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てきすぽどーじん5号 「初体験」
「親不孝ウエストゲイパーク」 山田佳江
親不孝ウエストゲイパーク
親不孝ウエストゲイパーク(1)
親不孝ウエストゲイパーク(2)
親不孝ウエストゲイパーク(3)
親不孝ウエストゲイパーク(4)
「原発少女・福島もんじゅ ~パイロット版~」 シゾワンぷー
原発少女・福島もんじゅ ~パイロット版~
原発少女・福島もんじゅ ~パイロット版~(全)
「穴蔵の娘」 雨森
穴蔵の娘
穴蔵の娘(1)
穴蔵の娘(2)
穴蔵の娘(3)
穴蔵の娘(4)
穴蔵の娘(5)
「パラレルワールドの僕」 香吾悠理
パラレルワールドの僕
パラレルワールドの僕(1)
パラレルワールドの僕(2)
パラレルワールドの僕(3)
パラレルワールドの僕(4)
パラレルワールドの僕(5)
パラレルワールドの僕(6)
パラレルワールドの僕(7)
パラレルワールドの僕(8)
「テキスポで暮らした人たち」 蟹川森子編
テキスポで暮らした人たち
テキスポで暮らした人たち(1)
テキスポで暮らした人たち(2)
「惟任百里的初恋探偵物語」 あやまり堂
惟任百里的初恋探偵物語
惟任百里的初恋探偵物語(序)
惟任百里的初恋探偵物語(1)
惟任百里的初恋探偵物語(2)
惟任百里的初恋探偵物語(3)
惟任百里的初恋探偵物語(4)
惟任百里的初恋探偵物語(5)
惟任百里的初恋探偵物語(6)
惟任百里的初恋探偵物語(7)
惟任百里的初恋探偵物語(8)
惟任百里的初恋探偵物語(9)
誤訳捏造「OUTサイダー」 茶屋休石
誤訳捏造「OUTサイダー」
誤訳捏造「OUTサイダー」(序)
誤訳捏造「OUTサイダー」(1)
誤訳捏造「OUTサイダー」(2)
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「異世界のメロディ」 松浦俊郎
異世界のメロディ
異世界のメロディ(序)
異世界のメロディ(1)
異世界のメロディ(2)
異世界のメロディ(3)
異世界のメロディ(4)
異世界のメロディ(5)
異世界のメロディ(6)
異世界のメロディ(7)
異世界のメロディ(8)
異世界のメロディ(9)
異世界のメロディ(10)
異世界のメロディ(11)
異世界のメロディ(12)
巻末の随筆
巻末容赦
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誤訳捏造「OUTサイダー」(2)

