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アリスの地底めぐり


ルイス・キャロル 作・絵
大久保ゆう 訳

1
最終更新日 : 2012-12-10 18:48:00


ありふれた
クリスマスのおくりもの
かわいい子へ
ある夏の日の思い出に

2
最終更新日 : 2012-12-20 22:53:00

ひとつめ

 アリスはあっきあきしてきた、池のほとり、お姉さまのそばですわってるのも、何もしないでいるのも――ちらちらお姉さまの読んでる本をのぞいてみても、さし絵もかけ合いもないから、本のねうちはどこ、とアリスは思う、さし絵もかけ合いもないなんて、って。だから物思いにふけるばっかり(といってもそれなり、だって日ざしぽかぽかだとぼんやりねむくなってくるし)、デイジーの花輪作りはわざわざ立ち上がって花をつむほど楽しいものなのか――そこへふと赤い目の白ウサギが1羽そばをかけぬける。
 あまり目を引くようなところもないから、アリスにしてもさほどとんでもないとも感じないまま、聞こえてくるウサギのひとりごと。「おおお、ちこくでおじゃる!」(あとになって思い返すと、ここでふしぎがってしかるべきという気もするけど、そのときはみんな自然きわまると思えてね)その次にウサギがチョッキのぽっけから時計を取り出しまじまじしてからかけ足したから、アリスもとびあがる、だってむねがはっとした、これまでそんなウサギ見たことない、チョッキにぽっけがあったり、時計を取り出したり、そこで気になる気になる、野原をかけて後を追っていくと、ちょうど目の前でそいつはかき根の下、大きなウサギ穴にぴょんと入って。たちまち飛びこみアリスは後を追う、またもどってこられるかなんて、ちっとも考えもせずに。
 そのウサギ穴はまっすぐ続いて、まるでどこかトンネルみたい、そのあといきなり下り坂、いきなりすぎてふみとどまろうと思うまもなく、気づいたら深いふきぬけみたいなところに落っこちていて。穴がすごく深いのか、落ちるのがすごくゆるやかなのか、どうにもひまがありすぎて、落ちるあいだにあたりは見られる、次に何が起こるのかなって思いもできる。まず下を見てみると、ゆく先はわかるけれども、暗すぎて何がなんだか。そのあと穴のぐるりを見ると、目にとまるのはぎっしりならんだ戸だなに本だな。あちらこちらに画びょうでとまった地図に絵。通りがかりにたなのひとつからびんを取ってみると、〈オレンジ・マーマレード〉とはられてあるのに、とてもがっかり、中身はから。とはいえ、びんを放るのはしのびない、だって下のだれかが死ぬといけないから、うまく戸だなのひとつへ通りすがりに置いておいた。
「ふふ!」とアリスは考えごと。「こうやって落ちておけば、もう階段《かいだん》転げ落ちるのなんてわけなくてよ! おうちに帰ったら、あたくしみんなの英雄《えいゆう》ね! ええ、お屋敷《やしき》の屋根から落ちたって、何も声をあげたりしないわ!」(そりゃあまあそうだよね。)
 ひゅうん、うん、うん。いつになったら落ちきるのかな。「これまでのところで、どれくらい落ちたのかしら。」と声に出してみる。「地球のまんなかあたりには来てるはずね。ええと、6400キロの深さだったかしら――」(だってほらアリスはお勉強《べんきょう》の時間にこういったことはそれなりにかじっていたからね、今ここでひけらかしたところで、聞く人もいないからどうしようもないけど、そらんじるけいこにはなったかな。)「うん、それで深さは合ってるけど、あと今いるケイドとイドは何ぞ?」(アリスは経度《けいど》も緯度《いど》もさっぱりだけど、今言うと格好《かっこう》がつくかなと思っただけ。)
 やがてまた始めて。「まさかこのまま地球をまっすぐつきぬけて? 面白いわ、行きつく先の方々は頭を下にして歩いてるってわけね! でもちゃんとお国のお名前何ですかっておうかがいしないと、ねえ。どうも、おくさま、ここはニュージーランド、それともオーストラリア?」――と言いながら左足を引いてひざを曲げようとしたんだけど(空中でこんなふうにスカートつまむところ思いえがける? できると思う?)「そうしたら物をたずねたあたくしが、なんて物知らずの小娘って思われてよ! だめ、聞けない。でももしかしたらどこかに書いてあるのが見つかるかも。」
 ぴゅうん、うん、うん。ほかにやることもなくて、またすぐにアリスはしゃべりだす。「ダイナ、あたくしがいなくて、今晩《こんばん》はきっとさみしがっていてよ!」(ダイナはネコのこと。)「みんなお茶の時間にミルク出すのわすれてないといいけれど! ああ、ダイナちゃんここに連れてこればよかった! 空中にネズミはいなさそうだけど、コウモリならとれるかも、だってほら似ててよ、ネズミと。でもネコってコウモリ食べるのかしら。」ここでアリスはちょっとねむたくなってきて、うつらうつらしながらひとりごとを続ける。「ネーコってコーモリ食べる? ネーコ、コーモリ、食べる?」そのうちどっちがどっち食べるのかわからなくなって。まあどちらにしても答えはわからないから、どっちになっても大して変わりないけど。うとうと気分になると、ちょうど始まるゆめのなかではダイナと手をつないでおさんぽの場面、そこでにらんで言うんだ、「いいこと、ダイナちゃん、はっきりお言い。あなたコウモリ食べたことあって?」そのときいきなり、どすん! どっすん! とつっこんだのが枝に木切れの山で、落っこちるのおしまい。
 アリスにけがはちっともなくて、ぴょんとそのまままっすぐ立てる。見上げてみても、頭の上はまっくらやみ。前にはまた長い道があって、白ウサギがまだ見えるところにいて、かけ足で進んでいく。ぐずぐずしてるひまなんてない。走り出すアリスは風のよう、ちょうど向こうが角を曲がるところでこんな声が。「ぴょんぬるかな、もう大ちこくでおじゃる!」続いてこっちも角を回ると、気づけば天井低めの大広間、その天井からずらりとぶらさがったランプで照らされてて。
 まわりにぐるりとドアがならんでいたのに、どれもみんな鍵《かぎ》がかかってて、だからアリスはぐるりと回って、みんな試したあと、とぼとぼとまんなかに歩いていってね、どうやったらまたお外に出られるんだろうって。するとふとそこへ出てきた3本足の小さなテーブル、ぜんぶかたいガラスでできていて、なんとその上にはただひとつ、ちっちゃな金の鍵、そこでアリスがまずひらめいたのが、この広間のドアのどれかに合うんじゃないかってこと、なのに何たること! 穴が大きすぎるか鍵が小さすぎるか、とにかく開くものはひとつもない。ところがもう1度回ってみると、ちんまりカーテンのかかっているところがあって、そのうらには高さ46センチくらいのドアが。で、ちっちゃな鍵をその鍵穴《かぎあな》に試してみると、ぴったり! ドアを開けてアリスが、ネズミ穴と同じくらいの小さな通り口をしゃがんでのぞいてみると、向こうには見たこともないきれいなお庭が。もうその暗い広間から飛び出して、明るいお花畑とひんやり泉《いずみ》のあたりを歩き回りたくてしかたがないのに、そのドアは頭も通らなくって。「頭だけが向こうに出ても、」とかわいそうにアリスは考えごと。「肩《かた》がぬけなきゃどうしようもなくてよ。はあ、望遠鏡《ぼうえんきょう》みたく身体をたためればどんなにいいか! 始め方さえわかれば、たぶんできるのに。」というのも、ほら、ここずっととんでもないことばかり起こってたから、アリスはほんとにできないことなんて、実はほとんどないじゃないかって気になってきてたんだ。
 ほかにやることもなかったから、テーブルのところに引き返して、もうひとつ鍵でも、いやせめて身体のたたみ方の本でも見つからないかなと思ってたんだけど、今度テーブルに出てきたのは小びんでね――「さっきまでぜったいなかったのに」ってアリスは言って――びんの首にくるっとむすんであったのが紙切れで、そこに〈ノンデ〉って文字がカタカナできれいに印刷《いんさつ》してあって。
