが、ミトコンドリア遺伝を示すタイプもあります。常染色体性の遺伝では、発病に性差がほとんどみられません。

 常染色体劣性の遺伝の仕方は、両親に同じ疾患が認められず、兄弟姉妹に同じ疾患の人がいる場合に疑われます。両親が血族結婚であったり、同じ地域の出身同士、親戚同士であったりすると、可能性が高くなります。父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子がありますが、常染色体劣性遺伝の仕方をとる場合は片方の変化だけでは発症せず、網膜色素変性症を起こす遺伝子の同じ変化を両親からそれぞれ受け取ると発症します。

 常染色体優性遺伝は、親子で同じ疾患がある場合に疑われます。両親から受け取った遺伝子のどちらか片方にある変化によって、疾患を発症します。網膜色素変性症を持つ人から子供へ、同じ遺伝子の変化が伝わる確率は、50パーセントとなります。

 X連鎖性遺伝は、通常男性が網膜色素変性症を発症します。その場合、祖父が同じ疾患で、その娘に当たる母親が遺伝子異常を持っているが、発症しない保因者という形をとります。保因者の母親を詳しく検査すると、軽い変化が見付かることがあっても、自覚症状はほとんどありません。

 以上のタイプの遺伝傾向が確認できる場合、原因となる遺伝子異常には多くの種類があり、それぞれの遺伝子異常に対応した網膜色素変性症の型があるため、症状も多彩となっています。

 基本的には進行性の疾患ですが、症状の進行の早さにも個人差がみられます。さらに、症状の起こる順序や組み合わせにも個人差がみられ、最初に視力の低下や色覚の異常を自覚し、後になって夜盲を自覚する人もいます。

 他の目の病気も合併します。水晶体が濁ってくる白内障は高齢になると増える病気ですが、網膜色素変性症の一部の人では、より若い時から起こるために見づらくなることもあります。白内障の治療は 通常の手術と同じように行なうことができます。

 網膜色素変性症を発症してから長い経過の後に、矯正視力0.1以下の字が読みにくい状態になる人は多いのですが、暗黒になる人はあまり多くありません。

■網膜色素変性症の検査と診断と治療

 同じ網膜色素変性症であっても、それぞれの遺伝子異常に対応した型があり、症状も多彩で、症状の進行の早さにも個人差があることを、十分に理解して下さい。その上で、自分の疾患の重症度や進行度を、専門医に診断してもらうとよいでしょう。

 医師の側が進行度をみるためには当然、1回の診察だけでは診断が不可能です。定期的に何回か診察や検査を受けて初めて、その人の進行度を予想することができます。

 網膜色素変性症の人の眼底を検査すると、灰白調に混濁し、黒い色素斑(はん)が多数散在しています。網膜電位図検査で波形が平坦(へいたん)化することから、診断は比較的容易です。

 網膜色素変性症には現在のところ、網膜の機能を元の状態に戻したり、確実に進行を止める根本的な治療法はありません。対症的な治療法として、遮光眼鏡の使用、ビタミンAやその仲間の内服、循環改善薬の内服、低視力者用に開発された各種補助器具の使用などが行われています。

 通常のサングラスとは異なるレンズを用いている遮光眼鏡は、明るいところから急に暗いところに入った時に感じる暗順応障害に対して有効であるほか、物のコントラストをより鮮明にしたり、明るいところで感じる眩(まぶ)しさを軽減したりします。

 ビタミンAは、アメリカでの研究で網膜色素変性症の進行を遅らせる働きがあることが報告されています。しかし、この効果についてはさらなる検討が必要と見なされ、通常の量以上に内服して蓄積すると副作用を起こすこともあります。

 循環改善薬の内服による治療は、必ずしも全員に対して有効であるわけではありません。内服によって、視野が少し広がったり、明るくなる人もみられます。

 確実な治療法がない現在、大切となるのは、非常に進行の遅い眼科疾患であることを理解して視力や視野の良いうちから慌てないこと、矯正視力や視野検査結果を理解して自分の進行速度を把握すること、進行速度から予測される将来に向けて準備をすること、視機能が低下してきても各種補助器具を用いて残存する視力や視野を有効に使い生活を工夫することです。

 補助器具のうち拡大読書器などを使えば、かなり視力が低下してからも字を読んだり、書いたりすることが可能です。コンピューターの音声ソフトを使えば、インターネットに接続したり、メールを送受信することも可能です。

 さらに、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜など、網膜色素変性症を治療するための研究が、主として動物実験で行われています。これらの治療法はまだ実際に誰に対しても行える治療法とはなっていませんが、その成果は次第に上がってきています。

 アメリカとイギリスでは2007年から、常染色体劣性遺伝を示す原因遺伝子の一つであるRPE65の変化で起こり、子供のころから発症する重症な網膜色素変性症の遺伝子治療が、少数の患者で試みられています。安全性の確認とその効果について検討されていて、有効性が期待できそうであるという報告がされています。

 また、網膜の視細胞をできるだけ長生きさせるように、神経保護因子を長く作り続ける細胞を入れた小さなカプセルを、目の中に埋め込む治療も試みられています。

 日本ではまだ、これらの治療は始められていませんが、新しい治療への動きは着実に始っています。

 網膜色素変性症は、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患です。矯正視力が0.6以下で視野の障害がある場合、本人の申請があれば医師が難病患者診断書、網膜色素変性臨床調査個人表を記載します。それを管轄の保健所に提出し、基準を満たすと判断されれば、医療費の助成を受けることができます。詳しくは、担当医に相談して下さい。


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網膜剥離

■眼底から網膜が、はがれてしまう疾患

 網膜剥離(はくり)とは、何らかの原因で網膜が眼底からはがれて、硝子体(しょうしたい)中に突出する疾患。治療せずに放置した場合、網膜の機能の回復が難しく失明する可能性が高くなります。

 どの年齢でも網膜剥離になる可能性がありますが、20歳代と50歳代の近視の人に多いといわれています。男女の性差は、はっきりしていません。

 目の奥にある網膜は、物を見るための神経の膜で、厚さ約0.1~O.4ミリ。物を見る時、光は角膜を通って瞳孔(どうこう)から眼球内に入り、水晶体で屈折された後、硝子体を通って網膜に到達します。この時、網膜で感じ取られた光の刺激が視神経を介して脳に伝えられ、見えると認識されます。

 網膜の中央に位置して、物を見る中心部分を黄斑(おうはん)と呼び、ここは光に対して非常に敏感な部分です。また、網膜は10層の組織から構成されていて、内側の9層は神経網膜といい、最も外側の1層を網膜色素上皮と呼びます。神経網膜には、光を感じる細胞が並んでいます。

 硝子体は、細かい繊維でできたゲル状の透明な物質で、眼球の中に満たされています。光が通りやすく、目の形を保つのに役立っています。

 網膜色素上皮と神経網膜の接着は弱いため、何らかの原因で神経網膜が網膜色素上皮からはがれて、硝子体の中に浮き上がってしまうのが、網膜剥離です。

 原因はさまざまで、網膜に穴が開くことによって起こるものや、滲出(しんしゅつ)液という水分が網膜の下にたまって起こるものなどがあります。網膜に穴が開く原因として挙げられるのは、老化、高度の近視、網膜の委縮などで、誘因として挙げられるのは、目の外傷、強い体の振動、過労などです。

 最も多いのは、網膜に網膜裂孔という穴が開いてしまい、液化硝子体という硝子体の中にある水がその穴を通って、網膜の下に入り込むことで発生する裂孔原性網膜剥離です。中高年になると、硝子体に液化硝子体ができて、眼球の動きとともに硝子体が眼球内で揺れ動くようになっています。硝子体と網膜が強く癒着している部分があると、眼球の動きで網膜が引っ張られ網膜裂孔ができてしまい、液化硝子体が入り込んで網膜がはがれるのです。

 また、ボールが目に当たるなど、強い力が目に加わって網膜が剥離してしまう外傷性網膜剥離も、裂孔原性網膜剥離の一つです。

 糖尿病網膜症では、出血しやすい血管を含んだ膜が網膜の上にでき、この膜が収縮して網膜を引っ張ると、網膜が剥離してしまう牽引(けんいん)性網膜剥離が起こります。

 ぶどう膜といって、眼球の外側の強膜の内側にあって、眼球を覆う脈絡膜、毛様体、虹彩(こうさい)からなる膜に炎症があったり、眼球内に腫瘍(しゅよう)などがあると、網膜血管や脈絡膜から血液中の水分がにじみ出し、網膜下にたまって網膜が剥離する続発性網膜剥離が起こります。これらの病変による場合は、その原因となっている疾患の治療がまず必要となります。

 一般に、初めのうちは剥離した網膜の範囲は小さくても、この範囲が時間とともにだんだんと拡大するというような経過をたどります。重症の場合は、すべての網膜がはがれてしまいます。

 はがれた網膜は、青灰白色に混濁して、しわが寄り、光の刺激を脳に伝えることができません。また、はがれた網膜には栄養が十分に行き渡らなくなるため、網膜剥離の状態が長く続くと、徐々に網膜の機能が低下してしまいます。そうなると、たとえ手術によって網膜が元の位置に戻せたとしても、見え方の回復が悪いといった後遺症を残すことがあります。

 網膜剥離の先行的な症状として、黒い点や小さなゴミのようなものが見える飛蚊(ひぶん)症や、視界の中に閃光(せんこう)のようなものが見える光視(こうし)症を自覚することがありますが、無症状のこともあります。

 病状が進んでくると、カーテンをかぶせられたように見ている物の一部が見えにくくなる視野欠損や、見たい物がはっきり見えない視力低下が起きます。網膜には痛覚がないので、痛みはありません。

■網膜剥離の検査と治療と予後

 飛蚊症や光視症のような網膜剥離の先行的な症状を自覚した場合には、早めに眼科医の診察を受けることが大切です。

 網膜剥離で最も大切な検査は、眼底検査です。点眼薬で瞳孔を開き、眼底の様子を調べます。硝子体出血などで眼底が見えない時には、超音波検査を行います。

 見えない部分の位置を調べる視野検査も行われます。見えない部分と、病変の部分は対応しています。

 網膜裂孔だけであれば、レーザーによるレーザー光凝固術で、高エネルギーの光線を瞳孔を通して送り、網膜を焼いて裂け目の周囲をふさぎ、網膜剥離への進行が抑えられることもあります。

 すでに網膜剥離が発生してしまった場合、多くは手術が必要となります。手術には、大きく分けて二つの方法があります。

 一つの方法は、目の外から網膜裂孔に相当する部分に当て物をし、さらに穴の周りに熱凝固や冷凍凝固を行って、剥離した網膜をはがれにくくし、必要があれば網膜の下にたまった水を抜くというやり方です。はがれた網膜を目の中から押さえつけるために、眼球内に空気や特殊なガスを注入することがあります。

 もう一つの方法は、目の中に細い手術器具を入れ、目の中から網膜剥離を治療する硝子体手術という方法で、網膜に裂け目ができた時に血管からの出血によって濁った硝子体を取り除きます。この方法では、はがれた網膜を押さえるために、ほぼ全例で目の中に空気や特殊なガスを入れます。

 眼球内に空気や特殊なガスを注入した場合は、手術後に、うつぶせ姿勢による安静が必要です。空気やガスは軽いので、上方に向かう特性があります。うつぶせ姿勢を保って安静にすることで、空気やガスは網膜を元の位置に戻し、くっつける手助けをします。

 手術療法によって、多くの網膜剥離は元の位置に戻す網膜復位が可能ですが、一度の手術で網膜が復位しないために、複数回の手術を必要とすることもあります。また、最大限に手を尽くしても、残念ながら失明してしまう場合もあります。

 手術後の視力に関しては、網膜剥離が発生から間もない状態であり、はがれている範囲も小さい場合は、手術も比較的簡単で、見え方も元通りに回復する可能性が高いといえます。物を見る中心部分の黄斑がはがれていない場合には、手術前と同程度にまで回復する場合もあります。黄斑がはがれてしまっていた場合には、元通りの視力に戻ることは難しくなってしまいます。

 手術を受ける側の心構えとしては、あまり動くと剥離が広がる恐れがあるので、手術を受けるまで安静にします。ストレスを感じたり、むやみに心配したりして、精神的に緊張するのもよくありません。不安なことや不明なことがあれば、遠慮せず担当医に相談し、心身ともにリラックスして手術を受けるようにします。

 手術の後は、担当医の指示に従って安静にします。レーザー光凝固術の場合は、入院の必要はなく、通院治療を行います。その他の手術では経過によりますが、多くは約10日間程度で退院できます。

 手術後に目を動かしても、手術の結果に大きな影響はありませんが、眼内の状態が落ち着くまでに1~3カ月必要です。少なくとも手術後1カ月間は、疲れない程度に目を使用します。

 網膜剥離の重症度や個々のケースにもよりますが、事務織や管理職の人は手術後1カ月目から、運転手や重労働の人は2カ月ごろから仕事に復帰できます。日常生活でも、手術後1カ月間は重い物を持ったり、走ったり、車の運転をすることなどは避けます。また、年に1、2回の定期検査を必ず受けましょう。


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咽頭炎

■のどに炎症の起こる疾患で、急性と慢性の別

 咽頭(いんとう)炎とは、のどに炎症の起こる疾患。急性咽頭炎と慢性咽頭炎とがあります。特に口蓋扁桃(こうがいへんとう)の炎症が強い場合は、扁桃炎として区別しています。

急性咽頭炎

 急性咽頭炎はウイルス、細菌感染によって起こり、しばしば風邪の一症状として現れます。

 鼻とのどの境目あたりの乾燥感、のどの入り口あたりの咽頭のつかえる感じや引っ掛かる感じの異物感に始まり、次第に痛みが起こります。特に強く痛みを感じるのは、食べ物を飲み込む時です。扁桃炎があれば、症状はさらに強くなります。

 また、高熱、全身倦怠(けんたい)などの全身症状も伴います。食べ物が少ししか飲み込めないような状態が続けば、全身衰弱も起こります。

慢性咽頭炎

 咽頭炎の慢性化の原因として挙げられるのは、急性咽頭炎の繰り返しや、ほこり、過度の喫煙、飲酒などによる咽頭粘膜への持続的な刺激、副鼻腔炎などの鼻の疾患、口腔(こうくう)の不衛生などです。糖尿病や胃腸病、貧血などの全身的な疾患が原因になることもあります。

 症状は、のどがいがらっぽい、かゆい、乾燥するといった異物感がいつもあり、のどの痛み、頭痛、微熱もあります。頸部(けいぶ)リンパ節がはれることもあります。急性咽頭炎、扁桃炎を起こしやすく、この時は強い症状が出ます。

■咽頭炎の検査と診断と治療

急性咽頭炎

 急性咽頭炎は、耳鼻科の視診で診断はつきます。発症者自身が口を開けて鏡に映してみても、のどが赤くはれ、つぶつぶが見えます。つぶつぶは、咽頭リンパ濾胞(ろほう)がはれて、大きくなったもの。扁桃も赤くはれ、白いこけがついています。

 軽度ならば、安静、うがい、抗生物質の服用ですぐ治ります。全く食べられない状態であれば、点滴により栄養補給を行うほか、強力な抗生物質療法、鎮痛剤、解熱剤が必要になります。

慢性咽頭炎

 耳鼻科で治療を受けます。急性咽頭炎と同様のうがい薬やトローチなどで、のどを清潔に保ち、炎症を抑えます。ただし、抗生物質は慢性の疾患に長い間、使い続けると副作用が気になるため、スプレー(ネブライザー)として用いる方法が中心となります。禁煙、節酒、刺激物を避ける、無理をしないなど生活上の節制も重要です。


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耳管狭窄症、滲出性中耳炎

■耳管が狭窄した疾患と、中耳に液がたまる疾患

 耳管狭窄(きょうさく)症とは、中耳腔(くう)と鼻の奥の鼻咽腔(びいんくう)をつなげている、耳管という管が狭窄を起こした疾患。狭窄の結果、時に中耳腔に液がたまると、滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こします。

 耳管は中耳腔と外耳道の圧を調節するためのもので、唾液(だえき)や食べ物を飲み込んだり、あくびをした際などは、この耳管が開き、中耳腔に空気が入る仕組みになっています。この圧の調節によって、鼓膜の内外は圧が等しくなり、振動しやすくなります。

 耳管が狭窄すると、中耳腔の気圧は外気圧より低くなり、耳内がふさがった感じ、難聴、自分の声が強く響く、耳鳴りなどの症状が出てきます。

 飛行機が急に下降した際や、新幹線がトンネルに入った際、スキューバダイビングで海に潜った際などにも、同じく中耳腔と外気の圧のアンバランスが起こり、似たような症状が起こります。これを航空性、または気圧性中耳炎といいます。

 耳管狭窄症の原因となるのは、風邪などによって炎症を起こす耳管炎、アデノイド増殖症、上咽頭のがんなど。この耳管狭窄症は、子供の難聴の主な原因になっています。

 滲出性中耳炎の原因となるのは、不完全な急性中耳炎の治療、弱毒性菌による中耳炎ともいわれています。近年、小児にたいへん増えており、大きな問題となっています。

■耳管狭窄症、滲出性中耳炎の検査と診断と治療

 医師による耳管狭窄症の診断では、鼓膜の観察や聴力検査を行ったり、鼻からカテーテルという管を入れて、耳管の通り具合を調べます。

 治療では、狭窄を起こす原因をなくすことが第一とされます。空気を送って中耳腔に入れる通気法が、一般に行われています。

 中耳腔に液がたまる滲出性中耳炎の診断では、鼓膜を観察したり、インピーダンスオージオメトリーという検査を行ったりします。

 治療では、鼓膜を穿刺(せんし)、または切開して液を出します。それでもよくならなければ、鼓膜を通して中耳腔に小さな管を入れ、たまった液が外に出るようにします。

 自ら中耳腔に空気を送る方法として、鼻をつまんで、ゴクンと唾液を飲むと空気が耳に入ります。簡単にできるので、1日に何回かやってみます。ただし、風邪の最中には、耳管の炎症が中耳腔に及んで中耳炎を起こすため、勧められません。


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声帯ポリープ、声帯結節

■声の乱用で、声帯のふちに結節やポリープが発生

 声帯結節とは、声帯のふちに小さな、いぼのような突起ができるもの。声帯ポリープとは、声帯結節が大きくなって、キノコ状になったもの。

 声帯結節は、両側の声帯のふち、それも前3分の1くらいにできます。この声帯結節はまた、歌を歌う人にできやすいため、謡人(ようじん)結節とも呼ばれています。声帯ポリープも、声帯の前3分の1にできることが多く、通常片側に発生します。ポリープの大きさはさまざまで、まれに両側の声帯にできることもあります。ポリープができると、発声時の声帯の強い振動で、ポリープの中に出血することがあります。

 また、声帯全体がぶよぶよに、カエルの水かきのようにはれることもあります。これをポリープ様声帯と呼んでいます。さらに、声帯のすぐ上に喉頭(こうとう)室というくぼみがありますが、その粘膜がぶよぶよとはれ、声帯ポリープのように飛び出してくることがあります。これを喉頭室脱出症と呼んでいます。

 声帯ポリープなどの原因は慢性喉頭炎と同じように、声の使いすぎにあるといわれていますが、不明な点もたくさんあります。カラオケ、怒鳴り声、演説などの一過性の急激な発声が誘因となり、声帯粘膜の血管が破れて内出血を起こし、ポリープなどを形成するという説が有力です。

 声がれ、すなわち嗄声(させい)が声帯ポリープ、声帯結節、ポリープ様声帯、喉頭室脱出症ともの主症状ですが、のどの違和感や発声時の違和感などの症状を示すこともあります。突起が大きくなると、息苦しさなどの呼吸困難を起こすようになります。

■声帯ポリープ、声帯結節の検査と診断と治療

 疾患の症状に気付いたら、声をなるべく使わないようにして、のどの安静を心掛けます。それでも2週間で改善しなければ、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診します。

 医師による診断は、喉頭に小さな鏡である喉頭鏡を入れたり、鼻からファイバースコープを入れて、声帯を直接観察し、ポリープなどを確認すればすぐつきます。喉頭がんなど他の疾患との鑑別が、必要なこともあります。

 治療では、突起がごく小さい場合は、発声を制限し、消炎剤の投与や蒸気吸入、薬剤吸入(ネブライザー)を行います。この治療法以外では、手術が早くて確実です。声帯は狭く、深く、小さいところなので、手術は一般的には入院の上、全身麻酔で顕微鏡下に行い、ぶよぶよの個所を切開したり、切除します。

 全身麻酔が不可能な場合や、入院を希望しない場合などは、外来でファイバースコープを用いて摘出することもあります。また、この手術の後には声帯の傷の安静のために、1週間前後の沈黙期間を要します。

 声帯ポリープは悪性化はしませんが、まれにポリープのような外観のがんがあるので、摘出されたポリープは病理組織検査で、悪性化の有無をチェックします。

 なお、声帯ポリープや声帯結節などは、職業で声帯を酷使しなければならない場合には、再発の可能性があります。


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鼻詰まり

■慢性的な鼻詰まりの原因は?

