目次
目  次
[あ行]
赤あざ(血管腫)
亜急性甲状腺炎
悪性リンパ腫
アジソン病
足白癬(水虫)
アスベスト症
アスペルガー症候群
アスペルギルス症
あせも(汗疹)
圧迫性視神経症
アトピー性皮膚炎
あな痔(痔瘻)
アナフィラキシーショック
アニサキス症
アペール症候群
アポロ病
アメーバ赤痢
アルコール依存症
アルコール性肝障害
アルツハイマー型認知症
アレルギー性結膜炎
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
息切れ
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
遺精
胃切除後障害
一過性脳虚血発作
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ(疣贅)
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
咽頭炎
咽頭がん
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
ウェゲナー肉芽腫症
ウェルシュ菌食中毒
うっ血乳頭
うつ病
エコノミークラス症候群
エルシニア食中毒
円形脱毛症
遠視
円錐角膜
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
太田母班
おたふく風邪
[か行]
外陰炎
外陰がん
壊血病
外傷性視神経症
疥癬
回虫症
外反母趾
開放隅角緑内障
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
解離性大動脈瘤
下咽頭がん
顔の運動異常
過活動膀胱(OAB)
過換気症候群
顎骨腫瘍
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
過呼吸症候群
かぜ
仮性近視
肩凝り
かっけ(脚気)
過敏性血管炎
過敏性腸症候群
かぶれ(接触皮膚症)
花粉症
カポジ肉腫
過眠症
仮面うつ病
仮面高血圧
顆粒球減少症
カルチノイド
加齢黄斑変性
川崎病
感音難聴
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
肝吸虫症
ガングリオン(結節腫)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
肝硬変
カンジダ膣炎
間質性肺炎(肺線維症)
眼精疲労
乾癬
肝臓がん
眼底出血
嵌頓ヘルニア
陥入爪
乾皮症
カンピロバクター食中毒
顔面神経まひ(ベルまひ)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気管支喘息
気胸
季節性うつ病
偽痛風(軟骨石灰化症)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
亀頭包皮炎
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
機能性甲状腺腺腫
機能性子宮出血
気分変調性障害(気分変調症)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
キャッスルマン病
吸収不良症候群
急性胃炎
急性肝炎
急性気管支炎
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性腎炎
急性腎不全
急性膵炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
急性大腸炎
急性中耳炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性白血病
急性鼻炎
急性腹膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
胸郭出口症候群
狭心症
蟯虫症
強迫性障害
強皮症(全身性硬化症)
胸膜炎
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
巨大乳頭結膜炎
ギラン・バレー症候群
切れ痔(裂肛)
筋委縮性側索硬化症
菌血症
近視
緊張性頭痛
くも膜下出血
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
クレブシエラ肺炎
クロイツフェルト・ヤコブ病
クローン病
黒なまず(癜風)
群発頭痛
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
劇症肝炎
結核
血管腫(赤あざ)
月経痛
血精液症
結節性紅斑
結節性多発動脈炎
血栓症
結膜炎
結膜下出血
血友病
腱鞘炎
原爆症
原発性肺高血圧症
原発性無月経
顕微鏡的多発血管炎
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
高血圧症
膠原病
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
高山病
高脂血症
光視症
口臭
甲状腺がん
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
鉤虫症
喉頭炎
喉頭がん
更年期障害
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
五月病
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨髄腫
骨粗鬆症
骨肉腫
コレラ
混合性結合組織病(MCTD)
[さ行]
臍炎
細菌性赤痢
細菌性肺炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
逆さまつげ
坐骨神経痛
匙状づめ
サルコイドーシス
サルモネラ食中毒
三叉神経痛
霰粒腫
シェーグレン症候群
痔核(いぼ痔)
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
色素性母斑(黒あざ、黒子)
色盲、色弱(色覚異常)
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
歯周病
視神経委縮
視神経炎
視神経症
持続勃起症
シックハウス症候群
歯肉がん(歯茎がん)
紫斑病
ジフテリア
自閉症
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
社会不安障害(SAD)
弱視
若年性認知症
斜視
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
住血吸虫症
重症筋無力症
十二指腸潰瘍
十二指腸虫症(鉤虫症)
絨毛がん
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
腫瘍性視神経症
春季カタル
猩紅熱
硝子体混濁
掌蹠膿疱症
上咽頭がん
条虫症
小腸がん
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
静脈血栓症
静脈瘤
睫毛乱生症
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
書痙
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
自律神経失調症
視力障害
脂漏性皮膚炎
痔瘻(あな痔)
白なまず(白斑)
心因性めまい
腎盂がん
腎盂腎炎
腎炎
人格障害
心筋炎
心筋梗塞
神経因性膀胱
神経芽細胞腫
神経性過食症
神経性食欲不振症
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎細胞がん
心室中隔欠損症
心身症
新生児テタニー
新生児メレナ
心臓神経症
心臓ぜんそく
心臓病
心臓弁膜症
腎臓がん
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
心内膜炎
塵肺症
腎不全
心房中隔欠損症
心膜炎
じんましん(蕁麻疹)
水晶体嚢性緑内障
水腎症
膵臓がん
水痘(水ぼうそう)
水頭症
髄膜炎
頭痛
精液瘤(精液嚢腫)
生活習慣病
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
正常眼圧緑内障
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
成人スティル病
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
声帯ポリープ、声帯結節
性病
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
脊椎分離症、脊椎すべり症
赤痢
せつ、よう
雪眼炎(雪目)
舌がん
セックス依存症(性依存症)
接触皮膚炎(かぶれ)
セレウス菌食中毒
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
前庭神経炎
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
全般性不安障害(GAD)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
双極性障害(躁うつ病)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
早漏
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
続発性無月経
続発性緑内障
鼠径ヘルニア(脱腸)
そばかす(雀卵斑)
[た行]
ターナー症候群
大血管転位症
体臭
帯状疱疹
大腿骨頭壊死
大腸がん
大腸憩室
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
ダウン症候群
唾液腺がん
多汗症
多形滲出性紅斑
多血症(赤血球増加症)
たこ、魚の目
ただれ目(眼瞼縁炎)
脱水症
脱腸(鼠径ヘルニア)
脱毛、薄毛
多発性硬化症
単純性甲状腺腫
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
胆石症
胆道がん
胆嚢炎、胆管炎
蛋白漏出性胃腸症
蓄膿症
膣がん
チック症
知的障害
中咽頭がん
虫刺症(虫刺され)
中耳炎
中心性網膜脈絡症
虫垂炎
腸炎ビブリオ食中毒
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
聴神経腫瘍
腸チフス、パラチフス
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
痛風
突き目(匐行性角膜潰瘍)
爪白癬(爪の水虫)
手足口病
手足のしびれ
低血圧症
低酸症
適応障害
手湿疹(主婦湿疹)
鉄欠乏性貧血
てんかん
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
統合失調症(精神分裂病)
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
頭部白癬(しらくも)
動脈管開存症
動脈硬化
動揺病(乗り物酔い)
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
特発性視神経炎
特発性食道拡張症
特発性心筋症
特発性脱疽
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
突発性難聴
とびひ(伝染性膿痂疹)
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
鳥インフルエンザ
トリコモナス症
[な行]
ナルコレプシー
軟骨石灰化症(偽痛風)
軟性下疳
難病
軟部肉腫
にきび(尋常性痤瘡)
肉体疲労
ニコチン酸欠乏症
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
日本住血吸虫症
日本脳炎
乳がん
乳腺炎
乳腺症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
尿膜管遺残
認知症(痴呆症)
ヌーナン症候群
熱傷(やけど)
熱中症
ネフローゼ症候群
脳炎
膿胸
脳血管性認知症
脳梗塞
脳腫瘍
膿腎症
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
乗り物酔い(動揺病)
ノロウイルス食中毒
[は行]
パーキンソン病
バージャー病
パーソナリティー障害
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
肺水腫
肺性心
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺動脈狭窄症
肺嚢胞症
肺膿瘍
白衣高血圧
白癬
白内障
白板症
白皮症
はしか
橋本病(慢性甲状腺炎)
破傷風
バセドウ病
白血球増加症
白血病
発達障害
鼻カタル
鼻詰まり
パニック障害
はやり目
原田病
ハンセン病
ハンチントン病
鼻炎
肥厚性鼻炎
膝痛
鼻出血
ヒスタミン食中毒
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
鼻中隔湾曲症
ピック病
非定型うつ病
非定型抗酸菌症
ヒトアジュバンド病
皮膚カンジダ症
皮膚筋炎、多発性筋炎
皮膚結核
皮膚掻痒症
飛蚊症
肥満
びまん性汎細気管支炎
百日ぜき
日和見肺感染症
貧血
ファロー四徴症
不安障害
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
プール熱
フグ中毒
副鼻腔がん
腹壁ヘルニア
ふけ症
不整脈
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
舞踏病
ぶどう膜炎
プランマー病
フリクテン性角膜炎
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
変形性股関節症
変形性膝関節症
片頭痛
扁桃炎
便の変化
蜂窩織炎、丹毒
包茎
膀胱異物
膀胱炎
膀胱がん
膀胱結石
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボーエン病
勃起障害(ED)
ボックダレック孔ヘルニア
ボツリヌス菌食中毒
[ま行]
マイコプラズマ肺炎
マタニティーブルー
末梢動脈疾患(PAD)
マラリア
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性気管支炎
慢性結膜炎
慢性甲状腺炎(橋本病)
慢性腎炎
慢性腎不全
慢性膵炎
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性中耳炎
慢性腸炎
慢性白血病
慢性鼻炎
慢性腹膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
味覚障害
水虫(足白癬)
水ぼうそう(水痘)
耳鳴り
ミュンヒハウゼン症候群
ムーコル症
無気肺
無月経
虫刺され(虫刺症)
無症候性心筋虚血
むずむず脚症候群
無痛性甲状腺炎
胸焼け
夢遊症
メタノール中毒
メタボリック症候群
メニエール病
めまい
妄想性障害
妄想性人格障害
毛巣瘻
網膜芽細胞腫
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
門脈圧高進症
門脈血栓症
[や行]
夜驚症
薬剤性大腸炎
薬疹
薬物依存症
やけど(熱傷)
やせ
野兎病
夜盲症
幽門狭窄
雪目(雪眼炎)
痒疹
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
翼状片
横川吸虫症
[ら行]
ライム病
ラテックスアレルギー
ラッサ熱
卵管がん
乱視
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
流行性角結膜炎
良性発作性めまい
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
旅行者下痢症
リンゴ病
リンパ浮腫
類宦官症
ルイス・サムナー症候群
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
ループス腎炎
レイノー病
レーベル病
レジオネラ症
裂肛(切れ痔)
レビー小体型認知症
老眼(老視)
老人性角化腫(日光角化症)
肋膜炎
ロタウイルス腸炎
肋間神経痛
[わ行]
ワイル病
若はげ
腋臭
腕神経叢まひ
[A~Z、数字【1~】]
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
IgA腎症
O157感染症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
SSS症候群(ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群)
WPW症候群
[がん]
悪性リンパ腫
胃がん
陰茎がん
咽頭がん
ウイルムス腫瘍
外陰がん
下咽頭がん
顎骨腫瘍
カポジ肉腫
カルチノイド
肝臓がん
急性白血病
甲状腺がん
喉頭がん
骨髄腫
骨肉腫
子宮がん
子宮頸がん
子宮体がん
歯肉がん(歯茎がん)
絨毛がん
上咽頭がん
小腸がん
食道がん
腎盂がん
神経芽細胞腫
腎細胞がん
腎臓がん
膵臓がん
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
舌がん
前立腺がん
大腸がん
唾液腺がん
胆道がん
膣がん
中咽頭がん
軟部肉腫
乳がん
肺がん
白血病
ページェット病
膀胱がん
ボーエン病
慢性白血病
網膜芽細胞腫
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
老人性角化腫(日光角化症)
[心臓、血管、血液の病気]
エコノミークラス症候群
解離性大動脈瘤
仮面高血圧
顆粒球減少症
狭心症
菌血症
血栓症
血友病
高血圧症
静脈血栓症
静脈瘤
心筋炎
心筋梗塞
心室中隔欠損症
心膜炎
精索静脈瘤
成人T細胞白血病(ATL)
先天性心臓病
大血管転位症
大動脈炎症候群
大動脈縮窄症
大動脈瘤
多血症(赤血球増加症)
低血圧症
鉄欠乏性貧血
動脈管開存症
特発性心筋症
特発性脱疽
バージャー病
肺性心
肺動脈狭窄症
白衣高血圧
白血球増加症
貧血
ファロー四徴症
不整脈
ブルガダ症候群
閉塞性動脈硬化症
末梢動脈疾患(PAD)
無症候性心筋虚血
リンパ浮腫
レイノー病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
WPW症候群
[呼吸器の病気]
アスペルギルス症
息切れ
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
横隔膜ヘルニア
横隔膜まひ
オウム病(クラミジア肺炎)
過換気症候群
過呼吸症候群
かぜ
間質性肺炎(肺線維症)
気管支炎
気管支拡張症
気管支狭窄
気胸
急性気管支炎
胸膜炎
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
クレブシエラ肺炎
結核
原発性肺高血圧症
細菌性肺炎
サルコイドーシス
縦隔炎
縦隔気腫、縦隔血腫
縦隔ヘルニア
塵肺症
先天性気管狭窄症
膿胸
肺炎
肺がん
肺カンジダ症
肺気腫
肺真菌症
肺水腫
肺線維症(間質性肺炎)
肺塞栓、肺梗塞
肺嚢胞症
肺膿瘍
非定型抗酸菌症
びまん性汎細気管支炎
日和見肺感染症
ボックダレック孔ヘルニア
マイコプラズマ肺炎
慢性気管支炎
ムーコル症
無気肺
レジオネラ症
肋膜炎
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
[食道、胃腸、肛門の病気]
あな痔(痔瘻)
胃アトニー
胃炎
胃潰瘍
胃がん
胃酸過多症
胃神経症(神経性胃炎)
胃切除後障害
移動性過S状結腸症
移動盲腸
胃粘膜下腫瘍
胃の不快症状
いぼ痔(痔核)
胃ポリープ
イレウス(腸閉塞)
横隔膜ヘルニア
潰瘍
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎直腸炎型(直腸炎)
過敏性腸症候群
嵌頓ヘルニア
機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)
偽膜性腸炎
逆流性食道炎
吸収不良症候群
急性胃炎
急性出血性腸炎
急性食道炎
急性大腸炎
急性虫垂炎
急性腸炎
急性腹膜炎
切れ痔(裂肛)
クローン病
肛門周囲膿瘍
肛門神経症(自己臭妄想症)
肛門掻痒症
臍炎
臍帯ヘルニア
臍肉芽腫
臍ヘルニア
痔核(いぼ痔)
十二指腸潰瘍
食中毒
食道異物
食道炎
食道がん
食道憩室
食道静脈瘤
食道神経症(ヒステリー球)
食道裂孔ヘルニア
痔瘻(あな痔)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大腸がん
大腸憩室
脱腸(鼠径ヘルニア)
蛋白漏出性胃腸症
虫垂炎
腸管癒着症
腸結核
腸重積症
腸捻転
腸閉塞(イレウス)
直腸炎(潰瘍性大腸炎直腸炎型)
直腸脱
直腸ポリープ
低酸症
特発性食道拡張症
尿膜管遺残
ヒステリー球(食道神経症)
腹壁ヘルニア
便の変化
マロリー・ワイス症候群
慢性胃炎
慢性腸炎
慢性腹膜炎
胸焼け
毛巣瘻
薬剤性大腸炎
幽門狭窄
裂肛(切れ痔)
ロタウイルス腸炎
[肝臓、胆道、膵臓の病気]
アルコール性肝障害
肝硬変
急性肝炎
急性膵炎
劇症肝炎
胆石症
胆嚢炎、胆管炎
慢性膵炎
門脈圧高進症
門脈血栓症
[内分泌・代謝異常、栄養障害による病気]
亜急性甲状腺炎
ウイルソン病
壊血病
かっけ(脚気)
偽痛風(軟骨石灰化症)
機能性甲状腺腺腫
くる病(骨軟化症)
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能低下症
甲状腺クリーゼ
甲状腺ホルモン不応症
生活習慣病
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
ターナー症候群
単純性甲状腺腫
痛風
糖尿病
糖尿病性神経障害
糖尿病性腎症
糖尿病性網膜症
軟骨石灰化症(偽痛風)
ニコチン酸欠乏症
ヌーナン症候群
橋本病(慢性甲状腺炎)
バセドウ病
ビタミン過剰症
ビタミン欠乏症
ビタミンB2欠乏症
肥満
プランマー病
慢性甲状腺炎(橋本病)
無痛性甲状腺炎
メタボリック症候群
やせ
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
類宦官症
[アレルギーによる病気、膠原病]
アトピー性皮膚炎
アナフィラキシーショック
アレルギー性結膜炎
ウェゲナー肉芽腫症
過敏性血管炎
強皮症(全身性硬化症)
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)
結節性多発動脈炎
顕微鏡的多発血管炎
膠原病
混合性結合組織病(MCTD)
サルコイドーシス
シェーグレン症候群
シックハウス症候群
成人スティル病
全身性エリテマトーデス
側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)
ヒトアジュバンド病
皮膚筋炎、多発性筋炎
ベーチェット病
ラテックスアレルギー
リウマチ
リウマチ性多発筋痛症
[心の病気]
アスペルガー症候群
アルコール依存症
アルツハイマー型認知症 
うつ病
仮面うつ病
季節性うつ病
気分変調性障害(気分変調症)
境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)
強迫性障害
クロイツフェルト・ヤコブ病
肛門神経症(自己臭妄想症)
五月病
自閉症
社会不安障害(SAD)
若年性認知症
書痙
心因性めまい
人格障害
神経性過食症
神経性食欲不振症
心身症
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
精神疾患
精神遅滞(精神薄弱)
セックス依存症(性依存症)
全般性不安障害(GAD)
双極性障害(躁うつ病)
チック症
知的障害
適応障害
統合失調症(精神分裂病)
認知症(痴呆症)
脳血管性認知症
パーソナリティー障害
発達障害
パニック障害
ヒステリー球(食道神経症)
ヒステリー性失声症
ピック病
非定型うつ病
不安障害
ミュンヒハウゼン症候群
薬物依存症
レビー小体型認知症
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
[脳、脊髄、神経の病気]
アペール症候群
一過性脳虚血発作
顔の運動異常
過眠症
顔面神経まひ(ベルまひ)
ギラン・バレー症候群
筋委縮性側索硬化症
緊張性頭痛
くも膜下出血
クルーゾン症候群
クロイツフェルト・ヤコブ病
群発頭痛
血栓症
坐骨神経痛
三叉神経痛
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
自律神経失調症
水頭症
髄膜炎
頭痛
脊髄炎
脊髄空洞症
脊髄腫瘍
脊髄小脳変性症
多発性硬化症
聴神経腫瘍
てんかん
ナルコレプシー
脳炎
脳梗塞
脳腫瘍
脳卒中
脳膿瘍
脳ヘルニア
パーキンソン病
発達障害
ハンチントン病
舞踏病
片頭痛
むずむず脚症候群
夢遊症
ルイス・サムナー症候群
肋間神経痛
腕神経叢まひ
[目の病気]
圧迫性視神経症
アポロ病
アレルギー性結膜炎
うっ血乳頭
遠視
円錐角膜
外傷性視神経症
開放隅角緑内障
角膜炎
角膜潰瘍
角膜ヘルペス
角膜変性
仮性近視
加齢黄斑変性
眼窩蜂窩織炎(蜂巣炎)
眼瞼縁炎(ただれ目)
眼瞼外反症
眼瞼下垂
眼瞼内反症
眼精疲労
眼底出血
急性結膜炎
急性出血性結膜炎
急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)
強膜炎、上強膜炎
虚血性視神経症
巨大乳頭結膜炎
近視
結膜炎
結膜下出血
虹彩炎(虹彩毛様体炎)
光視症
逆さまつげ
サルコイドーシス
霰粒腫
シェ-グレン症候群
色盲、色弱(色覚異常)
視神経委縮
視神経炎
視神経症
弱視
斜視
腫瘍性視神経症
春季カタル
睫毛乱生症
硝子体混濁
視力障害
水晶体嚢性緑内障
正常眼圧緑内障
雪眼炎(雪目)
先天性緑内障(牛眼)
続発性緑内障
ただれ目(眼瞼縁炎)
中心性網膜脈絡症
突き目(匐行性角膜潰瘍)
糖尿病性網膜症
特発性視神経炎
ドライアイ
トラコーマ(トラホーム)
白内障
はやり目
原田病
飛蚊症
ぶどう膜炎
フリクテン性角膜炎
ベーチェット病
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
慢性結膜炎
慢性閉塞隅角緑内障
網膜色素変性症
網膜硝子体出血(眼底出血)
網膜静脈閉塞症
網膜動脈閉塞症
網膜剥離
ものもらい(麦粒腫)
夜盲症
雪目(雪眼炎)
翼状片
乱視
流行性角結膜炎
緑内障
緑内障(急性閉塞隅角緑内障)
涙道狭窄、閉鎖
涙嚢炎
レーベル病
老眼(老視)
[耳、鼻、のどの病気]
咽頭炎
感音難聴
急性中耳炎
急性鼻炎
喉頭炎
喉頭がん
心因性めまい
耳管狭窄症、滲出性中耳炎
声帯ポリープ、声帯結節
前庭神経炎
中耳炎
聴神経腫瘍
突発性難聴
乗り物酔い(動揺病)
鼻カタル
鼻詰まり
鼻炎
肥厚性鼻炎
鼻出血
鼻中隔湾曲症
扁桃炎
慢性中耳炎
慢性鼻炎
耳鳴り
メニエール病
めまい
良性発作性めまい
[歯、口腔の病気]
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
口臭
歯周病
白板症
ベーチェット病
ヘルペス性歯肉口内炎
味覚障害
[皮膚の病気]
赤あざ(血管腫)
足白癬(水虫)
あせも(汗疹)
アトピー性皮膚炎
いぼ(疣贅)
いんきんたむし(股部白癬)
円形脱毛症
疥癬
かぶれ(接触皮膚症)
カポジ肉腫
乾癬
陥入爪
乾皮症
黒なまず(癜風)
血管腫(赤あざ)
結節性紅斑
口腔カンジダ症(鵞口瘡)
紅皮症(剥脱性皮膚炎)
匙状づめ
色素性母斑(黒あざ、黒子)
紫斑病
ジベルばら色粃糠疹
しみ(肝斑)
酒さ
酒さ様皮膚炎(口囲皮膚炎)
主婦湿疹(手湿疹)
掌蹠膿疱症
しらくも(頭部白癬)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
白なまず(白斑)
じんましん(蕁麻疹)
せつ、よう
接触皮膚炎(かぶれ)
爪甲横溝
爪甲周囲炎(爪囲炎)
爪甲軟化症
爪甲白斑症
爪甲剥離症
そばかす(雀卵斑)
体臭
帯状疱疹
多汗症
多形滲出性紅斑
たこ、魚の目
脱毛、薄毛
単純性疱疹(単純性ヘルペス)
虫刺症(虫刺され)
爪白癬(爪の水虫)
手湿疹(主婦湿疹)
伝染性膿痂疹(とびひ)
癜風(黒なまず)
天疱瘡
頭部白癬(しらくも)
時計ガラスつめ(ヒポクラテスつめ)
とびひ(伝染性膿痂疹)
にきび(尋常性痤瘡)
日光角化症(老人性角化腫)
日光過敏症(光線過敏症)
熱傷(やけど)
白癬
白板症
白皮症
皮膚カンジダ症
皮膚結核
皮膚掻痒症
ふけ症
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ページェット病
ベーチェット病
ヘルペス
蜂窩織炎、丹毒
ボーエン病
水虫(足白癬)
虫刺され(虫刺症)
薬疹
やけど(熱傷)
痒疹
リール黒皮症
リンゴ病
老人性角化腫(日光角化症)
若はげ
腋臭
[骨、関節、筋肉の病気]
アペール症候群
外反母趾(ぼし)
肩凝り
ガングリオン(結節腫)
ぎっくり腰(急性腰痛症)
胸郭出口症候群
クルーゾン症候群
くる病(骨軟化症)
頸肩腕症候群
頸椎椎間板ヘルニア
腱鞘炎
五十肩(肩関節周囲炎)
骨髄炎
骨粗鬆症
重症筋無力症
脊椎分離症、脊椎すべり症
線維筋痛症
大腿骨頭壊死
椎間板ヘルニア
椎間板変性症、変形性脊椎症
膝痛
変形性股関節症
変形性膝関節症
腰椎椎間板ヘルニア
腰痛
腕神経叢まひ
[腎臓、泌尿器の病気]
アジソン病
過活動膀胱(OAB)
急性腎炎
急性腎不全
腎盂腎炎
腎炎
神経因性膀胱
神経性頻尿
腎結石、尿管結石
腎硬化症
腎不全
水腎症
前立腺炎
前立腺肥大症
糖尿病性腎症
尿失禁
尿道炎
尿道狭窄
尿毒症
尿の変化
ネフローゼ症候群
膿腎症
膀胱異物
膀胱炎
膀胱結石
慢性腎炎
慢性腎不全
ループス腎炎
IgA腎症
[感染症(性病、寄生虫病を含む)]
アスペルギルス症
アニサキス症
アポロ病
アメーバ赤痢
咽頭結膜炎
インフルエンザ
ウイルス性肺炎
ウェルシュ菌食中毒
エルシニア食中毒
オウム病(クラミジア肺炎)
おたふく風邪
疥癬
回虫症
カポジ肉腫
肝吸虫症
カンピロバクター食中毒
急性出血性結膜炎
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
蟯虫症
菌血症
クラミジア感染症
クラミジア肺炎(オウム病)
クリプトコックス症
鉤虫症
コレラ
細菌性赤痢
細菌性肺炎
サイトメガロウイルス感染症
サルモネラ食中毒
ジフテリア
住血吸虫症
十二指腸虫症(鉤虫症)
猩紅熱
条虫症
水痘(水ぼうそう)
性感染症(STD)
性器ヘルペス症
成人T細胞白血病(ATL)
精巣炎(睾丸炎)
精巣上体炎(副睾丸炎)
性病
赤痢
セレウス菌食中毒
尖圭コンジローム
腸炎ビブリオ食中毒
腸チフス、パラチフス
トキソプラズマ症
毒キノコ中毒
鳥インフルエンザ
軟性下疳
日本住血吸虫症
日本脳炎
ノロウイルス食中毒
肺吸虫症
敗血症
肺真菌症
白癬
はしか
破傷風
ハンセン病
ヒスタミン食中毒
非定型抗酸菌症
フィラリア症(糸状虫症)
封入体結膜炎
フグ中毒
副鼻腔がん
ブドウ球菌食中毒
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス
ヘルペス性歯肉口内炎
蜂巣炎(眼窩蜂窩織炎)
包虫症(エキノコックス症)
ボツリヌス菌食中毒
マラリア
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
慢性腸炎
水ぼうそう(水痘)
水虫(足白癬)
ムーコル症
メタノール中毒
野兎病
横川吸虫症
ライム病
ラッサ熱
旅行者下痢症
リンゴ病
レジオネラ症
ロタウイルス腸炎
ワイル病
HTLV−1関連脊髄症(HAM)
O157感染症
[職業病、公害病、形成外科の病気]
赤あざ(血管腫)
アスベスト症
アペール症候群
太田母班
外傷性視神経症
ガングリオン(結節腫)
クルーゾン症候群
血管腫(赤あざ)
色素性母斑(黒あざ、黒子)
書痙
塵肺症
ヒトアジュバンド病
メタノール中毒
やけど(熱傷)
[男性の病気]
遺精
いんきんたむし(股部白癬)
陰茎がん
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
過活動膀胱(OAB)
亀頭包皮症
急性精巣上体炎(急性副睾丸炎)
血精液症
持続勃起症
精液瘤(精液嚢腫)
性器ヘルペス症
精索静脈瘤
精巣炎(睾丸炎)
精巣腫瘍(睾丸腫瘍)
精巣上体炎(副睾丸炎)
精巣捻転症(精索捻転症)
セックス依存症(性依存症)
前立腺炎
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
尖圭コンジローム
早漏
癜風(黒なまず)
にきび(尋常性痤瘡)
ページェット病
包茎
勃起障害(ED)
慢性精巣上体炎(慢性副睾丸炎)
類宦官症
レーベル病
[女性の病気]
移動盲腸
外陰炎
外陰がん
外反母趾
過活動膀胱(OAB)
ガングリオン(結節腫)
カンジダ膣炎
機能性子宮出血
強皮症(全身性硬化症)
クラミジア感染症
月経痛
原発性無月経
甲状腺がん
更年期障害
骨粗鬆症
子宮下垂、子宮脱
子宮がん
子宮筋腫
子宮頸管炎
子宮頸がん
子宮後屈
子宮体がん
子宮膣部びらん
子宮内膜炎
子宮内膜症
しみ(肝斑)
絨毛がん
主婦湿疹(手湿疹)
静脈瘤
性器ヘルペス症
セックス依存症(性依存症)
線維筋痛症
尖圭コンジローム
全身性エリテマトーデス
続発性無月経
そばかす(雀卵斑)
膣がん
直腸脱
手湿疹(主婦湿疹)
乳がん
乳腺炎
乳腺症
ページェット病
マタニティーブルー
無月経
卵管がん
卵巣がん
卵巣腫瘍
卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
リール黒皮症
リンパ浮腫
レイノー病
[子供の病気]
赤あざ(血管腫)
アスペルガー症候群
あせも(汗疹)
アペール症候群
アレルギー性結膜炎
咽頭結膜炎
陰嚢水腫(陰嚢水瘤)
インフルエンザ
ウイルソン病
ウイルムス腫瘍
遠視
横隔膜ヘルニア
おたふく風邪
仮性近視
川崎病
眼瞼下垂
眼瞼内反症
嵌頓ヘルニア
亀頭包皮炎
急性出血性結膜炎
急性白血病
蟯虫症
近視
クルーゾン症候群
クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)
結核
血管腫(赤あざ)
血友病
臍炎
臍帯ヘルニア
サイトメガロウイルス感染症
臍肉芽腫
臍ヘルニア
色素性母斑(黒あざ、黒子)
自閉症
弱視
斜視
春季カタル
猩紅熱
小児型慢性疲労症候群
小児喘息
小児まひ
小舞踏病(ジデナム舞踏病)
白子症(白皮症)
シラミ症
脂漏性皮膚炎
神経芽細胞腫
心室中隔欠損症
新生児テタニー
新生児メレナ
心房中隔欠損症
水痘(水ぼうそう)
水頭症
精神遅滞(精神薄弱)
先天性気管狭窄症
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
先天性心臓病
先天性緑内障(牛眼)
鼠径ヘルニア(脱腸)
大血管転位症
大動脈縮窄症
ダウン症候群
脱腸(鼠径ヘルニア)
チック症
知的障害
腸重積症
伝染性膿痂疹(とびひ)
動脈管開存症
とびひ(伝染性膿痂疹)
尿膜管遺残
脳膿瘍
肺動脈狭窄症
白皮症
はしか
白血病
発達障害
百日ぜき
ファロー四徴症
プール熱
ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSS症候群)
ヘルペス性歯肉口内炎
ボックダレック孔ヘルニア
水ぼうそう(水痘)
網膜芽細胞腫
夜驚症
卵巣の形態異常(ターナー症候群)
流行性角結膜炎
リンゴ病
ロタウイルス腸炎
[高齢者の病気]
アルツハイマー型認知症
加齢黄斑変性
偽痛風(軟骨石灰化症)
狭心症
骨髄腫
細菌性肺炎
逆さまつげ
食道がん
心筋梗塞
水晶体嚢性緑内障
前立腺がん
前立腺結石
前立腺肥大症
帯状疱疹
大腸がん
脳血管性認知症
パーキンソン病
肺炎
ピック病
閉塞性動脈硬化症
変形性股関節症
変形性膝関節症
レビー小体型認知症
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痔核(いぼ痔)

■肛門周囲の静脈が膨らんで、こぶになった痔疾

 痔核とは、肛門(こうもん)周囲の静脈が膨らんで、こぶになったもの。一般には、いぼ痔と呼ばれます。

 肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、成人の3人に1人がその症状に悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、この痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(じろう:あな痔)があります。痔核が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

 痔核には、直腸と肛門を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にできる内痔核と、外側の肛門部にできる外痔核があります。 内痔核は、肛門の内側にいぼがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼが見え、自分で触ることができます。

 痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

 内痔核は、主に不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて腹圧が過度にかかることで、直腸の静脈がだんだんうっ血し、膨らんで発生します。立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかることも原因となります。

 内痔核の初期状態では痛みなどがほとんどないので自覚症状がなく、知らない間に症状が進行していくという特徴があり、症状を大きく分けると4段階に分類されます。

 第1段階では、排便時に出血し、トイレットペーパーに血が付着しているものの、痛みなどはほとんどありません。内痔核ができるのが肛門と直腸を隔てる歯状線の内側で、自立神経が支配していて痛みの神経がない場所に相当するため、痛みを感じにくいのです。

 第2段階では、排便時の出血に加え、痛みを生じます。大きくなったいぼが肛門の外に飛び出す脱肛を伴う場合もありますが、脱肛した場合でも自然に戻ります。

 第3段階では、排便時の脱肛が自然に戻らなくなり、自分の手で押し込まなければ戻らなくなります。また、排便時だけでなく、日常生活を送っている時で運動をしたり、力仕事をして腹に力が入った場合にも、脱肛するようになります。

 第4段階では、常に脱肛している状態となり、粘液によって下着が汚れたりします。この段階になると出血や痛みを伴わないことが多くなり、逆に肛門周辺がかぶれたり、かゆみを伴うことが多くなります。 この脱肛したまま、手で押し込んでも戻らなくなってしまった状態を、嵌頓(かんとん)痔核と呼ぶこともあります。

 一方、外痔核のほうも、排便時の強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

 内痔核を長期間患っていたり、内痔核の再発を繰り返している場合にも、この外痔核の症状として現れることがあります。さらに、血栓性の静脈炎である血栓性外痔核や血腫(けっしゅ)を併発すると、より激しい痛みを伴います。

■痔核の検査と診断と治療

 痔核(いぼ痔)などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

 どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

 痔核の治療法は、内痔核か外痔核かで少し異なります。内痔核の場合は症状によっても治療法が異なってきますが、基本的にはまず生活習慣を改善することが大切になってきます。初期段階では、これに加えて塗り薬、座薬、内服薬を用いれば、多くの場合は症状が改善されていきます。

 しかし、いわゆる第3段階~第4段階以上の内痔核の場合は、脱肛が自然に戻らなくなったり、常に脱肛している状態にあるため、手術が必要になることもあります。

 手術が必要になった場合には、硬化療法(注射療法)、レーザー療法、結さつ療法(輪ゴム結さつ法)、ジオン(消痔霊治療)、ICG併用半導体レーザー療法、半閉鎖法、PPH法などが行われ、内痔核の症状が改善することが期待できます。

 外痔核の場合は、生活習慣の改善、食生活の改善だけで治ることも珍しくありません。それに加えて、塗り薬や座薬 、内服薬などの治療薬、痛みが激しい場合には鎮痛薬を使用して治療していきます。手術が必要になることはほとんどありません。

 また、外痔核に限らず痔核は肛門周辺の静脈の流れが悪くなり、うっ血していることが大きな原因ですので、肛門周辺を温めることも効果的になってきます。ただし、外痔核がすでに化膿(かのう)している場合には、温めすぎるとかえって逆効果になることもありますので、注意が必要です。

 どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。痔核は、悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

 中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

 また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

 さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

 過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。たばこはやめるようにします。


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子宮筋腫

■女性の病気の中でも、特に多い病気

 子宮筋腫(きんしゅ)とは、子宮の筋肉にできる良性腫瘍(しゅよう)で、こぶのように硬い球形の腫瘍です。その90~95パーセントが子宮の体部に発生し、残りの5~10パーセントが子宮の頸部(けいぶ)に発生すると見なされ、子宮筋の内側にできる場合と外側に張り出してくる場合とがあります。

 女性の病気の中でも特に多く、35歳以上の女性では約20パーセントに認められることが知られています。年代的には40歳代に最も多く、ほとんどの場合30~50歳に発見されますが、ごく小さな米粒ぐらいの筋腫まで含めれば、過半数の人が持っていると考えられます。つまり、子宮筋腫があることに気付かないまま、過ごしている人も少なくないのです。

 子宮の壁は、平滑筋という筋肉でできています。妊娠によって子宮が大きくなったり、出産の時に陣痛が起こるのも、筋肉が伸縮するからです。この筋肉層にできる腫瘍が子宮筋腫で、平滑筋の細胞が異常に増殖するものです。

 なぜ、細胞が異常な増殖を始めるのか、その原因はよくわかっていません。しかし、初経(初潮)が始まった後に子宮筋腫ができてくることから、生まれ付き持っている素因に、エストロゲンなど女性ホルモンの影響が加わり、筋腫が成長していくのではないか、と考えられています。

 卵巣からの女性ホルモンの分泌が止まる閉経後では、子宮の縮小に伴って筋腫も退縮し、小さくなっていきます。

 筋腫がどの方向に育っていくかによって、子宮筋腫は3種類に分けられます。その種類によって、症状の現れ方にも違いがあります。

 一番多いのが、子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていく筋層内筋腫、次が子宮の外側に向かって成長する漿(しょう)膜下筋腫、そして、数は少ないのですが症状が一番強く現れやすいのが子宮の内側に向かって発育していく粘膜下筋腫。

 一般的には、子宮筋腫は月経がダラダラ続く、月経時の出血量が多い、貧血がある、月経痛がひどいなど、月経に関連した症状で気付くことが多いようです。月経が10日以上も続いたり、出血量が多くなって貧血を起こしたり、動悸(どうき)や息切れを起こす人もいます。

■3種類の筋腫で違いをみせる症状

 症状が一番強く現れやすいのが、粘膜下筋腫です。筋腫が子宮の内側に向かって発育するため、出血しやすく、まだ筋腫が小さいうちから出血がダラダラ続いたり、月経時の出血量が多いといった症状が現れやすいのです。逆に、内側に筋腫ができるので、外からは触れにくいのも特徴です。

 子宮筋腫があると妊娠しにくくなるといわれますが、粘膜下筋腫は胎児が宿る子宮の内腔(ないくう)に突き出てくるため、とりわけ妊娠しにくくなります。また、粘膜下筋腫が大きくなり、茎を持ってぶらさがるように子宮の中で発育すると、まれには腟(ちつ)の中に筋腫が顔を出すこともあります。

 こうした状態を筋腫分娩(ぶんべん)と呼びます。不正出血が続いたり、筋腫を伝わって腟の中から子宮の中に細菌感染が起こり、危険な状態になることもあります。実際、不妊症の検査で筋腫が発見される人も、大勢います。

 筋腫がかなり大きくなるまで症状が現れにくいのが、筋腫が子宮の外に向かって成長していくタイプ、すなわち漿膜下筋腫です。ふつう子宮は60~70gほどの重さですが、中には1kg、まれには2kgもの筋腫を抱えるようになる人もいます。

 外からしこりに触れるような大きさになっても、月経に関連したつらい症状がほとんどないことが多く、そのために見過ごされてしまうことも多いのが、漿膜下筋腫の特徴です。

 筋肉の中で筋腫が成長する筋層内筋腫の場合は、大きくなるにつれて、子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされていきます。そのため、月経痛や月経時の出血が多くなり、下腹部を触るとしこりがわかるようになります。

 しかしながら、筋腫がゆっくりと大きくなっていくと、自覚しにくいこともあります。「下腹部のしこりは、最近太ったからだろう」、「月経血が多いのは、自分の体質のせい」と、勝手に解釈していることも少なくありません。

■検査と診断、薬物療法と摘出手術

 病気は、ふつう治療するものです。しかし、子宮筋腫の場合は、どうなれば治療をするというはっきりした基準がありません。基本的には、自覚症状がどのくらいつらいかが、治療を受けるかどうかの判断基準になります。

 過多月経、不正出血などの出血傾向が強くて、次第に貧血がひどくなる場合、鎮痛薬が効かないような強い月経痛がある場合には、治療の対象になります。筋腫が不妊や習慣性流産、早産の原因になると考えられる場合も、対象になります。

 筋腫の大きさがこぶし大以上になった場合も、治療を考えるべきでしょう。筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、便秘になる、尿が近い、下腹部が張る、月経時以外にも下腹部痛や腰痛などに悩まされる、といったことも起こります。さらに筋腫が巨大になると、尿管を圧迫して腎(じん)臓から膀胱(ぼうこう)に尿が流れにくくなり、腎臓を悪くする水腎症になることもあります。

 子宮筋腫自体は良性の腫瘍なので、命にかかわることはありませんが、急激に大きくなったものや下腹部がいっぱいになるほど大きなものは、まれに肉腫などの悪性腫瘍の場合もあります。

 今は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)など画像診断機器が進歩しているので、子宮筋腫の有無は触診と超音波検査でほぼわかります。筋腫の中でもどの種類なのか、とりわけ子宮の内側に発育した粘膜下筋腫は診断が付きにくかったのですが、子宮内部の様子を外から観察し、診断をすることが可能になりました。

 治療には薬物療法と摘出手術という2つの方法がありますが、根本的な治療は手術になります。

 薬物療法は、ホルモン剤によって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を一時的に停止させる方法です。Gn-RH製剤と呼ばれる薬が使われ、月1回注射を打つ方法、1日に2~3回、鼻に噴霧する方法などがあります。これによって、筋腫の重さを半分から3分の2くらいまで縮小させることができます。

 しかしながら、この方法では人工的に閉経したのと同じような状態を作るため、更年期障害が現れ、骨粗鬆(こつそしょう)症のリスクも高めることになります。Gn-RH製剤を使うのは、半年が限度とされています。その後、半年治療を中断すれば、骨も元に戻り、骨粗鬆症のリスクも低下しますが、筋腫もまた元の大きさ近くに戻りますので、根本的な治療にはなりません。

 最近は、閉経が間近な人や、手術の前に月経を止めて貧血を治したり、筋腫を小さくさせる必要のある人などに対して、補助的な意味合いで使われることも多いようです。

 また、子宮に栄養を供給する子宮動脈を人工的に詰まらせ、筋腫を栄養不足にすることで小さくする、子宮動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。X線でモニターしながら、大腿(だいたい)部の動脈から子宮動脈まで細い管を挿入し、詰め物で血管に栓をします。まだ一般的な治療ではなく、一部の施設で試みられている段階です。

 手術で筋腫を摘出する場合は、筋腫のみを摘出して子宮を残す方法と、子宮ごと筋腫を摘出する方法とがあります。どの方法を選ぶかは、年齢や妊娠の希望の有無、筋腫の状態、症状の程度などによって決定されます。

 手術の方法も、おなかにメスを入れる開腹手術だけではなく、腟から子宮を取る手術や、腹腔鏡など内視鏡によって開腹せずに行う手術もあります。

 開腹手術によって腹部からメスを入れる方法は、大きな筋腫も摘出できるのが長所。半面、傷跡も多少目立ちます。

 子宮が握りこぶし大より小さくて癒着がなく、悪性腫瘍や卵巣嚢腫(のうしゅ)などの合併もなく、腟からの分娩を経験したことのある人ならば、腟のほうからメスを入れて子宮の摘出を行う腟式手術を行うこともできます。

 近年、急速に広まっている内視鏡による手術は、傷跡が小さいかほとんどなく、回復が早いのが長所です。

 子宮を残して筋腫だけを摘出する場合、子宮の内側に筋腫ができた粘膜下筋腫ならば、子宮鏡が使われます。腟から子宮の中に子宮鏡を入れ、電気メスで筋腫を少しずつ 削り取っていきます。筋腫はあまり大きくない4~6cm以下、筋腫が内側に飛び出していることなど、いくつかの条件があります。

 一方、腹部にいくつか穴を開けて細い管を挿入し、電気メスなどを操作して子宮筋腫を切除するのが、腹腔鏡手術です。子宮を丸ごと摘出することも、筋腫だけを摘出することも可能で、適応になるのは筋層内筋腫や漿膜下筋腫。

 なお、開腹手術でも内視鏡による手術でも、子宮を残せば、子宮筋腫の再発の可能性があります。特に20代、30代で手術をした人は、その後の長い年月、エストロゲンにさらされますので、筋腫が再発してまた大きくなる危険性があります。複数の筋腫があった人も、再発の危険性が高くなります。

 再手術になると、筋腫だけを取ることは難しいので、子宮の全摘手術を受けることになります。


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子宮内膜炎

■細菌の感染で炎症が起きる疾患

 子宮内膜炎とは、子宮に何らかの原因で細菌が入り、子宮内腔(ないくう)を覆う子宮内膜に炎症を起こす疾患。子宮内膜症とは異なる疾患です。

 急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎とに分類できます。急性子宮内膜炎は、子宮内膜の機能層に感染が起こるもので、月経の際に機能層がはがれることにより、侵入した細菌も体外に排出されて、自然に治ることもあります。

 慢性子宮内膜炎は、子宮内膜の基底層まで感染が波及しているもので、月経の際に基底層が排出されないため、感染は慢性化します。基底層に残る細菌は、再生されてくる機能層で再度、感染します。

 多くの子宮内膜炎は、妊娠や出産、流産、中絶後の子宮頸管(けいかん)が開いている時に、細菌が上昇しやすくなって発症します。

 また、女性ホルモンの分泌が減る更年期や老年期には、女性ホルモンの作用が弱まるために細菌が入りやすくなって、炎症を起こすことがあります。この老年期の子宮内膜炎では、慢性に経過し、子宮頸管の狭窄(きょうさく)や閉鎖を伴うと、子宮瘤(りゅう)膿腫(のうしゅ)を形成することもあります。

 原因となる細菌は、大腸菌、腸球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、結核菌、淋(りん)菌などで、性感染症として増加しているクラミジアなどの病原体に感染して、炎症を起こすことも増加中。

 腟(ちつ)炎や子宮頸管炎から、子宮内膜炎に移行することもあります。女性にとって腟や頸管がヒリヒリ痛かったり、かゆいというのは珍しいことではありませんが、子宮の中まで菌が入り、炎症が拡大する可能性があります。

 細菌の感染経路は、膣からの上行性感染によるものが大部分で、まれにリンパ行性、血行性、下行性感染も認められます。下行性感染は腹腔内から卵管を介して、主に結核菌に感染するもので、卵管結核から子宮内膜へ波及します。この結核性の子宮内膜炎では、慢性に経過します。

 さらに、医療機関において、子宮内膜生検、子宮卵管造影、卵管通水術などの子宮内操作時に、細菌が侵入することもあります。

 症状としては、下腹部の不快感、下腹部痛、微熱などの症状が多いのですが、悪臭のある膿性の下り物、褐色の下り物、不正出血、排便痛、排尿痛などもみられることがあります。 一般に、全身的な症状はあまりみられません。

■医師による治療と生活上での注意点

 下腹部痛や異常な下り物があれば、産婦人科を受診します。炎症後に不妊症になる恐れがありますので、完全に治療する必要があるのです。

 医師の内診により、子宮に圧痛が認められます。子宮からの分泌物の培養により、炎症を起こしている起炎菌が特定された場合には、その菌に感受性のある抗生物質が使用されます。起炎菌が特定されるまでの間は、通常、効果の範囲が広い抗生物質を使用します。また、消炎剤、解熱剤を併用することもあります。

 流産後や出産後では、子宮収縮薬を併用することで、子宮内腔に残った組織の排出を促すこともあります。子宮瘤膿腫を形成している場合には、頸管を開いて、膿(うみ)を排出する必要が生じます。

 病気が進行して、卵管、卵巣、腹膜などの周囲の臓器にも影響が及ぶ時は、入院治療や手術が必要になる場合があります。

 生活上での注意点として、子宮が炎症を起こしている期間は、下腹部を温めるのは避け、入浴はシャワーのみとします。性行為もパートナーの理解を得て、控えます。特に、流産後、人工妊娠中絶後には、十分に休養して、出血中は性交を控えることが、予防としても大切です。ふだんから、不潔な性交を避けることも大切。


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弱視

■視力が生来弱く、眼鏡で矯正できない状態

 弱視とは、単に視力が悪いだけでなく、眼鏡やコンタクトレンズを用いても十分に視力を矯正できない状態。乳幼児の視力の発達過程における、何らかの器質的病変、機能的障害によって生じます。

 裸眼視力が0・1以下であっても、眼鏡などで矯正すると視力が1・0以上出る場合は、細かい物を見る力は完成していると考えられ、弱視とはいいません。眼鏡などで完全矯正しているにもかかわらず、視力が出ない状態が弱視です。

 弱視にはさまざまな原因がありますが、主なものとして形態覚遮断弱視、斜視弱視、屈折性弱視が挙げられます。

 形態覚遮断弱視は、先天性白内障や、まぶたの腫瘍(しゅよう)、眼瞼(がんけん)下垂などの疾患がある場合、あるいは3〜7日ほど眼帯をつけたりした場合に、視覚入力が妨げられ、物を見る訓練ができないことによって起きる弱視。新生児にこのような要因が働くと、数日間でも弱視化することがあり、注意が必要です。

 斜視弱視は、斜視があって目が正面を向いていない場合に、網膜で最も感度の高い黄斑(おうはん)部に像を結ばなくなり、視機能の発達が妨げられることによって起きる弱視。斜視があると、両眼視ができないため物が二重に見えます。物が二重に見えると、脳が混乱するため、正常な目のほうが優位に働き、斜視になっている片方の目が弱視になる場合があります。先天性の弱視が原因となって、斜視になる場合もあります。

 屈折性弱視は、強度の遠視、乱視、近視などが原因となる弱視。遠視といえば「遠くがよく見える」というイメージがありますが、視力は近くを見ることにより発達するため、近くにピントの合わない強度の遠視では、視機能の発達が妨げられて弱視が起きます。強度の乱視も同様。近視の場合は、病的な近視でない限りは近くにピントが合うため弱視にならないことが多いものの、片目のみ強度の近視である場合には弱視が起きます。

■弱視の検査と診断と治療

 乳幼児の弱視は、保護者が注意していてもわからないことがままあります。テレビを前の方で見る、目を細める、いつも頭を傾けて物を見るなど、いかにも物を見にくそうにしている場合には、注意が必要です。特に、片方の目だけが弱視の場合、よいほうの目で普通に見ているため気が付かないことが多くなりますので、片目を隠してカレンダーや時計を見せてみます。

