トパーズ
1969年アメリカ映画
監督 アルフレッド・ヒッチコック
主演 フレデリック・スタッフォード、ダニー・ロパン
サスペンスの神様、ヒッチコック監督のかなり後期の作品です。
遺作が53作目の「ファミリー・プロット」(76年)で、その前が「フレンジー」(72年)、この「トパーズ」は51本目の映画です。
物語の舞台は1962年。
ソ連の高官がアメリカに亡命します。
キューバ情勢が緊張し、東西関係が微妙な様相を呈しはじめた時期です。
東西各陣営の背後でスパイが暗躍します。この映画はフランスのスパイ、スタッフォードさまを中心に描いていきます。
スタッフォードさまはアメリカの友人からの依頼をうけ、アメリカ人嫌いのキューバの協力者から情報を入手し、その情報の確認をとるためにキューバに飛びます。
主人公、まさに暗躍でございます。
キューバに潜入して指導者夫人に接近。
夫人と仲良し(!)になってキューバの詳細情報を入手します。
この諜報活動のなかで、数々の協力者が犠牲になってしまいます。
作品ではこういった「スパイ活動の犠牲者」もしっかりと描いておりまして、うわべだけのスパイ映画で終わらせていないあたり、「やっぱりすごい監督だったんだなあ」って改めて思いましたです。
さて物語の続き。
主人公はアメリカに戻りますが、そこでさらに新しいミッション。
フランスの高官から、西側の情報がソ連に流れていることが明らかになります。
ところがアメリカ側はスタッフォードさまが入手した情報をもとに軍事行動を起こす考えのようで。
しかしスタッフォードさまがその情報を本国フランスに報告すれば、スパイ組織経由でソ連にそれが知れ、報復行動が起こると、こういうわけでございますね。
スタッフォードさまは、アメリカがキューバを攻撃開始するまでのわずかな時間の中で自国のスパイ組織「トパーズ」のメンバーを暴かなければならなくなります。
中盤から後半はまさに脳内ハラハラドキドキ。
頭の中いぐわあああって感じです。かなり堪能させていただきましたです。
さてさて、ヒッチコック監督は自作に必ずワンカット、エキストラ出演することでも有名だった監督さんですが、なんかねえ、前半家事とかしながら見てたので、監督の出演シーン見逃してしまったようです。
ちなみにヒッチコック監督、ワンカット出演が有名になりすぎ、映画を見た人が物語そっちのけで監督の出演シーンを探すようになってしまったので、後期の作品では物語の邪魔をしないように、作品の冒頭で登場するようになったとか。
でもわからなかったです。残念だなあ。もう一回見直そうかなあ。
コットン・クラブ
1984年アメリカ映画
監督 フランシス・フォード・コッポラ
主演 リチャード・ギア、ダイアン・レイン、グレゴリー・ハインズ、ロネット・マッキー、ニコラス・ケイジ
フランシス・フォード・コッポラ監督の青春ムービー。
「アウトサイダー」「ランブルフィッシュ」に続いて監督が撮ったサクセスムービーざます。
コットン・クラブってのは、ハーレムにある実在の豪華ナイトクラブのことです。
禁酒法下、1920~1930年代が舞台になっています。
主人公のギアさまは場末のクラブでコルネットを吹くジャズメンです。
彼が暗黒街の顔役に見出され、ジャズメン~ギャングの手下~ギャング映画の主演俳優へと転進していくさまがゆったりとゴージャスに描かれます。
物語を彩るのは達者な役者陣でございます。
ダイアン・レインさま演ずるクラブのダンサー。
彼女もダンサー~マフィアの顔役の女~スターの妻へと転進。
天才ダンサー、グレゴリー・ハインズさまはダンサー希望の失業者~一流クラブのダンサーへと成功の道を歩き、思う人と結ばれます。
ええやないの。
しかしその影でニコラス・ケイジさま(ギアさまの弟役でさあ)みたいに暗黒街に生き、マシンガンでボロ雑巾のようになって殺される人もいる。
そこらへんがかなり丁寧に描かれておりまして、けっこうよかったです。
圧巻はクライマックスですね。やっぱり。
「ゴッドファーザー」のように、平和なシーンと殺戮シーンを音楽で見事にリンクしていきます。
今回はグレゴリー・ハインズさまの超絶タップダンスが虐殺シーンの残酷さを際立たせます。
最後の最後には、私的にはとっても気に入っているエンディング。
って言ってもわかりにくいでしょうか。
結ばれたギアさまとレインさまが汽車に乗って去っていくわけですが、そいつがいかにも作り物っぽい。
舞台だとか映画だとかのセットっぽいって表現したらいいのでしょうか。
で、デッキのところに乗っている二人にあからさまなピンスポットが当たる。
「そうですよ、ここまでの話はすべてつくりものですよ、楽しんでいただけましたか」みたいなラストです。
私はこういう幕切れ大好きなんですね。舞台出身者だから。
あえて言うと、舞台のラストのカーテンコールみたいな感じ。
というよりこのエンディングはほとんど舞台の方法論なんじゃないかなって思うんですが。
皆様はどうお感じになりましたでしょうか。
しかしねえ、さすがコッポラさま。
こういう映画ばっかり撮っていたら破算せずにすんだのに。
本当はこんな映画ドンドン撮ってもらいたかったんですけどね。
黒の試走車
1962年大映作品
監督 増村保造
主演 田宮二郎、叶 順子、船越英二
故・田宮二郎さま主演の社会派サスペンスでございます。
冒頭いきなり、黒い暗幕でボディを隠したテストカーの走行試験の場面です。
その試走車が横転事故を起こしてしまうことから、いろいろとややこしいことが起こります。
とりあえず普通に見ておりまして、台詞のあちこちにとても時代を感じさせるセリフが出てきまして、けっこう本編のあらすじ以外の部分で楽しんでしまいました。
「大衆車」だとか「スポーツカー」だとか「産業スパイ」だとか。
それとは別に「元陸軍中佐で、関東軍の特務機関にいた」ライバル会社の重役だとか、めっちゃ年代を感じさせる台詞がけっこう気に入ってしまいましたですねえ。
ある会社で、新型のスポーツカー開発を行っております。
発売間近になり、価格設定などが行われております。
しかし、ライバル会社も同様の車種の発売を予定しております。
そこで始まるのがスパイ合戦でございますなあ。
入院中のライバル社社長の隣の病室から室内の会話を盗聴するだとか、会議室の様子を隣のビルから盗撮して読唇術の先生に会議の内容を解析してもらうとか。
いやいや、えらい努力でございます。
努力の甲斐あって主人公田宮さまの会社は、ライバル会社よりも安く新車を発売できる運びとなりましたが、しかしライバル会社も起死回生の巻き返しをはかります。
さてその策とは?