●空気の通る道が狭くなる状態

 私たち人間の鼻の中は、鼻腔(びくう)と呼ばれる空洞が広がり、鼻腔の表面はひだ状の粘膜で覆われています。鼻には、この鼻腔上部の粘膜上皮に約五百万個ある嗅細胞でにおいを嗅ぐ嗅覚機能のほかにも、呼吸作用を効率よく行うための役割があります。

 まず、鼻から吸い込まれた冷たい空気がそのまま肺に送られとよくないので、鼻甲介の血管の収縮によって、空気を吸い込んだ瞬間に三十度くらいまでに温度を上げる暖房の機能、加温機能があります。

 その次は加湿機能で、鼻の中の粘膜は水分が九十五パーセント前後あり、入ってきた乾燥した空気に湿り気を与え、喉などの粘膜を保護するわけです。

 また、鼻腔内の数百万本も生えている繊毛によって、外から侵入するホコリなどを体外へ排出する浄化機能という役目も、鼻は果たしています。

 しかしながら、風邪のウイルスや異物などが鼻粘膜の内部にまで入り込み、さらに細菌感染も加わって炎症を起こすと、粘膜が腫れるために過剰な粘液が分泌されて、空気の通る道が狭くなります。この状態が、鼻詰まりなのです。

 長く続く鼻詰まりで圧倒的に多いのはアレルギー性鼻炎で、それに続くのが慢性副鼻腔炎、鼻中隔わん曲症。それらが重なっているケースも、多く見られます。

 鼻詰まりの症状がひどいと、日常生活にも支障が出るので、適切な対処をする必要があります。注意したいのは、嗅覚障害や頭痛、睡眠不足などを招いたり、乾燥した空気を吸うために呼吸器系に悪影響を与えたりすることです。集中力が欠ける原因や、口臭の原因にもなります。 

●多くみられる鼻詰まりの原因

 それぞれの病気や症状により、薬物療法や手術などが医師によって行われます。

アレルギー性鼻炎

 鼻から吸い込んだ異物に対して免疫システムが過剰に反応するため、すなわちアレルギー反応を起こすために、鼻腔の粘膜が腫れて、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを招きます。透明で水のような鼻水が出るのが特徴ですが、少し黄色い場合も。

 代表的なのは、スギ、ヒノキなどの花粉によって起こる花粉症。そのほかにハウスダスト、ダニ、カビなどが原因となりますので、原因物質を避けることが大切です。 

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

 副鼻腔とは、鼻腔に続いて周囲の骨内に陥入している四対の小さい空洞です。鼻詰まりが長引くと、副鼻腔の中でも炎症が起こり、うみがたまります。この状態が3カ月以上続くのが慢性副鼻腔炎で、急性副鼻腔炎と違って治りにくいとされています。黄色く粘り気のある鼻汁が特徴で、うみが口臭を引き起こすこともあります。

 耳鼻咽喉科では、定期的に鼻腔や副鼻腔内を洗浄し、噴霧薬や内服薬などによる治療が行われます。内服薬では、粘膜によい影響があるとされるマクロライド系の抗生物質が最近、一般的に使われ、少量ずつ、効果を確かめながら2、3カ月服用します。ひどい症状のケースでは、手術も。 

鼻中隔わん曲症

 鼻中隔とは、鼻腔を左右に分ける隔壁であり、板状の薄い骨からなっています。前方は軟骨で、周囲は三つの骨で構成されていますが、それぞれの骨の成長速度の違いから、隔壁がわん曲します。日本人の約85パーセントは、左か右、どちらかに曲がっているとされています。

 その曲がり方がはなはだしい場合は、鼻詰まりの原因となります。鼻中隔わん曲症は、10歳から15歳の成長段階に発症する鼻の構造異常。鼻中隔が飛び出ている側だけでなく、反対側も粘膜が厚くなって、左右とも鼻詰まりになりますが、比較的安全な手術で治ります。 

●その他の鼻詰まりの原因

鼻たけ

 鼻たけとは、鼻の粘膜にできる寒天状のポリーフ。慢性副鼻腔炎が進行してできるケースが多く、空気の通り道が狭くなるために、鼻詰まりを招きます。軽い副鼻腔炎で、大きな鼻たけができるケースもあります。

 長い期間をかけて作られるので、口呼吸が習慣化している人では、鼻詰まりの自覚症状がない場合もあります。 

アデノイド肥大

 アデノイドとは、鼻の奥にある扁桃(へんとう)組織です。幼児期に大きくなり、10代以降は自然に小さくなります。

 そのため、小学生までの子供にはアデノイド肥大は珍しくなく、鼻詰まりがはなはだしかったり、炎症を起こしたりしなければ問題はありませんが、大きいケースは手術も行われます。 

腫瘍

 鼻の中に、鼻たけに似たブヨブヨした腫瘍がいくつもできると、鼻詰まりの原因になります。腫瘍はほとんどが良性ですが、まれには鼻腔がん、副鼻腔がんなどの悪性の腫瘍もあります。

 片側の鼻が常に詰まっていたり、少量の鼻血が度々、出たりするケースでは、耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。 

■心掛けたい「鼻詰まり」対策

●鼻うがいの実行を

 鼻の炎症を抑えるには、鼻うがいも効果的です。蒸留水か生理食塩水で鼻の中を洗い流す際には、市販されている鼻うがい専用の器具を使うのがよいでしょう。

 なお、蒸留水は薬局で購入できますが、生理食塩水は医師の処方箋が必要となります。 

●鼻は強くかまない

 鼻は優しくかみましょう。鼻の奥には耳に通じる穴があり、強く鼻をかむと、その圧力で鼻にたまったうみが耳へと流れ、中耳炎を起こす病原菌となってしまう可能性があるからです。 

●点鼻薬は一日一回まで

 血管収縮性(粘膜収縮性)の点鼻薬は粘膜を縮ませますので、すぐに鼻詰まりに効きます。しかし、効果は一時的で依存性もあるものなので、使用は鼻詰まりで眠れない時などに限って、一日一回までに。

 長期にわたって乱用すると、作用しにくくなったり、かえって使用前よりも粘膜が腫れる点鼻薬性の鼻炎を起こすので、注意が必要です。 

●風邪をひかない 

 風邪をひかない、ひいたらこじらせない。二点が、鼻詰まりへの最も有効な対策です。鼻への刺激を減らすには、マスクが有効。空気が乾燥すると、鼻の粘膜は炎症を起こしやすいため、特に冬期には有効です。

 また、花粉症の人も早めにマスクの利用を。スギ花粉の平均的な飛散開始時期は、九州や四国の南部が2月上旬、関東南部が2月中旬、関東北部が2月下旬、東北地方は3月で、気温の上昇に伴って増加します。    

●食材で風邪を予防する

 風邪のウイルスに打ち勝つためには、ビタミンA(お勧め食材は春菊、ホウレンソウ、ニラなどの青菜類)、ビタミンC(お勧め食材はジャガイモ、サツマイモ、カボス、スダチ、ユズ)、ビタミンE(お勧め食材はゴマ、豆乳、カボチャ)と良質なたんぱく質が必要です。

 ビタミンAは、鼻やのどの粘膜を強化します。ビタミンCは、体内の抗酸化力を高めます。ビタミンA、Cの働きを助けるのが、ビタミンEです。

 体を温めることも大切で、鍋料理がお勧め。体を温める効果があるショウガ、ネギ、ニンニク、唐辛子などの香辛野菜を、料理に添えることも忘れずに。


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慢性中耳炎

■中耳に起こる炎症で、耳垂れが主症状

 慢性中耳炎とは、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に起こる炎症。耳垂れ、すなわち耳漏が主症状で、同じ中耳の炎症でも、耳痛、発熱、耳鳴りを伴う急性中耳炎とは、かなり様子が違っています。

 慢性中耳炎の多くは、小児期からの持ち越しです。この慢性中耳炎には、2つの型があります。1つは、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿(かのう)菌の感染による慢性化膿性中耳炎。もう1つは、鼓膜に穴が開く穿孔(せんこう)から、回りの上皮が中耳に入り込んで、上皮の剝脱(はくだつ)角化物がたまり、腫瘍(しゅよう)のようにみえる真珠腫性中耳炎。

 症状としては、鼓膜に穿孔があり、持続的に耳垂れが出ます。真珠腫性では、耳垂れに悪臭があります。耳垂れの刺激で外耳道炎を起こしやすく、多くは難聴を伴います。

 経過中にめまいを起こせば、内耳炎の併発が疑われ、発熱や激しい頭痛があれば、脳合併症の疑いもあります。急いで、専門医に診てもらいます。

■慢性中耳炎の検査と診断と治療

 慢性中耳炎の診断は、比較的簡単で、鼓膜の穿孔、耳垂れの有無が目標になります。耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

 治療では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

 鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。


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メニエール病

【症 状】

■回転性のめまい。聴力低下も■

 メニエール病とは、「めまい」や「耳鳴り」、「難聴」、「吐き気」などを伴う発作が繰り返し起こる病気です。フランスの医師メニエールが1861年、初めて報告したために、この病名が付けられました。メニエール症候群ともいわれ、耳の奥の内耳に異常が生じて現れます。

 突然、トンネルに入った時や飛行機が下降する時のような塞(ふさ)がった感じが、片方の耳に生じます。これに伴って、耳鳴りや回転性のめまいが起こります。同時に、嘔吐(おうと)や冷や汗、下痢を起こすこともあります。

 こうした症状には個人差があり、自律神経の働きの弱い人や、乗り物酔いをよくする人は、ひどくなる傾向があります。発作の時間はそれほど長くはなく、数分で治まりますが、数時間続くこともあります。また、長期間にわたって何度も発作を繰り返す人もいれば、発作が一回限りの人もいます。

 30~50歳代の働き盛りに多く、緊張感の続く状況にある人がかかりやすいと見なされています。以前は男性に多く見られましたが、現在では男女差がほとんどありません。高齢者にはあまり見られないのも、特徴の一つです。

 地域的には都市部に多く、中でもストレスをためやすい職業に就いている人や、不規則な生活を送っている人に多い傾向があります。

 突然、天井や床がぐるぐる回るめまいに襲われるため、「大変な病気に違いない」と恐怖心を募らせてしまう方も多いのですが、生命にかかわるほどの病気ではありません。

 ただし、放っておいて発作を何度も繰り返すと、耳鳴りが残ったり、難聴が進んだりすることもあります。発作が起こるたびに、耳の中で音を感じ取る役割を担う蝸牛(かぎゅう)が、壊れます。特に低音が聞こえにくくなり、初めのうちは修復されて聴力も回復しますが、発作を何度も繰り返すと、めまいが治まっても回復せず、難聴になってしまうこともあるのです。

 耳鳴り  めまいの発作が起こる前に、ひどくなるようです。発作を繰り返すうちに、慢性的な耳鳴りになっていきます。

 難聴  発作とともに難聴になる場合と、発作を繰り返すうちに聴力が落ちてくる場合があります。一般的には、低音が聞きとりにくくなります。

 ふわふわ感  体が傾く感じになって、実際によろけてしまったり、静止している物が動いているように見えたりします。

 その他  発作の時には自律神経の働きがおかしくなり、吐き気や顔面蒼白、冷や汗、頭重(ずじゅう)、肩凝り、頭痛、下痢などの症状が現れることがあります。 

【原 因】

■内耳の内リンパ液が増加し、膜が破れるのが原因■ 

 外界の音を感じ取ったり、自らの体の傾きや回転を感知したりするのが、内耳の役割です。この内耳の感覚細胞の周りを満たす内リンパ液が増えてたまり、やがては内耳の中の膜が持ちこたえられずに破れてしまった結果、めまいが起こると見なされています。

 内リンパ液がたまってしまう理由は、よくわかっていません。ただし、ストレス、過労、不規則な生活などによって体調が悪い時に、発作が起こりやすく、昼夜逆転したような生活を送っている人は、特に注意が必要です。 

【対 策】

■早めの対処と、ストレスをためない工夫が必要■

 もしメニエール病の発作が起きても、慌てないこと。めまいがしている時は、動かずに体をじっと横たえるなど、最も楽な姿勢で安静にしましょう。「冷たい濡れタオルなどで目を覆って、冷やすと楽になる」という人も、います。

 「めまい」の経験は、健康な人にもあります。それだけに、「この程度で休んでいられない」といった無理解や誤解も多いようで、無理をして仕事に出たり、学校へ行ったりということも、ありがちです。

 発作が治まったなら、なるべく早く耳鼻咽喉科を受診しましょう。最初の1、2回の発作で、適切な診断と治療を受ければ、8割は治るとされています。 

 日常生活においては、細かいことにとらわれず、「病気と気楽に付き合っていく」くらいの気の持ち方が、必要かもしれません。 

 日常、気を付けて置きたいこと!

□過労や睡眠不足に注意する

□ストレスをため込まない

 夜はなるべく12時前に寝て、リズム感のある規則正しい生活を送りたいものです。一度かかってしまっても、睡眠を十分にとって体を休め、ストレスをため込まないように心掛ければ、再発を防ぐことができます。さらに、

□バランスのとれた食事をする

□タバコは禁物、アルコールはほどほどに

□週1回はスポーツで汗を流すなど、気分転換を図る  

 残念ながら、メニエール病の根本的な治療法は、見付かっていません。基本は、発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法になります。

 発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、メニエール病であることがはっきりするので、ステロイド中心の薬による治療が行われます。

 具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。

 薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われますが、メニエール病は症状の現れ方や程度にかなり個人差があります。

 最近は、「めまい外来」という診療窓口も出てきていますので、専門医に相談しながら、自分に合った治療法を根気よく見付けていくことが大切です。

【メニエール病と紛らわしい病気】

●聴神経腫瘍(しゅよう)

 聴神経に発生する良性腫瘍で、耳鳴り、聴力低下、顔面の感覚異常などの症状があります。進行すると、ふらついたり、立ちくらみのめまいを起こします。

 対処法としては、腫瘍が脳のほうへ広がる前に、手術をしなければなりません。

●小脳の障害

 回転性のめまいに加えて、ふらつく、ろれつが回らない、物が二重に見える、などの症状があります。

 とりわけ、小脳出血は危険です。回転性のめまい、激しい頭痛、嘔吐が特徴で、麻痺(まひ)を伴う場合もありますから、緊急に神経内科や脳神経外科に行く必要があります。


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良性発作性めまい

■頭の位置加減によって、突然めまいが起こる良性の障害

 良性発作性めまいとは、急に頭を動かすなど頭の位置加減によって、突然めまいが起こる障害。良性発作性頭位めまい、良性発作性頭位変換性めまいとも呼ばれます。

 耳が原因で起こるめまいの中で最も頻度の高いもので、発症年齢は20~70歳代までに渡り、好発年齢は50~70歳代です。男女比では、女性が男性の1.8倍とやや多くなっています。

 ほとんどの場合、起き上がる、横たわる、寝返りを打つ、見上げるために頭を後ろに反らすなど、頭の位置を変える動作が引き金になって、急激に回転性の激しいめまいが起こります。人によって、めまいが起こりやすい頭の位置があります。

 症状は数秒から数分で自然に落ち着くことがほとんどですが、また頭を動かすとめまいが反復します。吐き気を伴うこともあります。通常、耳鳴りや難聴などの聴覚の症状、 頭痛、しびれ、体のふらつきは自覚しません。2~3週間くらいは、何度かめまいが起こります。

 この良性発作性めまいは、内耳の中の耳石が頭の位置により、バランス機能を補助している三半規管の中に入り込んで、三半規管の有毛細胞を刺激するために起こります。

 耳の一番奥にある内耳は、聴覚器官である蝸牛(かぎゅう)と、平衡器官である前庭という二つの部分から構成されています。そして、前庭器官にある耳石器の上には、炭酸カルシウムでできている耳石が多数乗っています。正常であれば、頭が動くと耳石が三半規管の内側にある神経受容体(毛細胞)を刺激し、これらの細胞が頭の動いた方向を示す信号を脳へ送ります。

 しかし、この耳石が何らかの原因で本来の位置からずれ、入り込んだ三半規管内の1カ所で塊になって浮遊したり、三半規管内のクプラと呼ばれる部位に付着することがあります。この状態で頭を動かすと、過大な信号が送られ、頭が実際以上に動いたとする誤った情報が脳へ伝わります。この誤った情報と目からの情報にずれが生じると、回転性めまいの発作が起こるのです。

 良性発作性めまいを起こしやすいのは、交通事故などで頭部外傷を負った人、慢性中耳炎を患う人、過去に結核を患いストレプトマイシンでの治療を受けたことのある人、中耳ないし、あぶみ骨の手術を受けた人とされています。

 回転性めまいを起こす姿勢をとらなければ避けられますので、めまい発作の起こる頭の位置を見付け、その頭位を避けるようにして対処します。

■良性発作性めまいの検査と診断と治療

 良性発作性めまいは、次第に症状が軽くなってくることが多く、それほど深刻な疾患ではありません。通常は2~3週間で治癒しますから、心理面でもそれほど怖くないのですが、中には、まためまい発作が襲ってくるのではないかと不安を募らせ、恐怖心を抱く人もいます。また、この疾患に似た症状で、内耳の障害ではなく脳の疾患の場合もありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医の診断を受けます。

 医師による検査では、めまいが起こる頭の位置で眼振(がんしん)が現れ、次第に増強、減弱します。眼振というのは、眼球が不随意に小刻みに揺れ動く状態。ほとんどの場合、聴力検査、温度眼振検査で異常を認めることはありません。まれに、温度眼振検査で患っている側の耳の温度反応が高度に低下したり、反応がなくなったりすることもあります。体全体のバランスが悪くなることはありません。

 治療としては、内耳の機能を改善するための抗めまい剤や脳循環改善剤、ビタミン剤、めまいに伴う吐き気を抑える抗ヒスタミン剤などが用いられます。めまい発作ががまた出るのではないかという不安、恐怖心が強い人には、心理的不安を取り除くための抗不安剤などが用いられることもあります。

 めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとるといった理学療法によるリハビリテーションをすることも治癒を早めます。その頭位を何度も繰り返しとると、その都度めまいは出現するものの、次第に軽くなって、やがてめまいは消失します。

 最近では、エプリー法、パーンズ法、セモン法などといって、頭位と体位を変換する姿勢をとることで、遊離した耳石の塊をほぐして三半規管全体に再度行き渡らせる理学療法が開発され、良好な成績を上げています。エプリー法などにより、およそ9割以上の発症者は薬を使わずに、回転性めまいが治っています。発症者の一部は回転性めまいを再発するため、エプリー法などを自宅で繰り返し行う必要があります。

 理学療法が全く効果を発揮しないで、めまいの症状が反復して起こる場合には、手術が行われることもありますが、きわめてまれなケースです。このような場合、手術を検討する以前に、この疾患と同様な症状であっても、内耳障害ではなく脳障害の場合があるので、専門医の診断が必要となります。


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口腔カンジダ症(鵞口瘡)

■カンジダ菌の感染で、口の粘膜が白い苔状物で覆われる疾患

 口腔(こうくう)カンジダ症とは、口腔内に常在するカンジダ菌という真菌によって、主として斑点(はんてん)状の白い苔(こけ)のようなものが生じる疾患。急性偽膜性カンジダ症とも呼ばれ、以前は鵞口瘡(がこうそう)とも呼ばれていました。

 乳幼児や老人に多い疾患ですが、生後間もない健康な乳児にみられるものは、放置しておいても自然に消えます。成人がかかることもあります。

 原因は真菌(かび)の一種のカンジダ菌の感染で、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。誘因としては全身の衰弱、抗生物質の長期連用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)、免疫抑制剤、抗がん剤などの使用、がんの放射線治療、ビタミン欠乏、全身疾患による免疫機能の低下が挙げられます。

 カンジダ菌は酵母菌(イースト)の一種で、元来、人間の口腔粘膜や腸管の中に住んでいます。これが誘因があってたまたま増殖すると、口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症になるのですが、このカンジダ菌は水虫などを起こす白癬菌とは異なって、体の内部に侵入する力があります。そのため、免疫機能の低下がある時には、全身に増殖して、重篤な疾患になることがあります。

 口腔カンジダ症の最初は、口腔粘膜、舌、歯肉が赤くはれ、表面が白い斑点状の苔状物の膜で覆われます。この苔状物の膜は軟らかくて、こするとすぐはがれ、はがれたところは赤くただれます。普通、痛みは軽度ですが、舌のズキズキする痛み、違和感、味覚異常を伴うこともあります。熱などの全身症状は、ほとんどありません。

 適切な処置をすれば、比較的早くよくなりますが、まれには進行して咽頭(いんとう)から食道、肺に広がって、カンジダ性肺炎を生じることもあります。

■口腔カンジダ症の検査と診断と治療

 口腔カンジダ症が味覚異常の原因になっていることもありますので、口の中を清潔に保ち、消毒力のあるうがい薬を使ってみます。それで舌などの口腔内の違和感が治らない場合、また全身状態が悪い場合には、食道や肺に広がることがあるので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

 医師は病状から診断しますが、カンジダ菌が証明されれば確定します。証明のためには、KOH検査(皮膚真菌検査)と培養検査が行われます。KOH検査では、綿棒で皮膚の表面をこすり、それを水酸化カリウム溶液で溶かして、顕微鏡で観察します。5分もあれば結果が出ますが、カンジダ菌の種類の特定までは困難です。培養検査では、クロモアガー・カンジダ培地などで培養します。検査に時間がかかりますが、菌の種類を特定できます。

 治療においては、抗真菌剤の外用が主体で、殺菌性消毒剤による口すすぎも有効です。外用剤では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダ菌に対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤があります。口腔カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

 なお、抗真菌剤の外用剤は近年、たくさんの新しい薬剤が開発されかなり有効ですが、中には白癬菌にだけ効き、カンジダ菌には効きにくい薬剤もありますので、注意が必要です。

 症状が強い場合には、抗真菌剤の内服を行います。内服剤では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。特殊な内服剤として、口腔・食道カンジダ症用で、ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード)ゲルがあります。1日1〜2本を4回に分けて内服しますが、口腔カンジダ症では病変部に塗るだけでも有効です。


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ヘルペス性歯肉口内炎

■単純へルペス1型ウイルスの感染で、乳幼児に起きる口内炎

 ヘルペス性歯肉口内炎とは、単純ヘルペス1型が初めて感染することで、口の中に炎症が起きるウイルス性口内炎の一種。へルペス性口内炎とも呼ばれます。

 生後6カ月以降から3歳までの乳幼児に多く発症し、口唇ヘルペスと呼ばれる潰瘍(かいよう)が数個から多数まとまって、口や唇、皮膚などに現れます。単純ヘルペスウイルスは、ウイルスを持つ人が洗顔や歯磨き後に使うタオルや、食器、唾液などに触れることで、感染が起こるとされています。ヘルペスウイルスを持っている母親が子供にキスをして、移してしまう場合もあります。飛沫(ひまつ)感染もあります。

 単純ヘルペス1型ウイルスに初感染すると、普通は4~10日の潜伏期間をへて発症します。歯茎の炎症や口の中の強い痛み、かなりの高熱、頚部(けいぶ)リンパ節がはれるなどの症状が現れます。口の中に水疱(すいほう)ができ、それが破裂すると、潰瘍となります。歯を磨いた時に、歯茎から出血することもあります。

 痛みは5~7日、発熱は2~5日、症状全体は7日〜14日続き、治癒します。

 乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎になると、口内炎ができる前に口の中がチクチクと痛むので、不快感を訴えて泣きますが、症状が見えないため、親は疾患に気が付かない場合もあります。口内炎になると口の中が痛いために、よだれが増え、食事や水分を受け付けずに、脱水症状になることもあるので、注意が必要です。
 また、もともと慢性湿疹(しっしん)があって副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟膏を塗っている乳幼児が、このヘルペス性歯肉口内炎にかかった場合、湿疹部にヘルペスウイルスが広がって、ヘルペス性湿疹に進行して重症化しますので、特に注意が必要です。

 ヘルペス性歯肉口内炎は乳幼児に多い疾患ですが、成人になってから起こすこともあります。この場合、乳幼児の時に発症するよりも重症になるケースが多くみられます。

■へルペス性歯肉口内炎の検査と診断と治療

 乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペス性口内炎)を起こした場合、適切な処置をすれば比較的早くよくなりますので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

 医師による治療は、単純ヘルペスウイルスを抑えるゾビラックスという抗ヘルペスウイルス剤を1日4回服用で、数日間続けます。発熱やのどの痛みといった症状を和らげるために、解熱鎮静剤や痛み止めの薬、ビタミン剤が使われることもあります。発熱は数日で落ち着きますが、口内炎など症状全体は治るまで1週間~10日ほどかかります。

 家庭での食事に関しては、口内の痛みが強く、食べたがらないことが多いので、口当たりのよいプリンやゼリー、アイスクリーム、豆腐などを与えます。何回かに分けて、少量ずつ与えるのも一つの方法です。硬い食べ物、熱い食べ物、あるいは刺激のある味付けは、痛みを強めるので避けます。食後は、ぬるめのお湯やイソジンなどでうがいをし、口の中を清潔にします。

 食事ができない時は、脱水症状を起こさないように十分に水分を与えます。牛乳、お茶、イオン飲料などがよいでしょう。食べなくても、水分をしっかりとれていれば大丈夫です。乳酸菌飲料やジュース類は痛みを増すことがあるので、与えないほうが無難です。

 唾液などから移りますので、タオル、食器は別にします。入浴は熱がある場合でも、特に具合が悪そうでなければかまいません。

 熱が下がって普通の生活ができるようになるまで、学校や幼稚園、保育所などは休み、外出も控えます。完全に治っていないと、他の子供に移してしまう可能性があります。


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赤あざ(血管腫)

■皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤いあざ

 赤あざとは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見え、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

 異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

 この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。

 ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

 正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

 また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

 出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。この赤あざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

 自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

■赤あざの検査と診断と治療

 赤あざ(血管腫)を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

 医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

 カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

 顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

 即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

 単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。


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足白癬(水虫)

■足に生じる感染症で、日本人の4人に1人が発症者

 足白癬(はくせん)とは、真菌(かび)の一種である白癬菌で足に生じる感染症。俗に、水虫と呼ばれます。

 白癬菌で全身の皮膚に生じる白癬の中では、圧倒的に多く、全白癬発症者の65パーセント程度を占めます。さらに、足白癬にかかっていても皮膚科を受診しない人も多く、日本人の4人に1人くらいがかかっているというデータもあります。

 この足白癬は、趾間(しかん)型、小水疱(しょうすいほう)型、角質増殖型に病型分類されます。複数の病型を示すことも、多くみられます。

 趾間型は、足の指の間に浸軟、あるいは乾いた鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑性局面を示し、びらん(ただれ)や亀裂を伴うことがあります。小水疱型は、足の底から足の側縁にかけて、半米粒大までの集まったり癒合する傾向のある水疱、膿疱(のうほう)を伴う紅斑性局面を示します。ともに春から夏にかけて発症したり悪化しやすく、かゆみを伴うことが多いのですが、必ずではありません。角質増殖型は、かかとを中心に足の底全体の皮膚の肥厚と角化、細かく皮膚がむける落屑を特徴とします。かゆみは少なく、冬もあまり軽快しません。

 足白癬を放置していると、白癬菌が爪(つめ)を侵し、爪(そう)白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。高齢者に多くみられます。

 爪の甲の肥厚と白濁を主な特徴とし、自覚症状はありません。まれに、爪の甲の点状ないし斑(まだら)状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

 足白癬と区別すべき主な疾患は、接触皮膚炎、汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹(しっしん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症、掌蹠角化症などです。炎症症状の強い足白癬の悪化時に、手あるいは白癬病変のない足に小水疱が左右対称に生じることがあります。この病変中からは白癬菌は検出されず、一種のアレルギー反応と考えられ、白癬疹と診断されます。

■足白癬の検査と診断と治療

 医師による足白癬(水虫)の検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。手足に水膨れがみられ、原因が明確になっていない汗疱との区別が、足白癬の検査では必要とされます。

 治療法としては、白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。4週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では、内服療法を行います。爪白癬の場合、少なくても3〜6カ月間の内服が必要です。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

 生活上で足白癬に対処する注意点を挙げると、真菌(かび)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。ふだんから足の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。家族で他に足白癬の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。


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いんきんたむし(股部白癬)