 弱視の目は、疲れやすいものです。乳幼児の間はあまり不便を感じないとしても、学校にいくようになると、長く教科書を読むことがつらくなったり、勉強に集中することができないかもしれません。大人になって不便を感じるようになったとしても、目の成長が止まってしまった後では手の施しようもありません。両目ともある程度の矯正視力がなければ就けない職業もまだありますし、健全なほうの目に何かあった時には悪いほうの目だけで生活することになるのです。最悪の事態も考慮に入れて、できる限りのことをしておきます。

 弱視は早期に治療を開始すれば効果が大きいため、少しでも異常に気が付いた時には眼科を受診します。また、 3歳児健診の視力検査を必ず受けるようにし、異常が疑われた場合は早い時期に精密検査を受けます

 治療では、低年齢であればあるほどよい結果が期待でき、3歳くらいまでに見付かると治る可能性が高くなります。人間の視機能の感受性は出生後上昇し、3カ月くらいでピークを迎えて1歳半ころまで感受性が高い時期が持続しますが、それ以後は徐々に下降し6〜8歳くらいでほぼ消失します。治療は6歳までに終えておくのが理想的で、10歳くらいから弱視の治療を始めても、視機能の感受性がほとんどないため効果が得にくいといえます。

 弱視を治す治療法としては、遠視、乱視、近視などの屈折異常があれば、眼鏡かコンタクトレンズなどを使って屈折矯正して、網膜にピントをきちんと合わせ、鮮明な像を脳に送り、視機能の発達を促すことが基本となります。

 片方の目のみが特に視力が悪い場合には、健全なほうの目を1日数時間、アイパッチと呼ばれる大きな絆創膏(ばんそうこう)のようなもので遮閉(しゃへい)したり、同じく健全なほうの目にアトロピンなどの目薬を点眼して故意に見えにくくした上で、悪いほうの目に完全矯正した眼鏡をかけて無理に使わせ、視力の発達を促す方法も多く行われます。この方法は病院だけではなく、家庭でもずっと行わないと意味がありませんので、家族の協力が必要となります。

 屈折異常が原因の場合は、原因に適切な対処をすることにより、視力の改善が望めます。斜視弱視の治療は、まず弱視の治療を行い、視力が出た段階で、斜視の治療を行います。また、病院により、4歳児以上では視能訓練士による機械を利用した訓練を行います。


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若年性認知症

■18~64歳で発症する認知症の総称

 若年性認知症とは、働き盛りの年代の18歳以上、65歳未満で発症する認知症の総称。40歳代、50歳代を中心とした比較的若い世代の認知症であり、初老期認知症とも呼ばれます。

 老年性認知症と総称される65歳以上の高齢者で発症する認知症と同じく、脳の障害によって起きる脳の疾患ですが、原因がつかめているものと、原因がつかめていないものに分かれます。

 厚生労働省では、旧厚生省時代の1996年の研究で、患者数は2万5000人~3万7000人と推計しています。現実には、その3倍以上に及ぶともいわれています。

 初期症状は一時的な物忘れから始まりますが、やがて進行していくと新しいことが覚えられなかったり、物忘れがひどくなったり、判断力の低下などが起こります。会議の予定を忘れたり、同僚の名前や取引先の場所がわからなくなったりするため、仕事を続けることもできなくなります。また、徘徊(はいかい)などの行動障害も出てきます。

 若年性認知症の主な種類として、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病が挙げられます。

 アルツハイマー型認知症

 アルツハイマー型認知症というと、高齢者の疾患のように思われがちですが、もともとは若年性の疾患で、1907年にドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマーが最初の症例報告を行った患者は50歳代だった、という記録が残っています。

 アルツハイマー型認知症は、脳の変性委縮によって発症します。その原因としては、脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉に、アミロイドという蛋白(たんぱく)の一種が蓄積していくことが始まりと考えられていて、さらにタウという蛋白も神経細胞の中に蓄積するようになり、神経細胞を壊していくことがわかっています。

 なぜこのような現象が起こるのか、アミロイドの産生高進や蓄積が発症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについては、まだ結論は得られていません。

 いまだに原因がよくわかっていないアルツハイマー型認知症ですが、最近になって、遺伝的要因があると考えられるようになりました。親族にアルツハイマー型認知症の患者がいる人は、発症する割合が高くなりますし、発症する年齢は30~50歳くらいといわれています。

 若い人にみられるアルツハイマー型認知症では、脳の委縮スピードも若いぶん、高齢者に比べると速くなります。40歳代の場合、高齢者に比べ2倍以上のスピードで病気が進行します。

 アルツハイマー型認知症では大脳皮質という知能活動の中核が第一義的に侵されることから、記憶力などすべての認知機能が一様に低下し、その程度も大きくなります。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性、多弁であることが多くみられます。

 もう一つ重要なことは、アルツハイマー型認知症では、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点です。いつかわからないほど発症はゆっくりで、進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよいでしょう。幻覚や幻視、被害妄想が現れ、暴言、暴力などの問題行動が見られることもあります。

 脳血管性認知症

 脳血管性認知症は、脳の血管に血栓という血の固まりが詰まった脳梗塞(こうそく)や、脳の血管が破れて出血した脳出血など、脳の血管に異常が起きた結果、脳細胞の働きが低下するために起こります。男性に多く、50~60歳で発病しやすくなります。

 主な症状は、日常生活に支障を来すような記憶障害と、その他の認知機能障害である言葉、動作、注意、物事を計画的に行う能力などの障害です。末期を除けば、すべての認知機能が一様に、顕著に低下するわけではありません。

 脳の一部の機能が低下してしまうため、記憶力の低下ははっきりしていても、計算力はある程度残っているとか、時間や場所はわかるとか、対応は全く正常であるという場合が少なくありません。

 脳血管障害を発症した経験があったり、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化症、高脂血症など脳血管障害を起こしやすい危険因子を持っている人に、よく起こります。危険因子のほとんどは、生活習慣病といわれるものに相当します。

 ピック病

 ピック病は、人格の変化や理解不能な行動を特徴とする認知症の一種。働き盛りの40歳~60歳に多く発症し、大脳皮質のうち前頭葉から側頭葉にかけての部位が委縮します。

 1898年にチェコのアーノルド・ピックにより報告された疾患で、100年以上経過してもまだ世界共通の明確な診断基準すらなく、正確な発生頻度も不明。疾患を正しく診断できる医師が少ないために、アルツハイマー型認知症と誤診されたり、うつ病や統合失調症と間違えられて、不適切な治療やケアを受けるケースも少なくありません。

 若年性認知症の代表疾患で、40歳代~50歳代にピークがあり、平均発症年齢は49歳、早ければ20歳で発病することも。女性の発症率が多いアルツハイマー型認知症に対して、そういった性差はありません。

 初期では、記憶力などの認知機能は保たれています。目立つのは人格障害で、認知症の中では人格の変化が一番激しくなります。その人格障害には、易怒、不機嫌、爽快なども認められ、人を無視した態度、人に非協力な態度、不まじめな態度、ひねくれた態度、人をばかにした態度などが目立つようになります。しかし、本人に病識はありません。

 ピック病特有の症状といえる滞続言語も、認められます。滞続言語とは特有な反復言語で、会話や質問の内容とは無関係に、同じ内容の話を繰り返したり、おうむ返しを続けたりします。これらは持続的で、制止不能です。

 自制力の低下により、周囲には理解不能な行動、状況に合わない行動もみられます。例えば場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや、配慮を欠いた行動をしたり、周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為を示します。

 また、自発性が低下し、考え不精がみられる一方で、多動、外出、徘徊(はいかい)、落ち着きのなさ、多弁、衝動行為、粗暴行為が増加することもあります。窃盗や万引きなどの犯罪を犯す場合もありますが、反省したり説明したりできず、同じ違法行為を繰り返すこともあります。

 症状が進行すると、意欲減退が生じ、仕事を放棄して引きこもったり、何もしないなどの状態が持続し、自発性行動の少なさは改善しません。身だしなみにも無関心になり、不潔になります。周囲の出来事にも無関心になります。

 やがて、記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れます。最終的には、重度の認知症に陥ります。

 その他の若年性認知症 

 その他、交通事故や転倒で脳障害を起こしたのが原因で、若年性認知症になる場合もあります。 また、脳腫瘍(しゅよう)、薬物・アルコール依存症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、エイズなども、若年性認知症を発症する原因となる疾患として挙げられます。

■若年性認知症の治療と予防

 若年性認知症には、高齢者の発症する老年性認知症とは異なる問題や課題が存在しています。その一つは、年齢が若いので、家族や仕事仲間、医療関係者さえも、まさか認知症が始まっているとは考えられず、早期受診、早期治療に結び付かないケースが多いという点です。

 うつ病と誤診されたり、職場では怠けていると誤解されたりすることも多いようです。何年もかかってやっと専門医を受診し、正確な診断に至ったケースも見受けられます。また、正確に診断できたとしても、職場での対応の調整や、介護環境の調整も重要です。

 日常生活は保たれているものの、記憶力の障害があるとか、集中力が欠けているとか、言語能力が低下しているなど、認知症の症状が現れたら少しでも早く、医師の診断を受けるようにしましょう。

 一口に若年性認知症といっても、医師による治療や対応法はさまざまです。実際、若年性認知症の種類は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、ピック病だけではなく、頭部外傷や脳腫瘍の後遺症などとても多彩で、診断が難しいものもあります。

 残念ながら、まだアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病などほとんどの認知症では、完治に至る根本的な治療法はありません。ピック病の場合は、錯乱して暴れるなど、介護は危険を伴うので、在宅でのケアは難しくなります。感染症にかかりやすく、数年で死に至るケースもあります。

 しかし、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症では、早期に発見し適切な治療を受けてリハビリに努めれば、症状を軽くして進行を遅らせることはできますし、回復の可能性もあります。

 薬物療法と心理社会的療法による早期治療によって、脳の代償機能と呼ばれるメカニズムが働くようにすることができれば、残された認知機能は維持され、社会生活機能を保つことは可能です。

 脳にはもともと、ある部位の機能が失われても、他の障害されていない部位の神経細胞がその機能を補うように働く代償機能が備わっており、たとえ脳の病変があったとしても、代償機能が働くことで発症を抑えたり、症状の進行を抑制することが可能なのです。 

 散歩などによる昼夜リズムの改善、なじみのある写真や記念品をそばに置いて安心感を与える回想法、昔のテレビ番組を見るテレビ回想法などが、不眠や不安などに有効な場合もあります。 

 若年性認知症の予防には、生活改善がカギとなります。きちんとした食事や睡眠、適度な運動を心掛けるなど生活習慣を見直せば、発病の確率は減らせるはず。また、趣味や職場以外の社交場を持つなど、毎日を生き生きと暮らす工夫も大切。

 とりわけ、以下の食習慣、運動習慣、知的生活習慣が、認知症の予防に効果があることがわかっています。

 食習慣では、EPA・DHAなどの脂肪酸を多く含むサバ、サンマ、イワシ、アジなどの青魚の摂取、ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなどを多く含む野菜や果物の摂取、さらにポリフェノールを多く含む赤ワイン、緑茶、ゴマの摂取が、発症を抑えます。これらの食品を3度の食事で、バランスよく食べるようにします。

 運動習慣では、ウォーキングなどの有酸素運動を行えば、脳血管障害の危険因子である高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増し、発症の危険性を下げます。ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している人は、全く運動しない人と比べて、発症の危険が半分になっていました。

 知的生活習慣も、発症の危険性を下げます。テレビ・ラジオを視聴し、トランプ・チェスなどのゲームをし、文章を読み、楽器の演奏をし、ダンスなどをよく行う人は、発症の危険性が減少するという研究があります。

 また、旅行、パソコン、園芸、料理など、計画を立てたり、考えたりすることが必要な趣味の活動が、脳を活性化し、軽い認知機能の衰えがある認知症予備軍の高齢者でも、記憶力や注意力、計画力を改善するという研究もあります。

 もしも、経済的な一家の大黒柱や子育て中の人が若年性認知症になってしまったら、経済的な問題や心理的ストレスは、とても大きいものになります。高齢者と違い、若いだけに体力もあるので、介護する側もエネルギーを消耗してしまいます。

 現在のところ、専門施設や情報の不足も深刻です。とはいえ少しずつではありますが、助け合いの輪は生まれつつあります。自分たちだけで抱え込まず、いざという時は専門医やケアマネージャー、精神科病院のソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。また、介護する側も息抜きを忘れずに。


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静脈血栓症

■静脈が血液の固まりで栓をしたように詰まる状態

 静脈血栓症とは、静脈が血液の固まりで栓をしたように詰まる状態。皮膚の浅い部分にある皮(ひ)静脈(表在性静脈)に起こる血栓性静脈炎と、体の深い組織内にある深部静脈に起こる深部静脈血栓症の2つがあります。

 原因としては、流れる血液自体に変化が起きて固まりやすくなったか、血流がゆっくりになったか、静脈壁に変化が起きたかの3つです。同じように静脈に血の固まりである血栓ができても、皮静脈に起こる血栓性静脈炎と深部静脈に起こる深部静脈血栓症とでは、症状の出方は全く違います。血栓性静脈炎は軽くてすむのに対して、深部静脈血栓症は重症化しやすくなります。

 皮静脈に血栓ができる血栓性静脈炎では、静脈のある部分の皮膚が赤くなり、軽い痛みを伴ったり、下肢にしこりができたりします。自然に起きる場合もありますが、最も起こりやすいのは、繰り返し静脈注射を行った場合です。針や薬の刺激で、静脈の壁に損傷や変化が起きて、この部分の血液が固まり、血栓を作ります。がんや血液疾患などの合併症として起きる場合は、基礎疾患によっていろいろな症状が現われます。

 深部静脈に血栓ができる深部静脈血栓症では、骨盤内の静脈や下腿(かたい)静脈、大腿(だいたい)静脈で詰まることが多く、その末梢(まっしょう)部の静脈に、うっ血が起こるので、足がひどくむくんだり、チアノーゼを起こして青紫色に変色したりします。うっ血が高度になると、強い痛みを伴うことがあります。男性よりも女性にやや多く、40歳代後半から50歳代に起きやすいと見なされています。欧米ほど高頻度ではありませんが、日本でも増加の傾向にあります。

 近年では、この深部静脈血栓症は、長時間の飛行機搭乗によるエコノミークラス症候群、あるいは旅行者血栓症、ロングフライト症候群としても注目を集めています。長時間、座ったままの同じ姿勢でいると、血液の流れが徐々に悪くなり、脚や腕などの静脈に血栓が生じやすくなります。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺塞栓(そくせん)症となります。肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を起こし、最悪の場合は死亡します。

 また、深部静脈血栓症は急性期に適切な治療がなされないと、慢性期に静脈血栓後症候群に悩まされることとなります。静脈高血圧のために皮静脈に静脈瘤(りゅう)ができたり、下肢の倦怠(けんたい)感、むくみが生じたり、栄養不足のために色素が沈着したり、皮膚炎や湿疹(しっしん)を起こしやすくなったり、治りにくい潰瘍(かいよう)ができたりすることもあります。

■静脈血栓症の検査と診断と治療

 急性期の血栓性静脈炎は、下肢のはれ、色調、皮膚温、皮静脈の拡張など、視診や触診で診断が可能です。また、下肢の血栓の最も有効な検査法は、超音波ドプラー法であり、現在最も頻用されています。時には静脈造影を用いて、血栓の局在や圧の上昇を測定することもあります。慢性期になると、皮膚や皮下組織が厚くなるリンパ浮腫との区別が難しく、リンパ管造影や静脈造影が必要になる場合もあります。

 一方、深部静脈血栓症に対しては、血栓性静脈炎などの紛らわしい疾患と区別するため、静脈造影、超音波ドプラー法、造影CT、MRA(核磁気共鳴検査)、血流シンチなどが行われます。また、原因となる血液凝固異常の有無や、血栓を生じたことを確認するために、血液検査も行われます。

 血栓性静脈炎の治療においては、がんや血液疾患などの合併症がある場合は基礎疾患の治療が優先されます。それ以外の急性期は、局所の安静と湿布、弾性包帯などを用いると、数週間で治ることがほとんどです。難治性のものには、抗凝固剤や血栓溶解剤を使って血栓の治療と予防を行います。痛みがある場合には、対症療法として炎症鎮痛剤などを使います。症状がひどいい場合のみ、外科的手術による血栓の除去、静脈の切除、バイパス形成を行います。

 深部静脈血栓症の急性期の治療においては、血栓の遊離による肺塞栓を予防するため、むくみや痛みが軽減するまで安静を保ち、下肢を高く上げておくことが必要です。痛みに対しては非ステロイド抗炎症薬を使い、血栓の治療と予防には抗凝固剤や血栓溶解剤を使います。下肢のチアノーゼがひどい場合や、症状が重く急を要する場合には、カテーテル治療や血栓摘除術によって直接血栓を除去します。将来、肺塞栓などの重症な疾患に発展したり、静脈血栓後症候群が生じる危険もあり、治療には十分な注意が必要とされます。

 静脈血栓症の予防には、運動、マッサージ、弾性ストッキングの使用などによって、血栓の形成を防ぐことが重要。寝る時には少し下肢を高くすれば、うっ血の予防になります。なお、エコノミークラス症候群の予防には、飛行中の十分な水分摂取、足を上下に動かしたり通路を歩くなどの適度な運動が有効です。


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食道がん

■高齢の男性に多くみられるがん

 食道がんとは、のどと胃をつなぐ細長い管である食道に発生するがんです。消化管のがんでは胃がん、大腸がんほどではありませんが、比較的多くみられ、近年のがんの臓器別死亡率をみると、徐々に増加する傾向にあります。特に、50~70歳代の男性に多くみられます。

 食道がんの中で最も一般的なのは、扁平(へんぺい)上皮細胞がんと、腺(せん)がんの2種類です。

 直径およそ1・5センチ、長さ25センチの食道の内面は、粘膜の扁平上皮で覆われています。この薄くて平たい粘膜の細胞から発生するのが、扁平上皮細胞がん。食道の上部、および中央部に最も頻繁に発生しますが、食道に沿ってあらゆる場所に発生する可能性があります。日本では、食道がん全体の90パーセント以上を占めます。

 一方、食道の内側の食道腺は、粘液などの体液を産生し、放出しています。この食道腺の細胞から発生するのが、腺がん。通常、胃に近い食道下部に発生します。日本では、食道がん全体のおよそ5パーセントを占めます。

 食道がんの発生原因は、ほかのがんと同様、はっきりしたことはまだ解明されていません。しかし、女性の約7倍と圧倒的に男性に多く、喫煙者とアルコールの常用者、腺がんでは慢性の逆流性食道炎(バレット食道)のある人などに多いと見なされています。そのほか、香辛料などの刺激物、熱い食事や熱いお茶などを好む人にも、食道がんが多いといわれています。

■早期がんでは症状のないことも

 早期の食道がんと、進行した食道がんでは、その症状がかなり異なります。

 早期では、症状のないことがしばしばあります。食べ物のつかえを感じる人は少なく、熱い飲み物、アルコール類、あるいは酢の物、ミカン類などの刺激物が食道を通過する際に、しみるのを感じることが多いようです。

 進行したがんでは、食べ物を飲み込む際に途中でつかえる感じ、胸の辺りの異物感などがあり、固形物が飲み込みにくくなる嚥下(えんか)困難を生じ、飲み込む際に痛みが生じることもあります。

 さらに進行してくると、腫瘍(しゅよう)によって食道が狭くなり、水分を取ることもできなくなります。食道に隣接する臓器に、がんが浸潤してくると、食道の症状以外の、いろいろな症状も出てきます。体重減少、吐血、嘔吐(おうと)、せき、声がれ、胸部痛、背部痛などです。

■手術を主に放射線治療、化学治療も

 進行した食道がんは隣接する他の臓器やリンパ節を侵し、末期には肝転移もみられるため、早期発見、早期治療が何より大切となります。比較的周囲に浸潤しやすい理由としては、食道が他の消化器臓器と異なり、外膜である漿(しょう)膜を有していないことが挙げられます。

 医師が早期治療するには、粘膜がんの状態で発見することが必要ですが、この段階では、ほとんどの人に症状の自覚はみられません。粘膜がんの状態で治療されるような人は、上部消化管内視鏡検査を含めたスクリーニング検査で発見されています。人間ドックや検診で、胃の異常を指摘され、内視鏡検査を受けた際に、食道に発赤粘膜やわずかな凹凸病変などを指摘された人です。

 ほかの消化管がんでも同じですが、今日では粘膜がんであれば内視鏡で治療できるようになっています。

 進行がんになれば、外科的な手術療法が最も一般的な治療法となります。食道周囲のリンパ節を取り除き、顕微鏡検査でがんがあるかどうかを調べます。一部の食道が腫瘍により閉塞(へいそく)されている場合、食道を拡張させておくために金属チューブ(ステント)を留置することもあります。

 食道切除術と呼ばれる手術で、食道の一部を摘出することもあります。飲食物を飲み込むことができるように、残っている食道の健常な部分を胃につなぎます。プラスチックチューブや腸の一部を利用して、食道をつなぐこともあります。

 放射線療法では、高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いて、がん細胞を殺します。この放射線療法には、体外照射と体内照射という2つのタイプがあります。体外照射では、体外の機械を用いてがんに放射線を照射します。体内照射では、放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射します。放射線療法の方法は、がんの種類や病期によって異なります。

 化学療法では、抗がん薬を用いてがん細胞を殺すか、細胞分裂を停止させることで、がん細胞の増殖を停止させます。口から服用したり、筋肉や静脈内に薬剤を注入する全身化学療法では、血流を通って全身のがん細胞に影響します。脊柱(せきちゅう)、臓器、腹部などの体腔(たいくう)に薬剤を直接注入する局所化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します。化学療法の方法も、がんの種類や病期によって異なります。

 レーザー療法では、強い光の細い光線であるレーザー光線を用いてがん細胞を殺します。 電気凝固療法では、電流を用いてがん細胞を殺します。

 このほかに温熱療法、免疫療法も行われますが、これらの治療法は通常単独で行われることはなく、いくつかの治療法を適切に組み合わせて行われます。


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自律神経失調症

●自律神経とは?

 「頭痛がする」「体がだるくて、つらい」「動悸が激しい」など、いろいろな症状があるのに、病院で検査をしても何も異常がない――。

 こんな時、医師から「自律神経失調症」と診断されることがあります。自律神経のバランスが失調し、調整機能が働いていない状態のことをいいますが、では、自律神経とはどういうものなのでしょうか。 

【体性神経と自律神経】

 私たちの身体の隅々まで張り巡らされている神経には、大きく分けて脳と脊髄からなる中枢神経と、中枢神経から出ている末梢神経に分けられます。末梢神経には、「体性神経」と「自律神経」の二つがあります。

身体機能の調整 

○体性神経

 体性神経は、体表でキャッチした「熱い」「痛い」などの知覚を脳に伝えたり、口や手足などの体の各部分を自分の意思で動かす働きをしています。会話をする、食べる、走るなどは、体性神経によるものです。 

○自律神経

 自律神経は自分の意思とは無関係に、体表や身体の内部の刺激に反応して身体の機能を調整する働きをしています。走ると“ハ~ハ~”と激しく息をして心臓がドキドキとするのは、自律神経によって呼吸や心臓の動きが速くなったためです。

●バランスの失調

 自律神経の交感神経と副交感神経という、まったく正反対の働きをする二つの神経は、意思とは関係なく自動的に働いて体の環境を調整していますが、外部の環境や精神的な刺激によってバランスを崩すことがあります。

 自律神経のバランスが崩れることによって、いろいろな症状が現われる要因として、次のことが考えられます。まず、自律神経を支配しているのは視床下部で、これは本能や感情をつかさどる大脳辺縁系に支配されています。そこで、外部の環境や精神的な刺激などによって、本能や感情を抑制してしまうことは、視床下部を通じ自律神経へと影響を及ぼすためです。自律神経の交感神経や副交感神経が正常に働かず、どちらかが強く働きすぎたり、弱くなったりすると、体の各器官に症状が現われるようになるのです。

●病名ではなく診断名

 ここで注意しなければならないのは、「自律神経失調症」とは「頭痛がする」「だるくて辛い」「動悸が激しい」などいろいろな症状があるのに病院で検査をしても何も異常がない場合につけられる<診断名>で、<病名>ではありません。さまざまな要因によって、体を自動的に調節している自律神経のバランスが崩れた状態を指しているのが、<診断名>です。

 つまり、原因となる問題を解決していけば、体に現われていた症状が次第になくなっていくのも、自律神経失調症の特徴です。

●どんな症状が現れるのか?

 症状には、現れ方の強弱や期間など個人差があり、さまざまですが、主な症状を挙げます。 

【全身的な症状】

 自律神経を支配している視床下部の変調によって、全身的な症状が現れます。例えば、「体がだるい」「疲れがとれない」「眠れない」「食欲がない」など。 

【体の各器官に現れる症状】

 頭痛、頭が重い、動悸、胸が苦しい、めまい、立ちくらみ、のぼせ、冷え、吐き気、胃もたれ、便秘、下痢など、さまざまです。

●自律神経失調症を防ぐには?

 自律神経失調症から身を守るには、第一に自律神経が失調状態にならないようにストレスを避ける、あるいは解消することです。そのためには、不規則な生活を改めたり、ストレスを解消するための休養を十分にとったり、リラックスできるようなストレス解消法を持つことです。

【生活のリズムを夜型から朝型へ変える】

 自律神経の二つの神経は、一日の中で働く時間帯がだいたい決まっています。交感神経は体を活発に動かすときに働く「活動型・アクセル型神経」で、おもに日中働きます。一方、副交感神経は体を休めて体力を回復させるときに働く「休息型・ブレーキ型神経」で、おもに夜間働きます。

 生活リズムが夜型になっている人は、副交感神経が働くことで体力を回復させる時間帯に交感神経が働いている状態です。体が求めているリズムに逆らうことは、さまざまな症状が現われる原因です。就寝する時間を少しずつ早めて、朝起きることを心がけてリズムを正常に戻すようにしましょう。

【栄養バランスと時間帯を考えた食事をとる】

 精神と肉体が健康的であるには、まずは食事が大切です。空腹を満たすためだけに、ファストフードや菓子・清涼飲料水ばかりを摂っていては、体を維持する栄養バランスが保てません。外食が多くなりがちな人は、品数の多い定食にしたり野菜類をとるなど、自分なりの工夫をしたいものです。

 また、食事をとる時間帯についても、寝る前に食べることは胃に負担をかけて翌朝の調子を崩すことになりかねません。夕食はなるべく早めにとることを心がけましょう。空腹が強いときは温めたミルクなどをとることもよいでしょう。

【ストレスをためない方法を見付ける】

 仕事や人間関係などでストレスがたまるのは、避けようもありません。でも、そのストレスが少しでも小さくなるような自分なりの方法を見付けることが、「ストレス解消法」です。

 好きな音楽を聴く、本やマンガを読む、散歩をする、気の合った仲間とおしゃべりをする、スポーツをする……、いろいろな方法があります。どれか一つだけに絞らず、「今日は音楽を聴く気分」「今は体を動かそう」など、その時々の気分や体調に合わせて柔軟な姿勢で自分の体や心を「お疲れさま」と、いたわりほぐすようにしたいものです。

【専門家にかかる】

 つらい症状があってもどこも異常が見付からない……、そんな状態は周囲の人になかなか理解されず、「怠けている」とか「気にしすぎだ」ととらえられてしまうことが少なくありません。

 また、頭痛や胃痛などその症状に合わせて専門の科をアチコチ巡るが、原因がわからない――ということを繰り返す「ドクターショッピング」も、見受けられます。

 そこで、自律神経失調症のようなストレスによる体の変化を診療するには、心療内科の医師や心理療法士などのカウンセラーにかかることをお勧めします。つらい症状の背景にある心理的、社会的ストレスを解消する方法を探ったり、薬剤などで症状を軽減するなどの対症療法を行うことができます。


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痔瘻(あな痔)

■肛門の周囲に穴が開き、膿が出る疾患

 痔瘻とは、肛門(こうもん)の周囲に穴が開き、膿(うみ)が出る疾患。一般的には、あな痔とも呼ばれます。

 痔瘻の多くは、肛門周辺膿瘍(のうよう)が進行して発症します。肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分に相当する歯状線のくぼみ部分、すなわち肛門小窩(しょうか)が深い人に、軟らかすぎる下痢便などで傷が付くと、大腸菌などの細菌が入って肛門腺(せん)に炎症が及び、そこに発生する細菌感染で膿を作ります。この膿が直腸の周囲から肛門周囲の組織の間を潜って広がり、いろいろな場所にたまると、肛門周囲膿瘍となります。

 この膿の集まりである膿瘍が、運よく皮膚に近くて、皮膚を破って外に出たり、または一時的に小切開手術が行われて自然に完治しないと、慢性の瘻孔(ろうこう)、ないし瘻管と呼ばれる穴として残ります。この穴が、痔瘻です。

 一方、膿の集まりである膿瘍が、組織の間の奥深い場所にあると、皮膚に通じる出口がないため、大きな深部膿瘍を作ったり、そこからいくつも瘻孔の枝道を作って皮膚を破ったり、さらに直腸へ破れたり、肛門周囲の皮膚に破れて、いろいろと複雑化します。

 痔瘻では初めから感染が緩やかで、知らない間に瘻孔が作られ、そこから膿などの分泌物が出てきても、下着を汚すくらいで大した痛みもないため、放置する人が少なくありません。この瘻孔がふさがり、膿が中にたまると、はれて痛みます。

 自然治癒はしません。10年〜15年も治療しないで放置し、慢性化して再三炎症を繰り返すと、瘻孔からがんの発生がみられることもあります。

■痔瘻の検査と診断と治療

 痔瘻(あな痔)は、痔の中で最も厄介な疾患です。薬では100パーセント治りませんし、進行したまま放置するとがん化する危険性もありますので、肛門科の専門医を受診します。

 痔瘻の治療は手術しかありませんが、大きく開放手術と括約筋温存手術の2つに分けられます。

 開放手術は、肛門後部の痔瘻を対象として、痔瘻ができたところからその外側に至る全瘻孔を周囲の肛門括約筋とともに切除し、そのまま縫い合わせずに開放する方法。手術後、肛門が緩くなるものの、失禁するほどではありません。再発の可能性が少ない方法です。

 括約筋温存手術は、肛門横、前部、深部の痔瘻を対象として、瘻孔だけをくり抜く方法。後遺症の懸念があって肛門括約筋を切除しないため、手術後、肛門が緩くなることはありません。ただし、病巣が残る可能性もあるため、再発のリスクが生じます。

 痔瘻の手術では、かなり肛門を傷付けることとなりますので、手術後の痛みが発生します。我慢できないくらい大きい痛みの場合は、痛み止めの薬が処方されます。排便時もかなり痛みますので、手術後はすぐに排便がこないように、排便を抑制する薬が処方されます。また、便が硬くなるといけないので、下剤の処方で軟らかくします。

 痔瘻の進行度合いにもよりますが、1〜2週間はなかなか痛みがとれないことがあるため、2週間から1カ月くらい入院して、手術後の管理を行う必要があります。

 日常生活では、下痢や便秘をしないように、ふだんから注意します。体力が落ちて、体の免疫力が落ちた時にかかりやすいので、適度の運動と規則正しい食事、睡眠も必要です。アルコールや香辛料は控えめにします。


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腎炎

■血液を、ろ過する糸球体に起こる炎症

 腎炎(じんえん)とは、尿を作るために血液を、ろ過する糸球体(しきゅうたい)に、出血性の炎症が起きる疾患です。正確には、糸球体腎炎といいます。

 免疫の異常が関係して起こると考えられており、左右の腎臓とも平等に侵されます。病気が進行すると、毛細血管の塊である糸球体だけではなく、尿細管まで障害が広がります。腎臓病のうちで最も多い病気で、一般に1年以内のものを急性(糸球体)腎炎といい、それ以上長く続くものを慢性(糸球体)腎炎といいます。

■急性腎炎の症状と早期発見法

 急性(糸球体)腎炎は4~10歳の子供に多い疾患で、加齢により発生は減少します。子供では完全に治ることが多いのに対して、成人発病者の一部では慢性腎炎に移行するものもみられますので、慢性化しないよう十分療養するべきです。

 細菌、特に溶連菌による扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎などの上気道感染後、あるいは風邪などのウイルスの感染後、1~3週間たったころ発症する場合がほとんどです。

 腎臓の糸球体に炎症が起こるのは、これらの細菌やウイルスが関係する抗原抗体反応によって生じた免疫複合体(抗原抗体複合物)と呼ばれる物質が、血流に運ばれて糸球体に付着するためと考えられています。

 通常では、この免疫複合体は糸球体にあるメサンギウム細胞が処理し、発病には至りません。あまりに量が多い場合、糸球体に沈着して炎症を引き起こします。炎症が起こると、糸球体の細胞が異常に増殖したり、血液中の白血球の成分が糸球体の中に入り込んで、糸球体の働きを阻害するとされています。

 急性腎炎の症状として、血尿と蛋白(たんぱく)尿が必ずみられます。ただ、血尿は赤ブドウ酒かコーラ様になっている場合もありますが、ほとんどは肉眼ではわからない血尿であり、顕微鏡で検査をして初めて確認されるほうが多いものです。

 ほかに、顔や手のむくみ、血圧上昇、食欲低下、だるさ、尿量減少などがみられます。血圧上昇は病院で測定してもらって、初めて指摘されるのが普通ですが、子供の場合には、高血圧によってけいれん発作が起こる場合もあります。

■慢性腎炎の症状と早期発見法

 慢性(糸球体)腎炎は、腎臓病の中で最も多い疾患。糸球体を中心にした慢性の炎症がみられるもので、さまざまな原因で起こる腎炎が含まれているために、近年では、疾患群(症候群)として考えられるようになっています。

 いずれにしても、蛋白尿や血尿とそれに伴う症状が1年以上に渡って、持続する状態を、慢性腎炎と呼びます。ただし、糸球体腎炎以外で、異常尿所見や高血圧を呈する病気は除きます。

 この慢性腎炎では、何ら前兆や誘因もなく発症してくることが多く、また進行して腎不全となるまでは、自覚症状のないことが多いのです。そのため、定期健診の時などに検尿で見付かることがほとんどです。

 まぶたが腫(は)れぽったくなるほか、疲れやすい、食欲不振、動悸(どうき)、手足のしびれ、目がチカチカする、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が出る場合もあります。

 この慢性腎炎は、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる腎生検によって、4種類に分けることができます。蛋白尿と血尿が出るという症状は共通しているので、あくまで腎生検を行わないと区別できません。

 腎炎の約4割を占め、日本人の腎臓病で最も多いのがIgA腎症です。このほか、巣状糸球体腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎があります。

 IgA腎症では、発病初期から肉眼的血尿に気付くことが多いのが特徴的です。発症は10代後半から30代前半に多く、やや男性優位です。顕微鏡で見ると、IgA(免疫グロブリンA)という抗体が、抗原と結合して免疫複合体となり、糸球体のメサンギウムという部位に沈着しています。

 巣状糸球体腎炎では、糸球体の基底膜という部位に、微小な変化が生じています。膜性腎症では、糸球体の基底膜が肥厚しています。膜性増殖性糸球体腎炎では、糸球体の基底膜の肥厚に加えて、細胞の数が増える変化が生じています。

■急性腎炎の治療と療養上の注意

 急性(糸球体)腎炎の治療では、安静と食事療法が主体となります。特に初期の安静は重要なので、入院治療が原則です。食事は蛋白質、塩分、水分の制限が、病気の程度や時期に応じて行われます。

 蛋白質と塩分を制限するのは、腎臓の働きが低下すると、蛋白質から生じる窒素化合物や食塩の成分であるナトリウムの排出がスムーズにいかなくなるためです。蛋白質を減らす分、糖質や脂質でカロリーを十分にとります。むくみのある時や、1日の尿量400ml以下と尿が少ない場合、あるいは無尿の場合は、1日に摂取する水分を制限します。病状の改善とともに運動量は増し、食事の内容も変わってきます。

 腎炎そのものを、根本的に治す特効薬というものはありません。ただし、急性腎炎のきっかけとなった溶連菌などの感染症の治療には、抗生物質が使われます。ほかに、炎症を鎮めるために抗炎症剤、血尿がひどい時には止血剤、乏尿やむくみがひどい時には利尿剤、高血圧に対しては降圧剤が使われます。

 入院して適切な治療を受ければ、むくみや高血圧は、通常1週間以内によくなりますが、病気の程度が重ければ長引くことになります。血尿、蛋白尿なども、2~3カ月で消えていくことが多く、この時点で通学あるいは軽作業が許されるようになります。

 退院後は、病気の回復と合わせて医師と相談の上、無理のない生活を送るようにコントロールしていくことになります。一般的いって、子供の場合には、体育の授業や水泳、遠足などのへの参加は控えましょう。大人の場合は、周囲の理解を求めて夜勤や残業などを避け、最低3年程度、激しいスポーツや肉体労働を見合わせる必要があります。女性の場合には、2年ほど妊娠を避けたほうがよいでしょう。

■慢性腎炎の治療と療養上の注意

 慢性(糸球体)腎炎で最大の問題となるのは、病態が進行するにつれて、次第に腎機能が低下して腎不全となり、人工透析が必要となる例があることです。そのため、病態の進行を阻止することが、治療の最大の目標になります。

 現在のところ、進行を確実に止めるという方法は確立していませんが、病態に合わせて、次のような薬物が用いられています。

 ネフローゼ症候群の場合と同様、尿蛋白量の多い場合、抗炎症作用がある副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が用いられることがあります。腎炎の始まりが免疫反応によると考えられているので、免疫抑制剤が用いられることもあります。

 2つの薬を併用して治療に当たることもありますが、この2剤は副作用も強いので、医師の指導のもと、血液検査など定期的なチェックを受けながらの服用となります。「症状が軽くなった」と勝手に判断して、服用を止めることは危険です。

 糸球体内で血液が凝固することが腎炎の進行を速めると考えられているため、血液凝固の主役である血小板の働きを弱める薬も、よく用いられています。

 高血圧も腎炎の進行を速めることが知られていて、高血圧を合併している場合には、降圧剤による治療が行われます。最近、降圧薬の中には、蛋白尿を減少させ、さらに腎機能の低下を抑制するものの存在が確認され、そのために高血圧がなくても治療に用いられるようになってきました。また、むくみのあるような場合には、利尿剤も用いられます。

 食事療法も、腎機能の程度、症状の有無に応じて行われます。基本的には、食塩と蛋白質の摂取量に注意することです。蛋白質は1日、体重1kg当たり1g以下に抑えられます。塩分は軽症の場合、多少控える程度で大丈夫ですが、病気が進行している状態では、1日に5~8g程度にされます。ほかに、水分量とエネルギー摂取量が過不足にならないようにされます。

 慢性腎炎は経過が長引く疾患で、一部のものは進行性に悪化しますので、生活上の注意は重要です。まずは、風邪や下痢などを起こすと、数日後に肉眼でわかる血尿や蛋白尿が出たり、体がむくんだりすることがあるので、こうした病気にかからないように注意しましょう。

 体力と集中力を必要とする仕事や勉強などは、避けましょう。根を詰めてこなさなくてはならぬことは、腎臓に負担をかけます。なるべくリラックスして過ごせるようにして、夕方から夜にかけても、安静に過ごすことが大切です。

 病状にもよりますが、一般に体操や散歩など軽い運動は大丈夫です。ただし、激しいスポーツや、体を冷やす恐れのある運動は避けましょう。


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人格障害

■人格の著しい偏りで社会生活に支障

 人格障害(パーソナリティー障害)とは、精神医学の領域において、生来持っている人格傾向が思春期、青年期に顕著に出てきて、その人格の著しい偏りのために、社会生活を営むことに支障を伴う状態を指します。物事の認識の仕方や行動が逸脱していて、対人関係の機能が障害され、自分自身や他人、または両方を苦める傾向が目立ちます。

 人格障害は精神疾患の一つに含まれますが、その他の精神疾患と比べて慢性的であり、全体としての症状が長期に渡って変化しないことに特徴があります。従来は人格異常、精神病質と呼ばれていた病気の概念で、性格障害と呼ばれることもあります。

 なお、この人格障害は否定的なニュアンスが強いことから、近年はパーソナリティー障害と呼ばれることが多くなっています。日本精神神経学会では2008年5月に、人格障害をパーソナリティー障害に用語改定をすることを発表しました。

 人格障害(パーソナリティー障害)にはさまざまなパターンがあり、時代や国によって分類方法が変わってきます。現在、アメリカの精神医学会によって作られた診断基準では、人格障害は3つのグループに分けられています。

 A群は、妄想性人格障害、統合失調症質人格障害、統合失調症型人格障害。統合失調症(精神分裂病)に近い人格障害です。

 これらの人格障害の特徴は、思考、感情、行動などの統一性を失う統合失調症のようなはっきりとした精神症状はありませんが、それとよく似た傾向を持っています。自閉的で、しばしば妄想を持ちやすく、奇妙で風変わりな傾向を示します。

 B群は、反社会性人格障害、境界性人格障害、演技性(ヒステリー性)人格障害、自己愛性人格障害。感情が不安定、かつ激しいのが特徴的な人格障害です。ストレスに対して弱く、他人を巻き込むことが多い傾向を示します。

 C群は、回避性(不安性)人格障害、依存性人格障害、強迫性人格障害。不安やおびえ、引きこもりなどを特徴とする人格障害です。周りの評価が気になり、それがストレスとなる傾向を示します。

 その他、 抑うつ性人格障害 、受動攻撃性人格障害も、診断基準の付録に挙げられています。

 これら人格障害の人には、融通が利かず、問題に対して適切に対処できない傾向があるため、しばしば家族、友人、職場の同僚との関係の悪化を招きます。問題への不適応や、物事の認識の仕方や行動の逸脱は多くの場合、思春期、青年期から成人期初期にかけて始まり、時を経ても変わることはありません。

 ただし、一部の人格障害の人では、30~40歳代までに状態が改善していく傾向があるとされ、晩熟現象と呼ばれています。加齢による生理的なものの影響だけではなく、仕事等の社会生活を通じて多くの人々に触れ、世の中には多様な生き方、考え方があるということを知り、それを受容することに基づく現象と考えられています。

■人格障害者の診断と治療

 人格障害(パーソナリティー障害)の人は、自らの思考や行動のパターンに問題があることに気付いていません。このため、自分から医師に治療や助力を求めることは、あまりありません。当人の行動がほかの人に迷惑をかけているなどの理由で、友人や家族、社会的機関によって、医療機関に連れてこられることは、より多くあります。自主的に受診するのは、不安、抑うつ、薬物乱用など、つらい症状がある場合が主です。

 医師の側では、既往歴、特に繰り返し現れる不適応的な思考や行動のパターンに基づいて、人格障害を診断します。統合失調症や気分障害など他の精神疾患でも、人格障害の症状を示すことがあるため、区別に注意しなくてはなりません。また、受診者の年齢が幼いほど、人格障害の診断に慎重になる必要があります。人格発達が不完全な未成年者では、いずれかの人格障害の傾向を示すことが珍しくないためです。

 人格障害がある人では、行動の結果が思わしくない場合にもそのパターンを頑固に変えようとしないため、他人の目にも明らかになりがちです。問題への心理的な対処のメカニズムの不適切も、よく目に付きます。この対処メカニズムは誰(だれ)もが無意識に用いるものですが、人格障害がある人の場合はその使い方が未熟で不適応的であるために、日常生活にまで支障を来します。

 人格障害の治療には、長い時間がかかります。人格障害は一時的な心の病ではなく、問題が人格といえるほどに当人の心の奥底まで浸透し、長期に渡って変化せずに安定していますので、社会適応の妨げとなる特性が短期間で改善されることはあまり望めません。

 人格障害の人は何よりも他人を信頼しないので、医師との治療関係に持っていくまでが大変ですし、治療関係自体を良好なまま維持していくのにも工夫が必要とされます。

 何らかの精神症状が出ている場合、妄想などの内容が過激で生活にかなりの支障が出ている場合には、薬物を投与しながら治療していくほうが好ましいとされます。薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状はすぐに軽快します。ただし、薬には症状を緩和させるだけの限られた効果しかなく、人格障害から起こる不安や悲しみなどの感情は、薬で十分に軽減されることはまずありません。

 薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状を軽減した後、心理・対話療法が行われ、その人独自の思い込みを少しずつ解いていくことが試みられます。

 人格障害のタイプにより治療法は異なりますが、独自の思い込みを解くのは、すべての治療に共通する原則の一つ。当人は自らの行動に問題があるとは思っていないため、状況に適応していない思考や行動が引き起こす有害な結果に、直面させる必要があります。それにはまず、当人の思考や行動パターンから生じる望ましくない結果を、心理療法士が繰り返し指摘する必要があります。時には、怒って声を張り上げるのを禁じて、普通の声で話させるなど、行動に制限を加えることも必要とされます。

 家族の行動は、本人の問題行動や思考に良くも悪くも影響するため、家族の関与は治療に役立ち、多くの場合不可欠でもあります。グループ療法や家族療法、専用施設での共同生活、治療を兼ねた社交サークルや自助グループなどが、社会的に望ましくない行動を変えていく上で役立ちます。

 心理・対話療法は通常、不適応行動や対人関係のパターンに何らかの変化がみられるまで、1年以上は続けなければなりません。医師と人格障害の人との間に、親密で協力的な信頼関係ができると、当人はそこから自らの悩みの根源を理解し、不信、ごう慢、人に付け込むといった対人問題の原因となる態度や行動を、より明確に認識するのに役立ちます。一般的に、不適応行動の変化は1年以内に生じますが、対人関係の変化にはなお時間がかかります。

 人格障害の中でも、特に適応の妨げとなる態度や期待、信念などがある自己愛性人格障害、強迫性人格障害などの場合には、精神分析的精神療法を受けることが勧められ、通常は少なくとも3年間続けられます。

 境界性人格障害、反社会性人格障害、回避性人格障害の場合には、当人の行動の変化が最も重要と見なされ、落ち着きがない、社会的に孤立している、自己主張が欠如している、怒りやすいなどの行動を変えるのに、認知行動療法が役立ちます。ただし、反社会性人格障害または妄想性人格障害の場合は、どの治療法でも成功することはまれです。


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腎結石、尿管結石

■尿路に石ができた結果、いろいろな障害が発生

 腎(じん)結石、尿管結石とは、腎臓、尿管に石ができた結果、いろいろな障害が起こる疾患。20〜40歳代の男性に多くみられます。

 尿路に石ができる疾患をまとめて尿路結石といい、石がある尿路に部位により、腎結石、尿管結石、膀胱(ぼうこう)結石、尿道結石といいますが、このうち膀胱より上位にある腎結石と尿管結石は、上部尿路結石といわれます。膀胱より下位にある膀胱結石と尿道結石は、下部尿路結石といわれます。

 結石の大小は、小さい砂のようなものから、腎盂(じんう)全体を占める大きな石で、形からサンゴ状結石と呼ぶものまでいろいろあります。結石の数は、1個のことも多数のこともあります。

 これらの結石は、尿に溶けていた塩類が腎臓の中で固まってできたもの。主な成分は、尿酸、蓚(しゅう)酸、炭酸などにカルシウムが付いたものです。尿中の塩類が結石を作る理由は、まだよくわかっていません。尿の停滞と細菌感染、手術時の縫合糸など尿路の異物、副甲状腺(せん)機能高進症、代謝異常などが、結石を作りやすい誘因になると考えられています。

 腎結石、尿管結石の主な症状は、腎臓部の痛み、血尿、結石の排出です。

 腎臓部の痛みには、腎臓や尿管の強い痛みの疝痛(せんつう)と、腎臓部や腰部の鈍い痛みの鈍痛の2種類があります。疝痛というのは、結石が尿管に詰まって、尿が下に流れないで急に腎盂の内圧が高くなり、腎臓が大きく張るために痛みが起こるもの。時には、背中や肩、あるいは下腹部から外陰部へ痛みが走ります。また、尿管のけいれん性の収縮によっても、痛みが起こるといわれています。

 疝痛の発作時は、吐き気や嘔吐(おうと)、脈が速くなる頻脈、腹部膨満感なども起こります。疝痛が治まると、鈍痛が腎臓部に感じられます。大きな結石では、鈍痛のことが多く、X線によって偶然発見されることもあります。

 血尿は、疝痛時にみられます。これは結石が尿路の粘膜を傷付けるためで、見た目で血尿とわかるものばかりではありません。結石の排出は、疝痛の後の排尿時にみられることがあります。

 尿とともに体外されるのは、小さい結石です。結石がある大きさになると、尿管に長い間とどまったままとなり、水腎症になります。また、細菌感染が起こった場合、急性腎盂腎炎になって高熱が出ます。

 このような時は、強い抗生物質を用いないと、進行して膿腎(のうじん)症になることもあるので、注意が必要です。

■腎結石、尿管結石の検査と診断と治療

 5ミリ以下の小さい結石では、多くのケースで自然排出が期待できます。それ以上の大きさになると、短期間での排出は期待できません。

 かつては切開手術を主体として治療が行われていましたが、今日では、体外衝撃波砕石術(ESWL)が腎結石、尿管結石の治療の第1選択となっています。衝撃波発生装置から出た衝撃波を皮膚を通して、結石に収束させて、破砕するものです。さまざまなタイプの優れた機種が広く普及して、ごく一般的に使用されています。

 しかし、衝撃波砕石も万能ではありません。衝撃波をあまり当てすぎると、腎臓に障害を生じます。衝撃波で割れない結石もあります。また、衝撃波では割るだけで、大きな結石では割れた結石を自然排出するのが大変です。

 今日では、体外衝撃波砕石術と併行して、内視鏡による腎結石、尿管結石の治療も行われています。

 一方、一部の結石は、内服薬によってある程度、治療できます。例えば、近年になって増加している尿酸結石は、重曹などによって尿をアルカリ化することで、かなり改善されます。一部の結石では、結石を作りやすい疾患が合併しているものもあり、もとになる疾患の治療も大切。

 尿路結石では一般に、尿の濃縮と運動不足が結石の増大を促します。水分をよく摂取し、縄跳びやジョギングなど適度の運動を続けることが大切です。


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心室中隔欠損症

■新生児で最も頻度の高い先天性心臓病

 心室中隔欠損症とは、右心室と左心室の間にある心室中隔に欠損口がある疾患。新生児においては、最も頻度の高い先天性心臓病です。

 生まれ付き心臓に何らかの異常を伴う先天性心臓病は、およそ100人に1人の割合で起こると見なされています。その先天性心臓病の約20パーセントを占めているのが心室中隔欠損症で、心室中隔欠損単独の異常の場合もあれば、ほかの先天性心臓病を合併している場合もあります。

 ほかの先天性心臓病を合併しているケースや、心室中隔の欠損口の大きいケースでは死亡することが多く、成人では心房中隔欠損症に次ぐ頻度になります。欠損口は、0・5センチ平方ほどの小さいものから、数センチ平方の大きなものまでいろいろです。