「ノンデ」っていうのはたいへんけっこう、「でもまずたしかめること。」って言うアリスちゃんはお利口さん。「びんに〈毒〉の印《しるし》があるかないか見てみないと。」だってアリスはそういう小話をそれなりに読んだことがあった、そこでは子どもがやけどしたり、けだものに食べられたり、そのほかひどい目に合うのだけど、どれもお友だちの教えてくれた簡単《かんたん》な決まりをわすれたせいでそうなったわけ。たとえば、火に近づけばやけどするよ、ナイフで指を深く切ったら血が出るよ、とか。で、ちゃんと覚えていたのが、〈毒〉の印のあるびんを飲むと、おそかれ早かれほぼまちがいなく毒に当たるよ、というもの。
 とはいえ、このびんには毒の印はなかったので、アリスが味見してみると、とってもおいしくて(なんと風味はサクランボのタルトにカスタード、パイナップルからローストチキンとキャラメル、あつあつのバタートーストまでがいっしょになったみたいで)あっというまに飲みきっちゃった。
*  *  *  *  *  *
「とってもへんてこな気持ち!」とアリス。「望遠鏡みたく身体がたたまれてるのね。」
 その通り。今や背《せ》たけはたった25センチ、そして顔がぱっとあかるくなったのは、ふと思いついたから。あの小さいドアからすてきなお庭に出るのに、今の大きさならちょうどいいって。とはいえ、まずはしばらくじっとしてたしかめる、もうちぢまないところまでね。ちょっぴりどきどきしていたんだ。「だってほら、おしまいに、」とアリスはひとりごと。「ロウソクみたく、ぜんぶなくなっちゃうのかも、そうしたらあたくしどうなっちゃうのかしら。」そこでロウソクの火がふっと消えたあとどうなるのか思いうかべてみようとしたんだ、見たことなかったからね。まあ、もう何も起こらなかったから、すぐにでもお庭へ出ることにしたんだけど、あああかわいそうにアリス! ドアのところで、ちっちゃな金の鍵をわすれたことに気がついて、鍵をとテーブルに引き返してみると、今度は上にぜんぜんとどかない。ガラスの向こうにはっきりと見えるのに、せいいっぱいテーブルの足からのぼろうとしても、すべるすべる、しまいにはくたびれて、かわいそうにかわい子ちゃんはへたりこんで大泣き。
「しっかり! 泣いたってどうしようもなくてよ!」とアリスは自分に言い聞かせる。「あなた、今すぐにおやめなさい!」(いつもご自分へのおいさめはとてもご立派《りっぱ》、時にはご自分へのおしかりがきびしくてなみだをためることもあるけど、あるときなんか自分対自分のクローケーの試合でずるしたってことでわすれずご自分の耳をおはたきになるくらい。このへんてこな子は1人2役するのが大好きだったんだ。)「でも今、」とかわいそうなアリスの考えでは「1人2役してもしかたなくてよ! もう、あたくし、ちゃんとひとり分にも足りてないんだもの!」
 ふと目を落とすと、テーブルの下に置かれた黒《こく》たんの小箱。開けると中に小ぶりの焼菓子《やきがし》が見つかって、そこについていた紙切れには、〈タベテ〉って文字がカタカナできれいに印刷してあって。「いただくわ。」とアリス。「大きくなれば鍵にもとどくし、小さくなってもドア下をくぐりぬけられる、いずれにしても庭には出られるから、どっちになってもかまわなくてよ!」
 ちょびっとかじって、そわそわとひとりごと。「どちらの方? どちらなの?」と手を頭のてっぺんに当てて、どっちになるかと思ったらびっくりびっくり、気づくと同じ背たけのまま。たしかに焼菓子を食べただけじゃ、こうなるのがふつうなんだけど、アリスはとんでもないことが起こるってそれだけを考えるようになってたから、まともに進むことがすごくつまらなくばかげたことに思えてね。
 だからむきになって、たちまちぺろりと焼菓子をたいらげたんだ。
*  *  *  *  *
「てんへこりん、てんへこりん!」と声をあげるアリス。(びっくりのあまり、ちゃんとした言葉をどわすれしてね、)「今度は身体が広げられてる、世界最大の望遠鏡をのばしてるみたい! ごきげんよう、あんよちゃん!」(だって足元を見下ろすと、どんどん遠ざかって、ほとんど見えなくなりそうで。)「ああ、おいたわしや、あんよちゃん、こうなったらどなたにくつやくつ下をはかせてもらおうかしら、ねえ? ぜったいあたくしには無理! あんまりにもはなれすぎて、こっちからお世話できなくてよ。できるだけご自分で何とかなさることね――でも気づかいはしてあげないと。」とアリスは思って、「でないと行きたい方に歩いてくれないかも! そうね、クリスマスごとに新しいブーツをさし上げてよ。」
 頭のなかであれこれ、どうしようかとめぐらせ続け、「人に運んでもらわないと。」と考えて、「って、もうふきだしそう、自分のあんよにプレゼントだなんて! あて名だっておかしなものになってよ! カーペットにお住まいの
   アリスの右足さまへ
   アリスから愛《あい》をこめて
まったく! あたくしの話もからっぽね!」
 ちょうどそのとき、頭が広間の天井にごつん。なんとただいま背たけは2メートル75をややこえたあたり、たちまちちっちゃな金の鍵を取り上げて、お庭のドアへあわてて向かう。
 ふびんなアリス! がんばってもできるのは、横向きにねそべって片目でお庭をのぞくだけ、向こうへ行く望みなんて、これまで以上にありえない。へたりこんでまた大泣き。
「あなた恥《はじ》をお知りなさい。」とアリス。「あなたみたいな気高い娘が、」(たしかにお高い)「こんな大泣き! ただちにおやめ、いいこと!」けれどもやっぱり泣いたまま、流すなみだはたっぷり大量《たいりょう》、しまいに大きな池になって、深さおよそ10センチ、まわりにぐるり広がって、広間を半分ひたしてしまう。しばらくして聞こえてくる遠くのぱたぱたという足音、なみだをぬぐって近づくものに目をやると、そう、あの白ウサギがまたもどってきたんだ、おめかしして、白ヤギの手ぶくろを片手に、香《かお》る花束をもう片手に持っていてね。まさにアリスはだれか助けてと言いたいところだったから、すがる思いで、通りがかりのウサギにおずおずと弱々しげに声をかける。「あの、よろしくて――」びくっとしたウサギは、声がしたとおぼしき広間の天井をあおぐなり、はたと花束と白手ぶくろを落として、全速力でぴゅーっと暗がりに消え去っちゃった。
 花束と手ぶくろを拾い上げたアリス、その花束がかぐわしいので、ずーっとにおいをかぎながらひとりごとの続き――「もう、もう! 今日はけったいなことばかり! でも昨日はみんないつも通りだったのに。もしや夜のうちにあたくしの身に何か。今朝起きたときのあたくしはちゃんとあたくし? ちょっとちがっていた気がしないでもなくてよ。でも今あたくしがあたくしでないのなら、いったいどなた? んもう、まったくややこしい!」そこで同い年の知り合いの子のことをみんな思いうかべていって、自分がそのうちのだれかになっていないかたしかめたんだ。
「あたくしがガートルードでないことはたしかね。」とつぶやく。「だってあの子の髪《かみ》はあんなに長いまき毛、あたくしはちっともまきがなくてよ――それときっとフローレンスでもないはず、だってあたくしは物知りっていうのに、あの子、ふん! 知らないにもほどがあってよ! それにあの子はあの子、あたくしはあたくし、だから――ああ、もう! なんてややこしいの! どうかしら、ちゃんと覚えてたこと覚えてる? ええと4×5=12、4×6=13、4×7=14――ああ、もう! こんな調子じゃいつまでも20にならなくてよ! でも九九なんて大したことないわ――地理を試すの。ロンドンはフランスの都《みやこ》、ローマはヨークシアの都、それからパリは――ああ、もう! もう! どれもまちがいに決まってる! フローレンスになっちゃったにちがいなくてよ! だったら『がんばるミツバチ』のお歌はどう?」ひざ前に手を重ねて始めたんだけど、声ががらがらでとっぴで、それに歌詞《かし》もいつも通りじゃなくって。

