[心臓、血管、血液の病気]
エコノミークラス症候群
●脚や腕の静脈に生じる血栓が要因
エコノミークラス症候群とは、飛行機内などで長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する一連の症候群としてよく知られており、旅行者血栓症やロングフライト血栓症、静脈血栓塞栓(そくせん)症、深部静脈血栓症とも呼ばれます。
飛行機のエコノミークラス以外の座席、飛行機以外の交通機関や施設の座席でも、発生が報告されています。
長時間、座ったままの同じ姿勢でいると、血液の流れが徐々に悪くなり、脚や腕などの静脈に、血の固まりである血栓が生じやすくなります。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺塞栓(そくせん)症となります。
肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を起こします。
軽度であれば胸焼けや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡します。
飛行機内などでは、血液が固まりにくいように水分を補給したり、長時間にわたって同じ姿勢を取らないようにし、着席中に足を少しでも動かして血液循環をよくすることで、エコノミークラス症候群は予防できます。
解離性大動脈瘤
■大動脈壁に裂け目ができて血管が膨らんだ状態
解離性大動脈瘤(りゅう)とは、大動脈の壁に縦の裂け目ができて、血管が膨らんだ疾患。50歳以降の男性に多くみられます。
大動脈壁は、内膜、中膜、外膜の3層からできています。このうちの中膜の一部に縦の裂け目ができて、内膜と外膜が外れるのを解離といいます。解離した血管は一部が外膜だけになるために薄くなり、内圧のために膨らんで動脈瘤になります。中膜の裂け目は、高血圧が長く続いたために、大動脈壁がもろくなってできます。まれに、生まれ付き中膜が弱い疾患によってもできます。
大動脈壁が裂ける範囲は、胸部大動脈の一部から、大動脈の全長に及ぶものまでいろいろ。そのできた場所によって、A型とB型とに分けられます。A型は解離腔(くう)が心臓に近い上行大動脈に存在するもの、B型は解離腔が胸部の下行大動脈から腹部にかけて存在するものです。
解離は突然起こり、症状も突然出現します。解離による痛みは激烈な場合がほとんどで、血管の解離の場所により前胸部痛から肩、背部にかけての痛みまであり、呼吸困難やショック状態になります。まれに、痛みがほとんどなく無症状のこともあります。血管の機能が障害されて、例えば頭の血流が悪くなった場合、失神、けいれん、意識障害を起こすこともあります。心筋梗塞(こうそく)を起こしたり、腹の血管が詰まって腹痛を起こしたり、足の血管が詰まって足の痛みを来すこともあります。
通常は外膜によって血管外へ血液が流出するのは避けられますが、大動脈瘤が破裂して血液が血管外へ流出した場合は、ショックによる失神を起こすことから、突然倒れ、命を失うほどの激烈な症状を来すこともあります。
■解離性大動脈瘤の検査と診断と治療
内膜が裂けた場所、大動脈瘤の破裂出血の有無などによって、重症度、治療方法が変わってきます。
解離性大動脈瘤が心臓に近い上行大動脈に存在するA型では、破裂により心臓を圧迫し救命できない場合が多く、ほとんどが緊急ないし早期手術の適応となります。放置すれば、大動脈閉鎖不全、心タンポナーデなどを引き起こす可能性があり、総頚動脈などに解離が及べば脳循環不全などにもなります。
A型の手術では、血管が裂けて破裂している血管、あるいは破裂しそうな血管を人工血管に置き換えます。ほとんどが大掛かりな手術となり、人工心肺装置を用いた体外循環を行って、心臓を停止させたり、脳への血流を一時的に遮断して、人工血管に置き換えます。
解離性大動脈瘤が胸部の下行大動脈から腹部にかけて存在するB型では、解離の部分が少なくて破裂する確率が少ない場合は、血圧を下げる薬を使って安静にすることにより、血管壁の裂け目が進行するのを抑えて動脈瘤の破裂を防ぎます。通常は手術をしませんが、A型へ移行することもあるので厳重な管理が必要です。
薬の効果がない場合、大動脈瘤が破裂する危険性がある場合、血流の低下があって腹痛や足の痛みがある場合は、手術となります。背中にある胸部下行大動脈に瘤があれば、開胸して人工血管に置き換えます。吻合(ふんごう)する血管壁も解離している場合があり、たとえ解離部分を修復しても血管の壁は弱くなっているため、手術後の出血が最も心配されます。
術後の出血のほか、心機能の低下、脳梗塞が、解離性大動脈瘤の重大な合併症とみなされます。B型では、さらに脊髄(せきずい)まひ、虚血性腸炎、腎不全、下肢の血流障害の合併症を起こすことがあり、何らかの治療をする必要があります。いずれにせよ、このような合併症が起こった場合、命に関わってきます。
解離性大動脈瘤にかかり、手術あるいは安静治療で退院した人は、以後も引き続き経過観察が必要。手術を行っても、解離した血管すべてを人工血管に置換することはできません。また、安静治療で破裂の危険がなくなっても、解離そのものが消失したわけではありません。少なくとも血管が膨れて破裂することはなくなったのですが、徐々に拡大して再破裂する可能性もあります。半年あるいは年に1回、CTなどによって、解離の悪化がないか検査します。
