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人形の家を持ってる小さな女の子
W.M.L.W. に


昔々あるところに、たいそうきれいな人形の家があったとさ。
赤レンガの壁に、白い窓、カーテンはほんもののモスリンで、玄関のドアと煙突までついていた。


その家には、ルシンダとジェーンっていう二体の人形が住んでいた。
ルシンダの方がご主人様だけど、食事の支度を言いつけたことはいっぺんだってなかった。
ジェーンはコックさんだったけど、こっちも料理したことは一度もないんだ。
なぜってごちそうは、かんなくずでいっぱいの箱に入った出来あがりのを買ってあったからね。


二尾の赤いロブスターに、ハムに、魚に、プディング、それに梨とオレンジが三つずつ。
どれも皿からははずれなかったんだけど、見た目はとびきりおいしそうだった。


ある朝、ルシンダとジェーンは、人形の乳母車に乗って出かけていった。
誰もいない子供部屋は、しーんと静まりかえってた。
そのうちに、ごそごそかりかりいう小さな音が、暖炉のそばから聞こえてきた。
壁板の幅木の下にあいた穴の中からだ。
トム・サムがちらっと頭をのぞかせ、すぐまたひっこんだ。
トム・サムってのは、ねずみなのさ。



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