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序章

1 序章

 

 不幸を治す薬は、ただもう希望より他にない。                             

       (ウィリアム・シェイクスピア)

 

 

 薄暗い石壁に囲まれたこの部屋は、ひんやりとして澄んだ空気で満たされている。
 僕は、この部屋が好きだ。
 春夏秋冬、常に快適なこの部屋は、僕の唯一の居場所だし、いつだってケイオスが側にいてくれる。
 ケイオスは僕の友達だ。
 歌ったり、凄く面白いお話を聞かせてくれたり、ゲームの相手をしてくれる。
 でも、ちょっと言葉遣いが堅苦しいかな。もっと気軽に話してくれると満点なのに。
 食事もお風呂も洗濯も、いつも誰かが用意してくれる。
 僕はいつもいつでもここにいて、何もしないで生きてきた。
 もう覚えていないほど昔からそうだったから、その事になんの疑問もなかったんだ。
 

 勇者が、ここに来るまでは――


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