解離は突然起こるものですが、原因はほとんどが動脈硬化です。よって、解離性大動脈瘤の予防は、動脈硬化の予防ということになります。高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満の是正を行い、激しい運動を控え、急激な寒冷にさらされたりしないようして、血圧を急に上げないようにすることが大事です。
仮面高血圧
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顆粒球減少症
■白血球の中の顆粒球が減少し、発熱、のどの痛みが発現
顆粒(かりゅう)球減少症とは、白血球の中の顆粒球が正常値の下限以下に減少する疾患。顆粒球の正常値下限は、1マイクロリットル中に2000です。
白血球には、顆粒球、リンパ球、単球の3つの種類があります。この内、顆粒球が白血球の約60パーセントを占めます。また、顆粒球はさらに、好中球、好酸球、好塩基球の3つに分類されます。顆粒球減少症では、顆粒球の中でも特に好中球が急激に減少します。
顆粒球の主要な役割は、感染症に対する防御です。体内に侵入してきた異物を取り込んで処理する機能があり、好中球を始めとする顆粒球が不足すると、体の防衛機能が低下してしまいます。とりわけ、顆粒球が1000以下、特に500以下に減って、血液中の白血球がほとんどリンパ球だけになると、感染症にかかる危険が大きく、いったん発生すると重症になりがち。治療の上で問題となるのは、このように高度の顆粒球減少症で、無顆粒球症とも呼びます。
顆粒球減少症はインフルエンザ、肝炎、粟粒(ぞくりゅう)結核などの感染症や、再生不良性貧血などの造血器疾患に際しても生じますが、無顆粒球症は化学的物理的原因、特に医薬品によって生じた場合を指します。
医薬品の中には、抗がん剤のように一定量以上を使えば、必ず無顆粒球症をもたらすものがある一方、使用者全体からみると、ごく一部の人にのみもたらすものがあります。ある種の解熱剤、消炎剤、抗甲状腺(せん)剤、利尿剤、抗生物質なども、無顆粒球症の原因になります。
これらの医薬品が顆粒球を減少させる原因としては、アレルギーによる顆粒球の崩壊と、骨髄抑制に基づく顆粒球産生減少の二つが考えられます。
顆粒球減少症の症状は、突然の震えを伴った高熱で始まり、扁桃(へんとう)や咽頭(いんとう)に炎症が起こります。ひどくなると、潰瘍(かいよう)や壊死(えし)が生じます。潰瘍は急激に進行する傾向があり、痛みを生じます。感染症にもかかりやすくなり、肺炎や敗血症になることもあります。高齢者の場合は、なかなか治りにくい傾向がありますが、若年者では比較的経過は良好のようです。
■顆粒球減少症の検査と診断と治療
顆粒球減少症に気が付けば、因果関係が疑われる医薬品の使用を直ちに中止します。そして、軽症の場合は自然に回復するのを待ちます。
発熱を伴う中等症、重症の場合は、直ちに治療を開始し、感染症に対して十分な措置を講じなければなりません。無菌ベッドへ収容して、細菌などの外部侵入を防ぎ、抗生物質の投与や、好中球の減少を抑えるGーCSF製剤の投与をしつつ、血液検査をして白血球の推移を見守るというのが、一般的な治療法です。
抗生物質の投与にもかかわらず発熱が7日間以上持続し、治療に対して反応不良であれば、顆粒球輸血も考慮されます。
狭心症
狭心症とは、心臓の表面を取り巻く血管である冠(状)動脈の狭窄(きょうさく)などによって、心臓の筋肉である心筋に十分な血液が送られなくなり、心筋が一時的な酸素欠乏になった状態のことです。 虚血性心疾患の一つで、突然死を招くことにもなる急性冠症候群の一つにも数えられています。
人間の心臓は、筋肉でできた袋のような臓器で、1日に約10万回収縮し、全身に血液を循環させて、酸素や栄養を送り届けています。もちろん、心臓の拍動にも多くの酸素や栄養が必要ですが、心臓自身は心臓の中を通る血液からではなく、表面を取り巻く冠動脈から、血液を受け取っているのです。
この冠動脈に、動脈硬化などによってプラークという固まりができて、血液の通り道が狭くなったり、詰まったりすると、心筋が酸欠状態に陥ってしまい、狭心症や心筋梗塞(こうそく)を招くのです。心筋梗塞のほうは、冠動脈が完全に閉塞、ないし著しく狭まり、心筋が壊死してしまった状態です。
狭心症にはいろいろなタイプがありますが、よく知られているタイプは、労作(性)狭心症と安静(自発)狭心症の二つです。
労作狭心症は、動脈硬化などで冠動脈が狭くなっている際に、過度のストレス、精神的興奮、坂道や階段の昇降運動といった一定の強さの運動や動作が誘因となり、心臓の負担が増すことで起こるものです。安静狭心症は、就寝中や早朝など、比較的安静にしている際に起こるものです。心不全などを合併することも多く、労作狭心症よりも重症です。
40歳以上の男性に狭心症は多く、女性では閉経期以後や卵巣摘出術を受けた人に多くみられます。誘因として考えられるのは、高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症、ストレス、性格など。
■発作時の自覚症状は狭心痛
