シュリ
1999年韓国映画
監督 カン・ジェギュ
主演 ハン・ソッキュ、キム・ユジン
とにかく最近勢いのある韓国映画でございます。
この作品にしても「シルミド」あたりの作品にしても、南北に分断された朝鮮半島の問題が作品のベースになっています。
分断された祖国への思いってものがあるわけだから、全てはデリケートな話にならざるを得ないですよね。
物語の主人公は韓国の警察官。
テロ防止のセクションにいる青年です。彼のもとに情報が入ります。北朝鮮からスナイパーが潜入したという話。
実際に何人もの人が犠牲になります。
そんな事件と並行して、韓国が開発した液体爆薬が北朝鮮のテロリストグループに略奪されてしまいます。
このグループってのが実に微妙な連中でして、北朝鮮軍部の命令をうけて行動してるわけではないことがだんだんとわかってくるわけですな。
というのも、南北朝鮮の友好的なムードを歓迎する勢力と、それに反対する勢力がいるわけです。
平和協調路線と強硬路線ですな。
テロリストグループは南北朝鮮の親善サッカーが行われているスタジアムに液体爆弾を仕掛け、韓国大統領と協調路線の北朝鮮の特使を一気に吹き飛ばそうとします。
それを阻止しようとする韓国側。
なんとテロリスト側は、爆破計画が失敗したときのためにスナイパーを待機させています。
そのスナイパーはなんと主人公が愛を誓った女性でした。いぐわああああ。
物語途中で北朝鮮のテロリストが戦いのビジョンを語る場面があります。
北朝鮮のテロリストでさえ、南北に分断された祖国の状況を憂えていて、南北統一を願っているわけです。
その方法論が違うだけなんですね。このあたりがとても複雑ですよね。重く、悲しく、とてつもなく素晴らしいドラマに仕上がっております。
必見といっておきましょう。
トミー
1975年アメリカ映画
監督 ケン・ラッセル
主演 ロジャー・ダルトリー、アン・マーグレット、オリバー・リード、ジャック・ニコルソン、エリック・クラプトン、エルトン・ジョン
ロックバンド「ザ・フー」が発表したロックオペラ「トミー」の映画化です。
とにかく壮大な作品でございます。物語中、普通に台詞が喋られるところはほとんどないです。
ほとんどの台詞が音楽です。まあ歌詞が台詞だと考えていただいたらいいんじゃないかと思います。
第二次世界大戦終戦の日に生まれた少年トミー(ダルトリーさま)。
戦闘機パイロットの彼の父は出征し、戦地上空で消息を断ちます。トミーの母マーグレットさまは女手ひとつでトミーを育てることになるわけですな。
トミーが六歳になったころ、母の前に男性が現れます。ホリデーキャンプのおじさん、リードさまでございます。
マーグレットさまとリードさまは次第に惹かれあい、やがてベッドを共にする間柄になるわけですが、突然トミーの父が帰還します。
リードさまは口論の末、トミーの父を殺してしまいます。間の悪いことにトミーはその現場を目撃してしまう。
「お前は何も見ていない。聞いていない。何も喋ってはいけない」とマーグレットさまとリードさまにつめよられ、父が殺される現場をみたショックも加わり、トミーは言葉を忘れ、自分の殻に閉じこもってしまいます。
責任を感じた二人は、息子を専門医(ニコルソンさま)に診せたり、怪しげな伝道師(クラプトンさま)のいる宗教の教えにすがったり、麻薬の女王(ティナ・ターナーさま)の世話になったりと、いろいろな治療を施しますが、一向に症状は回復しない。
ある日トミーは「鏡の中のもう一人の自分」に導かれ、家出をします。で、ゴミの山の中で廃棄されたピンボールマシンで遊んでいるところを発見されます。
ピンボールをやらせてみるとこいつが巧い。またたく間にピンボールチャンピオン(エルトン・ジョンさま)に挑戦するまでになり、とうとう彼を倒してしまいます。
有名人になったトミーですが、症状は回復しない。遂に母は錯乱し、鏡に向かって彼をつきとばす。
するとあらら、鏡が割れたショックで彼の身に奇跡が起き、トミーの症状は回復するわけですな。
もうこうなると奇跡の男。トミーを崇拝する若者が彼の周囲に集まりはじめるのですが、それが次の不幸の始まりとなるわけでございます。
ザ・フーってバンドは、日本では考えられないくらいアメリカイギリスではビッグネームです。
だからこそこんなにとんでもないメンバーが集まったんでしょうね。
再結成されたときの「トミーライブ」の映像を見ましたが、そのライブでもけっこうすごいメンバーが集まっていました。
作品的にどうのこうのというのではなく、ロックにひたすら浸っていただくのがこの作品の正しい見かたなんじゃないかと思いますです。
アウトサイダー
1983年アメリカ映画
監督 フランシス・フォード・コッポラ
主演 C・トーマス・ハウエル、マット・ディロン、ダイアン・レイン、エミリオ・エステベス、トム・クルーズ、ソフィア・コッポラ
コッポラ監督の作品です。
不良少年たちの青春ムービーでございますな。
申し訳ござらんが、ちょいと苦手にしている系統の作品でござる。
恋愛映画・コメディ映画は「好んではあまり見ない映画」なんですが、こういう青春映画は「できれば避けて通りたい」ジャンルでございます。