びっくりだ わあにさん
しっぽがね ぴかーん!
ナイルがわ ざあぶざぶ
うろこにね びしゃーん!

キバだして にいんやり
ツメひろげ じゃきーん!
おいでませ さかなちゃん
にこにこ……がぶりっ!

「ぜんぜん歌詞がちがってよ。」とかわいそうにアリスは目になみだをいっぱいにためながら、こう思った。「やっぱりあたくしフローレンスにちがいないわ、だったらあたくしあのせせこましい小屋にうつり住まなきゃいけないことになって、しかも遊ぶおもちゃもないの、うわあん! お勉強も山もりよ! いやあ! あたくし心に決めたわ、あたくしがフローレンスなら、ここでじっとしててやるんだから! どなたかがのぞいて『上がりなさい!』なんて言ってもむだなんだから! あたくし上目で申しあげてよ、『ところであたくし何者? まずそれにお答えになって。それから、それがあたくしのなりたい方なら上がりますけど、ちがうようでしたらほかのどなたかになるまで、ここでじっとしております。』――でも、ああもう!」とアリスはいきなりわっと泣き出して、「そののぞいてくれるどなたかが、いてくださったらどんなにいいか! もううんざりよ、こんなところでひとりぼっちだなんて!」
 こう言いつつ自分の手に目を落としてみるとびっくり、気づけばしゃべっているあいだにウサギさんの手ぶくろをはめていたんだ。「どうしてこんなことができてるの?」と思ってね、「また小さくなってるにちがいないわ。」起きあがってテーブルまで行ってそれで背たけをはかってみると、だいたいしかわからないながらも、今はおよそ60センチで、大いそぎでちぢみつつあってね。わけはすぐにわかった、手に持っていた花束のせいなんだ。あわてて手放すと、まさにそのときからちぢみはすっかりとまって、気がつくとただいまの背たけはたったの7センチ。
「今こそお庭よ!」と声をあげたアリスはあわててあの小さなドアへもどったんだけど、小さなドアにはまた鍵がかかってて、ちっちゃな金の鍵も前と同じでガラスのテーブルの上、だから「今までで最悪!」と女の子は思うしかない。「だってこんなちっちゃくなったの初めてなのよ、初めて! 正直ひどすぎてよ、ひどすぎ!」このしゅんかん、足がすべって、ぼちゃん! しょっぱい水に首までつかって。初めのうちは海に落ちたと思ったんだけど、あとからここが地底だってことを思い出して、そのあとすぐにはっとした、自分が3メートル近いときに泣いて作ったなみだまりなんだって。「あんなに泣くんじゃなかったわ!」と言いながらアリスは水をかいて前に進もうとしてね、「罰《ばち》が当たろうとしてるのよきっと、自分のなみだでおぼれろってね! 待って! そんなのけったいだわ、ぜったい! それにしても今日はけったいなことばっかり。」とつぜん目の前すぐそばで何かがばしゃんと池に。とりあえずセイウチかカバかと思ったものの、自分がとっても小さいことを思い出して、たちまちはっとした、ただのハツカネズミが自分と同じようにすべり落ちただけだって。
「このネズミに声をかけて、」とアリスは考えごと。「何かになって? でもあのウサギはどうもきわめてとんでもないことになっていたし、ここへ落ちてきてからというもの、あたくしだってそうなんだから、あのネズミだって話せないわけなくってよ。とりあえずやってみるつもりで。」
 で、やってみた。「ねえそこのネズミ、ごぞんじ? この池からの出方。このあたりを泳ぎまわってへとへとなの、ねえ、そこのネズミ!」そのネズミはどこか問いたげにその子を見つめて、小さなひとみで目くばせしてくれたみたいなんだけど、一言もなくって。
「こっちの言葉がわからないのかも。」とアリスは考えごと。「たぶん外国ネズミなのね、ウィリアムせいふく王についてわたってきた!」(その子の知ってるかぎりでは、何年前に何が起こったのかはうろ覚えだから、こんなことに。)で、またやってみる。「吾猫兮何在《わがねこいずくにかある》?」これは外国語のドリルにある初めの文。ネズミは池のなかでいきなりとび上がり、びくびくとふるえだしてね。「あら、ごめんあそばせ!」あわてて声を上げるアリス、このあわれな動物の気をそこねたかと気がかりで。「ネコお好きでないことうっかりしててよ!」
「お好きでねえよ!」とネズミのかん高く気持ちのこもった声。「こっちの身になりゃわかんだろ!」
「ええ、おっしゃる通りね。」とアリスの声は相手をなだめるよう。「そうお怒《いか》りにならないで。でもうちのネコのダイナに引き合わせられたらなあ、あの子をひと目見たならきっとネコさんのこともお気にめしてよ。かわいくておとなしいんだから。」とアリスはひとりごと半分で、池をゆったりとお泳ぎに。「だんろのそばにすわって、すてきにのどを鳴らして、お手々をぺろぺろ顔をごしごし、だっこするとほんとふわふわなんだから、それにつかまえるのも上手いのよ、ネズミを――あらごめんあそばせ!」と、やっちゃったアリスはまた大声、だってそのときにはネズミも毛を全身逆立てていたから、ぜったいに怒《おこ》らせちゃったと思ってね、「お気を悪くされた?」
「されたともよ!」と声をはるネズミは、どう見ても怒《いか》りにふるえていてね、「うちは代々ずうっとネコが大きれえなんだ! いじわるで下品な乱暴《らんぼう》もの! 2度とその話はすんな!」
「いたしませんとも!」とアリスはあわてて話を変えようとする。「あなた――あなた――あれはお好き――犬は?」ネズミの返事がないので、アリスはこれはいいと続けてね、「お屋敷のそばのかわいい子犬、この子をお引き合わせしたくてよ! すんだ目のちっちゃなテリアで、ほら、あるのよ! もう長々とした茶色の巻き毛! それに物を投げるとひろってくるの、あとちんちんしてごはんをおねだりしたり、もう色々――半分も思い出せなくてよ――そう、かい主は地主さんで、お話ではみんなやっつけるって、畑のネズミを――ああっ!」アリスはやっちゃったというふうに、「またお気を悪くされたかしら。」だってもう全力で泳いではなれていくネズミ、進むほどに池はばしゃばしゃと波打つ。
 それで後ろからやさしく声をかけたんだ、「ネズミさん! おもどりになって、もう犬ネコのお話はしないから、お好きでないなら!」するとそれを聞いたネズミは、くるっと回ってゆるゆる泳ぎもどってくる。顔は真っ青(怒《おこ》ってるんだなとアリス)、それからか細く声をふるわせながら、「岸辺へ出んぞ、それからおれの昔話でもしてやっから、あんたもこっちがどうして犬ネコがきらいかわかるってもんだ。」
 そろそろいい頃合《ころあ》い、だって池はもう落っこちてきた鳥なりケモノなりでいっぱいこになりかけてたからね。そこにはアヒルもドードーも、インコも子ワシも、そのほか色々かわった生き物がいてね、アリスがいちばん前に出て、みんないっしょに岸辺まで泳いでいったんだ。