症状としては、狭心痛という発作を繰り返す特徴があります。典型的な狭心痛は突然、胸の中央部に締め付けられるような痛みが起こり、痛みは左肩、左手に広がります。まれに、下あご、のどに痛みが出ることもあります。
発作の時間は数分から数十分で治まりますが、発作中は顔面蒼白(そうはく)、胸部圧迫感、息苦しさ、冷汗、動悸(どうき)、頻脈、血圧上昇、頭痛、嘔吐(おうと)のみられるものもあります。
初めての発作は見過ごしがちですが、症状を放置した場合、一週間以内に心筋梗塞、心室細動などを引き起こす可能性もあります。治まったことで安心せずに、病院へ行くべきです。特に高齢者や、発作が頻発に起きる人は、注意が必要となります。
病院では、心電図 、運動負荷心電図、冠動脈造影などで検査し、すべてのタイプに共通して、血栓ができるのを防ぐために、アスピリンなどの抗血小板剤の投与による治療が行われます。発作を止めるために、ニトログリセリン、硝酸イソソルビドなどの硝酸薬、発作を予防するために、硝酸薬、 β遮断薬、カルシウム拮抗(きっこう)薬が投与されるほか、 経皮的冠動脈形成術、冠動脈大動脈バイパス移植術などの外科的治療も行われます。
■予防、対策のための心掛け
発作が起きた時には、安静が原則です。直ちに動作を中止し、歩行中ならば立ち止まって休みます。横になると、下半身の血液が大量に心臓に戻ってきて、心臓に負担をかけます。立っている場合は、何かにつかまって前かがみの姿勢で休むようにします。寝ている場合は、上体を起こして座り、布団などにもたれるようにします。そして、なるべく早く病院へ行くことです。
狭心症などの心臓病は、男性は40代、女性は閉経後の50代から増加し始めますので、年一回は定期検診を受けましょう。心電図や心拍数の変動、連続心電図などで、潜在的な心臓病の有無を調べられます。
高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が心臓病のリスクを高めるため、生活習慣病にかからないように留意し、もしかかってしまった場合には、そちらの治療をすることが先決となります。
腹囲の大きい人も、要注意です。肥満は生活習慣病の危険因子であり、動脈硬化の原因にもなるからです。まず、身長(センチ)マイナス100(キロ)までの減量を心掛けて下さい。
また、たばこの煙を吸うと、血管が収縮して血圧が上昇、心拍数も増えて、心臓が急激に酸素を要求します。喫煙者が狭心症や心筋梗塞で死亡する危険度は、非喫煙者の1.7~3倍ともいわれています。心臓に不安を抱えている人は、必ず禁煙の実行を。他人のたばこの煙を吸う受動喫煙も、心臓病のリスクを高めてしまいます。
心臓病のリスクを低めるには、食事が役立ちます。青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分は、血栓を溶かす作用があり、動脈硬化を予防します。タマネギに含まれる硫化アリルも、血液をサラサラにする作用があります。
血管の弾力性を保つ蛋白(たんぱく)質、抗酸化作用のある緑黄色野菜と大豆製品も、必要不可欠です。
菌血症
■細菌が血液の中に侵入して、体内を循環している状態
菌血(きんけつ)症とは、細菌が血液中に入って体内を循環している状態。一過性で他の疾患を引き起こさない場合と、血液中に入った細菌が髄膜に入って髄膜炎、全身の臓器に傷害を起こして敗血症などの疾患を引き起こす場合とがあります。
人体は少数の細菌であればすぐに排除することができるので、一過性の菌血症では症状が起こることはめったにありません。例えば、過度の歯磨きや歯科治療の際に、歯茎に常在する細菌が血液中に入って、一過性の菌血症が起こることがあります。細菌は腸からも血液中に入ることがありますが、血液が肝臓を通過する時に速やかに取り除かれます。こういった状態に関しては、通常は心配する必要はありません。
細菌が血液中に入る機会は意外と多く、外傷、食中毒、マラリアやウイルス性肝炎などの血液感染、膿瘍(のうよう)または感染創傷の外科的手術、泌尿生殖器または静脈内カテーテルの留置で自然発生的に生じることがあります。
一過性の菌血症はめったに症状を起こすことはありませんが、以前から何らかの感染症にかかっている人が突然、高熱を出した場合には通常、敗血症が疑われます。この敗血症は菌血症より発生率は低く、肺、腹部、尿路、皮膚など体のどこかにすでに感染がある時に、最もよく起こります。
感染がある臓器や、腸のようにふだんから細菌がいる臓器への手術を行った場合に、起こることもあります。消毒していない注射針を使う麻薬常習者や、化学療法を受けているなどの理由で免疫システムがうまく機能していない人も、かかりやすくなります。まれに、非細菌性の感染でも敗血症が起こります。
敗血症の症状は、震え、悪寒、発熱、脱力感、錯乱、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)、下痢などです。
一過性または持続性の菌血症から、体内を循環している細菌がさまざまな器官に定着し、転位性感染症を引き起こすこともあります。脳を包む膜に感染して髄膜炎、心臓を包む膜に感染して心外膜炎、心臓の内側の膜に感染して心内膜炎、骨に感染して骨髄炎、関節に感染して感染性関節炎などを起こします。