 新生児で小さな欠損口の場合には、症状はないかあっても軽度で、体重増加や授乳にも影響なく経過します。中等大の欠損口を持つ新生児では、脈や呼吸が速い、寝汗をかく、手足が冷たい、ミルクを飲むのが大変そうといった症状が生後1、2カ月で出始め、その後も身長は正常範囲でも体重増加が落ちてきます。より大きな欠損口を持つ新生児では、そのような症状がさらに重症化したり、また肺高血圧を生じて、チアノ-ゼ(低酸素血症)が出現することがあります。

 心室中隔に欠損があると、心臓が収縮する時に、血圧が高い左心室内の血液の一部が血圧が低い右心室内へと流れ込むことになります。この血液は肺と左右両心室を空回りすることになるため、両心室の負担が増え、さらに肺血管の血流量増加のために肺高血圧が生じるのです。肺高血圧は右心室の負担をさらに強め、右心室圧が高くなり、右心室内から逆に左心室内へと血液が流れ込むこともあります。

 肺高血圧が進行すると、チアノーゼなどの症状も強くなり、易疲労感、胸痛、失神、喀血(かっけつ)といった症状も現れて、アイゼンメンジャー症候群と呼ばれます。

■心室中隔欠損症の検査と診断と治療

 健康診断で通常行われる聴診所見、胸部X線検査、心電図といった検査で心室中隔欠損症が疑われた場合、循環器を専門にしている医療機関で心臓超音波検査を受ければ確定診断がつきます。超音波検査だけでも治療の必要性の判断は可能ですが、合併している心臓病の有無や、肺高血圧の程度を調べるために、心臓カテーテル検査が必要となる場合もあります。

 欠損口が小さく、血液の漏れが少ない新生児では、特に手術治療も、内服治療もなしで、通常の発育が見込まれます。軽症例では症状はなく、肺高血圧を生じることもなく、時に自然閉鎖をするケースもみられます。ただし、この場合でも、歯科治療や心臓以外の疾患で何か手術を受ける際、大きなけがをした際には、感染性心内膜炎を予防するために、抗生物質の投与が必要です。

 感染性心内膜炎というのは、心室中隔欠損症のように欠損口を通る血液の乱流があると、血液中に細菌が流れてくる菌血症の状態になった時に、心臓の内側の壁である心内膜に細菌が巣を作って起きる疾患。一度、細菌が巣を作って固まりになると抗生物質が効きにくく、重症化して敗血症になる場合もあります。

 中等大の欠損口を持つ新生児は、一般的にまず利尿剤、強心剤といった薬で心不全症状の緩和をします。薬を飲んでも心不全症状が強い、呼吸器感染を繰り返す、あるいは肺高血圧の進行が疑われる場合には、手術が勧められます。

 より大きな欠損口を持つ重症例では、幼児より心不全、気管支炎、肺炎を起こすことが多く、できるだけ早期に手術を行うことが大切となります。肺への負担が大きい場合、時間がたつと肺高血圧によって肺の血管が痛んだ状態になり、場合によっては手術ができないようになることもあります。また、欠損口の場所によっては、大動脈弁の変形や、閉鎖不全を起こすこともあり、血液の漏れの量にかかわらず手術になることもあります。

 手術では、人工心肺という装置を用いて心停止下に、欠損部の直接縫合、あるいは、パッチ(合成繊維の布)縫合によって、欠損口をふさぎます。しかし、大変重症で人工心肺の使用が危険な場合や、欠損口が心臓の筋肉の入り組んだところにたくさんあって非常にふさぎにくいことが予想される場合には、欠損口をふさがずに、肺動脈をしばって肺に流れる血液を制限する手術をすることもあります。

 欠損部の直接縫合、パッチ縫合による手術の場合は、成績は良好。パッチ縫合によって欠損口をふさいだ後は、周りの筋肉が発達するので新生児が成長してもパッチの取替えをする必要はありません。学童期以後になっても欠損口がまだあるケースでは、細菌が付着する感染性心内膜炎になることもありますので、多くは手術が勧められます。

 心室中隔欠損症の手術後の予後は、一般的に非常に良好です。通常、ほかの子供たちと同様に生活していけると見なされています。


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新生児メレナ

■消化管から出血し、血便や吐血を生じる新生児の疾患

 新生児メレナとは、主に生後1日から数日に消化管から出血し、血便が出たり血を吐いたりする疾患。

 この新生児メレナは従来から、血液を凝固させるために必要なビタミンKの欠乏による出血性疾患と見なされ、現在は予防のために出生当日と退院時、1カ月健診時にビタミンK2シロップを飲ませていますが、消化管からの出血にはさまざまな原因があります。

 まず、仮性メレナと真性メレナの2つに分けられます。仮性メレナは、新生児が出産の際に母胎血を飲み込んだり、授乳の際に母親の乳首周辺からの出血を飲み込んで、黒色の血便を排出したり、血液を吐いたりするもの。

 一方、真性メレナは、新生児の消化管自体からの出血によるもので、さらに特発性メレナと症候性メレナの2つに分けられます。

 特発性メレナは、血液凝固の仕組みが障害されたもので、それ以外に原因となる疾患の発見されないもの。生まれたばかりの新生児では、生理的に凝固因子が減少した状態にあり、腸内細菌の働きが発育して凝固因子の一つであるビタミンKを作れるようになるには数日を要し、母乳に含まれるビタミンKの量も少ないので、凝固因子の減少の程度が強く起こったりすると発症します。

 症候性メレナは、胃、腸管などの消化管にはっきりした疾患があって、その部分症状として血便をみるもの。消化管の疾患としては、食道炎、出血性胃炎、胃潰瘍(かいよう)、胃穿孔(せんこう)、十二指腸潰瘍、腸重積症、壊死(えし)性腸炎、細菌性腸炎、ミルクアレルギーなどがあります。

 特発性メレナの多くは、生後1〜5日の間に症状が現れます。授乳とは無関係に嘔吐(おうと)が起こり、吐物には、胃液のために黒褐色に変色した血液が混じっています。便も黒いタール様です。

 出血が大量の場合には、吐物や便に新鮮な血液が混じり、皮膚の色が貧血のため青白くなることもあります。へそからの出血や、皮下出血を認めることもあります。

 生後3週間以降に発症すると、頭骸(とうがい)内出血を引き起こす可能性が高まり、重症だと後遺症が残ることもあります。母乳栄養児で生後2〜3カ月して頭蓋内出血を引き起こす場合は、乳児ビタミンK欠乏症といいます。

■新生児メレナの検査と診断と治療

 医師による診断では、仮性メレナと真性メレナを区別するアプト試験、貧血や血小板減少の有無を調べる血液検査、肝機能異常の有無を調べる検査、出血傾向の有無を調べる検査、細菌性腸炎の有無を調べる便培養、X線検査、内視鏡などにより総合的に判断し、重症度の評価を行います。

 仮性メレナの場合は、治療の必要はありません。特発性メレナでは、減少した凝固因子がビタミンKの作用によって肝臓で合成されるので、治療にはビタミンKが使われます。出血の程度が強く、緊急の止血を要する時は、新鮮凍結血漿(けっしょう)輸血を行います。

 そのほか、血小板輸血、胃洗浄や、制酸剤、胃粘膜保護剤、潰瘍の薬であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤の投与などが行われ、24時間以内に循環血液量の60パーセント以上の出血が続く時には外科的手術が行われます。


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膵臓がん

■胃の後ろに位置する膵臓に発生する、予後不良のがん

 膵臓(すいぞう)がんとは、胃の後ろに位置する消化腺(せん)である膵臓に発生するがん。

 膵臓は十二指腸とくっついていて、横に細長くなって脾臓(ひぞう)に接する臓器で、直径15センチ、重さ100グラムほどとサイズこそ小さいものの、外分泌と内分泌という2つのホルモン分泌を行う機能があります。

 外分泌機能は、消化液である膵液を分泌して十二指腸へ送り込み、食物の消化、吸収を助けるもの。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白(たんぱく)質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。

 一方、インシュリン(インスリン)やグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血糖値を調節するのが内分泌機能です。インシュリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を高くします。

 この膵臓を便宜上、ちょうど3等分して、十二指腸側に接する右側を頭部、中央を体部、脾臓に接する左側を尾部と呼びます。膵臓がんの3分の2以上は、膵頭部に発生します。

 また、膵臓がんの90パーセント以上は、十二指腸への膵液の通り道である膵管から発生します。まれには、ホルモンを作るランゲルハンス島(膵島)から発生します。

 この膵臓がんは、消化器がんの中で最も予後不良のがんで、近年増加傾向にあります。日本のがんにおける死因としては、平成14年の段階で男性では第5位、女性では第6位。50歳以上の男性に多い傾向にあり、60歳代にピークがあります。

 予後不良の原因としては、後腹膜にある臓器であるために早期発見が困難であり、また極めて悪性度が高く、例えば2センチ以下の小さながんであっても、すぐに周囲の血管、胆管、神経への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うことが多いからです。

 原因は明らかではありませんが、喫煙、慢性膵炎、糖尿病との関係が報告されています。

 食欲不振、体重減少、上腹部痛、腰痛、背部痛などの症状以外に、膵頭部がんでは、目や皮膚が黄色くなる閉塞(へいそく)性黄疸(おうだん)、無胆汁性の灰白色便が特徴のある症状です。

 肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って十二指腸へ排出されますが、胆管は膵頭部の中を走行するため、膵頭部にがんができると胆管を圧迫したり閉塞したりして、胆汁の通過障害を起こし、閉塞性黄疸が現れます。そこに細菌が感染すると発熱があります。

 また、膵管も胆管と同様に閉塞して二次性膵炎を起こし、耐糖能異常すなわち糖尿病の悪化がみられることがあります。さらに進行すると、胃や十二指腸、小腸に浸潤すると、そこから出血して血を吐く吐血、便に血が混じる下血が起こります。胃の出口や、十二指腸が狭くなると食物の通過障害が生じることもあり、食べた物を戻したりします。

 一方、膵体部や膵尾部に発生したがんは症状があまり現れず、腹痛が現れるまでにはかなり進行していることが少なくありません。

■膵臓がんの検査と診断と治療

 早期発見が何よりも大切なので、40歳以上で胃腸や胆道の病変がなく、上腹部のもたれや痛みがある人、体重が減少して腰痛、背部痛のある人、中年以後に糖尿病が現れた人や、糖尿病のコントロールが難しくなった人は、できるだけ早期にスクリーニング(振るい分け)検査を受けます。

 従来の血液検査、超音波検査による検診では、有効なスクリーニング検査がなかったため膵蔵がんの検診は不可能でしたが、最新鋭のMDCTと呼ばれるCTを用いて検査をすれば、切除できるくらいの膵蔵がんの診断が可能になっています。

 医師による血液検査では、閉塞性黄疸に伴う肝機能異常や、アミラーゼ値の異常、血糖異常が認められることが多くあります。腫瘍マーカーとしては、CA19—9、DUPAN2、SPAN1、CEAなどが高値を示します。しかし、がんがある程度のサイズになるまでは産生量が少ないため、それほど高値にはならず、いずれも早期診断にはあまり役立ちません。

 スクリーニング検査としては、腹部超音波(エコー)、CT、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、内視鏡的超音波(EUS)、磁気共鳴画像(MRI、MRCP)、ポジトロン放射断層撮影(PET)などがあります。特に、閉塞性黄疸がある場合は、黄疸を減らす治療のために経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD)、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)をすることにより、診断も可能です。

 区別すべき疾患としては、粘液産生膵腫瘍や、肝炎、胆石症、胆管炎、胆管腫瘍、十二指腸乳頭部がん、腫瘤(しゅりゅう)形成性慢性膵炎など黄疸の出現する疾患が挙げられます。

 膵臓がんは難治性がんの代表で早期診断が難しく、外科的切除術以外は有効な治療法が確立されていません。膵頭部のがんは、膵頭十二指腸切除術が行われ、膵臓の半分、胃の半分、十二指腸の3分の2、胆嚢(たんのう)、胆管を切除します。膵体部、膵尾部のがんは、膵臓の半分を切除する膵体尾部切除術と脾臓摘出術が行われます。

 発見された時に切除可能なのは40パーセント前後で、切除できても再発することが多く5年生存率は数パーセント程度です。

 黄疸の治療には、肝臓から胆管にチューブを通して胆汁を体の外に逃がす必要があります。あるいは、内視鏡的に狭くなった胆管にチューブを留置します。十二指腸が狭くなって食べ物が通らなくなった時には、バイパス手術を行うか、内視鏡を用いて金属のチューブを狭くなった部位に入れて拡張します。

 がんの切除が不能な場合、放射線療法と抗がん剤による化学療法が行われます。放射線療法はがんを小さくして痛みをとる効果がありますが、完全に治ることはありません。肝臓や腹膜への転移がなければ、放射線と抗がん剤との併用療法が効果的なことがあります。

 2001年よりジェムザールという新しい抗がん剤が使用できるようになり、1年以上生存する発症者も増えてきています。肝臓に転移があれば、肝臓に直接抗がん剤を注入することもあります。

 放射線療法や抗がん剤による化学療法では、副作用に注意しなければなりません。骨髄機能が抑制され、白血球や赤血球、血小板が減少したり、肝機能が悪化したり、下痢、発熱、食欲不振、吐き気などがよくみられる副作用で、治療の前には必ず血液検査や問診で副作用を確認する必要があります。


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水痘(水ぼうそう)

■全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

 水痘(水ぼうそう)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

 一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

 従って、水痘にかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

 ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水痘は、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水痘になりやすいため、緊急の処置が必要になります。

 潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

 発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

 また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

 一度かかると免疫ができるため、再び水痘にかかることはほとんどありません。しかし、水痘の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、初感染した水痘が治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

 この場合、水痘のように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

■症状に合わせた治療法

 水痘(水ぼうそう)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

 水痘の典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水痘の発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

 治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

 乳幼児期の水痘は軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

 年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

 悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

 水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

 予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

■日常生活で注意すること

 全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

 水痘(水ぼうそう)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

 また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水痘にかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

 特に、家族の中に水痘にかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

 熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

 学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

 通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。


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性器ヘルペス症

■単純ヘルペスウイルスによって発症する性感染症

 性器ヘルペス症とは、単純ヘルペスウイルスによって発症する疾患。主に性行為によって、性器へ感染して起こります。

 女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

 症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純ヘルペスウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

 症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頚部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

 女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4 週間近くを要します。

 単純ヘルペスウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、性器ヘルペスの再発型を発症し、単純ヘルペスウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

 再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。多くは1週間以内に治ります。 再発の回数は月2~3回から年1~2 回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

 性器ヘルペスの問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

 性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、性器ヘルペスは世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

 また、妊娠末期に性器ヘルペス症になると、乳児が産道感染して重症になり、死亡することが多いので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純ヘルペスウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。 

■性器ヘルペス症の検査と診断と治療

 急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

 医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

 病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純ヘルペスウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

 症状が軽いものには、単純ヘルペスウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

 急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。


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成人T細胞白血病(ATL)

■ウイルスに感染して発症する白血病

 成人T細胞白血病(Adult T-cell Leukemia:ATL)とは、レトロウイルス、腫瘍(しゅよう)ウイルスであるヒトTリンパ球向性ウイルス1型(Human T Lymphotropic Virus type 1:HTLVー1)の感染により発症する腫瘍性疾患。

 悪性リンパ腫の一種ですが、大部分が白血病化するために、成人T細胞白血病と呼ばれたり、成人T細胞白血病リンパ腫(Adult T-cell Leukemia Lymphoma:ATLL)と呼ばれたりします。1976年に、京都大学の高月医師、内山医師らによって初めて報告、命名された疾患です。

 この成人T細胞白血病(ATL)の発症は、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLVー1)を体の中に持っているキャリアの分布と一致することが知られています。キャリアは、日本では120万人、世界では1000~2000万人いると推定されています。

 日本では、従来から九州、沖縄など西南日本に多くみられますが、近年は関東、中部、近畿で増え、全国的にキャリアと発症者が存在しています。世界的には、カリブ海沿岸諸国、南アメリカ、アフリカ、南インド、イラン内陸部などにキャリアと発症者の集積が確認されています。それらの地域からの移民を介して、ヨーロッパ諸国、アメリカ合衆国などでも、キャリアと発症者の存在が報告されています。

 ヒトTリンパ球向性ウイルス1型の感染経路としては、母乳を介する母子間垂直感染と、輸血、性交渉による水平感染が知られていて、出産時や母胎内での感染もあります。輸血では、感染リンパ球を含んだ輸血により感染し、血漿(けっしょう)成分輸血、血液製剤では感染しません。なお、日本では現在、献血に際して抗体スクリーニングが行われており、輸血後の発症はなくなりました。性交渉による感染に対しても、成人T細胞白血病を発症することは極めてまれであるため、今のところ特別な対策は立てられていません。

 ほとんどが母乳感染により、乳幼児の感染者が40~60年の潜伏期を経て、成人T細胞白血病を発症します。日本で発症するのはヒトTリンパ球向性ウイルス1型のキャリア1万人について年間6〜7人あまり、発症の割合は3〜5パーセントほど。40歳以上の人がほとんどで、60~70歳に最も多く発症します。

 リンパ球はリンパ系組織、血液、骨髄の中にあり、細菌やウイルスなどの感染と戦っていますが、機能の違いからT細胞、B細胞、ナチュラルキラ-細胞(NK細胞)に分けられます。成人T細胞白血病では、T細胞が悪性化して、リンパ節や血液の中で異常に増加し、骨髄や肝臓、脾臓、消化管、肺など全身の臓器に広がっていきます。末梢(まっしょう)血液中に出現する場合、特徴的な花びらのような形状をした核を有し、花細胞と呼ばれています。

 症状としては、首、わきの下、足の付け根など全身のリンパ節がはれたり、肝臓や脾臓の腫大、皮膚紅斑(こうはん)や皮下腫瘤(しゅりゅう)などの皮膚病変、下痢や腹痛などの消化器症状がしばしばみられます。病勢の悪化によって、血液中のカルシウム値が上昇して高カルシウム血症になると、全身倦怠(けんたい)感、便秘、意識障害などを起こします。

 悪性化したリンパ球が骨髄に広がった場合には、正常な赤血球や血小板が作られなくなります。このために動悸(どうき)、息切れなどの貧血の症状や、鼻血、歯肉出血などの出血症状がみられることがありますが、他の白血病と違ってあまり多くありません。悪性化したリンパ球が中枢神経と呼ばれる脊髄(せきずい)や脳に広がると、頭痛や吐き気が認められることもあります。

 また、免疫担当細胞として重要なT細胞ががん化して、強い免疫不全を示すため、感染症にかかりやすくなり、真菌、原虫、寄生虫、ウイルスなどによる日和見感染症を高頻度に合併します。

■成人T細胞白血病の検査と診断と治療

 成人T細胞白血病は、ウイルス感染症、カビによる感染症、カリニ原虫による肺炎、糞線虫(ふんせんちゅう)症といった寄生虫感染症など、健康な人にはほとんどみられない日和見感染症が起こりやすいことで知られています。疲れやすい、熱が続く、リンパ節がはれる、皮疹(ひしん)が塗り薬でよくならないなどの症状が続く場合は、血液内科の専門医のいる病院を受診して検査を受けるようにします。

 血液の悪性腫瘍が疑われた場合、まず血液細胞の数や内容を調べる血液検査が行われます。成人T細胞白血病では、花びらのような形をした核を持つ異常なリンパ球の出現が特徴的です。また、血液検査では、ヒトTリンパ球向性ウイルス1型に感染して抗体があるかどうかも調べます。リンパ節がはれている場合には、リンパ節生検が行われ、局所麻酔による小切開でリンパ節を取り出し、顕微鏡で悪性細胞の有無を調べます。最終的に成人T細胞白血病の診断を確定するためには、血液やリンパ節の悪性細胞の中に入り込んだウイルス遺伝子の検査が行われる場合もあります。

 成人T細胞白血病と診断された後、疾患の広がりを調べるために全身の検査が行われます。目に見えない腹部や骨盤部のリンパ節がはれてないか、肝臓や脾臓に広がっていないかを調べるために、腹部CTや腹部超音波検査が行われます。胃や十二指腸に広がっていないかどうかを調べるためには、胃内視鏡検査やX線検査が必要です。肺に広がっていないかどうかを調べるためには、胸部X線検査や胸部CTが行われます。

 骨髄に広がっていないかどうか調べるためには、骨髄穿刺(さくし)も行われます。骨髄穿刺は、局所麻酔後、胸骨または腰の骨に細い針を刺して骨髄液を吸引し、顕微鏡で観察します。その他、中枢神経である脳や脊髄への広がりを調べるために、局所麻酔後に腰の部分の背骨の間から針を刺して少量の脳脊髄液を採取する場合もあります。

 成人T細胞白血病は多彩な症状、臨床経過をとることで知られていますが、一般には急性型、リンパ腫型、慢性型、くすぶり型、急性転化型の5つの病型に分類されています。

 急性型は、血液中に花びらの形をした核を持つ異常リンパ球が出現し、急速に増えていくものです。リンパ節のはれや、皮疹、肝臓や脾臓の腫大を伴うことも多くみられ、消化管や肺に異常なリンパ球が広がる場合もあります。感染症や血液中のカルシウム値の上昇がみられることもあり、抗がん剤による早急な治療を必要とします。

 リンパ腫型は、悪性化したリンパ球が主にリンパ節で増殖し、血液中に異常細胞が認められない型です。急性型と同様に急速に症状が出現するために、早急に抗がん剤による治療を開始する必要があります。

 慢性型は、血液中の白血球数が増加し、多数の異常リンパ球が出現しますが、その増殖は速くなく、症状をほとんど伴いません。無治療で経過を観察することが、一般的に行われています。

 くすぶり型は、白血球数は正常でありながら、血液中に異常リンパ球が存在する型で、皮疹を伴うことがあります。多くの場合、無治療で長期間変わらず経過することが多いため、数カ月に1回程度の外来受診で経過観察が行われます。

 急性転化型は、慢性型やくすぶり型から、急性型やリンパ腫型へ病状が進む場合をいいます。この場合には、急性型やリンパ腫型と同様に、早急に治療を開始する必要があります。

 成人T細胞白血病の治療として一般に行われているのは、抗がん剤を用いた化学療法です。抗がん剤は静脈注射や飲み薬などいろいろな種類があり、血管の流れによって全身に運ばれて悪性化したリンパ球を殺すため、全身療法といわれています。また、髄腔内注射といって、腰の正中部より細い針で抗がん剤を髄液内に入れます。

 成人T細胞白血病に対する抗がん剤は、通常、非ホジキンリンパ腫に有効な抗がん剤が用いられます。これらの抗がん剤の併用療法によって、30~70パーセントの場合で悪性細胞がかなり減少して、検査値異常が改善した状態が得られますが、最終的な治癒が期待できるのは残念ながらごく一部にとどまっています。

 成人T細胞白血病の細胞には、抗がん剤が最初から効きにくかったり、途中から効きにくくなったりする性質があり、化学療法にしばしば抵抗性を示すからです。また、見掛け上症状がよくなったとしても、再発率は非常に高いことが知られています。

 このように治療が難しい疾患ですが、よりよい治療法を開発するために臨床試験が行われています。研究段階の治療法の中で、現在最も期待されているのは同種造血幹細胞移植。化学療法により疾患がある程度コントロールされている、感染症を合併していない、全身状態がよい、50歳以下である、白血球の型が合っているドナーがいるなどの条件を満たす場合は、検討する価値のある治療法です。

 また、ミニ移植といって、造血幹細胞移植の前の処置を軽くすることにより、50歳以上の高齢者にも適用可能な同種造血幹細胞移植法も検討されています。


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脊髄炎

■脊髄の炎症で、手足の運動障害や感覚障害を発症

 脊髄(せきずい)炎とは、感染や免疫反応が切っ掛けとなって、脊髄に炎症の起こる疾患の総称。手足の運動障害や、感覚障害を引き起こします。

 脊髄は頸(けい)髄、胸髄、腰髄、仙髄からなりますが、狭い場所に神経が集中しているため、小さな障害でも重い後遺症を残すことが懸念されます。脊髄炎の原因は、原因が不明な特発性、ウイルス、細菌、寄生虫などの感染による感染性あるいは感染後性、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病あるいは類縁疾患に合併するもの、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎などの自己免疫性などに分類されます。

 正確な頻度は不明ですが、ウイルス感染に関連して発症するものが多いと見なされています。原因ウイルスとしては、帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルス、単純ヘルペスウイルス、風疹(ふうしん)ウイルス、麻疹(ましん)ウイルス、サイトメガロウイルス、ポリオウイルスなどが知られており、急性脊髄炎を発症します。

 一方、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV—1)は、慢性の経過を示すHTLV—1関連脊髄症(HAM)を起こします。エイズウイルスなども、徐々に起こってくる脊髄炎を起こします。

 原因細菌としては、結核や梅毒を始め化膿(かのう)菌が知られています。

 急性脊髄炎では、脊髄は横断性に、すなわち水平面全体に損なわれます。傷害された脊髄の部位に相当する部分に運動障害と感覚障害がみられ、加えて膀胱(ぼうこう)直腸障害を生じます。胸髄が損なわれる頻度が高く、急に両下肢がまひし、主に胸から下にビリビリするしびれ感が起こります。背中や腰に痛みを感じることもしばしばで、排尿、排便の感覚がなくなり、たまりすぎたり、漏らしたりします。頸髄が損なわれると、四肢にまひと感覚異常が生じます。症状は急速に進行し、数日でピークに達します。

 障害が横断性でなく、部分的である場合もあります。例えば、運動神経の通っている脊髄の前方部分だけが損なわれると、運動障害だけが現れます。

 HTLV—1関連脊髄症では、慢性進行性の両足のまひが特徴で、痛みやしびれ、筋力の低下によって歩行障害を示します。同時に、自律神経症状がみられ、特に排尿困難、頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害は初期より多くみられます。その他、進行例では皮膚乾燥、起立性低血圧、インポテンツなども認められます。

■脊髄炎の検査と診断と治療

 急性脊髄炎では、まず感覚障害の分布を参考にして脊髄MRIを行い、脊髄の腫脹(しゅちょう)や病変部を確認します。次に、髄液検査によって炎症の存在を確認します。髄液では、蛋白(たんぱく)の量や細胞の数が軽度に増加しています。病因を調べるためには、ウイルス抗体価、髄液細菌培養、膠原病および類縁疾患のチェックなどが必要です。

 HTLV—1関連脊髄症(HAM)では、慢性進行性の両足のまひや排尿障害、感覚障害などの症状と、血清および髄液で抗HTLV—1抗体が陽性であり、ほかに原因となる疾患がないことを確認します。髄液検査では、軽度のリンパ球性細胞の増加、軽度から中等度の蛋白増加のほか、核の分葉したリンパ球を認めることがあります。脊髄MRIでは、胸髄を主にした著しい脊髄委縮が認められます。

 急性脊髄炎の治療では、安静を守った上、抗ウイルス薬や、アレルギー反応を抑えるために副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を投与したりします。頸髄障害による呼吸不全がみられた時は、呼吸管理も必要になります。排尿障害に対しては、膀胱カテーテルの留置が必要になる時も多く、慢性期になっても自己導尿を行う場合もあります。薬物療法は1カ月程度で終了し、早期から積極的にリハビリテーションを行います。

 HTLV—1関連脊髄症の治療では、自己免疫反応の関与が推定されているため、ステロイド療法やインターフェロン療法を行います。
 脊髄炎では、寝たきりとなって、床擦れや膀胱炎などの合併症が起こりやすいので、これを予防するためにエアーマットを使用し体位の変換を頻回に行います。関節の曲げ伸ばしができなくなる拘縮を防ぐため、歩行訓練など早期からのリハビリテーションが大切です。


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前立腺肥大症

高齢男性のほとんどがかかる病気

 尿道が圧迫されて、排尿障害をもたらすことが知られている前立腺肥大症は、高齢の男性によく見られる病気です。

 年齢と深い関係にあり、40、50代で症状が出始め、60歳を過ぎると半数以上の人が夜間頻尿と放尿力低下を訴え、65歳前後で治療を開始する人が多くなります。そして、80歳までには80パーセントの人が前立腺肥大症になるとみられています。

 程度の差こそあれ、高齢の男性はほぼ全員が発症するため、男性の更年期症状とか、老化現象の一種という見方もできます。

 尿道付近の前立腺組織が肥大して、尿道を圧迫するために起こる病気であり、ガンとは違って良性の増殖ですので、生命にかかわるような病気ではありませんが、放っておくと尿閉といって尿が全く出なくなることもあります。

 症状には、第1期から第3期までがあります。

【第1病期(膀胱刺激期)】

 夜間にトイレに行く回数が多くなる、尿の勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる(排尿障害)などの症状が出てきます。

【第2病期(残尿発生期)】

 尿をした後もすっきりとせず、残っているような感じがする(残尿感)といった症状が出てきます。

【第3病期(慢性尿閉期)】

 昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになります。時には、尿が全く出なくなってしまうこともあります(尿閉)。

●前立腺肥大症の検査と診断

 前立腺肥大症は、男性であれば誰でもなる可能性があります。50歳を過ぎて尿の出が悪いと感じたら、一度泌尿器科の検査を受けてみてください。

 前立腺肥大症の診断には、一般的に次のような検査が必要です。

問 診

 自覚症状としての排尿障害の程度や、他の疾患との鑑別をするため、既往歴などを詳しく聞きます。

尿流量測定

 他覚所見として、排尿障害の程度を数値化して表します。

直腸診

 前立腺の大きさ、硬さ、表面の状態(なめらかさ・凹凸)がわかります。

超音波診断

 前立腺の腹側の状態、残尿のおおよその量も推定できます。

血液検査

(腫瘍マーカーの測定)

 腫瘍マーカー検査は、前立腺ガンとの鑑別のために行います。

●前立腺肥大症の治療法

【薬物療法】

 現在行なわれている薬物療法は、

1. 機能的閉塞に対するα1-ブロッカー

2. 機械的閉塞に対する抗アンドロゲン剤

3. 不安定膀胱に伴う刺激症状(頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁)に対する生薬・漢方薬があります。

 これらの3項目が基本となり、第一選択薬としてα1-ブロッカーを使用し、機能的閉塞を解除することから行われます。

■主な治療薬     

α1-ブロッカー

  排尿時は膀胱頸部の開大を助け、尿勢を増し、蓄尿時は膀胱の過活動を抑制し、日中および夜間の頻尿を軽減させます。 めまい・ふらつき・立ちくらみなどの低血圧に伴う症状が生じる場合があります。

抗アンドロゲン剤

 前立腺を縮小させ、腺腫による直接的な機械的閉塞を改善させます。 肝機能障害、性機能障害や女性化乳房などがあります。

生薬・漢方薬

 排尿困難、頻尿、尿意切迫、残尿感など複雑な自覚症状を改善させるといわれていますが、どのように作用するかは解明されていません。 軽度の消化器症状を認める程度です。

【手術的治療】

 手術に踏み切る一定した基準はありません。病期でいえば第2病期以降で、薬物療法で思うように症状が改善しない場合や、残尿が100ml以上あり、尿閉を繰り返すような場合に手術を考えます。

■主な手術法

経尿道的前立腺切除術(TURP)

 先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。 体内に入った灌流液が電解質のバランスを崩し、吐き気や血圧の低下などを起こすTURP反応と呼ばれる副作用が起こることがあります。

レーザー治療

 尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。 組織を焼いてしまうため、ガンの有無を調べられません。また、組織が壊死し脱落が起こるまで、症状の改善は見られません。

温熱療法

 尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF派やマイクロ派を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。 根治的な治療ではないため、半年から一年で症状はもとに戻ってしまいます。

尿道バルーン拡張法尿道ステント挿入法

 肥大結節によって狭くなった前立腺部の尿道を物理的な力によって押し広げたり、管を挿入して尿道を確保する方法です。 救急的な意味合いの強い対処療法と位置付けられているため、あくまで手術ができない患者さんのための処置です。

●前立腺肥大症にならないために

 前立腺肥大症の最大の危険因子は、加齢です。これを防ぐことは誰にもできません。しかし、身に着けたほうがよいと考えられている生活習慣が、いくつかあります。それらをご紹介します。

1.オシッコを我慢しない

 排尿を我慢すると尿閉になることあります。

2.体を冷やさない

  特に下半身を冷やさないようにし、骨盤内の血液の循環を常に良い状態に保つようにする。

3.適度な運動を

  血液の循環を良くし、前立腺のうっ血を予防する。

4.便秘に気を付ける

  膀胱も腸と同じ平滑筋なので、便秘の人は排尿状態が悪くなっている可能性があります。

●前立腺肥大症になったら

 すでに前立腺肥大症になってしまった方は、上記4項目に加えて下記のことも守ってください。

1. 薬には十分注意する

 薬の中には急性尿閉を起こすものがありますので、他の病院で診療を受ける時は、医師に必ず前立腺肥大症であることを伝えてください。

2. 水分を十分とる

 夜間頻尿を恐れるあまり、水分摂取を抑えると脱水状態になり腎機能障害を起こすことがあります。

3. 過度なセックスは控える

 神経質になる必要はありませんが、長時間にわたる過度なセックスなどは避けたほうが無難です。

4. 手術後は安静に

 水分を多めに取り、こまめに排尿することが大切です。また、手術した部分を圧迫するような運動は避けてください。


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爪甲軟化症

■ケラチン不足のために、つめが異常に軟らかい状態

 爪甲(そうこう)軟化症とは、成人のつめの甲が異常に軟らかい状態。

 つめは皮膚の付属器で、皮膚の最も表面にあって、軟ケラチンからなる角層が変化したもので、硬ケラチンで主に形成されています。ケラチンとは20種類のアミノ酸が結合してできた蛋白(たんぱく)質で、水分をよく含んで弾力性に富み、紫外線や衝撃など外部刺激から指先を守るクッション効果やバリア効果があります。

 そのつめの硬さは、人によってかなり違います。赤ん坊のつめは大変軟らかく、年齢を増すごとにだんだんと硬い、弾力のあるつめとなってくるものです。そして、さらに年を重ねると弾力のない、硬いつめに変わっていきます。つめは指先の保護の役割と細かい作業をするために必要で、もしも成人で赤ん坊のつめのように軟らかいつめをしていると、細かい指先の仕事は難しくなってしまいます。

 成人の爪甲軟化症では、つめを構成している成分の一つであるケラチンが不足することから、徐々につめの甲が薄く、軟らかくなります。色は青白く、曲がりやすくなります。よくカルシウム不足だとつめが軟らかくなどといわれますが、カルシウムの不足とは関係ないようです。

 爪甲軟化症は手や足に汗を多くかく人に起こりやすく、多汗のために、つめの甲の中の水分が多くなってしまうためと考えられています。若い女性に比較的多くみられます。また、クリーニング業の人などで、アルカリ性の薬品が長くつめに作用した場合、爪の甲がへこむ匙状(さじじょう)づめと一緒に生じることもあります。その他、マニキュアを多用する人、リウマチのある人にも多く見受けられます。

 全身的な栄養状態とは、無関係です。 ほとんどの場合、内臓の疾患とは関係ないようです。

■爪甲軟化症の検査と診断と治療 

 爪甲軟化症を起こし得る外的物質や薬品、あるいは皮膚疾患、多汗症などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

 クリーニング業の人などに生じる匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっては、食事で鉄分を意識的に摂取することがお勧めです。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。


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早漏

■パートナーが満足しないうちに、男性が短い時間で射精する状態

 早漏とは、性交の際に陰茎を膣(ちつ)内に挿入した男性が、女性が性的に満足しない短い時間で射精する状態。対義語は遅漏です。

 男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起(ぼっき)は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

 性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

 すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。

 これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。勃起は完成しているのに、射精に至るまでの時間が短い状態が、この早漏です。

 「自分が早漏ではないか」と思う男性にとって、その定義が気になるところですが、明確に定まっているものではなく、基準がいろいろとあります。

 例えば、膣内に挿入後1~2分以内の射精、または挿入前の射精。性交時のピストン運動が10回以内である射精。パートナーの女性が性的満足に達する前の射精。時間や回数は関係なく、射精をコントロールできない状態。

 基準はあっても、射精までの時間は人によって異なり、何分で起こるのが正常であるかは決められません。短い時間であっても、パートナー側に特に不満がないのであれば、何も気にすることはありません。

 元来、動物の雄は早漏です。外敵から身を守りながらの行為ですから、それも当然です。人間だけが早漏で悩むのは、種の保存行為が快楽の一つでもあるため、相手が十分な満足感を感じないと問題になるからです。

 ほとんどの場合、男性の身体機能には問題はありません。性交の際に女性のほうが性的満足を得るのが遅いため、男性側が自然に任せて射精した場合は早漏となります。また、性行為に不慣れな男性は、自分の性欲をうまくコントロールできないため早漏になりやすいもの。これらが原因であれば、特に心身には問題はありません。

 ただし、包茎による皮膚や粘膜の刺激への過敏、神経伝導疲労による大脳の射精抑制機能低下、加齢などによる勃起神経の衰えで射精をコントロールする射精管閉鎖筋の筋力弱化、慢性尿道炎や前立腺(せん)などの疾患といった身体機能に問題があることもあります。あるいは、精神的、心理的なストレスやプレッシャー、焦りなどが原因のことも多々あります。

 これら以外にも原因が考えられ、互いに複合的に作用して早漏となる場合も少なからずあります。

■早漏の検査と診断と治療

 精神的、心理的な原因で射精をコントロールできず、それが長い期間続くような場合は、精神科か泌尿器科の専門医を受診します。包茎によって、陰茎の皮膚や粘膜が刺激に対して過敏になっている場合は、泌尿器科か整形外科の専門医を受診します。

 早漏の治療方法で、完全なものは存在しません。原因がさまざまですから、包茎など早漏を引き起こしている原因を解消すれば、改善する場合もあります。しかし、原因が精神的、心理的なものである場合は、専門の医師のカウンセリングを根気よく受けることが改善への道といえます。

 包茎の人が早漏になった場合、包茎手術によって早漏も改善する例が多数あります。また、亀頭にダーマライブなどの薬剤を注入する治療法も、亀頭への刺激に対するクッションになるので、早漏防止に効果を発揮します。

 陰茎の手術には、陰茎背部神経遮断術もあります。感覚神経過敏による早漏で、他の精神的要因がなく、薬物治療では効果がない場合には有効です。局部麻酔で30分ほどで終わり、術後すぐ日常生活に戻れるほど簡単です。

 薬物治療では、うつ病やパニック障害の治療薬である抗うつ剤(SSRI)に射精抑制効果があることがわかってきたため、応用して使用されています。抗うつ剤のうちでは、フルオキセチン、セルトラリンなどが最も有効とされています。しかし、副作用である勃起障害や射精抑制効果による射精障害にならないように、使用は制限されています。

 近年、特異的な抗うつ剤(SSRI)で、短時間作用型選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるダポキセチンも、新薬として使用されています。ほかに、射精を遅らせる効果のある薬剤としては、オピオイド、コカイン、ジフェンヒドラミンがあります。

 泌尿器科では、射精抑制の訓練を受けることもできます。早漏を改善するのに、性交前に精神安定剤や酒を用いる方法や、リラックスを心掛ける方法もあります。


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ターナー症候群

■低身長を特徴とし、女性だけに起こる先天的な疾患

 ターナー症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。

 他にも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。

 ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達が見られない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

 ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

 染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

 ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

 ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

■ターナー症候群の検査と診断と治療

 早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

 また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

 ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。

 ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

 成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

 成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

 一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。


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体臭


■体臭のメカニズム

《汗と体臭と、個性と》
 広辞苑によると、「体臭」とは「皮膚の汗腺・皮脂腺の分泌物から生ずる一種の臭気」、現代実用辞典に至っては、「からだのにおい」と素っ気ない表現で片付けています。
 しかし、汗をかく季節には、体臭を気にしないでいられる人は、少ないのではないでしょうか。特に潔癖症、臭い過敏症ともいえる現代人にとっては、自分や他人の体臭が気になります。そこで、そもそも体臭とは何かといった点から、考えてみましょう。
 体臭ができるメカニズムは、ほぼ解明されています。皮脂や汗など脂質の酸化が、その大きな原因です。同時に、体臭が「HLA」という遺伝子に関係しており、人によって臭いの種類も違えば、臭う強さも違うなど個人差があることも、わかっています。
 私たち人間が動物である以上、他の動物と同様に、その個体を識別するものが「体臭」といったところが、妥当な認識ではないでしょうか。このように考えれば、「一般的に体臭が薄い」といわれる日本人でも、人によって臭いがほとんどなかったり、あるいは体臭そのものがよい香りだという幸運な人がいる一方、臭いが強かったり、あるいは自分の体臭は悪臭だと思い込んで悩む人がいるのも、納得できます。
 「自分の体臭は悪臭で、人に嫌われるのではないか」といった不安や悩みを持つことこそが、現代人の深刻な心の病の一つだとも、一説にいわれています。まずは、自分の個性の一つとして、体臭を前向きにとらえることから、対処してみたいものです。 
《体臭の発生源とその理由》
 皮脂腺ーーー皮脂を分泌し、体の表面を守り、潤いを与える。ーーー空気に触れることで酸化し、臭いが生じる。
 汗腺(エクリン腺)ーーー汗を出すことで、体温と水分を調整している。ーーー汗そのものは、ほとんど臭いがない。ただ、上記の皮脂と混ざり合い、雑菌が繁殖するなどして、臭いを発生させる。 
 汗腺(アポクリン腺)ーーー異性へのアピール!?ーーー脇の下、乳輪、外陰部など限られた部分にのみあり、この腺から分泌される汗には脂肪、鉄分、尿素、アンモニアなどが含まれ、汗そのものに大なり小なり臭いがある。 
《実は、においに恋してる?》
 興味深い調査結果が、あります。未婚の女性に、男性の着たTシャツの「におい」をかいでもらい、好き嫌いの関係を探ったところ、父親由来のにおいの遺伝子(HLA)を多く持つ男性に対して、好意を持つ傾向があったというのです。
 これを推測していくと、女性は父親の、男性は母親のにおいと似ている異性を好むという仮説も、成り立ちます。また、特に脇の下のにおいは、思春期以降に出てくるため、フェロモンと関係しているといった説も、根強くあります。とかく否定されがちな存在ですが、体臭はもしかしたら、異性に好き嫌いを判定させる好材料なのかもしれませんね。
 因みに、日本ではあまり発達してこなかった化粧品に、香りの強い順に「香水」、「オードトワレ」、「コロン」などの種類がある「フレグランス」があります。まことしやかに語られてきた説では、「体臭が日本人より強い欧米人がにおいを隠すために、フレグランスを使う文化を発達させてきた」としていますが、まったくの俗説に属します。彼らが体臭を気にし始めた歴史より、香料を愛用し始めた歴史のほうが、圧倒的に古いからです。
 このフレグランスを選ぶ際、おおかたの人は「香りが好き」といった基準で、つい選びがちなのではないでしょうか。しかしながら、フレグランスは自分の体臭や体温と相まって香りを醸し出すもの。最初から「体臭ありき」で発想し、選ぶのが正解なのです。
 かの女優、マリリン・モンローがシャネルNo.5をネグリジェにしていたという話は、あまりにも有名です。シャネルの香水がモンローの体臭と組み合わされた時、とても魅惑的な香りを放ったことと想像されます。
 自分の体臭と体温、それとの組み合わせで選ぶフレグランス。そのような視点で楽しめば、体臭そのものが自分の魅力をいっそう引き出す要素となるのです。香水やオードトワレの場合は、香りが強くて持続性もあるので、使用する量に気を付けましょう。自分にとってはよくても、周囲に不快感を覚えさせたり、必要以上に「派手な人」といった印象を与えることもあるので、配慮をお忘れなく。 
《こんな臭いにはご用心》
 体から発せられるにおいには個人差があり、においの強さもまた人それぞれではありますが、時には、臭いの原因が病気に基づくこともあります。
 例えば、糖尿病になると甘い臭いがするようになり、甲状腺機能亢進症やパーキンソン氏病になると、皮脂腺が刺激され、独特の体臭が出るようになるといわれます。また、口臭がひどい場合は、内臓疾患の可能性もあります。
 大切な体をしっかりセルフチェックするためにも、日頃の自分の体臭を知っておくことが、大切となります。「体臭がいつもと違う」、「体のにおいが変わってきた」、「ケアをいろいろしても、臭いが軽減されない」…こんな時は、一度専門医に相談してみましょう。 

■体臭防止の傾向と対策

《清潔第一。食べ物注意》
 体臭は個性、あなたの魅力とはいえ、猛暑の夏に体臭が強くなっては、自分でもうっとうしいもの。周りから「汗くさい」なんていわれないためにも、生活や食事に一工夫していきましょう。
 臭い対策でまず最初に押さえておきたいのが、気持ち的なポイント。「汗をかきたくない」、「汗をかくと臭い→人に嫌われる」といった頭の中の思考回路を一度、断ち切ることです。
 なぜかといえば、気にすれば気にするほど、汗をかく要因になるからです。これを「精神性発汗」といいます。例えば、緊張すると冷や汗が出たり、手に汗が浮いたりするのが、精神性発汗です。「汗をかくことは自然なことで、汗へのケアをすればよい」と気持ちを切り替えて、必要以上の心配は抑えていきましょう。
 次にケア。こちらは清潔第一。毎日、お風呂に入る、まめに下着を取り替えるといったことが基本ですが、近年はさまざまな制汗剤が出回っているので、出掛ける前に使用しておくのもよいでしょう。
 因みに、制汗剤とデオドラント剤では、もともとの発想が違うことをご存知ですか。制汗剤は、汗腺に働きかけて汗を出にくくするもの。デオドラント剤のほうは、臭いを作り出す雑菌を退治したり、繁殖を阻止するもの。覚えておくと、何かと便利でしょう。
 第三に、汗をかいたら、こまめの対処を。汗を拭(ふ)き取り、サッパリと。こちら用にもシート状の拭き取り剤が多数市販されているので、便利です。汗をかけば、誰でも気持ちが悪いもの。肌だって、同じなのです。汗をかいたまま放置されれば、肌が臭いを発生させる。つまり、汗臭さや体臭が強くなるのは、「不快だ」という肌からのサインともいえましょう。
 そして、もう一つ気を付けたいのが、食生活。下表で示すように、基本的に肉類の多い食生活をしていると、体臭は強くなるといわれています。欧米人の体臭が強いのも、食生活に一因があるとされています。
 逆に多く取りたいのが、抗酸化食品。先にも述べた通り、体臭の原因は脂質などの酸化。酸化を防げば、体臭も抑えることができるわけです。 
《体臭を抑えるために控えたい食品》
 動物性たんぱく質
 動物性たんぱく質や脂肪を多く含む肉や乳製品を多く摂取すると、脂質の分泌が増え、臭いのもととなる。汗も、かきやすくなる。肉・牛乳・チーズなどは、控えめにしよう。
 辛いもの、臭いの強いもの
 辛いものを食べると汗が出るのは、誰もが経験したことがあるはず。また、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウなどが臭いの原因であることも、周知の事実。夏は食べる時間や場所を選びたい。 
《意識して取りたい抗酸化食品》
 ビタミンE
 小麦胚芽、植物油、アーモンド、ピーナッツ、うなぎ、緑黄色野菜など
 ビタミンB2
 どじょう、うなぎ、レバー、さば、干ししいたけ、強化米、納豆など 
《部位別の臭いの原因とケア法》
 特に気になる部位には、適材適所の臭い対策を。
 頭皮や髪に皮脂がたまると、細菌に分解されて、臭いが発生。たばこなどの臭いが移りやすいことも、悪臭の原因に。 まめの洗髪を心掛ける。また、濡れていると臭いが移りやすいので、よく乾かす。
 唾液の分泌が少なくなると、細菌が繁殖し、食べカスの分解や発酵が進むために、悪臭が発生。 よく噛んで食べて、唾液の分泌を促す。食後は歯磨きをし、臭いの原因となる食べカスを残さない。口の中が渇いたら、適度な水分を補給する。ない場合には、ガムなどでも。
脇の下
 アポクリン腺による独特の臭いが発生。 吸汗性の高い下着を身に着ける。消臭剤を利用する。食生活に注意する。
生殖器
 アポクリン腺と恥垢によって、臭いが発生。 こまめに洗う。ただし、石鹸などの洗い残しがあると、それ自体が臭いの原因に。シャワーなどで洗い流す程度が、最もよい。
 足の裏に密集したエクリン腺からの汗を、雑菌が分解。脂質とも混ざり合い、悪臭が発生。 程よいゆとりがあり、通気性の高い靴を選ぶ。2日続けて、同じ靴を履かない。とりわけ冬は体が汗をかかないぶん、手足が汗をかきやすくなる。時々、靴内をアルコールで拭くなどして、靴内の雑菌を排除する。足も、アルコールの入ったウエットティッシュで拭いたり、汗を抑える足用スプレーを使う。


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大腸がん

●食生活の欧米化で増加する一方

 大腸がんとは、大腸の粘膜に悪性の腫瘍(しゅよう)ができた疾患です。発生部位によって、大腸の大部分を占める結腸にできた結腸がんと、肛門(こうもん)までの10センチ前後に相当する直腸にできた直腸がんとに分類できます。

 従来、日本人には比較的少ないがんとされてきましたが、近年、増加する一方で、年間約6万人の罹患(りかん)者数は、胃がんに迫っています。この大腸がんの増加の原因として、食生活の欧米化による、食物繊維の摂取不足と動物性脂肪の摂取増加が挙げられます。

 大腸がんの発生部位でみると、直腸と結腸で半々の割合ですが、結腸の中でもS状結腸がんが増加する傾向にあります。罹患の頻度は男性、女性ともに同じで、60代が一番多く、70代、50代と続きます。若年者の大腸がんでは、遺伝的な素因もあると見なされています。

●結腸がんの症状は腹痛と血便

 盲腸、結腸、直腸の3部からなる大腸のうち、結腸にできた悪性の腫瘍が、結腸がんです。結腸は、上行、横行、下行、S状の各結腸からなります。

 長さ約1・5メートルに渡る大腸の壁は、内腔側から粘膜(固有層)、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)下層という5つの層に分かれています。このうち、がんが粘膜内から粘膜下層にとどまっているものを早期結腸がん、固有筋層以下にまで進んでいるものを進行結腸がんといいます。

 最もがんができやすいのは、直腸に近いS状結腸で、下行結腸、横行結腸、上行結腸の順に少なくなっていきます。 小腸から送られてきた内容物である便のもとは、管腔(かんこう)の広い上行結腸に入った時には、まだ水のような状態です。管腔の狭い下部の下行結腸からS状結腸に至って、特に硬くなるために腸壁を傷付けてしまうことがあるのが、S状結腸や下行結腸にがんが多い理由です。同時に、硬くなった便の滞留時間が長くなることも、悪影響を与えると考えられています。

