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てきすぽどーじん5号 「初体験」
「親不孝ウエストゲイパーク」 山田佳江
親不孝ウエストゲイパーク
親不孝ウエストゲイパーク(1)
親不孝ウエストゲイパーク(2)
親不孝ウエストゲイパーク(3)
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「原発少女・福島もんじゅ ~パイロット版~」 シゾワンぷー
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「穴蔵の娘」 雨森
穴蔵の娘
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「パラレルワールドの僕」 香吾悠理
パラレルワールドの僕
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「テキスポで暮らした人たち」 蟹川森子編
テキスポで暮らした人たち
テキスポで暮らした人たち(1)
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「惟任百里的初恋探偵物語」 あやまり堂
惟任百里的初恋探偵物語
惟任百里的初恋探偵物語(序)
惟任百里的初恋探偵物語(1)
惟任百里的初恋探偵物語(2)
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惟任百里的初恋探偵物語(8)
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誤訳捏造「OUTサイダー」 茶屋休石
誤訳捏造「OUTサイダー」
誤訳捏造「OUTサイダー」(序)
誤訳捏造「OUTサイダー」(1)
誤訳捏造「OUTサイダー」(2)
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「異世界のメロディ」 松浦俊郎
異世界のメロディ
異世界のメロディ(序)
異世界のメロディ(1)
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誤訳捏造「OUTサイダー」(1)