また、体内のほぼすべての器官に定着し、膿(うみ)の固まりを作る転位性膿瘍(のうよう)を引き起こすこともあります。膿瘍を作る細菌としては、ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌が挙げられます。
■菌血症の検査と診断と治療
通常、過度の歯磨きや歯科治療、外科的手術で起こる菌血症は、治療の必要はありません。以前から何らかの感染症にかかっている人が、突然高熱を出して敗血症が疑われる場合は、速やかに内科の専門医を受診します。抗生物質が発展する前までは致命的な疾患だった敗血症は、現在でも治療が遅れたり合併症の具合によっては、致命的となる重篤な疾患であることに変わりありません。
医師による診断では、血液中の細菌を直接検出することは一般に難しいので、いくつかの血液サンプルを採取して1〜3日間の培養検査に出します。発症者が抗生物質を服用している場合など、細菌をうまく培養できないこともあります。尿、脳脊髄(せきずい)液、傷口の組織、たんなど、ほかの体液や分泌物の培養も行い、細菌の有無を調べます。体内に留置しているカテーテルを抜去し、その先端を切り取って培養に回すこともあります。
敗血症は重篤な疾患で、死亡するリスクも高いので、診断を確定する検査結果を待たずに、抗生物質ですぐに治療を始める必要があります。抗生物質による治療の開始が遅れると、助かる可能性が大幅に低下します。
治療ではまず、どの細菌による感染の可能性が高いかに基づいて抗生物質を選択します。これは、感染がどの部位から始まったかによります。感染巣が不明な時は、効果を確実にするために2〜3種類の抗生物質を組み合わせて使い、検査結果が出た時点で、感染を引き起こしている特定の菌に最もよく効く抗生物質に切り替えます。
通常は、細菌の起源であると疑われるカテーテルなどの体内器具を取り除きます。感染巣を取り除くために、手術が必要になることもあります。
血栓症
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血友病
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高血圧症
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静脈血栓症
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静脈瘤
■主に下肢の静脈が拡張し、血液が滞ることで発症
静脈瘤(りゅう)とは、静脈、特に下肢の表面にたくさんある表在静脈が拡張し、曲がりくねって青く浮き出た状態。血液が滞ることで起き、下肢の静脈だけでなく食道、上肢、腹壁、肛門周囲の静脈にも現れることがあります。
静脈弁の機能不全による一次性静脈瘤と、生まれ付き静脈が拡張している先天性静脈拡張症や深部静脈血栓症などによる二次性静脈瘤に分けられます。
最も多くみられる、静脈弁の機能不全によって起こる一次性の静脈瘤は、男性よりも女性に発生しやすいという特徴があり、一般的には高齢の女性や妊婦の足に発生していることが多いものです。販売員、美容師、調理師といったいわゆる立ち仕事の多い女性にも発生しやすく、その場合には症状の進行も早くなります。
初期には静脈が膨れ上がるだけで、夕方に目立っても、一晩寝ると朝には消失していることがほとんどです。下肢を高く上げておく、すなわち挙上することによって、膨れ上がりはより改善します。症状が進むと、立位での下肢のだるさや、うっ血感、重量感、疼痛(とうつう)、浮腫(ふしゅ)、こむら返りなどが出現し、静脈瘤部の知覚異常やかゆみ、かくことによる慢性湿疹(しっしん)様皮膚炎なども現れてきます。
慢性期になると、浮腫、出血、皮膚の色素沈着、血栓性静脈炎の急性症状、うっ滞性皮膚炎などが出現し、時に難治性の静脈瘤性下腿潰瘍(かたいかいよう)となることもあります。
一次性の静脈瘤の正確な原因はわかっていませんが、加齢、妊娠、立ち仕事、肥満といった要素よりも、下肢の皮膚表面にある表在静脈の壁がもともと弱いのが主な原因と考えられています。年齢を重ねるに従って、もともと弱い静脈は弾力性がだんだんなくなっていきます。その結果、静脈は伸びて長く広くなり、正常な時と同じ空間に収まるためには、伸びたぶんを巻き込まなくてはなりません。これは、皮膚の下にヘビがとぐろを巻いているように見えます。こういった静脈瘤は妊娠中に起こりやすいものですが、出産すればいつの間にか消えてしまいます。ただし、下肢の皮膚表面にある静脈の壁の弱さは、遺伝してしまうともいわれています。
静脈の拡張は延長よりも重大な問題で、血液の逆流を防ぐために心臓に向かって付着する静脈弁を引き離す原因となります。静脈弁が引き離された状態では、きちんと閉じることができず、起立時に重力の作用によって起こる血液の逆流を止めることができなくなります。その結果、血液が逆流して静脈内に急速にたまります。血液の逆流は、壁が薄くなって蛇行している静脈をさらに拡張させます。
正常なら表在静脈から深部静脈へ血液を送る連結静脈の一部も、拡張することがあります。連結静脈が拡張すればその弁も引き離され、筋肉が深部静脈を圧迫するたびに血液が逆に表在静脈内へ噴出して、表在静脈はさらに伸びてしまいます。