3
最終更新日 : 2013-03-06 20:52:19

ふたつめ

 なんともへんてこな絵づらのご一行がほとりにお集まり――羽を引きずった鳥さんたちに、毛がぴたーとなったむくじゃらたち――みんなずぶぬれで気持ち悪くていやな気分。さてここで考えるべきは、どうやってぱさぱさにするか。かわかし方を話し合ううち、アリスはもうたいしておどろかなくなったというか、気づいたら鳥さんたちと仲良くお話ししていて、生まれたときからの知り合いみたくなっていてね。なるほどインコとは長々言い争ったものだから、しまいにはむすっとされたんだけど、ここで「わたしの方がお姉さんなの、だからモノをよくわかってるに決まってる」なんて言われようものなら、アリスだってインコのお年を知らないからそんなのうなづけないし、インコも自分からぜったいお年を口にしたくないので、どっちもあとは何とも言えない。
 とうとうハツカネズミが、それなりにもっともなことがあるみたいだってことで、よびかけてね、「すわれや、みなのしゅう、耳かっぽじろ! おれがすぐにでもお前らをぱっさぱさってほどにしてやる!」すぐさまみんなはふるえながらも大きく輪になってこしを下ろして、アリスがどまんなか、気になるとばかりに目をネズミに向けてね、だっていますぐにでもかわかさないと、ひどい風邪《かぜ》を引きそうだと気にやんでいたんだ。
「おほん!」とネズミはもったいつけた感じで、「みなのしゅう、いいか? こいつは知るかぎりいっとうぱっさぱさのやつよ。どうかごせいちょうを!
 ウィリアム征服王《せいふくおう》、その大義《たいぎ》が教皇《きょうこう》さまのお目がねにかなったとあって、イングランドの民《たみ》はすぐさまこれにひれふした。上に立つ者もなく、このごろは国が外から荒《あ》らされ平らげられるのが常《つね》であったからだ。エドウィンとモーカー、つまりマーシアとノーサンブリアの主さまは――」
「うげ!」とインコは身ぶるい。
「ごめんなすって。」とネズミは顔をしかめながらも、それでいてていねい。「あんた声あげたか?」
「いえいえ!」とあわてるインコ。
「そうかあ?」とネズミ。「まあ続きよ。エドウィンとモーカー、つまりマーシアとノーサンブリアの主さまも、味方するとした。スティガンド、国うれうカンタベリ大司教までもエドガー親王連れてウィリアムに面会《めんかい》し冠《かんむり》を差《さ》し出すのが得策《とくさく》と見た。ウィリアムのふるまいは初めのうちおだやかだったが――今んとこどんなぐあいだ、あ?」と言いながらアリスの方を向く。
「まだびしょびしょ。」とかわいそうなアリス、「ぜんぜんぱさぱさにならなくってよ。」
「ならば、」とドードーが立ち上がり大まじめに、「集まりの休会を提議《ていぎ》する、なぜなれば、より効果的《こうかてき》な改善策《かいぜんさく》の速やかなる採用《さいよう》が――」
「国語をしゃべれ!」とアヒル。「そんな長たらしい言葉、半分も意味がわからんし、それどころか君だってさっぱりわかってないだろ!」ここでアヒル、自分にうけてグヮグヮと大笑い。ほかの鳥さんもちらほら聞こえよがしにしのび笑い。
「言いたかったことはただ、」とドードーは気をそこねたみたいでね、「この近くに小屋があるから、そこでならこのおじょうさんもお集まりのみなさんもぱさぱさにかわかせる上、そのお話も気持ちよく聞けるということなのだ、お前さんだって我々に話をする約束《やくそく》を守りたかろうと思ってな。」とうやうやしくネズミにおじぎ。
 ネズミもこれにはむべなるかな、一同は川のほとりぞいに動いてね、(だってこのときには池ももう広間から流れ出して、きわにはイ草やわすれな草がならんでいたからね)ゆっくりと1列でドードーを先頭に進む。そのうちにじれてくるドードー、あとのみんなをアヒルにまかせて、足取りを速めて先へ、連れていくのはアリスにインコそして子ワシで、あっとういまに小屋に到着《とうちゃく》、そこでだんろをかこんでひと息、毛布にくるまっていると、とうとうほかのみんなもやってきて、ぜんいんぱっさぱさにかわいたとさ。
 さてふたたびほとりでみんな大きな輪になって、すわってネズミにご自分のむかっ話をとおねだり。
「おれのは、長々しっぽりよ!」とネズミはアリスの方を向いて、ため息。
「長々のしっぽ、ほんっとに。」とアリスはきらきらした目をネズミのしっぽに下ろしてね、そいつは輪をぐるりひとめぐりしそうなほどで。「でも、後ろの〈りよ〉って何のこと?」そうしてこのことになやみだすうち、ネズミも話し始めて、だからお話も頭のなかではこんな感じになっちゃって。

 おれらの住まい、しきものの下
   ぶあつくぬくぬく住みよしだ、
         だがなやみもありだ
            ネコときた!
               水さすや
              からが、目
             のゴミクズ
           が、気を重
          くするのが
        犬なりしか!
      ネコが
     されば、
    あとは
   ネズミの
    あそ
     びば、
      なのにある日!
        こは(らば)
          ともに来たる犬
              ネコ、おい
               かけっ
                こ、
               やられて
             ネズミぺ
            しゃんこ、
           みな
          ごろ
          しよ
          ぶあ
          つく
           ぬ
           くぬ
             く
              して
               いた
                と
                こ
 !を             ろ
   との          を
     こ―        、
       ―およろみてえ考