 
 これって不幸ですか?
 子供の頃の記憶で思い出せるのは恐怖と憂鬱だけ。
 幸せってなんですか?
 だだっ広い部屋の中でひとりで過ごした暗い日々。
 鬱々と沈んだ部屋には古臭い本だけがやたらにあって、窓の外に見えるのは、蔦に締め付けられて苦しんで助けを求めるかのように枝を伸ばす木々。
 神様が僕にくれたものは他にもある。例えば退屈と落胆、それに不毛さとか、壊れたガラクタとか。そんな枯れ果てた記憶に僕は必死にしがみついていて、捨ててしまうことなんかできないでいる。
 真っ暗闇を満タンにした廊下に、蜘蛛の巣と影ぐらいしか見えないとてつもなく高い天井。そんな古城の恐怖を詰め込んだようなこの城で、僕は生まれたわけじゃないと思う。他にもジメジメしていて崩れかかった廊下の瓦礫、どこにいても臭ってくる呪われた臭い。過去の時代の死体が積み上げられてこの城の土台になっている。
 太陽の代わりに、蝋燭をぼぉっと眺めることがある。薄気味悪い木々が塔の天辺まで覆ってしまって、太陽の届かないこの場所ではそれがせめてものやすらぎだったりする。真っ黒な塔を超え、木々は未知の空の彼方へと伸びている。
 僕がここに住んでからだいぶ長い。どれくらいの長さかはわからないし、何もかもぼんやりとして、僕以外の誰かを思い出すことだってできないでいる。人間だけじゃなくて何か生きているものも。ただし、この城に住む鼠や蜘蛛、蝙蝠を除いての話だけど。
 多分、僕を育ててくれた人はとんでもなく歳をとっていたんだと思う。だから僕は「人間」って言われて最初に思い出すのは、この城みたいに歪んでしなびて腐ったやつ。城の土台に空いた穴蔵にばら撒かれた骨だってグロテスクだとは思わなくて、本の中で見る色つきの動物たちの絵よりも自然に思えるくらいだ。
 僕の知識は、全部本の中から学んだものだ。先生になってくれるような人はいなかったし、そもそも人間の声なんて聞いた記憶すら無い。自分の声だって聞いたことがないんだし、話す相手がいないんだから仕方ないでしょ?同じように自分の姿だって見たことがない。この城には鏡がないんだ。だから僕は本や絵画に出てくる若者の肖像画をみて、ぼんやりとこんな姿をしてるんだろうと思ったりする。多分、僕は若い。数えるくらいしか、思い出がないから。
 腐った堀に沈黙した木々。その先を超えることを夢に見ることはある。晴れ渡った世界。人々に囲まれ生活する僕。一度だけ、森を抜けようとしたことがあって、でも城を離れるに連れて、その影が大きく伸びてきて、恐怖が辺りに包み始めたんだ。夜の迷路の中から抜け出せなくなっちゃうんじゃないかって、そう思って、その時は結局急いで城に戻ってしまった。 
 僕は、夢のなかで時を待ち続けた。暗い孤独。光への切望。狂おしいまでの欲求は、懇願の手を空へと続く塔へと押し上げた。落ちて、死ぬかもしれない。けれど一度も太陽を見ずに死ぬよりはマシだ。僕は決心した。ぼんやりとした明かりの中で、擦り切れ老朽化した石段を休めるところまで登った。一息ついたあと小さな足がかりにしがみつきながら登った。
 不気味で黒く、音を出さない蝙蝠達にまとわりつかれた、邪悪な円柱。僕の遅々として進まない前進の前に薄まらない闇があり、冷気と黴が僕を苦しめる。光は未だ見えず、僕は戸惑いながら、僕の挑戦の軌跡を見下ろして身震いした。夜が訪れるのを恐れ、手でまわりを探ったり、上と下を見ながら自分がどこまで進んだのか目測しようとした。
 無限に続くかに見えた盲目と絶望の断崖の窪みから這い出してみると、突然、頭のてっぺんに何か固いものを感じた。屋根か、それとも何かの床。暗闇の中で手探りしてみても、びくともしない石しか無い。何かの境に触れるまで、僕は塔の周りをしがみつきながら周辺を探った。戸口らしきものを見つけたとき、僕は両の腕で押し上げるように、それを頭で押した。光は、見えなかった。そして僕は知った。これが終わりではないことを。落とし戸の板は下から続く塔の外周の石に続いていたから。とても高いところにある、広い場所を見渡す観測所のような部屋なのだろうと思う。僕は這いまわりながらも、落とし戸が完全に落ちてしまわないように注意深く動いた。けれど、その試みは無駄に終わった。僕は疲れ果て、床へと横たわった。戸口を開けるのにはてこか何かがなければ無理だろう。そしてそれは、ここには存在しない。
 僕は今、高く伸びた木々の遥か上、想像もしなかったような高みにいるのだろうと思う。床から起き上がって、窓を探しまわった。もしかしたら、空の上を見ることができるんじゃないか?昔、本で読んだ星や月をこの目でみれるんじゃないか?しかし、僕が手に入れたものは失望だけだった。見つけられたのは大きな大理石の棚だけ。心をかき乱すような大きくて醜い矩形の箱が収められている。この部屋には城から切り離された古い秘密が詰まっているんだ。戸惑いのさなか、僕の手は不意に戸口に触れた。石の扉は奇妙なでこぼこが掘られていた。
 

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誤訳捏造「OUTサイダー」(2)