■白癬菌が皮膚、特に内またなどに感染して起こる皮膚病

 いんきんたむしとは、かび(真菌)の一種の白癬(はくせん)菌が原因となって起こる皮膚病で、特に、またやしり、太もも、下腹部など、すれて湿っている部分にできるもの。頑癬、股部(こぶ)白癬ともいいます。

 夏季に、男性に多くみられ、時に集団発生することもあります。白癬菌は皮膚糸状菌とも呼ばれ、日本では10種類ほどみられるとされていますが、いんきんたむしの原因菌は大部分が猩紅(しょうこう)色菌で、まれに鼠径(そけい)表皮菌によることもあります。

 初めの変化は、丘疹と小さな膿疱(のうほう)です。丘疹とは、小さなぶつぶつで皮膚面からわずかに盛り上がっているものです。膿疱とは、黄色く濁った液が入っている小さな水疱です。

 これらが集まって輪状に並び、堤防状に盛り上がって、境界が鮮明になっていきます。中心部の皮膚は一見、治ったように見え、厚く硬くなって、褐色の色素沈着がみられるようになります。辺縁部には、赤いやや水っぽい丘疹が集まり、むけかかった皮がついているのが特徴です。激しいかゆみを伴い、体が温まると強くなります。

 なお、白癬菌は高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)を栄養源とするため、男性の陰茎、陰のうに白癬菌がつくことは、まれです。

■いんきんたむしの検査と診断と治療

 医師による、いんきんたむしの検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。

 治療法としては、表在性の白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。普通、1週間から10日で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるものでは、内服療法を行います。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

 生活上で、いんきんたむしに対処する注意点を挙げると、真菌は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。毎日、入浴して、その日についた汚れをせっけんや、ボディソープできれいに洗い流して、後は十分に水をふき取ります。湿った下着類も毎日、取り替えます。ふだんから体の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。


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カポジ肉腫

■ヘルペスウイルス8型による皮膚がん

 カポジ肉腫(にくしゅ)とは、ピンク色、茶色、紫色などの平らな染み、または、こぶが皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。

 原因となるのは、ヘルペスウイルス8型(HHV-8、別名、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)で、血管内皮細胞に感染して発症し、やがて肺、肝臓、腸管などの臓器に病変が広がります。

 1872年、ハンガリーの医師モーリッツ・カポジが、皮膚病変肉腫として報告。以降、珍しい皮膚がんの一つとして位置付けられていましたが、1994年、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者から初めての発症が報告され、その末期に発症することで知られるようになりました。アメリカでは、カポジ肉腫を発症する人のほとんどが、エイズ患者です。

 このカポジ肉腫は、古典型、アフリカ型、医原性型(免疫抑制治療関連性型)、エイズ型(流行性型)の4つに細分でき、それぞれ症状や進行が異なります。

 古典型は高齢の男性で主に地中海系あるいはユダヤ系の人、アフリカ型は赤道直下の一部地域に住むアフリカ系の小児や若者、医原性型は臓器移植後に免疫抑制薬の投与を受けている人、エイズ型はエイズ患者に発症します。

 高齢の男性が発症する古典型では、カポジ肉腫は紫色や濃い茶色の単独の染みとして、つま先や脚にできます。この染みは数センチ大になり、色も濃くなって、平ら、または、わずかに盛り上がり、出血しやすくなって潰瘍(かいよう)化します。脚には、同様の染みがいくつか現れることがあります。

 この古典型のカポジ肉腫はゆっくりと、時には10~15年かけて進行します。病変が進むにつれて、脚に浮腫(ふしゅ)が生じ、血液が正常に流れにくくなります。しばらくして、病変が他の臓器に広がり、他の種類のがんを発症することもあります。

 医原性型(免疫抑制治療関連性型)のカポジ肉腫は、体が感染と闘うのを助ける免疫系を弱める薬を投与されている人に、発症する可能性があります。肝臓や腎(じん)臓などの臓器移植を受けた人では、移植された臓器を異物と見なして免疫系が攻撃しないように、免疫抑制薬を飲む必要があるためです。

 アフリカ型、エイズ型(流行性型)では、高齢男性が発症する古典型よりもっと悪性です。皮膚に現れる染みは、数が多く、体中どこにでもできます。これらの染みは数カ月以内に体の他の部位に広がりますが、口の中にできることも多く、そうなると物を食べる際に痛みます。

 この腫瘍は、リンパ節や内臓にもできます。特に、消化管にはできやすく、下痢と出血を引き起こし、便に血が混じるようになります。

■放射線療法が一般的な治療法

 医師による治療では、カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術で病変を取り除くか、液体窒素で腫瘍を凍結させて殺します。

 肉腫の数が少なく、他の症状が全く出ていない場合は、症状が広がるまでは治療を受けないという選択も存在します。

 カポジ肉腫が皮膚に多数できている場合は、放射線療法を行います。この放射線療法が一般的な治療法で、がん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させるために、体外の機械からX線や他の高エネルギー線を照射します。

 悪性のカポジ肉腫の場合は、体の免疫システムが正常であれば、インターフェロンの投与や化学療法を行います。化学療法では薬を使ってがん細胞を殺しますが、薬は経口投与されるか、静脈注射または筋肉注射で投与されます。薬が血流に入り、体中を駆け巡り、最初に発生した部位以外のがん細胞も破壊することができるため、化学療法は全身療法とも呼ばれます。カポジ肉腫に化学療法を行う場合、病変に直接注射されることもあります。

 免疫抑制薬の投与を受けている人の場合は、投与を中止すると腫瘍が消えることがあります。免疫抑制薬の投与を継続しなければならない人の場合、化学療法と放射線療法を行いますが、投与を中止した人と比べると成果はよくありません。

 エイズ型のカポジ肉腫の場合、化学療法や放射線療法の効果はあまり期待できません。抗レトロウイルス薬の投与により、免疫システムの機能が改善されれば、結果は良好です。

 高活性抗レトロウイルス療法が行われる場合、レトロウイルスの1つであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を標的として、いくつかの抗レトロウイルス薬が組み合わされます。これらの薬物は、体内でウイルスが増殖するのを阻止し、エイズ型のカポジ肉腫のリスクを低下させるのに役立ちます。

 高活性抗レトロウイルス療法では、薬の投与など他の治療法と併用せず、体内の免疫系によってがんと闘う、生物学的治療が単独で用いられることもあります。生物学的治療とは、体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、疾患に対する体本来の防御機能を強化、あるいは修復するものです。

 治療後に再び悪化(再発)した再発カポジ肉腫では、カポジ肉腫の種類、全身の健康状態、以前に行った治療に対する反応によって、治療法が異なります。肉腫は発生部位で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。


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陥入爪

■つめの甲が弓なりに曲がり両側縁に食い込んだ状態

 陥入爪(かんにゅうそう)とは、つめの甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に食い込み、爪廓部を損傷する状態。陥入爪が高度に湾曲したものを、巻きづめと呼んでいます。

 足のつめに起こることがほとんどで、まれには手のつめにもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

 主な原因は、先天的なつめの異常、つめの外傷、つめの下がうむ疾患であるひょうそ後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴によるつめの圧迫、不適当なつめ切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、つめの水虫によるつめの甲の変形などが加わって、悪化します。

 つめの甲の端が爪廓にくい込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、陥入したつめの甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

 つめの甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く食い込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどにつめが深く突き刺さってしまうこともあります。

 この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤いできものを生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)と呼びます。

■陥入爪の検査と診断と治療

 ひょうそなどの感染は、陥入爪を誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。陥入爪の再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

 治療法の基本となるのは、つめの端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術でつめの端を取り除く方法です。つめの変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

 樹脂製のチューブをつめの端に装着するガター法も、行われています。つめを切開して、つめの端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。同時に、ワイヤー矯正術も行われ、つめの湾曲を修正します。

 陥入爪を治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀を陥入爪でできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

 陥入爪がひどい場合には、つめの元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

 生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

 窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、つめを過度に圧迫するので避けます。つめ切りの際には、かえって陥入爪を増強させる深づめにしないように気を付けます。


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匙状づめ

■つめの甲の先端、あるいは全体の表面がへこんでいる状態

 匙状(さじじょう)づめとは、つめの甲の先端、あるいは全体がスプーン状にへこむ状態。スプーンネイルとも呼ばれます。

 全指のつめがスプーン状に表面がへこんでいる場合、成人では鉄欠乏性貧血の症状のことがあります。同時に、口角炎、口唇炎、赤い舌がある場合は、さらにその可能性が強いので、内科を受診する必要があります。

 鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になって貧血を起こし、めまいや、立ちくらみ、匙状づめの症状が現れたりします。体内には、鉄分がため込まれているため、すぐに鉄分がなくなってしまうということはありませんが、ため込まれている鉄分がなくなった時に症状が現れます。

 また、数本のつめだけに、スプーン状に表面がへこんでいる変化がみられる場合は、局所的な原因のことが多く、クリーニング業など、酸やアルカリ、有機溶剤などに長期間、接している人に生じることがあります。

 また、匙状づめは、手先に圧迫のかかるような職業の人にも多くみられます。

■匙状づめの検査と診断と治療 

 医師による匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

 徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。赤血球中のヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。

 匙状づめは、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや偏食、不規則な食事、夜更かしを改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっても、鉄分を意識的に摂取することはお勧め。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

 成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

 蛋白(たんぱく)質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄と蛋白質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べます。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにします。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に摂取すると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むといいでしょう。


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ジベルばら色粃糠疹

■胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚病

 ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)とは、胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚疾患。粃糠疹とは、表皮の細かい角質片が発疹に付着したものをいい、この疾患の特徴です。

 主として、比較的年齢の若い10歳代から30歳代にみられます。かゆみはあったり、なかったりで、発疹が派手にたくさんできる割には、全身症状も少なく、心配のない疾患です。

 一つひとつの発疹は、直径3〜4センチまでの卵円形の赤い斑点(はんてん)で、大きくなると中心が褐色になり、辺縁が赤く、表皮の細かい角質片はがれ落ち、次第に拡大していくのが特徴です。腹部、背中に多くみられ、皮膚のしわ方向に沿って発疹が出現するため、クリスマスツリー様となることがあります。手足の先端や顔には、発疹は出ません。

 症状が出る前の数日から数週間ほど前に、ツバキの葉っぱほどの大きさの発疹が1つだけ、体のどこかに出現することもあります。この初発疹をヘラルドパッチと呼びますが、かゆみがあまりないため発見されることはあまりありません。

 ジベルばら色粃糠疹の多くは、放置しても3週間から1カ月で治ります。感染力は弱く、家族内感染も普通はみられません。

 1860年に、フランスのカミーユ・メルシオール・ジベール医師が世界で最初に発見したため、この疾患名がつきました。原因は、現在でも不明。ウイルス感染説を始め、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などと同じような細菌感染に関係するアレルギー説、胃腸障害による蛋白(たんぱく)質の分解異常による中毒説などがありますが、いまだに結論は出ていません。

■ジベルばら色粃糠疹の検査と診断と治療 

 派手にたくさんの赤い斑点ができるため、驚く人が多いようですが、放置しても3週間から1カ月で治る疾患ですので、あまり心配はいりません。かゆみがなければ、自然に治癒するのを待ってもかまいません。

 しかし、健康食品などの薬疹、ウイルス性発疹症などの全身的な疾患、あるいは湿疹、体部白癬(はくせん)、乾癬などの疾患と紛らわしい場合もありますので、一応は皮膚科の専門医を受診したほうが安心です。

 医師の診断は、特徴的な発疹とその分布、経過により判断します。かゆみが強ければ、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めの内服剤、あるいは外用剤を処方し、発疹には副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を処方します。

 発症者の中には、なかなか副腎皮質ホルモン外用剤に反応しないことや、普通の湿疹と誤診されやすいという理由で、多数の医療機関を駆け回るドクターショッピングをする人もいます。

 日常生活は、ふだんと同様でかまいません。学校への登校、会社などへの出勤も、問題はありません。妊婦の感染によって胎児に影響することも、ありません。通常、入浴も問題はありませんが、こすり過ぎると皮膚に傷ができやすいので注意します。


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しみ(肝斑)

■30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

 しみにもいろいろな種類がありますが、肝斑(かんぱん)とは30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝臓の疾患とは関係がありません。

 日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。 日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

 肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

 原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

 妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

 また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

 紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

 原因として、ストレスも関係しているともいわれています。 そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きく関わってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

 初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

 また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

■しみ(肝斑)の検査と診断と治療

 肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

 外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

 外科的療法としては、光治療、皮膚のターンオーバーを促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

 日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

 皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

 また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。


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じんましん(蕁麻疹)

■大小の赤いはれが現れ、かゆみを伴う皮膚病

 じんましん(蕁麻疹)とは、蚊に刺されたような大小の赤いはれが生じ、かゆみを伴う皮膚病。はれを膨疹(ぼうしん)と呼びます。

 急激に全身の皮膚にできて数日で治る急性じんましんと、体のどこかに毎日できていて、一年くらい続く続く慢性じんましんとがあります。

 原因としては、機械的刺激、食べ物、温熱、寒冷、日光、薬剤、内臓の疾患などさまざまです、時には精神的な影響によるものもあります。機械的刺激が原因で生じやすいのは、ベルトやブラジャーなどの下です。食べ物で原因となりやすいのは、サバなどの背の青い魚、貝類、エビ、カニ、卵、牛乳、チーズ、そば、チョコレート、ナッツ類などが挙げられます。合成着色料、保存料、食肉に含まれる抗生物質などの食品添加物も、原因となります。原因の不明なものも、少なくありません、

 症状としては、蚊に刺されたような大小さまざまな膨疹が突然できて、徐々に拡大していきます。1個1個の膨疹は数時間で消えますが、違う部分からまた新たな膨疹が出てきたりします。かゆみがあるため手で膨疹をかくと、どんどん拡大します。目の中や唇にできることもあり、夏に発症することが多い傾向があります。

 膨疹は皮膚や粘膜のやや深い部分にできる水膨れで、血管の中を流れている血液の液体成分が血管の外にあふれ出てくるために発生します。目には見えませんが、血管には小さい穴がたくさん開いており、この穴が何らかの原因で大きくなると、血液の液体成分が漏れて血管の外に出てきます。穴より大きな赤血球や白血球は漏れません。

 この血管の穴を大きくするものの一つに、ヒスタミンという物質があります。ヒスタミンはまた、神経を刺激して、かゆみを起こします。じんましんのほとんどは、このヒスタミンかそれに似た物質によって起こされています。

 ヒスタミンは体の中では、主に肥満細胞(マスト細胞)の中に蓄えられており、アレルギー反応の結果として肥満細胞から出てくる場合と、そうでない場合があります。アレルギー反応による場合は、原因となる食べ物などの抗原に対するIgE(免疫グロブリンE)と呼ばれる抗体がまず肥満細胞にくっつき、そこに抗原がさらにくっつくと、肥満細胞がヒスタミンを放出します。アレルギー反応によらない場合は、物理的刺激などその他の原因で肥満細胞がヒスタミンを放出します。

 最も危険なじんましんは、喉頭浮腫(こうとうふしゅ)といって、気管の入り口の粘膜がはれるタイプです。急に起こると、一気に窒息してしまうこともあります。気管支の粘膜がはれると、ぜんそくの症状が出ます。また、腸の粘膜がはれると、下痢、腹痛、嘔吐(おうと)などの腹部の症状が出ます。

 これらの症状が出た場合は、じんましんが体の内部の粘膜にも出ているという印です。その程度が強い場合には、血液の成分がたくさん血管外に漏れ出ており、循環している血液量が減り、ショック状態となる場合があります。

■じんましんの検査と診断と治療 

 じんましんの治療は、原因を早く発見して、それを避けるようにします。

 最も手軽で一般的なのは、血液検査で特定のものに対するIgE抗体を調べる検査です。これが高いものは、じんましんの原因である可能性が高くなります。ヒスタミン遊離テストは少し進めて、原因のものが本当に肥満細胞からヒスタミンを出すかどうかを血液を培養して調べるものです。皮内注射によるテストはさらに進んで、直接皮膚に疑わしいものを入れて、じんましんが出るかどうかを確かめる検査です。

 皮膚をボールペンの頭などでこするとみみずばれができることを皮膚描記症といい、機械的じんましんの診断となります。1カ月以上長引いたり、繰り返す慢性じんましんの場合は、肝機能や血沈、CRPなどの炎症反応を調べて、慢性の感染症や膠原(こうげん)病などが隠れていないかどうかチェックします。

 急性じんましんでは、原因があってから1時間以内に出ることが多いので、その直前に何を食べたか、何をしたか、何を触ったか、どこに行ったかなどを考えると原因に思い当たることがあります。2回、3回と繰り返し起こってきたら、原因がより確信できます。しかし残念ながら、原因がわからないことが大半。また、同じ原因があっても、必ずしも毎回じんましんが出るとは限りません。体調の悪い時、特に下痢をしている時などに出やすくなります。

 原因不明の慢性じんましんの一部は、自分自身の体のどこかの部分に対して、アレルギー反応を起こしているのではないかと考えられています。

 もし、原因がわかりましたら、再発を防ぐために可能な限りそれを避けることです。軽いじんましんは、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の内服で消えます。眠くなることがありますが、数日間飲んだほうがよいでしょう。最近開発されたものは、眠気が少なくなっています。

 薬剤の効果は、個人差があります。通常1~3日飲んで効果のない薬は効果が期待できませんので、内服剤の変更が必要です。急性じんましんは、効果のある内服剤で1~2週間でよくなります。それ以上続く慢性じんましんは、できない薬剤と量を見付け、徐々に減らしながらやめるようにします。治療に抵抗するようなら、原因を見付ける検査などをする必要があります。妊娠早期では、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤の内服には注意が必要です。

 ひどいじんましんは、強力ネオミノファーゲンシー(強ミノ)やステロイドの注射をします。危険なじんましんの場合は、直ちに点滴で水分を補給し、ボスミン、ステロイドなどの注射をします。アナフィラキシーを起こしてしまった場合は、緊急処置としてエピネフリンの自己注射(エピペン)を行います。

 かゆい時はできるだけかかないで、冷やすなどして我慢します。温まると、じんましんはひどくなります。子供の場合は、多くは自然に起こらなくなりますので、特に原因が見当たらなくてもあまり心配いりません。


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爪甲剥離症

■爪の甲が爪床から離れて、浮いてくる状態

 爪甲剥離(そうこうはくり)症とは、爪(つめ)の甲が爪床からはがれる状態。爪の半分くらいまでははがれてくることがありますが、爪が抜け落ちることはありません。

 爪は本来、先端部以外は爪の下の皮膚とよく付着しているものですが、爪甲剥離症では爪が下の皮膚である爪床から遊離します。爪が爪床から離れて、浮いてくる状態は爪の先端から始まり、根元に向かって徐々に進行して、剥離した爪は白色ないし黄色に変化します。

 また、指と爪の透き間にゴミが入り、しばしば部分的に汚い褐色調を呈することもあります。こういう状態の時、爪の下をつまようじなどで掃除するのはよくありません。皮膚を痛めて、ますます悪化することになります。

 爪甲剥離症の原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性の爪甲剥離症もありますが、多くは後天性で、外因、感染症、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患などに伴って生じます。最も多いのは、原因のはっきりしない特発性のもので、この場合、症状は軽くあまり進行するということもありません。

 外因によるものとしては、爪と爪床の間にトゲや鉛筆の芯(しん)などが入るなどのけが、あるいは、指先の細かい操作を必要とする職業によるものがあります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーターなど。また、マニキュアや洗剤、さらには有機溶剤やガソリンなども原因になります。極めて軽い湿疹(しっしん)やかぶれが起こった場合、手の皮膚ではわずかに皮がむけるだけで治っていきますので、気付かずにすむことが多いのですが、爪の下ではほんのわずかに皮がむけた状態でも、爪ははがれて浮いた状態となります。

 感染症によるものは、カンジダという真菌、一種のカビの爪床部への感染によるものがほとんどです。この場合は、爪の下の皮膚がガサガサした感じになります。

 薬によるものとしては、内服するだけで爪甲剥離症を起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

 皮膚疾患に伴うものは、乾癬(かんせん)、接触皮膚炎、掌蹠(しょうせき)多汗症、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、尋常性天疱瘡(てんぽうそう)、薬疹などがあります。

 全身疾患に伴うものとしては、甲状腺(せん)機能高進症(バセドウ病)に伴う爪甲剥離症(プランマーズ・ネイル)が最も有名です。この場合、爪は平らになることが多く、時に反り返ったようになることもあります。最初1本の指から始まり、次第に他の指にも進行していきます。甲状腺機能高進症以外にも甲状腺機能低下症、ペラグラ、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、梅毒などの感染症でみられます。

■爪甲剥離症の検査と診断と治療 

 念のために、皮膚科で診察を受けます。特に、1カ所または数カ所の爪だけが剥離を起こす通常の爪甲剥離症と異なって、手足すべての爪に変化がある場合は、甲状腺機能高進症を始めとする全身的な疾患が原因かもしれませんので、早めに受診するようにしましょう。

 よい治療方法はないのですが、カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。一般的には、角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。爪の治療には、非常に時間がかかります。甲状腺機能高進症に伴うものは、その治療を行えばよくなります。

 日常では、保湿剤などのスキンケア、ネイルケアにより予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、角質を構成するケラチンという蛋白(たんぱく)質が変化したものですから、マニキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。進行中は、水仕事を避けたほうが安全のようです。


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たこ、魚の目

■刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなった状態

 たこ、魚の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。たこの別名は、べんち。魚の目の別名は、鶏眼(けいがん)。

 厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているものを、たこといいます。逆に、円錐(えんすい)状に下に向かって皮膚が厚くなっているものを、魚の目といいます。

 たこは痛くありませんが、手で触ると硬く感じます。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。魚の目は、中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、その先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

 たこと魚の目では症状が違いますが、できやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

 原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、たこや魚の目になります。大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

 たこや魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

 開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐじん帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のためにじん帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

 ハンマー足指やその他の足指の変形も、たこ、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

 巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にたこ、魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にたこ、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。

 女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、たこ、魚の目ができやすくなるからです。反対に、たこ、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

■たこ、魚の目の検査と診断と治療

 たこ、魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、たこ、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

 また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで削り取ります。たこの場合は痛くない程度に、魚の目の場合は芯の先を少し血が出る程度に削り取ることが必要です。これを何回か繰り返します。

 保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

 手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

 なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。


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日光過敏症(光線過敏症)

■普通量の日光に当たっただけで皮膚に異常が起こる反応

 日光過敏症とは、普通の人では何でもない程度の日光の紫外線が当たっただけで、皮膚に異常が引き起こされる免疫システムの反応。光線過敏症とも、日光アレルギーとも呼ばれています。

 外部から起こる外因性のものと、体の内部から起こる内因性ものがあります。

 外因性の日光過敏症は、日光に当たると敏感になるような化学物質が皮膚に接触して起こります。ある種の薬や化学物質を内服したり、ある種の薬や化粧品などを皮膚に塗った後、日光に当たった場合にのみ現れます。日光過敏を助長させる可能性がある内服剤には、経口糖尿病食、降圧利尿剤、精神安定剤、ある種の抗生物質などがあり、光エネルギーにより活性化される物質(光感作物質)が何らかの経路で皮膚に達し、光エネルギーを吸収して皮膚に異常を起こします。

 内因性の日光過敏症は、小児期では色素性乾皮症、ポルフィリン症などで起こります。大人では、ペラグラ(ニコチン酸欠乏症)や、肝臓の疾患からくるポルフィリン症などで起こります。

 色素性乾皮症というのは、遺伝性の疾患で、日光が当たった部分が日焼けを繰り返し、皮膚が乾燥してくる疾患です。ポルフィリン症は、ポルフィリンという物質の先天性の代謝異常で、皮膚、歯、骨などにこの物質が沈着し、日光に敏感になる疾患です。ペラグラは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患です。

 また、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、単純性疱疹(ほうしん)のように、日光によって誘発されたり、悪化するものもあります。

 症状としては、日焼けのひどい状態から、湿疹(しっしん)、皮膚炎のようなものまでさまざまですが、顔、うなじ、手の甲のように、露出部分に起こるのが特徴です。普通は、強い日光に当たってから数時間で症状が現れます。中には、数日たってから出てくることもあり、日光照射との関係に気が付かない場合もあります。

■日光過敏症の検査と診断と治療

 日光過敏症を診断するための特別な検査はありませんが、それを取り除く必要があるいろいろな原因があるので、各種の検査や診断によって見付けます。

 皮膚が露出した部分だけに発疹が出た場合は、日光過敏症を疑います。その他の疾患、服用した薬、皮膚に塗った薬や化粧品などを詳しく調べると、日光過敏症を起こした原因を特定するのに役立ちます。全身性エリテマトーデスなど一部の発症者で、この反応の感受性を高める疾患を除外するための検査を行うこともあります。