静脈瘤がある女性の多くには、毛細血管が拡張するくも状静脈もみられます。くも状静脈は静脈瘤内の血液による圧迫が原因となっている可能性もありますが、一般にまだ解明されていないホルモンが原因と考えられます。
■静脈瘤の検査と診断と治療
静脈瘤は残念ながら、完治することはありません。一晩寝て翌日には消える程度のものならば様子をみてもかまいませんが、翌朝もむくみがとれない場合は、全身の疾患のチェックも含めて、一度内科医の診察を受けることが必要です。
立位での下肢の静脈瘤の悪化と挙上による改善で、一次性静脈瘤が診断されます。すなわち、静脈瘤が立位により著しくなり、足の挙上によって消える場合には一次性静脈瘤と考えられます。なお、静脈瘤は普通、皮膚の下の膨らみとして見えますが、症状は静脈が見えるようになる前から現れます。静脈瘤が肉眼で見えなくても、熟練した医師は足を触診して、静脈の拡張範囲を確認できます。
最近では、超音波断層法や静脈造影によって、より詳しい静脈瘤の部位と程度の診断が可能です。通常、このような検査が必要となるのは、皮膚の変化や足首のむくみによって深部静脈の機能不全が疑われる場合に限られます。足首のむくみは皮膚の下の組織に体液がたまるのが原因で、浮腫と呼ばれています。静脈瘤だけでは、浮腫は起こりません。
初期の軽度のものでは、長時間の立位を避けて、弾性ストッキングを着用し、夜間に下肢を高く挙げおくことによって、症状は改善します。弾性ストッキングは静脈を圧迫することにより、静脈が伸びたり傷付いたりするのを防ぎます。妊娠中に出現する静脈瘤は、出産後2〜3週間で消えるのが普通で、この時期には治療する必要はありません。
症状が強く大きな静脈瘤があるもの、うっ血が著しくて下肢を高く挙げておいても改善しないもの、慢性の静脈血行不全があるもの、血栓性静脈炎を繰り返すものなどに対しては、表在静脈の皮下抜去(ストリッピング)、流入静脈の高位結紮(けっさつ)、局所の静脈瘤の切除、硬化薬注入による治療などが行われます。
しかしながら、手術や硬化薬注入によって、静脈瘤を切除したりすべて排除しても、この疾患は治りません。治療は主に症状を軽減して外観を改善し、合併症を防ぐために行います。どの治療法においても再発や、別の静脈瘤が出てくる場合がありますが、不適切な治療では6カ月から1年以内に再発します。
また、現在ではレーザーやパルスレーザーによる静脈内膜の焼却も行われています。レーザー療法は、高度に集束した強い光を連続的に使用して、組織を切除したり破壊するものです。パルスレーザー療法は、くも状静脈の治療に適用できます。光の当て方が瞬間的であることを除けば、レーザー療法とほとんど変わりません。
心筋炎
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心筋梗塞
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心室中隔欠損症
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心膜炎
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精索静脈瘤
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成人T細胞白血病(ATL)
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先天性心臓病
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大血管転位症
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大動脈炎症候群
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大動脈縮窄症
■大動脈の狭窄のために血液の流れが悪化
大動脈縮窄(しゅくさく)症とは、動脈管を中心にした大動脈に狭窄(きょうさく)があるために、血液の流れが悪くなる疾患。ほとんどが先天性のもので、女性よりも男性に多く発生しています。
心臓から全身に血液を送る大動脈は、左心室から頭の先や足側へ循環する時に、弓なりに曲がっています。この部分を大動脈弓と呼び、ここから下行大動脈に移る部分が先天的に、狭窄を起こしている場合があります。また、動脈管(ボタロー管)は胎児期には開いていますが、生後は閉鎖するのが一般的です。この閉鎖に伴って、動脈管の前後で大動脈狭窄が起こることがあります。
前者は乳児型、後者は成人型と呼ばれます。乳児型の場合は、心臓の奇形を合併していることが多く、そのために心不全や肺高血圧症を起こして、生後6カ月以内に死亡する率が高くなっています。成人型では、大動脈のバイパス(副血行路)が発達するので、発育上は支障がなく、予後も比較的良好です。
以上の2つは定型的な縮窄症ですが、異型大動脈縮窄症と呼ばれるものは、大動脈炎症候群と同類で、動脈壁に炎症が起こったためにできた狭窄です。この狭窄は大動脈の至る所にできますが、ほとんどは胸部から腹部にかけての大動脈に起こります。炎症がなぜ起こるかは、わかっていません。
