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 「はるか!」

 「お兄ちゃん!無事だったのね。」

 「あぁ。すぐに行くから、もう少しだけ頑張れよ。」

 「うん!」

 秀樹とはるかの通信を傍受(ぼうじゅ)したギエンが、驚いた感じで会話に割り込んできた。

 「貴様、まさかジャギを倒したというのか!?」

 「あぁ。割かし手こずったけどな。」

 「面白い!コイツらを倒したら、後で我と戦えッ。」

 秀樹はそのギエンの言葉に、一瞬だが呆気(あっけ)に取られた。仲間が倒されたというのに、ギエンには敵を討つという意識はおろか、悔(くや)しがる素振りさえも見せず、むしろ秀樹の強さは自分の力量を試すのに持ってこいだと対戦を楽しみにしている。

 その情のなさには、呆気(あっけ)にも取られ、且(か)つ不愉快(ふゆかい)な感情にもさせられてしまう。だが、それも究極の生物という彼らの特徴なのかなと思うと、その不愉快さも一気に冷めてしまった。

 秀樹自体は心ある人間であり、パーピリオン星人なる未知の生物の気持ちは理解できないが、究極(きゅうきょく)を自負する彼らの心理を推し量る事はできる。自分達を神のように思っている者達にとって、仲間だとか命だとか、そんな人間的な感覚に重きは置いていないのだと理解できたのである。

 神と自負(じふ)するからには、おそらく彼らは彼ら自体でどんな事でも叶えられる能力を持っており、従(したが)って誰かに頼るとか助けてあげる等という意識もない、なので、自分以外の存在には興味(きょうみ)もなければ、その存在の有難(ありがた)みも分からないのであろう。言わば唯我独尊(ゆいがどくそん)状態(じょうたい)で、究極の利己主義者(りこしゅぎしゃ)達の集りなのだと思えば、人間とは明らかに違う生物なので、彼らをどうこう言う立場ではないと、秀樹は割り切っていたのである。


 「よく聞け、はるか。」

 「うん。」

 「敵の強さには必ずカラクリがある。よく観察(かんさつ)して戦え!」

 「うん、分かったわ。」

 秀樹がもうすぐ駆けつけてくるという事で、精神的に少しゆとりの出来たはるか。リアルタイムで状況が変わり続ける戦場で、精神面や心理面で後れを取る事は、敗北にも繋がりかねない重要な要素で、ちょっとした事が、時を重ねるに従い大きな痛手となる事もある。

 だが、良い兆候(ちょうこう)が現れると、どんどん良くなる物でもあった。秀樹の言葉に元気になったはるか。頭の回転もそれに呼応(こおう)してスッキリし、良いアイデアが浮かびそうな予感に心も明るくなる。無論(むろん)、それはただ秀樹の言葉だけでそうなったのではなかった。秀樹の言葉は、ただのきっかけで、戸惑(とまど)っている間にも、はるかは敵を攻略する為の布石(ふせき)を打っていたのである。

 「ジェットガトリングブラスト!!」

 「まだ懲(こ)りぬようだな。その技ではこのギエン様に傷一つ負わせられぬ

  わッ!」

 “どうすれば倒せるのか?”それはこの鉄壁(てっぺき)の防御を破らない事には始まらない。心理戦で先を越され、苦しい展開に長々と考える余裕が持てないでいたが、そこから単調ではあっても、激しい攻撃を繰り返す事で、自分のリズムを徐々に取り戻し、鉄壁の防御を破る方法を探っていた。

 どのようにして破るかという疑問から、どうすれば破れるかという方法論への思考の前進。両者は同じような言葉のように思われがちだが、前者は相手の強さに焦り、何から手を付ければいいのか分からない状態であり、後述の言葉には、相手の弱点を見つけ克服(こくふく)しようとする、事態打開への取り組みが見て取れる。


 単調な攻撃は思考の前進を押し進める為に、はるかが仕掛けた作戦で立った。その時間かせぎをしている間に、正友の言葉を思い出したはるか。

 (もしかして!?)

 鉄壁の防御を破る方法について閃(ひらめ)いたのか、はるかの攻撃の手が一瞬だが緩んだ。

 「どうした!!攻め疲れたか?」

 その一瞬の隙を見逃すギエンではなかった。際(きわ)どいタイミングで、何とかレッドクラウンは攻撃を回避した。

 「いいぞ。よく躱したな!だがそろそろ限界だろう。」

 したり顔でギエンはそう言い、次の攻撃に移ろうとした。

 「フフフ…次で終わりだ。フルパワーで行くぞ!」

 「待って!」

 「どうした命乞(いのちご)いか?」

 「違うわ。次の攻撃はヤメにした方がいいわよ。」

 「何だと?」

 先程のピンチから一転し、はるかが自身を覗(のぞ)かせそう忠告(ちゅうこく)する。しかし、勝つと思い込んでいるジャギには、その意味が理解できない。

 「強がりおってぇ~。死ねッ!!」

 フルパワーでビーム攻撃をしようとエネルギーを集中させようとしたのだが…

 「な、何ィッ!?」

 ピラミッドフォース内で、突如(とつじょ)大爆発が起こっていた。先程のピンチに陥った時、はるかはピラミッドフォースの内部に圧縮した炎を送っていたのである。高圧をかけ、微細な空間に圧縮した炎。それをどう送ったのかと言えば、ピラミッドフォースのバリケードに穴が空いた時であった。