 
 開けてみた。
 鍵がかかっていた。
 だけど、全力で扉にぶつかった。
 すると、扉は開き、決して味わったことのない純粋な恍惚を覚えた。
 静かな光が鉄格子を通りぬけ、戸口へ続く短い石階段を照らしていた。
 光り輝く満月。夢のなかでしか見たことのない、ぼんやりとした存在だったものがそこにはあった。
 僕は今、城の頂上にいるのだと思った。僕はドアを超え、短い階段を一気に駆け上がる。けれど突然、月は雲のベールに隠されて、僕はよろめきながら闇の中を道を探すはめになった。僕が格子に達したときにはまだ闇に覆われていた。慎重に探ってみると、鍵はかかっていなかった。けれども、進んだら落ちるんじゃないかと思い、立ち止まってしまった。
 その時、月が顔をだした。
 全く予想のつかなかった光景が広がる。奇っ怪で信じられないような光景。恐ろしい衝撃。かつて経験したことのない恐怖。驚くべき暗示。
 その光景自体は驚くほどシンプルだった。格子を抜けた先で、僕が見たものは、木々の梢が茂り、そしてその下にある固い地面。様々に飾られた大理石や円柱、それらを影で覆う古びた石の教会、そして月光に虹色に輝く荒廃した尖塔。
  呆然とし、半ば無意識に格子戸を開けると、白い砂利の小道をよろよろと歩み出た。心は麻痺し、その一方でぐるぐると混乱していた。あまりにも狂おしい光への飢えがこんなものを見せているのではないか?狂気、夢、幻想。光、華やかさ。僕はぼんやりとしたまま進んでいく。橋の下をくぐり、大理石と柱の回廊を抜けると、ひらけた場所へと出た。草地には、道があったり、なかったり。あるのは古ぼけた道標ぐらいで、その先にあったはずの橋はボロボロの崩れた苔むした石の土台しか残されていなかった。だから僕は早瀬を泳いでわたらなければならなかった。
 目的地、鬱蒼と茂った森に囲まれ蔦に覆われた立派な城。そこに辿り着く前に2時間も過ぎてしまった。水に満たされた堀に、崩れかかった塔。左右に広がった翼。けれども僕が最も興味を、それどころか喜びすら感じたのが開かれた窓である。綺羅びやかな光の輝きに、陽気などんちゃん騒ぎのリズム。おしゃべりしている奇妙な服装の人々。初めて聞く言葉や初めて見る顔は、まるで異邦人のもののようだった。
 光輝く窓の下へ立ち、歩みをすすめる。その歩みはたった一つの光り輝く希望をどす黒く染めてしまうものだった。悪夢は直ぐに始まった。酷く恐ろしいデモンストレーション。僕が敷居を超えると、丁度上階から人々からおりてくるところだった。突然、彼らの顔が歪み、ほぼ全員の喉から叫び声があがる。混乱は直ぐに広まり、絶叫とパニック、ある者は気絶し、またあるものは仲間を突き飛ばしてでも逃げようとした。多くの者は手で目を覆い、またあるものは闇雲に走りだして、家具にぶつかって転んだり、壁にぶつかって倒れたりした。
 消え行く人々の残響を聞きながら、僕は一人残され、明るい部屋で呆然と立ち尽くしていた。目に見えない何かが、僕の直ぐ側に潜んでいるのではないか。何者かの気配を感じたような気がした。黄金のアーチを超えた先のドア、この部屋によく似た部屋で何者かの動く気配がした。僕がアーチに近づくに連れて、その存在はますます鮮明に感じ取れるのだ。
 恐ろしい音。不快で有害で恐怖の鳴き声を聞いた。
 生々しく、想像を超え、言葉にすることすらできないような、口にするのもはばかられる、怪物。
 その姿が、陽気な一団を狂乱した逃亡者へと変えてしまったのだ。
 そいつがどんなやつなのか、正直に話すことなんてできない。不浄で、汚らしく、異常で異様で嫌悪され忌まれるもの、それらすべてをごった煮に混ぜたようなもの。
 腐敗し崩れかかった体は悪臭を放つ何かを滴れせている。慈悲深い地球がその存在を隠してきたものが、今むき出しになって目の前にいる。蝕まれ、骨はむき出しになっている。人間の形を酷くねじ曲げたような忌まわしい形。黴が生えぼろぼろになった衣を体に巻きつけている。
 僕は逃げることもできずに固まっていた。幸いにも僕の目はあまりの衝撃にぼんやりとしかそいつの姿を見ることができなくなっていた。僕は目を塞ごうとして手をあげようとしたけれど、僕の神経はまだ麻痺していて、僕の言うことを聞いちゃくれなかった。ところがどっこい。その試みは僕のバランスを崩すには十分すぎるほどだったんだ。僕はよろめいて床のくぼみでころんだ。あいつが近くにいる。逃げられない。慌てふためいた僕の手は、怪物が伸ばした手と触れたんだ。
 僕が叫ばなかった。代わりに夜風とともに現れたグール達が叫びを上げてくれた。僕の心はぶっ壊れ、壊れた魂の記憶が雪崩みたいにどっと押し寄せ、去っていった。僕は立ち上がりながら、僕の中の倫理観だとか、そういうものが変容していくのを感じていた。不浄な憎悪が睨みつけていた。汚れた手から手をそらすまでに、僕は全部理解したんだ。