 全身性エリテマトーデスによる日光過敏の発症者などでは、ヒドロキシクロロキンやステロイドを内服すると効果があることがあります。日光過敏のタイプによっては、皮膚を紫外線に対し敏感にする薬剤であるソラレンを併用して、紫外線を当てる光線療法を行うことがあります。この治療法はPUVA療法といいます。しかし、全身性エリテマトーデスの発症者は、この治療に耐えられません。

 原因が何であれ、日光に過敏な人は、紫外線を防止できる衣類を着用し、日光を極力避け、日焼け止めを使います。日光過敏を引き起こす薬や化学物質などは、可能ならば中止します。


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ふけ症

■頭部の角質片のはがれ落ちが目立つ疾患

 ふけ症とは、頭部の表皮の角質層が大小の角質片であるふけとなって、はがれ落ちるのが目立つ疾患。頭部粃糠疹(ひこうしん)とも、乾性脂漏とも呼ばれます。

 頭皮だけでなく全身の皮膚の表面からは、絶えず角質が自然にはがれ落ちています。この角質の細胞は非常に小さいために、目で見ることができません。ふけというのは、角質に皮膚の脂やごみが混ざり、細かい米ぬか状の白色、ないし灰色の角質片となってはがれ落ちたものです。

 健康な人でも生理的な現象として軽度のふけはみられますが、頭皮の新陳代謝が速まって角質がどんどんはがれ落ち、くしでとかすと肩に大小のふけが目立つ場合は病的と考えられます。一般的に、乾いたサラサラのふけを乾性ふけ、粘っこく重いふけを脂性ふけと呼びます。

 ふけ症の原因として、男性ホルモンであるアンドロゲンの影響が指摘されています。しかし、ふけの程度と皮脂の量は必ずしも比例しません。頭部の毛嚢(もうのう)に住み着いている微生物、特にかび(真菌)の一種である癜風(でんぷう)菌の量が増えており、これを抑える薬用シャンプーでふけが減ることから癜風菌が原因との説がありますが、関係はないとの説もあります。

 20歳代がピークで、その後、特に誘因もなく、ふけの量が増えたり減ったりします。40〜50歳代になると、自然に軽快する傾向にあります。普通、かゆみはなく、あっても軽度です。

 ふけ症として治療が必要になってくるのは、ほかの疾患の症状、脂漏性皮膚炎や乾癬(かんせん)などがある場合です。これらの真菌によって起こる疾患では、頭の皮膚が赤くなったり、かゆみを伴ったりしています。また、ふけがかさぶたのように大きく、固着する傾向のある時も、ほかの疾患の症状と考えられます。

 そのほか、若い男性の若はげの前兆として、ふけと抜け毛が多くなることもあり、粃糠性脱毛症と呼ばれます。

■ふけ症の検査と診断と治療

 自分でできるふけ症の対処法として、抗真菌薬であるケトコナゾールを含有するシャンプー(コラージュフルフル)を始め、真菌を抑制するジンクピリジンチオンを含有するメリットシャンプー、カロヤンなどのヘアートニックを用います。これらは、薬局で市販されています。洗髪回数としては、毎日1回または1日おきが適当であり、洗いすぎは逆効果のことがあります。

 日常生活での対処で効果が見られない場合、ほかの疾患の症状としてふけ症がある場合は、皮膚科を受診します。

 ふけ症の特別な検査はありませんが、脂漏性皮膚炎、皮膚の角質が異常増殖する乾癬、水虫の原因である白癬菌が頭皮に感染する頭部白癬、頭虱(あたまじらみ)との区別が必要です。抜けた毛やふけの顕微鏡検査により、白癬菌や頭虱の虫卵の有無が診断されます。

 専門医による治療としては、せっけんでよく洗い、皮膚の状態に合わせて副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)のローションを1日に2〜3回、擦り込むと効果があります。


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ボーエン病

■かなり高い確率でがんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つ

 ボーエン病とは、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病。1912年のジョン・T・ボーエン医師の論文から、命名された疾患です。

 このボーエン病は、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つであり、狭義には表皮内がんと同じです。表皮内がんというのは、がん細胞が皮膚の浅いところにだけあり、この状態では転移の心配はありません。

 しかし、放置していて進行すると、皮膚の深いところである真皮内に、がんが浸潤し体をむしばむ可能性があります。それも広い意味でボーエン病ですが、区別してボーエンがんと呼ぶこともあります。さらに進行すると、リンパ節転移や内臓転移を起こし、ついには死に至ります。

 ボーエン病は大人、特に60歳以上の高齢者に発症します。原因は、日光照射、ヒ素中毒、エイズを含む免疫抑制状態、ウイルス感染、皮膚傷害、慢性皮膚炎などです。

 典型的な症状は、境界が鮮明で、不整形の褐色の色素斑が現れ、上にかさぶたがつき、皮がめくれたりします。有色民族の場合は褐色ですが、白人の場合は紅斑が現れます。かゆみはないものの、湿疹(しっしん)や乾癬(かんせん)のような皮膚病と間違いやすいものです。

 日光の紫外線の影響による場合は、皮膚の露出部に色素斑が現れます。ヒ素やその他の影響による場合は、皮膚の露出部にも現れるとともに、服に覆われている体幹部や下肢、陰部が好発部位となります。

 放置すると、症状が不変の場合もありますが、通常は徐々に拡大します。単発の場合もありますが、多発例も10~20パーセント程度あり、ヒ素による場合は、手のひらと足の裏の角化、体の色素沈着と点状白斑、つめの線状色素沈着などの皮膚症状がみられ、皮膚以外にも肝がん、肺がん、膀胱(ぼうこう)がんなどの内臓悪性腫瘍(しゅよう)を合併します。原因が飲料水のヒ素汚染の場合は、地域的に多数発生します。

■ボーエン病の検査と診断と治療

 かゆみのない褐色の色素斑ができているのに気付いたら、一度、皮膚科専門医を受診します。

 専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹や乾癬など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をすることが必要です。

 ボーエン病と診断されれば、合併率が高い内臓悪性腫瘍の検査も同時にする必要があります。多発性ボーエン病では、ヒ素中毒などを除外するための検査も必要です。

 ボーエン病の治療としては、初期なら手術で病変を切り取れば、完治することがほとんどです。病変が小さければ切り取った後、傷を直接縫い合わせて閉じることもあります。病変が5センチとか10センチ以上では、切り取った後の皮膚欠損が大きく、複雑な形となり、直接縫合することができないこともあります。そういう場合は、植皮術や皮弁形成術で修復が可能です。

 表皮内がんより進行したボーエンがんである場合は、病変の切除と植皮や皮弁で修復することに加え、リンパ節廓清(かくせい)術を組み合わせることがあります。また、状況により放射線療法、抗がん剤の投与、レーザー焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固療法などが行われることがあります。

 病変を切り取った後の傷跡に、拘縮(こうしゅく)や外観の問題が生じることがあります。その場合、形成外科的な手法による改善が検討されます。病変の取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。


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腋臭

●腋の下の汗腺が臭いに関与

 腋臭(わきが)とは、腋の下の汗が原因で体臭が気になる病気です。腋の下のアポクリン腺という汗腺から出た汗に含まれる脂肪酸が、皮膚についている細菌によって分解され、腋臭の臭(にお)いが発生します。また、アポクリン腺以外のもう一つの汗腺であるエクリン腺も、その臭いの発散に関わっています。

 汗の臭いが気になるという人と、臭いより汗の量が多く、服に染みができて困るという人がいます。狭義では、前者を腋臭、ないし腋臭(えきしゅう)症と呼びます。後者は、多汗症といって区別します。

 世界的に腋臭体質者の割合を見ると、日本人では10人に1人、中国人では30人に1人、白人では10人に8人、黒人では10人すべてとされています。

 このように日本人では腋臭形質を持つ者が少数派という事情と、日本人が清潔好きという理由があいまって、自分の腋臭の症状が気になり、仕事や勉強に集中できない、臭いを嗅(か)がれるのが怖くて他人と交流できないなど、悩みを持つ人の中には、専門の医師による手術を希望するケースも多々あるようです。

 しかし、腋臭は生命を左右するような病気ではないため、たとえ腋の下の汗が多くて臭いが強いからといって、必ず手術しなければいけないものでもありません。本人が気にしなければ、臭いが強くても治療の対象にはならないということです。

●専門家による腋臭の治療法

 専門家による腋臭の治療としては、ボトックス注入、スマートリポ、医療レーザー脱毛などがあります。

 ボトックスは顔のしわの治療で知られますが、腋の下に注入することで、汗腺の活動を抑制し、汗の分泌を抑えます。注入後3~7日間で効果が現れ、約3、4カ月~半年の間は、汗の量を抑えることが可能です。

 スマートリポでは、腋臭の原因となる腋の下のアポクリン腺とエクリン腺に、スマートリポレーザーを照射し、汗腺を燃焼させます。メスを使用せず、直径1mmの針状のレーザーを毛根部に差し込んで、汗腺を直接照射するので、傷跡が残る心配もありません。治療時間が約30分と短く、治療後すぐに帰宅が可能です。

 医療レーザー脱毛では、高い出力レベルに設定したレーザーで、毛穴に沿って存在しているアポクリン腺を毛穴ごと破壊してしまうことで、臭いを軽減します。ただし、この治療法で腋臭を治療する場合、3 回程度の照射を必要とするなど、症状の適応に限界があります。1回の治療は5分ほどで、日常生活に制限はありません。腋の脱毛も、同時に可能です。


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アペール症候群

■頭の形と顔貌が特徴的で、手足の指の癒合がある先天性疾患

 アペール症候群とは、複数の特定の奇形を持っている先天性の異常疾患。エイパート症候群とも、尖頭(せんとう)合指症候群とも呼ばれます。

 アペール症候群の主な症状は、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症、合指症、合趾(ごうし)症で、頭の形と顔貌(がんぼう)が特徴的で、手足の指に癒合などの奇形があります。症状が似ているため、クルーゾン病と同一視する場合もあります。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 合指症は、隣り合った手の指がくっついている疾患。アペール症候群における合指症の場合、人差し指から小指までの4本の合指、または親指から小指まで5本全部の合指の2つのパターンに大きく分かれるようです。手の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。

 合趾症は、隣り合った足の指がくっついている疾患。5本全部の指がくっついていることが多いようです。合指症と同じく、足の指の間が皮膚によって互いにくっついている場合と、骨によって互いにくっついている場合とがあります。そのままでも歩行に問題はありません。

 水頭症のほか、聴力の障害、精神発達障害を伴うこともありますが、ほとんどは知能の発達に異常はありません。発生頻度は1万6000人に1人とされ、典型的な症状を持つ発症者は常染色体性優性遺伝をすることがわかっています。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ないものの、アペール症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■アペール症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしい、手足の指が癒着していると心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 アペール症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。 水頭症予防の手術が必要になる場合もあります。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。アペール症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 手足の指の癒着は、皮膚だけでなく骨まで癒着している場合、機能を損ねないように慎重に分離手術が行われます。歯列矯正を行う時には、アペール症候群の場合は健康保険が適用されます。


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肩凝り

●肩凝りは筋肉からのSOS信号

 現代病とも称される「肩凝り」。その直接の原因は、筋肉への酸素の供給不足と老廃物の蓄積です。しかしながら、筋肉の酸素不足などを招く原因となると、実に多種多様です。肩凝りを治す方法も、原因によって違ってきます。

 肩凝りの原因の8~9割は、使いすぎや年齢、体形などによるものです。若い時から肩の凝りやすい人は、ミドルになるに従って、ますますひどくなり、「背中に鉛の板を背負っているようだ」と表現する人もいます。

 ミドルの肩凝りの原因は、運動不足とストレスがほとんどだといわれています。肩凝りになりやすい人は、運動不足の上に、ストレスが加わり、筋肉に血流が行かなくなって、一種の循環障害を起こしてしまいます。

 また、高血圧や動脈硬化など他の病気が原因で、肩が凝る場合もなきにしもあらずですので、肩凝り以外の症状がある場合には、それぞれの専門医に相談してみましょう。

 一例を挙げれば、めまい、立ちくらみ、頭痛、背中の痛み、耳鳴り、胸が締め付けられるような痛み、などを感じる場合には、肩凝り以外の病気が隠れていることがあります。とりわけ慢性的な症状の場合は、運動不足とストレス以外の病気を疑ったほうがいいでしょう。「いつもと違う痛み」が「いつもより続く」場合には、注意しなければいけません。

 以下、肩凝りを起こす主な原因を紹介します。心当たりのある方は、肩凝りだけでなく、おおもとの原因を治すことが大切になります。

●肩凝りを生じる原因は複雑

 原因

     解   説

     具 体 例

肩凝りになりやすい体形

 肩凝りを起こしやすいのは、右の具体例のようなタイプ。

 例えば、肥満体の人は、頭や腕など肩の筋肉が支えるべきお荷物が重くなる。やせすぎの人は、肩の筋力が衰えているので、凝りを招きやすい。

 このような体形的に肩の筋肉に負担がかかりやすい人のほか、なで肩、猫背などのように、ふだんの姿勢が負担をかけていることもある。

・肥満体

・極端なやせ形(肩の筋肉が貧弱)

・なで肩(首や肩の筋肉が貧弱なことが多い)

・いつも背中が丸まっているような姿勢をとる

・首を下げ、下を向いたような姿勢をとることが多い

肩に無理な姿勢をとることが多い

 筋肉は、緊張させたり、緩めたりすることで、血液の循環を助けている。ところが、長時間にわたって、右の具体例のような姿勢をとっていると、筋肉の緊張状態ばかりが続いて、筋肉の血行が悪くなる。

 デスクワークが多い人などは、その典型。

・腹ばいになって本を読む

・寝転がってテレビを見る

・新聞を床に置いて座ったままで読む

・足を組み、前かがみでデスクワークをする

・枕が高すぎたり、軟らかすぎたりする

冷え症である

 寒い所にいると、私たちは自然に、前かがみの姿勢で肩をすくめ、体を硬くしてしまう。

 また、このような姿勢をとらないまでも、体が冷えると血管が収縮して血行が悪くなってしまう。

・冷え症である

・夏場、クーラーの効きすぎる場所で仕事をしている

・冬場でも、営業の外回りなどで長時間、外にいる機会が多い

精神的なストレスに弱い

 精神的に緊張したり、悩んだり、怒りなどを感じる時、筋肉内の血管も知らず知らずのうちに収縮している。

 このため、特に筋肉を使わなくても血行が悪くなり、筋肉に老廃物がたまってしまう。

・仕事や日常生活で、不安や悩み、怒りを感じることが多い

・責任感が強く、真面目(まじめ)で几帳面(きちょうめん)

・ちょっとしたことでも真剣に悩んだりしてしまう

・データを取り扱う仕事など、間違えないよう神経を使うことが多い

・ノルマや納期などに追われ、気が重くなることが多い

目が疲れている

 眼鏡やコンタクトレンズが合わないために、しっかり見ようとして無理な姿勢をとることで肩凝りにつながるケース、また、目の疲れや頭痛と連動して肩凝りが起こるケースも多い。

・眼鏡やコンタクトレンズがピッタリ適合せず、見えにくい

・パソコンに向かって長時間、仕事をすることが多い

肩や首の骨や関節、筋肉の異常

 年齢を加えるとともに、首、肩などの骨や関節、筋肉に何らかの異常が起きて神経を圧迫し、痛みやしびれを起こすことがある。

 具体例のような症状のある人は、整形外科などに相談してみることがお勧め。

・肩凝りだけでなく、痛みやしびれを感じることが多い

・腕を上げると肩が痛む

内臓系の病気を患っている

 内臓系の病気の自覚症状の一つとして、肩凝りが起こることも多い。例えば、狭心症、心筋梗塞、肺がん、糖尿病、高血圧、低血圧、胆石(胆のう炎)、更年期障害、貧血、胃炎、胃潰瘍など。

 肩凝りのほかに、右の具体例のような症状がいくつかあるようなら、内科医に相談してみよう。

 また、がんでできた腫瘍のせいで、肩凝りと同じような感覚があることもあるし、顎関節症、噛み合わせの悪さ、歯周病など歯の病気が原因になることもある。

・頭痛、頭が重い、めまい、耳鳴り、動悸、手足の冷え、体全体がだるい、急に胸が締め付けられるような痛みに襲われる、背中や右肩などの痛み、立ちくらみ

・歯や顎の異常

 

●温めるべきか、冷やすべきか

 冷やすと「すーっ」として気持ちがいいため、冷やすものと思われがちだが、基本的には温めること。外傷性の打ち身や捻挫などで、熱を持っている場合には、早期なら冷やすこともあるが、「じん」とくるような肩凝りの場合には、とにかく温めて血液の循環をよくしたほうがいいでしょう。


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胸郭出口症候群

■神経や血管が圧迫され首、肩、腕に症状

 胸郭(きょうかく)出口症候群とは、神経や血管が胸郭の出口から出る近辺で圧迫され、首や肩、腕などにさまざまな症状が出る疾患。

 神経や血管が圧迫されるケースとしては、斜角筋症候群、肋鎖(ろくさ)症候群、過外転症候群などがあります。斜角筋症候群は、首の付け根の前斜角筋、中斜角筋という斜めに走っている筋肉の付着部で、2本の筋腱(きんけん)の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。第7頸椎(けいつい)に、小さな肋骨が余計についていると、なお起こりやすくなります。

 肋鎖(ろくさ)症候群は、鎖骨と第1肋骨の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。過外転症候群は、胸のほうからついている小胸筋の付け根と、烏口(うこう)突起という肩甲骨(けんこうこつ)の突起部の間で、神経や血管が圧迫されて起こります。

 いずれのケースも首、肩、腕、手指のしびれ、痛み、凝り、だるさを引き起こし、時には血行障害を来します。血行障害によって、腕を上げていると手が冷たくなってきたり、腕や手指の色が青白くなってくる場合もあります。

 このような胸郭出口症候群は、先天的な素因があるところへ、不適当な姿勢や動作が加わると、発症することが多くなります。長時間デスクワークを続けた時など、肩凝りがひどくなることはよく経験することで、首や肩の筋肉の緊張が長く続いたためです。

 特に、やせた、なで肩の女性は、もともと胸郭の出口の透き間が狭い上、首や肩を支える筋肉が弱いことから、胸郭出口症候群によるさまざまな症状が出やすい傾向にあります。

■胸郭出口症候群の検査と診断と治療

 胸郭出口症候群の症状を改善するためには、神経と血管の通り道を広げる必要があります。それには、胸郭、肩甲骨などの位置関係や動きを改善する運動を行います。整形外科やリハビリテーション科で指導を受けるとよいでしょう。

 治療の中心となる運動療法では、肩甲骨を上げて筋肉群を強化するトレーニングをして、正しい姿勢を絶えずとるように習慣付けます。例えば、10キロから15キロぐらいのリュックサックを背負い、肩の上げ下げをします。

 また、ひじを曲げたまま腕を大きく回す運動をします。ひじを体の前に突き出し、腕を大きく回してひじを外へ開きます。そのまま、ひじを下のほうへ回して、再び元の位置に戻します。これを5回、反対回しを5回、毎日仕事の合い間などに行います。この時、肩甲骨をゆっくり大きく動かすようにすると、肩周辺の筋肉に刺激が伝わってストレッチ効果も大きくなり、胸郭や肩甲骨などの動きの改善につながります。

 このほか、首をゆっくり前、右、後ろ、前、左、後ろと半円に回す運動を、頭の重みで首の筋肉を伸ばすような感覚で行います。この運動は仕事中でもできますし、入浴時に肩周辺を温めながら行うとより効果的で、血行が改善されて、筋肉の凝りがほぐれます。

 逆に、無理な姿勢や悪い動作を避けることが必要です。例えば、天井のペンキ塗りのような作業や、不適当な姿勢による長時間のデスクワークです。デスクワークを続ける場合は座る姿勢に注意が必要で、あごだけが前に突き出て重心が前に偏らないように、いすに座る時には猫背にならないように、あごを引いた姿勢を心掛けます。

 運動療法と日常生活の配慮で効果の現れない時は、手術が必要になることもあります。腕や手指のしびれや痛み、手指の色の変化などは、脊椎(せきつい)の疾患や肺の腫瘍(しゅよう)などで現れることもあります。


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くる病(骨軟化症)

■カルシウム不足から骨が軟らかくなって、変形

 くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。

 カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

 子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

 くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

 骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

■くる病の検査と診断と治療

 確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

 治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

 骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。


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頸肩腕症候群

■首、肩、腕の痛みや凝りを起こす疾患の総称

 頸肩腕(けいけんわん)症候群とは、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれなどを来すいくつかの疾患の総称。最近では、この頸肩腕症候群からさらに詳しくするために、胸郭出口症候群や腕の神経絞扼(こうやく)症候群などの疾患名が独立して、名付けられるようにもなってきました。

 頸肩腕症候群の原因については、さまざまなことが考えられます。筋肉の過労や姿勢の異常でも起こりますが、頸椎(けいつい)のクッション役を果たしている椎間板が薄くなる椎間板変性症、椎体に骨のとげができる変形性頸椎症、椎体の後ろを縦に走っている靭帯(じんたい)に骨化が起こる後縦(こうじゅう)靭帯骨化症といった中年すぎの疾患などでも起きます。むち打ち症の後遺症や、内臓疾患、精神的なストレスでも起きます。

 このように原因はさまざまですが、いずれも骨、筋肉、血管、神経の何らかの異常が原因です。普通、首筋や肩が凝って、腕がしびれるような場合は、この頸肩腕症候群によることが多いといえます。

 筋肉の過労で起きるケースは、一定の筋肉ばかりに負担がかかるパソコン作業者などでみられます。腕を上げる筋肉は頸椎についているものが多いので、腕を宙に浮かしてする仕事に従事する人は、これらの筋肉の凝りや痛みを起こしがちです。姿勢の異常、例えば前かがみの悪い姿勢では、頭の重心が前に出るので、この頭を支えるために首や肩の筋肉が疲れ、これが痛みに変わることもあります。

 また、頚肩腕症候群の症状もさまざまあり、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれ、脱力感、冷感のほか、背部の痛み、肩甲骨の凝りやこわばり、めまいや頭痛を伴う場合もあります。

■頸肩腕症候群の検査と診断と治療

 頸肩腕症候群の治療法としては、まず安静にすることが求められます。特に、筋肉の過労からくる場合は、2、3日安静にすることで治ることもあります。次に、適度な運動やストレッチをして筋肉を使うことで、筋肉を疲労しにくくさせます。このことで、次に頸肩腕症候群になる可能性が低くなるといわれています。

 症状が軽く、安静と運動でよくなるようであれば、特に病院に行く必要はないかと思われます。痛みや凝りを取り除くための身近な治療薬としては、湿布などもあります。

 そのほか、パソコンの長時間の使用や、同じ姿勢を続けるなどの日常生活を見直し、作業の途中に適当な休息時間を挟む、体操をして筋肉の凝りをほぐすことをふだんから心掛けます。また、過労や睡眠不足とあいまって、精神的なストレスが首、肩、腕の凝りを招くこともありますので、できるだけ睡眠をよくとり、過労にならないように心掛け、努めて精神を平静に保つようにします。

 しかし、頸肩腕症候群の症状が頑固な場合には、病院で受診して原因をはっきりさせることが大切です。ひどい症状を何度も体験していたり、肩凝りの症状のほかにめまいやしびれがひどい場合は整形外科や神経内科、頭痛がひどい場合には脳神経外科などを受診するとよいでしょう。病院では、原因となる疾患を明らかにした上で、その治療を最優先します。鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤を使用することもあります。


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椎間板変性症、変形性脊椎症

■長年の使用による椎間板の変性と変形

 椎間板(ついかんばん)変性症とは、椎骨をつないでいる椎間板に老化など何らかの変性が生じ、組織の構造や成分が変化したために起こってくる疾患。軟骨である椎間板が変性すると、次第に厚さが薄くなり、椎間が狭くなります。

 壮年期から老年期によくみられ、無症状のこともありますが、体を動かすと腰痛が起こることがあります。

 椎間板変性症が進むと、椎間板のクッション性が少なくなり、椎間板に接する椎体と椎体がぶつかりやすくなります。同時に、靭帯(じんたい)の変化も加わった結果、骨のふちに骨棘(こっきょく)という、とげができてきます。これはちょうど、長く使った金づちのように、椎体の周辺に骨の突起物ができた状態で、骨の輪郭がでこぼこした感じになります。そして、とげが神経を刺激したり、圧迫したりすることで、痛みが引き起こされます。これが変形性脊椎(せきつい)症です。