 結腸がんの初期症状として最も多いのは、腹痛。右側の結腸、すなわち盲腸及び上行結腸、横行結腸右半分のがんでは、80パーセントに腹痛が認められ、嘔吐(おうと)を伴うことが少なくありません。また、がんの部位からの出血によって血便が出ることがありますが、これは鮮やかな赤色ではなく、便が全体に暗赤色に変わったり、黒っぽい血塊が便に混じったりします。

 左側の結腸、すなわち横行結腸左半分、下行結腸、S状結腸では、がんのために腸が狭窄(きょうさく)を起こすことが多く、便秘と下痢が交互に繰り返して起こったり、腸の一部がふさがる腸閉塞(へいそく)症を起こしたりします。 

 早期症状としては、やはり腹痛が最も多く、差し込むような痛みが多く生じます。血便などの下血症状も、半数の人に認められます。

 しかし、結腸がんでは、発病してから2~3年はほとんど自覚症状を感じないままに過ぎ、貧血が進行して倒れるようになってから、初めてがんと知ることもあります。

●ポリープから発生する直腸がん

 大腸のうち、直腸の粘膜にできた悪性の腫瘍が、直腸がんです。直腸は便の滞留時間が長いため、腸壁が傷付くことが多く、さらに排便時の硬い便がさまざまな刺激となり、がんの前身である腺腫(せんしゅ)性ポリープを発生させる原因になると考えられています。

 直腸がんでは、この腺腫性のポリープから発生するものが大部分で、腺腫を介さず直接粘膜からがんが発生するものは少数です。

 代表的な初期症状は、血便。がんの前身であるポリープが大きくなると、便秘しがちになり、便がポリープを傷付けて出血を起こします。さらに、ポリープにがんが発生して広がってくると、崩れて傷付き、出血するようになります。

 肛門からの出血は、痔(じ)出血と間違えるほど真っ赤ですから、非常にはっきりした自覚症状といえます。血液だけではなく、粘液の排出もしばしばあり、がんが進むと、悪臭のある腐敗性のものが排便と同時に排出されます。

 また、直腸の炎症を一緒に起こすため、下痢と度重なる便意がくることもあります。がんのために直腸が狭まると、便が細くなり、周囲に血液が付いてきます。出血を繰り返すと、貧血が強くなり、めまいを起こすようにもなります。

 痛みは初期にはほとんどなく、がん病巣の潰瘍(かいよう)が大きくなったり、直腸の狭窄が強まったりすると、腹部膨満や腹痛、あるいは肛門や臀部(でんぶ)に放散する痛みが起こります。

 しかし、これといった症状がほとんどないうちに突然、腸閉塞症として発病することもまれではありません。

●医師による検査、診断、治療

 大腸がんは、早期のうちに発見し患部を取り除けば、ほぼ100パーセント近く完治できる病気です。無症状の時期にがんを発見するには、便の免疫学的な潜血反応を調べます。簡単に行えて体に負担のない検査で、陽性と出た場合には、大腸X線検査や大腸内視鏡検査が行われます。しかし、陽性と出ても必ず大腸がんがあるわけではなく、逆に進行した大腸がんがあっても陰性になることもあります。

 排便時の出血や便通異常がある場合には、血液検査で貧血の有無、腹部のX線検査でガスの分布の状態を調べます。腹部の触診では腫瘤(しゅりゅう)、すなわち、こぶを触れることがあり、直腸がんでは肛門から指を入れて触るだけで、ポリープ、がんなどの有無を診断できることもあります。ポリープがあれば、内視鏡でポリープ全体か部分を採取して、組織検査を行い、良性か悪性かを診断します。

 確定診断をするためには、食事制限と下剤により大腸を空っぽにして、肛門から造影剤を入れてX線写真を撮る注腸検査と、下剤で大腸を洗浄し肛門から内視鏡を挿入して直接大腸の内腔を観察する大腸検査が必要です。大腸内視鏡検査は、挿入技術の進歩と器械技術の進歩により、苦痛も少なくかつ安全にできるようになっています。

 内視鏡検査では、直接大腸の内側を観察し、異常があれば一部をつまみ取って顕微鏡で良性か悪性かを調べます。ポリープやごく早期のがんであれば、内視鏡で簡単に治療が可能で、診断と治療を同時に行うことも可能。

 また、がんの進行度によっては、周囲の臓器への広がりや、肝臓やリンパ節への転移の有無を調べるために、腹部の超音波検査、CT検査、MRI検査を行うこともあります。近年では、早期がんの進行度を調べて治療方針を決めるために超音波内視鏡検査を行うこともあります。

 大腸がんの治療の原則は、がんを切除することです。がんが粘膜下層までにとどまっている早期がんの中でも、粘膜下層の浅いところまでであれば転移の心配はなく、内視鏡での治療が可能です。また、肛門に近いところにできた早期の直腸がんでは、おなかを開けずに手術を行います。

 リンパ節転移の可能性があり内視鏡治療ができないのものや、固有筋層以下にまで達している進行がんでは、外科手術が必要です。手術では開腹し、腫瘍を含めた大腸の一部を切除してリンパ節をきれいに取り除き、残った腸をつなぎ合わせます。

 また、近年では小さな傷で手術ができる腹腔鏡を用いた治療が急速に普及してきており、早期がんばかりではなく隣接臓器に浸潤していない進行がんに対しても、行われるようになってきています。

 進行した直腸がんでは、肛門から離れている場合には肛門の筋肉が温存できる低位前方切除術が行われ、最近ではさらに、術後の性機能や排尿機能を温存するように必要最低限の手術が行われています。

 それ以外では、人工肛門(ストーマ)が必要なマイルス法で手術が行われます。人工肛門もさまざまな装具が開発されており、普通に社会生活が送れるようになっています。

 がんが広がりすぎていて不能な場合には、抗がん薬を用いた化学療法、放射線療法、免疫療法などが行われます。

●生活習慣の改善アドバイス

 大腸がんの発生を防ぐには、生活習慣を改善することです。完全ではありませんが、ある程度の予防は可能です。

●食物繊維を豊富に含む、野菜、いも類、穀類、茸類、海草類などを積極的に取る

●主食はなるべくご飯にする

●動物性の高脂肪、高蛋白(たんぱく)の食物を過度に取りすぎない

●1日3回決まった時間に食事をする

●禁煙する

●お酒は適量を守る

●規則正しい排便習慣を身に着け、便意を我慢しない

●生活リズムを整え、毎日適度な運動をする 


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大腸憩室

■大腸粘膜の一部が腸壁外へ袋状に突出した状態

 大腸憩室とは、腸管内圧の上昇などによって、大腸粘膜の一部が腸壁外へ嚢胞(のうほう)状に突出した状態。憩室は消化管の一部が嚢胞状に突き出したものを指し、嚢胞は液体を満たした袋を意味します。

 大腸憩室が多発した状態を大腸憩室症といいます。憩室壁に筋層がある先天性憩室と、筋層を欠く後天性憩室に分けられますが、大部分は後天性憩室で比較的高齢者に多くみられます。

 憩室のできるところは、腸壁の筋層が弱く、血管の出入りしているところで、腸管膜の付着部に好発します。従来、日本人は右側の大腸である盲腸、上行結腸に多くでき、欧米人は左側の大腸であるS状結腸に多くできるのが特徴でした。近年では食事や生活様式が欧米化してきた影響で、日本人にもS状結腸に憩室ができるようになり、また、全大腸型といって左右の大腸に多発する傾向もみられます。

 その原因として、食習慣の欧米化とともに肉食が多くなって、食物繊維の摂取量が減少したため、便秘や腸管のれん縮、ひいては腸管内圧の上昇を起こしやすくなったことが挙げられます。そのほか、超高齢化社会が到来して、加齢によって腸管壁が脆弱(ぜいじゃく)化した高齢者が増えたことも挙げられます。

 糞便の(ふんべん)の硬さ、通過の関係から、盲腸、上行結腸の憩室は比較的無症状です。S状結腸の憩室は、時に下痢、軟便、便秘などの便通異常、腹部膨満感、腹痛などの腸運動異常に基づく症状を起こします。

 合併症として憩室出血や憩室(周囲)炎を起こし、強い腹痛、下痢、発熱、血便などを伴います。憩室炎は憩室内に便がたまって起こるとされ、進行すると穿孔(せんこう)、穿孔性腹膜炎、狭窄(きょうさく)による腸閉塞(へいそく)、周囲臓器との瘻孔(ろうこう)形成を生じ、開腸手術が必要なことがあります。

■大腸憩室の検査と診断と治療

 合併症を予防する目的で、できるだけ繊維成分の多い食事を摂取し、便通を整えるように心掛けることが大切です。合併症を疑う症状が現れた場合は、できるだけ早く消化器内科を受診します。

 大腸憩室の診断には、注腸造影X線検査が最も有用です。大腸内視鏡検査でも、粘膜面に円形または楕円(だえん)形のくぼみとして認められますが、憩室そのものの診断能力は注腸造影X線検査よりも劣ります。しかし、合併症として出血を伴う場合は大腸内視鏡検査が第一選択で、大量出血を伴う場合は血管造影が必要となります。合併症として憩室(周囲)炎を伴う場合は、腹部超音波、CT、MRIなどの検査が有用です。

 なお、注腸造影X線検査で映し出された憩室とポリープの鑑別がはっきりしない場合は、大腸内視鏡検査が必要で、ポリープとわかったら、内視鏡的ポリペクトミーで切断します。

 一般には、憩室が発見されても、無症状であれば放置しておいてもかまわず、特に治療の必要はありません。腹痛など腸運動異常に基づく症状がある時は、薬物の投与が行われます。憩室炎を合併した場合は、入院の上、絶食、輸液、抗生剤の投与が行われます。このような治療で憩室出血の多くも止血しますが、大量出血が持続する場合は、血管造影や内視鏡検査を行った際に止血術が行われます。

 保存的治療で軽快しない場合、再発を繰り返す場合、腹膜炎や腸閉塞の場合は、外科的治療が必要です。


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ダウン症候群

■染色体の異常により、体と精神の発達が遅れる疾患

 ダウン症候群とは、染色体の異常によって、精神遅滞とさまざまな体の異常が生じる疾患。ダウン症とも呼ばれます。

 22対の常染色体と2本の性を決定する染色体を合わせて46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態をトリソミーと呼びます。新生児で最もよくみられるトリソミーは、21番染色体が3本ある21トリソミー。ダウン症候群の症例のうち、約95パーセントの原因が21トリソミーです。

 卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。まれに、21番染色体と別の染色体が互いに切断されて結合している転座型や、受精後の初期細胞分裂の際に染色体の不分離が起こるモザイク型によって、ダウン症候群が起こることもあります。

 1866年に英国の眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンが初めてその存在を報告し、以来、本症例にみられる異常所見が多く報告され、現在のダウン症候群としての症状を導いてきています。しかし、1959年にフランス人のジェローム・レジューンによって、21番染色体がトリソミーを形成していることが初めて証明されるまでは、その原因は不明でした。

 日本では現在、新生児1000人に1人の割合でダウン症候群がみられます。母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、ダウン症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。

 ダウン症候群の子供では、精神と体の発達が遅れます。知能指数(IQ)には幅がありますが、正常な子供の知能指数が平均100であるのに対し、平均でおよそ50。聞くために必要な能力より、絵を描くなどの視覚動作能力が優れている傾向があるため、典型的には言語能力の発達が遅くなります。

 身体的な特徴として、特異な顔貌(がんぼう)と多発奇形が挙げられます。頭が小さく、顔は広く偏平で、斜めにつり上がった目と低い鼻を持つ傾向があります。舌は大きく、耳は小さくて頭の低い位置についています。手は短くて幅が広く、手のひらを横切るしわが1本しかありません。指は短く、第5指の関節は3つではなく2つしかないことが多く、内側に曲がっています。足指の第1指と第2指の間が、明らかに広くなっています。

 乳児期には体の筋力が弱く、軟らかいのも特徴で、身長、体重の増えもよくないことがあります。運動の発達も遅れ、歩行開始の平均年齢も2歳くらいになります。

 多くの合併症が知られていて、これらの程度が生命的な予後に大きく関係しています。約40パーセントに先天性の心臓疾患がみられ、多くに甲状腺(こうじょうせん)疾患が起こります。耳の感染症を繰り返し、内耳に液体がたまりやすいため、聴覚に障害が起こりやすい傾向があります。角膜と水晶体に問題があるため、視覚障害も起こしやすい傾向があります。そのほか、十二指腸閉鎖や鎖肛(さこう)といった消化管の奇形、頸椎(けいつい)の異常、白血病がみられることもあります。

 40歳以降には、アルツハイマー病でみられるような記憶喪失、知能低下の進行、人格の変化などの認知症の症状が高確率で起こります。

■ダウン症候群の検査と診断と治療

 ダウン症候群は、生まれる前に診断することも可能です。妊娠15〜16週ごろに、産婦人科病院で行う羊水染色体検査が相当しますが、妊婦は自ら医療側に進言しないと正式には行ってもらえません。

 ダウン症候群の乳児には、診断を促す特徴的な外見があります。確定診断には、乳児の染色体を検査して21トリソミー、あるいは21番染色体のそのほかの疾患を調べます。診断がついたら、超音波検査や血液検査などを行って、ダウン症候群に関連する異常がないか調べます。

 根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行います。検査で発見した異常を治療すると、それにより健康が損なわれることを防止できます。ダウン症候群の子供の死因の多くは心臓の疾患と白血病ですが、心臓の異常はしばしば、薬剤や手術で治療できます。

 重い合併症のないダウン症候群の子供は、元来健康で、温厚、陽気な性格であることが多く、訓練や教育により日常生活は可能となります。最近は、早期からの集団保育、集団教育が望ましいといわれています。家族の会などから情報を得ることも役立ちます。遺伝カウンセリングを受けることも重要で、特に転座型では親の片方が均衡転座保因者である場合もあり、次の子供の再発率を知るためには両親の染色体検査が必須です。

 ダウン症候群の子供の大半は、死亡することなく成人になり、平均寿命は約50歳といわれています。数十年前までは平均寿命が20歳前後でしたが、当時は循環器合併症の外科的治療ができなかったためであり、合併症と奇形を治療すれば健康状態は改善することができます。


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たこ、魚の目

■刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなった状態

 たこ、魚の目とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなった状態。たこの別名は、べんち。魚の目の別名は、鶏眼(けいがん)。

 厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているものを、たこといいます。逆に、円錐(えんすい)状に下に向かって皮膚が厚くなっているものを、魚の目といいます。

 たこは痛くありませんが、手で触ると硬く感じます。慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。魚の目は、中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、その先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

 たこと魚の目では症状が違いますが、できやすい場所は足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

 原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、たこや魚の目になります。大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

 たこや魚の目のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、たこや魚の目ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

 開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐじん帯が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のためにじん帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

 ハンマー足指やその他の足指の変形も、たこ、魚の目の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

 巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間にたこ、魚の目ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側にたこ、魚の目ができる人は放っておくと小指が変形し、手術の必要性が生じます。

 女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、たこ、魚の目ができやすくなるからです。反対に、たこ、魚の目が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

■たこ、魚の目の検査と診断と治療

 たこ、魚の目の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、たこ、魚の目の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

 また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで削り取ります。たこの場合は痛くない程度に、魚の目の場合は芯の先を少し血が出る程度に削り取ることが必要です。これを何回か繰り返します。

 保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

 手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

 なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。


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胆石症

●激痛、発熱、黄疸が主症状

 胆石症とは、胆道内に胆汁の成分が固まって、結石ができる疾患です。

 胆汁を生成するのは肝臓で、胆汁を濃縮して貯蔵する胆嚢(たんのう)から胆管を通して、十二指腸に分泌して腸の消化吸収を助け、不用な脂溶性の老廃物を体外に排出します。胆嚢と胆管を合わせて胆道といい、この胆道に胆汁中の成分が結晶となり、固体化し、やがて結石ができるのが胆石症で、胆嚢内にできたものを胆嚢胆石、 胆管にできたものを胆管胆石といいます 

 胆石症の典型的な症状は、上腹部から右脇(わき)腹にかけて突然、激痛が襲う疝痛(せんつう)発作。疝痛とは腹部内臓の疾患に伴う症候で、痛みは背中や胸に広がることもあり、発作の多くは数分から数十分間隔で、波状的に襲ってきます。しかし、人によっては軽い上腹部痛だけのことも、まれではありません。

 また、胆石がありますと、細菌の感染が起こりやすくなります。胆石の種類は主成分によってコレステロール系結石と、ビリルビン系結石に大きく分けられていますが、特にビリルビン系結石では細菌感染がその原因となっているので、炎症が加わって発熱を伴うことが少なくありません。

 この場合、胆石胆嚢炎と呼ばれています。発熱も典型的な場合には、38℃以上の高い熱が突然現れ、全身に震えがくることがあります。しかし、微熱程度のこともまれではなく、腹痛を伴わない場合には、発熱の原因をはっきりさせることが困難な場合もあります。

 胆管の結石では、細い胆管が結石によって閉塞(へいそく)されて、胆汁の流れが障害されるため、黄疸(おうだん)が出て皮膚などが黄色になります。

●増加傾向にある胆石保有者

 日本人の胆石保有率は、食生活の欧米化による脂肪の摂取量の増加 とともに、年々増える傾向にあります。しかも、加齢とともに胆石を持っている人は増え、40~50歳代で4パーセント前後、70歳代では10~20パーセント、全人口の15~20パーセントの人に胆石があると、現在、推測されています。

 ちなみに、胆石のうちコレステロール系結石が80パーセント、ビリルビン系結石が10パーセント前後の割合を示しており、コレステロール系結石の場合は1対2の割合で、男性より女性に多い傾向が見られます。

 以前には、コレステロール系結石よりもビリルビン系結石が多く見られ、現在でも、高齢者や地方に住む人の結石はなお、ビリルビン結石が多いといわれています。

 コレステロール系結石は、胆汁中のコレステロールが結晶になったものなので、肥満や過食、アンバランスな食生活、ホルモンや薬の作用、ストレスなどの生活習慣が影響しています。

 胆汁中のコレステロールは通常、胆汁酸や、りん脂質(特にレシチン)など、ほかの胆汁成分が溶け込んだ状態で存在しており、固形状になっていません。しかしながら、胆汁中のコレステロールの量が異常に多くなると、その一部が結晶となり、それを核としてコレステロールが次々と凝集し、結石を作ります。胆汁中の胆汁酸やレシチンの割合が少なくなっても、全体のバランスが崩れて結石ができやすくなります。

 ビリルビン系結石は、黄褐色や黒っぽい色の色素結石で、胆汁の成分であるビリルビン(胆汁色素)に細菌などが作用してできたものです。

 胆汁中のビリルビンは通常、水に溶けやすい状態で存在しています。しかしながら、胆道などに細菌感染が起こると、細菌の持っている特殊な酵素によってビリルビンが水に溶けにくい状態となり、カルシウムなどと結合して結晶を作り、沈殿して、結石を作ります。

●食生活などの改善で予防する

 胆石症では、早期発見が重要となってきます。胆管にできた結石の場合、石が小さくても胆汁の流れを妨げるので、症状が出やすくなります。胆嚢にできた結石の場合、症状が出ないこともあります。胆石を大きくせずに疝痛発作を未然に防ぐには、早めに発見して、薬などの治療を受けることが大切です。

 この点、健康診断では、肝臓の検査や超音波検査、CT検査で、胆石を見付けることができるので、年に一度は、生活習慣病予防健診を受けるように心掛けたいものです。

 医師による胆石症の治療では、内科的な方法と胆嚢を切除する外科手術があります。

 胆嚢内に1・5~2センチ以内で、数個程度のコレステロール系結石が存在しているような場合には、胆石溶解作用のあるウルソデオキシコール酸(胆汁酸成分の一つ)を服用していると、溶けて消失することもあります。ただし、6カ月から1年くらいの期間、服用しなければなりません。

 胆嚢内に大きな胆石や、多数の胆石がある場合には、体の外から特殊な衝撃波を胆嚢に当て、胆石を小さく壊し、その後に胆石溶解薬を服用して治す方法もあります。

 二つの方法は、コレステロール系結石には有効ですが、ビリルビン系結石の場合には効果は上がりにくく、外科手術が必要となります。最近では、開腹をしないで、腹腔(ふくくう)鏡下に胆嚢を切除する方法が、多くの病院で行われています。胆管結石もあまり大きくないものは、内視鏡とともに十二指腸から胆管に破砕管を挿入し、胆石を小さく壊して除去する方法も行われています。

 胆石症は、生活習慣の改善によって予防することができます。以下の項目に気を付けることが、お勧めです。

○食べ過ぎ、飲み過ぎを避ける。

○食事は規則的にとる。

○ゆっくりと、よくかんで食べる。

栄養のバランスに気を付ける。

○脂肪分を控える。

○食物繊維を十分にとる。

○精神的ストレスをためない。

○十分に休養をとる。


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中耳炎

■耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に炎症

 中耳炎とは、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳に起こる炎症。急性中耳炎と慢性中耳炎とに分けられます。

 急性中耳炎は、ウイルスや細菌の感染によって起こります。成人より小児に多い疾患で、風邪やアレルギーが誘因となります。

 耳と鼻の奥をつなぐ耳管から、鼻やのどの連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿(かのう)菌が中耳腔(くう)に入って炎症が起こると、耳が痛み、耳の詰まった感じ、耳鳴り、難聴に加え、発熱、全身倦怠(けんたい)、頭痛が起こり、鼓膜が赤くはれます。やがて、鼓膜が破れて耳垂れが出る場合もありますが、そのころになると痛みも和らぎます。

 急性中耳炎がひどくなって乳様突起にまで炎症が及んだ場合には、耳の後ろがはれて、触る激しく痛み、熱も高く、頭痛など全身症状が悪化します。これを乳様突起炎といいます。近年では、抗生物質などの進歩で乳様突起炎のケースは少なくなりました

 鼻を強くかまない、安静にする、入浴を控えるなどを心掛ければ、急性中耳炎のほとんどは、一週間くらいで治ります。急性中耳炎のうちによく治療し、耳垂れを主症状とする慢性中耳炎にならないように、心掛けたいものです。

 慢性中耳炎は、耳垂れ、すなわち耳漏が主症状で、同じ中耳の炎症でも、耳痛、耳鳴り、発熱を伴う急性中耳炎とは、かなり様子が違っています。

 慢性中耳炎の多くは、小児期からの持ち越しです。この慢性中耳炎には、2つの型があります。1つは、連鎖球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ菌といった化膿菌の感染による慢性化膿性中耳炎。もう1つは、鼓膜に穴が開く穿孔(せんこう)から、回りの上皮が中耳に入り込んで、上皮の剝脱(はくだつ)角化物がたまり、腫瘍(しゅよう)のようにみえる真珠腫性中耳炎。

 症状としては、鼓膜に穿孔があり、持続的に耳垂れが出ます。真珠腫性では、耳垂れに悪臭があります。耳垂れの刺激で外耳道炎を起こしやすく、多くは難聴を伴います。経過中にめまいを起こせば、内耳炎の併発が疑われ、発熱や激しい頭痛があれば、脳合併症の疑いもあります。急いで、専門医に診てもらいます。

■中耳炎の検査と診断と治療

 急性中耳炎では、鼓膜を検査し、その色、はれ具合から簡単に診断がつきます。外耳道炎を併発し、外耳道がはれて見えにくい時は、診断がやや難しいことがあります。

 急性中耳炎の治療に当たる多くの医師は、全例にアモキシシリンなどの抗生物質による治療を行っています。自然に治癒するか、悪化するかどうかを予測するのが、難しいためです。アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬は、痛みを和らげます。フェニレフリンが入ったうっ血除去薬も、効果があります。抗ヒスタミン薬は、アレルギーによる中耳炎の場合は有効ですが、風邪による中耳炎には効果はありません。

 痛みや熱が激しかったり、長引く場合、また鼓膜のはれがみられる場合には、鼓膜切開を行って、耳垂れを中耳腔から排出します。鼓膜を切開しても聴力に影響はなく、切開した穴も普通は自然にふさがります。中耳炎を繰り返し起こす場合は、鼓膜を切開して、耳だれを排出する鼓膜チューブを設置する必要があります。

 慢性中耳炎の診断は、比較的簡単で、鼓膜の穿孔、耳垂れの有無が目標になります。耳垂れの細菌検査、CTを含む耳のX線検査、聴力検査を行います。

 治療では、抗生物質で炎症を抑え、耳垂れを止めます。しかし、鼓膜の穿孔や破壊された中耳はそのまま残ることが多く、また、真珠腫性中耳炎では普通の治療では治りにくいので、手術が必要です。

 鼓膜の穿孔をふさぎ、疾患で破壊された、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨をつなぎ直せば、聴力は改善できます。これを鼓室形成術といい、細かい手術のため手術用の顕微鏡を使って行います。

 急性中耳炎のうちによく治療し、慢性中耳炎にならないように心掛けたいものです。


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直腸ポリープ

■直腸の粘膜の一部が隆起したもので、がん化する可能性も

 直腸ポリープとは、大腸の最終部に当たる直腸の粘膜の一部が隆起したもの。大腸ポリープ全体の7割が、直腸に近い部位にできます 。

 ポリープの形は、茎のある有茎性できのこ状のものと、無茎性でいぼ状のもの、平らに隆起したものなどあります。また、発生の仕組みから、大きく腫瘍(しゅよう)性のものと非腫瘍性のものに分類されています。腫瘍性のポリープには、良性の腺腫(せんしゅ)と、がん化した悪性の腺がんがあります。一方、非腫瘍性のポリープには、若年性ポリープ、過形成ポリープ、炎症性ポリープがあり、がん化する可能性はありません。

 大腸がん、直腸がんの発生と同じく、動物性脂肪や蛋白(たんぱく)質の消費と関係があるといわれていますが、原因についてはわかっていません。

ポリープが小さい場合は、ほとんどが無症状です。ポリープが大きくなってきたり、がん化すると、便に血液や粘液が付着し、排便後に残便感が生じる場合もあります。また、肛門(こうもん)に近い部位にあるポリープは、排便の際に肛門から脱出する場合もあります。

 ほとんどが無症状であるため、人間ドッグの大腸肛門内視鏡検査などで偶然に確認されることがほとんどです。

■直腸ポリープの検査と診断と治療

 直腸ポリープに気付いた場合、またはその疑いがある場合は、肛門科、大腸肛門科の専門医を受診します。

 肛門に近い場所では、大腸肛門外来での診察で多く発見されます。詳しく調べるには、硬性直腸鏡、S状結腸内視鏡検査、または全大腸内視鏡検査が必要です。必要に応じて粘膜の一部を採取して調べる生検が行われます。良性か悪性かの区別が重要です。

 ポリープの数が1個か2個で、小さな場合は、そのまま放置して経過をみることがあります。まれに、ポリープが壊死(えし)して自然に治癒することもあります。

 一般にポリープのサイズが1センチを超える場合、複数の個所にポリープがあるポリポージスの場合には、診断と治療を兼ねて、すべてのポリープを内視鏡により切除します。近年では拡大内視鏡を用いることにより、または熟練した内視鏡医であれば、ポリープを切除する前にある程度の悪性度の判断がつくため、すべてのポリープを切除する必要はありません。治療後に、良性か悪性かを詳しく調査します。

 内視鏡で切除できない大きさのポリープの場合は、肛門側から器具を使って切除手術を行います。近年では、より肛門から遠い直腸でもポリープが確実に切除できるような器具が開発されています。がん化しているものは、開腹手術が必要となります。

 治療後も、追跡検査が大切です。ポリープでは新たな腺腫、およびがんの発生頻度が高いため、医療機関によっては1〜3年後に全大腸内視鏡検査を行っていますが、その間隔はそれぞれの危険因子により決定されています。


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椎間板ヘルニア

■椎間板の一部がずれて、神経を圧迫する疾患

 椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、椎間板の一部がずれて起こる疾患。椎間板とは、脊柱(せきちゅう)の椎体と椎体の間にある円板状の軟骨組織で、骨に対するクッションの役割を果たしています。

 椎間板ヘルニアは、腰椎に起こるものと頸椎(けいつい)に起こるものが多く、それぞれ症状が異なります。

腰椎椎間板ヘルニア

 腰椎椎間板ヘルニアとは、脊柱のうち腰部にある腰椎の椎間板の一部がずれ、神経を圧迫する疾患。頸椎、胸椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

 腰椎は、脊柱(背骨)のうちで腰の部分を構成する骨で、5つの椎骨からなります。上から第1腰椎、第2腰椎と呼び、一番下が第5腰椎。その椎骨の連結の主な部分は、前部の椎体と後部の脊椎関節突起で、前部の椎体と椎体の間にはそれぞれ椎間板が挟まっていて、クッションのような役割を果たしています。椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

 体重や外部からの荷重が椎体に加わると、椎間板が分散して受け止めて次の椎体に伝え、ある程度弾力的に伸縮するために、背中や腰を曲げたり伸ばしたりすることができるような構造になっています。

 ところが、椎間板には血管がないために、何かの具合で損傷を受けると、回復が遅い上に組織の老化的な変性が起こりやすく、そこに荷重が加わると線維輪に亀裂(きれつ)が入り、中にある髄核が脱出して腰椎椎間板ヘルニアを起こします。

 脱出は前でも横でもどちらの方向へ出てもヘルニアですが、後方へ出たのが一番問題になります。後方の脊柱管には、脊髄ないし馬尾(ばび)神経と、それから枝分かれして末梢(まっしょう)へ分布する神経の根部があるため、ヘルニアによって圧迫されると激しい痛みやまひを起こすからです。

 腰椎椎間板ヘルニアは、第4、第5腰椎間に起こることが最も多く、次いで第5腰椎とその下の仙椎間に多く認められ、10歳代の後半から30歳代までの比較的若い年齢層によく起こります。

 切っ掛けとなるのは、重い物を持ち上げようとした時や、体をひねった時などです。腰がぎくりとして、そのまま立ち上がれなくなったというような急性腰痛症(ぎっくり腰)の症状で現れるのが一般的。また、顔を洗おうとして前かがみになった拍子とか、特別な動作をしないのに自然に起こることもあります。

 初期は腰痛のみのことが多いのですが、次第に脚の痛みやしびれを伴ってきます。腰痛と左右どちらかの脚の痛みを現すことが多いのですが、時に両脚のしびれを来すことがあります。この脚の症状は、座骨神経を刺激することによって起こる座骨神経痛です。仰向けに寝て、ひざを伸ばしたまま痛む側の足を上げようとしても、痛みがひどくなって十分に上げられません。若年者の腰椎椎間板ヘルニアでは、脚の症状がなく腰痛のみのこともあります。

さらに症状が進むと、運動神経も障害されるようになり、脚の筋力が低下します。排尿障害、排便機能の異常が現れることもあります。

第4腰椎以下の下部腰椎部のヘルニアは、片側だけの症状にとどまることが多いのに対し、第3腰椎以上の上部腰椎部の場合は、両側に症状が起こることが多く、脊髄腫瘍(しゅよう)と同じような症状を現すことがあるので、その区別が必要になります。

頸椎椎間板ヘルニア

 頸椎椎間板ヘルニアとは、背骨の最上部にある頸椎の椎間板の一部が後方へずれ、神経を圧迫する疾患。胸椎、腰椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

 背骨のうちで首の部分を構成する骨が頸椎であり、7つの椎骨からなります。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、一番下が第7頸椎。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっていて、椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を果たしています。この椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

 頸椎椎間板ヘルニアになると、椎間板の線維輪に亀裂が入り、中にある髄核が飛び出して脊髄や神経根を圧迫し、さまざまな神経症状が現れます。頸椎の中でも首の根元に位置し、頭蓋(とうがい)骨を支えるのに最も負担が強いられる下位の頚椎である第5、第6頸椎間に、最も多くヘルニアが認められます。

 椎間板の年齢的な変性が基盤となり、頸椎への運動負荷が加わることが原因となって発生します。このために、頸椎椎間板の変性がある程度進み、頸椎への運動負荷の多い年代である30〜50歳代が好発年齢になります。

 椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、手足の痛みやしびれなどのさまざまな症状が出てきます。代表的な症状は首の痛みや凝りで、午前中は比較的症状が軽くても、午後から夕方になるにつれて症状が強くなります。

 脊髄が圧迫されている場合、手のしびれが現れます。手のしびれは片側だけの時もあり、次第に反対側にも現れることもあります。最初から両側にしびれが現れていることもあります。手指の細かな運動もしづらく、字を書いたり、はしで豆をつまんだり、魚肉をほぐすことができにくくなったり、衣服のボタン、特に目で見ることのできない首回りのボタンの止め外しが難しくなります。

 脚にも症状が出て、腱(けん)反射が高進し、脚がこわばって歩きにくくなる痙性(けいせい)歩行が現れます。階段の昇降に手すりが必要になり、特に階段を降りにくくなることが多くみられます。

 神経根が圧迫されている場合、主に後頸部から肩、手指にかけてズキズキする痛みが現れます。この痛みは、首を後ろに反らすと強まるのが特徴で、神経根の圧迫がますます増強されるためです。そして、上肢、手指の筋力低下も現れます。

 また、頸椎椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手足に発生するしびれや痛みの部位、触覚や痛覚などの知覚障害が起こる部位に違いがみられます。排尿、排便の障害を起こすこともあります。

■椎間板ヘルニアの検査と診断と治療

腰椎椎間板ヘルニア

 腰痛だけではなく、脚の痛み、特にひざよりも先まで痛みがある場合は、整形外科を受診します。無理に腰椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

 医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、腰椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

 レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。近年は、MRI検査によって診断が容易になりましたが、無症候性のヘルニアが多数見付かる問題も生じています。症例によっては、脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

 治療では、骨盤の牽引(けんいん)療法が効果的です。腰部の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、腰部のコルセットなども効果的です。

 薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤が投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

 血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するためにホットパックなどの温熱療法、体操療法、腰部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

 以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

頸椎椎間板ヘルニア

 頸椎椎間板ヘルニアの症状に気付いたら、整形外科を受診します。無理に頸椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

 医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、頚椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

 レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。症例によっては、脊椎・脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

 治療では、頭蓋の牽引療法が効果的です。首の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、頸部のカラー(えり巻き式補装具)なども効果的です。

 薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤を投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

 血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するために温熱療法、体操療法、頚部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

 以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

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低血圧症

■低血圧のためにいろいろな症状が現れてくる状態

 低血圧症とは、血圧の値が低いためにいろいろな症状が現れてくる状態。低血圧の基準は、最大血圧が100ミリ未満を指します。

 急性の低血圧が起きた時は、その原因になる重大な疾患があると見なして、すぐ検査や治療をすることが大切です。

 低血圧症の中には原因不明のものがあり、これを本態性低血圧症と呼びます。本態性低血圧症が一般的にいわれている低血圧の代表で、体質的因子が大きく関与していると考えられます。

 原因の明らかなものは、二次性低血圧症、ないし症候性低血圧症と呼びます。ほかの疾患が存在するために、二次的に低血圧を起こしたケースです。二次性低血圧症は、急性のものと慢性のものに分類されます。急性のものの原因には、心筋梗塞(こうそく)、心不全、急性出血、やけどなどがあります。慢性に属するものの原因には、がん、栄養失調、甲状腺(せん)機能低下症、アルドステロン症などが知られています。

 また、低血圧症の中には、起立性低血圧症といい、立ち上がった途端に全身の血液が下半身にたまり、血圧が低下する疾患があります。起立性低血圧症は、血圧を調節する自律神経の働きがアンバランスになったために起こるもので、交感神経系の障害が主な原因とされています。このうち、原因の明らかなものは脳や脊髄(せきずい)の疾患で起こるものが多く、中には自律神経に作用する降圧剤などの薬物によって生じるものもあります。

 本態性低血圧症の人が特に訴える症状は、だるい、疲れやすいです。どちらかというと、日常生活で無理が利かないタイプといえます。また、神経質な面が災いすると、これらの症状にこだわり、ささいなことを気にしすぎたりします。とりわけ精神的ストレスが加わったりすると、症状が強く出たりしがち。

 ほかに低血圧の人に多い症状には、頭痛、肩凝り、目の疲れ、めまい、耳鳴り、不眠、動悸(どうき)、息切れ、胸痛、吐き気、食欲不振、便秘、腹の張り、胃のもたれがあります。

 特に起立性低血圧症の場合、めまいは立ちくらみとして現れやすく、ひどい時には突然、目の前がぼやけたり、真っ暗になったりします。一瞬気が遠くなる感じがしたり、失神したりすることもあります。さらに、足がふらついたり、地面に足が着かないでフワフワした感じ、血の気が引く感じがしたりすることもあります。しかし、症状が起こっても、横になって休めば、簡単に回復します。

 また、低血圧の人の傾向として、朝の目覚めが悪く、集中力や作業能力が低下します。このため、会社などに遅刻をしたり、午前中の仕事がはかどらなかったりします。入浴も好きではなく、熱い風呂には気分が悪くて入れないことが多いものです。

■低血圧の検査と診断と治療

 低血圧の人は、気候の変わり目や、夏になって暑くなると、症状が出やすいものです。そのような場合は、早めに薬物による治療を受けるようにします。

 血圧を上げる薬物は一般に、朝に服用するとよく、夕方以降は控えるのが賢明です。そのほか、自覚症状の強い低血圧症に対しては、症状を軽くする意味で、精神安定剤や自律神経調整剤が使用されることもあります。

 生活上で大切なことは、自分に見合った生活のルールを規則正しく守ることです。特に、過労、睡眠不足は大敵。また、立ちくらみの激しい場合は、急に起き上がったりせずに、できるだけゆっくりと体を動かして立ち上がることです。偏食を避け、バランスの取れた食生活を心掛けます。


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鉄欠乏性貧血

■体内の鉄が不足して発症■

 鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄が不足することにより、赤血球の中に含まれているヘモグロビン(血色素)の産生が不十分になって、発症する貧血です。

 その貧血とは、赤血球中のヘモグロビンの量が減少したり、血液中の赤血球の数が減少した状態をいいます。原因によりいくつかの種類がある中で、最も多いのが鉄欠乏性貧血。

 ヘモグロビンは肺から各臓器や組織に酸素を運び、不必要になった二酸化炭素を持ち帰って、肺から外に出すなど重要な働きをしていますので、ヘモグロビンの産生が不足すると、全身に運ばれる酸素の量が減少し、体が酸素不足になってさまざまな症状が起きてしまいます。

 貧血の症状としてみられるのは、めまい、立ちくらみ、頭が重い、頭痛、耳鳴り、顔色が悪い、唇の色が悪い、肩や首筋が凝る、動悸(どうき)、 息切れ、むくみ、疲れやすい、体がだるい、手足が冷える、注意力が散漫になる、などです。

 鉄欠乏性貧血を発症する原因として、以下のものが考えられます。

 出血が原因:傷などによる一過性の出血だけでなく、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)や痔(じ)、子宮筋腫(きんしゅ)、胃や大腸のがんなどで、持続的あるいは反復的に出血がみられると、少しずつ鉄分を失います。

 食生活が原因:偏食やダイエットなどで、食物からの鉄分の摂取が不足するような栄養バランスの悪い食事をしていると、発症します。

 鉄分の需要増が原因:成長期の子供や妊娠中の女性は、鉄分の必要量が普通より多いために、貧血になりやすくなります。

 激しい運動が原因:スポーツなどで激しい筋肉運動をする人は、赤血球が早く壊されて鉄分が不足しがちになります。

 不規則勤務が原因:体内の鉄分は夜になると減少するため、深夜勤や不規則勤務に就いている人は、同じ食事をしていても貧血になりやすくなります。

■生活習慣の改善で予防する■ 

 鉄欠乏性貧血は、生活習慣の改善によって予防することができます。まず、無理なダイエットや不規則な食事を改め、鉄分の多い食品を積極的に摂取します。成人男性は鉄分を1日約12〜15mg、成人女性は15〜20mgの摂取を心掛けたいもの。女性は月経や妊娠、授乳のため鉄分が失われやすいので、男性より多くを必要とします。

 鉄分を多く含む食品は、大豆、大豆製品、レバー、ひじき、もずく、のり、あさり、かき、ほうれん草、小松菜、切干大根、いわし丸干し、牛もも肉、まぐろ赤身など。

 たんぱく質を摂取することも、大切です。ヘモグロビンは鉄とたんぱく質でできているので、肉や魚、豆腐、卵などを適量食べましょう。また、ビタミンCは鉄の吸収を促進させる働きがあるので、野菜や果物なども食べるようにしましょう。緑茶や紅茶、コーヒーに含まれるタンニンを鉄分と一緒に取ると、鉄分の吸収が悪くなりますので、食事とは時間をずらして飲むといいでしょう。

 医師による治療では、鉄剤を内服します。この鉄剤には、徐放性鉄剤と非徐放性鉄剤があります。徐放性鉄剤は、胃から腸にかけてゆっくりと鉄を放出して、少しずつ吸収されるため、胃粘膜への刺激は少なく、空腹時に飲むことができます。ただ、この製剤は胃酸がないと効果がないため、胃の切除を受けた人には使えません。非徐放性鉄剤は、胃を切除した人や胃酸の分泌が低下している高齢者、低酸症の人に吸収可能な薬剤です。

 徐放性、非徐放性ともに主な副作用として、悪心、嘔吐(おうと)、食欲不振、腹痛、下痢、便秘などの胃腸障害を起こすことがあります。鉄剤を服用すると便が黒くなることがありますが、心配はいりません。貧血が改善されたからといって、医師の指示なしに服用をやめてはいけません。ヘモグロビンの量が正常になっても、その後2〜3カ月は服用を継続する必要があります。


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統合失調症(精神分裂病)

■幻覚、妄想、思考障害を生じる精神疾患

 統合失調症とは、幻聴を主とした幻覚、妄想、思考障害、奇異な行動、感情の鈍麻、意欲の欠乏、社会性の低下などを特徴とする精神疾患。以前は精神分裂病と呼ばれていた病で、今なお治療が難しく、発症者には障害者手帳が交付されています。

 本来、精神分裂病の「精神」は心理学的な意味に由来して「思考」を現す単語であり、一般的に使われる「精神」が「理性」や「知性」を現すのとは、意味合いが異なっていました。しかし、「精神が分裂する病気とは、すなわち理性、知性が崩壊する病気である」と解釈されるケースがみられ、患者・家族団体などから病名に対する偏見が著しく強いという苦情がありました。そこで、日本の精神科医師の学会で2002年、統合失調症へと病名を変更した経緯があります。

 統合失調症は世界中でみられ、精神の健康上の重大な問題となっています。10歳代後半から20歳代前半の若者に発症することが多く、生涯続く能力障害に至る可能性があります。世界各国で行われたさまざまな調査により、統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、およそ100人に1人はかかった経験を有していることが判明しています。発症率に、男女の差はありません。

 統合失調症の正確な原因は不明ですが、遺伝、素質、体質、気質など個人の内部的要因と、環境的要因が組み合わさって起こると考えられています。根本的には内部的要因が問題であり、精神衛生的に不健全な環境で育ったり、親の育て方が悪かったりしたことが原因で起こる障害ではありません。

 一般の発症リスクが1パーセントであるのに比べて、統合失調症の親や兄弟姉妹を持つ人のリスクは約10パーセント、一卵性双生児の1人が統合失調症だと、もう1人の発症リスクは約50パーセントになります。これらの数字は、遺伝的なリスクの存在を示しています。このほか、分娩(ぶんべん)中の低酸素状態、出生時の低体重、母体と胎児の血液型不適合など、出産前後や分娩中に発生した問題が、原因となることがあります。

 原因については、さまざまな仮説も提唱されています。神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰によるという説や、さまざまな刺激を伝え合う脳を始めとした神経系にトラブルが起きることによるという説などです。

 統合失調症の発症は突然、起こることもあれば、数日から数週間かけて発症することもあります。何年にも渡って徐々に、水面下で発症していくこともあります。

 症状の程度と症状のタイプは、人によって異なります。多くの場合は、仕事、対人関係、身の回りのことをする能力が損なわれるほど、重度の症状が生じます。中には、精神機能が低下した結果、物事に注意を払う能力、抽象的に考える能力、問題を解決する能力が損なわれる場合もあります。精神機能の損傷の軽重が、全般的な能力障害を決定する主な要因となります。

■3タイプの症状と、4タイプの亜型分類

 統合失調症の症状は大きく分けて、陽性症状(非欠陥症状)、陰性症状(欠陥症状)、認知障害の3種類になります。3種類のすべてに該当する症状がある人もいれば、いずれか1、2種類の症状だけ示す人もいます。

 陽性症状(非欠陥症状)は、妄想、幻覚、思考障害、奇異な行動など。妄想と幻覚に共通しているのは、被害的な気分や意識です。

 妄想は誤った確信のことで、一般に、知覚や体験の誤った解釈に関係しています。客観的に見ると不合理であっても、本人にとっては確信的であるために、行動が妄想に左右されてしまいます。

 例えば、被害妄想がある人は、「ばかにされている」、「だまされている」、「見張られている」などと思い込みます。追跡妄想がある人は「後を付けられている」、注察(ちゅうさつ)妄想がある人は「人が変な目で見ている」、関係妄想がある人は「本、新聞、歌詞などの1節が特に自分に向けられている」と思い込みます。思考奪取や思考吹入という妄想がある人は、「人に自分の心が読まれている」、「自分の考えが人に伝わっている」、「外部の力によって考えや衝動が自分の中に吹き込まれている」などと思い込みます。

 幻覚は音、視覚、におい、味、身体的感触について生じることがありますが、最も多い幻覚は音の幻聴。自分の行動に関して意見を述べる声、互いに会話する声、あるいは批判的で口汚いことを話す声など、周囲の人には聞こえていない声を現実に聞くことがあります。

 思考障害は、思考が支離滅裂になることをいいます。話に取り留めがなく、話題が次々に変わり、何をいいたいのかわからない意味不明な会話をします。話すことが多少混乱している程度の場合もあれば、完全に支離滅裂で理解できない場合もあります。

 奇異な行動は、急激な興奮、子供のようなばかげた行為、だらしない外見、不衛生、不適切な行動などの形で現れます。奇異な行動の極端な形として、一定の姿勢を崩さず、周囲の人が体を動かそうとすると強い抵抗を示したり、逆に目的のない非誘発性の体の動きをみせたりします。

 これらの陽性症状は、安心感や安全保障感を著しく損ない、一度症状が現れるとそこからの回復過程は緩やかで、十分な時間を必要とします。

 陰性症状(欠陥症状)とは、それまであった性質や能力が失われる症状で、感情の鈍麻、会話の貧困、快感の消失、社会性の低下などがあります。

 感情の鈍麻とは、感情が平板化すること。表情に動きがなく、人と目を合わせず、感情表現が欠如します。喜怒哀楽がはっきりせず、普通の人なら笑う、あるいは泣くような状況でも、何の反応も現しません。

 会話の貧困とは、思考の低下により、会話を続けることに困難を感じ、言葉数が少なくなること。質問に対する返答は1語か2語と短くなり、人間味が感じられなくなります。

 快感消失とは、楽しいと感じる能力が低下することで、以前は楽しんでやっていたことに興味を失い、無目的なことに時間を費やします。

 社会性の低下とは、人とのかかわりに興味を失うこと。周囲との交渉を嫌って自分だけの殻に閉じこもり、自室でぼんやりしていることが多くなります。

 これらの陰性症状は、全般的な意欲の欠乏、目的意識の欠如、目標の喪失としばしば関連しています。周囲には、なかなか統合失調症の症状として認知されづらく、怠けや努力不足とみられる場合があります。陰性症状を「症状」と理解して対応しなかった場合は、生活上のさまざまな失敗や挫折を招くことが多く、生活をしていく自信や「自分はやれている」といった自己効力感を損ないやすくなります。

 認知障害とは、集中力、記憶力、計画能力、問題解決能力、整理能力などに問題があることをいいます。集中力が欠如しているために、本が読めなかったり、映画やテレビ番組のストーリーが追えなかったり、指示通りに物事ができなかったりします。また、注意が散漫になって、1つのことに集中できない人もいます。その結果、細部まで注意が必要な仕事、複雑な作業、意思決定ができなくなります。「一見、元気にみえるのに、なぜか仕事や家事が続かない」と、周囲にいわれるような状態です。

 統合失調症を明確なグループに細かく分類する試みとして、亜型が提案されています。亜型は普通、破瓜(はか)型、緊張型、妄想型、分類不能型の4つのタイプに分けられます。個々の発症者の亜型が、時とともに変化することもあります。

 破瓜型の統合失調症は、支離滅裂な会話と行動、平板あるいは不適切な感情を特徴としています。年齢的に最も早くから起こってくるタイプで、経過が慢性化して、次第に人格変化を引き起こし、最悪の場合には廃人同様の状態に落ち込んでいきます。

 緊張型の統合失調症は、急激に興奮して叫んだり、暴れたり、じっと動かなかったり、やたらと動き回ったり、あるいは奇妙な姿勢を取ったりといった行動が特徴的です。発症時の激しさとは裏腹に、経過が早く、よく治るとされています。このタイプは現在、非常に減少しています。

 妄想型の統合失調症は、妄想や幻聴に捕われるのが特徴で、支離滅裂な会話や不適切な感情はあまり顕著ではありません。破瓜型と並んで現在、一番数多くみられるタイプで、半年、1年と長引くことが多いのですが、人柄の変化は一般的にみられず、多少の症状はあっても、仕事は何とか続けていけるというケースが少なくありません。

 分類不能型の統合失調症は、妄想と幻覚、思考障害と奇異な行動、陰性症状など、異なる亜型の症状が混在するのが特徴です。 

■治療の方法と病気の予後

 発症者の家族が相談に来て、医師に訴えるものとしては、「最近、夜眠らない、夜昼逆転している」、「生活が不規則になった」、「閉じこもって家族と口を利くことが少ない」、「独り笑い、独り言がある」、「つじつまの合わないことを口にする」などが多いようです。

 しかし、最近の傾向として、統合失調症の軽症化ということがいわれています。つまり、興奮などの激しい症状を示す人が減り、上記のような症状を訴えて自分から外来に来る人が増加しています。

 統合失調症の診断では、その決め手となる検査はありません。既往歴や症状を総合的に評価して診断しますが、症状が最低6カ月続き、仕事、学業、社会機能に顕著な低下がみられることが、診断の必須条件です。家族、友人、教師、上司、同僚などからの情報は、発症時期を特定するのに重要です。