 
 開けてみた。
 鍵がかかっていた。
 だけど、全力で扉にぶつかった。
 すると、扉は開き、決して味わったことのない純粋な恍惚を覚えた。
 静かな光が鉄格子を通りぬけ、戸口へ続く短い石階段を照らしていた。
 光り輝く満月。夢のなかでしか見たことのない、ぼんやりとした存在だったものがそこにはあった。
 僕は今、城の頂上にいるのだと思った。僕はドアを超え、短い階段を一気に駆け上がる。けれど突然、月は雲のベールに隠されて、僕はよろめきながら闇の中を道を探すはめになった。僕が格子に達したときにはまだ闇に覆われていた。慎重に探ってみると、鍵はかかっていなかった。けれども、進んだら落ちるんじゃないかと思い、立ち止まってしまった。
 その時、月が顔をだした。
 全く予想のつかなかった光景が広がる。奇っ怪で信じられないような光景。恐ろしい衝撃。かつて経験したことのない恐怖。驚くべき暗示。
 その光景自体は驚くほどシンプルだった。格子を抜けた先で、僕が見たものは、木々の梢が茂り、そしてその下にある固い地面。様々に飾られた大理石や円柱、それらを影で覆う古びた石の教会、そして月光に虹色に輝く荒廃した尖塔。
  呆然とし、半ば無意識に格子戸を開けると、白い砂利の小道をよろよろと歩み出た。心は麻痺し、その一方でぐるぐると混乱していた。あまりにも狂おしい光への飢えがこんなものを見せているのではないか?狂気、夢、幻想。光、華やかさ。僕はぼんやりとしたまま進んでいく。橋の下をくぐり、大理石と柱の回廊を抜けると、ひらけた場所へと出た。草地には、道があったり、なかったり。あるのは古ぼけた道標ぐらいで、その先にあったはずの橋はボロボロの崩れた苔むした石の土台しか残されていなかった。だから僕は早瀬を泳いでわたらなければならなかった。
 目的地、鬱蒼と茂った森に囲まれ蔦に覆われた立派な城。そこに辿り着く前に2時間も過ぎてしまった。水に満たされた堀に、崩れかかった塔。左右に広がった翼。けれども僕が最も興味を、それどころか喜びすら感じたのが開かれた窓である。綺羅びやかな光の輝きに、陽気などんちゃん騒ぎのリズム。おしゃべりしている奇妙な服装の人々。初めて聞く言葉や初めて見る顔は、まるで異邦人のもののようだった。
 光輝く窓の下へ立ち、歩みをすすめる。その歩みはたった一つの光り輝く希望をどす黒く染めてしまうものだった。悪夢は直ぐに始まった。酷く恐ろしいデモンストレーション。僕が敷居を超えると、丁度上階から人々からおりてくるところだった。突然、彼らの顔が歪み、ほぼ全員の喉から叫び声があがる。混乱は直ぐに広まり、絶叫とパニック、ある者は気絶し、またあるものは仲間を突き飛ばしてでも逃げようとした。多くの者は手で目を覆い、またあるものは闇雲に走りだして、家具にぶつかって転んだり、壁にぶつかって倒れたりした。
 消え行く人々の残響を聞きながら、僕は一人残され、明るい部屋で呆然と立ち尽くしていた。目に見えない何かが、僕の直ぐ側に潜んでいるのではないか。何者かの気配を感じたような気がした。黄金のアーチを超えた先のドア、この部屋によく似た部屋で何者かの動く気配がした。僕がアーチに近づくに連れて、その存在はますます鮮明に感じ取れるのだ。
 恐ろしい音。不快で有害で恐怖の鳴き声を聞いた。
 生々しく、想像を超え、言葉にすることすらできないような、口にするのもはばかられる、怪物。
 その姿が、陽気な一団を狂乱した逃亡者へと変えてしまったのだ。
 そいつがどんなやつなのか、正直に話すことなんてできない。不浄で、汚らしく、異常で異様で嫌悪され忌まれるもの、それらすべてをごった煮に混ぜたようなもの。
 腐敗し崩れかかった体は悪臭を放つ何かを滴れせている。慈悲深い地球がその存在を隠してきたものが、今むき出しになって目の前にいる。蝕まれ、骨はむき出しになっている。人間の形を酷くねじ曲げたような忌まわしい形。黴が生えぼろぼろになった衣を体に巻きつけている。
 僕は逃げることもできずに固まっていた。幸いにも僕の目はあまりの衝撃にぼんやりとしかそいつの姿を見ることができなくなっていた。僕は目を塞ごうとして手をあげようとしたけれど、僕の神経はまだ麻痺していて、僕の言うことを聞いちゃくれなかった。ところがどっこい。その試みは僕のバランスを崩すには十分すぎるほどだったんだ。僕はよろめいて床のくぼみでころんだ。あいつが近くにいる。逃げられない。慌てふためいた僕の手は、怪物が伸ばした手と触れたんだ。
 僕が叫ばなかった。代わりに夜風とともに現れたグール達が叫びを上げてくれた。僕の心はぶっ壊れ、壊れた魂の記憶が雪崩みたいにどっと押し寄せ、去っていった。僕は立ち上がりながら、僕の中の倫理観だとか、そういうものが変容していくのを感じていた。不浄な憎悪が睨みつけていた。汚れた手から手をそらすまでに、僕は全部理解したんだ。