 変形性脊椎症は、高齢者や重労働者に多くみられる疾患で、長年の過度の使用による組織の変化を基盤にして起こります。高齢者では程度は違いますが、ほとんどの人に症状がみられるので、加齢に伴う生理的な変形ともいえます。若い頃に重労働や激しいスポーツを行ってきた人では、40歳以降に発症する場合が多く、頸椎(けいつい)や腰椎に起きやすくなります。

 脊椎の変形が長期間に渡って、徐々に進行する場合は、痛みなどの自覚症状を伴わないことが少なくありません。比較的急速に進行する場合には、症状も強く、体を動かすと痛んだり、押すと痛みが起こることがあります。

 変形が発生する場所によって、痛みを感じる場所が違います。頸椎に発生した場合は、自覚症状がない時もありますが、多くは脊髄圧迫による手足のしびれ、肩凝りを感じたり、首の後ろに痛みを感じます。頸髄が圧迫されると、手足のしびれを感じたり、細かい字を書いたりボタンをかけるなどの軽作業が困難になったり、けいれんして歩きにくくなったりします。腰椎に発生した場合は、腰痛はもちろんのこと、下肢のしびれがあります。腰を曲げたり、反らしたりすると痛み、足に力が入らなくなることもあります。

 変形性脊椎症に加えて、脊髄や馬尾(ばび)神経が収まっている脊柱管が狭くなる脊柱管狭窄(きょうさく)症や、椎間板ヘルニアなどを引き起こすと、症状はさらに悪化します。

■椎間板変性症、変形性脊椎症の検査と診断と治療

 椎間板変性症、変形性脊椎症は主に老化によるもので、でき上がった変形を元に戻すことは困難なため、治療は対症療法になります。安静にした上で、薬物療法、温熱療法、牽引(けんいん)療法、体操療法などの治療法を行い、それらで症状が改善されない場合や、神経がまひしたりした場合は手術療法が行われることもあります。

 しびれや痛みがある場合は、まず局所の安静を保つことが大切で、しばらく床に就いているとか、コルセットを着用します。症状が薄れてきたら、温熱療法や頸椎牽引(けんいん)、骨盤牽引も有効です。強い痛みに対しては、消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの薬剤を使用したり、ビタミン剤を補助的に使用します。注射しやすい場所ならば、ステロイド剤と局所麻酔剤とを注射するのも効果的です。

 症状が軽症であれば、できるだけ体を動かして、体を軟らかくするようにします。多少痛いからといって安静にしすぎると、背骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)が少しずつ弱くなるために腰痛が出るなど、かえって症状が悪化したりする場合がありますので注意が必要です。コルセットなどを着用して負担を少なくする方法もありますが、日常あまり使いすぎると筋肉が弱ってしまいますので、最小限に抑える必要があります。

 軽い体操、ウオーキング、水中ウオーキングなどの運動をしたり、風呂に入って体を温めた後ストレッチをすることで、周りの筋肉の緊張や、こわばりがとれます。重い物を持つなど、無理な姿勢や動作は避けます。


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アジソン病

■副腎が損傷を受けて、副腎皮質ホルモンの分泌量が低下

 アジソン病とは、副腎(ふくじん)機能の低下によって、すべての副腎皮質ホルモンが不足する疾患。慢性副腎皮質機能低下症、慢性原発性副腎皮質機能低下症とも呼ばれます。

 副腎皮質ホルモンは、生命の維持に必要なホルモンで、健康な人では体の状態に合わせて適切に分泌されています。この副腎皮質ホルモンには、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイド、男性ホルモンがあり、アジソン病では、主に糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの欠損症状が現れます。

 副腎自体の疾患による場合と、副腎皮質ホルモンの分泌を調節する下垂体の疾患による場合とで、副腎皮質ホルモンの不足は起こりますが、このうち副腎自体の疾患が原因で慢性に経過したものがアジソン病です。下垂体の疾患で副腎を刺激しないために副腎の機能が低下するものは、続発性副腎機能不全症というアジソン病に似た疾患です。

 副腎は両側の腎臓の上、左右に2つあり、両側の副腎が90パーセント以上損なわれるとアジソン病になります。副腎が損なわれる原因として最も多いのは、副腎結核と自己免疫によるものです。まれに、がんの副腎への転移によるもの、先天性のものなどがあります。

 アジソン病は1855年に、英国の内科医トーマス・アジソンによって初めて報告されました。あらゆる年齢層の人に、また男女いずれにも同じように発症します。乳児や小児の場合は、副腎の遺伝子の異常が原因です。

 現れる症状はさまざまですが、主なものとして、色黒、倦怠(けんたい)感、脱力感、体重減少、食欲不振、便秘、下痢、低血圧、低血糖などが挙げられます。また、不安、集中力の低下などの精神症状や、腋毛(えきもう)、恥毛の脱落などもしばしば認められる症状です。体内のナトリウムイオンとカリウムイオンのバランスが崩れるので重症の場合、心停止を起こして死ぬこともあります。

 自己免疫が関係する特発性アジソン病の場合、甲状腺(せん)疾患や糖尿病、貧血、真菌症などを合併することが多く、これらの症状が現れることもあります。

■アジソン病の検査と診断と治療

 アジソン病の初期では副腎皮質の障害が軽度なので、ホルモンの分泌も生活に支障を来さない程度に保たれています。自覚症状もはっきりしたものではなく、気が付かないことがほとんどです。しかし、この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して危険な状態になることがあります。アジソン病の症状があった場合、内分泌・代謝を専門とする病院で一度精密検査をしておくことが望まれます。

 アジソン病の診断においては、一般的な血液検査、尿検査に加え、ホルモンの検査、腹部CTなどが必要になります。ホルモンの検査は、血液中の副腎皮質ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、尿中に排出される副腎皮質ホルモンなどを測定するほか、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)や副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)放出ホルモン(CRH)を投与した後の副腎や下垂体の反応により、副腎の機能を評価します。

 そのほか、副腎を損なう原因を調べるため、結核など感染症に対する検査、がんの検査、自己免疫疾患の検査などが行われます。

 治療においては、疾患の程度、日常生活に合わせて、副腎皮質ステロイド薬を補充します。通常、1日1〜2回の内服ですみますが、けがや発熱などで体に強いストレスがかかる場合は、それに応じて内服量を増やす必要があります。筋力の低下や全身消耗の強い場合は、副腎性アンドロゲン(男性ホルモン)を補充することもあります。


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急性腎炎

■血液を、ろ過する糸球体に起こる炎症

 腎炎(じんえん)とは、尿を作るために血液を、ろ過する糸球体(しきゅうたい)に、出血性の炎症が起きる疾患です。正確には、糸球体腎炎といいます。

 免疫の異常が関係して起こると考えられており、左右の腎臓とも平等に侵されます。病気が進行すると、毛細血管の塊である糸球体だけではなく、尿細管まで障害が広がります。腎臓病のうちで最も多い病気で、一般に1年以内のものを急性(糸球体)腎炎といい、それ以上長く続くものを慢性(糸球体)腎炎といいます。

■急性腎炎の症状と早期発見法

 急性(糸球体)腎炎は4~10歳の子供に多い疾患で、加齢により発生は減少します。子供では完全に治ることが多いのに対して、成人発病者の一部では慢性腎炎に移行するものもみられますので、慢性化しないよう十分療養するべきです。

 細菌、特に溶連菌による扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎などの上気道感染後、あるいは風邪などのウイルスの感染後、1~3週間たったころ発症する場合がほとんどです。

 腎臓の糸球体に炎症が起こるのは、これらの細菌やウイルスが関係する抗原抗体反応によって生じた免疫複合体(抗原抗体複合物)と呼ばれる物質が、血流に運ばれて糸球体に付着するためと考えられています。

 通常では、この免疫複合体は糸球体にあるメサンギウム細胞が処理し、発病には至りません。あまりに量が多い場合、糸球体に沈着して炎症を引き起こします。炎症が起こると、糸球体の細胞が異常に増殖したり、血液中の白血球の成分が糸球体の中に入り込んで、糸球体の働きを阻害するとされています。

 急性腎炎の症状として、血尿と蛋白(たんぱく)尿が必ずみられます。ただ、血尿は赤ブドウ酒かコーラ様になっている場合もありますが、ほとんどは肉眼ではわからない血尿であり、顕微鏡で検査をして初めて確認されるほうが多いものです。

 ほかに、顔や手のむくみ、血圧上昇、食欲低下、だるさ、尿量減少などがみられます。血圧上昇は病院で測定してもらって、初めて指摘されるのが普通ですが、子供の場合には、高血圧によってけいれん発作が起こる場合もあります。

■治療と療養上の注意

 急性(糸球体)腎炎の治療では、安静と食事療法が主体となります。特に初期の安静は重要なので、入院治療が原則です。食事は蛋白質、塩分、水分の制限が、病気の程度や時期に応じて行われます。

 蛋白質と塩分を制限するのは、腎臓の働きが低下すると、蛋白質から生じる窒素化合物や食塩の成分であるナトリウムの排出がスムーズにいかなくなるためです。蛋白質を減らす分、糖質や脂質でカロリーを十分にとります。むくみのある時や、1日の尿量400ml以下と尿が少ない場合、あるいは無尿の場合は、1日に摂取する水分を制限します。病状の改善とともに運動量は増し、食事の内容も変わってきます。

 腎炎そのものを、根本的に治す特効薬というものはありません。ただし、急性腎炎のきっかけとなった溶連菌などの感染症の治療には、抗生物質が使われます。ほかに、炎症を鎮めるために抗炎症剤、血尿がひどい時には止血剤、乏尿やむくみがひどい時には利尿剤、高血圧に対しては降圧剤が使われます。

 入院して適切な治療を受ければ、むくみや高血圧は、通常1週間以内によくなりますが、病気の程度が重ければ長引くことになります。血尿、蛋白尿なども、2~3カ月で消えていくことが多く、この時点で通学あるいは軽作業が許されるようになります。

 退院後は、病気の回復と合わせて医師と相談の上、無理のない生活を送るようにコントロールしていくことになります。一般的いって、子供の場合には、体育の授業や水泳、遠足などのへの参加は控えましょう。大人の場合は、周囲の理解を求めて夜勤や残業などを避け、最低3年程度、激しいスポーツや肉体労働を見合わせる必要があります。女性の場合には、2年ほど妊娠を避けたほうがよいでしょう。


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神経性頻尿

■女性に多くみられる、尿が近い症状

 神経性頻尿とは、膀胱(ぼうこう)や神経に病気も、異常も認められないのに、尿が近いものをいいます。このような人の多くは、夜間に排尿には起きないものです。膀胱神経症、過敏性膀胱とも呼びます。

 一般に、女性に多くみられます。神経質で几帳面(きちょうめん)、強迫的傾向にある人に多いようです。なお、膀胱は精神的な影響を受けやすい器官ですので、軽い膀胱炎にかかった後も、少しの精神的刺激によって、尿意をたびたび感じるようになることがあります。

 神経性頻尿の原因には、心因的な要素が絡んでいるので、薬剤の投与などではなかなか治りません。緊張を緩和し、とらわれから自らを解放することがポイントで、強迫的な神経症的性格を改めることも大切になります。


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尿失禁

■無意識に尿が漏れて、日常生活に支障

 尿失禁とは、他覚的に認められる尿の不随意な排尿であり、社会的衛生的に何らかのトラブルを引き起こすもの。つまり、無意識に尿が漏れてしまい、社会生活、日常生活に支障を来す状態をいいます。

 尿失禁のうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける失禁を真性尿失禁、または全尿失禁と呼びます。真性尿失禁、全尿失禁の代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。

 一時的な漏れを示す尿失禁のほうは、腹圧性、急迫性(切迫性)、溢流(いつりゅう)性、反射性の4タイプに大別されます。

 腹圧性尿失禁は、中年以降の出産回数の多い女性に、しばしば認められます。せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わる時に尿が漏れるもので、漏れの程度はさまざまです。

 起こる原因は、膀胱(ぼうこう)を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が緩んで、弱くなったためです。肥満の女性に多くみられ、骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。

 急迫性(切迫性)尿失禁は、尿意を感じても我慢することができずに、尿を漏らしてしまうもの。脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系に障害があるものと、膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものとがあります。

 溢流性尿失禁は、前立腺(せん)肥大症や神経因性膀胱などを発症している高齢男性に、しばしばみられます。著しい排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために起こるものです。

 反射性尿失禁は、中枢神経系の障害や、事故による脊髄損傷でしばしば認められます。尿意を感じることができずに排尿の抑制ができないため、尿が一定量たまると、意思とは関係なく排尿が起こるものです。

■尿失禁の検査と診断と治療

 尿失禁の原因が明らかで治療可能なものは、当然、その治療を行います。

 腹圧性尿失禁の程度の軽いものでは、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周りの筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、 仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、 ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、 仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。

 失禁の程度の強いものでは、状態に応じた治療法が選択されます。内視鏡によるペーストなどの注入療法、各種の失禁防止手術が工夫されています。カテーテルによる導尿などの処置が選択される場合もあります。


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膀胱炎

●女性に多い膀胱の炎症

 膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱内の粘膜に炎症が起こる疾患です。女性に多いのが特徴で、特に妊娠可能な年齢で多発しますが、男性にも起こります。細菌の感染による急性膀胱炎がすぐに治るのに対して、慢性膀胱炎は完治が難しいといえます。

 急性膀胱炎の場合、症状は急激ながら経過は短く、泌尿器科の疾患では最も普通にみられます。原因の大部分は細菌感染で、大腸菌が最も多く、ブドウ球菌、連鎖(状)球菌などによることもあります。

 感染経路としては、尿道からの細菌の侵入が最も多く、腎(じん)臓からの感染、周囲の臓器からの感染もあります。この疾患が女性に多発する理由として、尿道が男性に比べて短いために細菌が尿道に入りやすいこと、細菌のいる腟(ちつ)や肛門と尿道との距離が近いことなどが挙げられます。

 膀胱は細菌に対して抵抗力があるので、単に細菌が侵入してきただけでは炎症は起こりにくいのですが、体力の低下、尿の停滞、排尿の我慢のしすぎ、便秘、不潔な性交、妊娠、冷えなどが誘因になって発症します。

 男性では、膀胱炎は女性ほど一般的ではありません。男性はまず尿道が感染し、その感染が前立腺(ぜんりつせん)から、膀胱に広がって発症します。

 症状としてみられるのは、頻尿、残尿感、尿の出が悪い、排尿時の痛み、尿の濁りが特徴。発熱はほとんどみられません。

 医師による治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

 男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

●慢性膀胱炎と間質性膀胱炎

 慢性膀胱炎の場合、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍(しゅよう)、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

 治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

 また、間質(かんしつ)性膀胱炎という特殊な膀胱炎が近年、増加しています。感染症がみられなくても膀胱が炎症を起こす疾患で、痛みを伴う頻尿などの症状があります。顕微鏡で検査すると、尿中に膿(うみ)や血液が認められ、尿に血が混じっているのが肉眼で見えることもあります。

 中年女性に多くみられ、男性がかかることはめったにありません。欧米では以前から割合多くみられていて、いくつかの病因による症候群と見なされていますが、いまだ治療法は確立されていません。

 長期に渡る慢性的な炎症によって膀胱は委縮し、重症の場合は外科手術による膀胱の除去が必要になることも、まれにあります。小腸の一部である回腸を使って代用膀胱を作るか、腎臓にチューブを直接挿入し、体の外に装着した袋に尿を排出することになります。


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アスペルギルス症

■大気中に浮遊する真菌の一種を吸入して、肺に起こる感染症

 アスペルギルス症は、アスペルギルスという大気中に浮遊する真菌(かび)を、気道を通して吸入することにより、肺に起こる感染症。肺真菌症の中でも、最も重要な疾患の一つです。

 アスペルギルスは糸状真菌の一種で、多くは自然界に広く分布し、200以上の種類が知られています。堆肥(たいひ)、断熱材、エアコンまたはヒーターの吹き出し口、手術病棟および病室、病院の備品、浮遊粉塵(ふんじん)などに高頻度に分布していますが、人に疾患を起こすのは、アスペルギルス・フミガータス、アスペルギルス・フレーバス、アスペルギルス・ナイジャーなど数種類に限られています。

 健康である限り、アスペルギルスが肺の中に感染することはありません。白血病や臓器移植後などによる体や気道の抵抗力の低下、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の長期間の服用などを切っ掛けに、肺の中で増殖し、感染症を引き起こします。

 数種類のアスペルギルスは有毒な胞子を持っているため、ぜんそく患者は過敏に反応して、アレルギー性の肺炎を引き起こすこともあります。また、肺膿瘍(のうよう)、肺結核、気管支拡張症などの後にできた肺の空洞に入り込み、真菌の塊である真菌球を作ることもあり、これが崩れると褐色の塊となって、たんととも出てきます。

 アスペルギルス症の症状としては、せき、たん、胸痛、呼吸困難などの一般的な呼吸器症状が現れます。血たんや喀(かっ)血の頻度も、ほかの呼吸器感染症よりも多くみられます。また、アスペルギルスは血管に侵入して出血性壊死(えし)や梗塞(こうそく)を引き起こすため、肺炎、ぜんそく、副鼻腔(ふくびくう)炎、さらに急速進行性の全身疾患の症状を呈することもあります。

■アスペルギルス症の検査と診断と治療

 呼吸器症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。

 医師による診断に際しては、胸部X線検査やCT検査が行われ、たんなどから原因となるアスペルギルスの種類を調べます。血液検査で、アスペルギルスに対する抗体があるかを調べることもあります。

 胸部X線写真で典型的な真菌球が確認されれば、アスペルギルス症自体の診断は比較的容易です。確定診断のためには、たんや病巣からアスペルギルスを検出、培養する必要があり、典型的には気管支鏡検査法により肺から、および前検鼻法により副鼻腔から採取します。

 しかし、培養には時間がかかるため、急性で生命を脅かす病態に対する迅速な確定診断用としては、適していません。発症者の状態が悪いことから、体への負担が大きい気管支鏡検査を行えないケースも多く、確定診断は困難なことがしばしばあります。

 アスペルギルスが検出、培養できない間は、臨床的診断に基づいて治療が行われ、一般に抗真菌剤が用いられます。アムホテリシンB、イトラコナゾール、およびミカファンギンを静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、薬でアスペルギルスの活動を抑えた後、真菌球を外科手術で取り除くこともあります。

 アスペルギルス症などの肺真菌症は、普通の肺炎よりも治りにくく、治療にも時間がかかり、再発するケースも多くみられます。治療中は安静にして、栄養を十分に取ることが大切になります。


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アニサキス症

■海産魚介類の生食によって引き起こされる寄生虫病

 アニサキス症とは、種々の海産魚介類の生食を介して、回虫類の一種であるアニサキスの幼虫が胃腸に寄生し、引き起こされる寄生虫病。アニサキスは1999年(平成11年)に、厚生労働省から食中毒原因物質に指定されています。

 アニサキス類の成虫はクジラやイルカ、アザラシなどの海産ほ乳動物の胃壁に寄生しています。虫卵は糞便(ふんべん)とともに海中に放出され、オキアミなどの甲殻類を中間宿主(しゅくしゅ)として第3期幼虫に発育。幼虫を宿すオキアミが多くの種類の魚やイカに摂食されると、新しい宿主の体内で長さ2〜3cmの第3期幼虫のままとどまって寄生を続け、サバ、アジ、イカなどの生食を介して人体に入り、胃壁や腸壁にもぐり込みます。

 魚介類をすし、刺身で生食する習慣のある日本では、アニサキス症の発生は諸外国に比べて非常に多く、1年間に2000例から3000例に上るとみられます。よく発生する時期は12~3月の寒期で、7~9月の暖期は最も少ない傾向があります。これはアニサキスの感染源となる魚の漁期に関係していて、北方海域ではタラ、オヒョウ、その他の海域ではサバ、イワシなどの漁獲期が寒期であることによります。アニサキス類の感染源となる魚介類は、150種以上に上っています。

 アニサキス類の幼虫が消化器系の粘膜から侵入した時に発症しますが、その症状の強さで激症型と軽症型、その症状が現れる部位から胃アニサキス症、腸アニサキス症、腸管外アニサキスに分けられます。

 胃アニサキス症は原因となる食品を摂取した後2時間から8時間で発症するものが多く、上腹部に締め付けられるような、差し込むような痛みが起きて持続し、吐き気、嘔吐(おうと)を伴う場合もあります。時に、下痢、じんましん、大量吐血をみることもあります。

 腸アニサキス症は原因となる食品の摂取後、数時間から数日して、へそを中心に差し込むような痛みが出現し、吐き気、嘔吐を伴います。発熱はありませんが、虫垂炎、腸閉塞(へいそく)、腸穿孔(せんこう)などと誤診され、急性腹症として開腹手術を受けることがあります。

 腸管外アニサキス症はまれにしか起こりませんが、アニサキス類の幼虫が消化管を貫通して、消化管以外の胸腔(きょうくう)、肺、腹腔、腸管膜、肝、リンパ節、皮下など体内のあらゆる部位に入り込んで、種々の症状を起こします。ほかの疾患の処置に当たって、偶然に虫体が発見されることもあります。

■アニサキス症の検査と診断と治療

 アニサキス症の症状が現れ、海産魚介類の生食をしたことが明らかであれば、消化器内科専門の医院か消化器内科の医師のいるような総合病院を受診します。重症になると、緊急を要するほかの疾患とすぐには区別できないため、内視鏡専門医と消化器外科医のいる総合病院を受診します。

 医師による診断では、海産魚介類の摂取後に起きた腹痛ということがポイントとなります。腸アニサキス症では、内視鏡で幼虫を見付けるのは困難なため、X線や超音波検査で小腸を調べます。幼虫が胸腔や腹腔、さらにほかの臓器に入り込む腸管外アニサキス症では、抗体検査が行われます。

 治療としては、胃アニサキス症であれば、上部消化管内視鏡で幼虫を確認して、つまみ出します。幼虫をつまみ出した瞬間、うそのように痛みが消えます。もっとも、アニサキス類は人体中では1週間程度で死んでしまうので、幼虫を摘出できなくても対症療法だけで治ります。

 腸アニサキス症では、腸閉塞(イレウス)の症状を示さない状態の時、対症療法を行いながら幼虫が死亡、吸収されることによって症状が緩和するのを待ちます。腸管外アニサキス症では、メベンダゾールなどの駆虫剤を内服しますが、現在のところ、効果的な駆虫薬は開発されていません。

 アニサキス症はたとえ幼虫1匹の感染であっても起きる可能性があり、個人レベルでの予防は海産魚介類の生食を避けることに尽きます。ただし、生食に当たって冷凍処理後に解凍して調理されたものであれば、問題はありません。60 ℃1分以上の熱処理のみならず、冷凍処理を施せば、アニサキス類の幼虫のほとんどが不活性化するからです。


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咽頭結膜炎

■咽頭炎や発熱を伴う結膜炎で、夏に多発■ 

 咽頭(いんとう)結膜炎とは、咽頭炎や発熱を伴う結膜炎のことです。子供に多く見られ、水泳の授業を行う夏期に多発するために、プール熱の別名が付いています。

 原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

 この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

 39度前後 の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜炎、咽頭炎、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

 医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、咽頭結膜炎の特効薬はありません。

 家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

 1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。結膜炎が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

 集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。


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インフルエンザ

インフルエンザは風邪の一つ

 風邪とは、鼻やのどに急性の炎症が起こった状態のことです。風邪の主な原因はウイルスで、その種類は何百とあります。インフルエンザは、風邪の症状を起こすウイルスの一種なのです。

 また、ウイルスのほかにも、細菌やマイコプラズマなどの微生物が、風邪の原因になることもあります。

 これらの病原体は、つば(唾液)とともに空中に飛び散って感染(飛まつ感染)します。

■インフルエンザの特徴は

 インフルエンザは、突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型の風邪をいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状の後に現れてきます。

 こういった全身症状が強い風邪は、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他の風邪ウイルスが起こすこともあります。

 また、インフルエンザウイルスが起こす風邪は、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻風邪(鼻水、鼻詰まりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型の風邪)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

 インフルエンザウイルスが感染して症状が出るまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

 インフルエンザの怖い点は、気管支炎や肺炎、中耳炎を起こす原因になることです。乳幼児が肺炎にかかると、命にかかわることもありますし、65歳以上を中心に、インフルエンザウイルスに感染した人の約1%が肺炎を合併しています。

 インフルエンザに肺炎を合併した場合、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがまれにあり、また、いったん治ったように見えながら、2~3日で肺炎になることもあります。

 インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く、流行も目立ちません。一方、A型とB型、特にA型は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも、珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

 インフルエンザのウイルスは風邪の他のウイルスとはまったく違うものですが、症状を見るだけで普通の風邪と区別するのは難しいことです。普通の風邪ウイルスが高熱などの全身症状が強い風邪を起こすケースもありますので、地域ではやっているといった情報がないと、医師でもインフルエンザと診断するのは難しいようです。

 病院に行って風邪と診断され、薬をもらった後も症状が改善しないようなら、再度医師に診てもらうことをお勧めします。

■インフルエンザの予防接種とは

予防接種は1回で終わりではない

 インフルエンザの感染の予防、また、万一感染しても軽くすむのに有効なのが予防接種だ、とされています。

 しかしながら、インフルエンザの予防接種は、1回で一生効果があるものではありません。インフルエンザのウイルスには多様な種類があり、すべてに対抗できるワクチンは作れないからです。

 現在インフルエンザのワクチンは、毎年、“その年にはやりそうなウイルスの型”を予測し、それに対抗するものが作られています。つまり、予防接種でインフルエンザを防ごうとするのなら、毎年接種する必要があるのです。

 もちろん、予測した型と実際に流行するインフルエンザの型とが異なることもありますが、毎年予防接種を受けている人は免疫が蓄積するので、かかった場合でも軽くすむケースが多いようです。 

鶏卵、ゼラチンにアレルギーのある子は注意!!