「お前、聞いてねえだろ!」とネズミはアリスにびしっと。「何考えてんだ?」
「ごめんあそばせ。」とおそれいるアリス。「5つめの曲がり角にいらしたところ、よね?」
「わっからんな!」と声をあげるネズミは、とげとげぷんすか。
「あ、からんだ?」というアリス、いつでも人の役に立ちたいざかりなので、目をかがやかせてきょろきょろしてね、「まあ、でしたらほどかせていただけて?」
「そんなこと何も言わねえよ!」とネズミは立ち上がって、みんなからはなれていく。「そんなからっぽの話でバカにされるなんざ!」
「思いちがいよ!」とアリスは苦しまぎれの言いわけ。「でもあなただってずいぶんいらちだこと。」
 ネズミの返事はただうなり声だけ。
「さっさとお話の続きをしめてくださる?」とアリスが背中《せなか》によびかけると、ほかのみんなもあとからそろって、「そうだ、しめるんだ!」ところがネズミは耳をふるだけで、そそくさと去っていって、たちまち見えなくなって。
「ざんねん、お去りだなんて!」とインコがため息、そしておばさんガニはついでとばかりにむすめに小言。「ほらね! つまり、あなたもかっかしちゃダメってことなのよ!」「ママはだまってて!」と子ガニはややつっけんどん。「がまん強いカキだってどうにかなりそうよ!」
「ここにうちのダイナちゃんがいたらな、できるのに!」とアリスの大声は特にだれに向けてというわけでもなく。「あの子ならあいつをたちまち連れもどしてきてよ!」
「そのダイナってどなた? よろしければ教えてくださらない?」とインコ。
 アリスは乗り気のお返事、だっていつでも自分のペットのお話をしたいざかり、「ダイナはうちのネコ。ネズミ取りにかけてはもう一流なの、おわかり? それにああ! 鳥を追いかけるあの子をお見せできれば! もう、小鳥なんかねらいをつけたとたんにがぶりよ!」
 こんなお返しをしては、一同大さわぎになるわけで――たちまちにげまどう鳥もいたほど、おじさんカササギなんかそうろっと身じたくを始めてこう口に出してね、「そろそろうちに帰らねばな、夜風はのどをいためるので。」それからカナリアは声をふるわせながら子どもたちによびかけてね、「あの子に近づいちゃダメ、あんな子とお友だちになっちゃダメだからね!」いろいろ言いわけを作って、去っていくみんな、アリスはたちまちひとりぼっち。
 しばらくみじめにじっとすわってたんだけど、ほどなく気を取り直してね、例のごとく、ひとりごとの始まり。「だれかしら、もうちょっといてくださってもよろしくてよ! あんなに、仲良くなりかけてたっていうのに――ほんとに、あのインコとあたくし、もう姉妹みたいなものだったのに! あのかわいい子ワシちゃんにしてもそうよ! それからアヒルにあのドードー! あのアヒル、すてきに歌ってくれたのに、みんなで泳いでいるさなかに。あとドードーが、あのすてきな小屋への道をごぞんじなければ、ぱさぱさにできていたかわからなくてよ――」と、このままだといつまでもこんなふうにしゃべっていたかわからないところ、ふとぱたぱたという足音が耳に入ってね。
 なんと白ウサギがとろとろと引き返してきたわけで、歩きながらあたりをきょろきょろ、なくしものでもしたみたいで、そのひとりごとが聞こえてくる。「御前《ごぜん》さま! 御前さま! おお、ぴょんぴょん! ああ、ぴょんぬるかな! このままではあの方に打ち首にされよう、白イタチのようにまさしく! どこで落としたものか、はてさて。」アリスははたと気づいてね、あの花束と白ヤギの手ぶくろをさがしてるんだって、だから見つけようとしたんだけど、もうどこにも見当たらなくって――すっかり様子が変わったみたいで、池で泳いでイ草とわすれな草のならんだ川ぞいを歩いてからこっち、ガラスのテーブルも小さなドアも消えてしまっていて。
 まもなくウサギに気づかれたアリスは、ちょうどふしぎそうにちらちらしながらつったってたんだけど、たちまち早口で怒《おこ》られてね、「おいメリアン! こんなところで何をしておじゃる! とっとと家へもどって、化粧台から手ぶくろと花束を見つけて、持っておじゃれ、全速力で、わかったな?」するとおびえきったアリスはすぐさまかけ足、ものも言わずにウサギの指さす方へいちもくさん。
 気づけばあっというまに目の前にこじんまりしたおうち、ドアのところにはつるつるした金ぞくの表札《ひょうさつ》、お名前には〈シロー・ウサギ〉。立ち入るなり、階段《かいだん》をかけのぼった、だって本物のメリアンと出くわすといけないからね、手ぶくろ見つける前に家から追い出されちゃうし。広間でなくしたのはわかってた、「とはいっても」とアリスは思ってね、「家のなかには、代えがたくさんあるもの。なんてけったいなのかしら、ウサギのお使いだなんて! 今度はダイナがあたくしをお使いにやるんじゃなくって?」すると、こうなるのかなって、あれやこれや思いうかんできてね、「アリスおじょうさま、ただちにこちらへ、おさんぽのごしたくを!」「今行くから、ばあや! でもこのネズミ穴を見はらないと、ダイナがもどってくるまで、あとネズミがにげでてこないか見ておかないと――」「でもたぶん、」とアリスは続ける、「もうダイナはうちに置いとけなくなってよ、そんなことをあの子が人間に言いつけだしたら!」
 このときまでになんとか入れたお部屋はこぎれいなところで、まどぎわにテーブルがひとつあり、上には鏡がついていて、(アリスの思った通り)ちっちゃい白ヤギの手ぶくろが何組か置いてあった。1組取り上げて出て行こうとしたとき、目に飛びこんできたのが、鏡わきに立てられた小びん。今度は〈ノンデ〉の札《ふだ》もなかったのに、気にせずせんをぬいて口につけてね、「きっとなにか面白いことが起きるにきまっててよ。」とひとりごと。「なにか食べたり飲んだりするといつもそう、だからこのびんだってたぶん。今度は大きくなってくれるといいな、だってもうあんなにちーっちゃくなるのなんてうんざり!」
 してこれその通りに、しかも思ったよりも早々《はやばや》、びん半分ものまないうちに、気づけば頭が天井におさえつけられるので、首が折れないようにと身をかがめて、あわててびんを下に置きながらひとりごと。「もうけっこうよ――もう大きくならなくていいから――あんなに飲むんじゃなかったわ!」
 なんたること! もはや手おくれ、ぐんぐん大きくなっていって、たちまちひざをつくほかなくなり、またたくまにそうするよゆうもなくなって、なんとか横になろうとしてね、ひじをドアにぶつけたり、反対のうでを頭まわりでまるめたり。まだまだ大きくなるから、最後の手としてうでの片方をまどの外へ出して、片足をえんとつのなかにつっこんで、そこでひとりごと。「もうこれでせいいっぱい――これからあたくしどうなるの?」