 宇宙には苦しみと同じ数だけ、安らぎというものがあって、それは鎮痛剤みたいなものだ。恐怖の中で、僕は我を忘れることが出来た。暗い記憶は破裂し、混沌の残響の中へと消えていった。
 僕は走った。
 素早く、静かに。
 月明かりの下を。
 大理石の庭園の境界に戻ったとき、元の世界へと続く落とし戸が閉ざされているのを思い出した。でも、僕は後悔なんてしちゃいない。古城や森なんてもううんざりだったから。僕は今グールたちと一緒に夜風に乗っている。日中はネフレンカの地下墓地やナイルのハドゥスバレーにいる。光は僕のために存在するわけじゃない。ねぶの石棺を照らす月明かりを除いて。陽気さも僕には与えられない。大ピラミッドの下で行われる名も無きニトクリスの饗宴を除いては。僕は新しい野性的で自由な生活の中での、異邦人としての辛さすら歓迎している。

 安らかな時でも僕はいつも自覚している。
 僕はアウトサイダー。
 今世紀の、まだ人間である者たちの、脅威である。
 僕はあの時知ったんだ。
 手を伸ばしたあの時。
 偉大な金枠のなかの怪物へ手を伸ばしたとき。
 伸ばした指先が触れたもの
 冷たく
 硬い
 磨き上げられた
 ガラスの表面



End 




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異世界のメロディ







異世界のメロディ


松 浦 徹 郎



 

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異世界のメロディ(序)

 
 
 数式について語っている、というより教科書を朗読している教員の声が遠くに聞こえる。
 高校三年で、大学受験が控えているからだろうか。どいつもこいつもめがねを光らせ板書をノートに書き写すことに集中していて空なんか見ようともしない。
 もったいない話だ。
 五十川良樹(いそかわよしき)はつくづくそう思う。
 夏を迎えようとしている青空には、飛行機が一筋の雲を引いていた。
 だからといって、五十川にはこの光景を誰かと共有したいと思うようなこともなかった。
 ほかの奴らには、それぞれのやりたいことがあるのだ。他人になにかを強要するのは好きじゃないし、強要されるのもいやだ。
 朝、遅刻して。そして劇場型のつまらない授業を受け、さっさと家に帰り結末の決まっている単調なゲームを作業のようにこなす。
 学校でも家庭でも、五十川はいわば『無』の存在だった。
 いじめに遭っているわけではないし、虐待されているわけでもない。むしろ、いじめに遭わないように、つまらないトラブルに遭わないように。そうやって生きてきた結果、社会との干渉性を喪失した。
 誰とも接点のない生活は、なれると楽だった。
 引きこもりや非行などに走らなくても、ふつうにしているだけで完全な自由を手に入れた。ずっとそう思っていた。
 だけど時々そんな気持ちにも揺らぎが訪れる。たとえば、今みたいに飛行機雲を目で追っているときだ。
 今、自分は地の底にいるのだと思う。薄暗く、じめっとした穴の中で誰にも気づかれることなく勝手な生活を送っている。だけどあの飛行機は人間の社会性が生み出したものだ。
 作る人、整備する人、操縦する人。そして利用する人。それぞれが干渉し合って鉄の塊を空高く飛ばしている。その姿は、なんとも美しい。
 永遠に続くと思っていた高校生活もじきに終わる。
 自分はどうなっていくのだろうか? こんな生活から、いつか解放される日が来るのだろうか? あの、大空をゆく飛行機のように地の底から飛び立てる日が来るのだろうか?
「ま、無理だろうな……」

 


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