 臨床検査を行って、精神病性の症状を引き起こす可能性のある薬物などの乱用の有無や、内科疾患、神経疾患、内分泌系の疾患などが基礎にないかどうかを調べます。そのような疾患の例として、脳腫瘍(しゅよう)、側頭葉てんかん、甲状腺(こうじょうせん)疾患、自己免疫疾患、ハンチントン舞踏病、肝臓病があります。

 CT検査またはMRI検査で、受診者の脳の異常が検出されることがありますが、その異常は統合失調症の診断に役立つほど特異的なものではありません。

 統合失調症の治療では、全般的な目標として、精神症状を軽減させ、症状の再発とそれに伴う機能低下を防ぎ、機能をできるだけ高いレベルに維持することを目指します。抗精神病薬、リハビリテーションと地域支援活動、そして心理療法が治療の柱となります。

 薬物治療では、1950年代にフランスでクロルプロマジンという薬物が一部の患者に効果があることが発見され、これを契機に抗精神病薬による治療が広く行われるようになりました。1990年代後半からの非定型抗精神病薬の使用や、効果的な急性期治療、社会復帰のため福祉施設や法制度の整備などにより、発症者の入院期間は短縮されています。

 抗精神病薬は、妄想、幻覚、支離滅裂な思考などの症状を軽減するのに効果があります。急性の症状が治まった後、抗精神病薬を継続的に使用すると、再発の可能性をかなりの割合で抑えることが可能。

 ただし残念なことに、抗精神病薬には、鎮静作用、筋肉の硬直、震え、体重増加、動作不穏などの副作用があります。また、不随意運動障害、まれに悪性症候群という重い副作用が生じることもあります

 副作用が少ない新しい抗精神病薬も、数多く開発されています。特に非定型抗精神病薬と呼ばれる薬は、従来の抗精神病薬に比べて、陽性症状、陰性症状、認知障害をかなり広い範囲に渡って軽減します。筋肉の硬直、震えといった生活に支障を起こしやすい副作用が少ないことも、利点となっています。

 また、使用方法として原則、1種類の薬で処方し、同じような効き目の何種類もの薬を重ねて飲むような方法はとりません。薬には適用量があり、多量の処方は副作用ばかりが増えて効果が増えるわけではなく、意味がありません。日本ではかつて、多種類の薬物を大量に処方する習慣がありましたが、非定型抗精神病薬は処方の方法論にも影響を与えています。

 統合失調症の治療では、発症者が治療の指示をきちんと守ることが極めて重要です。薬物療法をしないと、70〜80パーセントが診断時から1年以内に、統合失調症の症状を再発します。継続的に薬を服用すると、再発率は20〜30パーセント程度に下がり、症状は大幅に少なくなります。

 ところが、統合失調症の人の半数が、処方薬を服用しません。自分が病気であるという認識がないため服用を拒む人もいれば、不快な副作用を嫌って服用しなくなってしまう人もいます。記憶障害、支離滅裂な思考、あるいは経済的理由から薬の服用をやめてしまうケースもあります。

 本人、家族、そして医師との間に協力関係を築くことを目標とする心理療法で、医師や心理療法士と一貫した信頼関係ができると、自分の病気を受け入れやすくなり、治療に関する指示をきちんと守ることの必要性を認識するようになります。

 統合失調症の治療では、適切な薬物療法に加え、リハビリテーションと地域支援活動によって、地域社会で生活できるようにすることが目標の柱。そのために必要な技能を教えることを目的として、職場訓練などの地域支援活動が行われています。仕事、買い物、身なりなど自分の身の回りを整えること、家事、協調性などを学ぶために、監督者付きの住宅やグループホームで生活する必要がある人もいます。 

 統合失調症の人の中には、重度で治療に反応しない症状があったり、地域社会で生活していくために必要な能力が欠如しているために、自立して生活できない人もいます。そういう場合は、安全でサポート体制の整った施設での完全看護が必要です。

 長期的にみると、統合失調症の経過の見通しはさまざまです。一般に、3分の1に顕著で持続的な改善がみられ、3分の1には断続的な再発や残存する能力障害はあっても、ある程度の改善がみられ、残りの3分の1が重度で永久的な無能力の状態となります。


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毒キノコ中毒

■食用キノコによく似た毒キノコが起こす食中毒

 毒キノコ中毒とは、食用キノコによく似た毒キノコを食べることによって、引き起こされる食中毒。

 日本は気温も湿度も、キノコ類の発生に適しています。特に、繁殖することが多い晩夏から秋にかけては、採集して食べる人も増え、しばしば毒キノコ中毒がみられます。平成16年から平成20年までの間では、年間42~79件の食中毒、年間77~232人の食中毒患者が全国で発生しています。約9割は家庭で発生し、約1割は販売店、飲食店などの営業施設が原因で発生しています。

 毒キノコには多数の種類がありますが、多くは特有の色彩とにおいを有するので、食用キノコと間違われやすいのは10数種にすぎません。この10数種が引き起こす毒キノコ中毒は、胃腸炎型、脳症・神経症型、コレラ型の3タイプに大別されます。

 胃腸炎型を起こすのは、ツキヨタケ、イッポンシメジ、クサウラベニタケ、カキシメジ、ニガクリタケなど。食後30分から2時間で、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢などの症状を起こします。

 脳症・神経症型を起こすのは、ワライタケ、オオシビレタケ、ヒカゲシビレタケ、テングタケ、ベニテングタケ、ハエトリシメジなど。食後30分から1時間で、ワライタケやオオシビレタケ、ヒカゲシビレタケは幻覚、知覚まひ、めまい、言語障害を起こし、意識不明に陥らせます。同じく食後30分から1時間で短時間眠くなった後。テングタケやベニテングタケ、ハエトリシメジは嘔吐、腹痛、下痢に続いて耳鳴り、めまい、視力障害、けいれんなどの症状を起こし、進行すると幻覚、精神錯乱、意識不明に陥らせます。

 コレラ型を起こすのは、ドクツルタケ、タマゴテングタケ、コタマゴテングタケ、シロタマテングダケ、コレラタケなど。食後6時間から半日で発症し、アマニタトキシンなどの毒成分が強烈な腹痛、嘔吐、下痢とともに、意識障害、けいれん、脱水状態を起こして、発症者を死亡させたり、肝臓、腎臓(じんぞう)などに障害を残したりします。

 食中毒の症状は食べた種類や量によって異なりますが、症状が早く現れるもののほうが比較的軽く、回復も早い傾向があります。

■毒キノコ中毒の検査と診断と治療

 キノコを食べた後に胃が重くなり腹痛、嘔吐、下痢などの症状が現れて、少しでも「おかしい」と思ったら、すぐに食べた物を吐き出します。当人が自力で困難のようなケースでは、周囲の人が発症者の口の中に指を入れて、舌の奥を刺激して吐かせます。何も出なくなったら、水やぬるま湯を飲ませて、さらに何回か吐かせるようにします。

 応急処置を施した後は、毛布にくるむなど全身を保温して内科か、救命救急センターに運び、医師の診察を受けます。嘔吐物や食べ残しをサンプルとして持ってゆくと、素早く適切な治療につながります。毒キノコ中毒の初期症状を自覚しても、素人判断で胃腸薬や下剤を服用しないことも大切です。

 医師による診断では、問診でキノコの外観、採集場所、調理前の処理、調理法、食べた量を聞き出し、食べ物の残り、嘔吐物、便、調理くずなどの検査によって毒キノコの種類を調べます。

 治療では、もし誤食したとわかったら、指で口の中を刺激して吐き出させたり、胃洗浄、腸洗浄を行ったり、活性炭末などの吸着剤を投与したりします。また、対症的に、リンゲルなどの電解質液の輸液や、強心剤、呼吸中枢刺激剤などを用いることもあります。

 短時間に現れた胃腸炎型の毒キノコ中毒の場合は、対症療法ですみ数日中に治ります。しかし、コレラ型の毒キノコ中毒では直ちに入院し、早期の毒素除去、集中治療が必要です。

 毒キノコによる食中毒を防止するには、以下のことを心掛けます。毒キノコは多くの種類に分かれていて共通の特徴を持っていないので、確実に鑑別できる食用キノコ以外は絶対に採らない、食べない。図鑑の写真や絵に出ていない種類のキノコは、無理に食用とされているキノコに当てはめない。食用のキノコでも、生の状態で食べたり、一度に大量に食べると食中毒になるものがあるので注意する。毒キノコは塩漬け、乾燥、水さらしなどの加工によって毒成分がなくなることはないので、加工して食べるのもやめる。


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ナルコレプシー

■突然に起きる強い睡眠発作を中核症状とする神経疾患

 ナルコレプシーとは、突然に眠り込んでしまう激しい睡眠発作を中核症状とする神経疾患。過眠症、居眠り病とも呼ばれます。

 夜の睡眠は十分に取れていても、昼間、急に睡魔が襲ってきて自分では抑制できず、眠ってしまいます。会話中、車の運転中、食事中、はたまたセックスの最中など、通常では考えられない状況で、突然、すーっと眠り込んでしまうといった具合です。

 睡眠発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下。意図的に短い仮眠を取った時には、すっきりと目覚めます。この睡眠発作は、ノンレム睡眠を経過せずに、いきなりレム催眠に入るのが特徴です。

 ナルコプレシーのもう1つの特徴は、脱力発作(情動脱力発作、カタプレキシー)です。笑ったり、喜んだり、怒ったり、驚いたり、自尊心がくすぐられたりなどの突発的な感情が誘因となって、全身の脱力発作が起こって力が抜け、物を落としてしまったり、ろれつが回らなくなったり、数秒~数分間、筋肉がまひしてその場に崩れ込んでしまったりします。

 意識ははっきりしているし、見たり聞いたりもできますが、ただ動けないだけです。この脱力発作は、レム睡眠に入ると筋肉の緊張が完全に消えることと似ています。

 ほかに、睡眠まひ、入眠時幻覚を伴います。睡眠まひでは、寝入ったばかりや目が覚めた直後に、体を動かそうとして動かせない状態になります。いわゆる金縛りと呼ばれる状態で、開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができません。本人は非常な恐怖に駆られますが、他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、まひは数分後には自然に治まります。

 入眠時幻覚では、睡眠発作により眠り込んだ際や、夜間に寝入った直後、まれに目覚めた際に、現実感の強い幻覚、幻聴を経験します。これらの幻覚、幻聴は正常な夢に似ていますが、もっと強烈で鮮明です。

 夜間は、頻回の中途覚醒(かくせい)や、睡眠まひ、幻覚を体験するなどのため、睡眠も妨げられます。

 日本人のナルコレプシーの有病率は、1万人当たり16人~18人といわれています。すべての人種において発病がみられる中で、日本人の有病率は世界で最も高く、欧米では1万人に2~4人といわれています。

 家族内に起こる傾向がありますが、原因は不明です。ナルコプレシーのほとんどは通常、思春期から青年期にかけて発症するため、脳の性的成熟と関係があるとも考えられています。また、オレキシンという視床下部から分泌される神経伝達物質の欠乏と関係があるとも考えられています。

 症状は一生涯続きますが、症状のすべてが現れる人は全体の約10パーセントにすぎず、大部分の人は2、3の症状が出るだけです。

■ナルコレプシーの検査と診断と治療

 昼間に強い眠気を感じる時は、内科や睡眠外来、神経内科を受診します。

 診断は症状に基づいて行われますが、別の疾患が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠まひと幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こり得ます。診断が確定しない時は、脳波検査を行って脳の電気活動の記録を取ります。ナルコレプシーがあると、寝入りばなにレム睡眠の活動が起きていることを示す典型的な波形が現れます。正常であれば、レム睡眠は睡眠サイクルの後のほうで起こります。画像診断で見付かるような異常によっては、ナルコレプシーは起こりません。

 根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。中枢神経刺激剤を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリンアンフェタミン、デキストロアンフェタミンなどが使用されます。中で、モダフィニルは他より副作用の少ない薬剤です。脱力発作や睡眠まひの症状を軽くするためには、イミプラミン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ剤、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使用されます。

 イライラ、異常行動、体重減少などの副作用が起こらないように薬剤の量の調整が必要なため、薬物療法を行っている人の体調は慎重に監視されます。

 抗うつ剤によって夜の眠りを安定させ、中枢神経刺激剤を朝と昼に服用することにより、日中の睡眠発作をほとんどなくすことができます。しかし、根気よく治療を続けることが必要で、長い年月がたつと症状がかなり軽くなり、多くのケースでは薬剤の量を減らすことができるようになります。

 治療では、薬剤によって症状を軽減するとともに、生活習慣の改善も図ります。大事なのは規則正しく生活をし、夜にしっかり睡眠を取ることで、睡眠表をきちんとつけることにより、自分の睡眠生活が理解できるようになります。日中に15〜20分程度の短い昼寝をこまめに取ると、睡眠発作の予防効果があります。


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軟骨石灰化症(偽痛風)

■高齢者に多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患

 軟骨石灰化症とは、多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患。偽(ぎ)痛風とも呼ばれます。

 高齢者では、特に風邪などの切っ掛けもなく、急にあちこちの関節が痛み出すことを比較的よく経験します。血液検査でも関節リウマチや痛風の反応は異常がなく、医師が診断に苦しむことがあります。このような疾患の中に、軟骨石灰化症があります。

 この軟骨石灰化症は、関節液中にピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶という結晶が沈殿することによって起こります。よく似た痛風は、血中の尿酸が増加して高尿酸血症となり、関節液内に尿酸ナトリウム結晶が生じることによって起こります。

 ピロリン酸カルシウムの結晶ができる原因としては、軟骨変性が重要です。軟骨内の結晶は関節破壊により関節腔(くう)内へ脱落し、関節腔内では白血球、単球などがこの結晶をきれいに掃除しようとします。その時に、細胞からはさまざまな化学物質が放出されて、炎症はいよいよ強くなります。痛風発作でも同様に、白血球などが尿酸の結晶を掃除しようとして炎症が起こります。

 軟骨石灰化症の発症年齢は、痛風に比べて60~80歳の高齢者での発症が多いと見なされています。痛みの起こりやすい部位は膝(ひざ)の関節が最も多く、次いで手、足、股(また)、肘(ひじ)、肩の関節など比較的大きな関節で、男女差はありません。痛風が男性に圧倒的に多くみられ、痛みの部位も足首や足の親指の付け根に起こりやすいのと対照的。

 軟骨石灰化症の発作は数日、ないしそれ以上持続し、1カ所から数箇所の関節炎が特徴です。痛風発作のように突然出現して自然に軽快しますが、痛風より痛みは軽度。急性発作時には、関節腫脹(しゅちょう)、局所発熱、痛みがあり、関節の動きが悪くなります。腕や足の関節に慢性の痛みやこわばりが長引くこともあり、関節リウマチと混同されることもあります。

■軟骨石灰化症の検査と診断と治療

 医師による診断では、膝関節痛などに多発性関節炎の所見がみられ、X線検査で軟骨石灰化症の存在が認められ、関節腔内に針を刺し関節液を吸引してピロリン酸カルシウム結晶を調べることにより、総合的に判断されます。軟骨石灰化症(偽痛風)では、血液中の尿酸値は基準範囲内ですが、痛風でも発作時の尿酸値は正常のことが多くあります。

 軟骨石灰化症のほかにも、多発性関節炎は慢性関節リウマチ、リウマチ性筋痛症、膠原(こうげん)病、乾癬(かんせん)性関節炎、サルコイド関節炎、悪性腫瘍(しゅよう)に伴う関節炎、再発性多発軟骨炎、感染症に伴う関節炎、変形性関節症などいろいろな疾患で起こり、診断が困難なことも多くあります。長期間の経過観察により診断が明らかになる場合が多いのですが、それでも診断ができないケースもあります。

 治療法はほとんどが対症療法で、完治につながるような決定的な治療法はありません。炎症をコントロールすることで痛みを抑えるために、ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症剤などが用いられます。治療により急性発作を止めて、次の発作を予防することが可能ですが、関節へのダメージを防ぐことはできません。

 ステロイド剤などで痛みが抑えられない場合は、内視鏡で関節内を洗浄する手術も考慮されます。

 発作のない時には、通常の変形性関節症のような病像をとりますが、多くの発症者では膝の変形と慢性的な運動痛、動作の開始時の痛みで特徴とされる変形性関節症に移行します。

 日常での注意点としては、関節への負担をかけないように、体重を増やさないことが基本で、 適度な運動をして筋肉をつけることも大切です。太ももの筋肉を鍛えるなら、膝を伸ばしたまま足を上げたり、片足立ちしたりするなど、家の中でも簡単にできます。


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乳がん

■急増している、女性がかかるがんの第1位

 乳がんとは、乳房に張り巡らされている乳腺(にゅうせん) にできる悪性腫瘍(しゅよう)。欧米の女性に多くみられ、従来の日本人女性には少なかったのですが、近年は右肩上がりに増加の一途をたどっています。すでに西暦2000年には、女性のかかるがんの第1位となり、30~60歳の女性の病気による死亡原因の第1位となっています。

 2006年では、4万人を超える人が乳がんにかかったと推定され、女性全体の死亡数を見ると、乳がんは大腸、胃、肺に次いで4位ですが、1年間の死亡者数は1万1千人を超え、30~60歳に限ると1位を維持しています。

 乳がんは転移しやすく、わきの下のリンパ節に起きたり、リンパ管や血管を通って肺や骨など他の臓器に、がん細胞が遠隔転移を起こしやすいのですが、早期発見すれば治る確率の高いがんでもあります。

 代表的な症状は、乳房の硬いしこり。乳がんが5ミリから1センチほどの大きさになった場合、しこりがあることが自分で注意して触るとわかります。普通、表面が凸凹していて硬く、押しても痛みはありません。しこりが現れるのはむしろ、乳腺炎、乳腺症、乳腺嚢胞(のうほう)症など、がんではないケースの方が多いのですが、痛みのないしこりは乳がんの特徴の一つ。

 さらに、乳がんが乳房の皮膚近くに達した場合、しこりを指で挟んでみると、皮膚にえくぼのような、くぼみやひきつれができたりします。乳首から、血液の混じった異常な分泌液が出てくることもあります。

 病気が進むと、しこりの動きが悪くなり、乳頭やその周辺の皮膚が赤くなったり、ただれてきて汚い膿(うみ)が出てきたりします。

 わきの下のリンパ節に転移すると、リンパ節が硬く腫(は)れてきて、触るとぐりぐりします。さらに進んで、肺、骨、肝臓などに転移した場合、強い痛みやせき、黄疸(おうだん)などの症状が現れます。

 ただし、乳がんは他の臓器のがんとは異なり、かなり進行しても、疲れやすくなったり、食欲がなくなってやせてきたり、痛みが出るというような全身症状は、ほとんどありません。

 乳がんが最も多くできやすい場所は、乳房の外側の上方で、全体の約50パーセントを占めます。次いで、内側の上方、乳頭の下、外側の下方、内側の下方の順となっていて、複数の場所に及んでいるものもあります。乳がんが乳房の外側上方にできやすいのは、がんの発生母体となる乳腺組織が集まっているためです。

 乳がんの原因はいろいろあって、特定することはできませんが、日本人女性に増えた原因として、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の過剰な分泌が関係していると見なされます。

 そのエストロゲンの分泌を促す要因として挙げられるのは、生活様式が欧米化したこと、とりわけ食生活が欧米化したことです。高蛋白(たんぱく)質、高脂肪、高エネルギーの欧米型の食事により、日本人の体格も向上して女性の初潮が早く始まり、閉経の時期も遅くなって、月経のある期間が延びました。その結果、乳がんの発生や進行に関係するエストロゲンの影響を受ける期間が長くなったことが、乳がんの増加に関連しているようです。

 ほかに、欧米型の食事の影響である肥満、生活習慣、ストレス、喫煙や環境ホルモンによる活性酸素の増加なども、エストロゲンの分泌を促す要因として挙げられます。

 乳がんにかかりやすい人としては、初潮が早い人、30歳以上で未婚の人、30歳以上で初めてお産をした人55歳以上で閉経した人標準体重の20パーセント以上の肥満のある人などが挙げられています。また、母親や姉妹が乳がんになった人や、以前に片方の乳房に乳がんができた人も、注意が必要です。

 特殊なタイプの乳がんも、まれに発生しています。乳首に治りにくいただれや湿疹(しつしん)ができるパジェット病と、乳房の皮膚が夏みかんの皮のように厚くなり、赤くなってくる炎症性乳がんと呼ばれる、非常に治りにくい種類です。

 なお、乳がんにかかる人はほとんど女性ですが、女性の約100分の1の割合で男性にもみられます。

■自己検診による乳房のチェックを

 乳がんは、早期発見がとても大切な病気。乳房をチェックする自己検診の方法を覚えて、毎月1回、月経が終了して1週間後の乳腺の張りが引いているころに、実行するとよいでしょう。閉経後の人は、例えば自分の誕生日の日付に合わせるなど、月に一度のチェック日を決めておきます。

 こうして、自分の乳房のふだんの状態を知っておくと、異常があった時にすぐにわかるのです。

 自己触診は、目で乳房の状態を観察することと、手で触れて乳房や、わきの下のしこりの有無をみるのが基本です。鏡に向かって立ち、両手を下げた状態と上げた状態で、乳房の状態をチェックします。

 具体的には、 乳首が左右どちらかに引っ張られたり、乳首の陥没や、ただれがないか。乳房に、えくぼのような、くぼみやひきつれがないか。乳輪を絞るようにし、乳頭を軽くつまんで、血液や分泌液が出ないか。

 以上の点に注意します。さらに、乳房を手の指の腹で触り、しこりの有無をチェックします。指をそろえて、指の腹全体で乳房全体を円を描くように触ります。乳房の内側と外側をていねいにさすってみましょう。調べる乳房のほうの腕を下げたポーズと腕を上げたポーズで、左右両方の乳房をチェックします。

 そして、わきの下にぐりぐりしたリンパ節の腫れがないかどうかもチェックします。

 少しでも、しこりや異変に気が付いたら、ためらわずに外科を受診することが大切です。専門家によって、自己触診では見付からないようながんが発見されることもありますから、定期検診も忘れずに受けましょう。

■検査はマンモグラフィが中心

 乳がんは、乳腺外科、あるいは外科で専門的に扱う場合がほとんどです。検査は、視診と触診、さらにマンモグラフィが中心ですが、超音波検査(エコー)もよく利用されています。

 マンモグラフィは、乳房用のレントゲン検査で、早期乳がんの発見率を向上させた立役者といえます。乳房全体をプラスチックの板などで挟み、左右上下方向からレントゲン写真をとります。

 乳房のしこりだけではなく、石灰化像といって、しこりとして感じられないような小さながんの変化も捕らえることができます。この段階で発見できれば、乳がんもごく早期であることがほとんどですから、乳房を残したままがんを治療することも可能になります。

 現在の日本では、乳がん検診にアメリカほどマンモグラフィが普及していません。検診では、触診や視診だけではなく、マンモグラフィの検査が含まれているかどうかを確認したほうが安心です。

 超音波検査は、超音波を発する端子を乳房に当てて、その跳ね返りを画像にするもの。痛みなどはなくて受けやすい検査で、自分ではわからないような小さな乳がんを発見することが可能です。

 しこりや石灰化像などの、がんが疑われる兆候が発見された場合には、良性のものか、がんかを判断する検査が行われます。従来、穿刺(せんし)吸引細胞診、針生検(せいけん)や切開生検が中心に行われていましたが、近年はマンモトーム生検という検査法が登場しました。

 穿刺吸引細胞診は、専用の針をしこりに刺して一部の細胞を吸引して取り、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、しこりとして触れないような小さながんなどは、診断できないことも少なくありません。

 針生検は、少し太めのコア針で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は何度も刺す必要があったり、診断が付かないこともあります。

 切開生検は、メスで乳房に切開を入れ、がんと思われる部位の組織の一部を取ってきて、顕微鏡で調べる検査。穿刺吸引細胞診や針生検で、確定診断ができない場合に行われてきましたが、外科手術になりますので、体への負担が大きいのが欠点です 。

 マンモトーム生検は、超音波やマンモグラフィで見ながら、疑わしい部分に直径3ミリの針であるマンモトームを刺して、自動的に組織の一部を吸引してきて、顕微鏡で調べる検査。広範囲の組織が取れて、切開生検より傷口が小さいため、テープで止めるだけで糸で縫う必要がないのが利点です。とりわけ、しこりとして触れない小さながんや、石灰化の段階のがんの診断に、威力を発揮します。

 乳がんとわかった場合には、がんの広がりの程度、他の部位への転移の有無を調べるために、胸や骨のレントゲン検査、CT、超音波検査、アイソトープ検査などが行われます。その程度や有無によって、治療の方針が決められることになります。

■標準的な手術法は乳房温存療法

 乳がんの治療法は、その進み具合によって、いろいろな方法が選ばれます。一般的には、まず手術により、乳がんの病変部をできるだけ取り除く治療を行います。

 従来は、乳房と胸の筋肉とわきの下のリンパ節をひと塊として、完全に取ってしまうハルステッドという手術が、定型的な乳房切除術として長い間、行われていました。この手術によって、乳がんの治療成績は飛躍的に向上しました。しかし、手術後に腕がむくんで動かしにくくなるなどの障害と、肋骨(ろっこつ)が浮き出て見えたりする美容的な問題が、難点でした。

 ところが、乳がんも早期発見が多くなったため、このように大きな手術をすることは少なくなりました。現在では、がんが胸の筋肉に深く食い込んでいる場合などごく一部を除いて、ハルステッド法はほとんど行われなくなっています。

 代わりに、胸の筋肉は残して、乳房とわきの下のリンパ節を取る胸筋温存乳房切除術という手術が、行われるようになりました。

 乳房のすぐ下には大胸筋、その下には小胸筋という筋肉がありますが、この胸筋温存乳房切除術にも、大胸筋だけを残す大胸筋温存乳房切除術と、両方の筋肉を残して乳房を切除する大小胸筋温存乳房切除術があります。

 リンパ節転移が多い場合などは、リンパ節を確実に切除するために、小胸筋を切除することがありますが、最近は両方の筋肉を残して乳房を切除するケースが多くなっています。腕を動かす時に主に使われる大胸筋を残すだけでも、ハルステッド法に比べればかなり障害は少なくなります 。

 さらに、近年では、早期に発見された乳がんに対しては、乳房を全部切り取らずに、しこりの部分だけを取り除いて、残した乳腺に放射線をかける乳房温存療法が、盛んに行われるようになりました。日本では2003年に、乳房温存療法が乳房切除術を数の上で上回るようになり、標準的な手術法となっています。

 この乳房温存療法では、乳房を残して、がんの病巣をできるだけ手術によって切除し、残ったがんは放射線の照射で叩くというのが基本的な考え方ですので、放射線治療は必須です。一般的には、わきの下のリンパ節転移があるかどうかにかかわらず、しこりの大きさが3センチ以下で、乳房の中でがんが広範囲に広がっていないことなどが、適応の条件とされています。

 また、しこりが3センチ以上でも、手術前に化学療法を行ってしこりが十分に小さくなれば、可能であるとされています。ただし、医療機関によって考え方には多少違いがあり、もっと大きな乳がんにも適応しているところもあります。

 わきの下のリンパ節をたくさん取らない方法も、最近では検討されています。手術中に、センチネルリンパ節(見張りのリンパ節)という最初にがんが転移するリンパ節を見付けて、そこに転移がなければリンパ節はそれ以上は取らないという方法です。まだ確立はされた方法ではありませんが、腕の痛みやむくみなどの障害が出ないので、今後急速に普及していくと考えられます。

 乳がんはしこりが小さくても、すでにわきの下のリンパ節に転移していたり、血液の中に入って遠くの臓器に広がっていることもあります。転移の疑いがある場合、術後の再発予防のために抗がん薬やホルモン薬による治療を加えると、再発の危険性が30~50パーセント減ることがわかってきました。抗がん薬やホルモン薬においても、副作用が少なく、よく効く薬が開発されてきて、再発後の治療にも効果を上げています。


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尿失禁

■無意識に尿が漏れて、日常生活に支障

 尿失禁とは、他覚的に認められる尿の不随意な排尿であり、社会的衛生的に何らかのトラブルを引き起こすもの。つまり、無意識に尿が漏れてしまい、社会生活、日常生活に支障を来す状態をいいます。

 尿失禁のうち、一時的な漏れではなく、一日中、常に漏れ続ける失禁を真性尿失禁、または全尿失禁と呼びます。真性尿失禁、全尿失禁の代表例として挙げられるのは、尿管開口異常などの先天性尿路奇形によって常に尿が漏れているもの、または手術などの際、尿道括約筋を完全に損傷したものです。

 一時的な漏れを示す尿失禁のほうは、腹圧性、急迫性(切迫性)、溢流(いつりゅう)性、反射性の4タイプに大別されます。

 腹圧性尿失禁は、中年以降の出産回数の多い女性に、しばしば認められます。せきやくしゃみ、運動時など、腹部に急な圧迫が加わる時に尿が漏れるもので、漏れの程度はさまざまです。

 起こる原因は、膀胱(ぼうこう)を支え、尿道を締めている骨盤底筋群が緩んで、弱くなったためです。肥満の女性に多くみられ、骨盤底筋群の緩みが進むと、子宮脱、膀胱瘤(りゅう)、直腸脱などを合併することもあります。

 急迫性(切迫性)尿失禁は、尿意を感じても我慢することができずに、尿を漏らしてしまうもの。脳、脊髄(せきずい)など中枢神経系に障害があるものと、膀胱炎、結石などによって膀胱の刺激性が高まって起こるものとがあります。

 溢流性尿失禁は、前立腺(せん)肥大症や神経因性膀胱などを発症している高齢男性に、しばしばみられます。著しい排尿障害があって十分に排尿できず、常に膀胱が伸展しているために起こるものです。

 反射性尿失禁は、中枢神経系の障害や、事故による脊髄損傷でしばしば認められます。尿意を感じることができずに排尿の抑制ができないため、尿が一定量たまると、意思とは関係なく排尿が起こるものです。

■尿失禁の検査と診断と治療

 尿失禁の原因が明らかで治療可能なものは、当然、その治療を行います。

 腹圧性尿失禁の程度の軽いものでは、尿道、膣(ちつ)、肛門(こうもん)を締める骨盤底筋体操が割合効果的です。肛門の周りの筋肉を5秒間強く締め、次に緩める簡単な運動で、 仰向けの姿勢、いすに座った姿勢、 ひじ・ひざをついた姿勢、机に手をついた姿勢、 仰向けになり背筋を伸ばした姿勢という5つの姿勢で、20回ずつ繰り返します。朝、昼、夕、就寝前の4回に分けて、根気よく毎日続けて行うのが理想的です。

 失禁の程度の強いものでは、状態に応じた治療法が選択されます。内視鏡によるペーストなどの注入療法、各種の失禁防止手術が工夫されています。カテーテルによる導尿などの処置が選択される場合もあります。


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尿の変化

●血液中の老廃物や水分が尿に変わる

 人間が排泄することは、上から入れれば下へ出るのが天の理、糞尿屁という出物は生理自然にほかならない。健康長寿のためには、便と屁に続く小便、いわゆるオシッコの快調にも、常日頃から留意したいものである。

 自分の両手を握ってほしい。目の前の片方のこぶしが、ほぼ片方の腎臓(じんぞう)のサイズである。形はソラマメ状で、一つの腎臓の重さはおよそ百二十グラム。この小さな双子の臓器が、せっせと尿を作り出しているのである。

 腎臓には、体の中で最も太い大動脈から、絶えず血液が流れ込んでいる。その血液量は一日に約一・五トンと、すごい量であるが、糸球体と呼ばれる毛細血管の網でろ過され、血中の老廃物や水分が尿に姿を変えるのである。

 このオシッコを作る器官であり、人体の浄水器である腎臓が、血液の中から老廃物と水分をこし出したものを、原尿という。

 もちろん、いきなりこれが排出される尿になるわけではない。尿細管で何度も何度も吸収され、本当に役に立たないものだけが、尿として尿管に送られるのである。

 原尿が再吸収され、尿として排泄される量は、原尿の約百分の一、一日に一・五リットルほどで、牛乳パック一・五本と、かなりの量だ。これを一日五、六回に分けて排出する。だから、一回のオシッコの量は、二百五十~三百ミリリットルほどとなる。

 詳しくいうと、尿として排泄される一日の量は、男女で少し違いがある。成人男性では一・五~一・八リットル、女性では一・四~一・六リットルとされるが、〇・五~二リットル程度の枠内なら正常といえる。

 こうした人間の尿の量は、脳下垂体から分泌される抗利尿ホルモンによって調節されている。抗利尿ホルモンの分泌が増えると、尿細管からの水分の再吸収が高まり、尿の量が減る。逆に、分泌が減った場合は、尿量が増える。誰もが夏場に汗をかくと、尿の量が減って色が濃くなるのは、ホルモンの分泌が増加して、固形成分の比率が高まるためである。

 ところで、腎臓でおよそ五秒ごとに、タラリタラリとこし出された尿は、尿管を通じて膀胱(ぼうこう)に送られる。尿管は直径四~七ミリ、長さ二十八~三十センチ。筋層で圧力をかけられているため、粘膜がしわしわになっている。

 つまり、尿の流れる穴は真円ではなく、きんちゃくみたいで、尿の通るすき間は細く、薄いから、内臓中にできた結石が引っ掛かりやすい。とはいえど、尿の量が増えれば、その勢いできんちゃくは内側から広げられ、結石は流れやすくなる。よく「結石はビールを飲んで流してしまえ」というのは、真実なのである。

 この尿管の先が膀胱である。オシッコを一定期間ためておく貯水池たる膀胱は、尿のたまっていない時の形は三角形で、立体的にいうと逆さまの杯の形をした筋肉でできた袋であるが、まさにゴムの袋に例えられる。ゴムやポリエチレンがなかった時代には、氷のうといえば、薄くて丈夫な牛の膀胱を使ったそうである。

 人間のも同じで、空っぽの状態では壁の厚さが十五ミリだけれど、ぱんぱんにため込むと、その厚さ三ミリになるという素晴らしい膨張率を有しているから、最大容量四百五十~五百ミリリットルと、牛乳パック半分のけっこう重たいオシッコが入ることになる。

●健康な尿が出てくる人体メカニズム

 実際には、こんなにたまることはめったにない。尿が二百五十~三百ミリリットルくらいになると、尿意を感じて排尿が始まるからだ。

 一説によると、膀胱の最大容量の五分の四までは尿意は催さず、最後の五分の一がたまっていく時に感じるもので、最後の五分の一がたまる時間は、三十分から一時間ぐらいという短時間なのだという。

 尿が出る仕組みを説明すると、膀胱の内圧が高まって、膀胱壁の受容器を刺激し、受容器は脳に信号を送るから、脳は尿意を発動する。

 この尿意を感じた脳から指令があると、同じ脳にある抑制中枢を刺激して、抑制を取り外しにかかる。ふだん尿道口が閉まって、尿が飛び出さないようにできているのは、この抑制中枢があるお陰である。

 で、この抑制がとれると、膀胱の出口、つまり尿道とのつながり部分にある、伸縮自在の尿道括約筋などがゆるむ。次いで、抑制中枢の近くにある排尿中枢が奮い起こされ、その刺激で膀胱それ自身の筋肉収縮が始まり、そこで尿が尿道という通路から外に飛び出す、という二段階システムになっているわけだ。

 膀胱から飛び出してゆく一回当たり、二百五十~三百ミリリットルという量は、五、六回繰り返せば一日分のオシッコを排出できるという、ためるによし、出すによしのちょうどいい量なのである。

 実は、尿意にこたえて括約筋をゆるめ、膀胱を収縮させる排尿システムは、膀胱が満タンにならなくとも働いてしまう。人間の脳というのは心理的な変化に左右されやすいところだから、何かで興奮したり、緊張したりした場合にも、抑制中枢がマヒするか、排尿中枢が強く刺激されすぎる。

 そのため、膀胱には尿が少ししかたまっていないのに、試験前などになると尿意を催してトイレにゆきたくなったり、驚いて思わず漏らしてしまうということにもなるわけだ。

 また、てんかんや一時的なショックなどで、意識を喪失した場合も、抑制中枢がマヒして同様の尿漏れが起こる。

 これに対して、ビールやコーヒーなどを飲むと尿が近くなるというのは、水やカフェインが腎臓を刺激して利尿作用を起こすためで、先の場合とはメカニズムが違う。

 とにかく、脳の抑制中枢というのは、特に人間で発達した部位であり、下等動物になるに従って働きが弱くなる。動物では、犬や猫などのペットで発達している。場所的にも、性欲、物欲を抑える部位の近くにあって、かなり高度な機能であることがわかる。

●排尿にまつわるトラブルは女性に多い

 そして、この抑制中枢は、感情の影響を受けやすいところでもある。一般的に、男性よりも女性のほうが感情に敏感だといわれているように、感情が激して抑制中枢がマヒし、その結果尿失禁という不如意を起こすことは、女性に多いということになる。

 この点、腹圧性尿失禁で病院を訪れる女性患者も、最近は増えているという。腹圧、つまりセキやクシャミをした時、笑った時などに、おなかに圧力がかかって、膀胱が圧迫され、尿が漏れてしまう病気である。漏れる尿の量はさまざま。

 普通、尿道にもオシッコの漏れを止める筋肉があって、外尿道括約筋という。これは男性で発達し、排尿を中断することもできるが、女性にはないので、その代用を肛門括約筋や骨盤底筋群がしている。

 加えて、男性の尿道が十六~二十センチで、屈曲しているのに対して、女性の尿道は四~五センチと短く、ストレートという構造的な面から、元来女性のほうが漏れやすい形態になっているのである。

 そこへ加齢、出産が加わると、先の代用筋にゆるみが出て、膀胱と尿道の位置関係に狂いが生じてくる。平たくいえば、尿道がおなかのほうへ持ち上がっていたのが、年がかさみ、子供を産むうちに次第に下がっていき、ついには真っすぐ下方に垂れ下がってしまうのである。こうして一直線に流れ落ちてしまう尿失禁を止めるには、相当に強力な括約筋が必要というわけだ。

 また、失禁を呈するようになったと訴えるのは、肥満女性に目立つ。肥満の人というのは食っちゃ寝タイプが多いので、下腹部には脂肪がたまるばかりで、筋肉が発達しなくなり、尿道を締める力が弱まるからである。

 従って、治療はこれを強制してやればよいわけで、尿道を腹壁のほうへ持ち上げる手術は簡単、確実で、効果も抜群だという。 

 それにしても、どうして男性よりも女性のほうが、オシッコが漏れやすく、途中で止められないか、人類学的に推理してみよう。

 元来、男には攻撃本能があり、狩猟に出掛けたり、敵からの攻撃も防がなければならない。とすると、排尿を長時間我慢するとか、排尿しても敵が現れるとすぐ中断して、攻撃体勢に素早く移れるということは、自己防衛につながる。だから、長い年月の間に、人類の男は防衛的見地から、こうした機能を獲得していったのではないだろうか。対して、女は攻撃の必要性もなかったので、こんなものを発達させなくてもよかったのではないだろうか。

 しかしながら、しばらく前から、アメリカのキャリアウーマンたちの間に、インフリークェント・ボイダーと称する女性が激増して問題になっている。たまにしかトイレにゆかないものだから、膀胱炎を患う人たちである。彼女たちの膀胱はたいてい伸び切って、倍ぐらいにふくれ上がっているそうだ。以前はバスガイドやスチュワーデス、タクシー運転手などの職業病として知られていたものだが、それがどんどん広がったわけである。

●正常人の出立ての尿はにおわない

 さて、話を進めてきた尿は一般に、「臭い、汚い、不潔」などと嫌われているものではあるが、故事をひもといてみると、案外に愛好されてきていることがわかる。

 中国では、尿で顔や手足を洗った古代部族がいたと、「三国志」に書かれている。秦の始皇帝が若返りのために、処女のオシッコの風呂(ふろ)に入っていたという逸話も、まことしやかに伝わっている。

 インドでは、古くから自分のオシッコを飲む民間治療法があったという。この尿療法の教えは、ヒンズー教の教本に百七項目にわたって記されており、現代でもヨガの聖者は自分のオシッコを飲むといわれている。

 日本でも、沖縄には古くから、自分のオシッコを飲む尿療法があったという。

 尿という小水はその昔、健康飲料として飲まれたこともあったし、化粧水であったこともあるという不思議な液体なのである。現代社会においても、尿健康療法を実践する人たちがおり、体の故障個所の痛みがとれるなどの効用があるという。

 しかし、現代医学の最先端をいく科学者たちは、尿は飲めるとしながらも、一様にその積極的効能は認めない。いわく、確かに微量ホルモンは含まれているが、飲むと腸でアミノ酸に分解されてしまって、意味がない。あまりにも微量すぎて、有効量を得るためには、何十リットルも飲まなければいけない。生体の自然の摂理に反する。

 この人間の小水を現代医学で説明するなら、先に述べた通り血液中の老廃物となる。私たち人間は飲食物を摂取するが、その必要なものを化学変化させて肉体にとり入れ、血液に乗せて全身に運ぶ。そして、不必要になってきたものは、腎臓でろ過して排泄する。尿は腎臓でできた老廃物、というわけであった。

 ちなみに、人間の肉体の中でエネルギーになる物質には、糖質と脂質、蛋白質の三つがあるが、これらの燃えカスは捨てなくてはいけない。糖質と脂質が燃えると、主として水と炭酸ガスになり、炭酸ガスは息を吐くたびに肺から外に出ていく。蛋白質の燃えカスは、尿素、クレアチン、尿酸などになって血液中に溶け、腎臓でろ過されて排泄される。これが尿の主な成分というわけである。

 そのほかに、尿にはナトリウムやカリウムなどの電解質も含まれている。人間の体液の組成は海水と同じで、この組成の濃度を一定にする役目をしているのも腎臓なのであり、体内に余分な電解質があれば排出するし、足らなくなれば水分だけを出すなどして調節しているためである。

 結局、ここに挙げた以外の成分が最終的な尿に含まれている場合は、体に何らかの異常が認められるわけだ。

 ともかく、尿が血液の老廃物、体液の不要品といっても、健康な人から出たものなら、不潔きわまりないというわけではない。

 見方によっては、細菌に感染していない正常な人の尿は、血液よりきれいといえるかもしれない。腎臓で繰り返し、ろ過され、排出されてくる液体であるからだ。

 心理的な嫌悪感はつきまとうにしろ、ジャングルで遭難したとか、海で漂流したとかして、きれいな飲料水ない場合は、海水や汚水よりオシッコのほうが絶対に安全といえるだろう。

 一般に、尿は臭いと思われているが、それも大きな事実誤認。正常な人の出来立てのホヤホヤは、ほとんどにおわない。尿に多く含まれている尿素が体外に出た後、それに取りついた細菌によって分解され、アンモニアが発生してはじめてにおい出すのである。

●心身の健康度がわかる臨床検査の花形

 さらに、人間の体からの出物である尿の中に混じっているホルモンは、実は貴重品であり、ミラクルパワーの源泉でもある。

 そもそも、人体の多くのホルモンは、血管を通って目標とする器官や細胞に運ばれ、その細胞に働き掛けたり、逆に働きを抑えたりする。これらのホルモンの一部は、血管の中を巡っているうちに、肝臓や腎臓で化学変化を起こす。これを代謝というのだが、この代謝物が尿中に出されるわけであり、そのほとんどは本来の働きを失っているといえど、少しは活性のあるものも排泄されている。

 最近の医療分野においては、測定機器の技術進歩によって、ごく微量の物質も簡単に測定できるようになっており、ほとんどの病気の状態が、検尿で判定できるようになってきている。

 精神病の患者でも、副腎髄質から分泌されるカテコールアミンといわれる物質の量の増減で、早期に発見できる可能性があるといわれている。ガンにしても、腫瘍(しゅよう)マーカーといわれるポリアミンを測定することで、ある種のガンの早期発見や、抗ガン剤の効き具合がわかるようになってきている。

 今や、尿は臨床検査の花形なのである。人間の精神状態も、生化学的に見れば、脳での神経伝達物質の化学反応でしかない。排泄されてくる微量ホルモンや、その代謝産物を調べることで、人間の心のバランスが正常か否かもわかるということになる。

 ガンの治療では、患者当人の尿からガンウィルスの抗原を見いだし、ワクチンを作ろうという研究、実践が進められているそうだ。 

 このように、体からの出物のミラクルパワーが解明でき、その生体での働きもわかってくれば、尿から人間に必要な物質を抽出し、薬品を作ろうとする試みが当然出てくる。実際、男性ホルモンや女性ホルモンの一部は、尿から取り出され、薬として販売されている。

 例えば、よく四つ子、五つ子が誕生して、世間をにぎわす原因となる排卵誘発剤は、女性の尿から抽出されたホルモン剤である。脳卒中や血栓症に使われるウロキナーゼという薬も、尿から抽出される薬としてよく知られているものだ。

 このほかにも、オシッコにはまだまだ未知の生理活性物質が数多く含まれているそうである。生体に対する有効物質を見つけるための宝の山かもしれない。 

●尿の量や色やにおいで変調を察知する

 本人は健康だと信じているのに、いつの間にか病気にむしばまれ、気づいた時にはもう手遅れとならないために、朝晩の自分の体からの小水という、貴重な出物を観察することをぜひ勧めたい。

 尿は毎日姿を変え、自らの体の調子を告げているものであり、非常に役に立つ健康のバロメーターなのである。特に、腎臓、尿道関係の病気は、素人にも判断しやすいものである。

 もし異常があったら、病院にいって精密検査を受けてほしいもの。確かに、血尿、尿蛋白などでも、一過性のものもあり、尿の異常がすべて病気というわけではないものの、本当の病気だったら、早期発見できるのである。 まず、健康な人の尿量は、普通、男性で一・五~一・八リットル、多くても二リットル、女性で一・四~一・六リットルであるが、一日の量はどうであろうか。

 一般に、一日の尿量が〇・四~〇・五リットル以下を乏尿、二・五リットル以上では多尿となる。ビールなどのアルコールを飲まないのに、五リットルも十リットルも出る場合は、尿崩症などの疾患が疑われる。

 また、多量の水分を飲まないのに、異常に尿量が多かったら、慢性腎不全の初期か、糖尿病の可能性もあり。反対に、尿量が異常に少ないのも病気の一種で、急性腎炎の中期やネフローゼ症候群の初期、慢性腎炎や腎硬化症の末期、急性腎不全の可能性ありだ。 

 次に、オシッコの回数は普通、日中が五、六回といったところであるが、異常に回数が多いことはないだろうか。尿の量があまり出ないのに、回数が増えるのは、膀胱炎の疑いがあるし、初老の人だと前立腺肥大症やガンの可能性もある。

 放尿する時に痛みがある場合は、尿結石などの膀胱、尿道などの排泄路の病気である。排尿の後に不快感がある時は、腎盂(じんう)炎、膀胱炎、膀胱の腫瘍の疑いがある。夜遊びの覚えがある人で、放尿した時に痛みがあったり、下着に膿(うみ)が付いていたら、梅毒、淋病(りんびょう)、クラミジアなどの性病に感染されている恐れがある。 

 尿の色も、大切なチェック項目。膀胱から出てくるオシッコは普通、いわゆる麦わら色をしている。古くなった赤血球が壊れてできた黄色い色素や、使われた蛋白質が分解されてできた黄色い色素が混じっているからだ。これらの色素のできる量は、だいたい決まっている。

 だから、水分を多くとって、排尿の回数や量が増えると、色素は薄められ、ほとんど透明な尿になる。ところが、風邪などで熱を出してやたらに汗をかくと、当然ながら尿の量が減るから、相対的に色は濃くなる。同時に、蛋白質の分解による色素の量も増えるから、オシッコは黄色くなる。 

 風邪でもないのに、麦わら色か透明に近い通常色から、血が混じったワインレッド色になっていることはないだろうか。激しい運動をして赤くなったり、食べた物で色が変化することもあるが、そうでないと腎臓ガン、膀胱ガン、尿結石かもしれない。この血尿は、腎炎、膀胱の炎症で出ることもある。

 オシッコが白く濁っているのも、要注意。疲れていても濁るし、リン酸塩やマグネシウム塩などが析出して白濁することもあるが、腎臓、尿管、膀胱、尿道が感染して炎症を起こしていたり、ガンの疑いもある。 

 さらに、モコモコした泡が立ち、なかなか消えないということがあったら、オシッコに蛋白が出ている証拠である。ネフローゼ症候群や腎炎などで、蛋白が混入するとよく泡立ち、なかなか消えない。肝臓病の場合は、黄色い泡が立ち、長く残る。

 オシッコに変なにおいがしたり、異常に臭くないかも、チェック項目の一つである。食べ物によっても、オシッコのにおいが変わるが、糖尿病だと甘く、果実のような芳香が漂ってくる。

 お酒の飲みすぎでもにおうし、魚の腐ったようなにおいがすれば、細菌に感染している疑いがある。ビタミンB1 などの栄養剤を服用すると、ニンニクのにおいがするが、これは気にすることはない。

●呼吸と睡眠が快調な排泄に役立つ

 ちなみに、男性の場合、オシッコの飛び方を観察すると、性器の勃起(ぼっき)力がわかる。年を取ると、膀胱や尿道の筋肉が硬くなって勢いがなくなる。特に、男性はそうなのである。

 そこで、年配の男性はどうしたら快通ができるかというと、丹田呼吸で不必要な物を捨てるということをやるとよい。両足の親指に力を入れて、つま先立って小用を便ずると、おのずから丹田に力が入るので、快小便ができる。これは、前立腺肥大を克服する非常にうまい方法でもある。

 ここでも、人間は絶えず行っている呼吸の意味の重要性を、改めて認識する必要があるわけだ。 

 呼吸とともに、男女両方に勧めたい尿の快通法は、十分に眠ることである。誰もが一日使ったら、夜は肉体を疲れさせないように、軽く食事をとり、風呂に入り、肉体を温め、血液の循環をよくして、湯冷めしないうちに寝るがよい。

 早く寝て、十分に眠ることを毎日の習慣にしている人は、よく眠るだけで肉体の神経が完全に働くから、体内の老廃物をそれぞれの場から体の外へ排出してくれるものである。

 例えば、脳の疲労物質を体内から取り除くには、睡眠をとるしかない。人間の大脳の正常な働きを担っているのは、グルタミン酸を分解したガンマアミノ酪酸だとされている。人間が活動を続けると、次第にこのガンマアミノ酪酸が分解され、ガンマハイドロオキシ酸とアンモニアに分解されるのである。

 徹夜で仕事をしていて、頭がボーッとなり、集中力を失っていくのは、ガンマハイドロオキシ酸が脳に蓄積されるためである。

 この老廃物を取り除くには、睡眠をとるしかないわけである。ほかに、特効薬はない。睡眠をとってはじめて、脳の疲労を回復、ひいては再びコンピューターに負けない能力を取り戻すことができるのである。