 アリスにさいわい、まほうの小びんのききめはここで打ち止め、もう大きくはならない。とはいえやっぱりいごこち悪く、それにどうにもこのお部屋の外には出られる見こみもなさそうで、気がふさぐのもむりはなく。「おうちにいた方がまだいい。」とは、ふびんなアリスの想い。「ずっとのびちぢみしてばっかりとか、ネズミ・ウサギに頭ごなしってこともなくって――あのウサギ穴に入らなきゃよかった、って思うけど、けれど――どこかへんてこ、ほら、こんな世界って。ふしぎなの、どんなことが起こってくれるのって! いつもおとぎ話を読んでると、こんなことぜったい起こりっこないってきめつけるのに、いま、ここで、あたくしはそのまっただなか! なら、あたくしについて書かれた本があってもよくてよ、じゃなくて? 大きくなったら書くんだから――まあ、今だって大きいけれど。」と、いじらしい口ぶり、「といっても、ぎゅうぎゅうでここではもう大きくなれなくてよ。」
「だとすると、」とアリスは思う。「今よりもう年は取らないってこと? ほっとしなくはないわ――おばあちゃんにならなくていいし――でもそうなると――いつまでもお勉強の山! えっ、そんなのぜったいいや!」
「もう、アリスのバカ!」とまだまだ。「ここでお勉強なんて、できっこないんだから! ね、あなただけでぎゅうぎゅうだから、ぜんぜん入らなくってよ、教科書なんか!」
 というわけでそのまま、まずひとりめの役、それからもうひとり、というように、かけ合いをぜんぶひとりでやってたんだけど、何分かすると外から声がしたので、やめて耳をそばだてる。
「メリアン! メリアン!」とその声。「とっとと手ぶくろを持っておじゃれ!」そのあと、階段《かいだん》からたたたたとかすかな足音。アリスはウサギがさがしに来たとかんづいて、ふるえだしたらなんと家までぐらぐら、すっかりどわすれ、自分が今ウサギの何千倍も大きいなんてことはね、だったらこわがらなくていいわけで。そくざにウサギはドアのところ、で、開けようとしたのに、内側に開《ひら》くドアだから、アリスのひじがつっかえて、いくらやってもできずじまい。アリスの耳にひとりごとが、「ならば回りこんで、まどから入るでおじゃる。」
そんなのむーりー!」と思うアリス、待ちかまえて、まどのま下にウサギの気配がしたところで、いきなり手をのばして、そのままつかむそぶり。何もつかまえられなかったけど、聞こえてくる小さなさけび声と、ずっこけてガラスをわる音。というわけで頭のなかでは、キュウリのなえ箱かそんな感じのものにつっこんだのかも、てなことに。
 お次に来るのはぷりぷり声――ウサギのね――「パット、パット! どこにおじゃる!」それから今度は聞いたことのない声。「ここにおりますだ! リンゴほり中で、あのその、おやかたさま!」
「リンゴほり、ほおお!」とぷんすかウサギ。「こちへおじゃれ、ここから出すでおじゃる!」――さらにガラスのわれる音。
「さあ教えるでおじゃる、あのまどからはみ出てるものは何ぞえ?」
「きっとうんでだで、おやかたさま!」(正しくは、うで、ね。)
「うで! あほうが! あんな大きさのうでがおじゃるか! ほれ、まどわくいっぱいぞえ、の、のお?」
「そうでごぜえますが、おやかたさま、やっぱどう見てもうんでだで。」
「なぬ、そんなの知ったことか、あれめを片づけておじゃれ!」
 そのあと長々と静かで、ときどきささやき声が聞こえたくらい、それも「ぜってえいやですだ、おやかたさま、めっそうもねえ!」「言うた通りにおじゃれ、へたれめ!」といったもので、とうとうもう1度手をのばしてまたつかむそぶりをするはめに。今度はふたつの小さな悲鳴、それとまたしてもわれるガラス――「いっぱいたくさんキュウリのなえ箱があるのね!」とアリスは思う、「お次はどう出るかしら! まどの外へ引き出すっていうなら、願ってもないことだけど! ほんっともうここから出て行きたくてしかたなくってよ!」
 しばらくじっとしているあいだ、何も聞こえなかったのだけど、ついに耳に入るごろごろにぐるまの音、たくさんの話し合うざわめき、わかった言葉は、「もうひとつハシゴがおじゃったな――はあ、おらはひとつしか持ってこれんで、ビルがもひとつ持ってて――ここ、この角に立てかけ――ちがう、まずふたつつなげねえと――その高さだと、まだとどかな――おお、これでちょうどいい、やかまし言うな――ここだ、ビル! このロープをつかめ――やねはだいじょうぶか?――気をつけろ、あのかわら、ずれて――あ、落ちてくる! まっさかさ――」(ずどーん)「さて、だれがあれやる?――ビルじゃねえか――だれがえんとつおりるでおじゃ――やめろ、おらあいやだ! てめえ行けよ!――んな、おらだってそんなの――行くべきはビルでおじゃる――おい、ビル! おやかたさまがおおせだ、お前さんえんとつを下りてけって!」
「まあ、ならビルがえんとつを下りなくちゃいけないってこと?」とアリスはひとりごと。「ふぅん、ぜんぶビルにおしつけたみたいね! あたくしも、たくさんもらったってビルの代わりはおことわり。だんろはすごくきちきちだけど、たぶんちょっとけり上げるくらいは!」
 できるだけだんろの底の方まで足を引いて、小動物の気配がするまで待ちぶせ、(相手の正体もよくわからないままに)がりっそろそろと、えんとつのなか間近まで、とそのとき、「こいつがビルね」とひとりごとついでにしゅっとけり上げて、またじっとして次に起こることをさぐる。
 まず初めに「ありゃビルだ」の大がっしょう、それからひとりウサギの声、「受け止めるでおじゃる、生けがきのそばぞ!」しーんとしたあと、また今度はざわざわあわてふためく、「どういうことだ、おめえさん。何があった? 子細《しさい》を教えてくれ。」
 おしまいには、弱々しげなきぃきぃ声、(「こいつがビルね」とはアリスの考え)言葉はこう、「んあ、よくわかんねえ――頭がこんがらがって――何かがこっちに来た、びっくり箱みてえに、んで、もう次にはぴょーんとロケット花火みてえで。」「たしかにそんなんだった、おめえさん!」と一同の声。
「この家を焼きはらわんとな!」とはウサギの声、そこでアリスはあらんばかりの大声でさけぶ、「やってみなさい、あなたたちにダイナをけしかけてよ!」これがきいて、またしーん、そこでアリスが「でもどうやってダイナをここへ連れてくるわけ?」と考えているうち、気づけばたいへんうれしいことにどんどんちぢんでいく。あっというまに、息苦しい横向きの身のほどからもぬけ出せて、このいどころからも出てゆけるようになるほどで、ものの数分もするとまたまた7センチの背たけに。
 全速力でそのおうちからかけ出ると、見つかるのは外で立ちつくす小動物のむれ――モルモット、ラッテといったネズミたちにリスどもと、ミドリカナヘビっていうトカゲの〈ビル〉くん、モルモットの1ぴきにかかえられててね、ほかにもびんから何か飲ませてやってるのもいたり。みんなして、出てきたのを見るなりおそいかかってきたんだけど、アリスはひっしで走ってね、たちまち気づくと深い森のなかにいて。