そしてそれにどのような対抗をするのか?
前半のとにかくリアルな描写から、中盤はサスペンス色の強い展開。
なかなかやってくれます。けっこう引き込まれてしまいましたです。
最近って産業スパイとか暗躍しているんでしょうか。
なんか産業スパイって存在そのものがすっごく時代遅れ的な印象があるんですがね~
田宮二郎さま、すごくいい感じです。
この人の猟銃自殺は実に衝撃的でした。惜しい俳優さんを亡くしましたね~
もっと活躍していただきたかったです。
ナースコール
1992年アポロン・ライトヴィジョン作品
監督 長崎俊一
主演 薬師丸ひろ子、松下由紀、大鶴義丹、江守 徹、渡部篤郎
大病院で働く看護師たちをコメディタッチで、それでいてシリアスに描いた作品です。
薬師丸さまは看護師です。
彼女とほぼ同じキャリアの後輩看護師が松下さま。
そこの医師が大鶴さまで、その上司の大先生が江守さま。
薬師丸さまは入院患者からお見合いを勧めまくられるようなナースでございます。
そんな病院に、事故が原因の骨折で入院してきた大学生が渡部さまです。
彼はめっちゃサッカー選手。けっこう強豪の大学に通っておりまして、入院してきたその日に「来月の試合出れますか」とか医師に聞くような子です。
骨折の術後を診断するレントゲン写真を見た江守が、彼の膝関節に腫瘍を発見します。
化学療法を施し、結果がよければ膝に人口関節を入れる、結果が悪ければ足を切断すると宣告されます。
すっかり自暴自棄になる渡部さま。
食事もとらなくなり、意味もなくナースコールを繰り返す「嫌な患者」になります。
そんな彼を変えたのが、看護師としてではなく、女性として人間として彼に接した薬師丸さまの看護でした。
しかし薬師丸さまのことを快く思っていないのは渡部の担当看護師だった松下さま。
松下さまはあてつけのように病院を退職します。
その一方で薬師丸さまに思いを寄せる大鶴さま。
渡部さまも薬師丸さまへの思いを抑えることができずにいます。さあさどうなるこの恋模様。
薬師丸ひろ子さま若い。松下由紀さまも若い。渡部篤郎さまも若い。大鶴義丹さまも若い。江守 徹さま変わってない。
当たり前か。
女性陣、なんかみんな眉毛細くて濃い~
途中、サッカーの試合のシーンがありますが、サッカーパンツの丈短い。
なんか変なところで時代を感じてしまいました。
ミミック
1996年アメリカ映画
監督 ギレルモ・デル・トロ
主演 ミラ・ソルヴィーノ、ジェレミー・ノーザム、アレクサンダー・グッドウィン
ニューヨークに謎の疫病、ストリックラー病という病気が大流行します。
ワクチンもなく、感染するとほぼ死んでしまうという恐ろしい病気です。
この病気を封じ込めるため、とんでもない手段が使われます。
幸い、病気の媒体がゴキブリであるということがわかったため、昆虫学者ソルヴィーノがDNA操作によってゴキブリの天敵を創造し、伝染病の蔓延を止めます。
さあさここから物語が動きまっせ~
DNA操作で創造された生物は、生殖能力を持っていなかったため、一世代だけで滅びる予定だったのですが、おやおや。
お約束の生殖能力をもった「突然変異」が発生しまして、やつらは新種として生き延びます。
それどころか巨大に成長し、人間に擬態する能力まで身に付けてしまいます。
昆虫学者たちは大都市の地下で、巨大な新種昆虫相手に孤独な戦いを強いられることになります。
あーこりゃこりゃ。
物語前半で、ぜんぜん可愛くない少年二人組が犠牲になる場面がありまして、そこで一気にブルーになってしまいました。
やっぱりね、あかんと思うんです。
たとえ映画でもあからさまに子供犠牲にしちゃいけません。
やっぱりタブーはタブーとして不可侵にしておくべきだったんじゃないかと思います。
それにしてもねえ、準主役のかわいいほうの少年も、主人公のソルヴィーノさまも、虫に拉致されるのですが命は助かる。
あのお、虫が差別しちゃいけないと思います。かわいくない子はソッコーで殺しちゃって、かわいい子は生き残るって、あかん。
それにしても、巨大な虫が人間に擬態するって設定はすごいと思いました。
「虫が人間に擬態した姿」はかなり早い段階から画面に現れておりましたが、私なんぞは「人間の中に昆虫君たちに見方する者がいて、そいつらが虫たちの手先になって悪いことしている」って思い込んでおりました。
この擬態ってネタ、大変面白かったです~