大動脈縮窄症の症状としては、大動脈が狭くなったところで血流が抵抗を受けるために、狭窄部より上の、心臓に近いところでは高血圧になり、末端では低血圧になるという現象が起きます。すなわち、上半身は高血圧、下半身は低血圧になり、足の動脈では、股(また)の付け根の脈拍が触れないこともあります。また、高血圧のために左心室が肥大します。
自覚症状としては、運動をした時の激しい動悸(どうき)、顔面のほてり、頭痛、頭重という高血圧の症状がみられます。足では、血行が悪いために、長く歩くと足が痛い、疲れやすいなどの症状が現れます。乳幼児では、足の発育も悪くなります。
定型的な大動脈縮窄症の場合、ほうっておくと20歳までに75パーセントが死亡するとされています。死因としては、縮窄に合併した心破裂、大動脈瘤(りゅう)破裂、心内膜炎、心不全、脳出血など。
■大動脈縮窄症の検査と診断と治療
X線検査、心臓超音波検査、心電図検査を行います。また、手にある橈骨(とうこつ)動脈から造影剤を注入し、大動脈をX線で撮影する逆行性橈骨動脈造影で診断を確定することもあります。
診断がつき、狭窄が強い場合には、血行再建のための手術を行います。定型的な大動脈縮窄症では、狭窄部を切除して上下の大動脈をつなぎます。狭窄の範囲が広ければ、人工血管でつなぎます。手術の時期は、8〜14歳ぐらいが好成績を得られると見なされています。
異型大動脈縮窄症に対しては、病変部の切除が困難なことも多く、この場合は、代用血管でバイパスを作る手術を行います。
手術後、再び狭窄が認められることがあります。近年では、再狭窄に対して、手術以外の方法としてカテーテル治療が行われることもあります。
大動脈瘤
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多血症(赤血球増加症)
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低血圧症
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鉄欠乏性貧血
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動脈管開存症
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特発性心筋症
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特発性脱疽
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バージャー病
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肺性心
■肺の疾患の影響で、心臓に病変が起こるもの
肺性心とは、肺に疾患があるために、心不全などを起こしたもの。肺性心疾患とも呼びます。
肺と心臓は非常に密接な関係にあり、片方に異常が起きたり、疾患があると、その影響を受けて、もう片方にも病変が起こりがちです。肺に疾患があると、肺全体の血行がスムーズにいかなくなり、右心室からの血液の拍出が妨げられ、やがて右心不全を起こすというわけです。
肺性心には、急性と慢性とがあります。急性のものは肺塞栓(そくせん)によって起こりますが、一般に肺性心という場合は慢性のものを指しています。急性、慢性とも予後はよくありません。
慢性肺性心の症状としては、肺結核や気管支ぜんそく、肺気腫(きしゅ)、珪肺(けいはい)などの慢性的な肺の疾患があるために、せき、たん、呼吸困難といった呼吸器症状が、まず最初に現れます。そして、呼吸困難の結果、動悸(どうき)やチアノーゼという症状が引き起こされ、脈拍の異常も出てきます。
急性肺性心の場合は、突然、呼吸困難、頻脈、チアノーゼ、血圧降下などが起こり、ひどい時は、けいれんが起きたり、ショック状態に陥ります。一刻も早く入院して、急性の右心不全に対する処置をしないと危険です。
■肺性心の検査と診断と治療
肺性心の慢性症状がある時には、心雑音、心電図の異常も出てきますが、このような症状が出ても、右心不全の有無の判断は非常に難しく、心エコー検査やナトリウム利尿ペプチドの測定が必要です。
肺性心の急性症状が出現している際には、絶対安静にして強心薬の注射をしたり、酸素吸入をして改善を図ります。疾患そのものの治療としては、もとの肺疾患を治すことが先決ながら、肺性心を起こすほどの肺の病変を治療することは非常に困難です。
肺動脈狭窄症
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白衣高血圧
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白血球増加症
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貧血
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ファロー四徴症
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不整脈
■心臓の拍動のリズムに乱れが生じる疾患