 宇宙には苦しみと同じ数だけ、安らぎというものがあって、それは鎮痛剤みたいなものだ。恐怖の中で、僕は我を忘れることが出来た。暗い記憶は破裂し、混沌の残響の中へと消えていった。
 僕は走った。
 素早く、静かに。
 月明かりの下を。
 大理石の庭園の境界に戻ったとき、元の世界へと続く落とし戸が閉ざされているのを思い出した。でも、僕は後悔なんてしちゃいない。古城や森なんてもううんざりだったから。僕は今グールたちと一緒に夜風に乗っている。日中はネフレンカの地下墓地やナイルのハドゥスバレーにいる。光は僕のために存在するわけじゃない。ねぶの石棺を照らす月明かりを除いて。陽気さも僕には与えられない。大ピラミッドの下で行われる名も無きニトクリスの饗宴を除いては。僕は新しい野性的で自由な生活の中での、異邦人としての辛さすら歓迎している。

 安らかな時でも僕はいつも自覚している。
 僕はアウトサイダー。
 今世紀の、まだ人間である者たちの、脅威である。
 僕はあの時知ったんだ。
 手を伸ばしたあの時。
 偉大な金枠のなかの怪物へ手を伸ばしたとき。
 伸ばした指先が触れたもの
 冷たく
 硬い
 磨き上げられた
 ガラスの表面



End 




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異世界のメロディ







異世界のメロディ


松 浦 徹 郎



 

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異世界のメロディ(序)

 
 
 数式について語っている、というより教科書を朗読している教員の声が遠くに聞こえる。
 高校三年で、大学受験が控えているからだろうか。どいつもこいつもめがねを光らせ板書をノートに書き写すことに集中していて空なんか見ようともしない。
 もったいない話だ。
 五十川良樹(いそかわよしき)はつくづくそう思う。
 夏を迎えようとしている青空には、飛行機が一筋の雲を引いていた。
 だからといって、五十川にはこの光景を誰かと共有したいと思うようなこともなかった。
 ほかの奴らには、それぞれのやりたいことがあるのだ。他人になにかを強要するのは好きじゃないし、強要されるのもいやだ。
 朝、遅刻して。そして劇場型のつまらない授業を受け、さっさと家に帰り結末の決まっている単調なゲームを作業のようにこなす。
 学校でも家庭でも、五十川はいわば『無』の存在だった。
 いじめに遭っているわけではないし、虐待されているわけでもない。むしろ、いじめに遭わないように、つまらないトラブルに遭わないように。そうやって生きてきた結果、社会との干渉性を喪失した。
 誰とも接点のない生活は、なれると楽だった。
 引きこもりや非行などに走らなくても、ふつうにしているだけで完全な自由を手に入れた。ずっとそう思っていた。
 だけど時々そんな気持ちにも揺らぎが訪れる。たとえば、今みたいに飛行機雲を目で追っているときだ。
 今、自分は地の底にいるのだと思う。薄暗く、じめっとした穴の中で誰にも気づかれることなく勝手な生活を送っている。だけどあの飛行機は人間の社会性が生み出したものだ。
 作る人、整備する人、操縦する人。そして利用する人。それぞれが干渉し合って鉄の塊を空高く飛ばしている。その姿は、なんとも美しい。
 永遠に続くと思っていた高校生活もじきに終わる。
 自分はどうなっていくのだろうか? こんな生活から、いつか解放される日が来るのだろうか? あの、大空をゆく飛行機のように地の底から飛び立てる日が来るのだろうか?
「ま、無理だろうな……」

 

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異世界のメロディ(1)