 予防接種の副反応は、ごくまれに発熱や頭痛がある程度で、特に心配はありません。注意したいのは、ワクチンには 鶏卵やゼラチンが含まれている点で、アレルギーのある赤ちゃんや子供の場合は、接種前に医師に相談しましょう。

■インフルエンザに負けない生活術

 インフルエンザや風邪にかかった場合でも、軽い症状ですませるためにできる対策は、予防接種だけではありません。ウイルスに負けないだけの抵抗力、すなわち体力をつけておくだけでも、かかった時の症状はずいぶん異なるのです。

 赤ちゃんや子供さんの抵抗力をつけるため、家庭で配慮できることを紹介してみましょう。 

(1)動きやすい服装でよく遊ぶ 

 「風邪をひかせるのが怖いから」と考えて厚着をさせるのは、着膨れして動きにくく、運動不足になることもあるため、逆効果。赤ちゃんの場合の大体の目安は、生後1カ月以内で大人の着ている枚数より1枚多いくらい、それ以後は大人と同じ枚数か、1枚少ない程度で大丈夫でしょう。枚数よりも、体が動かしやすい服装を心掛けてやりましょう。

(2)生活時間と栄養バランスに考慮を 

 こちらは大人にも当てはまることですが、仕事で疲労している時に風邪などをひいてしまうと、こじらせやすいもの。赤ちゃんや幼児も、起床、就寝と三食の時間をなるべく規則的にし、栄養バランスを考えた食事がとれるようにしましょう。

(3)手洗い・うがいの習慣をつける

 外出から帰った後、食事の前には必ず手洗いと、うがいの習慣を。8カ月~1歳くらいになって、赤ちゃんがママのまねをするようになったら、水を口に含んで「ペッ」と吐き出す様子を、ママが見せてあげるのも一案です。また、家族やお客さんも、赤ちゃんに触る前には手洗い、うがいの習慣を! 

(4)室内が乾燥しないような配慮を

 乾燥した空気は、のどに負担をかけるもとです。暖房をつけるならまめに換気したり、加湿器を使ったりして、適度な湿度を心掛けましょう。 

(5)冬場の外出は人込みを避けて

 風邪やインフルエンザは、咳やくしゃみによって感染します。冬場は赤ちゃん連れで人込みの多い場所へ外出するのは、極力、避けるようにしましょう。


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カポジ肉腫

■ヘルペスウイルス8型による皮膚がん

 カポジ肉腫(にくしゅ)とは、ピンク色、茶色、紫色などの平らな染み、または、こぶが皮膚や粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。

 原因となるのは、ヘルペスウイルス8型(HHV-8、別名、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)で、血管内皮細胞に感染して発症し、やがて肺、肝臓、腸管などの臓器に病変が広がります。

 1872年、ハンガリーの医師モーリッツ・カポジが、皮膚病変肉腫として報告。以降、珍しい皮膚がんの一つとして位置付けられていましたが、1994年、エイズ(後天性免疫不全症候群)患者から初めての発症が報告され、その末期に発症することで知られるようになりました。アメリカでは、カポジ肉腫を発症する人のほとんどが、エイズ患者です。

 このカポジ肉腫は、古典型、アフリカ型、医原性型(免疫抑制治療関連性型)、エイズ型(流行性型)の4つに細分でき、それぞれ症状や進行が異なります。

 古典型は高齢の男性で主に地中海系あるいはユダヤ系の人、アフリカ型は赤道直下の一部地域に住むアフリカ系の小児や若者、医原性型は臓器移植後に免疫抑制薬の投与を受けている人、エイズ型はエイズ患者に発症します。

 高齢の男性が発症する古典型では、カポジ肉腫は紫色や濃い茶色の単独の染みとして、つま先や脚にできます。この染みは数センチ大になり、色も濃くなって、平ら、または、わずかに盛り上がり、出血しやすくなって潰瘍(かいよう)化します。脚には、同様の染みがいくつか現れることがあります。

 この古典型のカポジ肉腫はゆっくりと、時には10~15年かけて進行します。病変が進むにつれて、脚に浮腫(ふしゅ)が生じ、血液が正常に流れにくくなります。しばらくして、病変が他の臓器に広がり、他の種類のがんを発症することもあります。

 医原性型(免疫抑制治療関連性型)のカポジ肉腫は、体が感染と闘うのを助ける免疫系を弱める薬を投与されている人に、発症する可能性があります。肝臓や腎(じん)臓などの臓器移植を受けた人では、移植された臓器を異物と見なして免疫系が攻撃しないように、免疫抑制薬を飲む必要があるためです。

 アフリカ型、エイズ型(流行性型)では、高齢男性が発症する古典型よりもっと悪性です。皮膚に現れる染みは、数が多く、体中どこにでもできます。これらの染みは数カ月以内に体の他の部位に広がりますが、口の中にできることも多く、そうなると物を食べる際に痛みます。

 この腫瘍は、リンパ節や内臓にもできます。特に、消化管にはできやすく、下痢と出血を引き起こし、便に血が混じるようになります。

■放射線療法が一般的な治療法

 医師による治療では、カポジ肉腫が皮膚に少数できている場合は、手術で病変を取り除くか、液体窒素で腫瘍を凍結させて殺します。

 肉腫の数が少なく、他の症状が全く出ていない場合は、症状が広がるまでは治療を受けないという選択も存在します。

 カポジ肉腫が皮膚に多数できている場合は、放射線療法を行います。この放射線療法が一般的な治療法で、がん細胞を破壊し、腫瘍を縮小させるために、体外の機械からX線や他の高エネルギー線を照射します。

 悪性のカポジ肉腫の場合は、体の免疫システムが正常であれば、インターフェロンの投与や化学療法を行います。化学療法では薬を使ってがん細胞を殺しますが、薬は経口投与されるか、静脈注射または筋肉注射で投与されます。薬が血流に入り、体中を駆け巡り、最初に発生した部位以外のがん細胞も破壊することができるため、化学療法は全身療法とも呼ばれます。カポジ肉腫に化学療法を行う場合、病変に直接注射されることもあります。

 免疫抑制薬の投与を受けている人の場合は、投与を中止すると腫瘍が消えることがあります。免疫抑制薬の投与を継続しなければならない人の場合、化学療法と放射線療法を行いますが、投与を中止した人と比べると成果はよくありません。

 エイズ型のカポジ肉腫の場合、化学療法や放射線療法の効果はあまり期待できません。抗レトロウイルス薬の投与により、免疫システムの機能が改善されれば、結果は良好です。

 高活性抗レトロウイルス療法が行われる場合、レトロウイルスの1つであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を標的として、いくつかの抗レトロウイルス薬が組み合わされます。これらの薬物は、体内でウイルスが増殖するのを阻止し、エイズ型のカポジ肉腫のリスクを低下させるのに役立ちます。

 高活性抗レトロウイルス療法では、薬の投与など他の治療法と併用せず、体内の免疫系によってがんと闘う、生物学的治療が単独で用いられることもあります。生物学的治療とは、体内あるいは製造ラボで作られる物質を用いて、疾患に対する体本来の防御機能を強化、あるいは修復するものです。

 治療後に再び悪化(再発)した再発カポジ肉腫では、カポジ肉腫の種類、全身の健康状態、以前に行った治療に対する反応によって、治療法が異なります。肉腫は発生部位で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。


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急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)

■精巣に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患

 急性精巣上体炎とは、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣の上面、および後面に付着している精巣上体に、急性の炎症が起こる疾患。急性副睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。

 精巣上体、すなわち副睾丸は、精巣から出た精子を運ぶ精管が精巣、すなわち睾丸のすぐ近くで膨れている部分に相当します。精管はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。炎症の多くは、精巣の上面に付着している精巣上体に起こります。

 尿の中の細菌などが精巣上体に入り込んで、感染を起こすことが原因です。通常、尿には炎症を起こすほどの細菌はいませんが、前立腺肥大症、尿道狭窄(きょうさく)、膀胱(ぼうこう)結石などの疾患があると、尿は汚れて細菌が増殖しますから、急性精巣上体炎を起こしやすくなります。これらは高齢者に多く、大腸菌などの一般的な細菌が原因菌となります。

 一方、青年層にみられる場合は、性行為感染症(STD)の1つである尿道炎から引き起こされます。尿道炎の原因であるクラミジアや淋菌(りんきん)が精巣上体に至ることによって、炎症を起こします。  

 症状は、陰嚢内の精巣上体の一部の軽い痛みで始まります。自覚症状としては、精巣そのものの痛みのように感じるかもしれません。徐々に陰嚢全体に痛みが広がり、陰嚢が硬くはれ上がり、皮膚が赤みを帯びてきます。

 歩行時に激しく痛んだり、はれているところを圧迫すると強い痛みを感じ、38度以上の発熱を伴うことがしばしばあります。さらに悪化すると、陰嚢の中にうみがたまり、破れて出てくることもあります。精管に沿って炎症が広がっていると、大ももの付け根の鼠径(そけい)部や下腹部の痛みを感じることもあります。

 普通は、膿尿(のうにょう)、細菌尿を伴って症状が全般的に強いのですが、クラミジアの感染では症状が軽度で膿尿もみられないことがあります。精巣に炎症がおよぶことはまれで、精巣にはれ、圧痛は認められません。

■急性精巣上体炎の検査と診断と治療

 適切な抗生剤を早期に使用することによって比較的治りやすい疾患ですが、悪化すると治療が困難になり慢性化してしまったり、精巣を摘出しなければならないことがあります。早めに泌尿器科の専門医を受診することが大切で、治療中は激しい運動や飲酒は控えます。

 医師の側では、尿検査で尿中の白血球や細菌を検出します。クラミジア感染が疑われる場合も、尿で検査できます。細菌については、その種類とどのような抗生剤が効くかを同時に調べますが、細菌が検出されないこともまれではありません。また、全身への影響をみるため、血液検査で炎症反応などをチェックします。精索捻転(ねんてん)症や精巣腫瘍(しゅよう)との区別が難しい場合もあります。

 治療は、局所の安静と冷湿布、抗生剤の経口投与が主体となります。抗生剤は、尿路感染症に有効なユナシンなどのペニシリン系、セフゾンなどのセフェム系、クラビットなどのニューキノロン系が用いられます。また、サポーターなどで陰嚢を持ち上げることで、症状が和らぎます。発熱などの全身症状がみられる場合は、消炎鎮痛剤の投与とともに、入院した上で安静を保ち、抗生剤の点滴による治療が必要になります。

 発熱を伴う急性期の炎症は、1〜2週間で治まります。精巣上体のはれや鈍い痛みは、数カ月続く場合が多く、時には精巣上体に硬いしこりが残ってしまうことがあります。初期の治療が不十分だと炎症が悪化してうみがたまり、陰嚢を切開してうみを出さなければならなかったり、精巣を含めて精巣上体を摘出しなければならないこともあります。

 後遺症として、慢性精巣上体炎に移行したり、精巣上体部の精子通過障害をもたらすことがあります。精巣にも炎症が波及し、両側性であれば男性不妊につながることもあります。


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蟯虫症

■蟯虫が盲腸付近に寄生することで引き起こされる寄生虫病

 蟯虫(ぎょうちゅう)症とは、線虫類に属する蟯虫が盲腸付近に寄生することで、引き起こされる寄生虫病。日本で最も多い寄生虫病です。

 小児に多くみられますが、大人も感染します。小児では幼児期から学童期にかけて多く、約5~20パーセントぐらいの感染率があると見なされています。人から人への感染が起こるために、家族内や保育所内、幼稚園内などで集団感染することがあります。

 口から入った蟯虫の卵は、6~8時間で孵化(ふか)して幼虫になり、人の盲腸およびその周辺に寄生します。その後、幼虫は約45日程度で成熟します。成虫は紡錘形で乳白色をしており、体長はオスが2.5センチほど、メスが1センチ前後、寿命はオスが2週間、メスが2カ月程度。交尾をしたメスの体内で卵が十分に発育してくると、メスは人が夜寝ている間に肛門(こうもん)付近に下りてきて、1時間に6000~10000個の卵を産みつけます。卵は1カ所に産むのではなく、卵を産み尽くすまで、産んでは進み産んでは進みを繰り返し、メスは力尽きて死にます。

 その卵は産卵されて数時間以内に感染可能なまでに発育して、手指や衣類、寝具、家具、建具に付着しますので、再び口から人体に入って寄生することになります。人は蟯虫に対しては免疫ができずに何度でも感染しますので、小児がおしりをかいて卵の付着した手指をそのまましゃぶると感染がひどくなります。また、同じ布団で寝たり、密接な接触のある集団内では感染が広がっていきます。

 寄生している蟯虫の数が少ない時は症状のないことも多いのですが、数が多くなると腹痛、リンパ節の炎症が生じたり、メスが下りてくると肛門の周囲のかゆみ、湿疹(しっしん)が生じ、それに伴う睡眠障害がみられることになります。盲腸に寄生しているために、虫垂炎の原因になることもあります。

■蟯虫症の検査と診断と治療

 幼稚園や学校の検査で偶然、見付かることもけっこうありますが、蟯虫症の症状に気付いたら、内科を受診します。同様に感染している可能性がある同居の家族も内科を受診、検査して感染の有無を確かめることが必要です。

 肛門周囲に産みつけられた卵を検出するには、セロハンテープ法という方法が行われます。朝起きてすぐ、布団を出る前に肛門に粘着性のセロハンテープをつけて卵を付着させ、顕微鏡で卵を見付けます。蟯虫は毎日産卵するわけではないので、日を変えて2回、あるいは3日連続して検査します。時々、便の中に長さ1センチ前後の乳白色の蟯虫が見付けられることもあります。
 治療では、駆虫剤のコンバントリン(成分はパモ酸ピランテル)を内服します。駆虫剤は成虫には効くものの、卵には効きませんので1度飲んでから、2週間後、すなわち残った卵が成虫になって卵を生む前に、もう1度飲むほうがよいでしょう。

 蟯虫は病害性の低い寄生虫ですが、見付けたら家族いっせいに駆虫することが、予防の基本です。ふだんから、つめを短く切る、手洗いをよくする、毎日入浴し、できれば朝も入浴して下着を取り替える、寝具や室内を清潔に保つなどの注意が必要です。


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コレラ

■コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症

 コレラとは、コレラ菌によって引き起こされ、下痢を生じる急性の感染症。世界中に広く分布する細菌感染症です。

 コレラ菌の性質は、1960年ころまで流行したものと、現在流行しているものとでは多少異なっています。かつてのコレラ菌はアジア型(古典型)コレラと呼ばれ、大流行を幾度となく繰り返し、その病原性の強さによって何百万人もが犠牲になりました。

 現在のコレラは、主にエルトール型コレラと呼ばれるもので、1961年ころからアジア地域で発生し、感染力が強いためアジア型コレラに替わって瞬く間に世界中に広がりました。この流行が現在も世界中に広がっていて、終息する気配がありません。

 世界保健機関(WHO)に報告されている世界の患者総数は、ここ数年20〜30万人ですが、実数はこれを上回っていると推測されています。幸いなことにアジア型コレラに比べて病原性が弱く、死亡率は2パーセント程度といわれています。

 日本では、205種類に分類されているコレラ菌のうち、O1血清型とO139血清型を原因とするものを行政的にコレラとして扱います。O1血清型コレラ菌は、生物学的な特徴によってアジア型コレラと、エルトール型コレラに分けられています。一方、O139血清型コレラ菌によるコレラは、新興感染症の1つで、1992年インド南部で発生し、瞬く間にインド亜大陸に広がり、現在もインドおよびバングラデシュにおいてO1血清型エルトールコレラ菌と交互に、あるいは同時に流行を繰り返しています。

 日本におけるコレラは、最近はほとんどが輸入感染症として発見されています。すなわち、熱帯、亜熱帯のコレラ流行地域への旅行者の現地での感染例で、国内での感染例もありますが、輸入魚介類などの汚染が原因と推定されていて、二次感染例と思われる例はほとんどありません。

 このコレラは、コレラ菌のうちコレラ毒素産生性の菌に汚染された水、氷、食品などを摂取することにより感染します。経口摂取後、胃の酸性環境で死滅しなかった菌が小腸下部に達して定着、増殖し、感染局所で菌が産生したコレラ毒素が細胞内に侵入して症状を引き起こします。

 数時間~5日、通常は1〜3日の潜伏期間の後、下痢や嘔吐(おうと)などが起こります。アジア型コレラでは米のとぎ汁のような水様便が大量に出ますが、エルトール型コレラの場合、症状は比較的軽く、軟便程度から水様便まで幅広い下痢が主です。腹痛や発熱を伴うことはほとんどありません。

 アジア型コレラでは、下痢が激しく、大量の下痢便の排出に伴って高度の脱水状態となり、収縮期血圧の下降、皮膚の乾燥と弾力の消失、意識消失、乏尿または無尿などの症状が現れます。

■コレラの検査と診断と治療

 海外旅行中や旅行後に下痢や嘔吐の症状が現れたら、コレラの可能性があります。検疫所あるいは培養検査のできる医療機関を受診し、便の細菌検査を受けることが必要です。

 日本では、O1血清型とO139血清型を原因とするコレラは感染症法で2類感染症に指定されており、発症者は原則として2類感染症指定医療機関に入院となりますが、無症状者は入院の対象とはならず外来治療も可能です。

 医師による診断では、便の細菌培養を行い、コレラ毒素を産生するコレラ菌が検出されれば確定します。食中毒や、他の細菌による感染性腸炎との区別も、培養結果によります。迅速検査として、コレラ菌の毒素遺伝子を検出する方法も開発されています。コレラもしくは病原体保有者であると診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出ます。

 治療は、大量に喪失した水分と電解質の補給が中心で、輸液の経口投与や静脈内点滴注入を行います。世界保健機関(WHO)では、食塩とブドウ糖を1リットルの水に溶かした経口輸液(ORS:Oral Rehydration Solution)の投与を推奨しています。経口輸液の投与は特に開発途上国の現場では、滅菌不要、大量に運搬可能、安価などの利点が多く、しかも治療効果もよく極めて有効な治療法となっています。

 重症の場合には、抗生物質を投与して、コレラ菌の排出を促し、下痢の期間の短縮を図ります。第一選択薬となるのは、ニューキノロン系薬剤であるテトラサイクリンやドキシサイクリン。これらの薬剤にコレラ菌が耐性の場合には、エリスロマイシン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール合剤やノルフロキサシンなどが投与されます。

 予防としては、コレラが流行している海外の旅行先で、生水、氷、生の魚介類、不衛生な食品を喫食しないことが肝要です。ジュースの中の氷や、氷の上に飾られていたカットフルーツで感染したり、プールの水を誤って飲んで感染した例も報告されています。

 海外旅行をする時、国によりコレラの予防接種を義務付けられているものの、接種をしても絶対に安全というものではありません。無理な旅行日程などを避け、体調を崩すことがないよう心掛けることも大切です。


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サルモネラ食中毒

鶏卵や鶏、豚、牛の肉が原因食となって発生する食中毒

 サルモネラ食中毒とは、サルモネラ菌が原因となって起こる食中毒。重症の食中毒を起こすこともあります。

 サルモネラ菌は、もともと自然界に広く分布し、鶏(にわとり)、豚、牛などの家畜や家禽(かきん)、犬や猫などのペットも保有しています。血清型別という方法で約2500種に分けられ、低温や乾燥に強い性質があります。

 一般に、1グラム中に1万個以上の菌が増殖した食品を食べると感染し、中毒症状を起こします。幼児や高齢者では、わずかな菌量でも感染します。一般に、人から人へ伝染することはありませんが、乳幼児や高齢者では、二次感染することもあります。

 原因となる食品としては、サルモネラ菌を持っている鶏、豚、牛などの肉や、鶏卵などをよく火を通さないで食用にしたもののほか、納豆、氷小豆、乳製品などが挙げられます。特に近年では、鶏卵に含まれるエンテリティディスという血清型の菌によって、生卵を始めとして、卵焼き、オムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどからもサルモネラ食中毒が起こっています。

 また、ペットから感染したサルモネラ菌が原因となって、食中毒が起こることもあります。

 原因食を食べてから、12〜48時間の潜伏期間を経て発症し、発熱、寒け、頭痛、腹痛、下痢、嘔吐(おうと)、全身脱力感などを起こします。下痢は水様便から粘血便で、渋り腹を伴うことが多く、しばしば強い症状が現れます。

 これらの症状は2〜3日で改善し、多くは1週間以内で回復します。

 ただし、潜伏期間や症状は、摂取した菌の量や発症者の健康状態、年齢によって変化します。乳幼児ではわずかな菌量でも発症し、場合によっては激しい下痢、強い腹痛、血便などの重い症状を示すこともあります。

 下痢、嘔吐などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

■サルモネラ食中毒の検査と診断と治療

 食中毒によって乳幼児や高齢者の脱水症状が強くなった場合には、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診します。

 医師は急性の中毒症状から感染を疑いますが、サルモネラ食中毒と確定するには、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。食べた食品、季節、年齢も参考になります。

 感染初期や軽症の場合は、整腸剤や補液の点滴による対症療法を行います。重症化した場合は、抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

 ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

 サルモネラ食中毒を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できるかぎり避ける。ペットに触れた後は、よく手を洗う。


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性器ヘルペス症

■単純ヘルペスウイルスによって発症する性感染症

 性器ヘルペス症とは、単純ヘルペスウイルスによって発症する疾患。主に性行為によって、性器へ感染して起こります。

 女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

 症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純ヘルペスウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

 症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頚部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

 女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4 週間近くを要します。

 単純ヘルペスウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、性器ヘルペスの再発型を発症し、単純ヘルペスウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

 再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。多くは1週間以内に治ります。 再発の回数は月2~3回から年1~2 回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

 性器ヘルペスの問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

 性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、性器ヘルペスは世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

 また、妊娠末期に性器ヘルペス症になると、乳児が産道感染して重症になり、死亡することが多いので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純ヘルペスウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。 

■性器ヘルペス症の検査と診断と治療

 急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

 医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

 病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純ヘルペスウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

 症状が軽いものには、単純ヘルペスウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

 急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。


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ノロウイルス食中毒

■カキなどの貝類を介してノロウイルスが感染し、引き起こされる食中毒

 ノロウイルス食中毒とは、ノロウイルスが水や貝類などの食品を介して感染して引き起こされる食中毒。ノロウイルスが食品を介さずに人から人に感染する場合は、感染性胃腸炎と呼ばれます。

 ノロウイルスはカキなどの二枚貝の中腸腺(せん)に蓄積されやすく、貝類を生あるいは十分に加熱しないで食べることで主に感染し、人間の小腸粘膜で増殖して食中毒を引き起こします。また、感染性胃腸炎は、ウイルス感染者の糞便(ふんべん)や嘔吐(おうと)物から大量に排出されたノロウイルスが食品、調理器具、手指に付着し、 食事の際や手指が口に触れた際に侵入して感染を引き起こします。

 食中毒、感染性胃腸炎のどちらも1年を通して発生しますが、ノロウイルスが乾燥や寒さに強いことから、冬場の11月から3月にかけて最も多く発生します。特に、保育園、幼稚園、学校、老人福祉施設などで発生した場合は、集団発生につながることがあります。

 ノロウイルスは2002年8月、国際ウイルス学会で命名されましたが、元はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていました。ちなみに、ノロとは発見された地名に由来しています。

 非常に小さい球形の生物で、直径0.03マイクロメーター前後の蛋白(たんぱく)質でできた球の中に遺伝子(RNAリボ核酸)が包まれた構造をしています。近年、新しい検査法(PCR法)の普及によって、食品からのウイルスの検査が可能になり、100粒子以下の少量で感染するなど食中毒との関係が明らかになってきました。 多くの遺伝子型が存在しますので、一度感染したからといって次に感染しないとは限らず、何度でも感染します。