 寝ている間に、私たち人間の肉体は、ガンマハイドロオキシ酸を始めとした体内の老廃物を、呼吸からも、皮膚からも、気体として発散してしまうし、また尿にして排出する。朝の目覚めの時の尿には、色がついているのもこのためである。

 どんな健康な者でも、睡眠中に作られる小水には色がついていて当たり前。寝ている間に、自然の働きが、そうした素晴らしい浄化をしてくれるからである。神経を使いすぎた場合にも、尿に色がつく。病気で熱が出た時にも、色は違うものである。

 尿の色の具合で体の状態がわかるほどに、人間の体というものはうまくできている。これを自分で毎日観察していれば、内臓の健康状態がよくわかるはずである。

 人間の体の機能は、素晴らしい値打ちを持っているものである。そして、生かされているという条件の上に、成り立っている生命が人間である。体の器官、機能は、実に巧妙に働くようにできている。

 この働きをいかに故障なく運行せしめるかということが、生きていく面のすべてにかかってくるのである。

 生きていくことは、難しいことではない。眠りと呼吸を大自然のリズムに合わせて行い、暑さ、寒さに順応してゆきさえすれば、年を取ってもその働きが弱るということはない。

 ところで、睡眠中の子供の寝小便がなかなか治らぬ時には、寝る前にタップリ水を飲ませるとよい。パラドキシカルな方法のようだが、水を飲むことによって身体機能が調和するから、自然に夜尿症も治ってしまうものである。


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熱中症

■熱中症とは■

 熱中症とは、体の中と外の「あつさ」によって引き起こされる、さまざまな体の不調です。

 専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」されています。「熱中症」という漢字は、読んで字のとおり、「熱に中(あた)る」という意味を持っています。

 この熱中症には、いくつかの種類があります。熱波により主として高齢者に起こるもの、高温環境で幼児に起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるものなどです。

 いずれのケースも、体内に熱がたまったために温熱中枢が障害され、体温調節機能が破綻して、体温が異常に上昇した結果、肝臓、腎臓、中枢神経などに障害を起こします。日射病、熱痙攣(けいれん)、熱疲労、熱射病、熱失神などさまざまな病態が、熱中症には含まれます。

 労働中に起こるものについては、労働環境の改善などにより以前に比べ減少していましたが、近年の環境条件により増加傾向がうかがわれます。また、スポーツ中に発生するものおいては、一時増加傾向にあり、その後減少に転じましたが、下げ止まりのような状況になっており、依然、死亡事故がなくならない状況にあります。

 熱中症というと、「暑い環境で起こるもの」という概念があるかと思われますが、労働やスポーツ活動中に起こる熱中症では、体内の筋肉からの大量の熱の発生と脱水などの影響により、寒いとされる環境でも発生しうるものです。実際、11月などの冬季でも、死亡事故が起きています。また、活動開始から比較的短時間の30分程度からでも、発症する例もみられます。 

■熱中症の症状は■

 症状は、大量発汗、強い口の乾き、倦怠(けんたい)感、興奮、高体温、発汗停止、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、脱力感、反射の低下、筋痙攣、強い頭痛、めまい、失神、精神錯乱、昏睡(こんすい)、意識不明などがみられます。最終的に呼吸停止、心停止に至ることもあります。

 熱中症を暑熱障害、熱症として、重症度で分類すると、以下のようになります。

●1度 (軽症度)、熱痙攣(heat cramps): 四肢や腹筋の痛み、時には腹痛を伴った痙攣がみられます。多量の発汗で、塩分などの電解質が入っていない水のみを補給した場合に起こります。呼吸数の増加し、顔色が悪くなり、めまいなどもみられます。

●2度 (中等度)、熱疲労(heat exhaustion): めまい、疲労感、虚脱感、頭痛、失神、吐き気、嘔吐、血圧の低下、頻脈、顔面の蒼白、多量の発汗などで、ショック症状がみられます。脱水と塩分などの電解質が失われて、極度の脱力状態となります。

●3度 (重傷度)、熱射病(heat stroke): 2度の症状に加えて、意識障害、奇怪な言動や行動、過呼吸、ショック状態になります。温度調節機能の破錠による多臓器障害が起こり、脳、肺、肝臓、腎臓などに障害が生じます。

 ただし、熱中症の分類は、医学的にも混迷している状況にあります。従来からの分類の混迷が、症状や緊急性の判断を難しくさせ、手当や診断に影響を及ぼしている、とも見なされるところです。 

■熱中症の治療法は■

 熱中症は、いくつかの症状が重なり合い、互いに関連し合って起こります。また、軽い症状から重い症状へと症状が進行することもありますが、きわめて短時間で急速に重症となることもあります。

 しかも、熱中症は大変に身近なところで起きていますので、十分にその危険性を認識しておくことが必要です。 

 もし周りの人が熱中症にかかった場合には、すべての症状に対して次の三つが手当の基本となります。

●休息(rest)

  安静にさせる。そのための安静を保てる環境へと運ぶことともなる。衣服を緩める、また、必要に応じて脱がせ、体を冷却しやすい状態とする。

●冷却(ice)

  涼しい場所、例えばクーラーの入っているところ、風通しの良い日陰などで休ませる。症状に応じて、必要な冷却を行う。

●水分補給(water)

 意識がはっきりしている場合に限り、水分補給を行う。意識障害がある、吐き気がある場合には、医療機関での輸液が必要となるので、直ちに救急車を呼ぶこと。

 以上の三つをベースとして手当を行い、症状やその程度によって追加して望まれる手当も派生します。

 医療機関での治療においては、氷水浴、アルコール冷却などを行い、ラクテック、生理食塩水、デキストラン製剤などの輸液を行います。 

■熱中症の予後と予防■

 熱中症にかかった人が、暑い環境での活動や運動を再開するには、相当の日数を置く必要があります。

 どんなに症状が軽かったとしても、1週間程度。症状が重くなるにつれ、日数は増えていきます。詳しくは医師と相談の上、当人の調子を照らし合わせながら、再開を決めることになります。 

 その間は、暑い環境での活動や激しい運動は、厳禁となります。十分に回復するまでの休息の日数を置いた上、涼しいところでの軽めの運動から開始し、徐々に運動負荷を上げていくのがよいでしょう。また、一度かかった者は再度かかりやすいとも見なされていますので、十分に注意をしつつ、活動や運動を行うようにしなければなりません。

 熱中症を予防するための注意事項について述べれば、酷夏の運動場、体育館、海水浴場、市街地などにいて、通風性がよくない場合には熱中症を起こしやすいので、スポーツドリンクなどで塩分を含む水分補給を積極的に行うことが必要です。休息を多く取り入れ、激しい運動は中止すべきです。


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ネフローゼ症候群

●腎臓や全身の病気に伴い発症

 ネフローゼ症候群とは、腎臓(じんぞう)の働きが損なわれて、多量の蛋白(たんぱく)尿が糸球体から尿中に常時排出され、血液中の蛋白質が極度に不足する病的状態です。症候群とは、同じ病状を示す腎臓病が多数あるということを意味します。

 主な症状は、浮腫(ふしゅ)や多量の蛋白尿、低蛋白血症と、コレステロールや中性脂肪などが増えて現れる高脂血症(高コレステロール血症)です。

 原因となる病的状態は、大きく二つに分けられます。一つは、腎臓の糸球体、特に糸球体基底膜に病変があって起こるもので、原発性(一次性)ネフローゼ症候群と呼ばれます。もう一つは、全身性疾患が糸球体に障害を及ぼして起こるもので、続発性(二次性)ネフローゼ症候群と呼ばれます。

 原発性(一次性)ネフローゼ症候群には、腎臓組織を顕微鏡で調べた病理組織型でみて、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。

 いずれも入院治療の対象となりますが、小児では微小変化型ネフローゼ症候群が多くみられます。糸球体の基本構造にほとんど変化はみられませんが、急性発症することが多く、ほかの原因によるものに比べて尿中に出る蛋白量も多いため、脱水症状やショック症状を示すこともあります。しかし、この型は治療によく反応し、80パーセント以上は副腎皮質ステロイド薬が有効です。

 副腎皮質ステロイド薬に反応しないステロイド抵抗性のものや、血尿を伴うもの、高血圧を伴うものは、ほかの病型が多く、腎生検による病型診断を行って治療法が決められます。

 続発性(二次性)ネフローゼ症候群では、その原因となる病気の種類は多くありますが、糖尿病からくるものが増加中で、膠原(こうげん)病の一つである全身性エリテマトーデスからくるもの、アミロイドーシスからくるものも、しばしば認められます

●病気の症状と早期発見法

 ネフローゼ症候群の症状としては、まず、皮下組織に水がたまる浮腫、すなわち、むくみが起こります。尿中に多量の蛋白が排出されてしまうと、血液中の蛋白量が少なくなり、低蛋白血症となります。血液中の蛋白濃度が低下すると、浸透圧の作用で、血液中の水分や塩分などが、血管の外の組織間に移動してしまうために起こる現象です。

 このむくみは、原因となる病気や、蛋白尿の程度、年齢などにより、急に出現したり徐々に出てきたり、強かったり弱かったりとさまざまです。呼吸が困難になるほど重いもの、全身性のむくみを示すものから、押せばへこむ程度の軽いものまでみられます。

 むくみが軽いからといって、腎障害が進行するような病気が原因になっている場合には、放置しておいてはいけません。腎不全となってから、気付くようでは困ります。むくみの発見の仕方は、向う脛(ずね)を押した時に跡が残るかどうかです。

●症状や経過により異なる薬物療法

 むくみを解消するのに、利尿薬がよく用いられます。利尿薬は腎尿細管に働いて、水とナトリウムを尿中に排出するのを促進させ、むくみを軽減します。ただし、病気そのものを根本的に治す薬ではなく、対症薬と呼ばれるものの一つです。

 副腎皮質ステロイド薬は原発性ネフローゼ症候群や、免疫異常が関与していると思われる腎症ではよく用いられ、時に特効薬となっています。続発性ネフローゼ症候群でも、膠原病からくるものなど免疫関連の病気にはよく用いられます。

 免疫抑制薬は、免疫の異常が関与していると思われる場合に、しばしば用いられます。しかし、副作用を考慮して、副腎皮質ステロイド薬の効果がない場合や使用できない場合、減量したい場合、しばしば再発する例などで用いられます。

 その他、蛋白尿を減らしたり、腎機能を保持することを目的に、抗凝固薬、抗血小板薬、消炎薬、漢方薬なども、併用されることがあります。

 食事療法については、ごく最近まで、血液中の蛋白が大量に失われているので、食事により蛋白質を補うことが必要と考えられてきました。今では、高蛋白食は腎機能をさらに悪くすると考えられ、高蛋白食にしない方針で治療するようになりました。すでに腎機能が中等度以下になっている場合には、さらに低蛋白食にするようになっています。

 食塩や水分の取り方が多いことも、むくみの原因や悪化させる因子となります。多くの場合には、むくみの程度によって、食塩や水の摂取を制限します。


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脳梗塞

●脳梗塞の原因による3タイプ

 脳梗塞(こうそく)とは、脳の血管が詰まって血流を止めてしまうため、脳に供給される酸素や栄養が不足して、脳が十分な機能を果たせなくなる病気です。動脈硬化などがあると、脳の細動脈に血栓、凝固塊、脂肪塊、石灰片、腫瘍(しゅよう)塊などが詰まりやすくなり、ある日突然、発症します。

 この脳梗塞には「脳血栓」と「脳塞栓」の2通りがありますが、その原因によって次の3タイプに分けられます。

1、アテローム血栓性脳梗塞

 太い血管の動脈硬化が原因となります。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病による動脈硬化によって、脳の太い動脈や頚動脈が詰まるタイプで、特に睡眠時に多く発症します。現在、脳梗塞患者の3割以上を、このタイプが占めると見なされています。

2、ラクナ梗塞

 高血圧などによって、脳の細い血管が詰まるのが原因となります。梗塞部が小さいので症状が全く出ないか、出ても比較的軽いのが特徴で、特に睡眠時に多く発症します。脳梗塞患者の約4割を、このタイプが占めるとされています。

3、心原性脳塞栓

 心臓にできた血栓が血流に乗って脳に流れて行き、血管が詰まるのが原因となります。心房細動、急性心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症、不整脈などにより、心臓内の血液が停滞してできた血栓や血の塊が脳血管を詰まらせて血流がストップし、脳組織が壊死した 状態に陥るので、重症の脳梗塞を起こします。

 突然の発作として起こるタイプで、日中の活動時に多く発症します。脳梗塞患者の約2割を占めると見なされ、 60~70歳代の人に多くみられます。

 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺(まひ)、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡(こんすい)などが見られます。脳血栓では、症状が数日かけてゆっくり出現することが多いのに対して、脳塞栓では突然、意識障害などが出てきます。 

 統計学的にみると、「脳梗塞」と「脳出血」、「くも膜下出血」の総称である「脳血管障害」、いわゆる「脳卒中」による死亡者数は、2004年の統計で約12万9000人。2006年現在では、脳卒中の死亡者の70パーセントが脳梗塞、20パーセントが脳出血、10パーセントがくも膜下出血となっています。食生活の欧米化などによって、30数年前には脳梗塞より多かった脳出血が減少し、最近は脳梗塞が増加しております。

 脳梗塞を含む脳卒中は、がん、心臓病に次いで、日本人の死亡原因の第3位です。しかし、3大疾病の中でも脳卒中は有病率が増加しており、突然、何かに当たったように発症する怖い病気なのです。脳卒中の「卒」には「突然」、「中」には「当たる」という意味があります。幸いにして一命をとりとめても、寝たきりになったり、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ったりする、厄介な病気でもあります。

●前ぶれ症状と治療法について

 脳梗塞は急に起きますが、発症前に30パーセントの人に一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる前ぶれ症状が現れます。

 TIAの症状としては、運動障害として、ふらふらしてまっすぐ歩けない、感覚障害として、片方の手足のしびれ、片足を引きずる、手足から急に力が抜ける、ものにつまずきやすい、知覚障害として、片方の目が一時的に見えなくなる、物が二重に見える、言語障害として、言葉がで出なかったり・理解できない、バランス感覚の障害として、急にめまいがするようになったなどです。

 一時的にでも前ぶれ症状があったら、1分でも早く脳卒中専門医を受診してください。

 医師の側でも、脳梗塞が脳血栓によるものか、脳塞栓によるものかを正確に診断するのは困難です。脳梗塞が疑われる場合、病変の起きた部位を確認するために、 CT、MRI、脳血管撮影などの検査を行います。心原性脳梗塞の場合は、心房細動が原因となるのでホルター心電図(24時間心電図)をとって調べます。

 脳梗塞の治療法としては、急性期には抗血栓療法、脳保護療法、抗脳浮腫療法があります。抗血栓療法には、血小板の働きを抑えて血栓ができるのを防止する抗血小板療法とフィブリンができるのを防止する抗凝固療法があります。

 欧米では10年以上前から、組織プラスミノーゲンアクチベータ(tPA)という血栓溶解剤を用いた血栓溶解療法が実施され、日本でも2005年10月より健康保険に導入されました。脳保護療法には活性酸素の働きを防止するエダラボンという薬剤を発症後24時間以内に使用すると後遺症が軽減されます。

 脳梗塞を起こした部位が1~2日するとむくみが起こるので、抗脳浮腫療法により脳浮腫の原因となる水分を取り除きます。脳梗塞になって3時間以内の場合は血栓や塞栓を溶かす薬を使って治療します。薬が効いた場合には詰まった脳動脈が再度開通し、血流が流れます。

 脳循環の改善薬や血栓・塞栓を予防する薬を使います。発症時にカテーテルを使い血管の血流を再開通させることも可能です。頚動脈の血栓内膜剥離術とバイパス手術により脳血流を改善させる手術も行います。いずれの治療法も脳の血管が詰まって壊死しかけている脳細胞(ケナンブラ)を助けることを目的としております。

●危険因子を取り除く生活改善を 

 脳梗塞を起こした人が社会復帰するまでの間に、いろいろな訓練が必要になります。これがリハビリテーションです。リハビリテーションの目的は残された機能を最大限に引き上げて、家庭復帰や職場復帰をさせるために行います。

 脳梗塞の再発を防ぐには、血液をサラサラにして血栓を作らないようにすることが重要です。そのために抗血小板薬としてアスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾールなどを用います。またフィブリンができるのを防ぐためにワルファリンカルシウムを用います。ただし、納豆を食べると薬の効果が弱くなるので、注意しましょう。

 このほか、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病を管理しましょう。食べすぎないよう注意し、適度な運動、禁煙、禁酒が必要です。再発の兆候を見つけるために、1年に1回MRIやMRA、頚動脈エコーなどの検査をして画像診断で脳血管や頚動脈の状態を調べましょう。

 突然起こる脳梗塞は、さまざまな危険因子を抱えている人に、ある日発症しかねません。脳梗塞の危険因子としては、60歳以上の人、脳卒中の罹病(りびょう)歴のある家族がいる人、動脈硬化、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を持っている人、喫煙、大量飲酒、ストレスなどです。

 脳梗塞にならないためには、生活習慣を改善しましょう。塩分を控えめにして1日に10g以内に抑え、ナトリウムの排泄を促すりんご、枝豆、バナナ、カボチャなどの食品を積極的に摂取しましょう。血圧を下げる作用がある乳製品などの食品や、マグネシウムを含む焼きのり、昆布、ごまなどの食品も食べましょう。

 逆に、動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品は控えめにし、アジ、サバ、イワシなどに多く含まれるEPA、DHAなどの不飽和脂肪酸を積極的にとりましょう。

 適度な運動で積極的に体を動かし、太りすぎないように注意しましょう。十分な睡眠と休養、禁煙、節酒を心掛けましょう。夏は脱水症や夏風邪から脳梗塞になる人が多いので、水分を十分補給しましょう。


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乗り物酔い(動揺病)

■船など乗り物に乗っている最中に、気分が悪くなる症状

 乗り物酔いとは、船、飛行機、バス、車、タクシー、電車など、いろいろな乗り物に乗っている最中に気分が悪くなる症状。船酔い、空酔い、バス酔いとも呼ばれ、近年では動揺病、加速度病とも呼ばれています。

 遊園地のジェットコースターやコーヒーカップなどの乗り物でも、症状が出ることもあります。軽いめまいのほかに、顔面が蒼白(そうはく)になったり、首や額、手のひらに冷や汗をかいたり、吐き気を伴ったりします。吐き気を感じると同時に生つばが出てきて、ため息や生あくびが出てきます。次第に無気力になり、頭の重みや頭痛が出てくる場合もあります。

 生つばが出た状態が続くと、突然、嘔吐(おうと)を起こします。さらに悪化した場合には、下痢を起こすこともあり、あまりにも嘔吐を繰り返すと脱水症状に陥り、点滴が必要になることもあります。

 一般的には、乗り物から降りた場合、しばらくすると症状は回復し、後遺症も残りません。

 ふだんは乗り物酔いをしない人でも、体調次第で起こることがありますし、めまいを起こしやすい人は、乗り物にも酔いやすい傾向があります。乗り物別の酔いやすさには個人差があり、例えば車には全く酔わない人でも船には酔いやすかったり、飛行機や電車には全く酔わないのに車には酔いやすいという人もいます。急ブレーキ、急発進を行う乱暴な運転、渋滞、上り斜面、つづら折りのカーブ、効きすぎる暖房、効きが悪い冷房などが長時間続いた場合には、とりわけ発生しやすくなります。

 乗り物酔いが起こる原因ははっきりとはわかっていませんが、乗り物に乗っている時の振動、加速、減速などによって、耳の奥にある内耳の三半規管と前庭という平衡器官が連続的に刺激されて起こると考えられています。

 体の平衡、すなわちバランスは、静止時でも運動時でも、脳やほかの神経系、目でも調節されますが、耳がたいへん重要な役割を果たしています。耳では、三半規管と前庭が体の平衡を調節していて、三半規管は主に回転運動に関係し、前庭は上下、前後の運動に関係しています。三半規管と前庭が病的に侵されると、立つことも歩くこともできず、めまいが起こります。

 三半規管と前庭が強く刺激された例が乗り物酔いで、この平衡器官は呼吸や循環器をつかさどる自律神経系とも連絡しているために、乗り物酔いでは気分が悪くなり、吐き気、嘔吐、冷や汗などの症状が出てくるのです。

 なお、何日も繰り返し刺激されていると、乗り物酔いの症状は急激に消失していきます。例えば、日本からヨーロッパまでの長期間の航海に出た時、最初の数日間は激しい乗り物酔いの症状を示した人でも、しばらくたつと消えてしまいます。つまり、慣れていない乗り物に乗ったとしても、何度も同じ体験を繰り返すと次第に乗り物酔いの症状が軽減し、最終的にはその乗り物に乗っても症状が出なくなります。

■乗り物酔いの治療法と予防法

 乗り物酔いの治療の基本は、不安感を抱かないことです。酔うかもしれないという不安を抱かないようにして、楽しみながら乗るべきです。周りの人も、不用意に不安がらせないことです。

 どうしても不安が強い時は、乗り物に乗る30分前ごろに酔い止めの薬を飲んでおきます。この内服薬は抗ヒスタミン剤が代表的で、眠気やだるさの副作用が伴うために、これに無水カフェインを含ませている薬もあります。内服液になっているものや、水なしで内服できるチュアブルタイプの薬もありますが、内容はやはり抗ヒスタミン剤が主体で、どの薬も症状が出る前に内服することが大切です。

 欧米では、スコポラミンという副交感神経遮断(しゃだん)剤を皮膚に張るタイプもありますが、眠気が生じ、しかも記憶障害が起こることがあるために日本では許可されていません。

 乗り物に酔わないためのポイントを紹介します。

 きちんと睡眠をとっておく。空腹のまま乗り物に乗らない。脂肪分の多い食品を避けて食べすぎず、酒や乳製品、炭酸飲料を飲みすぎずに、適度な食事をとっておく。乗る前にトイレをすませておく。厚着をせず、風通しのよい楽な服装をする。きついネクタイやベルト、帽子、体を圧迫する下着は避ける。

 乗り物の中では、読書や携帯メール、携帯ゲーム機のプレイなど、眼球の動きを細かくするような行為はしない。一点を凝視せず、遠くの景色をぼんやりと見る。窓を開けて、風に当たる。船なら甲板に出て空気を吸う。気分をリラックスさせ、深くゆっくりと呼吸する。周りの人と話す、好きな音楽を聞く、歌を歌う、合唱するなどで気分をそらす。

 後ろ向きの座席を避け、進行方向が見える前の方に座る。気分が悪くなったら、早めにシートを倒すか横になる。

 以上のポイントを一つずつ実践するとともに、何より気を強く持つことが大事です。酔うかもしれないと思っていると、本当に酔ってしまいます。予防に最善を尽くしたから大丈夫と自信を持って、乗り物に乗るようにします。


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ノロウイルス食中毒

■カキなどの貝類を介してノロウイルスが感染し、引き起こされる食中毒

 ノロウイルス食中毒とは、ノロウイルスが水や貝類などの食品を介して感染して引き起こされる食中毒。ノロウイルスが食品を介さずに人から人に感染する場合は、感染性胃腸炎と呼ばれます。

 ノロウイルスはカキなどの二枚貝の中腸腺(せん)に蓄積されやすく、貝類を生あるいは十分に加熱しないで食べることで主に感染し、人間の小腸粘膜で増殖して食中毒を引き起こします。また、感染性胃腸炎は、ウイルス感染者の糞便(ふんべん)や嘔吐(おうと)物から大量に排出されたノロウイルスが食品、調理器具、手指に付着し、 食事の際や手指が口に触れた際に侵入して感染を引き起こします。

 食中毒、感染性胃腸炎のどちらも1年を通して発生しますが、ノロウイルスが乾燥や寒さに強いことから、冬場の11月から3月にかけて最も多く発生します。特に、保育園、幼稚園、学校、老人福祉施設などで発生した場合は、集団発生につながることがあります。

 ノロウイルスは2002年8月、国際ウイルス学会で命名されましたが、元はSRSV(小型球形ウイルス)と呼ばれていました。ちなみに、ノロとは発見された地名に由来しています。

 非常に小さい球形の生物で、直径0.03マイクロメーター前後の蛋白(たんぱく)質でできた球の中に遺伝子(RNAリボ核酸)が包まれた構造をしています。近年、新しい検査法(PCR法)の普及によって、食品からのウイルスの検査が可能になり、100粒子以下の少量で感染するなど食中毒との関係が明らかになってきました。 多くの遺伝子型が存在しますので、一度感染したからといって次に感染しないとは限らず、何度でも感染します。

 感染しても全員が発症するわけではありませんが、24~48時間の潜伏期間を経て発症した場合の主症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、水のような下痢、腹痛、38℃以下の発熱で、風邪に似ています。普通の成人は発症しても軽症ですみ、通常3日以内で回復します。免疫力の低下した高齢者や乳幼児では、少量のウイルスを摂取することで発症し、死亡することもあります。

■ノロウイルス食中毒の検査と診断と治療

 ノロウイルス食中毒、感染性胃腸炎を発症した場合、すぐに医療機関を受診し適切な処置を受けます。自己判断で下痢止めの薬などを飲むと、回復を遅らせることもあります。

 医師による診断に際しては、検便によってウイルスの保菌状況を確認します。

 効果のある抗ウイルス剤は現在のところありませんので、治療法は通常、対症療法しかありません。高齢者や乳幼児では脱水症状や体力の消耗を引き起こすこともあるため、水分と栄養の補給を十分に行います。普通の成人は発症から1~2日程度、3日以内には治癒します。

 なお、糞便からのウイルスの排出は下痢などの症状がなくなっても、 通常では1週間程度、長い時には1カ月程度続くことがありますので、症状が改善した後も、 しばらくの間は直接食品を扱わないこと大事です。

 予防法としてはまず、カキなどの貝類は中心部まで十分に加熱してから食べることです。湯通し程度の加熱では、ウイルスは死にません。次に、トイレの後や食事の前、調理前によく手を洗うことです。逆性せっけんや消毒用アルコールは効きませんが、十分な手洗いでノロウイルスを洗い流せます。

 また、タオルや調理器具、容器も清潔なものを使用するよう心掛けます。ノロウイルスに感染した人の嘔吐物や糞便などを片付ける際にはビニール手袋、マスクなどを使用し、衣類は消毒します。


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パーキンソン病

■手足や体の震えと硬直■

 パーキンソン病の主な症状は、両手足の震えと筋肉の硬直です。1817年、イギリスの病理学者であるジェームス・パーキンソンによって見いだされた進行性の病気で、以前は「振戦(しんせん)まひ」と呼ばれていました。

 神経系統のうち、筋肉の運動や緊張を調整している錐体(すいたい)外路系が侵されるために、運動調節機能が障害され、日常の行動や動作に変調を来します。近年の研究によれば、この錐体外路系の大脳基底核にある黒質(こくしつ)と線条体における「ドーパミン神経」の変性と脱落によって起こる、と明らかにされました。パーキンソン病の罹患者の脳中では、黒質で作られる「ドーパミン」という物質が減少しているのです。

 日本における有病率は人口10万人当たり50~100人で、65歳以上では500人に1人の割合で出現すると見なされています。

 また、この病気とよく類似した症状を現すものに、脳炎、脳動脈硬化症、一酸化炭素中毒・ガス中毒後遺症、梅毒、脳腫瘍(しゅよう)などが原因となって起こるものもあります。脳炎などの二次的なものも含めて呼ぶ際は、パーキンソン症候群と呼ばれます。

■症状をチェック■

 40~50歳ごろから、徐々に発病します。最も特徴的な症状は、手足や顔の筋肉が突っ張り、硬くなることと、手足が震え、動作が緩慢になることです。

 まばたきが少なく、無表情となり、手足が硬くなる影響で、首を少し下げ、膝(ひざ)と肘(ひじ)を軽く曲げた特有の姿勢となってきます。手の震えは、親指と人差し指、およびほかの指を少し曲げたまま、丸薬を丸めるようにリズミカルに横ゆれするのが特徴。

 運動をすると、筋肉が硬くなって関節が動きにくくなる影響で、立ち上げるなどの動作がとてもゆっくりで、すくみ足による歩行障害も見られます。歩き始めようとしても第一歩がなかなか出ず、細かい足踏みをしてから初めて足を進めます。歩き方は、足を床にこすりつけるようにして狭い歩幅で歩く、小刻み歩行が普通。体が前かがみになり、バランスをとれずに、つんのめることもしばしばです。 

■対策へのアドバイス■ 

●医療機関での治療と経過

 パーキンソン病の薬物治療では、L-ドーパという有効な薬が見いだされ、そのほかブロモクリプチン、アマンタジンやアトロピン系の合剤が作られ、治療効果を上げています。ただし、筋肉の硬直、振戦、動作緩慢などは改善されますが、すくみ足はなかなかよくなりませんし、薬は病気を根本的に治すものではなく、症状を緩和させることを目的としています。

 ドーパミンの薬剤で効果が期待できない場合に脳外科手術も検討されますが、高齢者やあまりに障害の程度が高い場合には、手術の効果は期待できません。

 多くのケースでは、パーキンソン病は10年~10数年という長い経過をとり、末期には寝たきりとなって、老衰や肺炎などの合併症で亡くなります。

●家庭で根気よく療養に努める

 軽度の方については、散歩や体操を一定時間に繰り返して、リハビリテーションを行ってください。慢性進行性で治ることはありませんが、寿命にはさして影響はないと考えても、よいのではないでしょうか。

 罹患者は精神的に過敏、抑うつ、不安を持ちやすくなるので、周囲の温かい心配りが必要です。本人も家族も根気よく、家庭での療養に努めるようにしましょう。


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バージャー病

■手足の指の動脈が詰まって、指が腐ってくる疾患

 バージャー病とは、手足の爪(つめ)の周りや指の間に、治りにくい傷ができて、ひどくなると足の指が腐ってくる疾患。1900年に最初に報告者したアメリカ人の名前からバージャー病と呼ばれていますが、特発性脱疽(だっそ)とも、閉塞(へいそく)性血栓血管炎とも呼ばれます。

 脱疽または壊疽(えそ)とは体の組織の一部が生活力を失う状態のことで、このような病変が手足の指に起こるのは動脈が詰まるためです。特に膝(ひざ)から下の足と腕の動脈が、原因不明の炎症によって血管の壁が厚くなり、血流障害ができるために、そこで血液が固まり、詰まってきます。

 原因は不明ですが、発症には喫煙が深く関係しており、たばこをやめると疾患が進行しない特徴があります。一説では、原因は口腔内の細菌、特に歯周病菌にあると指摘されています。発症者数は、日本国内で推定約1万人。男女比は10対1と男性が多く、20〜40歳代を中心に発症しています。

 症状としては、膝の下の血管が詰まった場合、足先が腐ってきます。ほとんどの場合、両方の足先に病変が出現します。腕の動脈が詰まれば、手の指に壊疽が出現します。

 壊疽は血管に閉塞性の病変が起きた後、数年間この閉塞に近い状態が続いた場合に起こるので、バージャー病の始まりの血管炎では、指先のしびれ感、冷感として自覚されます。進行すると、長い距離を歩くと痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を生じます。さらに進行すると、手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って赤く腫(は)れ、安静にしていても激しく痛み、壊疽の状態となります。

 動脈硬化によって下肢の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症も、バージャー病と同じような症状を来しますが、閉塞性動脈硬化症は高齢者に多く、40歳以下の青年や壮年にはほとんど発症していません。

■バージャー病の検査と診断と治療

 検査をすると、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、下肢虚血の重症度の判定に役立ちます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。血液検査では、特徴的な所見はありません。

 壊疽、脱疽というと、すぐに手足の切断を思い浮かべる人が多いようですが、傷が治りにくくても、疾患が指先などに限られている間は治療が可能です。

 薬物療法としては、血液の循環を改善して血栓を予防するために、血管拡張薬や抗血小板薬が用いられます。重症例に対しては、多くの場合、詰まっている動脈を元通りに開通させることは不可能ですが、閉塞している部位の状態によって可能であれば、バイパス手術などの血行再建を行います。

 バイパス手術が適さない場合は、交感神経を切除することによって、末梢(まっしょう)血管を拡張させ、血流をよくすることを目的に交感神経節ブロックが行われています。足の場合には腰の交感神経、手の場合には胸の交感神経を手術で切除します。壊疽が進行して各種の治療が無効な場合には、手足の切断が必要になります。

 治療後の生活上の注意としては、手足の保温と清潔を心掛けます。傷を付けると、壊疽の再発の引き金となりますので、靴下を履く、靴擦れを起こさないように大きめの靴を履くなど、注意が必要です。散歩などの適度な運動は、お勧めです。また、このバージャー病はたばこを吸う人の発症率が高いので、禁煙を守ることも必要です。

 発症した人のうち、多くは動脈の病巣は詰まったままの状態で、血行再建のバイパス手術などができるのはごく少数です。しかしながら、日ごろの注意をよく守れば、疾患の進行を食い止め、再発を減らすことができます。直接、生命に関係するような大切な臓器である心臓、脳、内臓などの動脈が侵されることはありません。予後も同年代の健常人と変わりありませんが、指の切断を必要とすることもあり、生活の質(QOL)が脅かされることは否めません。


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肺がん

●国内外で最も死亡者数が多い、がん

 肺がんとは、肺の粘膜を覆っている上皮性組織から発生する悪性腫瘍(しゅよう)です。悪性腫瘍、つまりがんとは、無限に増殖、増大して体のあちこちに転移し、正常な細胞やその働きを破壊して、人間を死に至らしめる腫瘍のことです。

 日本では、肺がんが年々増えています。死亡者数をみますと、1960年の5171人から1998年の50460人へと、約40年の間に10倍に増加し、男女合わせた死亡者数が胃がんを抜いて第1位となりました。男性では逆上る1993年に、胃がんを抜いて第1位となっています。

 2005年の統計では、肺がんによる男女合わせた死亡者数は62063人で、全がん死の19パーセントを占めます。男性では全がん死の中で最も多い45189人、女性では大腸がん(結腸がん及び直腸がん)、胃がんに次いで3番目を占める16874人。

 同じ2005年のWHO(世界保健機関)の試算によると、世界中では年間130万人ほどが肺がんで死亡し、全がん死の17パーセントを占めて最多。

 肺がんの発生原因は不明ですが、近年の急激な増加の背景として考えられているのは、環境の汚染と喫煙です。大量喫煙者に肺がんが多いことは間違いのない事実で、間接的な喫煙も原因になるといわれています。

●肺門がんと肺野がん

 症状は発生部位により分けられる肺門(型)がんと、肺野(型)がんで異なりますが、主に咳(せき)、血痰(けったん)、胸痛などがみられます。

 肺門がんは、肺の入り口付近の太い気管支にできたがんで、病理学的には扁平(へんぺい)上皮がんです。この場合、早期から頑固な咳が出るのが特徴で、痰を伴うこともあります。

 咳止めで一時的に軽くなることはあっても、完全に止まることはなく、中止すると再びひどくなります。痰は粘液性か粘液膿(のう)性で粘りがあり、血液が混じったり、熱を伴う肺炎のような症状を示すこともあります。

 肺野がんは、肺の末梢(まっしょう)の細い気管支に発生したがんで、病理学的には腺(せん)がんです。早期には全く症状のないことが多く、肺門リンパ節にがん細胞が転移してから、激しい咳や血痰が出るようになり、声がかすれることもあります。

●発見が早ければ、手術で切除

 医師による診断では、胸部X腺検査で肺がんと判断された場合、ファイバースコープによる気管支内視鏡検査と、痰の細胞診の二つによる確定診断が行われます。その後、肺がんの病巣の広がりを把握するために、CT検査、骨シンチグラフィ、超音波検査、血管造影、MRI検査などが行われます。

 治療では、手術療法(肺切除療法)、放射線療法、化学療法、免疫療法の4つが行われます。第一選択は今でも手術療法で、がんの大きさ、リンパ節への転移の有無、隣接する臓器への浸潤の程度、その人の肺機能の程度によって、手術法が異なります。

 最も一般的に行われるのは、肺葉切除。右肺には上葉、中葉、下葉の3葉、左肺には上葉、下葉の2葉ありますが、そのうちの病巣のある肺葉を1葉、ないし2葉切除します。がんが広範囲に渡っている時や、太い血管に浸潤がみられる時などに行われるのは、片側の肺葉をすべて摘出する肺全摘出術。この肺全摘出術は、肺機能が良好でないとできません。特殊な手術法として、がんの存在する気管支の一部を切除する方法もあり、肺機能が落ちている場合に行われます。

 近年では、胸腔(きょうくう)鏡が開発され、体の負担、苦痛が軽い縮小手術を行う方向に進んでいます。従来のように大きく胸を切り開くのではなく、2~3センチくらいの穴を胸壁に2~3カ所開け、そこから器具を挿入して行う手術法で、全国的に行われています。

 ほかにも、気管支鏡を使用して、二つのタイプのレーザー療法が行われています。一つは、太い気管支に発生したがんで気管支が詰まっているような場合に、レーザー照射で焼く方法。もう一つは、光線力学的治療(PDT)とも呼ばれて、レーザー照射による光化学反応によって、がん細胞を破壊する方法。早期の肺門がんでは、レーザーによる治療のみで完治できることもあります。

 肺がんが進行し、がんの浸潤が広範囲に渡っている場合や、ほかの臓器に転移している場合には、局所的には放射線療法、全身的には抗がん薬による化学療法、免疫療法が行われます。

 新しい抗がん薬の開発、さらに副作用を軽減させる薬の開発により、抗がん薬による治療効果は向上しています。また、イレッサなど分子標的治療薬も開発され、従来の化学療法では効果がなかった人にも、福音となりつつあります。


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敗血症

■血液中に細菌が入り込み、全身症状を引き起こす

 敗血症とは、肺炎や腹膜炎など生体のある部分に感染を起こしている場所から、血液中に細菌が流れ込み、重篤な全身症状を引き起こす症候群。現在のように抗菌薬が発展する前までは、致命的な病態でした。

 もともとの背景として、悪性疾患、血液疾患、糖尿病、肝疾患、腎(じん)疾患、膠原(こうげん)病などがある場合、あるいは未熟児、高齢者、手術後といった状態の場合が多いとされています。抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している人や、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬を投与されて感染に対する防御能が低下している人も、敗血症を起こしやすいので注意が必要です。

 血液中に細菌が流れ込む原因としては、肺炎や肺膿瘍(のうよう)などの呼吸器感染症や腹膜炎のほか、腎盂(じんう)腎炎に代表される尿路感染症、胆嚢(たんのう)炎、胆管炎、褥瘡(じょくそう)感染などがあります。また、血管内カテーテルを留置している場所の汚染から体内に細菌が侵入する、カテーテル関連敗血症も、近年増加しています。

 全身の炎症を反映した発熱、倦怠(けんたい)感、認識力の低下が主要な症状ですが、重症の場合には低体温になることもあります。心拍数や呼吸数の増加もみられ、白血球の数も増えます。治療せずにほうっておくと、低血圧、意識障害を来し、敗血症性ショック、血管内凝固症候群(DIC)などになる場合もあります。

 また、重要臓器が傷害されると呼吸不全、腎不全、肝不全といった、いわゆる多臓器障害症候群(MODS)を併発することもあります。原因菌が大腸菌などのグラム陰性菌であると、菌の産生した内毒素(エンドトキシン)によってエンドトキシンショックが引き起こされ、血液の代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスの混合性酸塩基平衡異常を来します。

 欧米では全身性炎症反応症候群(SIRS)という概念が提唱され、敗血症は感染が引き金となったSIRSと定義されています。なお、 傷口などから細菌が血液中に侵入しただけの状態は菌血症と呼ばれ、敗血症と区別されます。菌血症は症状が現れないことが多く、生命にかかわることもありませんが、菌血症の状態から細菌が急に増え出し、循環器系を通って体中に毒素をまき散らすと敗血症が起こります。

■敗血症の検査と診断と治療

 検査では、血液中に白血球数や、蛋白(たんぱく)質の一種であるC−リアクディブ・プロテイン(CRP)などの一般的な炎症反応の増加が認められます。白血球数は逆に低下することもあります。そのほか、傷害を受けた臓器によって、肝機能障害や腎機能障害も認められます。血液の凝固能が低下している場合もあり、この時は血管内凝固症候群(DIC)を併発していると考えられます。発熱時の連続した血液培養による原因菌の検索も、重要です。

 細菌感染に対しては、強力な抗菌薬による化学療法とともに、さまざまな支持療法が不可欠です。化学療法は旧来より、Βラクタム系抗菌薬とアミノグリコシド系抗菌薬の併剤療法が主流。支持療法では、昇圧剤、補液、酸素投与などのほか、呼吸不全、腎不全、肝不全に対しては、人工呼吸管理、持続的血液濾過(ろか)透析や血漿(けっしょう)交換などが必要になる場合もあります。

 血管内凝固症候群(DIC)を併発した場合には、蛋白分解酵素阻害薬や、抗凝固薬の一つであるヘパリンを使用します。短期間ですが、副腎皮質ホルモン薬が併用されることもあります。近年では、グラム陰性菌による敗血症において重要な役割を担う内毒素(エンドトキシン)を吸着する方法など、新しい治療法が試みられています。

 敗血症は近年の抗菌薬による化学療法の進歩によって治療成績が改善しましたが、治療が遅れたり合併症の具合によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。早期の診断と適切な抗菌薬の使用、各種合併症に対する支持療法が重要です。


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橋本病(慢性甲状腺炎)

■甲状腺の病気の一つで、女性に多い

 橋本病は、喉頭の前下部にある甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれている自己免疫性疾患です。九州大学の橋本 策(はるか)博士が明治45年、ドイツの医学誌に初めて発表した病気で、世界的にも有名なものです。

 内分泌腺の一つである甲状腺に、慢性のリンパ球の浸潤による炎症があるために、甲状腺が腫大したり、甲状腺機能に異常が起こります。男性の20倍と女性のほうが圧倒的に多くかかり、よく調べると、女性の10~20人に1人の割合でみられるほど、頻度の高い病気だということがわかってきました。

 例外はありますが、橋本病の患者は大なり小なり、甲状腺がはれています。ただし、この内分泌腺の一つである甲状腺のはれが、首や喉に何か症状を起こすというようなことはありません。まれに甲状腺のはれがなく、萎縮している場合もあります。

 橋本病では、甲状腺のホルモン状態の違いから次の3つのケースに分けられ、甲状腺ホルモンの過不足があるケースにだけ症状がみられます。 

●甲状腺ホルモン濃度がちょうどよいケース(甲状腺機能正常)

 橋本病であっても、大多数の方は甲状腺ホルモンに過不足はありません。この場合は、橋本病が体に影響するということはまったくありませんので、何か症状があっても甲状腺とは関係ありません。従って、治療の必要はありません。

 しかしながら、将来、甲状腺の働きが低下して、ホルモンが不足することがあります。また、まれですが一時、甲状腺ホルモンが過剰になることもあります。

●甲状腺ホルモンが不足しているケース(甲状腺機能低下症) 

 甲状腺ホルモンが減少する病気の代表が、橋本病です。橋本病も甲状腺臓器特異性自己免疫疾患の一つで、体質の変化により、甲状腺を異物と見なして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)ができます。

 この抗体、すなわち浸潤したリンパ球が甲状腺を破壊していくため、甲状腺ホルモンが減少し、徐々に甲状腺機能低下症になっていきます。痛みもなく、本人の知らないうちに、少しずつ甲状腺が腫大します。

 甲状腺ホルモンは体の新陳代謝に必要なホルモンですので、不足が著しかったり長く続いたりすると、下のような症状が現れます。自覚症状はないこともありますが、コレステロールの値が高くなったり、血圧が上がったり、心臓や肝臓の働きが悪くなることもあります。

 *顔や手足がむくむ   *食べないわりに体重が増える   *気力が低下する   *動作が鈍くなる   *皮膚が乾燥する   *声がかすれる   *寒がりになる   *始終、眠い   *毛髪が薄くなる   *物忘れがひどくなる   *ろれつが回らなくなる   *その他(便秘、貧血、月経過多)

 これらの症状は他の原因でも起こりますから、こうした症状があるからといって甲状腺のホルモンが足りないとは限りません。

 また、甲状腺機能低下症であっても、適量の甲状腺ホルモンを服用して血液のホルモン濃度が正常になっている場合は、何か症状があれば、他のことが原因です。

 なお、「甲状腺機能低下症になると回復しない」といわれていましたが、数カ月のうちによくなることも少なくありません。

●甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるケース(無痛性甲状腺炎)

 甲状腺にたくわえられている甲状腺ホルモンが血液中にもれ出て、血中濃度が高くなることがあります。ふだん、甲状腺の働きが正常な方に、比較的急に起こります。産後数カ月以内に、ことによくみられます。バセドウ病と間違われることもあります。

このケースは炎症が原因ですが、痛みがないので「無痛性甲状腺炎」といいます。長くても4カ月以内には自然に治りますが、その後、逆に甲状腺ホルモンが不足して、甲状腺のはれが大きくなることがあります。これもたいていは数カ月で治りますが、中には長く続いて甲状腺ホルモン剤の内服治療が必要になる方もあります。

●その他のケース

 非常にまれですが、途中でバセドウ病に変化することがあります。血縁にバセドウ病の方がいる場合は、他の人よりなりやすい傾向があります。

 悪性リンパ腫の中には甲状腺から発生するものがあり、橋本病の人は一般の人よりこうしたことが起こりやすいのですが、甲状腺から発生するものは治療に大変よく反応し、治りやすいという特徴があります。

■診断と治療法 

●血液検査や細胞診

 触診や超音波検査で、びまん性甲状腺腫を確認します。血液検査では、甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の2つが陽性になります。

 自己抗体が陰性の人でも、甲状腺の生検や細胞診でリンパ球浸潤を認めれば診断が確定されます。甲状腺機能(FT3・FT4・TSH)は正常の人が多いですが、低下症になっている例もあります。

●甲状腺ホルモン薬の服用

 橋本病患者で甲状腺の腫大が小さく、甲状腺機能も正常の場合は、治療は必要ありません。

 甲状腺機能の低下がある場合には、不足している甲状腺ホルモン薬(チラージンS錠)を毎日内服します。腫れも小さくなります。

 甲状腺の腫大がひどい場合は、手術で甲状腺を切除する場合もあります。

●日常生活と食事

 甲状腺ホルモンに過不足がなければ、生活上、留意することはありません。

 食事も、ふだんどおりでけっこうです。海藻類も普通に食べてかまいませんが、昆布を毎日食べたり、ヨードを含むうがい薬を毎日何度も使うと、甲状腺機能が低下することがあります。なお、甲状腺ホルモンを服用している方は、問題ありません。


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発達障害

■脳の機能的な問題が原因に

 発達障害とは、乳児期から幼児期にかけての発達過程が何らかの原因によって阻害され、認知、言語、社会性、運動などの機能の獲得が障害された症状の総称。基本的には、脳の機能的な問題が原因で起こるものです。

 脳医学の進歩により、今までは落ち着きがない、集中力がない、親の躾(しつけ)がなってないといわれていた子供たちの脳に、発達の遅れや障害が見付かるようになり、それぞれの症状に応じて名称が付けられています。どの発達障害にも共通しているのは、人とのコミュニケーションが苦手という点です。

 多くの子供たちは成長とともに、障害を適切な療育や教育によって克服したり、投薬で自己コントロールの方法を学んでいきます。大人になっても発達障害の克服が難しい場合は、障害者手帳の交付などを受けて、福祉支援を受けることができます。

 発達障害の代表的なものとして、知的障害(精神発達遅滞)、広汎性発達障害(自閉症)、高機能広汎性発達障害(アスペルガー症候群・高機能自閉症)、注意欠陥多動性障害(AD/HD)、学習障害(LD)などがあります。

 発達障害の原因は遺伝子異常、染色体異常、体内環境の異常、周産期の異常、生まれた後の病気や環境などさまざまですが、多くの場合、はっきりとした原因はわかりません。養育態度の問題など心理的な環境要因や教育が原因となったものは、発達障害に含めません。

 学術的には、発達障害に知的障害を含みますが、一般的に、あるいは法律上は、知的障害を伴わない軽度発達障害だけを指します。平成17年4月に施行された発達障害者支援法も、知的障害者以外の軽度発達障害者だけを支援対象として規定しています。

 軽度発達障害は、高機能広汎性発達障害、注意欠陥多動性障害、学習障害の3つが代表的なものです。この軽度発達障害の子供では、障害の程度が軽く、一見普通と変わらないた、社会での認知度が低く、わがままや育て方の問題などとされていることが少なくありません。学童期の子供の5~6パーセントが軽度発達障害と考えられており、とりわけ教育現場での適切な対応が求められています。

■発達障害のそれぞれの症状

 知的障害(精神発達遅滞)は、年齢相応の知的能力がなく、社会的自立の上で支援が必要とされます。ダウン症など染色体異常によるものもありますが、原因が特定できないものも多くあります。人口の2~3パーセントが該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

 広汎性発達障害(自閉症)は、主たる兆候が幼児期に顕著。生後3年以内に下記の3つの兆候が同時にある場合に、自閉症と診断されます。(1)社会性の障害で、他者とのやりとりが苦手、他者の意図や感情が読み取りにくい、仲間を作ることが苦手。(2)コミュニケーションの障害で、言葉の発達が遅れる、おうむ返しが多い、会話が一方的で自分の興味関心事だけ話す、ごっこ遊びや物まね遊びができない。(3)こだわり行動で、興味の偏りと決まりきったパターンへの固執、同じ行動をいつまでも繰り返す。人口の0.5パーセント程度が自閉症に該当すると見なされ、知的障害者の福祉制度を利用することが可能です。

 高機能広汎性発達障害 (アスペルガー症候群・高機能自閉症)は、自閉症と同じ幼児期の兆候を持ちますが、発達するにつれて症状が目立たなくなります。自閉症と診断されても、知的な遅れのないものが高機能自閉症で、さらに言葉の発達に問題を持たないものがアスペルガー症候群です。

 知的には標準またはそれ以上で、関心ある領域には博士並みの知識を持っていることがあり、自分の気持ちがすむかどうかへのこだわりがあります。また、動作が不器用であることが少なくありません。中核症状である社会性の障害は軽くはなく、仕事の得手不得手があり、あいまいなことの判断に迷うなど、社会的自立においては大きな問題を持ちます。

 注意欠陥多動性障害(AD/HD)は、(1)注意集中が難しい、(2)多動、落ち着きがない、(3)衝動的、思い付いたらた行動に移してしまうの3つが同時にある場合に、障害と診断されます。学業や社会的な活動に支障を来し、集団生活が始まると特徴が次第にはっきりしてきます。

 「注意集中が難しい」は、忘れ物が多い、気が散りやすい、指示に従えず授業を最後までやり遂げられない、気持ちを集中させて努力し続けなければならない課題を避けるなどの症状を指しています。「多動」は、すぐに席を離れてしまう、手足をいつもそわそわ動かしている、しゃべりすぎるなどが特徴です。「衝動的」は、順番を待つのが難しい、他の人がしていることを遮ったり、じゃましたりする、すぐにキレて手が出てしまうなどの症状です。チックを伴っていることもよくあり、人口の3パーセント程度が該当すると見なされますが、薬物療法が著効する場合もあります。

 学習障害(LD)は、一般的な知的発達は標準またはそれ以上ですが、聞く、話す、読む、書く、計算する、推論するなどの特定能力の一部だけの習得と使用に困難を示し、学力の著しい偏りがあります。読み書きがとても不得意、数の概念がわからず計算ができない、テストの問題の意味がわからないといった症状がみられます。注意集中力や落ち着きがない場合や、不器用な場合もあります。人口の5パーセント程度が該当するというデータもあります。

 以上の発達障害の、それぞれの症状とは別に、周囲から障害を理解されないために、家族から虐待されたり、同級生や教師から不当ないじめにあったりすることが、少なくありません。それによって2次的に心因反応が起こったり、身体化症状が出たりすることがよくあります。

■一般的な治療法と生活上の注意

 児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師による診断では、面接や診察、質問用紙や発達テストなどを使って、症状を調べます。実際には、それぞれの病気がきちんと分かれて診断されるとは限らず、症状が重なっていることが少なくありません。

 また、それぞれのの発達障害に対する根本的な治療はなく、どのように社会に適応していくかということが大切になります。

 高機能広汎性発達障害は、基本的には治る病気ではありません。社会生活でのトラブルをたくさん経験することになりますが、青年期を上手に過ごすことができれば、その後の生活も安定して過ごせることが多いといわれています。

 注意欠陥多動性障害は、その約3分の1は自然に治ります。しかし、約半数は成人になっても障害を持ち続け、社会生活のトラブルの原因となることがあります。

 この注意欠陥多動性障害には、中枢神経興奮剤の塩酸メチルフェニデートが有効とされています。この薬には覚醒(かくせい)作用があり、多動を抑制し集中力を高める効果があります。

 しかし、効果は3~4時間と短いため、学校での生活に合わせて朝1回、あるいは朝昼2回服用とします。休日や夏休みには使用しないのが、一般的です。副作用として食欲不振、興奮、チック症状の悪化などがあります。実際によく使われていますが、日本の保険制度では効能、効果として注意欠陥多動性障害は認められていません。6歳未満の小児では安全性が確立していないため、使用しないことになっています。

 塩酸メチルフェニデートの効果がない場合、抗うつ薬のイミプラミンが有効なことがあります。また、中枢性降圧剤のクロニジンも有効なことがあり、特にクロニジンはチック症状にも効果があるとされています。

 薬物は根本的な治療ではないとして、治療に反対する意見もあります。アメリカでは、注意欠陥多動性障害の治療のために塩酸メチルフェニデートを投与されていた大人や子どもに死亡例があることを、食品医薬品局(FDAF)が公表し、注意を促しています。

 学習障害は、障害がなくなるということはありません。しかし、自分をきちんと理解し適切な仕事につければ、普通の社会生活を送ることができます。


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鼻詰まり

■慢性的な鼻詰まりの原因は?