 
 第一章 リセットされた世界で


 消えてゆく飛行機雲を眺めていたような気がした。
 でもそれは幻で、そこにあるのは黒い架線の影だった。さらに体を揺さぶる風圧を伴って、特急電車がプラットホームに立つ五十川のすぐそばを駆け抜けてゆく。
 パンタグラフと架線の間で、青白い光が瞬くのが見えた。
 なにか大切なことを忘れているような気がする。
 別に答えが書いてあるとは期待していないが、五十川は制服の袖をめくって腕時計の針を見た。
「どこかにぶつけた、かな?」
 五十川の腕時計は、ハンマーで殴られたみたいに文字盤がぐちゃぐちゃになっていた。ただ日付だけは九月一日を指しているから、たぶんそうなんだろうと思う。
 五十川のほかには誰もいないプラットホームを見渡してため息をつく。
 残念ながら、今五十川が立っている位置からは駅の電光掲示板はみえない。しかし列車の接近を知らせるランプが点灯しているから、まもなく次の電車は来るのだろう。
 入線してきた電車に乗り込み、がらがらのシートに腰掛ける。同じ車両内には、多く見積もっても数人しか乗っていない。
 いつもこんなに乗客は少なかっただろうか。
 車窓からはのどかな田園風景がみえる。
「ん?」
 おかしい。なにがおかしいのか自分でもよくわからないが、見慣れた通学の車窓ではないようだ。下り列車と上り列車を間違えたのだろうか。
 目に入ってくる風景に疑問を覚えたとき、今どのあたりを電車は走っているのだろうかと気になり始めた。
 こういうものはたいてい芋づる式になっていて、一つわからないと次々と連鎖的に疑問がわいてくる。
 次の駅名は?
 降車するべき駅は?
 自分の名前は五十川良樹で、本当に合っているのか?
「ゲームのしすぎ、だな」
 我ながらばかばかしい妄想だ。そう切って捨てるのは簡単なことだったが、どうしても切り捨てられない理由もあった。
 しばし流れる車窓の景色をみてからつぶやく。
「やべぇな。マジでわかんねーや」
 今の五十川には、疑うべき解答すら浮かんでこないのだった。つまりは左手首の九月一日を示す腕時計と、ポケットの生徒手帳を信用するしかないことになる。
 睡眠不足は、記憶力の低下や判断力を鈍らせるだけでなく、どうやら感情も殺すらしい。
 確かな記憶もない上に、どこに向かっているのかもあやふやな電車に揺られているというのに、五十川はただぼんやりと車窓の景色から中吊り広告に視線を移しただけだった。
 深く考えることを脳が拒絶している。
 そんな感じがしていた。
 結局、終点から二つ前の駅で下車した。
 意識が覚醒したわけじゃない。相変わらず夢の中にいるようだったが、脳みそではなく体が通学路を記憶しているようだ。
 改札を抜けると、でっかい桜の木を中心にした駅前ロータリーのような場所に出た。
 ICチケットをかざしてちょうど停車していたバスに乗り込む。電車同様こちらも九割が空席だった。五十川のほかは律儀にシルバーシートに座っている年寄りだけだ。
 なんだか銀河鉄道の夜みたいだな、と五十川は思った。
 もっとも、こちらは天の川を駆ける列車ではなく真っ昼間に田舎道をすっ飛ばすバスだったし、そもそも五十川には友達はいなかったから誰かが乗車してくることもないだろう。
 途中、バスは丘の上にある療養施設で年寄りを降ろして、五十川の専用車になった。
 運転士は意味がないと思ったのか、車内アナウンスを次々と切り替えてバス停を華麗にパスし、終点で五十川を降ろすと回送表示にして走り去っていった。
 ここであっているんだよな?
 自分自身に言い聞かせ、バス停からつづくゆるい坂道を登っていく。坂道は途中からトンネルになり、トンネルを抜けると――。
 どこかのニュータウンかと思った。もしくは工業団地だ。
 トンネルの出口。つまり、五十川が立っている場所はその造成地から少し高い位置にあり、はるか先まで見渡せるのだが、団地のような建造物の列はどこまでも続いていた。
 足元だけに注意を払って頭を使わずに通路、階段、渡り廊下を進んで行くと『2014』というプレートが貼ってある扉の前にいた。
 ポケットにあった鍵を差し込み右に回す。軽い金属音がして、扉は簡単に開いた。
「寮の部屋だったのか……」
 だんだんと記憶が蘇ってくる。
 五十川はデスク上のカレンダーで日付を確認した。
 カレンダーは七月のまま。そして腕時計は九月一日に壊れたようだ。
 なんのことはない。記憶喪失とか大げさなものではなくて、たんなる夏休みボケだ。
 問題はすべて解決した。……はずだった。
 校舎はどこも静まりかえっている。すでに始業式は終っているのだろう。始業式なら、講堂に行けば何となくみたような顔がいる可能性があった。だけど、今の五十川には自分の行くべき教室がわからない。
 頭がぼんやりしているから仕方がない。夕方まで待って、寮に生徒らが帰ってくれば同じクラスのやつだって見つけることができるだろうし、夏休みの馬鹿話でも聞いていれば頭も覚醒してくるに違いない。それまでは適当に時間をつぶしていよう。
 そして彼女に出会った。女声コーラスが聞こえる音楽室の前で。


 


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