 感染しても全員が発症するわけではありませんが、24~48時間の潜伏期間を経て発症した場合の主症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、水のような下痢、腹痛、38℃以下の発熱で、風邪に似ています。普通の成人は発症しても軽症ですみ、通常3日以内で回復します。免疫力の低下した高齢者や乳幼児では、少量のウイルスを摂取することで発症し、死亡することもあります。

■ノロウイルス食中毒の検査と診断と治療

 ノロウイルス食中毒、感染性胃腸炎を発症した場合、すぐに医療機関を受診し適切な処置を受けます。自己判断で下痢止めの薬などを飲むと、回復を遅らせることもあります。

 医師による診断に際しては、検便によってウイルスの保菌状況を確認します。

 効果のある抗ウイルス剤は現在のところありませんので、治療法は通常、対症療法しかありません。高齢者や乳幼児では脱水症状や体力の消耗を引き起こすこともあるため、水分と栄養の補給を十分に行います。普通の成人は発症から1~2日程度、3日以内には治癒します。

 なお、糞便からのウイルスの排出は下痢などの症状がなくなっても、 通常では1週間程度、長い時には1カ月程度続くことがありますので、症状が改善した後も、 しばらくの間は直接食品を扱わないこと大事です。

 予防法としてはまず、カキなどの貝類は中心部まで十分に加熱してから食べることです。湯通し程度の加熱では、ウイルスは死にません。次に、トイレの後や食事の前、調理前によく手を洗うことです。逆性せっけんや消毒用アルコールは効きませんが、十分な手洗いでノロウイルスを洗い流せます。

 また、タオルや調理器具、容器も清潔なものを使用するよう心掛けます。ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や糞便などを片付ける際にはビニール手袋、マスクなどを使用し、衣類は消毒します。


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ハンセン病

らい菌によって起こる慢性の感染症

 ハンセン病とは、抗酸菌に分類される、らい菌によって起こる慢性の感染症。らい病とも従来は呼ばれ、主に脳・脊髄(せきずい)から出る末梢(まっしょう)神経、皮膚、精巣、目、鼻の粘膜が侵されます。

 治療しないと外見が変形することから、ハンセン病の発症者は長い間恐れられ、遠ざけられてきました。感染力が強いわけではなく、死に至ることもなく、抗生物質で治療可能な疾患であるにもかかわらず、今なお一般の人々に根深く恐れられています。そのため、ハンセン病にかかった人は、心理的、社会的問題に苦しむことも多いのです。現在の日本では、ハンセン病は感染症法には含まれず、らい予防法は1996年4月に廃止されました。

 ハンセン病は世界中に100万人以上もの発症者がいる疾患で、インドとネパールを始めとするアジア、タンザニアなどのアフリカ、ブラジルなどの中南米、太平洋諸国に多くみられます。20〜30歳代の人に多くみられますが、どの年齢でも発症します。近年の日本では、新たな発症者は年間10名程度で推移し、そのうち半数以上を在日外国人が占めています。

 感染経路ははっきりしていませんが、発症者の鼻や口からまき散らされた飛沫(ひまつ)を吸ったり、接触したりすることによる人から人への感染が、1つの経路として考えられています。ところが、空気中にらい菌が存在しても、ほとんどの人はハンセン病にはかかりません。約95パーセントの人では、免疫システムが感染を防御するのです。

 発症者の約半数は、おそらく感染者の近くで長期に渡って接触のあった人だと考えられます。たまたま発症者と接触したというような短い接触では感染は起こらず、俗にいわれるような、触っただけで移るなどということはありません。医療従事者は発症者と長いことかかわりますが、ハンセン病にはかかりません。らい菌の感染源としてはほかに、土壌、ほ乳動物のアルマジロ、トコジラミ、蚊などが考えられます。

 発症する場合は、類結核型のような軽いものから、らい腫(しゅ)型のような重いものまでさまざまです。類結核型には、感染性はありません。ハンセン病を起こす細菌は非常にゆっくり増殖するので、症状が出るのは感染してから少なくとも1年後、平均で5〜7年後になります。また、症状が出てからの進行も緩やかです。

 症状は主に、皮膚と末梢神経に現れます。皮膚には、特徴的な発疹(はっしん)や隆起が現れます。神経が侵されると、その神経によって制御される範囲の皮膚に感覚がなくなり、筋力が低下します。

 皮膚の斑(まだら)の数と形状によって、ハンセン病は類結核型、らい腫型、境界型、および未定型に分類されます。これらの病型によって、長期的な経過の見通し(予後)、起こる可能性のある合併症、抗生物質による治療が必要な期間が異なります。

 類結核型では、白い平らな部分が1つないし少数ある発疹が現れます。発疹が現れた部位では、皮下の神経が細菌に侵されるため、感覚がなくなります。

 らい腫型では、皮膚にたくさんの小さな隆起や、より大きく盛り上がった大小さまざまな形の発疹が現れます。類結核型に比べて、感覚のなくなる範囲が広く、一部の筋肉に脱力感が現れます。

 境界型では、類結核型とらい腫型の両方の特徴が出ます。放置した場合、症状が改善すれば類結核型になり、悪化してらい腫型に似た症状になることもあります。

 ハンセン病の最も重い症状は、末梢神経の感染により触覚がなくなることで、痛みや熱さ、冷たさを感じることができなくなります。このため、自分自身の体がやけどや切り傷などを負っても、気が付かないことがあります。繰り返し障害が起こると、足や手の指を失うことにもなります。

 また、末梢神経の障害は筋力の低下も引き起こし、そのために手の指がかぎ爪のように曲がる、足首が底側に曲がる(尖足〔せんそく〕)など、体の変形が起こることもあります。皮膚感染では、はれやしこりがあちこちにでき、顔にできると特に変形が目立ちます。

 さらに、足の裏がただれます。鼻の粘膜が侵されると、慢性的な鼻詰まりが起こり、治療しないで放置しておくと鼻全体が侵されてきます。目に障害が起こると、失明につながります。らい腫型の男性では、勃起(ぼっき)機能不全(インポテンス)が起き、精巣で作られる精子や男性ホルモンの1つであるテストステロンの量が減るため、生殖能力がなくなります。

 ハンセン病は経過によっては、治療を受けていても、体の免疫応答による炎症反応を起こすことがあります。発熱、皮膚や末梢神経の炎症が多く、ほかにリンパ節、関節、精巣、腎(じん)臓、肝臓、目の炎症も起こります。

■ハンセン病の検査と診断と治療

 なかなか消えない特徴的な発疹、触覚の喪失、筋力の低下による体の変形などの症状があれば、ハンセン病が強く疑われます。らい予防法の廃止後、ハンセン病は保険診療の適用になり、診断と治療は一般の医療機関、主に皮膚科外来で行われています。

 診察ではまず、出身地・出身国、小児期の居住地、家族歴、気付かずにいるやけどやけがの既往などを問診し、その後、皮膚症状の検査、神経症状の検査、らい菌の検出、病理組織検査などを行います。診断の確定には、らい菌の検出が重要です。らい菌の培養は現在のところ不可能なので、皮膚症状のある部位にメスを刺して組織液を採取する皮膚スメア検査、皮膚の病理組織を抗酸菌染色する検査、らい菌の特異的な遺伝子(DNA)を証明する検査のうち、複数の検査が行われています。

 かつて、ハンセン病の発症者は顔や体が変形するために社会から追放され、施設や特定の集落などに隔離されてきました。今でもまだ、こういうことが行われている国はあります。しかし、ハンセン病は隔離の必要はありません。感染力があるのは未治療のらい腫型だけで、それも簡単に感染するものではありませんし、いったん治療を始めれば感染力はなくなります。

 さらに、ほとんどの人はハンセン病に対する免疫をもともと持っており、感染のリスクがあるのは、ハンセン病の発症者の近くで長期間一緒に過ごす人に限られています。リスクがある人は定期的に検査を受ける必要がありますが、抗生物質の予防投与は行われません。結核の予防に使われるBCGワクチンがある程度ハンセン病にも予防効果を持ちますが、あまり使われていません。

 抗生物質による治療を行えば、ハンセン病の進行は抑えられます。すでに障害を受けた神経や体の変形を元に戻すことは、できません。それだけに、早期発見と早期治療により後遺症を残さないことが、非常に重要です。特定の抗生物質に耐性を示すらい菌もあるので、治療には通常複数の抗生物質を使います。ダプソン(DDS)とリファンピシン(抗結核剤)の併用が標準的に用いられます。

 ダプソンは比較的安価で、副作用もアレルギー性の発疹や貧血がたまに出る程度の安全な薬です。リファンピシンはやや高価で、薬効も強いですが、重い副作用として肝障害やインフルエンザ様症状が起こることがあります。重症例の治療では、クロファジミンを追加的に使います。ほかには、エチオナミド、ミノサイクリン、クラリスロマイシン、オフロキサシンなどが使われます。

 らい菌は根絶しにくいので、抗生物質による治療を長期間行う必要があります。感染症の重症度や医師の判断によって、6カ月から数年に渡って続けます。らい腫型の場合は、治療を一生続けることを勧める医師もいます。


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ボツリヌス菌食中毒

■ボツリヌス菌の作る毒素によって起こる食中毒

 ボツリヌス菌食中毒とは、強力な毒素を産生するボツリヌス菌によって引き起こされる食中毒。

 ボツリヌス菌は土壌や海、湖、川などの泥砂中に分布している嫌気性菌で、熱に強い芽胞を形成します。この菌による食中毒は、欧米では古くからハム、ソーセージなどによる腸詰め中毒として恐れられていて、ハム、ソーセージに発色剤として添加される硝酸塩は発色作用よりも、ボツリヌス菌の繁殖を抑える目的で使用されています。

 酸素がなくて水分や栄養分があるなど一定の発育条件がそろった食品中で、猛毒の神経毒素であるボツリヌス毒素を産生。食品とともに摂取された毒素は、主に小腸上部で吸収され、リンパ管をへて血液中に入り、末梢(まっしょう)性の神経まひ症状を起こします。現在知られているものでは最強の毒力があるといわれ、テロリストによって生物兵器として使われるのではないかと心配されています。

 菌は毒素の抗原性の違いによりA~Gまでの型に7分類され、人に対する中毒はA、B、E、F型で起こります。A、B型は芽胞の形で土壌中に分布し、E、F型は海底や湖沼に分布します。

 日本では、缶詰、ビン詰、容器包装詰低酸性食品(レトルト食品類似食品)、自家製の飯鮨(いずし)などによる食中毒がみられます。海外では、キャビア、野菜などの自家製ビン詰や缶詰、ハム、ソーセージによる食中毒がみられます。

 日本では、北海道や東北地方の特産である魚の発酵食品、飯鮨(いずし)による食中毒が数多く知られています。飯鮨は生魚、飯、酢、食塩、砂糖などを混ぜた自家製の保存食品で、調理に加熱工程がないことや、海底にボツリヌスE型菌が分布していることなどが、発生原因とされています。

 しかし、1998年と1999年に連続して、容器包装詰低酸性食品を原因とするA型およびB型毒素による食中毒が発生して以降、ボツリヌス菌食中毒の発生はありません。

 潜伏期間は平均1〜2日で、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの腹部症状に続いて、物が二重に見える複視、発語困難、舌のもつれ、口渇、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などの神経まひ症状が現れます。さらに症状が進むと、便秘、尿閉、四肢のまひが現れ、次第に呼吸困難に陥ります。

 10日以上経過すれば死亡を免れますが、それ以前に呼吸筋のまひによる呼吸不全などで死亡することも少なくありません。

■ボツリヌス菌食中毒の検査と診断と治療

 ボツリヌス菌食中毒は極めて致死率が高いため、医師による検査および診断は、迅速な対応が求められます。診断は中毒の原因と推定された食品、発症者の糞便(ふんべん)、血液、胃内容、吐物などから毒素の証明をし、菌を分離することで行われます。

 近年では、糖とボツリヌス毒素を結合させ、毒素遺伝子を迅速かつ特異的にレーザーで検出する遺伝子増幅法が普及しています。区別が必要な疾患には、脳卒中、急性球まひ、メタノール中毒などがあります。

 治療では、抗毒素を注射で投与するとともに、輸液によりブドウ糖液、リンゲル液などの電解質液、あるいは水を補充して症状の改善を待ちます。さらに症状の経過に応じて、 人工呼吸器による呼吸の補助など、さまざまな対症療法も行われます。日本では1962年に抗毒素療法が導入された結果、致命率は著しく低下しました。

 このボツリヌス菌食中毒のほとんどは、自家製食品によって起こっています。菌の食品汚染は、原材料に由来するとされています。食中毒を防ぐためには、以下のことを心掛けます。

 新鮮な原材料を用いて十分に洗浄する。低温下で素早く調理する。飯鮨などの魚肉発酵食品には、酢酸を添加する。食肉製品や魚のスモークは十分に加熱する。自家製の缶詰、真空パック、びん詰を製造後は、冷蔵あるいは冷凍下で保存する。製造後あるいは保存中に異臭がする食品や、容器包装詰低酸性食品の食べ残しなどは廃棄する。


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メタノール中毒

■メタノールを飲んだり、吸い込んで引き起こされる食中毒

 メタノール中毒とは、酒(エタノール)と間違えるなどしてメタノールを誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込んで、引き起こされる食中毒。

 メタノールはアルコールの一種で、別名としてメチルアルコール 、木精、カルビノールメチールとも呼ばれます。

 このメタノールは、アルコールランプなどの燃料、自動車のフロントガラス用などの洗浄剤、溶剤として、またフェノール樹脂、接着剤、酢酸、ホルマリンなど各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのために、誤飲する機会も多く、工場などで急性、慢性に吸入することも多くあります。

 エタノールと同様に、メタノールも体に入ると酔いをもたらします。ただし、エタノールが体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸(ぎさん)に分解されます。

 この蟻酸がたまることにより、視神経を傷付けて、視力障害さらには失明を引き起こします。それ以外に、急性下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、出血性胃炎、急性膵(すい)炎、頭痛、めまいなど、さまざまな症状を引き起こします。

 急性中毒の場合、メタノールを故意に、あるいは間違って飲んだり、吸い込んだりしてから半日〜1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような酔いが起こるだけで、ほかには特に症状は出ません。ただし、吸い込んだ場合には、目や鼻の刺激を覚えることがあります。

 翌日から吐き気、嘔吐、頭痛、めまいのほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、血液が酸性になる代謝性アシドーシスも生じます。1週間以内に、視神経委縮と視野狭窄(きょうさく)のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。

 多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸まひを起こし、死ぬこともあります。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。

■メタノール中毒の検査と診断と治療

 メタノール中毒に気付いたら、まずできるだけ吐かせ、次に酒(エタノール)をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送します。

 医師による急性中毒の診断では、発症者の話をよく聞いて、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切です。それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、目などの症状と代謝性アシドーシスが診断の手掛かりになります。視力障害がみられる時は、視神経の委縮と視野の狭窄の有無を調べます。慢性中毒の場合は、目の所見と尿中のメタノールの量を調べます。

 急性中毒の治療では、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。メタノールもエタノールもアルコール脱水素酵素などの同じ酵素で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなるためです。また、必要に応じて胃洗浄を行ったり、下剤を投与して、メタノールを排出させるようにします。

 重症の場合には、人工透析を行って血液中のメタノールを取り除く場合もあります。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行います。


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赤あざ(血管腫)

■皮膚の毛細血管の増殖、拡張でできる赤いあざ

 赤あざとは、真皮および皮下組織の中にある毛細血管の増殖、拡張を主としてできる母斑。内部の血液によって皮膚表面は赤く見え、血管腫(しゅ)とも呼ばれます。

 異常を示す血管のある部位と、血管の構造の違いにより、いろいろの型があります。代表的なものは、ポートワイン母斑(単純性血管腫)、正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑、苺(いちご)状血管腫(ストロベリーマーク)です。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)は、赤ブドウ酒色をした皮膚と同じ高さの平らで、境界が鮮明な斑です。 普通は出生時からあって、その後、拡大することも、自然に消えることもありません。加齢とともに少し膨らみ、いぼ様の隆起が出現することもあります。

 この母斑は、真皮の上の部分の毛細血管の拡張、充血の結果できるものです。多くは、美容的な問題があるだけであり、放置してもかまいません。

 ただし、この型の大きな血管腫が顔の片側にある時は、スタージ・ウェーバー症候群といって、眼球や脳の中に血管腫が合併することがあります。また、片側の腕や下肢に大きな血管腫がある時は、クリッペル・ウェーバー症候群といって、その部分の筋肉や骨の肥大などの合併症がある場合があるので、注意が必要です。

 正中線母斑(サーモンパッチ)・ウンナ母斑は、乳幼児の顔、後頭部の正中線に沿ってみられる、淡紅色ないし暗赤色の毛細血管の拡張した赤い斑点です。額、眉間(みけん)、上まぶたにあるものを正中線母斑、またはサーモンパッチといい、1歳から3歳までの間に自然に消退するものの、完全ではありません。

 また、うなじから後頭部にみられるものをウンナ母斑といい、消退するのに時間がややかかり、また一生消えない場合もあります。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は、出生時より、または生後間もなく出現する赤色、ないし暗赤色の軟らかい小腫瘤(しゅりゅう)で、表面が苺の実のように粒々しています。

 出生後、半年から2年までは急速に増大して、大きいものでは鶏卵大以上の大きなしこりになることもあるものの、5~6歳ころまでには完全に消失します。この赤あざは、真皮内に未熟な血管がたくさん増殖するためにできるものです。

 自然に治るので慌てて治療する必要はありませんが、未熟な血管の集団があるため、外傷を受けるとなかなか出血が止まらないことがあるので、注意が必要です。出血した時には、清潔なタオルかガーゼで十分に圧迫して、出血が止まるまで押さえておく必要があります。

■赤あざの検査と診断と治療

 赤あざ(血管腫)を早期に的確に診断することは、必ずしも簡単ではありません。皮膚科専門医を受診して、診断を確定するとともに治療法についても相談します。

 医師は通常、見た目と経過から診断します。スタージ・ウェーバー症候群やクリッペル・ウェーバー症候群が疑われる場合には、画像検査などが必要になります。

 ポートワイン母斑(単純性血管腫)に対しては、パルス色素レーザー治療が第一選択です。うすいあざなので、手術をすると残った傷が目立つためです。レーザー治療の効果の程度は病変の深さによって違いますが、傷を残さずにほとんどの赤あざを消退させることができます。乳幼児期から開始する早期治療が、有効です。

 カバーマークによる化粧で色を隠すのも、選択肢の一つです。

 顔面の正中線母斑(サーモンパッチ)は、自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。完全に消えない場合には、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療が勧められます。ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。

 苺状血管腫(ストロベリーマーク)は自然に消えていくので、特に合併症の危険がない大部分のものは無治療で経過をみて差し支えありません。ただし、まぶたに生じ、目をふさいでしまうようになったものや気道をふさぐものなどは早急な治療が必要です。

 即効的な治療として、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の大量投与が行われます。効果が不十分な場合には、インターフェロンαの連日皮下注射が行われる場合もあります。これらの治療は効果的ですが、いずれも重い副作用を生じる可能性があります。

 単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。この治療は副作用が少ないのですが、こぶを小さくする効果は期待できません。こぶを縮小するためには、内部にヤグレーザーを照射します。


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クルーゾン症候群

■遺伝が原因として考えられる先天性の異常疾患

 クルーゾン症候群とは、遺伝が原因として考えられている先天性の異常疾患。生まれ付き、頭や顔、あご、手足の異常を起こします。

 クルーゾン症候群の主な症状としては、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症が挙げられます。

 乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

 頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

 眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

 乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ありませんが、クルーゾン症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

■クルーゾン症候群の検査と診断と治療

 乳幼児の頭の形がおかしいと心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

 クルーゾン症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

 頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

 手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

 近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

 骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

 さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。

 頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

 単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。クルーゾン症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨、顔面骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。


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メタノール中毒

■メタノールを飲んだり、吸い込んで引き起こされる食中毒

 メタノール中毒とは、酒(エタノール)と間違えるなどしてメタノールを誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込んで、引き起こされる食中毒。

 メタノールはアルコールの一種で、別名としてメチルアルコール 、木精、カルビノールメチールとも呼ばれます。

 このメタノールは、アルコールランプなどの燃料、自動車のフロントガラス用などの洗浄剤、溶剤として、またフェノール樹脂、接着剤、酢酸、ホルマリンなど各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのために、誤飲する機会も多く、工場などで急性、慢性に吸入することも多くあります。

 エタノールと同様に、メタノールも体に入ると酔いをもたらします。ただし、エタノールが体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸(ぎさん)に分解されます。

 この蟻酸がたまることにより、視神経を傷付けて、視力障害さらには失明を引き起こします。それ以外に、急性下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、出血性胃炎、急性膵(すい)炎、頭痛、めまいなど、さまざまな症状を引き起こします。

 急性中毒の場合、メタノールを故意に、あるいは間違って飲んだり、吸い込んだりしてから半日〜1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような酔いが起こるだけで、ほかには特に症状は出ません。ただし、吸い込んだ場合には、目や鼻の刺激を覚えることがあります。

 翌日から吐き気、嘔吐、頭痛、めまいのほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、血液が酸性になる代謝性アシドーシスも生じます。1週間以内に、視神経委縮と視野狭窄(きょうさく)のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。

 多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸まひを起こし、死ぬこともあります。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。

■メタノール中毒の検査と診断と治療

 メタノール中毒に気付いたら、まずできるだけ吐かせ、次に酒(エタノール)をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送します。

 医師による急性中毒の診断では、発症者の話をよく聞いて、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切です。それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、目などの症状と代謝性アシドーシスが診断の手掛かりになります。視力障害がみられる時は、視神経の委縮と視野の狭窄の有無を調べます。慢性中毒の場合は、目の所見と尿中のメタノールの量を調べます。

 急性中毒の治療では、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。メタノールもエタノールもアルコール脱水素酵素などの同じ酵素で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなるためです。また、必要に応じて胃洗浄を行ったり、下剤を投与して、メタノールを排出させるようにします。

 重症の場合には、人工透析を行って血液中のメタノールを取り除く場合もあります。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行います。


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遺精

■性行為、自慰行為によらず、ほとんど無意識のうちに射精が生じる現象

 遺精とは、性行為、自慰行為などによらず、ほとんど無意識のうちに射精が生じる現象。

 睡眠中に遺精を生じることがありますが、これを夢精、あるいは夜間遺精と呼んでいます。遺精は昼間に突然、起こることもあります。

 夢精には、睡眠中に性的な夢を見てオルガズムを伴い、勃起(ぼっき)してから射精する場合と、性的な夢、オルガズム、勃起を伴わない場合があります。10~16歳くらいの思春期の男子に多くみられる生理的現象で、疾患ではありません。まれには、精嚢炎などで起こることもあります。

 思春期には、精液の成分を作っている精嚢腺(せいのうせん)や前立腺が分泌液を大量に作るため、自律神経を介する射精反射が起こることが原因と考えられています。とりわけ夜間は、膀胱(ぼうこう)が尿で充満するため、これに接している精嚢腺や前立腺が圧迫されて夢精が発生すると考えられています。

 かつては思春期を迎えると、夢精で精通を経験する比率が高かったとされていますが、近年は自慰行為を覚えるのが低年齢化しており、夢精を経験せずに自慰行為を始めるケースが多いと見なされています。一般的に自慰行為を頻繁に行うと夢精を経験する割合が下がり、年齢とともに少なくなっていくのが普通。一説には、成長に伴い過剰な精液の成分を排尿時に一緒に排出する能力が備わるため、夢精によって排出する必要がなくなるからといわれます。

 夢精が毎晩起こったり、遺精が頻繁にみられるようになると、病的な遺精といえます。その原因となる疾患としては、脊髄(せきずい)神経疾患、精嚢炎、前立腺炎、極度の精神的疲労、神経衰弱、性的神経症、禁欲などが挙げられ、治療が必要な場合もあります。

 一説には、精神的疲労や肉体的疲労がたまっている際には、筋肉の硬直から遺精が引き起こされやすいといわれます。

■遺精の検査と診断と治療

 病的な遺精は、その原因となる脊髄神経疾患、精嚢炎、前立腺炎などの疾患を治すことが必要ですので、泌尿器科の専門医を受診します。精嚢炎、前立腺は細菌などによって炎症が起こるもので、あらゆる年代の男性に起こります。