 鉄壁の防御壁は、強力な磁場の成せる物なのか何なのかは定かではなかったが、確かな事はその壁も自らが攻撃を行う際には、開放せざるを得ないという事。それを知ったはるかは、穴が閉じる瞬間を見計らって炎を忍び込ませたのである。そして、強力な力をファラオスフィンクスが発しようとした時に、引火させていたのであった。


 「ま、まさか!?一体、何があったというのだ…。」

 「あなたの技はもう通じないわよ。覚悟しなさいッ!!」

 「ピラミッドフォースを破ったくらいでいい気になるなよッ。」

 その台詞をギエンが言い終えぬ内に、少し離れた位置から爆発音らしき物音がした。

 「何だ…この音は!?…ぐわッ…!!」

 爆音の直後。風と共にキラーカーリングが吹き飛んできて、ファラオスフィンクスに衝突してきた。

 「ぬぅぅ…これはダイキではないか…!?」

 「そうだよ。お前ら、ブッ飛ばされる覚悟は出来たか?」

 銀竜と共に現れた正友がそうギエンに話しかけた。

 「貴様も、我らのピラミッドフォースを打ち破ったというのか?」

 「アンタが相手してる女の子に教えてもらったんだよ。それより、ブッ飛ばさ

  れる心の準備は出来てんのかって聞いてんだよ!」

 正友はテレパシー(聴勁(ちょうけい))で、はるかからピラミッドフォースの弱点を教わり、ダイキを機体ごと吹き飛ばしていた。混乱していた立場が入れ換わり、狼狽(ろうばい)するギエン達。

 「おい、聞いてんのか?今からお前らブッ飛ばすよ!究極の生物さん。」

 「…おのれ~ッ。たかがこんな技を破ったからって、いい気になるなッ。」

 ギエンはそう言って強力な電流らしき物を送ると、ダイキの意識を回復させ、申し合わせて突撃してきた。

 「はるか!アレ行くぞッ!!」

 「分かったわ!」

 「九天覇王剣!!」

 銀竜が太刀(たち)を振うと、矢の如(ごと)き風の気流が生まれた。

 「アストロメテオカリバー(星煌火聖剣)!!」

 レッドクラウンが大剣で炎を起こし、その気流に乗せると、相乗効果(そうじょうこうか)で炎は増々燃え盛った


 「デザートハードウェザリング!!」

 二人がそう叫ぶと、炎は更に強さを増した。

 「その程度の炎で我が装甲はビクともせんわッ。」

 激しい炎は単発的に起こり、気流の中に点景(てんけい)となっていた。激しい炎をくぐり抜けると、強風が吹き荒れるの繰り返し。宇宙空間は地表と違い、熱の篭(こも)る場所がないので、とてつもなく寒い。点景の炎を掻い潜り(かいくぐり)熱せられたギエン達の機体は、次の炎に見舞われるまで、激しい冷気に襲われた。しかし、その炎と冷気が交互に襲う空間を、ものの見事に通りきったファラオスフィンクスとキラーカーリング。

 『死ねッ!!』

 ギエンとダイキは同時にそう叫びつつ、逆襲しようとしたのだが。

 「何だと!?」

 真っ先にレッドクラウンと斬り合った、キラーカーリングの斧が粉々に砕け散った。同じように銀竜に襲いかかったファラオスフィンクスも、爪をボロボロにされ、両機のパイロットが困惑するのも束の間に、はるかと正友のケルビムによって、打ちのめされてしまった。

 「うごぉぉぉ…。」

 「うごぉあッ…貴様ら何をした?」

 衝撃に悶えるダイキ。ギエンが息も絶え絶えにといった感じで、はるか達を睨(にら)みつけながら、自分達を打ちのめした技の秘密について尋ねた。

 「馬鹿ね。あれだけの熱と冷気を交互に浴びたら、どんな堅い金属だって組織

  がバラバラになって、脆(もろ)くなるに決まってるじゃない!」

 ギエンは「はっ」とした顔つきをした。

 「そうだよ。究極の生物の割に頭が悪いんじゃね?」

 正友が得意気にそう言った。

 「うぬぅ…。」

 ギエンは悔しさを噛みしめていた。言い返したかったが、はるか達の言う事はもっともで、言い返せない事に歯がゆさを感じながらも、何も言えないでいた。



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