不整脈とは、一定感覚で行われている心臓の拍動のリズムに、何らかの原因によって乱れが生じる疾患。私たちが平常測っている脈拍は、心臓の拍動によって送り出された血液の流れにより動脈に伝えられて起こるもので、厳密には心拍数そのものではありません。
血管系統の中心器官である心臓には、4つの部屋があります。上側の右心房と左心房が、血液を受け入れる部屋です。下側の右心室と左心室が、血液を送り出す部屋です。4つの部屋がリズミカルに収縮することで、心臓は絶え間なく全身に血液を送り出すことができるのです。このリズムを作っているのが心臓の上部にある洞結節(どうけっせつ)と呼ばれる部分で、1分間に60~80回の電気刺激を発生させて、心臓を規則正しく収縮させています。この電気刺激が正常に働かなくことによって、拍動のリズムに乱れが生じてしまいます。
不整脈は、脈が不規則になる期外収縮、脈が速くなる頻脈性不整脈、脈がゆっくりになる徐脈性不整脈の3つに分類されます。
期外収縮は、いわゆる脈飛びを伴う不整脈です。平均的な心拍数を考えれば、1秒間に1回は必ず心臓が拍動していることになりますが、期外収縮では急に1秒飛んで2秒後に拍動するといったリズムの乱れを伴います。期外収縮の場合、症状が健康な人にもみられることがあるため窮迫した疾患ではないといえますが、発作が連続して起こる場合は危険といえます。原因として考えられるのは、心房がけいれんすることによって起こる心房細動。
頻脈性不整脈は、1分間当たりの心拍数が100回を大きく上回る症状をみせます。人間の血液量は一定なので拍動する回数が多くなると、1回の拍動で送り出される血液量が少なくなり、血圧の低下を招きます。頻脈性不整脈を来す病態には、心房細動、発作性上室性頻拍、心室頻拍、心室細動、WPW症候群などがあります。
徐脈性不整脈は、1分間当たりの心拍数が40回以下まで下回る症状をみせます。血流量が減少するため、貧血を起こしやすくなります。徐脈性不整脈を来す病態には、洞不全症候群、房室ブロックがあります。
不整脈で現れる症状は、不整脈の種類によって異なります。期外収縮では、めまいや動悸(どうき)などを伴います。頻脈性不整脈では、動悸や血圧の低下による息苦しさなどが起こります。短時間、胸が痛くなることもあります。徐脈性不整脈では、貧血やめまい、ふらつきなどの症状が現れ、息切れが起こったり、失神することもあります。
不整脈の原因としてもっとも多いのは、加齢によるものです。年を取ると誰でも少しずつ不整脈になっていきます。次に、ストレス、過労、睡眠不足が原因になってきます。基本的には狭心症や心筋梗塞(こうそく)とは別の疾患ですが、すでに心臓の疾患があると、不整脈になりやすいのも事実です。また、頻脈性不整脈の原因となっているのは、心臓の動きにかかわる電流に過電流を起こす部位があるためである、という研究結果もあります。
なお、脈が触れなくなった場合は、心室細動と心停止が考えられます。心室細動は不整脈の中でも危険な状態で、心臓の心室がけいれんを起こし、血流が停止し、意識がなくなります。1分間の心拍数は300~600回になるといわれ、心臓から血液が送られないため、すぐに意識を失い、数分で脳死が始まるともいわれています。すぐに心臓マッサージを開始しなければ死亡に至る大変、危険な状態です。
■不整脈の検査と診断と治療
不整脈の症状は、その原因や発症部位によって異なりますが、重症な疾患に至る恐れがあるので、早期に専門医の診断を受ける必要があります。
医師による不整脈の治療に当たっては、検査による症状の特定が重要になってきます。普通の心電図検査を中心に、胸部X線、血液検査、さらにホルター心電図、運動負荷検査、心臓超音波検査などが行われます。いずれの検査も、痛みは伴いません。
ホルター心電図は、携帯式の小型の心電計を付けたまま帰宅してもらい、体を動かしている時や、寝ている時に心電図がどう変化するかをみる検査。長時間の記録ができ、不整脈の数がどれくらいあるか、危険な不整脈はないか、症状との関係はどうか、狭心症は出ていないかなどがわかります。とりわけ、日中に発作が起こりにくい不整脈を発見するのに効果を発揮します。
運動負荷検査は、階段を上り下りしたり、ベルトの上を歩いたり、自転車をこいでもらったりする検査。運動によって不整脈がどのように変わるか、狭心症が出るかどうかをチェックします。心臓超音波検査は、心臓の形態や動きをみるもので、心臓に疾患があるかどうかが診断できます。
不整脈の内科治療では、抗不整脈薬という心拍数を正常化する働きのある薬を中心に行われます。ただし、不整脈そのものを緩和、停止、予防する抗不整脈薬での治療は、症状を悪化させたり、別の不整脈を誘発したりする場合があり、慎重を要する治療法であるといえます。抗不整脈薬のほかに、抗血栓薬など不整脈の合併症を予防する薬なども用いられます。
不整脈の外科治療では、徐脈性不整脈に対して、ペースメーカーの埋め込み手術などが行われます。ペースメーカーは、遅くなった自分の脈の代わりに、心臓の外から電気刺激を与える装置です。この装置の埋め込み手術は、肩の皮膚の下に電気刺激を発する小さな電池と、その刺激を心臓に伝えるリード線を入れるだけですから、局所麻酔で簡単にすますことができます。