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最終更新日 : 2012-12-10 22:15:09

みっつめ

「第1にやるべきことは、」とアリスは森をうろうろしながらひとりごと。「元の背たけになること、それから第2は、あのすてきなお庭へ出る道を見つけること。どうもそうしてみるのがいちばんよさそう。」
 たしかに、してみるにうってつけで、すっきりわかりやすい思いつきに聞こえるんだけど、ただひとつこまったことに、とっかかりがさっぱりわからなくってね、そうして、あたりの木々のあいだをそわそわとのぞきこんでいると、ワンとほえる声が頭の上からして、それはもうびくっと顔を起こしたんだ。
 1ぴきの図体のでかいワンコが、くりくり大きなお目々でこっちを見ていてね、ぷるぷると前足をのばしてさわろうとしてくる。「よしよし!」とアリスはあやす言葉のあと、口ぶえを強くふこうとしたんだけど、相手がはらぺこなのかなと気づいたらふるえがとまらなくなっちゃってね、そうなってくると、いくらなだめてもやっぱりむしゃむしゃ食べられちゃうわけで。もう思わずとっさに木切れをひろい上げてワンコにつきだしてみた。するとワンコはたちまちおどりあがって、きゃんきゃんはしゃぎながら木切れにとびかかる、どうもじゃれたいみたいでね、そこでアリスもふみつぶされないよう、でっかいアザミのかげにひらりとよける、そして反対側から出ると、すぐさまワンコが木切れめがけてまたつっこんできたんだけど、でもつかまえようとあせるあまりすってんころりん、これはもう、考えてみれば馬車馬とふざけ合ってるみたいなものだから、アリスも足でふみつけられそうなときには、そのたびごと、はっとしてかけ足でアザミに回りこむ、だからワンコにしても小きざみに木切れへしかけるようになってね、じわじわ前につめるかと思いきや大きく後ろ、しじゅうぐるるるとほえっぱなしだったんだけど、はてにはとうとうはなれたところでへたりこんで、はあはあと口から舌を出して大きなお目々も半びらき。
 これにアリスも、にげるのは今しかないとふんで、すぐさま動いてかけ足、やがてワンコのほえる声も遠くかすかになっていってね、そのうちこっちもへとへとで息切れ。
「まあでも、あんなワンコ、かわいらしいものね!」とアリスはひと息つこうとキンポウゲにもたれかかり、花の葉っぱであおぎながら、「芸をしこんでみるのも面白そう、その――元の背たけになったらの話だけど! もう! もう少しで元通りになるのをわすれるところよ! う~んと、どうやればうまくいくのかしら。たぶん何かしら食べるか飲むかすればいいんだろうけど、いったいぜんたい、何を?」
 その通り、いったいぜんたい、何を? アリスがあたりをながめまわしても、草花あれど、都合よく食べられそうなものはその場に何も見当たらない。ところがそばに大きなキノコ、背たけと同じくらいで、見上げたり、両わき、後ろに回ってみたりするうち、かさの上に何があるのか、目を向けてたしかめたいという気持ちになってくる。
 つまさき立ちで背のびして、キノコのへりからのぞきこむと、目にとびこんできたのが、こっちを向いた大きな青虫、すわりこんでうでを組み、ひそやかに水ぎせるをふかして、こちらにも何にも気にとめるそぶりさえない。
 しばらくだまったまま目を合わせていると、とうとう青虫が口から水ぎせるを外して、けだるそうに声をかけてきた。
「おぬしはだれじゃ。」と青虫。
 こんなきっかけでは話も始めづらくって、アリスもどこかもじもじしながら答えてね、「あたくし――よくわかりませんの、今のところ――少なくとも今朝起きたときにはだれだったかわかってたのに、そのあとあたくし、どうも何度か変わってしまったみたいで。」
「どういうことなの?」と青虫。「はっきりしてくれ!」
「だからはっきりしませんの、あいにく!」とアリス。「あたくしがあたくしじゃないの、わかって?」
「わからん。」と青虫。
「あいにく、これ以上何とも言えませんの。」とていねいに受け答えするアリス。「だって自分でもよくぞんじませんし、ほんと、1日でこんな色々な背たけになれば、頭もこんがらがってよ。」
「そうでもない。」と青虫。
「ふん、きっとあなたはまだあんまりおわかりでないのね。」とアリス。「でもあなただってほら、いずれさなぎになって、そのあとちょうちょに変わったりしたら、そういうのやっぱりちょっとけったいに思えるものでしてよ、そう思わない?」
「いささかも。」と青虫。
「少なくとも、」とアリス。「あたくしにはけったいに思えるってこと。」
おぬしとな!」と青虫は鼻でわらいながら、「そのおぬしはだれなのじゃ。」
 というわけで、また話はふりだしに。アリスは、青虫のそっけなすぎるしゃべり口にちょっといらいらしてね、そこでむねをはって、いたけだかに言う、「まずはご自分から名乗るのがすじとぞんじますけど?」
「なぜかね?」と青虫。
 これはまたまたなやましい。とっさの言いわけもできないアリス、青虫もひどく気げんをそこねているみたいなので、ぷいっと歩きさろうとしたんだけど。
「そこへもどれ!」と青虫が後ろから声をかけてきてね、「大事なことを教えてやる!」
 悪くない話に思えたから、アリスはくるっとして引き返す。
「そう怒《おこ》るな。」と青虫。
「それだけ?」とアリスは、なるだけいらいらを飲みこむ。
「いや。」と青虫。
 ほかにすることもないので、とりあえず待つことにすれば、そのうちきっと青虫も耳をかせるだけのことを話してくれる、そうアリスはふんだ。しばらくのあいだ、もの言わず水ぎせるをぷかぷかさせてたんだけど、やがてうでをほどいて、ふたたび口からきせるを外して、ひとこと。「自分が変わったと申すのじゃな?」
「そうですの。」とアリス。「前知ってたことが思い出せないの――『がんばるミツバチ』を歌ってみたけど、ぜんぜんちがってて!」
「ならばどうだ、『ウィリアムじいさん』は。」と青虫。
 アリスは手を重ねて、歌い出す。
「もう年なんだ、ウィリアムじいさん。」
わかもの言った、「頭は白髪《しらが》、
なのにいつでも、逆立ちばかり――
自分の年をわきまえろよ!」
むすこに向かって、じいさん言った、
「わかいころは、ケガおそれた、
だけどもともとバカだと気づき、
それからあとは、打ちこむのみよ。」
「もう年なんだ、わかってくれよ、
どっから見ても太りすぎだよ、
なのに戸口でバク転なんて――
いったい何を考えてんだ?」
しらがふりわけ、じいさん言った、
「わかいころには、しなやかじゃった、
このぬり薬のおかげでな――
ひと箱5シル、どうじゃふた箱?」
「もう年なんだ、はぐきも弱い、
やっとあぶらみ食えるくらいで、
ガチョウをほねごとがりがり食べる――
こりゃいったいどうなってんだ?」
「わかいころには、へりくつばかり、
ことあるごとに、にょうぼと言い合い、
おかげでアゴもきたえられてな
死ぬまでずっとそのままじゃろな。」
「もう年なんだ、ふつうだったら、
目のほうだってしょぼしょぼのはず、
それでも鼻にウナギを立てて、
じいさんどうしてバカほどきよう?」
「3べん言えば、わかるじゃろ!
いいかいお前、いい気になるなよ、
こんな話はもうたくさんじゃ。
いなねば上からけりおとす!」

