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数学

全ての数字は答えじゃなく

まだ式の途中かもしれない

何かに足されたり引かれたりするのを

じっと待っているのかもしれない

 

全ての数字は固形物じゃなく

流動物なのかもしれない

ノートの上で体の中で

まだ計算は続いているのかもしれない

 

人が作り出した統計を手に

人々は社会問題を論じ合う

神々はその間にも

複雑な方程式を繰り返しているのかもしれない


ラジオ

受験勉強の途中でつけた

深夜のラジオのノリのいい喋り

ついつい止まるシャーペンの動き

 

ラジオはいつも秘密の匂いがしていた

知らない人と知らないままに

小さなボリュームで繋がっていた

 

いつもの音楽でフェードアウトするラジオ

朝が近づいてくる不安と寂しさ

掻き消すように眠りについた


想像

内側にある体の循環と

外側にある物質の循環

そのひしめき合いの中で

かろうじて存在している自分

 

僕の中で育った心が

僕を育てた世界を見上げる

何かがひそかに広がっている

何かがひそかに限られている

 

宇宙の果て

その向こうにあるものを想像する

心が届くところまで

言葉が届くところまで


翻訳

どんな翻訳家にも

訳しきれない言葉がある

人と人とを隔て

人を多様化させる要素

 

どんな心理学者にも

訳しきれない心がある

自分と他人の距離を作り

人を個性化させる部分

 

どんな生物にも

訳しきれない世界がある

世界の受け止め方の違いが

別々の進化に向かわせる


盗作

その目に留まった

風景を描く

その皮膚で感じた

凹凸を掘る

その耳が捉えた

さえずりを詠う

 

心にぴんときたものを

突き詰めては

突き放し

分解しては

ごちゃ混ぜにし

芸術は世界を

全身で盗む



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