最近では、頻脈性不整脈に対して、体内に挿入したカテーテル(細い管)の先端から高周波を流し、心臓の過電流になっている部位を焼き切って正常化する、カテーテル・アブレーション法という新しい治療法が行われています。この治療法は、心臓の電位を測って映像化する技術が確立したことで実現しました。
薬物療法に応じず、血行動態の急激な悪化を伴い心房粗細動、心室頻拍、心室細動などを生じる重症頻脈性不整脈に対しては、直流通電(DCショック)が行われます。また、慢性的に重症心室頻拍、心室細動の危険が持続する症状に対しては、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮されます。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置です。
ブルガダ症候群
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閉塞性動脈硬化症
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末梢動脈疾患(PAD)
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無症候性心筋虚血
■一過性に心筋の虚血がありながら、自覚症状がない病態
無症候性心筋虚血(SMI:silent myocardial ischemia)とは、検査上では狭心症と全く同じく冠動脈に狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)を持ち、一過性に心筋の虚血を起こす所見がありながら、胸痛の自覚症状がない病態。無痛性心筋虚血とも呼びます。
無症候性心筋虚血の起こる原因は、狭心症と同じで高血圧、高脂血症、肥満、高尿酸血症、ストレス、性格など。この無症候性心筋虚血を持つ発症者は、基本的に痛みを感じる限界値の高いことがわかっています。また、糖尿病にかかっていたり、年齢が高くなるとともに、発症頻度が増加します。
すでに大きな心筋梗塞(こうそく)がある場合にも、痛みを感じないことがあります。心臓を移植した場合にも、神経がつながっていないために痛みを自覚できず、虚血性心疾患の発見が遅れることが欧米では問題になっていますが、日本でも決して対岸の火事ではありません。
無症候性心筋虚血は、1型、2型、3型の3つに分けられます。
1型は全く症状がない厄介なもので、日本では健康と思っている人の2〜3パーセントにあると見なされます。検診やほかの疾患で診察を受けた際に、偶然見付けられる程度です。
2型は、心筋梗塞に合併します。狭心症と一緒にみられることが多く、比較的診断されやすいもの。普通、心筋梗塞の20〜50パーセントにみられますが、急性期ほど頻発します。
3型は、狭心症と一緒に発症するものです。一般的に、安定狭心症とは20〜40パーセントに合併し、不安定狭心症とは50〜80パーセントと高率に合併します。しかも、発生する心筋虚血の4分の3が無症候性心筋虚血なのです。
従って、狭心症や心筋梗塞例を治療する際には、自覚症状の改善だけではなく、無症候性心筋虚血発作の有無を適宜、検査してもらう必要があります。自覚症状だけを目標に治療すると中途半端となり、心筋梗塞や心臓性急死に進む危険があります。胸痛を自覚しなくなったことは改善を意味しますが、心筋虚血発作が完全に消えたわけではなく治療は十分とはいえないことを、忘れないようにします。
■無症候性心筋虚血の検査と診断と治療
無症候性心筋虚血では自覚症状がないため、診断には各種の検査が欠かせません。よく行われるものに、運動負荷試験とホルター心電計があります。心筋シンチグラフィも、症例を選んで行われます。全体像を把握した上で、必要に応じて冠動脈造影も行われます。
治療は、基本的に狭心症と同じです。高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病がリスクを高めるため、生活習慣病にかからないように留意し、もしかかってしまった場合には、そちらの治療をすることが先決となります。肥満している人は減量、喫煙している人は禁煙を図ります。
しかし、無症候性心筋虚血では自覚症状がないために、無理をしたり、受診や治療が遅れたりなど、医師と発症者の双方とも好ましくない状況を作りやすい危険性があります。この疾患を十分に理解するようにします。
無症候性心筋虚血などの虚血性心疾患にかからないためには、狭心症、心筋梗塞、冠動脈硬化を促進させる危険因子を遠ざけて、改善することが大切です。そのためには、40歳になったら毎年1回、心電図、血圧、血中総コレステロールなどの脂質を測定することです。特に、こうした疾患が発生した家系の人には起こりやすいので、心臓、血管系の検診を毎年受けるようにします。
リンパ浮腫
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レイノー病
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HTLV−1関連脊髄症(HAM)
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WPW症候群
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