「正しくないのう。」と青虫。
わりとね、あいにく。」とアリスはおずおず。「ところどころちがってはいてよ。」
「初めから終わりまでまちがっておる。」と青虫はばっさり、そのあとしばし、しぃん。さきに口をひらいたのは青虫。
「どれくらいの背たけになりたい?」とたずねてきてね。
「べつに、背たけにこだわりなんかなくって、」とあわててお返事するアリス、「ただ、ころころ変わるのはいただけなくてよ、やっぱり。」
「今は足りておるのか?」と青虫。
「う~ん、もうちょっとばかり大きいほうがいただけそう、といったところね。」とアリス。「7センチの背たけって、なってみるとみじめなものよ。」
「こりゃほどよい背たけなんじゃぞ!」と怒《おこ》った青虫が声をはりあげて、しゃべるままに背すじをのばす(ちょうど7センチのたけにね)。
「でも、こんなのしっくりこなくてよ!」と、弱ったアリスはみじめたらしく食いさがりながら、こう思う。「ここの生き物、こらえしょうってもの、ないのかしら!」
「そのうちしっくりこようて。」と青虫は口に水ぎせるをくわえて、またふかし始める。
 今度もアリスは、相手がまた話す気になるまでじっと待ってね、数分すると青虫は口から水ぎせるを外して、キノコから下りて、草むらへとくねくねと立ち入り、去りぎわのすて言葉。「かさのところでのびる、えのところでちぢむ。」
のかさ? のえ?」と思うアリス。
「キノコのじゃ。」と青虫、口に出てない言葉に返事したと思いきや、まばたきするともう目の前から消えていて。
 アリスは少しのあいだキノコにうたがわしい目を向けていたんだけど、そのあともぎって、おそるおそるふたつにぽっきり、片手にえのところ、もう片手でかさを取って。「えでどうなるんだっけ?」とか言いながら、試しにちょびっとかじってみると。またたくまもなく、いきなりアゴにどんと何かがぶつかる。なんと足とごっつんこだ!
 このいきなりの変わりように、たいへんおそれをなしたものの、ちぢむのはそこまで、キノコのかさもとりおとしてないから、まだあきらめたりしません。アゴが足にくっついているから、口を開けるのもむりに近いのに、なんとかやりとげて、ついにキノコのかさをちょびっとかみちぎる。
*  *  *  *  *
「うん! ようやく頭が楽になってよ!」とアリスがはしゃいだのもつかのま、すぐにうろたえだしたのは、自分の肩《かた》がどこにも見えなくなったからだ。かぎりなくのびた首をながめおろすと、遠く下に広がる緑の葉の海から1本つき出ているみたいで。
「あの緑のしろものは、何だっていうの?」とアリス、「それにあたくしの肩は、どこに行って? それから、もう! なんてこと、あたくしの手は? どうやったらそんな迷子《まいご》に!」と口にしながら、あれこれ動かしてみたんだけど、どうもそのあとに起こったのは、葉っぱのざわざわだけ。そこで頭を手のところまで下ろしてみようとしてね、しかもうれしいことに、なんと首はあらゆる向きへやすやすと曲げられる、ヘビみたいに。そこで首をたくみにうねうねと曲げてみせ、葉っぱのなかへつっこんで初めて、自分がそれまでうろついていた森の木々のてっぺんにいると気づいたんだけど、せつな、しゃーっとおどかす声にさっと引っこめると。顔に飛びかかってくる大きなハト、したたかに羽を打ちつけてくる。
「ヘビめ!」とさけぶハト。
「あたくしヘビじゃなくてよ!」とアリスもぷんすか。「よして!」
「どこへ行っても!」と、やりきれないといったふうに、ハトはしくしく。「どうしようもないのよ!」
「いわんとすること、ちっともぴんと来なくてよ。」とアリス。
「木の根元も行ってみた、土手にも行った、生けがきも行ってみたのに。」とハトはこっちそっちのけで続ける、「あいつらヘビが! いつまでもあきたらない!」
 ますますわからないアリスだけれど、口を出してもしかたないので、終わるまでそのまま。
「まるで、そうやすやすとタマゴはかえさせんぞ、とじゃまされてるみたい!」とハト。「いつだってヘビにぴりぴりしなくちゃいけなくて、昼も夜もよ! あああ、この3週間、ひとねむりもしてないっていうのに!」
「おなやみお気の毒さま。」とアリスにも、言わんとすることがわかってきた。
「だから森いちばんの高い木にのぼって、」と声をうわずらせるハト、「やっとのがれられたと思っていたところ、来るなら空からおちてくるしかないってのにさ! うげっ! ヘビ!」
「でも、あたくしヘビじゃなくてよ。」とアリス。「あたくし――あたくし――」
「ふん! 何だっていうの?」とハト。「何かごまかそうとしてんじゃないの。」
「あたくしは――女の子よ。」と言いつつ、どこかしっくりこないアリス、これまでいく度となくのびちぢみしたのを思い出してしまってね。
「都合のいい言いのがれね!」とハト。「生まれてこのかたおおぜい見てきたけれど、あんたみたく首の長いのはひとっこひとりいなかったね! そうよ、あんたはヘビ、そんなことはお見通しなんだから! どうせ次には、タマゴなんて味わったことないって言いくさるんだろ!」
「タマゴくらい味わったことあってよ、ええ。」と言うアリスはほんとに正直もの、「でも、わざわざあなたのものなんかいただくもんですか。生《なま》なんていただけなくってよ。」
「ふん、なら、しっしっ!」とハトはまた自分の巣におさまる。アリスはアリスで、木々のあいだ、なるだけ身をかがめたんだけど、首が枝にからまるばっかりで、何度もとちゅうでほどくはめに。そのときふと、手ににぎったままだったキノコのかけらを思い出してね、あらためてそうろっとあつかいながら、まずはひとつをかじり、さらにもうひとつ、のびたりちぢんだりしながら、ようやくいつもの背たけにおさまることができた。
 かなりひさびさの元の背たけなので、初めはとっぴに思えたけど、ものの数分もするとしっくりくるくる、そしてれいのごとくひとりごとの始まり。「ふう! これで半分はかなったわけね! ほんとわけわかんなくてよ、ころころ変わるなんて! 次から次へと、何になっていくのか読めないし! とはいっても、また元の背たけになれたんだから。お次は、あのきらびやかなお庭に入ることね――どうやってやったものかしら?」
 こんなことを言っているうちに、ふと目についた一本の木、そこに何やらなかへと続く戸口がついていて。「まあ、へんてこりん!」とアリスは思ってね、「でも今日はみんなへんてこりん、だから入ってもまあよろしくてよ。」というわけで、なかへお立ち入り。
 すると気づけばまたもや大広間、そばには小さなガラスのテーブル。「さあて、今度こそうまくやってみせてよ。」とひとりごと、まずはちっちゃな金の鍵《かぎ》を手にとって、庭へ続くドアを開ける。それから手をつけるのがキノコのかけら、食べていって最後は38センチくらいの背たけに。そのあと短いろうかをぬけていって、そしてお次は――気づいたらとうとうきらびやかなお庭だ、あたりにはきらめく花園《はなぞの》、すずしげな泉《いずみ》だ。

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最終更新日 : 2013-03-06 20:53:07


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