●空気の通る道が狭くなる状態

 私たち人間の鼻の中は、鼻腔(びくう)と呼ばれる空洞が広がり、鼻腔の表面はひだ状の粘膜で覆われています。鼻には、この鼻腔上部の粘膜上皮に約五百万個ある嗅細胞でにおいを嗅ぐ嗅覚機能のほかにも、呼吸作用を効率よく行うための役割があります。

 まず、鼻から吸い込まれた冷たい空気がそのまま肺に送られとよくないので、鼻甲介の血管の収縮によって、空気を吸い込んだ瞬間に三十度くらいまでに温度を上げる暖房の機能、加温機能があります。

 その次は加湿機能で、鼻の中の粘膜は水分が九十五パーセント前後あり、入ってきた乾燥した空気に湿り気を与え、喉などの粘膜を保護するわけです。

 また、鼻腔内の数百万本も生えている繊毛によって、外から侵入するホコリなどを体外へ排出する浄化機能という役目も、鼻は果たしています。

 しかしながら、風邪のウイルスや異物などが鼻粘膜の内部にまで入り込み、さらに細菌感染も加わって炎症を起こすと、粘膜が腫れるために過剰な粘液が分泌されて、空気の通る道が狭くなります。この状態が、鼻詰まりなのです。

 長く続く鼻詰まりで圧倒的に多いのはアレルギー性鼻炎で、それに続くのが慢性副鼻腔炎、鼻中隔わん曲症。それらが重なっているケースも、多く見られます。

 鼻詰まりの症状がひどいと、日常生活にも支障が出るので、適切な対処をする必要があります。注意したいのは、嗅覚障害や頭痛、睡眠不足などを招いたり、乾燥した空気を吸うために呼吸器系に悪影響を与えたりすることです。集中力が欠ける原因や、口臭の原因にもなります。 

●多くみられる鼻詰まりの原因

 それぞれの病気や症状により、薬物療法や手術などが医師によって行われます。

アレルギー性鼻炎

 鼻から吸い込んだ異物に対して免疫システムが過剰に反応するため、すなわちアレルギー反応を起こすために、鼻腔の粘膜が腫れて、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを招きます。透明で水のような鼻水が出るのが特徴ですが、少し黄色い場合も。

 代表的なのは、スギ、ヒノキなどの花粉によって起こる花粉症。そのほかにハウスダスト、ダニ、カビなどが原因となりますので、原因物質を避けることが大切です。 

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

 副鼻腔とは、鼻腔に続いて周囲の骨内に陥入している四対の小さい空洞です。鼻詰まりが長引くと、副鼻腔の中でも炎症が起こり、うみがたまります。この状態が3カ月以上続くのが慢性副鼻腔炎で、急性副鼻腔炎と違って治りにくいとされています。黄色く粘り気のある鼻汁が特徴で、うみが口臭を引き起こすこともあります。

 耳鼻咽喉科では、定期的に鼻腔や副鼻腔内を洗浄し、噴霧薬や内服薬などによる治療が行われます。内服薬では、粘膜によい影響があるとされるマクロライド系の抗生物質が最近、一般的に使われ、少量ずつ、効果を確かめながら2、3カ月服用します。ひどい症状のケースでは、手術も。 

鼻中隔わん曲症

 鼻中隔とは、鼻腔を左右に分ける隔壁であり、板状の薄い骨からなっています。前方は軟骨で、周囲は三つの骨で構成されていますが、それぞれの骨の成長速度の違いから、隔壁がわん曲します。日本人の約85パーセントは、左か右、どちらかに曲がっているとされています。

 その曲がり方がはなはだしい場合は、鼻詰まりの原因となります。鼻中隔わん曲症は、10歳から15歳の成長段階に発症する鼻の構造異常。鼻中隔が飛び出ている側だけでなく、反対側も粘膜が厚くなって、左右とも鼻詰まりになりますが、比較的安全な手術で治ります。 

●その他の鼻詰まりの原因

鼻たけ

 鼻たけとは、鼻の粘膜にできる寒天状のポリーフ。慢性副鼻腔炎が進行してできるケースが多く、空気の通り道が狭くなるために、鼻詰まりを招きます。軽い副鼻腔炎で、大きな鼻たけができるケースもあります。

 長い期間をかけて作られるので、口呼吸が習慣化している人では、鼻詰まりの自覚症状がない場合もあります。 

アデノイド肥大

 アデノイドとは、鼻の奥にある扁桃(へんとう)組織です。幼児期に大きくなり、10代以降は自然に小さくなります。

 そのため、小学生までの子供にはアデノイド肥大は珍しくなく、鼻詰まりがはなはだしかったり、炎症を起こしたりしなければ問題はありませんが、大きいケースは手術も行われます。 

腫瘍

 鼻の中に、鼻たけに似たブヨブヨした腫瘍がいくつもできると、鼻詰まりの原因になります。腫瘍はほとんどが良性ですが、まれには鼻腔がん、副鼻腔がんなどの悪性の腫瘍もあります。

 片側の鼻が常に詰まっていたり、少量の鼻血が度々、出たりするケースでは、耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。 

■心掛けたい「鼻詰まり」対策

●鼻うがいの実行を

 鼻の炎症を抑えるには、鼻うがいも効果的です。蒸留水か生理食塩水で鼻の中を洗い流す際には、市販されている鼻うがい専用の器具を使うのがよいでしょう。

 なお、蒸留水は薬局で購入できますが、生理食塩水は医師の処方箋が必要となります。 

●鼻は強くかまない

 鼻は優しくかみましょう。鼻の奥には耳に通じる穴があり、強く鼻をかむと、その圧力で鼻にたまったうみが耳へと流れ、中耳炎を起こす病原菌となってしまう可能性があるからです。 

●点鼻薬は一日一回まで

 血管収縮性(粘膜収縮性)の点鼻薬は粘膜を縮ませますので、すぐに鼻詰まりに効きます。しかし、効果は一時的で依存性もあるものなので、使用は鼻詰まりで眠れない時などに限って、一日一回までに。

 長期にわたって乱用すると、作用しにくくなったり、かえって使用前よりも粘膜が腫れる点鼻薬性の鼻炎を起こすので、注意が必要です。 

●風邪をひかない 

 風邪をひかない、ひいたらこじらせない。二点が、鼻詰まりへの最も有効な対策です。鼻への刺激を減らすには、マスクが有効。空気が乾燥すると、鼻の粘膜は炎症を起こしやすいため、特に冬期には有効です。

 また、花粉症の人も早めにマスクの利用を。スギ花粉の平均的な飛散開始時期は、九州や四国の南部が2月上旬、関東南部が2月中旬、関東北部が2月下旬、東北地方は3月で、気温の上昇に伴って増加します。    

●食材で風邪を予防する

 風邪のウイルスに打ち勝つためには、ビタミンA(お勧め食材は春菊、ホウレンソウ、ニラなどの青菜類)、ビタミンC(お勧め食材はジャガイモ、サツマイモ、カボス、スダチ、ユズ)、ビタミンE(お勧め食材はゴマ、豆乳、カボチャ)と良質なたんぱく質が必要です。

 ビタミンAは、鼻やのどの粘膜を強化します。ビタミンCは、体内の抗酸化力を高めます。ビタミンA、Cの働きを助けるのが、ビタミンEです。

 体を温めることも大切で、鍋料理がお勧め。体を温める効果があるショウガ、ネギ、ニンニク、唐辛子などの香辛野菜を、料理に添えることも忘れずに。


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原田病

■眼球を覆っている、ぶどう膜が炎症を起こす疾患の一つ

 原田病とは、眼球を覆っている、ぶどう膜の一部あるいは、すべてが炎症を起こす疾患。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

 ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、ぶどうの色をしていて、形も果物のぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の三つの部分で構成されています。

 虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

 虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

 脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

 このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが本症ですが、炎症がぶどう膜の一部に限定されている場合は、その場所によって前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜全体に及ぶ炎症は、びまん性ぶどう膜炎、もしくは全ぶどう膜炎と呼ばれています。

 また、ぶどう膜炎は、炎症を起こしている部位によって虹彩炎、脈絡膜炎、網膜脈絡膜炎と呼ばれることもあります。網膜脈絡膜炎は、脈絡膜とその上の網膜の両方に及ぶ炎症です。普通、片側の目だけに炎症が出ますが、両目に出ることもあります。 

 ぶどう膜に対する過剰な自己免疫反応や、細菌、ウイルス、真菌(かび)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばで、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。

 原田病は頻度の高いぶどう膜炎として、ベーチェット病、サルコイドーシスとともに三大ぶどう膜炎に挙げられています。三大ぶどう膜炎はいずれも、目ばかりでなく、それぞれの疾患に特徴的な全身症状が認められます。原田病とサルコイドーシスは自己免疫系の異常が原因で発症し、ベーチェット病は原因不明で、ウイルス説、アレルギー説、自己免疫説などが考えられています。

 原田病では、色素細胞に対する自己免疫反応が起こることが原因と考えられ、目のぶどう膜だけでなく、色素細胞がある脳、皮膚、毛髪、内耳などの組織も侵されるため、ぶどう膜・髄膜炎症候群とも呼ばれています。

 なぜ色素細胞に対する自己免疫反応が起こるのかは、不明。遺伝的素因が関係しているといわれており、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中の特定の型(DR4やDR53)が深く関わっているといわれています。

 発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなどが、通常、両目に現れます。 網膜と脈絡膜の間に水がたまり、滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

 原田病は、日本人を含め、アジア系の人種に多くみられます。

■原田病の検査と診断と治療

 治療が遅れると炎症が慢性化しやすいので、早めに眼科を受診します。

 医師が眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

 造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

 原田病の治療は、目に永久的な障害が出るのを防ぐため、早期に開始する必要があります。治療の中心は、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の大量点滴投与です。

 ホルモンの一種でるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。

 前部ぶどう膜炎を併発することも多く、局所的な治療として、消炎のためのステロイド剤の点眼や、虹彩と水晶体の癒着防止のための散瞳(さんどう)剤の点眼も行われます。

 多くの場合、発症後2カ月くらいで回復期に入り、網膜剥離の消失に伴って視力も戻ってきます。回復後、眼底は色素脱失により、いわゆる夕焼け状眼底と呼ばれる特徴的な状態になります。色素細胞の損傷によって、皮膚や頭髪、まゆ毛などの一部が白くなることもあります。

 目の炎症は一度治ってから再発することもあり、注意が必要です。特に、過労やストレスが再発の誘引になることがありますので、日ごろから規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。

 万一、原田病と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。


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ハンセン病

らい菌によって起こる慢性の感染症

 ハンセン病とは、抗酸菌に分類される、らい菌によって起こる慢性の感染症。らい病とも従来は呼ばれ、主に脳・脊髄(せきずい)から出る末梢(まっしょう)神経、皮膚、精巣、目、鼻の粘膜が侵されます。

 治療しないと外見が変形することから、ハンセン病の発症者は長い間恐れられ、遠ざけられてきました。感染力が強いわけではなく、死に至ることもなく、抗生物質で治療可能な疾患であるにもかかわらず、今なお一般の人々に根深く恐れられています。そのため、ハンセン病にかかった人は、心理的、社会的問題に苦しむことも多いのです。現在の日本では、ハンセン病は感染症法には含まれず、らい予防法は1996年4月に廃止されました。

 ハンセン病は世界中に100万人以上もの発症者がいる疾患で、インドとネパールを始めとするアジア、タンザニアなどのアフリカ、ブラジルなどの中南米、太平洋諸国に多くみられます。20〜30歳代の人に多くみられますが、どの年齢でも発症します。近年の日本では、新たな発症者は年間10名程度で推移し、そのうち半数以上を在日外国人が占めています。

 感染経路ははっきりしていませんが、発症者の鼻や口からまき散らされた飛沫(ひまつ)を吸ったり、接触したりすることによる人から人への感染が、1つの経路として考えられています。ところが、空気中にらい菌が存在しても、ほとんどの人はハンセン病にはかかりません。約95パーセントの人では、免疫システムが感染を防御するのです。

 発症者の約半数は、おそらく感染者の近くで長期に渡って接触のあった人だと考えられます。たまたま発症者と接触したというような短い接触では感染は起こらず、俗にいわれるような、触っただけで移るなどということはありません。医療従事者は発症者と長いことかかわりますが、ハンセン病にはかかりません。らい菌の感染源としてはほかに、土壌、ほ乳動物のアルマジロ、トコジラミ、蚊などが考えられます。

 発症する場合は、類結核型のような軽いものから、らい腫(しゅ)型のような重いものまでさまざまです。類結核型には、感染性はありません。ハンセン病を起こす細菌は非常にゆっくり増殖するので、症状が出るのは感染してから少なくとも1年後、平均で5〜7年後になります。また、症状が出てからの進行も緩やかです。

 症状は主に、皮膚と末梢神経に現れます。皮膚には、特徴的な発疹(はっしん)や隆起が現れます。神経が侵されると、その神経によって制御される範囲の皮膚に感覚がなくなり、筋力が低下します。

 皮膚の斑(まだら)の数と形状によって、ハンセン病は類結核型、らい腫型、境界型、および未定型に分類されます。これらの病型によって、長期的な経過の見通し(予後)、起こる可能性のある合併症、抗生物質による治療が必要な期間が異なります。

 類結核型では、白い平らな部分が1つないし少数ある発疹が現れます。発疹が現れた部位では、皮下の神経が細菌に侵されるため、感覚がなくなります。

 らい腫型では、皮膚にたくさんの小さな隆起や、より大きく盛り上がった大小さまざまな形の発疹が現れます。類結核型に比べて、感覚のなくなる範囲が広く、一部の筋肉に脱力感が現れます。

 境界型では、類結核型とらい腫型の両方の特徴が出ます。放置した場合、症状が改善すれば類結核型になり、悪化してらい腫型に似た症状になることもあります。

 ハンセン病の最も重い症状は、末梢神経の感染により触覚がなくなることで、痛みや熱さ、冷たさを感じることができなくなります。このため、自分自身の体がやけどや切り傷などを負っても、気が付かないことがあります。繰り返し障害が起こると、足や手の指を失うことにもなります。

 また、末梢神経の障害は筋力の低下も引き起こし、そのために手の指がかぎ爪のように曲がる、足首が底側に曲がる(尖足〔せんそく〕)など、体の変形が起こることもあります。皮膚感染では、はれやしこりがあちこちにでき、顔にできると特に変形が目立ちます。

 さらに、足の裏がただれます。鼻の粘膜が侵されると、慢性的な鼻詰まりが起こり、治療しないで放置しておくと鼻全体が侵されてきます。目に障害が起こると、失明につながります。らい腫型の男性では、勃起(ぼっき)機能不全(インポテンス)が起き、精巣で作られる精子や男性ホルモンの1つであるテストステロンの量が減るため、生殖能力がなくなります。

 ハンセン病は経過によっては、治療を受けていても、体の免疫応答による炎症反応を起こすことがあります。発熱、皮膚や末梢神経の炎症が多く、ほかにリンパ節、関節、精巣、腎(じん)臓、肝臓、目の炎症も起こります。

■ハンセン病の検査と診断と治療

 なかなか消えない特徴的な発疹、触覚の喪失、筋力の低下による体の変形などの症状があれば、ハンセン病が強く疑われます。らい予防法の廃止後、ハンセン病は保険診療の適用になり、診断と治療は一般の医療機関、主に皮膚科外来で行われています。

 診察ではまず、出身地・出身国、小児期の居住地、家族歴、気付かずにいるやけどやけがの既往などを問診し、その後、皮膚症状の検査、神経症状の検査、らい菌の検出、病理組織検査などを行います。診断の確定には、らい菌の検出が重要です。らい菌の培養は現在のところ不可能なので、皮膚症状のある部位にメスを刺して組織液を採取する皮膚スメア検査、皮膚の病理組織を抗酸菌染色する検査、らい菌の特異的な遺伝子(DNA)を証明する検査のうち、複数の検査が行われています。

 かつて、ハンセン病の発症者は顔や体が変形するために社会から追放され、施設や特定の集落などに隔離されてきました。今でもまだ、こういうことが行われている国はあります。しかし、ハンセン病は隔離の必要はありません。感染力があるのは未治療のらい腫型だけで、それも簡単に感染するものではありませんし、いったん治療を始めれば感染力はなくなります。

 さらに、ほとんどの人はハンセン病に対する免疫をもともと持っており、感染のリスクがあるのは、ハンセン病の発症者の近くで長期間一緒に過ごす人に限られています。リスクがある人は定期的に検査を受ける必要がありますが、抗生物質の予防投与は行われません。結核の予防に使われるBCGワクチンがある程度ハンセン病にも予防効果を持ちますが、あまり使われていません。

 抗生物質による治療を行えば、ハンセン病の進行は抑えられます。すでに障害を受けた神経や体の変形を元に戻すことは、できません。それだけに、早期発見と早期治療により後遺症を残さないことが、非常に重要です。特定の抗生物質に耐性を示すらい菌もあるので、治療には通常複数の抗生物質を使います。ダプソン(DDS)とリファンピシン(抗結核剤)の併用が標準的に用いられます。

 ダプソンは比較的安価で、副作用もアレルギー性の発疹や貧血がたまに出る程度の安全な薬です。リファンピシンはやや高価で、薬効も強いですが、重い副作用として肝障害やインフルエンザ様症状が起こることがあります。重症例の治療では、クロファジミンを追加的に使います。ほかには、エチオナミド、ミノサイクリン、クラリスロマイシン、オフロキサシンなどが使われます。

 らい菌は根絶しにくいので、抗生物質による治療を長期間行う必要があります。感染症の重症度や医師の判断によって、6カ月から数年に渡って続けます。らい腫型の場合は、治療を一生続けることを勧める医師もいます。


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ピック病

■人格の変化が目立つ認知症の一種

 ピック病とは、人格の変化や理解不能な行動を特徴とする疾患で、認知症の一種。働き盛りの40歳~60歳に多く発症し、大脳皮質のうち前頭葉から側頭葉にかけての部位が委縮します。

 ピック病の発症ケースは、同じく大脳皮質のうち頭頂葉と側頭葉後部が委縮するアルツハイマー型認知症よりもはるかにまれです。

 1898年にチェコのアーノルド・ピックにより報告された疾患で、100年以上経過してもまだ世界共通の明確な診断基準すらなく、正確な発生頻度も不明。疾患を正しく診断できる医師が少ないために、アルツハイマー型認知症と誤診されたり、うつ病や統合失調症と間違えられて、不適切な治療やケアを受けるケースも少なくありません。

 認知症も発症する年代によって、40~60歳代で発症する初老期認知症と、60歳、ないし65歳以降に発症する老年期認知症に大まかに分けられますが、ピック病は初老期認知症の代表疾患。40歳代~50歳代にピークがあり、平均発症年齢は49歳。女性の発症率が多いアルツハイマー型認知症に対して、そういった性差はありません。

 記憶力の低下を主症状とするアルツハイマー型認知症に対し、ピック病の初期では、記銘力・記憶力、見当識(けんとうしき)、計算力などの知的機能は保たれています。

 初期で目立つのは人格障害で、認知症の中では人格の変化が一番激しくなります。アルツハイマー型認知症の人格障害はピック病に比べれば軽く、脳血管性認知症ではさらに軽いといわれます。

 人格障害には、易怒、不機嫌、爽快なども認められ、人を無視した態度、人に非協力な態度、不まじめな態度、ひねくれた態度、人をばかにした態度などが目立つようになります。しかし、本人に病識はありません。

 ピック病特有の症状といえる滞続言語も、認められます。滞続言語とは特有な反復言語で、会話や質問の内容とは無関係に、同じ内容の話を繰り返したり、おうむ返しを続けたりします。これらは持続的で、制止不能です。

 時刻表のように毎日決まった時間に、散歩や食事、入浴など日常生活のさまざまな行為を行うようになることもあります。この際、やめさせたり、待たせたりすると怒ります。毎日、同じ物、特に甘い物しか食べない場合もあり、際限なく食べる場合もあります。

 自制力の低下により、周囲には理解不能な行動、状況に合わない行動もみられます。例えば場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや、配慮を欠いた行動をしたり、周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為を示します。

 また、自発性が低下し、考え不精がみられる一方で、多動、外出、徘徊(はいかい)、落ち着きのなさ、多弁、衝動行為、粗暴行為が増加することもあります。窃盗や万引きなどの犯罪を犯す場合もありますが、反省したり説明したりできず、同じ違法行為を繰り返すこともあります。

 症状が進行すると、意欲減退が生じ、仕事を放棄して引きこもったり、何もしないなどの状態が持続し、自発性行動の少なさは改善しません。身だしなみにも無関心になり、不潔になります。周囲の出来事にも無関心になります。

 やがて、記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れます。最終的には、重度の認知症に陥ります。

■検査と診断と治療

 できるだけ早めに医療機関を受診し、詳細な診断を受けることが勧められます。また、医療機関を受診する際には、できればピック病の専門医を訪ねることが併せて勧められます。

 医師による検査では、CT、MRIによって、前頭葉と側頭葉に目立った局所性の脳委縮が認められるかを調べます。SPECT、PETという脳血流や脳ブドウ糖代謝を見る検査によって、前頭葉と側頭葉の血流、あるいは代謝の低下が認められるかも調べます。 

 診断に際しては、アルツハイマー型認知症、統合失調症との鑑別が行われます。アルツハイマー型認知症では記銘・記憶力、見当識、計算力などの知的機能低下が初期症状ということを始め、症状、検査などの特徴によって、知的機能が保たれているピック病と鑑別されます。統合失調症では幻聴がみられるということを始め、症状、検査などの特徴によって、幻聴はほとんどみられないピック病と鑑別可能です。

 ピック病は原因が不明であるため、その研究が立ち遅れていて、治療法は今のところ発見されていません。対症療法をアルツハイマー型認知症と同様に行うのが一般的で、落ち着きのなさ、多動、徘徊などに対して、抗精神病薬を使うことがあります。

 介護も重要となりますが、40歳代~50歳代に多発するピック病の人はまだ若いので、老人に比べると力も強く、その上徘徊などもあるため、その対応は困難を伴うことも多くみられます。場合によっては、精神病院への入院を余儀なくされることもあります。

 予後は不良とされ、全経過は短めで2~3年から、長くても8~10年で衰弱し死亡することが多く、アルツハイマー型認知症よりも短い傾向にあります。


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非定型うつ病

■典型的でなく、若い女性に多いうつ病

 非定型うつ病とは、典型的なうつ病とは異なるタイプのうつ病。発症した人は周囲から、うつ病と思われないことや、社会不安障害など他の心の病気を合併することが少なくありません。

 非定型うつ病は従来、不安障害(神経症)や人格障害などと診断されることが多かったものですが、最近は米国などで、典型的なうつ病とは違うアプローチで治療され、その割合も米国では、うつ病全体の3~4割を占めています。日本では精神科医の間でもようやく認知されてきた段階で、大きな環境の変化に対応できない適応障害と間違われて、診断されるケースもあります。

 従来の典型的なうつ病は定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれるもので、気分の落ち込み、意欲・食欲・集中力・性欲の低下、不眠などが主な症状となります。

 この定型うつ病とは現れる症状が違うのが非定型うつ病で、気分の落ち込みはあるものの、何か楽しいことがある時には元気が出るのが大きな特徴です。その他、タ方になると調子が悪くなったり、過食や過眠ぎみになるなどの特徴もみられます。

 20~30歳代でかかるうつ病では、多くがこの非定型うつ病に相当すると考えられます。特に、女性の場合は8割が相当し、男性と比べ3~5倍多いとされています。

 以下、定型うつ病と非定型うつ病の症状を比較します。気分の面では、定型うつ病は終始落ち込んで、元気や気力がないのが特徴。出来事の内容を問わず、何に対してもやる気が持てず、今まで積極的に楽しんでいた趣味にも、関心や喜びが持てなくなります。

 一方、非定型うつ病は気分の落ち込みや気力、集中力の低下など、うつ病に特有の症状はあるものの、楽しいことやいいことがあると明るくなります。すなわち、出来事に反応して気分が変わる「気分の反応性」がみられます。発症者は常に落ち込んでいずに気分が高揚している時もあり、社会生活の適応度もそれほど悪くないため、周りからの理解を得にくくなります。

 リズムの面では、定型うつ病は「モーニング・デプレッション」と呼ばれ、朝起きた時に調子が悪く、気分が落ち込みます。家事や仕事も面倒で、何をやる気にもなれないという憂うつな気分がダラダラと続き、やがてタ方くらいになると少し気が楽になってくるのが特徴。

 一方、非定型うつ病は1日のうちでは、タ方になると気持ちが不安定になりやすいのが特徴。午前中から昼は比較的穏やかに過ごせるものの、「サンセット・デプレッション」と呼ばれて、タ方から夜になると不安やイライラが高まって調子が悪くなります。時には、気分が高ぶって泣きわめいたり、リストカットなどをしてしまうことも。調子の悪い時間帯が、定型うつ病と全く逆になります。

 睡眠の面では、定型うつ病は夜、布団に入っても、なかなか眠れず、夜中にも度々目が覚める上、朝早くに目が覚めてしまい、そのまま眠れません。特に早朝に目覚める傾向が強く、慢性の睡眠不足になりがちです。

 一方、非定型うつ病は1日の睡眠時間が10時間以上にも及ぶほど、「過眠」傾向にあります。睡眠時間が長いにもかかわらず、昼間に眠気を感じ、いくら寝ても寝足りないような気がします。

 食欲の面では、定型うつ病は性欲などを含めた基本的な欲求が低下するのが特徴で、食欲が落ちて食べる量も減るため、やせて体重が落ちます。

 一方、非定型うつ病は食べることで、気持ちを紛らわしたり、甘い物が無性に欲しくなって発作的に食べる「過食」傾向がみられ、体重も増加しがち。

 また、非定型うつ病では、疲労感を通り越して、手足に鉛がついたように、体が重くなる「鉛様まひ」を示すこともあります。

 発症する人の性格を分析すると、定型うつ病では、きちょうめんで、まじめで、完壁主義な人ほどなりやすい傾向があります。

 一方、非定型うつ病の場合には、相手からどう見られるかを気にし、他人の顔色をうかがう性格傾向がみられ、特に他人から拒絶されることに過敏になる「拒絶性過敏」が重要な特徴となっています。他人の何気ない一言であっても、過剰な気分の落ち込みの引き金となりやすいのです。

 その根底には、他人の評価が気になってしょうがないといった不安があり、子供のころから、常に相手のいうことを尊重し、従うために「いい子」といわれていた人、人見知りがある人、人前で上がりやすい人、うまく自己主張するのが苦手な人がなりやすい傾向にあります。

 原因を分析すると、定型うつ病では、脳内で情報交換をしている神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが少なくなるために、発病するといわれています。非定型うつ病でも、神経伝達物質のノルアドレナリンが関係していると見なされていますが、まだはっきりしたことはわかっていません。

 非定型うつ病の日常生活における支障としては、他人の批判を過剰に受け止めてしまうために、親密な人間関係を築くのが困難であったり、他人の批判を恐れるあまりに、人間関係に気を使いすぎてしまうことが挙げられます。過眠傾向にあるため、朝、起きれなくて、約束の時間に遅刻してしまうこともあります。

 また、病気の影響で、大脳の前頭葉の血流が悪くなりやすくなります。ここは、思考や情動をつかさどっていて、人間が人間らしくあるために大切な部分。血流が悪くなると、前頭葉がスムーズに機能しにくくなって、心身の不調として出ることがあります。

■薬物療法と心理療法による治療

 非定型うつ病の症状が2週間以上続き、つらい時には、我慢をせず精神科や心療内科へ相談に行き、適切な治療を受けましょう。

 病院によっては、定型うつ病と非定型うつ病を区別して診断しないこともありますが、治療法や対処法に異なる部分があるため、注意が必要です。そもそも、この非定型うつ病がうつ病の一種として認識されたのは、日本では近年のこと。従来は、適切な治療や投薬が行われないために治りづらく、ほかの病気と診断されることも多かったのです

 非定型うつ病の治療には、薬の服用による薬物療法が行われるほか、生活のリズムを改善するための生活指導や、考え方を整理し捕らえ直すための心理療法が行われます。

 時には、入院による治療が行われることもあります。うつ病には、定型・非定型を問わず自殺の危険性があり、特に非定型では、人間関係のやり取りの中で感情が激し、衝動的に自殺を完遂してしまう恐れがあることに、対処しなければならないためです。 

 非定型うつ病に使われる薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。通常、定型うつ病に多く使われるパキシルなどのSSRIだけでは、非定型うつ病にはあまり有効でないことがわかっているために、薬を組み合わせるのです。

 薬を飲むことで、落ち込みやイライラが改善され、気分が安定して楽になりますが、治るまでには1年は続けて飲むことが必要です。

 薬による治療に加え、認知行動療法などの心理療法的なアプローチも重要です。とりわけ、認知行動療法には薬物療法と同等の効果があることが確認されています。

 非定型うつ病の人は、マイナス思考に捕らわれがちで多角的な思考ができず、突発的な問題が起きると、状況や自分の気持ちを整理することが困難になってしまいます。気分の不安定さを解消するために、ギャンブルや買い物、セックス、お酒などに依存する傾向もあり、そうしたものにのめり込む罪悪感から自傷行為を繰り返してしまうことも。

 そこで、認知行動療法の助けを借りて、自分の考え方の癖を知り、よりよい行動に修正する方法で、カウンセリングやグループ療法を通じて、ストレスへの有効な対処法や人間関係の結び方を身に着けます。この認知行動療法は、前頭葉の働きを高めるのにも効果的な治療法です。

 認知行動療法のプログラム例としては、親など大切な人から愛されているという認知の増強・確認、劣等感の除去、自己主張のスキル、自己の客観視の向上、ストレスヘの対処、情動コントロールがあります。

 しかしながら、休養を取り、薬を第一とした適切な治療を受けることで回復していく定型うつ病と異なり、非定型うつ病の場合は悪循環を繰り返すことが多く、なかなか治りにくいのが現状です。

 治療を続けるうちに、ふとしたきっかけによって、よくなることもあります。人間関係で不快な刺激が少なくなるなど、人によってそのきっかけはさまざま。職場の人間関係が影響する場合、異動を申し出たり、転職を試みるのも一つのきっかけになります。

 症状が治まっても、うつ病は再発しやすい病気ですので、薬を飲み続けることが大切。自己判断で薬をやめるのは禁物です。治癒には平均3年かかるとされるので、焦りも禁物。

 そして、医師による治療も大切ですが、この非定型うつ病の改善には、普段の生活習憤も重要なカギを握っています。 

■非定型うつ病を改善する生活のヒント

 非定型うつ病では過眠傾向になるため、昼夜が逆転し、生活リズムが乱れがちになります。生活のリズムを乱れたままにしておくと、憂うつ、イライラなどの気分や、体の重さといった症状がますます悪化してしまいます。

 規則正しい生活を心掛け、軽い運動を行う。この当たり前のことが、気持ちを安定させる一番の特効薬となります。とりわけ、仕事に行くなど昼間は目的を持って活動することが、リズムの乱れを改善するために大切です。

 具体的な方法を、以下に紹介します。

規則正しい生活をする

 朝はきちんと起きて、3度の食事を食べ、夜は12時前には寝るという規則正しい生活を心掛けましょう。人間の体内リズムは、朝起きて光を浴びることで調整されます。目に光が入ると、脳の松果体から出るメラトニンという睡眠物質の分泌が抑制され、体内リズムがリセットされることによって、1日およそ24時間で一巡する体のリズムが整います。 

可能な場合は仕事に行く

 仕事に行ける場合には、多少つらくても時間どおり会社に出勤し、業務に取り組むことも必要です。やらなければいけないことがあり、それに取り組むことが、精神の覚醒(かくせい)を促すため、体内リズムを正常にしてくれるのです。

毎日、何か目標を持って生きる

 仕事を持っていない人の場合には、朝起きたら「今日はこれをしよう」、「何かをやり遂げよう」と、その日の目標を持って、毎日を生きることが大切。「この本を読もう」など簡単なことでかまいません。自覚を持つことが、昼間の覚醒を促します。

掃除や片付けなど、整理整頓を心掛ける

 体を動かす方法としては、掃除や片付けなどの整理整頓(せいとん)もお勧め。適度な運動になるだけでなく、「今日は部屋の掃除をする」ということが目標になって、リズム調整に役立ちます。きれいになると達成感もあり、周囲の人に感謝されることで人間関係の改善にもなり、気分がよくなります。

外に出て散歩などで体を動かす

 1日1回は外に出て、太陽の光を浴び、公園を散歩するなど体を動かすようにします。ウォーキングなどの軽い有酸素運動をすると、脳では気分を安定させる脳内物質の分泌が増え、心も体もリラックスします。

身近な人がうつ病になったら

 うつ病のタイプによって、接し方が違います。典型的なうつ病である定型うつ病の場合は、とにかくゆっくりと体を休め、休養を取ることが必要。周囲の人が「頑張れ」と言葉を掛けたり、励ましたりすると、本人が自分自身を追い込んでしまうため、よくありません。

 逆に、非定型うつ病の場合は、少し励ますことがかえって本人のためになります。「決まった時間に起きて会社に行こうよ」、「1日1万歩を目指して歩いてみたら」など掛ける言葉は優しくても、心は厳しく持ちながら、本人の気力を奮い立たせるように接することが大切です。

 また、非定型うつ病では、周囲の人に助けを求めるサインとして、衝動的に自殺を企てる恐れがあります。不安や焦燥感が強い時は、しっかり見守ることが大切になります。


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ぶどう膜炎

■眼底を覆っている、ぶどう膜が炎症を起こす疾患

 ぶどう膜炎とは、眼球を覆っている、ぶどう膜の一部あるいは、すべてが炎症を起こす疾患。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

 ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、ぶどうの色をしていて、形も果物のぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の三つの部分で構成されています。

 虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

 虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、眼の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

 脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分です。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

 このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが本症ですが、炎症がぶどう膜の一部に限定されている場合は、その場所によって前部ぶどう膜炎、中間部ぶどう膜炎、後部ぶどう膜炎と呼ばれます。ぶどう膜全体に及ぶ炎症は、びまん性ぶどう膜炎、もしくは全ぶどう膜炎と呼ばれています。

 また、ぶどう膜炎は、炎症を起こしている部位によって虹彩炎、脈絡膜炎、網膜脈絡膜炎と呼ばれることもあります。網膜脈絡膜炎は、脈絡膜とその上の網膜の両方に及ぶ炎症です。普通、片側の目だけに炎症が出ますが、両目に出ることもあります。 

 ぶどう膜に対する過剰な自己免疫反応や、細菌、ウイルス、真菌(かび)などによる感染が原因となることがありますが、原因を特定できないこともしばしばで、特発性ぶどう膜炎と呼ばれます。

 昔から有名なぶどう膜炎として、ベーチェット病、サルコイドーシス、原田病が挙げられ、三大ぶどう膜炎と呼ばれています。三大ぶどう膜炎はいずれも、目ばかりでなく、それぞれの疾患に特徴的な全身症状が認められます。サルコイドーシス、原田病は自己免疫系の異常が原因で発症し、ベーチェット病は原因不明で、ウイルス説、アレルギー説、自己免疫説などが考えられています。

 ぶどう膜炎の初期症状は、軽度のものから重いものまでさまざまで、炎症の部位や程度によって異なります。

 前部ぶどう膜炎は最も症状が激しく、目の激しい痛み、結膜の充血、明るい光に対して過敏になる、視力の低下などが特徴的です。医師の検査においては、瞳孔が収縮し、虹彩付近の結膜の上に血管が浮き出す、眼の前部を満たしている液体の中に白血球が浮遊する、角膜の裏面に白血球が沈着するといった所見がみられます。

 中間部ぶどう膜炎は普通、痛みがありません。視力の低下、視界に黒く不規則な形の点が浮遊する飛蚊(ひぶん)症などの症状がみられます。

 後部ぶどう膜炎では、視力が下がることが多く、飛蚊症もよくみられます。そのほか、網膜剥離(はくり)、視神経の炎症などがみられます。網膜剥離の初期症状として、視界がぼやけることもあります。視神経の炎症では、小さな視野欠損から完全な失明までさまざまな視力障害を生じます。

 炎症が全体に及ぶ、びまん性ぶどう膜炎では、上記の症状の一部または全部が現れます。

 ぶどう膜炎では、目が急速に障害されることがあります。黄斑(おうはん)部のはれ、緑内障、白内障といった合併症が長期間に渡って続き、視力を低下させることもあります。ぶどう膜炎は発症しても1回きりのことが多いのですが、中には数カ月から数年の間に再発する人もいます。

■検査と診断と治療

 ぶどう膜炎では、一般的な眼科の検査に加え、必要に応じて、造影剤を注射して眼底の写真を撮り、炎症がどのような形で起きているかを確認するために、蛍光眼底造影検査、またはICG赤外線眼底造影検査が行なわれます。

 また、ほかの臓器にも影響を及ぼすような病気が疑われる場合は、血液検査、胸部X線検査、免疫の反応をみる一つとしてツベルクリン反応などの全身検査が行なわれて、原因の究明や治療効果の判定をします。

 ぶどう膜炎の治療は、目に永久的な障害が出るのを防ぐため、早期に開始する必要があります。治療の中心は、炎症を鎮めるためのステロイド薬の点眼や内服、あるいは点滴です。ステロイド薬をやめた時には、非ステロイド性抗炎症薬が用いられます。

 ぶどう膜炎の原因を治療する目的で、他の薬が使われることもあります。例えば、感染症が原因の場合は、感染源である細菌、ウイルス、真菌などの病原微生物を除去するための薬が処方されます。 

 虹彩は水晶体と癒着しやすいので、これを防止するための治療も同時に行われます。瞳孔を広げる点眼薬を用いて、虹彩が癒着するのを防ぐとともに、虹彩と毛様体のうっ血を解消して、安静を保ち痛みを和らげるようにします。

 目の奥の炎症が強い場合は、ステロイド薬や免疫抑制薬の全身投与が行われます。ステロイド薬の全身投与の場合、症状の改善に伴って徐々に量を減らしていくので、ある程度長期戦となります。自覚症状が改善したからといって、自己判断による急激な減量や中止は、かえって炎症を再燃させ、長引かせる危険があります。また、ホルモンの一種であるステロイド薬は、最も効果的かつ副作用を少なくするため、朝に多く、夕方に少なく服用するようにします。

 免疫抑制薬の中には、同じ量を内服しても人によって効き目が違うものもあり、治療に有効な薬の量を決めるために、血液中の薬の濃度を測定しなくてはならない場合もあります。副作用のチェックのためにも、定期検査は重要です。  

 なお、ぶどう膜炎は再発することもある疾患で、特に過労やストレスが再発の誘引になることがあります。日ごろから規則正しい生活を心掛け、心身ともに十分な休養を取ることが大切です。

 万一、ぶどう膜炎と診断された時は、症状の経過や治療内容をよく書き留めておき、転居などで通院する医療機関が変わった場合でも、スムースに治療を引き継げるようにしておくことが望ましいといえます。


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変形性股関節症

■関節の老化変性などで、股関節が痛み、動きも悪化

 変形性股(こ)関節症とは、関節軟骨の変性や摩耗に始まり、さまざまな関節変化が進行する疾患。

 年を取っていくに従って、骨や関節にも老化が現れてきて、関節軟骨は次第に消耗して擦り切れ、軟骨の下の骨が現れ、関節の端のほうでは骨のとげが出てきて関節が変形してきます。このように変形性関節症は老化変性を基盤とする疾患ですが、関節に過度の負担がかかったり、関節機構に異常があったりすると、軟骨変性が加速されて、必ずしも老人でなくても同様な変化が生じてきます。

 日本では、変形性股関節症の大多数が、先天性股関節脱臼(だっきゅう)後に生じる二次性のものです。もちろん、先天性股関節脱臼がほぼ完全に治癒すれば、変形性股関節症にはなりませんが、往々、程度の差こそあれ関節不適合を残して治ります。このような場合には、年月の経過とともに、次第に変形性股関節症へと進展していきます。

 この先天性股関節脱臼や臼蓋(きゅうがい)形成不全に起因する変形性股関節症がほとんどで、その大部分が女性に起こります。このほか、ペルテス病、大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)、大腿骨頭すべり症、外傷などに起因するものもあります。

 臼蓋(きゅうがい)形成不全は、股関節の屋根の作りが浅いものです。股関節で大腿骨頭を受け入れる部分を股臼といい、骨頭にかぶさり体重を支える部分の股臼が、この臼蓋です。

 変形性股関節症の症状としては、初めのころは歩きすぎたり、スポーツ後などに股関節部の痛みや疲れやすさを感じます。休息すればよくなりますが、繰り返すうちに痛みが強くなり、遠距離を歩かなくても、あるいは少し歩いただけでも痛みが起こり、足を引きずるようになってきます。股関節の動きも悪くなって、靴下の着脱や足のつめ切りなどが不自由になります。

 痛みは股関節部に限らず、臀部(でんぶ)、大腿部、あるいは膝上部に起こることもあり、注意が必要です。

■変形性股関節症の検査と診断と治療

 X線検査を行うと、大腿骨頭は変形し、関節の透き間が狭くなり、骨頭や臼蓋の骨に丸く、薄くなって抜けている部分や、関節端のほうでは骨の出っ張りなどがみられ、変形性股関節症の診断がつけられます。

 変形性股関節症にはつえの使用が有効で、1本のつえを使うと、股関節への荷重が約4分の1から5分の1くらいに減ります。比較的安静をとり、薬で痛みが抑えられる間はよいのですが、痛みが抑えられなかったり、次第に痛みが強くなっていく場合には、手術的手段が行われます。

 手術方法にはいくつもの種類があり、個人に最も適していると思われる方法がとられます。

 股関節周辺の筋肉を切り離し、関節に加わる力の軽減を図る簡単な筋離開術から、荷重面積の増加を目的とする骨切り術、股関節形成術や股関節を全部人工のものと置き換える人工関節置換術などがとられます。また、片側のみを発症した比較的若い人で、立ち仕事や重労働をしなければならない場合には、股関節をよい角度で固定する関節固定術もとられます。

 疾患の本態から考えてみても、進行を食い止めることはできません。しかし、股関節にかかる負担を軽くすることで、進行のスピードを遅らせたり、痛みなどの症状の改善を得ることができます。つえを使うほか、筋力を強化すること、太っている人は管理栄養士による食事指導と運動処方によって体重を減らすことが、やはり股関節への負担を軽減することになります。

 たとえ自覚症状には変化がなくても、数カ月から半年くらいに1度は、必ず医師の診察を受け、病態を把握しておくことも必要です。


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便の変化

●腸の働きについて

 人体の下半身からの出物として、腸からの大便という固形物、すなわちウンコがある。

 この大切な排泄物の出具合が悪くて、朝から「やれ下痢だ」、「また便秘だ」と、腹を抱えてうずくまったり、苦しんでいたのではいただけない。人間が健康を手に入れるには、やはり内臓の正常な働きが必要なわけである。

 そこで、腸の仕組みについて、まずは小腸から探っていこう。

 最近の生理学の教えるところによると、人間の小腸という消化器官は、取り出せば、七~八メートルにもなるという、とんでもなく長い管状の臓器である。自分の腹に手を当ててみても信じられないほどだろうが、通常、体の中では、およそ三メートルほどの長さに縮んで収まっている。

 なぜそんなに長いかといえば、人間が生きていくためには、胃で消化された食物から栄養やエネルギーを摂取、吸収しなければならないからである 

 しかも、小腸の内側は、絨毛(じゅうもう)の表面をまた絨毛でおおうという、無数の絨毛で埋め尽くされた構造で、必死に表面積を稼いでいる。その表面積は、何とテニスコート二面分に相当するという。さらに、一本の絨毛は約五千個の栄養吸収細胞からできており、小腸全体で千五百億個と推定される。驚くべきは、人体の機能、働きの素晴らしさである。

 こうした構造を持つ消化管である小腸は、胃から、かゆ状となって送り込まれた食物を、改めて消化したり、栄養を吸収し、大腸へ送り出す重要な役割を持つ。

 詳しくいうと、胃のほうから十二指腸、空腸、回腸に、小腸は大きく分けられる。それぞれが消化酵素を多量に含んだ腸液を分泌し、あるいは膵臓(すいえき)からの膵液、胆嚢(たんのう)からの胆汁も一緒に合わせて、最終的には、かゆ状食物から栄養を取り入れていくのである。

●栄養を吸収する小腸、便を形作る大腸

 かゆ状の食物が栄養のほとんどを吸収され、小腸を後にするのは、食後四~六時間といわれている。身ぐるみはがされた残滓、液状のカスとなって、大腸に到達する。

 盲腸から始まる大腸は、時計回りに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、そして直腸に区別できる。

 この大腸の大きな役割は、先の液状のカスから水分と電解質を吸収し、固形物、すなわちウンコを作ることである。

 ウンコは、下行結腸からS状結腸にとどまる。その後、ある一定の量にウンコが達した場合や、胃に食物が入った刺激で起こる大きな蠕動(ぜんどう)運動があると、ウンコは直腸に送られる。この時の圧力を自律神経が察知して大脳に伝えると、便意を催すという仕組みだ。

 この間、およそ二十四時間から七十二時間。口にした食物がようやく、腸の末端の肛門(こうもん)から出てくるのである。

 このようにして、我々日本人は、一日に平均で百五十グラムから二百グラムほどのウンコを出すのである。一日当たり百五十グラムとして、八十年間生きれば、単純計算で五トン近くの排出となる。

 では、出てきた我々人間のウンコは、なぜ一様に臭いのであろうか。実はみな、腸に住む細菌のせいである。

 特別な環境で出生、飼育された無菌動物のウンコは、栄養を吸収された食べ物の残りカスだけだから、臭くない。一方、我々のするウンコは普通、三分の一から二分の一が腸内細菌ともいわれており、特有のにおいは腸内細菌の分泌物が原因なのである。

 言い換えれば、人間のウンコは細菌のウンコによって臭い、ともいえるのである。

 ところで、人間は誰でも、一生に一度だけ臭くない通じをする。生まれて一番最初にするウンコが、それである。

 胎内で、母親の免疫系に守られている胎児は、いわば無菌状態で、腸にも細菌がいない。そのため、赤ちゃんが胎内でためていて、生まれてすぐするウンコは、臭くないのである。

 しかし、生まれた翌日のウンコには、すでに大腸菌を始め、腸球菌や乳酸桿菌(かんきん)など、一グラム当たり一千億個の菌が見られるのである 

●便という体からの情報は役に立つ

 先に、日本人の一日のウンコの量は平均で、百五十グラムから二百グラムと述べたが、アメリカ人はせいぜい百五十グラムである。

 これは、日本人のほうが植物繊維を含む食べ物を多くとっているからなのだ。人間の腸は、植物繊維を分解する酵素を持っていない。だから、植物繊維はそのままカスとして出てくるのである。「便秘気味の人は野菜を食べよ」といわれるのは、繊維質が残ったほうが便がかさばって出やすくなるからなのだ。

 よって、便秘も日本人よりアメリカ人のほうが多いのである。植物繊維を多くとっているアフリカ原住民には、一日に七百五十グラムもの便をする種族がいるとのこと。 

 比較ついでに、日本人とアメリカ人の一物はどちらが臭いかというと、ずばり答えはアメリカ人である。

 一般の日本人の食事は、低蛋白、低脂肪、高炭水化物、高食塩、高繊維。欧米人はその逆で、高蛋白、高脂肪、低炭水化物、低繊維。ウンコのにおいで特に臭いインドールや硫化水素は、みな蛋白質のアミノ酸が細菌によって代謝されてできるのである。