アメリカの田舎町。そこではボンボンたちの不良少年集団と、下町の不良少年集団がいざこざを繰り返しております。
主人公のハウエルさまが所属するのは下町のグループ。この二派はとにかくしょっちゅうモメているわけですな。
その日もええ感じでモメます。
で、例によって喧嘩になり、殺される一歩手前までいっちゃいます。
で、ハウエルさま派の少年が、ナイフで対立グループの少年を刺してしまいます。
ハウエルさまとその「刺しちゃった少年」はグループの先輩格(ディロンさま)の計らいで郊外に逃げます。ほとぼりが冷めるまで田舎で暮らす、みたいなノリですね。
その田舎町で教会が火事になり、彼らがその火災現場に出くわすわけです。
二人は命懸けで教会に取り残された子供たちを救います。一躍二人はヒーローに。
しかし「刺しちゃった少年」は重症の火傷で生死の境を彷徨うことになってしまいます。
結果的にハウエルさまはその火事によって人生が好転したことになり、もう一人の少年は暗転したことになります。
しかしそれだけでは終わらないわけです。グループの少年たちにとっての不幸はさらに拡散していきます。
そして突きつけられる強烈なクライマックス。
ラストシーンに救いのある描写をもってきたのはコッポラ監督の良心の部分かもしれません。
途中、主人公を助ける仲間の少年役でエミリオ・エステベスさまが出演しています。
けっこうどうでもいい役でございます。そしてさらにどうでもいい役でトム・クルーズさまが出ております。
さらにクレジットにはソフィア・コッポラさまの名前もありましたが…
どこに出ていたのか結局わかりませんでした。なはは。
幻魔大戦
1983年角川春樹事務所作品
監督 りんたろう
声の出演 古谷 徹、小山芙美、江守 徹、なんと原田知世、白石加代子、美輪明宏
角川映画初のアニメ作品。平井和正様原作の大傑作。
それを故石森章太郎先生がコミックスにしたものが原作になっております。
小説のほうの原作はめっちゃ大作。文庫本で十巻以上のスケールだったと思います。
そんな作品を二時間や三時間のアニメにすること自体無理があるわけなんですが、そういうこと言ってしまうと、ほとんどの小説の映画化が難しいって結論になってしまいますね。仕方ないかな。
宇宙で破壊を繰り返している「幻魔一族」。
数々の惑星を滅ぼし、一族は地球にやってきます。
幻魔に対抗する一族もおります。故郷の星を破壊された超能力者の少女。
彼女は地球のある国の王女に転生します。悪の一族と戦い続けているアンドロイド戦士とかもおります。
王女とアンドロイド戦士は、全世界に散らばってい超能力戦士たちを集め、幻魔一族に対抗しようとします。
そんな王女様が強烈な力を感じたのは日本の高校生の少年。
突然目覚めた超能力者の力に戸惑いつつも、彼は幻魔一族と戦う決意をします。
一人また一人と超能力者が集まってきます。テレポーテーションが使える少年だとか、念動力が使える人だとか。
クライマックスは集結した超能力者と大魔王「幻魔」との壮絶な戦い。すげえすげえ。
りんたろう監督は、光の処理がとても美しく、印象的です。
この映画のすこし後になりますが、「さよなら銀河鉄道999」の映像など、とても素晴らしかった印象だけが残っています。本作も、超能力者が「力」を発揮するときに「光る」って設定がありまして、そこの光をインサートさせるときの処理がとてもすばらしかったです。
MUSA(武士)
2001年韓国映画
監督 キム・ソンス
主演 チャン・ツイイー、チャン・ウソン
ここ数年とにかく元気の良い韓国映画です。
そんな韓国の歴史スペクタクル大作でございます。
西暦1375年。中国では明が建国され、蒙古を北に放逐しました。
高麗と明の関係は明の使節団殺害事件によって悪化。
高麗は関係修復のために使節団を南京に送りますが、そのすべてが投獄されてしまいます。
そんな時代の物語です。
投獄された特使たちは流刑地に連れられますが、その途中で一行は蒙古の襲撃をうけ、護送の任にあたっていた明の兵士たちは皆殺しにされてしまいます。
しかし高麗の者に恨みはないということで、高麗の兵たちは命を助けられます。
そこは灼熱の砂漠。
犠牲をだしながらも武器商人の一行に会った使節団、そこで別の蒙古の軍隊に会うわけですな。
蒙古の兵は拉致された明の姫君をつれております。
姫君がチャン・ツイイーさまでございます。
で、高麗の奴隷兵がチャン・ウソンさまです。
高麗の将軍は、姫を救出して明へ返し、その上で使節団の使命を果たそうと考えます。
はてさて彼らの運命やいかに。
「ヒーロー」「グリーンディスティニー」「ラバーズ」「SAYURI」のチャン・ツイイーさまと「私の頭の中の消しゴム」のチャン・ウソンさまの競演です。
とにかくすごいスケールです。お話もとっても面白い。途中からめっちゃ集中して見てしまいましたです。
物語後半はもう滅びの美学のオンパレード。
「ワイルドバンチ」というか「ダブルボーダー」というか「アラモ」というか「白虎隊」というか「シルミド」というか。
こういう滅び系の映画、日本人って好きですよね。
私も日本人だから嫌いじゃないんだけど、あんまり好んで見たくはない題材ですわなあ。