 極度の精神的疲労、神経衰弱、性的神経症が原因となることもありますので、できるだけ精神的な過労を避けるように努めることも大切です。


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亀頭包皮症

■陰茎の亀頭部と包皮に炎症が生じる疾患

 亀頭(きとう)包皮炎とは、男性の陰茎の先に当たる亀頭部と、陰茎を包んでいる皮膚に当たる包皮に炎症を生じる疾患。亀頭が包皮に包まれている包茎の場合に多く、細菌感染などで炎症が起こります。

 小児の亀頭は、通常、包皮に包まれています。そのため亀頭と包皮の間にカスやアカがたまりやすいために、亀頭包皮炎を発症します。おむつをしている乳児には、しばしばみられます。

 症状としては、亀頭と包皮が赤くはれて、うみが出たり、排尿の時に痛がります。おむつやパンツには、黄色いうみが付きます。

 成人の場合も、主に亀頭と包皮の内側の間にアカがたまることによって、細菌などに感染し発症します。包茎があると発症しやすくなりますが、包茎がなくても発症します。セックス、オーラルセックスの際、気付かないうちに亀頭に傷ができてしまい、その傷が治る前に細菌が入って発症することもあります。女性からカンジダや淋菌(りんきん)などの細菌や、単純ヘルペスウイルスを移されて、発症することもあります。

 これ以外にもいろいろな原因があり、尿や薬品などが原因で起こるアレルギー性のものもあります。

 症状は、どんな細菌、ウイルスが入るかによって違うところもあり、どんな細菌、ウイルスでも同じに出る症状もあります。軽度のものは、亀頭と包皮のかゆみ、痛み、はれ、発赤、焼けるような感じが現れます。高度のものは、びらんを作り、うみを持つことがあり、排尿時に痛みを発します。時に出血することもあります。

 カンジダに感染した場合は、亀頭部の付け根に当たる環状溝や包皮に、白っぽいカスが付着し、かゆくなるのが特徴です。淋菌に感染した場合は、黄色いうみ状の液が出るのが特徴です。ヘルペスに感染した場合は、痛みを伴う水疱(すいほう)ができて、破れます。アレルギー性のものでは、かゆみとむくみを伴い発赤します。

■亀頭包皮炎の検査と診断と治療

 亀頭や包皮に発赤、はれ、痛み、かゆみが現れたならば、小児科、あるいは泌尿器科の専門医を受診します。

 小児の場合は、小児科医、泌尿器科医が診察すれば容易に診断できるので、特別な検査は不要です。成人の場合は、いろいろな原因があり、症状だけでは診断できないことも多くなります。性器に皮膚疾患を示しているカンジダ症などの原因疾患について調べ、尿の検査を行うこともあります。ラテックス製コンドーム使用の有無を問診することもあります。治りにくいものでは、基礎疾患に尿道炎や糖尿病、免疫病、腫瘍(しゅよう)がないか組織検査を行うこともあります。

 治療では、無理のない範囲で包皮をむいて、分泌物や退廃物を洗浄したり、うみを出して消毒したりした後で、抗生剤の軟こうを塗ります。びらんを作っているなど炎症が強い時には、抗生剤の内服が必要なこともあります。カンジダが原因となっている場合は抗真菌剤、淋菌が原因となっている場合は抗生物質、アレルギー性の場合は抗アレルギー剤を使って治します。

 手で包皮をむいても亀頭が顔を出さないものを真性包茎と呼びますが、真性包茎で亀頭包皮炎を繰り返すと、皮膚自体が弱まり、皮膚が部分的に切れる包皮裂傷などの原因となります。この真性包茎で再発を繰り返す場合や、尿が出にくい場合、なかなか治癒に至らない難治性の場合、他の疾患の合併症などが生じた場合は、炎症が治まった時点での手術が考慮されます。手術には、包茎の環状切除または包皮形成術があります。

 小児の場合、治癒した後は再発を防ぐため、入浴時には皮をむいて洗うようにします。また、汚れた手で性器を触らないように注意します。成人の場合も、再発を防ぐためには、できるだけ性器を清潔に保ち、細菌やウイルスが広がりにくいようにすることが欠かせません。


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早漏

■パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

 早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

 男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

 性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

 すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

 これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

 「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

 例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

 基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

 元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

 ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

 ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

 これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

■早漏の検査と診断と治療

 精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

 早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

 包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

 陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

 薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

 近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

 泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。


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包茎

●包茎とはどういう状態なのか

 男性の包茎というのは、ペニス(陰茎)の先の亀頭部が包皮に包まれたままの状態を指し、包皮が亀頭に比べて小さいために翻転できないことです。

 この包茎には、包皮のむけ具合によって、いろいろな程度があります。大別すると、「真性包茎」と「仮性包茎」の二つがあり、真性は完全にむけないもの、仮性は平常時には亀頭を覆っているが、勃起時や包皮を手で陰茎部のほうにたぐれば、亀頭が簡単に出てくるものをいいます。

 一般的にいわれている仮性包茎は病的状態ではなく、むしろ、大部分の日本人男性が仮性包茎状態です。常に亀頭部が露出した状態はむしろ少数であることは、あまり知られていません。

 小児では、亀頭は完全に包皮に包まれているのが普通です。思春期以後から、包皮を押しのけて亀頭が表れるようになります。つまり、一人前の大人の男性として、ペニスの脱皮が図られるようになるのです。包皮に保護された温室から外界に出て、ペニスは幾多の試練?に合うことになります。

 思春期以後、ペニスがうまく発育して亀頭が露出すれば、問題はありません。そうはうまくゆかないから、困ります。

●包茎はなぜいけないのか

 幼児や小児では、ペニスは排尿さえできればよいのですが、思春期を迎えて性ホルモンが活発に働き始めると分泌物が多くなり、これが白く、黄色く、特殊な臭いがする恥垢(ちこう、ちく)となって、包皮の内側にたまってきます。清潔にしないでほうっておくと、包皮炎や亀頭炎を起こすこともあります。

 手を加えて包皮の翻転ができるなら、時々、皮をめくって、ぬるま湯とせっけんできれいに垢(あか)をとるべきです。もし炎症が起こっていれば、マーキュロを塗布します。きつい消毒液は、粘膜を痛めるので使用しないことです。 

 極端な包茎では、亀頭が包皮によってピッチリ覆われ、排尿障害を起こすことがあります。また、「篏頓(かんとん)包茎」の場合、無理に包皮を翻転させると、そのまま戻らなくなって包皮が腫脹(しゅちょう)し、亀頭に不快な痛みが生じます。

 これらは、睡眠中に起こったり、外陰部に強い圧力がかかったり、激しいマスターベーションを行った際などにみられます。処置としては、温湿布で局部のむくみをとってからぬるま湯で洗い、両手で包皮を整復すればよいでしょう。

 また、女性にとって都合が悪いということでも、包茎が問題となります。排尿ができて、射精するのみならば、包茎は男性にとってさほどの障害にはなりませんが、セックスパートナーとなる女性にも喜んでもらうためには、真性包茎、嵌頓包茎では支障が生じます。

 日ごろ包皮に包まれ、外界に接触していない亀頭粘膜は、すこぶる敏感なのです。ちょっとした刺激でも興奮して、射精が早く起こる早漏になりやすいのです。一般的に包茎の人の多数が早漏といわれるのも、粘膜が敏感なためで、セックスに対する経験不足によって、脳中枢での興奮刺激のコントロールができない点も加われば、女性にとって歓迎すべきことではありません。

 恥垢がたまりやすい包茎では、女性側の子宮内膜炎の原因にもなりかねません。また、男性側の包皮も皮膚炎を起こしやすく、女性と接触後、相手の体液やコンドームの潤滑剤により、アレルギー性の皮膚のかゆみ、発疹(はっしん)を起こすことがあります。亀頭粘膜も弱いため、粘膜感染しやすく、性病にかかりやすいと見なされます。

 包茎は早めに、適切に処置すべきです。子供のころから、排尿の時、適当にペニスをむいて用を足すように習慣づければ、包茎は自然に解消されます。

●包茎の手術と費用

 自分で処置できない時は、泌尿器科か外科の専門医に相談するのが望ましいでしょう。

 包茎手術に踏み切る場合、真性包茎、篏頓包茎では「生活に支障をきたす=病気」と判断されることが多く、健康保険が適用されます。自己負担額は1万円から3万円ほど。仮性包茎では、「生活に支障をきたす」というよりは「カッコ悪い」、「恥ずかしい」といった精神的問題と見なされるため、ほとんどの場合において健康保険は適用されません。

 一般の病院・クリニックの泌尿器科、外科での保険治療の対象になる手術方法は、背面切開法、または環状切開法です。背面切開法とは、包皮に縦の切れ目を入れることで、「とりあえずむける」ようにするための手術方法です。長い皮は短くなりません。真性包茎や篏頓包茎を仮性包茎にするための手術で、傷跡はあまり目立ちません。

 環状切開法のほうは、ペニスの周囲にグルッと一回り切れ目を入れて、余分な包皮を縫い縮める手術です。一般的には、クランプという器具をかぶせて、血管も一緒に切ります。傷跡は、背面切開法より目立ちます。

 手術は極めて簡単ですから、入院の必要はありません。手術後1~2日は局部の疼痛(とうつう)と不快感がありますが、我慢できないほどではありません。2、3日は尿に血が混じったり、排尿時に陰茎痛があることもありますが、過激な運動さえしなければ1週間で完全に治ります。 

 手術によって「ペニスがいびつになるのではないか」と心配する人も、いることでしょう。皮を切り取るだけの手術ですから、心配は無用。手術後、切断の残りの包皮の部分に浮腫(ふしゅ)を見ることがあっても、自分の手で圧迫すればすぐ取れるし、医師に相談すれば簡単に治してくれます。

 包茎専門の泌尿器科、形成外科、美容整形外科等の専門病院・クリニックで、手術を受ける選択肢もあります。健康保険は効かず自由診療になりますが、個人のペニスに合わせた丁寧な手術をしてくれます。女性の美容整形と同じイメージですので、縫合も丁寧で、一般病院の泌尿器科での手術に比べて、環状切開法での傷跡が目立ちません。また、血管の位置なども計算して手術してくれるので、出血も少なく、痛みも軽くなります。

 ちなみに、形成外科などの専門病院での手術費用は、だいたい以下の通りです。仮性包茎手術の相場は、おおよそ8万~16万円程度。真性包茎、篏頓包茎の手術の相場は、おおよそ20万円前後です。病院によっては、学割が適用されるところもあります。

 しかし、すべての専門病院が、上記の範囲におさまるわけではありません。手術を考えている人は、必ず病院でしっかりと説明を受けてください。


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勃起障害(ED)

■精神的、ないし身体的な原因で満足な性行為が行えない状態

 勃起(ぼっき)障害とは、性的な刺激を受けても、陰茎の形や大きさが不足したり、勃起を射精時まで維持できなかったりして、満足な性行為が行えない状態。勃起不全、ED(Erectile Dysfunction)、インポテンツ(性交不能症)とも呼ばれます。

 男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

 性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑菌が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

 すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。

 勃起障害は心因性(機能性)の障害と、身体的(器質性)の障害に大別することができますが、大部分は前者です。

 心因性障害は、基本的には体に異常がないものの、精神的な原因で勃起の障害を来します。具体的には、不安、ストレス、心の病、性器や性行為能力への不信、家の構造上の問題などが原因となります。勃起が起こるには基本的に性的な刺激が必要で、精神的ストレスなどがある時はいくら刺激を受けても、勃起を起こす大脳中枢神経、自律神経、ホルモン系などに悪影響を及ぼし、勃起のメカニズムが正常に作用しなくなります。

 身体的(器質性)障害では、糖尿病によるものが著しく増加しています。そのほか、脊髄損傷、脳障害、動脈硬化、高血圧、泌尿器疾患、内分泌機能障害、薬の副作用が、原因となっています。内分泌機能障害の一つには、男性ホルモンの低下が挙げられます。

■勃起障害の検査と診断と治療

 現在のところ、勃起障害には絶対的な解決策は存在しません。 状態が緊急を要したり、症状が重い場合は、医師へ相談することも選択肢の一つです。

 医師による心因性(機能性)障害の場合の治療は、カウンセリング、性的教育などが主体となりますが、薬物療法を用いることもしばしばあります。

 身体的(器質性)障害の場合は、陰圧式勃起補助具の使用や、陰茎プロステーシスの海綿体内埋め込み手術などがありますが、保険診療では認められていません。

 勃起障害の治療薬としては、労働厚生省にも認可されているバイアグラ(クエン酸シルデナフィル)や、レビトラ(バルデナフィル)が有名です。バイアグラの作用は、勃起のメカニズムのうちでサイクリックGMPの代謝を抑制します。このことで海綿体平滑筋の弛緩(しかん)が増強されるために、勃起も増強されます。つまり、勃起の増強剤であり、決して万能の薬ではありません。

 勃起に関する神経や血管の完全障害の人には、バイアグラは全く効果がありません。また、心臓病でニトログリセリンなどの血管拡張剤を使用している人では、死亡ケースも出ており使用できません。動脈硬化の強い人や高齢者などの使用にも、十分な注意が必要です。専門の医師にも相談の上、使用することが大切となります。

 なお、生活習慣の改善、禁煙・禁酒の実行、性行為時のちょっとしたアイデアで、勃起障害を解決したというケースもあります。


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移動盲腸

■盲腸部が固定されずに、ある範囲以上に移動しやすくなっている状態

 移動盲腸とは、大腸の始まりの部分に相当する盲腸が固定されずに、ある範囲以上に移動しやすくなっている状態。

 盲腸は腹腔(ふくくう)内において、成人前後に背中側の腹膜に固定されますが、正常な状態でも多少の移動性があり、上方約6cm、内方約2cmを生理的限界として移動します。移動盲腸では、先天的に腹膜固定が不十分なために腸間膜が延長し、生理的限界以上に移動しやすく、盲腸に異常な動きが生じます。

 20~30歳代の女性に多く、とりわけ、やせていて、胃下垂、遊走腎(じん)などの内臓下垂がある人に多くみられます。

 症状はないのが普通なものの、時には、右下腹部の慢性の張りや痛み、ガスがたまるための不快感、便秘と下痢を交互に繰り返す便通異常、腰痛、疲労感などを起こすことがあります。便に粘液が混じることもあり、まれに虫垂炎と間違われることもあります。

■移動盲腸の検査と診断と治療

 初診に適した受診科は、消化器科、内科です。

 医師による腹部の触診で、盲腸の盛り上がり、圧痛が認められることもあります。腹部超音波検査や腹部CT検査で、盲腸の移動を確認することができるものの、盲腸の移動量には個人差が大きく、正常な範囲を超えて移動していても問題がない人もいます。

 症状が軽い場合は、特別に治療を行わなくてもよく、食事に注意して適度の運動をすることで、体調を整え便通がよくなるようにします。症状が重い場合、以前は手術を行って盲腸を背中側の腹膜に固定したり、盲腸を縫い縮めたりしたことがあるものの、現在ではこのような処置を特にしないのが普通です。 疾患名としても、あまり使われなくなっています。


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外陰炎

■いろいろな原因により、女性性器の外陰部に発生する炎症

 外陰炎とは、いろいろな原因によって女性性器の外陰部に発生する炎症。

 外陰とは、性器の外側の部分である恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称です。この外陰部に、細菌やウイルス、かびなどの病原体が感染したり、薬物などの化学物質や腟からの下り物などが刺激になって、急性、慢性の炎症を引き起こします。

 外陰単独に発生することもありますが、多くの場合は膣炎を合併しており、その下り物の刺激に体の抵抗力の低下が加わって発症しています。糖尿病やアレルギーのある人は、特になりやすい傾向があります。また、高齢者や子供のように外陰部の皮膚や粘膜が弱い人でも、発症しやすくなります。

 初期の症状としては、かゆみですが、炎症が進むと赤くはれて痛みます。ただれたりすると、少量の出血をみます。炎症が慢性化すると、皮膚や粘膜が白っぽくなり、頑固なかゆみが続きます。

■外陰炎の検査と診断と治療

 外陰部のかゆみが現れて2〜3日しても治らない時は、婦人科あるいは産婦人科を受診します。頑固なかゆみが続く時は、外陰部の粘膜が白く硬くなる硬化性苔癬(たいせん)や悪性病変も考えられるので、必ず受診するようにします。

 医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰や腟分泌物中の病原体を検出します。糖尿病があると発症しやすいため、しばしば再発するような時は、糖尿病の有無も調べます。

 治療では、原因に応じて、細菌やウイルス、かびに効く抗生物質の入った軟こうを用います。時には、かゆみを止める抗ヒスタミン剤や、ステロイドホルモン含有の軟こうを用います。高齢者のように外陰や腟粘膜の弱い場合は、ホルモン剤を投与して強化を図ります。

 なお、外陰炎がある時は、局所を化粧せっけんなどで洗うと症状が悪化するので、お湯で洗い流すだけにするか、無刺激性のせっけんを使用するようにします。


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外反母趾

■足の親指の先端が小指側へ曲がり、痛みを伴う

 外反母趾(ぼし)とは、足の親指(母趾)の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態。通常、痛みを伴います。

 発生の原因としては、先天性あるいは遺伝性の解剖学的要素と、足の指に外から加わる環境因子とが組み合わさって発生したり、関節リウマチなどの疾患で発生します。
解剖学的要素とは、親指が人差指より長いエジプト型前足部であったり、親指の骨頭が巨大であったり、偏平足であったり、親指の骨が内反していたり、腱(けん)、筋(すじ)などの走行に異常があった場合などに出現します。環境因子は、窮屈な履物の常用であり、また路面や床面が硬くなったことが原因として挙げられます。

 男女の発生では女性が男性の10倍ぐらい発生し、好発年齢は初経期(13~14歳頃)と閉経期(50歳代)の2つのピークがみられます。また、前者には高頻度の家族内発生がみられます。

 足の親指の付け根関節において、親指のそれより先端が外反して小指側へ曲がると、関節の内側が突出して、時にはこの部分に炎症を引き起こし、痛みを生じます。そして、外反変形が進むと親指が人差し指の底側に入り込み、人差し指と中指の付け根関節の底側に痛みを伴うタコを形成します。発症の初期には、窮屈な履物を履いて行動した時しか親指の基部に痛みは生じませんが、症状が進むと、裸足で立っているだけで疼痛(とうつう)が出るようになります。症例によっては、親指以外の他の足指の骨頭部が痛んだり、痛みのあるタコができます。

■外反母趾の検査と診断と治療

 外反母趾に特徴的な症状で、ほぼ診断はつきます。そして、荷重時、非荷重時の足部X線撮影を行い、外反母趾角および親指、人差し指角を測定します。外反母趾角は15°以上、親指、人差し指角10°以上を病的と診断し、また親指の付け根関節の変形性変化、脱臼(だっきゅう)、亜脱臼の有無、側面像では偏平足のチェックも行います。

 外反母趾があっても、痛みがなければ特に治療はしないことが原則です。治療にも含まれますが、日常生活において窮屈な革靴、例えばハイヒールなどの履物をやめ、窮屈すぎない靴、材質が柔らかく、靴の先端が広くかつ足のアーチ構造が無理なく保持できるアーチ・サポートがあるものを選びます。

 そして、体重を増やさないこと、長時間の立位、歩行を避けること、親指の付け根関節の内反、外旋運動、足部の筋肉の強化訓練などを行います。症例により、靴の中に入れる足底挿板、靴型装具を作成する場合もあります。それで、痛みはかなり軽減されるはずです。

 治療用装具としてゴム、革、プラスチックなどを材料とした各種装具が開発されていますが、これらの装具を徹底して装着するのは無理なようです。そのためにかえって、鎮痛消炎剤の経口投与、湿布などが必要となったり、また、なるべく気に入った靴などを履きたい要望が多くなります。そのような人には、夜間のみでもよいので装具を付けるよう指導します。また、関節リウマチなどの疾患で発症している場合は、それに対する治療が必要です。

 手術療法は、保存療法をいろいろ行っても治療効果のない場合に行われます。手術法にもいろいろありますが、マックブライト法が一般的に行われています。これは軟部組織の手術を主体としたもので、親指の基節骨外側に付いている内転筋を切り離して、親指頸部(けいぶ)外側に移行するもので、比較的軽症の人に行われます。重症例には、親指の骨切り術を主体とするハーモン法、ミッチェル法が行われます。変形性関節症が強い症例では関節固定術が行われる場合がありますが、最終的な手術法と見なされています。


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機能性子宮出血

■性ホルモンの濃度の変化によって起こる、子宮からの不正出血

 機能性子宮出血とは、器質的な異常も血液の疾患もないのに、子宮から不正出血が起こる状態。機能性出血とも呼ばれ、月経以外で発生します。

 この不正出血は、性器に腫瘍(しゅよう)や炎症、妊娠など器質的な異常がなく、また出血傾向を起こすような血液疾患もないような人に起こるもので、妊娠可能年齢の初期と末期にみられることが多く、その20パーセントは思春期の女子にみられる思春期出血、50パーセント以上は45歳以上の女性にみられる更年期出血です。

 原因は、卵巣から出ている2種類の卵巣ステロイドホルモン、エストロゲンとプロゲステロンの濃度の変化。卵巣ステロイドホルモンの分泌は、脳、下垂体、甲状腺(せん)、副腎(ふくじん)などの内分泌器官によって調節されているので、これらの部位に異常が起きれば卵巣の働きが異常になってホルモンの濃度が変化し、機能性出血が起こることになります。

 例えば、受験の失敗、失恋、家庭内のトラブルなどは、脳に影響し、脳から出る下垂体調節ホルモン分泌に異常が起こり、排卵が障害されるために不正出血が起こります。

 この機能性子宮出血には、エストロゲンの濃度が高くなった時に起こる破綻(はたん)出血と、エストロゲンの濃度が低くなった時に起こる消退出血に分けられます。よく起こるのは破綻出血で、エストロゲンの濃度が高いとプロゲステロンの濃度とのバランスが取れず、排卵が起こりません。その結果として、子宮内膜が厚くなった後、内膜は不完全かつ不規則にはがれて出血を起こします。

 また、排卵周期に起こる排卵性機能出血と、排卵のない時期に起こる無排卵性機能出血に分けられます。

 年齢との関係でみると、性腺機能の未熟な女子に起こる思春期出血は無排卵性機能出血が多く、破綻出血によるものがほとんどです。月経が始まって数年間、卵巣の働きがまだ完成されていないために、ちょっとした精神的ストレスで排卵が障害されて起こりやすくなります。繰り返し起こる場合や、長く続く場合は、貧血を起こし、根気がなくなったり、疲れやすくなり、また心臓にも負担がかかるので、早期治療が必要です。

 この思春期出血の75パーセントは、対症療法をするだけで治り、成人してからの結婚や出産にも差し支えのないものです。しかし、25パーセントくらいに多膿胞(のうほう)卵巣症候群などの治りにくい異常があり、これは早く治療を始めないと、不妊症になったり、早くに閉経してしまうという異常が残ります。

 45歳以上の女性にみられる更年期出血においては、性腺機能の低下に伴う機能性子宮出血が多くなります。これは排卵障害が原因ですが、破綻出血、消退出血いずれのパターンもあり得ます。

 思春期出血、更年期出血のほかに、月経の1週間くらい前に起こる出血も、機能性子宮出血のものが多く含まれています。この場合は排卵はあるのですが、黄体ホルモンが不足すると起こります。

 排卵の時期に一致して出血する、いわゆる中間期出血も機能性子宮出血のものです。これが毎月連続して起こったり、量が多ければ、ホルモン療法の対象になります。

■機能性子宮出血の検査と診断と治療

 機能性子宮出血が疑われる症状がある場合は、産婦人科を受診します。子宮がんを始めとしてさまざまな重い疾患が隠れている場合もありますので、検査を受けることは大切です。

 医師は、基礎体温表の評価、血液検査による卵巣ステロイドホルモンならびに脳下垂体ホルモンの測定により、排卵の有無と卵巣機能を評価します。思春期の女子では、血液疾患などの全身性の出血傾向を伴う疾患ではないことを確認します。子宮がんなどの器質的疾患ではないことを確認するためには、内診、超音波断層法などの画像診断、子宮内膜細胞診、子宮内膜組織診などの病理学的検査が行われます。

 機能性子宮出血と診断されるのは、子宮からの出血があり、他の原因がすべて除外された場合です。

 発症者が苦痛を訴えている場合や、貧血などが合併している場合に治療が必要になりますが、軽度のものは経過観察だけです。治療では、投薬や注射によるホルモン療法、排卵誘発薬、止血剤、消炎鎮痛薬 経口避妊薬などが、機能性子宮出血の原因や状態に応じて用いられます。

 薬物療法でも改善がみられない場合は、子宮内膜の表面を引っかくようにして剥離(はくり)させる子宮内掻爬(そうは)を行うことがあります。大量出血でショックを起こした場合は、輸血をすることもあります。