 また、植物繊維には、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やし、同時に悪玉菌が繁殖する前に排泄をうながすという働きも期待できる。加えて、ウンコの量を増すということは、薄めるということでもあるから、蛋白を多く摂取するアメリカ人のほうが一物が濃い。すなわち臭いといえるだろう。

 しかし、最近は日本人の食生活も急速に欧米化しているから、排泄物もどんどん臭くなっているはずである。 

 もう一つ比較すると、動物はみんな排泄行為をするのに、お尻(しり)をふくのは人間だけである。が、動物も人間も、消化器官の仕組みはたいして変わらない。

 コロコロとした丸いウンコができるウサギは、腸が長いために、水分を絞りとってしまうのである。我々人間も、便秘をすると固くてコロコロした一物が出るのは、徹底的に大腸で水分を絞りとられた結果のようである。

 さて、体内で不要になって排泄された大便も、実は、体外に出た後も役に立つ存在なのである。今、世の中はリサイクル・ブームであるが、ウンコも負けてはいない。自然農法やウンコを飼料にした豚や牛の飼育が見直されているし、リンやビタミンB12を大量に含む資源としても注目されている。 

 リサイクルの極端な例は、先のウサギのコプロファジー(食糞症)である。ウサギは一日一回、普通の便とは違うコプロファジー用の便をするが、それを食べられないようにしてしまうと、衰弱して死んでしまう。ウサギは草や木の葉を一度体内のバクテリアで発酵させ、出てきたウンコを食べることで、不可欠な蛋白質やビタミンを補っているようだ。

 人間の場合はそういう極端なリサイクルは無理にしても、体からの黄金の出物は健康の指標として役に立つのである。

 ウンコはいわば食べ物の残滓であり、カスであるが、二十四~七十二時間にわたる自分の体の情報、とりわけ胃腸のメカニズムがはっきりと現れる。

 体からのメッセージの解読法を心得ておくのは、誰にとっても決して無駄にはならないはずである。

 基本となる正常便の量は、一日に百~二百五十グラム。形は太めのバナナ状で、色は黄褐色が理想的だ。水洗便所の水に浮けば、もういうことはない。一日にちょっと茶色いバナナ二、三本も出ていれば、内臓はたいそう健康である証拠。

 平均百五十~二百グラムといわれる便の組成は、約七十五パーセントが水分、残り二十五パーセントが固形成分であり、意外なことに便の大部分は水分なのである。

●厄介な下痢が起こるメカニズム

 健康の証(あかし)の正常便に対して、誰もが経験したことがある便のトラブルは、便秘と下痢であろう。

 二つの厄介な症状は、大腸の機能が正常に働かなくなった時に起こる。食べ物の栄養の約九割を吸収してしまう小腸に、トラブルはほとんど見当たらないといわれ、問題が生じるのは残りカスをウンコにして排泄する大腸なのである。

 まず、いわゆる下痢の原因は、大腸が水と酸・アルカリ・塩類の電解質を正しく吸収できないことによる。正常な便は七十五パーセント程度の水分を含んでいるが、この割合がさらに高くなると泥状になったり、液状になったりするのである。水分を大量に含んだままでは、便は固まらないという単純な理屈だ。

 しかしながら、下痢に至る過程は、主に二つが挙げられる。

 一つは、ストレスなどが原因で、腸の蠕動運動が激しくなり、水分を吸収し切れないまま内容物が直腸に向かってしまうもの。試験の前になると決まって、トイレにゆきたくなったなどという経験がある人も、多いことだろう。

 二つ目は、膵臓疾患などで、腸粘膜からの水分吸収が妨げられた時に起こるもの。二日酔いの下痢もこれに当たり、アルコールの作用によって、膵液の分泌が後退し、脂肪が分解されずに大腸へ送られるために、水分の吸収が妨げられるのである。

 牛乳を飲むと下痢をしてしまう人も、多いだろう。これは乳糖不耐症と呼ばれ、日本人では五人に一人の割合で存在する。牛乳に含まれる乳糖は、小腸で分泌されるラクターゼという消化酵素によって分解され、吸収される。乳糖不耐症の人は、このラクターゼが少ないため、乳糖は大腸で細菌によって分解される。この時に作られた乳酸や炭酸ガスが、腸を刺激して、腹痛や下痢を引き起こしてしまう。  

 ともあれ、アルコールや牛乳によるものはじきに治ってしまうが、下痢をともなった腹痛が起こったら食中毒、左下腹部が痛み、頻繁に下痢をする場合は急性大腸炎の疑いがあるので、注意を促しておきたい。専門医の診断を仰ぐのが賢明である。

 また、激しい下痢などのため脱水症になったら、常識にこだわらず大いに水を飲むことを勧めたい。体の水分が尿になって排出されるのは健康な生理的現象であるが、この下痢をしたり、吐いたりというのは、脱水作用といって非生理的なものであるといわれる。

 ことに子供の体には水分の予備が少ないから、十回ぐらい下痢をすると脱水症状を起こしてしまうことが多い。下痢の時には、余計に水を飲ませるべきである。 

●便秘を極度に気にする必要はない

 一方の便秘の原因を探ろう。例えば、消化のいいものばかりを食べて、繊維が足りない場合、材料不足のためになかなか便にならない。排泄まで時間がかかるのである。それでも、腸は水分をとれるだけとろうと律義に働く。結局、水分のないカチカチウンコになってしまうのである。

 トイレにゆくのを我慢して、便意を無視し続けることも原因。おおげさにいうと、しまいには便意の感覚がマヒする。せっかくウンコの元が直腸まで到達しても、便意が起こらなければ、ウンコはそのまま滞ってしまうわけである。

 この便秘には、個人差がある。仮に二日、三日出なくても、便が硬くなく、不快感がなければ正常といえる。昔から三、四日に一回の通じを習慣にしてきたが、全く不都合を感じないし、ずっと内臓の健全と体の健康を維持し続けている、という百歳人もいる。 

 東京都新宿区にある日本百歳会が、平成五年に新百歳人になった四百六十五人を対象に実施したアンケート調査で、便通についての有効回答を見ると、「毎日」が百八十六人、「一日置き」が七十一人、「二、三日に一回」が二十七人。「便秘がち」の人も九十八人いた。

 高齢になるにつれて、食事の量も運動の量も減り、従って排便の回数も少なくなるのは当然としても、若い頃からずいぶん間遠な百歳人もいた。一般に、排便は毎日、一定の時間にあったほうがいいようにいわれるが、それは望ましい形であって、必ずしもそうでなくてもいいようである。

 女性の中には、一週間くらいウンコが出なくても平気な人さえいる。それでも本人が苦痛でないならば、便秘とはいえない。少ししか食べなければ、内容物は少ないわけだから、なかなか出ないということもあるのだ。

 極端な例を挙げれば、宇宙食のような無駄を省いた食べ物を食べると、便の量は二分の一から四分の一に減るという。 

 俗に、便秘を長く続けると、糞便が腐敗して毒素が吸収されるというようなことがいわれるが、必ずしもそうではないようである。

 むしろ、便秘をすると体に悪いとか、おなかに汚いものがたまっているという気持ちそのものが、精神に悪影響を与え、さらに便秘が続くということもある。

 皮膚などは精神の影響を大きく受けるから、便秘はいけない、便秘で毒素が体に回ると肌が汚くなるなどと気にすること自体が、肌を悪くしていて、不健康でザラザラした皮膚の感じを与えるようにも思われる。

 事実、誰にとっても、快便というのは気持ちのよいものであるし、体の汚いものが一気に出ていったような気分がする。しかし、便秘気味でも、極度に気にするのはかえって体を不健康にしたり、社会生活、対人関係に悪い影響を与え、いろいろなことがうまくゆかない原因になったりすることは、よく覚えていただきたい。

●便の色と形で内臓の機能障害を知る

 世の中で、こういった便秘の悩みを持つ人は、男性より女性に多いようである。女性は生殖のために子宮と卵巣という器官を抱えているが、けっこう重さがある上に、生理時には多少膨張したりするので、隣り合った腸の蠕動運動を圧迫して便秘につながるのである。

 男性の精子を作るための生殖器官は、性器周辺にコンパクトにまとまっているのに対して、女性の生殖器官は形も大きく、メカニズムも複雑になっている。従って、腸に影響があるのも致し方ないことかもしれない。生理的には、ホルモンバランスも影響してくることなのである。

 ただ、医師たちは女性たちの便秘に対して、心理的な理由もあると指摘している。特に、働く女性に多い「独特な羞恥(しゅうち)心」だというのだ。朝、ろくに朝食もとらずに家を出る。朝食をとったとしても、トイレの時間をゆっくりと確保できない。実際、何よりも化粧を優先させる女性が多いのである。

 仕事場では、便意を催しても、会社のトイレでは嫌なのである。男性から見たら不可解なことかもしれないが、「ウンチしている」というのは同性にも悟られたくないのだという。我慢していると、そのうち便意が消える。そんなことを繰り返しているうちに、習慣性の便秘になることも少なくないというわけだ。 

 習慣性の便秘はともかくとして、一般の人の便秘の主要原因は、結局、水分の吸収異常であった。このトラブルを防ぎ、大腸の機能を正しく保つには、食物繊維と乳酸菌が不可欠である。

 食事で野菜や海草を多くとるように心掛け、広く出回っているヤクルト菌、ビフィズス菌などの乳酸菌を含む飲料やヨーグルトも利用したらよいだろう。乳酸菌は乳酸や酢酸を作り出し、腸内を酸性に保つ。この酸性の刺激が腸の蠕動運動を盛んにし、感染予防にも一役買う。

 大腸の調子が整えば、立派な便が規則正しく出る。踏ん張れる。快調な毎日を送れるのである。  

 さて、下痢や便秘のほかにも、自分の体からの黄金の出物は、その色や形で胃腸のメカニズムの異常を知らせてくれる。自分の便を見れば、病気を発見できる場合もあるのだ。

 ふだんの正常便と違う白っぽい便が出たら、肝臓や胆嚢などの異常によって、胆汁が腸に送られなくなったことを意味する。要するに無着色のウンコだ。

 次に、脂肪分をとりすぎれば、すっぱいにおいのベタベタした便になるし、白いブツブツがあり、しかもプカプカ浮くウンコが出たら、脂肪便である。これは、膵臓から分泌され脂肪を分解する膵液の不足によるもので、特に高カロリー食を好む美食家は用心が必要。  

 ほかに、肉眼で見る便の色で注意したいのが、血の混ざった便。これには二種類あって、一つは真っ赤な血便。これは肛門に近いところの出血によるもので、粘液便なら直腸ガン、それ以外なら痔(じ)の疑いがある。

 もう一つは、同じ出血でも黒い便が出る場合。こちらは胃や小腸、大腸が出血し、それが腸管を通過するうちに酸化して黒色になるというパターンである。その他、黒い便は、肉食を好む人にも多いという。

 形で注意したいのは、大腸ガンで腸狭窄(きょうさく)を起こせば、便が細くなること。

 いきなり病院に担ぎ込まれる前に、毎日自分の目で、便からのメッセージを読み取る能力を養っておくのが、内臓へのいたわりというものである。


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包茎

●包茎とはどういう状態なのか

 男性の包茎というのは、ペニス(陰茎)の先の亀頭部が包皮に包まれたままの状態を指し、包皮が亀頭に比べて小さいために翻転できないことです。

 この包茎には、包皮のむけ具合によって、いろいろな程度があります。大別すると、「真性包茎」と「仮性包茎」の二つがあり、真性は完全にむけないもの、仮性は平常時には亀頭を覆っているが、勃起時や包皮を手で陰茎部のほうにたぐれば、亀頭が簡単に出てくるものをいいます。

 一般的にいわれている仮性包茎は病的状態ではなく、むしろ、大部分の日本人男性が仮性包茎状態です。常に亀頭部が露出した状態はむしろ少数であることは、あまり知られていません。

 小児では、亀頭は完全に包皮に包まれているのが普通です。思春期以後から、包皮を押しのけて亀頭が表れるようになります。つまり、一人前の大人の男性として、ペニスの脱皮が図られるようになるのです。包皮に保護された温室から外界に出て、ペニスは幾多の試練?に合うことになります。

 思春期以後、ペニスがうまく発育して亀頭が露出すれば、問題はありません。そうはうまくゆかないから、困ります。

●包茎はなぜいけないのか

 幼児や小児では、ペニスは排尿さえできればよいのですが、思春期を迎えて性ホルモンが活発に働き始めると分泌物が多くなり、これが白く、黄色く、特殊な臭いがする恥垢(ちこう、ちく)となって、包皮の内側にたまってきます。清潔にしないでほうっておくと、包皮炎や亀頭炎を起こすこともあります。

 手を加えて包皮の翻転ができるなら、時々、皮をめくって、ぬるま湯とせっけんできれいに垢(あか)をとるべきです。もし炎症が起こっていれば、マーキュロを塗布します。きつい消毒液は、粘膜を痛めるので使用しないことです。 

 極端な包茎では、亀頭が包皮によってピッチリ覆われ、排尿障害を起こすことがあります。また、「篏頓(かんとん)包茎」の場合、無理に包皮を翻転させると、そのまま戻らなくなって包皮が腫脹(しゅちょう)し、亀頭に不快な痛みが生じます。

 これらは、睡眠中に起こったり、外陰部に強い圧力がかかったり、激しいマスターベーションを行った際などにみられます。処置としては、温湿布で局部のむくみをとってからぬるま湯で洗い、両手で包皮を整復すればよいでしょう。

 また、女性にとって都合が悪いということでも、包茎が問題となります。排尿ができて、射精するのみならば、包茎は男性にとってさほどの障害にはなりませんが、セックスパートナーとなる女性にも喜んでもらうためには、真性包茎、嵌頓包茎では支障が生じます。

 日ごろ包皮に包まれ、外界に接触していない亀頭粘膜は、すこぶる敏感なのです。ちょっとした刺激でも興奮して、射精が早く起こる早漏になりやすいのです。一般的に包茎の人の多数が早漏といわれるのも、粘膜が敏感なためで、セックスに対する経験不足によって、脳中枢での興奮刺激のコントロールができない点も加われば、女性にとって歓迎すべきことではありません。

 恥垢がたまりやすい包茎では、女性側の子宮内膜炎の原因にもなりかねません。また、男性側の包皮も皮膚炎を起こしやすく、女性と接触後、相手の体液やコンドームの潤滑剤により、アレルギー性の皮膚のかゆみ、発疹(はっしん)を起こすことがあります。亀頭粘膜も弱いため、粘膜感染しやすく、性病にかかりやすいと見なされます。

 包茎は早めに、適切に処置すべきです。子供のころから、排尿の時、適当にペニスをむいて用を足すように習慣づければ、包茎は自然に解消されます。

●包茎の手術と費用

 自分で処置できない時は、泌尿器科か外科の専門医に相談するのが望ましいでしょう。

 包茎手術に踏み切る場合、真性包茎、篏頓包茎では「生活に支障をきたす=病気」と判断されることが多く、健康保険が適用されます。自己負担額は1万円から3万円ほど。仮性包茎では、「生活に支障をきたす」というよりは「カッコ悪い」、「恥ずかしい」といった精神的問題と見なされるため、ほとんどの場合において健康保険は適用されません。

 一般の病院・クリニックの泌尿器科、外科での保険治療の対象になる手術方法は、背面切開法、または環状切開法です。背面切開法とは、包皮に縦の切れ目を入れることで、「とりあえずむける」ようにするための手術方法です。長い皮は短くなりません。真性包茎や篏頓包茎を仮性包茎にするための手術で、傷跡はあまり目立ちません。

 環状切開法のほうは、ペニスの周囲にグルッと一回り切れ目を入れて、余分な包皮を縫い縮める手術です。一般的には、クランプという器具をかぶせて、血管も一緒に切ります。傷跡は、背面切開法より目立ちます。

 手術は極めて簡単ですから、入院の必要はありません。手術後1~2日は局部の疼痛(とうつう)と不快感がありますが、我慢できないほどではありません。2、3日は尿に血が混じったり、排尿時に陰茎痛があることもありますが、過激な運動さえしなければ1週間で完全に治ります。 

 手術によって「ペニスがいびつになるのではないか」と心配する人も、いることでしょう。皮を切り取るだけの手術ですから、心配は無用。手術後、切断の残りの包皮の部分に浮腫(ふしゅ)を見ることがあっても、自分の手で圧迫すればすぐ取れるし、医師に相談すれば簡単に治してくれます。

 包茎専門の泌尿器科、形成外科、美容整形外科等の専門病院・クリニックで、手術を受ける選択肢もあります。健康保険は効かず自由診療になりますが、個人のペニスに合わせた丁寧な手術をしてくれます。女性の美容整形と同じイメージですので、縫合も丁寧で、一般病院の泌尿器科での手術に比べて、環状切開法での傷跡が目立ちません。また、血管の位置なども計算して手術してくれるので、出血も少なく、痛みも軽くなります。

 ちなみに、形成外科などの専門病院での手術費用は、だいたい以下の通りです。仮性包茎手術の相場は、おおよそ8万~16万円程度。真性包茎、篏頓包茎の手術の相場は、おおよそ20万円前後です。病院によっては、学割が適用されるところもあります。

 しかし、すべての専門病院が、上記の範囲におさまるわけではありません。手術を考えている人は、必ず病院でしっかりと説明を受けてください。


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膀胱炎

●女性に多い膀胱の炎症

 膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱内の粘膜に炎症が起こる疾患です。女性に多いのが特徴で、特に妊娠可能な年齢で多発しますが、男性にも起こります。細菌の感染による急性膀胱炎がすぐに治るのに対して、慢性膀胱炎は完治が難しいといえます。

 急性膀胱炎の場合、症状は急激ながら経過は短く、泌尿器科の疾患では最も普通にみられます。原因の大部分は細菌感染で、大腸菌が最も多く、ブドウ球菌、連鎖(状)球菌などによることもあります。

 感染経路としては、尿道からの細菌の侵入が最も多く、腎(じん)臓からの感染、周囲の臓器からの感染もあります。この疾患が女性に多発する理由として、尿道が男性に比べて短いために細菌が尿道に入りやすいこと、細菌のいる腟(ちつ)や肛門と尿道との距離が近いことなどが挙げられます。

 膀胱は細菌に対して抵抗力があるので、単に細菌が侵入してきただけでは炎症は起こりにくいのですが、体力の低下、尿の停滞、排尿の我慢のしすぎ、便秘、不潔な性交、妊娠、冷えなどが誘因になって発症します。

 男性では、膀胱炎は女性ほど一般的ではありません。男性はまず尿道が感染し、その感染が前立腺(ぜんりつせん)から、膀胱に広がって発症します。

 症状としてみられるのは、頻尿、残尿感、尿の出が悪い、排尿時の痛み、尿の濁りが特徴。発熱はほとんどみられません。

 医師による治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

 男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

●慢性膀胱炎と間質性膀胱炎

 慢性膀胱炎の場合、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍(しゅよう)、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

 治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

 また、間質(かんしつ)性膀胱炎という特殊な膀胱炎が近年、増加しています。感染症がみられなくても膀胱が炎症を起こす疾患で、痛みを伴う頻尿などの症状があります。顕微鏡で検査すると、尿中に膿(うみ)や血液が認められ、尿に血が混じっているのが肉眼で見えることもあります。

 中年女性に多くみられ、男性がかかることはめったにありません。欧米では以前から割合多くみられていて、いくつかの病因による症候群と見なされていますが、いまだ治療法は確立されていません。

 長期に渡る慢性的な炎症によって膀胱は委縮し、重症の場合は外科手術による膀胱の除去が必要になることも、まれにあります。小腸の一部である回腸を使って代用膀胱を作るか、腎臓にチューブを直接挿入し、体の外に装着した袋に尿を排出することになります。


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ボーエン病

■かなり高い確率でがんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つ

 ボーエン病とは、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病。1912年のジョン・T・ボーエン医師の論文から、命名された疾患です。

 このボーエン病は、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つであり、狭義には表皮内がんと同じです。表皮内がんというのは、がん細胞が皮膚の浅いところにだけあり、この状態では転移の心配はありません。

 しかし、放置していて進行すると、皮膚の深いところである真皮内に、がんが浸潤し体をむしばむ可能性があります。それも広い意味でボーエン病ですが、区別してボーエンがんと呼ぶこともあります。さらに進行すると、リンパ節転移や内臓転移を起こし、ついには死に至ります。

 ボーエン病は大人、特に60歳以上の高齢者に発症します。原因は、日光照射、ヒ素中毒、エイズを含む免疫抑制状態、ウイルス感染、皮膚傷害、慢性皮膚炎などです。

 典型的な症状は、境界が鮮明で、不整形の褐色の色素斑が現れ、上にかさぶたがつき、皮がめくれたりします。有色民族の場合は褐色ですが、白人の場合は紅斑が現れます。かゆみはないものの、湿疹(しっしん)や乾癬(かんせん)のような皮膚病と間違いやすいものです。

 日光の紫外線の影響による場合は、皮膚の露出部に色素斑が現れます。ヒ素やその他の影響による場合は、皮膚の露出部にも現れるとともに、服に覆われている体幹部や下肢、陰部が好発部位となります。

 放置すると、症状が不変の場合もありますが、通常は徐々に拡大します。単発の場合もありますが、多発例も10~20パーセント程度あり、ヒ素による場合は、手のひらと足の裏の角化、体の色素沈着と点状白斑、つめの線状色素沈着などの皮膚症状がみられ、皮膚以外にも肝がん、肺がん、膀胱(ぼうこう)がんなどの内臓悪性腫瘍(しゅよう)を合併します。原因が飲料水のヒ素汚染の場合は、地域的に多数発生します。

■ボーエン病の検査と診断と治療

 かゆみのない褐色の色素斑ができているのに気付いたら、一度、皮膚科専門医を受診します。

 専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹や乾癬など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をすることが必要です。

 ボーエン病と診断されれば、合併率が高い内臓悪性腫瘍の検査も同時にする必要があります。多発性ボーエン病では、ヒ素中毒などを除外するための検査も必要です。

 ボーエン病の治療としては、初期なら手術で病変を切り取れば、完治することがほとんどです。病変が小さければ切り取った後、傷を直接縫い合わせて閉じることもあります。病変が5センチとか10センチ以上では、切り取った後の皮膚欠損が大きく、複雑な形となり、直接縫合することができないこともあります。そういう場合は、植皮術や皮弁形成術で修復が可能です。

 表皮内がんより進行したボーエンがんである場合は、病変の切除と植皮や皮弁で修復することに加え、リンパ節廓清(かくせい)術を組み合わせることがあります。また、状況により放射線療法、抗がん剤の投与、レーザー焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固療法などが行われることがあります。

 病変を切り取った後の傷跡に、拘縮(こうしゅく)や外観の問題が生じることがあります。その場合、形成外科的な手法による改善が検討されます。病変の取り残しがないことや再発の有無をみるため、治療後も定期的な経過観察が必要です。


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マイコプラズマ肺炎

■微生物のマイコプラズマの感染で、子供に多く起こる肺炎

 マイコプラズマ肺炎とは、微生物のマイコプラズマの感染によって起こる肺炎。マイコプラズマは細菌より小さくウイルスより大きな微生物で、生物学的には細菌に分類されますが、ほかの細菌と異なるところは細胞壁がない点です。

 感染している人との会話や、せきに伴う唾液(だえき)の飛沫(ひまつ)によって感染します。インフルエンザのような広い地域での流行はみられず、学校、幼稚園、保育所、家庭などの比較的閉鎖的な環境で、散発的に流行します。日本では一時期、4年ごとのオリンピックの開催年に一致してほぼ規則的な流行を認め、オリンピック病とかオリンピック肺炎と呼ばれたこともありましたが、1990年代に入るとこの傾向は崩れて毎年、地域的に小流行を繰り返すようになっています。

 季節的にはほぼ1年中みられ、特に初秋から早春にかけて多発する傾向がみられます。好発年齢は、幼児から学童、特に5~12歳に多くみられます。4歳以下の乳幼児にも感染はみられますが、多くは不顕性感染または軽症です。潜伏期間は1~3週間。

 風邪に似た症状が現れ、中でもせきが激しいのが特徴。たんは少なめです。たんの出ない乾いたせきが激しく、しかも長期に渡って続き、発作性のように夜間や早朝に強くなります。胸や背中の筋肉が痛くなることも、珍しくありません。

 38〜39度の高熱、のどの痛み、鼻症状、胸痛、頭痛などもみられますが、肺炎にしては元気で全身状態も悪くなく、普通とは違う肺炎という意味で非定型肺炎とも呼ばれます。

■マイコプラズマ肺炎の検査と診断と治療

 学校、幼稚園、保育所などで小流行することが多いので、子供のにせきや発熱などの症状がみられたら、早めに呼吸器科や小児科を受診します。比較的軽症なために普通の風邪と見分けがつきにくく、診断が遅れることがありますが、まれに心筋炎や髄膜炎などを併発することもありますので、油断はしないほうがいいでしょう。

 胸部X線撮影によって肺炎自体の診断はつきますが、原因を確定するのに時間がかかります。咽頭(いんとう)から採取した液を培養してマイコプラズマを検出するまでに、通常1~2週間を要するためです。

 一般に自然治癒傾向の強い疾患ですが、マイコプラズマが検出できない間は、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の両方を想定した治療が行われます。細菌性肺炎と同様、抗生物質によってマイコプラズマを排除しますが、有効な薬を選ばなければ効果が得られません。

 マイコプラズマは細胞壁を持たないので、細胞壁合成阻害剤であるペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がありません。蛋白(たんぱく)合成阻害剤を選択しなければなりません。中でもマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が効果を上げます。小児では、副作用のことも考慮してマクロライド系の抗生物質が第1選択薬です。ニューキノロン系も有効ですが、小児への適応のないものがほとんどです。

 ほとんどの場合、外来の内服治療でマイコプラズマ肺炎は治ります。ただし、小児では重症例や合併症も多く、高熱で脱水症状があるとか、激しいせきで眠れなかったり、食欲が大きく妨げられているような場合は、入院が必要になります。

 子供が学校などからマイコプラズマを持ち帰ると、1〜3週間の潜伏期間を経て、家族に感染することがよくあります。予防接種はなく、決定的な予防法はありません。家庭ではマスクやうがい、手洗い、発症者の使うタオルやコップを使わないなど、普通の風邪と同じような予防法を心掛けます。


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末梢動脈疾患(PAD)

■血管の病変が手足の動脈に慢性的に起こっている疾患

 末梢(まっしょう)動脈疾患とは、手足の血管の動脈硬化によって引き起こされる疾患。PAD(Peripheral Artery Disease)とも呼ばれます。

 日本では閉塞(へいそく)性動脈硬化症、もしくは慢性動脈閉塞症と呼ばれている疾患ですが、海外ではPAD、すなわち末梢動脈疾患という疾患名が一般的です。 主に40〜50歳以降に発症します。

 動脈に脂肪分が沈着して粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)が起こると、血管の内膜が肥厚して内腔(ないくう)が狭くなったり、潰瘍(かいよう)ができたりします。結果として、血流に障害が起き、血液が固まって血栓を生じ、詰まりやすい状態になります。こういった血管の病変が末梢(まっしょう)動脈、すなわち手足の動脈に慢性的に起こっているのが、末梢動脈疾患です。

 末梢動脈疾患のある人は、手足の動脈だけでなく、全身の血管にも動脈硬化を来している場合が少なくありません。3割の人で冠動脈疾患の合併、2割の人で脳血管障害の合併が認められます。

 発症しやすいのは、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙などの動脈硬化の危険因子を持っている人。食生活やライフスタイルの欧米化により、動脈硬化を基盤とする末梢動脈疾患が急速に増えています。

 初期の症状は、足の冷感やしびれです。進行すると、短い距離を歩いただけで、ふくらはぎや太ももの裏側が重くなってきたり、痛みを感じるようになります。2〜3分休むとよくなり、再び歩くことができます。この間欠性跛行(はこう)や足のしびれなどの症状が神経痛の症状と似ているために、勘違いされて見逃されることも多く見受けられます。

 さらに進行すると、安静時にも痛みが現れるようになります。病変がある動脈で、急に血液が固まって急性閉塞が起きた場合には、24時間を経過した後で、筋肉に壊死(えし)が起こることもあります。

■末梢動脈疾患の検査と診断と治療

 歩くと下肢が痛くなる原因にはいろいろあり、神経痛などほかの疾患と勘違いして、末梢動脈疾患(PAD)を悪化させてしまうこともまれではありませんので、循環器科や心臓血管外科を受診します。

 医師による検査では、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、さらに詳しく下肢の虚血を診断できます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。

 初期の冷感やしびれに対しては、血管を広げる血管拡張薬や、血液を固まりにくくする抗血小板薬を中心に治療が行われます。手足の痛みが強く、ひじや、ひざから上の比較的狭い範囲で慢性の動脈閉塞が起きている場合には、カテーテル治療、レーザー血管形成術、バイパス手術、血管新生療法などが行われます。

 カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療で行われるバルーン療法と同じ血管内治療。閉塞した部位にカテーテルを通し、そこで風船を膨らませて閉塞を治した後、再閉塞を防ぐためにコイルを留置します。レーザー血管形成術は、閉塞部近くまでカテーテルを挿入し、レーザー光を発して血栓や肥厚した内膜を霧状に散らす療法。

 バイパス手術は、閉塞した動脈の代わりに静脈や人工血管を使ってバイパスを作り、動脈の血行を再建する治療。血管新生療法は、肝細胞を増殖させる物質の遺伝子が血管を新しく作ることがわかったため、それを使って行う新しい治療。血管を新生する因子(HGF)を産生する遺伝子を含む医薬を筋肉に注射し、新しい血管を誕生させて血流をよみがえらせます。

 治療方法は数多くあるものの、末梢動脈疾患が重症になり、壊死が進行した場合は、足の切断が必要になることがあります。日本では毎年、1万人程度が足の切断を余儀なくされていると推定されます。

 この末梢動脈疾患は、糖尿病や高血圧、高脂血症がある人に起こりやすいので、このような既往症のある人は、食生活を正して食べすぎを避け、減塩を守ること、ストレスを解消すること、禁煙をすることが必要です。

 また、足の症状が出るまでは、休みながらも繰り返し歩くように心掛けます。歩くことにより、側副血行路が発達し血行が改善します。靴下、毛布などを使って、足の保温にも努めます。寒冷刺激は足の血管をさらに収縮させ、血液の循環を悪くさせるからで、入浴も血行の改善に役立ちます。足はいつも清潔にしておき、爪(つめ)を切る時は深爪をしないようにし、靴も足先のきつくないものを選ぶようにします。

 なお、末梢動脈疾患(PAD)の日本における保険適応上の疾患名は、閉塞性動脈硬化症もしくは慢性動脈閉塞症となります。


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慢性胃炎

■長い年月をかけて進行し、はっきりとした症状がみられない胃炎

 慢性胃炎とは、症状がはっきりせず、胃のもたれ、不快感、食欲不振などが何となく起こるといった不定愁訴が、特徴的に認められる疾患。

 それらの症状のほとんどは、いつから始まったのか、はっきりしません。また、全く症状がないこともあります。日本人にみられる慢性胃炎のほとんどは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因であることが、1980年代の初めから解明されています。ピロリ菌に感染し、その後、長い年月をかけて胃炎が進行して、慢性胃炎となるのです。

 ピロリ菌は、胃の粘膜に生息している細菌。1980年代の初めに発見され、慢性胃炎や胃潰瘍(かいよう)の発生に関係していることがわかっています。通常、胃の中は、胃酸が分泌されて強い酸性に保たれているため、細菌が生息することはできません。しかし、ピロリ菌は、胃の粘膜が胃酸から胃壁を守るために分泌している、中性の粘液の中に生息し、直接胃酸に触れないように身を守っているのです。

 ピロリ菌はウレアーゼという尿素分解酵素を分泌して、胃の中に入ってくる食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。このアンモニアも胃の粘膜に影響を及ぼし、慢性胃炎の原因の一つになるのだと考えられています。

 ただし、ピロリ菌に感染している人すべてに、症状が現れるわけではありません。感染しても、自覚症状がない場合、そのまま普通の生活を送ることができます。

 ピロリ菌に感染している人の割合は、年を取るほど高くなる傾向があり、中高年の場合、70~80パーセントにも上ります。このように、年齢によって感染率に違いがあるのは、育った時代の衛生環境に関係していると見なされています。

■慢性胃炎の検査と診断と治療

 慢性胃炎では、はっきりとした症状がないことが多いため、以下のような検査で胃に炎症が起きているかどうか調べます。

(1) 内視鏡検査:内視鏡で、胃の粘膜の様子を直接観察します。進行した慢性胃炎である委縮性胃炎では、粘膜が委縮して、薄くなり、血管が透けて見えたり、白っぽく見えます。

(2)組織診:内視鏡の中に器具を通し、胃の粘膜から組織の一部を採取してきて、顕微鏡で炎症があるかどうか調べます。また、慢性胃炎のほとんどの人はピロリ菌に感染していることがわかっていますから、慢性胃炎であるかどうかをより確実に知るためには、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べることが必要になります。

 ピロリ菌に感染しているかどうか調べる検査には、次のような方法があります。

内視鏡を使う方法

 内視鏡によって胃の粘膜の組織を採取し、そこにピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。次の3つの方法があります。

1.ウレアーゼ試験:採取した組織を、尿素とpH指示液(酸性度、アルカリ性度を調べる)の入ったテスト溶液の中に入れて、色の変化を調べます。もし、ピロリ菌がいれば、ピロリ菌の出すウレアーゼによって、アンモニアが発生し、テスト溶液がアルカリ性になり、その結果、色が変わります。

2.組織診:採取した胃の粘膜の組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べます。

3.培養検査:採取した組織をピロリ菌が繁殖しやすい環境で培養し、その後、顕微鏡でピロリ菌の有無を調べます。

内視鏡を使わない方法

 内視鏡で組織を採取する方法に比べて、発症者の肉体的負担が軽い検査です。次の3つの方法があります。

1.血液検査:ピロリ菌に感染すると、それに対する抗体ができます。血液中にこの抗体があるかどうか調べる検査です。

2 .尿検査:血液検査と同様に、尿中にピロリ菌の抗体があるかどうかを調べます。

3.尿素呼気テスト:ピロリ菌はウレアーゼを分泌し、それによって、尿素をアンモニアと炭酸ガスに分解します。この炭酸ガスは、呼気にも出てきます。そこで、特殊な炭素を含んだ尿素(標識尿素)を飲み、15~20分後に呼気を採取して、その成分を調べます。ピロリ菌に感染している場合、標識された炭素を含む炭酸ガスが呼気の中に出てきます。

 慢性胃炎の治療法としては、従来は対症療法だけが行われてきましたが、ピロリ菌が原因となることがわかってからは、抗生物質による根本治療も行われるようになっています。

(1)対症療法:急性胃炎と同様に、胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬、運動機能改善薬を服用します。

(2) 根本治療:2~3種類の抗生物質を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。


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慢性気管支炎

■せきとたんが長期間に渡って続く呼吸器の疾患

 慢性気管支炎とは、持続性あるいは反復性のたんを伴うせきが少なくとも連続して2年以上、毎年3カ月以上続く疾患。ただし、肺結核、肺化膿(かのう)症、気管支喘息(ぜんそく)、気管支拡張症などの肺疾患や心疾患を伴うものは除外します。

 気管や気管支には防御機構として、呼吸とともに侵入してくるほこりや細菌を内側の粘膜が粘液を分泌して吸着させ、それを繊毛の運動でのどのほうへ押し出すたん作用があります。この防御機構としての働きが弱まると、増えてしまった粘性のあるたんが、のどに押し出されにくくなり、せきでたんを出すようになります。

 このため、気管や気管支は弱くなり、粘膜はせき込んだ時にすぐに傷付いてしまい、炎症が深くなっていきます。

 炎症を繰り返すことで、次第に息切れが起こるようになっていき、その程度も増していきます。一度かかると全快することはなく、難治性の疾患です。発症者の多くは、中年以上の男性。

 はっきりとした原因は不明ですが、気道への何らかの刺激が長期間に渡って続き、その刺激がもとで粘液の分泌が増加したり、繊毛が減少することが発症に関係していると考えられています。急性気管支炎が長引いて、慢性化するのではありません。

 気道を刺激する原因には、たばこの煙、汚染した空気、ほこり、刺激性の化学物質が挙げられます。

 症状としては、せきとたんが続き、当初は冬季だけに現れます。階段の昇降や速足で歩いた時に、息切れが起こることもあり、喫煙者ではたばこを吸った時にせき込んだりします。

 寒さや空気汚染、細菌感染によって次第に悪化すると、1年中症状がみられるようになっていき、病状も進展します。

 たんは白色の粘液性で、初めは細菌が感染するなど病状が悪化した時だけ、黄色いうみのような粘液膿性(のうせい)になります。しかし、後には冬の間ずっとたんが出るようになります。肺の下葉(かよう)に気管支の拡張がある場合は1年中、粘液膿性のたんが出ます。

 たんの量は普通、軽症な場合には、起床後に出るだけで多くありません。時に、1日にコップ一杯程度の大量の粘液膿性のたんが出る場合は、気管支拡張症や肺化膿症にかかっている可能性を疑う必要があります。

 喫煙による慢性気管支炎は、しばしば肺気腫(きしゅ)を伴い、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と呼ばれます。病状が進展すると呼吸困難に陥ることもあり、心臓に負担がかかって肺性心という心臓の障害が起こり、高齢者では心不全の危険もあります。

■慢性気管支炎の検査と診断と治療

 完治しない疾患なので、風邪などの感染症を避けるために人込み、厳しい寒さ、喫煙などを避けることが大切ですが、それを実行することは容易ではないので、早期に発見して、内科、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。

 長期に渡って、せきやたんがみられることで、医師の側はおおよその診断がつけられます。ほかの疾患と区別するためには、喀(かく)たん検査や胸部X線検査、CT検査などが行われます。

 合併している呼吸不全を知るためには、肺機能検査を行って、一気に空気を吐き出す力の低下具合を調べたり、動脈血に含まれる酸素の量を調べたりします。感染を起こしている細菌に有効な抗生物質を決定するために、たんの培養を行うこともあります。

 慢性気管支炎の治療では、気管支内の感染を抑えて分泌物を取り除くために、禁煙したり、ほこりや冷気を避けることにより、まず気管支への刺激を排除します。薬物を用いるのは、主に細菌感染を起こして高熱、呼吸困難、粘液膿性(のうせい)のたんがみられる急性悪化期で、ペニシリンなど抗生物質を投与します。

 また、たまったたんが細菌を繁殖させるので、たんの切れをよくする粘液溶解剤や去たん剤、たんを出しやすくするために気管支拡張剤が投与されます。気管支粘膜の炎症を治すために、エリスロマイシンという抗生物質を少量、長期に用いることもあります。

 ほかに、たんを出しやすくするために、体位性ドレナージという体位を一定時間とることもあります。足のほうを高くしたり、頭のほうを低くしたりして、たんがのどのほうへ流出しやすい姿勢をとることを毎朝合計30分くらい行うもので、その際、他人にバイブレーターなどで背中に振動を与えてもらうと、より効果的です。

 日常生活での注意としては、日ごろからマスクを着用し、ほこりや冷気にさらされないように注意し、刺激の強い食べ物や冷たい物を控えます。たんを出しやすくするために、水分を十分に取ります。

 冬季には室内の保温、保湿を心掛け、あるいは思い切って暖かい地域に転地すると、症状を和らげることができます。


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慢性甲状腺炎(橋本病)

■甲状腺の病気の一つで、女性に多発

 慢性甲状腺(せん)炎は、喉頭(こうとう)の前下部にある甲状腺に慢性の炎症が起きている病気で、橋本病とも呼ばれている自己免疫性疾患です。九州大学の橋本 策(はるか)博士が明治45年、ドイツの医学誌に初めて発表した病気で、世界的にも有名なものです。

 内分泌腺の一つである甲状腺に、慢性のリンパ球の浸潤による炎症があるために、甲状腺が腫大(しゅだい)したり、甲状腺機能に異常が起こります。男性の20倍と女性のほうが圧倒的に多くかかり、よく調べると、女性の10~20人に1人の割合でみられるほど、頻度の高い病気だということがわかってきました。

 例外はありますが、慢性甲状腺炎の発症者は大なり小なり、甲状腺がはれています。ただし、この内分泌腺の一つである甲状腺のはれが、首や喉(のど)に何か症状を起こすというようなことはありません。まれに甲状腺のはれがなく、委縮している場合もあります。

 慢性甲状腺炎では、甲状腺のホルモン状態の違いから次の3つのケースに分けられ、甲状腺ホルモンの過不足があるケースにだけ症状がみられます 

●甲状腺ホルモン濃度がちょうどよいケース(甲状腺機能正常)

 慢性甲状腺炎(橋本病)であっても、大多数の人は甲状腺ホルモンに過不足はありません。この場合は、病気が体に影響するということは全くありませんので、何か症状があっても甲状腺とは関係ありません。従って、治療の必要はありません。

 しかしながら、将来、甲状腺の働きが低下して、ホルモンが不足することがあります。また、まれですが一時、甲状腺ホルモンが過剰になることもあります。

●甲状腺ホルモンが不足しているケース(甲状腺機能低下症)

 甲状腺ホルモンが減少する病気の代表が、慢性甲状腺炎(橋本病)です。慢性甲状腺炎も甲状腺臓器特異性自己免疫疾患の一つで、体質の変化により、甲状腺を異物と見なして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)ができます。

 この抗体、すなわち浸潤したリンパ球が甲状腺を破壊していくため、甲状腺ホルモンが減少し、徐々に甲状腺機能低下症になっていきます。痛みもなく、本人の知らないうちに、少しずつ甲状腺が腫大します。

 甲状腺ホルモンは体の新陳代謝に必要なホルモンですので、不足が著しかったり長く続いたりすると、下のような症状が現れます。自覚症状はないこともありますが、コレステロールの値が高くなったり、血圧が上がったり、心臓や肝臓の働きが悪くなることもあります。

 *顔や手足がむくむ   *食べないわりに体重が増える   *気力が低下する   *動作が鈍くなる   *皮膚が乾燥する   *声がかすれる   *寒がりになる   *始終、眠い   *毛髪が薄くなる   *物忘れがひどくなる   *ろれつが回らなくなる   *その他(便秘、貧血、月経過多)

 これらの症状は他の原因でも起こりますから、こうした症状があるからといって甲状腺のホルモンが足りないとは限りません。

 また、甲状腺機能低下症であっても、適量の甲状腺ホルモン剤を服用して血液のホルモン濃度が正常になっている場合は、何か症状があれば、他のことが原因です。

 なお、「甲状腺機能低下症になると回復しない」といわれていましたが、数カ月のうちによくなることも少なくありません。

●甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるケース(無痛性甲状腺炎)

 甲状腺にたくわえられている甲状腺ホルモンが血液中にもれ出て、血中濃度が高くなることがあります。ふだん、甲状腺の働きが正常な人に、比較的急に起こります。お産をした後数カ月以内に、ことによくみられます。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と間違われることもあります。

 このケースは炎症が原因ですが、痛みがないので「無痛性甲状腺炎」といいます。長くても4カ月以内には自然に治りますが、その後、逆に甲状腺ホルモンが不足して、甲状腺のはれが大きくなることがあります。これも大抵は数カ月で治りますが、中には長く続いて甲状腺ホルモン剤の内服治療が必要になる人もあります。

●その他のケース

 非常にまれですが、途中でバセドウ病に変化することがあります。血縁にバセドウ病の人がいる場合は、他の人よりなりやすい傾向があります。

 悪性リンパ腫の中には甲状腺から発生するものがあり、慢性甲状腺炎(橋本病)の人は一般の人よりこうしたことが起こりやすいのですが、甲状腺から発生するものは治療に大変よく反応し、治りやすいという特徴があります。

■診断と治療法 

●血液検査や細胞診

 触診や超音波検査で、びまん性甲状腺腫を確認します。血液検査では、甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の2つが陽性になります。

 自己抗体が陰性の人でも、甲状腺の生検や細胞診でリンパ球浸潤を認めれば、診断が確定されます。甲状腺機能(FT3・FT4・TSH)は正常の人が多いですが、甲状腺機能低下症になっている例もあります。

●甲状腺ホルモン剤の服用

 慢性甲状腺炎(橋本病)の発症者で甲状腺の腫大が小さく、甲状腺機能も正常の場合は、治療は必要ありません。

 甲状腺機能の低下がある場合には、不足している甲状腺ホルモン剤(チラージンS錠)を毎日内服します。はれも小さくなります。甲状腺の腫大がひどい場合は、手術で甲状腺を切除する場合もあります。

●日常生活と食事

 甲状腺ホルモンに過不足がなければ、生活上、留意することはありません。

 食事も、ふだんどおりでけっこうです。海草類も普通に食べてかまいませんが、昆布を毎日食べたり、ヨードを含むうがい薬を毎日何度も使うと、甲状腺機能が低下することがあります。

 海草に多く含まれるヨードは甲状腺ホルモンの原料ですが、慢性甲状腺炎(橋本病)の人の一部に、ヨードを取り過ぎると甲状腺ホルモンが作れなくなる人がいるからです。なお、甲状腺ホルモン剤を服用している人は、問題ありません。


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耳鳴り

●耳鳴りの音から病気を知る

 小さい耳鳴りではあっても、背後に病気が潜んでいることもあります。鳴り方や起こり方が、その原因を知る手立てになるのです。

 耳鳴りとは、外部からではない音の知覚です。ほとんどの場合、難聴を伴います。日本人の1200万人以上が何らかの耳鳴りがあり、そのうち約20パーセントの人は苦痛を伴う耳鳴りがあるといわれています。

 私たち人間の耳は、20ヘルツから2万ヘルツという非常に幅広い音を聞き分けています。音を感知する細胞は、周波数によって役割分担をしています。

 ところが、ある音を担当する感覚細胞が障害を受け、その音が聞こえなくなってしまうと、ほぼ同じ高さの音の耳鳴りが起こるのです。

 その仕組みはよくわかっていませんが、障害を受けた細胞が異常な刺激を出し、耳鳴りになると考えられています。従って、耳鳴りの音の高さが、原因となる病気を想定する手掛かりになるのです。 

●症状をチェック

【「キーン」「チー」など高い音】 

 日常会話では使わない高い周波数の音から聞こえにくくなるのが、「老人性難聴」。両耳に起こり、初期は「キーン」といった高音の耳鳴りがします。耳鳴りは慢性的で、進行すると低い音も聞こえにくくなります。

 長期間に渡って騒音にさらされた場合の「騒音性難聴」、一時的に大きな音にさらされた時に起こる「音響性難聴」でも、高音の耳鳴りを訴えます。

【「ゴー」「ブーン」など低い音】 

 回転性のめまいを伴うのが、「メニエール病」。最初は低音が聞こえなくなり、時々「ゴー」、「ブーン」などの低音の耳鳴りがします。多くは片耳で起こり、めまいや耳鳴りの発作を繰り返すうちに高音も聞こえにくくなり、耳鳴りの音も変化します。

 メニエール病と同じタイプの耳鳴りで、めまいはないのが「急性低音障害型感音難聴」。発作を繰り返すと、メニエール病に移行します。  

【「ザー、ザー」など拍動と一致】

 脈拍と一致した耳鳴りは、血液の流れる音が聞こえているもの。これは耳の近くに音源があり、増幅すれば他人も聞くことができる他覚的な耳鳴りです。

 脳の動脈にこぶができる「脳動脈瘤(りゅう)」や、「脳腫瘍」などの病気が隠れている可能性もあり、長く続いたら病院へ。

【さまざまな音】 

 耳鳴りの音が人によりさまざまなのが、「突発性難聴」。突然、片耳に難聴や耳鳴りが起こり、めまいを伴うこともあります。繰り返すことはないものの、早めに治療をしないと難聴や耳鳴りが残ります。 

 「内耳炎」や「聴神経腫瘍」の場合も、さまざまな耳鳴りがします。「動脈硬化」や「糖尿病」で血管が痛み、慢性的に耳の血流が悪くなって、耳鳴りがするケースもあります。 

●対策へのアドバイス

【ストレス、疲労をためない】

 誰でも静かな場所にいると、耳鳴りがすることがあります。また、疲れた時に一時的に「キーン」という耳鳴りがするのも、心配はありません。

 しかし、「メニエール病」や「急性低音障害型感音難聴」、「突発性難聴」などは、ストレスや疲労が引き金となるケースが多いといわれています。ですから、日頃からストレスをためないこと、睡眠を十分にとることが、予防につながります。  

【急性のケースは耳鼻咽喉科へ】

 メニエール病や突発性難聴など急性の病気では、安静を保つことが重要になります。入院して、薬物療法を受ける必要のあることもあります。

 突発性難聴の場合、発作から2週間以上放置すると、聴力が戻りにくくなります。異常に気付いたら、早めに耳鼻咽喉科へ。

【耳鳴りが慢性化したら】

 耳鳴りは気にすることでさらに大きく感じられるという、悪循環に陥りがちです。その場合、治療の中心になるのはカウンセリングなどの心理療法。気持ちをリラックスさせ、耳鳴りに気持ちが集中しないようにします。

 関心のある音だけを選別し、それ以外の音を素通りさせる脳の性質を利用したのが、TRTという治療法。補聴器サイズの器具を耳に装着し、毎日、一定時間、耳鳴りより小さな音を聞き、脳が音に慣れて、耳鳴りを意識しない状態にします。心理療法だけでは苦痛が改善しない場合に、TRTは有効です。


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無気肺

■肺全体または一部の空気が入っていない状態

 無気肺とは、肺に空気が入っていない状態。これまで十分に拡張していた肺の組織の一部の空気、または全部の空気が何らかの原因で失われ、肺がつぶれている状態を指します。

 この無気肺には種類がいくつもあり、原因もさまざまです。例えば、胸膜腔(くう)に液体がたまれば、液体の圧迫でその下の肺には無気肺が生じます。また、肺がんや、気管支への異物の流入で、気道が閉塞(へいそく)されれば、それより末梢(まっしょう)の肺組織中の空気は吸収され、無気肺が起こります。

 そのほか、病巣、リンパ節の腫瘍(しゅよう)や、気胸、胸膜炎、膿胸(のうきょう)、横隔膜ヘルニアなどの病巣によって、気管が外部から圧迫されたり、粘膜の塊が気管支につかえると、そこから末梢部に無気肺ができます。結核、肺がんなどによって、気管支が狭窄(きょうさく)、閉塞して起こることもあります。さらに、外科手術後、痛みなどで深呼吸が行えず、粘液が